説明

化粧用コンパクト容器

【課題】化粧料を充填するドラムの取り外し、取り付けが極めて容易に行え、しかも、ドラムに着脱のための特別の構造を必要とせずに形状、大きさだけが統一されていれば良く、構造も簡単で安価に製造できる化粧用コンパクト容器を提案する。
【解決手段】嵌合凹部14を備えた容器本体10と、後部を容器本体10後部に回動可能に連結して嵌合凹部14内外を揺動可能に設けた回動中枠50と、容器本体10後部に後部を回動可能に連結して回動中枠50含む容器本体10上面を開閉可能に設けた蓋体30とを備えており、回動中枠50を、上方回動させた状態で前面に開口したドラム挿入口51よりドラム70の着脱が可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧用コンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品を充填したドラムを容器本体に嵌合して使用する化粧用コンパクト容器が種々提案されている。(例えば、特許文献1或いは特許文献2を参照)
【0003】
特許文献1に記載されたものは、容器本体の嵌合凹部に中枠部材を嵌着固定し、中枠部材は、嵌合凹部に嵌合させた周壁の相対向する部分に掛け渡した弾性壁によりドラム嵌合部を画成し、嵌合壁下面より延設した水平基板上の突起を、ドラム嵌合部内に嵌合させたドラム下面の係合凹部内に、基板の外方へのスライドにより抜け出しが可能に嵌合させている。そして、弾性壁を外方へ引き出すことで基板をスライドさせ、抜け出した突起がドラム底面を押し上げて容易にドラムを外せる。
【0004】
特許文献2に記載されたものは、皿状容器体内に固定した中枠にドラム収納部を形成し、該収納部両側の中枠縦筒部分に、各々弾性板に支持されて内外方向揺動可能に設けた係止板を一体に形成するとともに、ドラム両側外面に各係止板の内側突出部分が嵌合する嵌合凹部を設け、また、係止状態のドラムをスライドさせて係止離脱を可能ならしめる予備空間をドラム収納部に延設して構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−332640号公報
【特許文献1】特開平08−117019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記各化粧用コンパクト容器は、ドラムの取り外し、取り付けが極めて容易に行えて、しかも特別の道具を必要とせずに簡単に行えるものである。
【0007】
本発明はドラムの取り外し、取り付けが極めて容易に行え、しかも、ドラムは底壁周縁部より周壁を立設した単純形態の皿状のものを使用でき、ドラムの着脱のための特別な構造を必要とせずに形状、大きさだけを統一させておけば容易な交換が可能であり、構造も簡単で安価に製造できる化粧用コンパクト容器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、嵌合凹部14を備えた容器本体10と、後部を容器本体10後部に回動可能に連結して嵌合凹部14内外を揺動可能に設けた回動中枠50と、容器本体10後部に後部を回動可能に連結して回動中枠50含む容器本体10上面を開閉可能に設けた蓋体30とを備え、回動中枠50を、上方回動させた状態で前面に開口したドラム挿入口51よりドラム70の着脱が可能に構成した。
【0009】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、回動中枠50が、嵌合凹部14周縁部の容器本体10頂面上に外周縁下面を嵌合載置させる環状の頂板部54の両側及び後部から、垂直板部58の下部より内方へ係止板59を突設した係止部57を垂設し、ドラム挿入口51より挿入されたドラム70の周縁部上下を、各係止板59と頂板部54との間に挟持して嵌合係止する如く構成した。
【0010】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、嵌合凹部14の前部に頂板部54の高さより丈の短い係止壁20を立設して、嵌合凹部14内に嵌合されたドラム70前面が当接係止される如く構成した。
【0011】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、嵌合凹部14内底部に、収納されたドラム70の底面を支持する支持突部21を突設した。
