説明

化粧用シート体

【課題】湿潤状態や温度状態等を色によって表示できるようにし、適正な液体含浸量又は温度下で使用することができ、充分な美容効果及び心地よい温感又は冷感を確実に得ることができるようにする。
【解決手段】フェイスマスク10の表面における少なくとも一部において使用者が容易に視認できる程度の面積範囲に、湿潤状態又は温度状態によって可逆的に変色する呈色インク5を塗布した。使用者は、フェイスマスク10の使用時に、フェイスマスク10の所定の位置の表面色を視認することにより、フェイスマスク10の温度状態や湿潤状態が適正であるか否かを判別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔の皮膚に美容液を供給する際に、顔面に載置して使用されるウェットマスク等の化粧用シート体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、顔の皮膚に美容液を供給する際に使用される美容用具として、化粧用シート体であるフェイスマスクが使われている(例えば、特許文献1参照。)。また、フェイスマスクの使用方法として、美容液を含浸させる前又は含浸させた後に加熱又は冷却することにより、使用時に顔に温感又は冷感を与えることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
これらのフェイスマスクでは、皮膚に対する充分な美容効果及び心地よい温感又は冷感を与えるために、適量の美容液を含浸させるとともに、適温に維持しなければならない。
【特許文献1】特開2002−172022号公報
【特許文献2】特開2003−116957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフェイスマスクでは、使用時における美容液の含浸量が適量であるか否かや