【0012】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第4の手段のいずれかの手段に於いて、頂板部54に、ドラム70を嵌合した回動中枠50を嵌合凹部14に嵌合した状態で、嵌合凹部14内外を連通する連通孔61を穿設した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドラムの着脱が特別の道具を必要とせずに簡単に行えるとともに、ドラムは底壁周縁部より周壁を立設した単純形態の皿状のものを使用でき、ドラムの着脱のための特別な構造を必要とせずに形状、大きさだけを統一させておけば容易な交換が可能であり、構造も簡単で安価に製造できる利点がある。
【0014】
また、回動中枠50が、嵌合凹部14周縁部の容器本体10頂面上に外周縁下面を嵌合載置させる環状の頂板部54の両側及び後部から、垂直板部58の下部より内方へ係止板59を突設した係止部57を垂設し、ドラム挿入口51より挿入されたドラム70の周縁部上下を、各係止板59と頂板部54との間に挟持して嵌合係止する如く構成した場合には、回動中枠50を形成する材料を極力少なくした上にドラム70の確実な嵌着固定が可能であり、また、ドラム70の着脱の際にも行いやすいという利点がある。更に、各係止部57が上記形態を備えるため、その係止板59の突出幅、厚み、或いは係止部57全体の材質等を選択考慮すれば、回動中枠50に嵌合するドラム70の嵌合強度の強弱調整を容易に行える利点もある。
【0015】
嵌合凹部14の前部に頂板部54の高さより丈の短い係止壁20を立設して、嵌合凹部14内に嵌合されたドラム70前面が当接係止される如く構成した場合には、上方に回動させた回動中枠50にドラム70を嵌合させて第1嵌合凹部14a内に嵌合させる際に、頂板部54の高さより丈の短い係止壁20に対してドラム70前面を円滑容易に嵌合させることができ、また、嵌合したドラム70はガタツキなく固定することができるという利点がある。
【0016】
嵌合凹部14内底部に、収納されたドラム70の底面を支持する支持突部21を突設した場合には、各係止部57の各係止板59による容器本体10底面とドラム70下面との隙間を支持突部21で充足してドラム70を安定的に支持することができる利点があり、上記係止壁20との組み合わせによりさらなる安定したガタツキ防止を図れる。
【0017】
頂板部54に、ドラム70を嵌合した回動中枠50を嵌合凹部14に嵌合した状態で、嵌合凹部14内外を連通する連通孔61を穿設した場合には、嵌合凹部14内に嵌合した回動中枠50を容易に嵌合凹部14より離脱回動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】開蓋状態の化粧用コンパクト容器の平面図である。(実施例1)
【図2】図1の状態から蓋を閉じた際のA−A線位置の断面図である。(実施例1)
【図3】図1の状態から蓋を閉じた際のB−B線位置の要部拡大断面図である。(実施例1)
【図4】図1の状態から蓋を閉じた際のC−C線位置の断面図である。(実施例1)
【図5】図1の状態から蓋を閉じた際のD−D線位置の断面図である。(実施例1)
【図6】図1の状態から蓋を閉じた際のE−E線位置の断面図である。(実施例1)
【図7】ドラムを装着する際の説明図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は化粧用コンパクト容器の実施例1を示し、該化粧用コンパクト容器1は、容器本体10と、蓋体30と、押釦40と、回動中枠50と、ドラム70と、固定中枠80と、パフ90とを備えている。
【0021】
容器本体10は、底壁11の周縁部より周壁12を起立し、左右中央部を前後に区画する区画壁13を設けて、その左方に嵌合凹部14としての第1嵌合凹部14aを、右方に嵌合凹部14としての第2嵌合凹部14bを凹設している。また、後部には周壁12を前方へ凹こませた軸着用凹部15を凹設している。軸着用凹部は蓋体30及び回動中枠50を軸着するボスを収納軸着するためのものである。また、前部には押釦40を収納する押釦収納凹部16を後方へ凹設している。また、図3に断面で示す如く、押釦収納凹部16内後面には、上方に係止突起17突設し、係止突起17下方に傾斜面18を形成した突部を突設している。
【0022】
蓋体30は、周壁部31の上端縁より頂壁部32を延設し、周壁部31の後部下端より軸着用凹部15の両側位置に垂設した一対のボス33を容器本体10に軸着して回動可能に連結し、容器本体10の上面を開閉可能に設けている。ボス33は便宜的に向かって左側を左側ボス33a、右側を右側ボス33bとする。また、頂壁部32前部裏面より、押釦収納凹部16内の係止突起17に係脱可能に係合するフック34を垂設している。また、頂壁部32の裏面には係止枠部35を突設し、鏡36を固定している。
【0023】
押釦40は、前板41下端より、押釦収納凹部16内を摺動する底板42を後方へ延設し、また、前板41の裏面からは、傾斜面18を摺動上昇して係止突起17とフック34との係合を解除する係止解除突起43を揺動可能に突設している。そして、図3の状態から前板41を後方へ押し込むことで係止解除突起43が傾斜面18を上昇し係止突起17とフック34との係合を解除する如く構成している。
【0024】
回動中枠50は、上方回動させた状態で前面に開口したドラム挿入口51よりドラム70の着脱が可能に構成している。図示例では、下面内周縁部に外周下向き段部52を、下面内周縁部に内周下向き段部53をそれぞれ周設した環状の頂板部54を備え、頂板部54の外周下向き段部52を、第1嵌合凹部14aを画成する容器本体10の周壁12及び区画壁13上面に嵌合載置させ、頂板部54の後部左右方向中央より軸着用凹部15内に垂設した回動軸55を、軸56を介して容器本体10に回動可能に軸着して容器本体10に対して開閉可能に連結している。回動軸55は、蓋体30の左側ボス33aと隣接して、左側軸56aにより容器本体10に軸着されている。また、蓋体30の右側ボス33bは右側軸56bにより容器本体10に別に軸着されている。
【0025】
また、頂板部54の両側及び後部から係止部57を垂設している。係止部57は、頂板部54の下面中央部より垂設した垂直板部58の下部より内方へ係止板59を突設し、ドラム挿入口51より挿入されたドラム70との周縁部上下を、各係止板59と頂板部54との間に挟持して嵌合係止する如く構成している。
【0026】
図示例では、係止部57は頂板部54の後部に一箇所、両側部にそれぞれ三箇所設けており、ドラム挿入口51の前部には設けていない。後部の係止部57は、後部左右方向中央部に垂設しており、また、左右の側部の係止部57は、それぞれドラム70を嵌合した際のドラム70の前後のコーナー該当部分とその中間部の三箇所にそれぞれ垂設しており、中間部のものは前後の長さを長く構成している。また、係止部57のうち両側前部のものの垂直板部58外面には、図6に示す如く、係合突起60を突設し、容器本体10に突設した係止突起19と乗り越え係合可能に構成して、回動中枠50を嵌合凹部14内に嵌合させた際に係止が可能に構成している。尚、この様な形態の係止部57の数は本例のものに限らず、ドラム70の嵌合係止が可能な構成であれば、頂板部54の後部と両側にいくつずつ設けてあっても良い。
【0027】
更に、頂板部54に、ドラム70を嵌合した回動中枠50を嵌合凹部14に嵌合した状態で、嵌合凹部14内外を連通する連通孔61を穿設している。この連通孔61の存在で、嵌合凹部14内からの回動中枠50の離脱を容易ならしめる。また、連通孔61の後方の頂板部54前部上面には指掛け用の突片62を立設して、回動中枠50を開く際に掴んで容易に開くことができる如く構成している。
【0028】
ドラム70は、底壁71周縁部より周壁72を起立して構成されており、ドラム挿入口51より挿入嵌合した際に、各係止板59と頂板部54の内周下向き段部53との間に周縁部が挟持され、また、周壁72外面が各垂直板部58内面と当接する如く構成している。
【0029】
また、ドラム70を回動中枠50に嵌合させて、それを嵌合凹部14内に嵌合させた際には、嵌合凹部14の前部左右方向中央部に立設した係止壁20後面に前面を嵌合する如く構成している。この係止壁20は、嵌合凹部14の前部に立設した頂板部54の高さより丈の短いもので、そのため、ドラム70を嵌合した回動中枠50の嵌合をより円滑容易に行える如く構成している。
【0030】
更にその際、嵌合凹部14中央部に突設した支持突部21上面にドラム70の下面を当接して安定したガタツキのない嵌合が行える如く構成している。
【0031】
固定中枠80は、環状の頂板部81下面より垂壁部82を垂設し、垂壁部82を第2嵌合凹部14b内に嵌合させるとともに、頂板部81を第2嵌合凹部14b周縁の容器本体周壁12及び区画壁13上面に嵌合載置させて装着しており、内部にパフ90を収納する。
【0032】
上記の如く構成した化粧用コンパクト容器1は、例えば閉蓋状態から押釦40を押し込んでフック34と係止突起17との係合を外して開蓋した後、パフ90を使ってドラム70内の化粧料を塗布することができる。ドラム70を交換する場合は、指掛け用の突片62を掴んで回動中枠50を上方に引き上げると、係止突起19と係合突起60との係合が外れて回動中枠50が上方に回動し、ドラム70を回動中枠50から取り外すことができる。ドラム70を取り外す場合は、例えば、ドラム70の上面及び下面を掴んで引き出すことで行える。その後図7に示す如く、前方のドラム挿入口51よりドラム70を押し込んで回動中枠50に嵌合させ、しかる後回動中枠50を下方へ回動して第1嵌合凹部14a内に回動中枠50を嵌合させることで新たなドラム70を装着できる。
【0033】
尚、上記した例では、容器本体10に回動中枠50の他にパフ90入りの固定中枠80を備えた例を説明したが、本発明では容器本体10に対して回動中枠50のみを装着したものであっても良く、また、同様構成の複数の回動中枠50を容器本体10に設けたものであって良い。複数の場合には同時に複数種類の化粧料の収納が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:化粧用コンパクト容器
10:容器本体
11…底壁、12…周壁、13…区画壁、14…嵌合凹部、14a…第1嵌合凹部、
14b…第2嵌合凹部、15…軸着用凹部、16…押釦収納凹部、17…係止突起、
18…傾斜面、19…係止突起、20…係止壁、21…支持突部
30:蓋体
31…周壁部、32…頂壁部、33…ボス、33a…左側ボス、33b…右側ボス、
34…フック、35…係止枠部、36…鏡
40:押釦
41…前板、42…底板、43…係止解除突起
50:回動中枠
51…ドラム挿入口、52…外周下向き段部、53…内周下向き段部、54…頂板部、
55…回動軸、56…軸、56a…左側軸、56b…右側軸、57…係止部、
58…垂直板部、59…係止板、60…係合突起、61…連通孔、
62…指掛け用の突片
70:ドラム
71…底壁、72…周壁
80:固定中枠
81…頂板部、82…垂壁部
90:パフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合凹部(14)を備えた容器本体(10)と、後部を容器本体(10)後部に回動可能に連結して嵌合凹部(14)内外を揺動可能に設けた回動中枠(50)と、容器本体(10)後部に後部を回動可能に連結して回動中枠(50)含む容器本体(10)上面を開閉可能に設けた蓋体(30)とを備え、回動中枠(50)は、上方回動させた状態で前面に開口したドラム挿入口(51)よりドラム(70)の着脱が可能に構成したことを特徴とする化粧用コンパクト容器。
【請求項2】
回動中枠(50)が、嵌合凹部(14)周縁部の容器本体(10)頂面上に外周縁下面を嵌合載置させる環状の頂板部(54)の両側及び後部から、垂直板部(58)の下部より内方へ係止板(59)を突設した係止部(57)を垂設し、ドラム挿入口(51)より挿入されたドラム(70)の周縁部上下を、各係止板(59)と頂板部(54)との間に挟持して嵌合係止する如く構成した請求項1記載の化粧用コンパクト容器。
【請求項3】
嵌合凹部(14)の前部に頂板部(54)の高さより丈の短い係止壁(20)を立設して、嵌合凹部(14)内に嵌合されたドラム(70)前面が当接係止される如く構成した請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の化粧用コンパクト容器。
【請求項4】
嵌合凹部(14)内底部に、収納されたドラム(70)の底面を支持する支持突部(21)を突設した請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化粧用コンパクト容器。
【請求項5】
頂板部(54)に、ドラム(70)を嵌合した回動中枠(50)を嵌合凹部(14)に嵌合した状態で、嵌合凹部(14)内外を連通する連通孔(61)を穿設した請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化粧用コンパクト容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−13456(P2013−13456A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146644(P2011−146644)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)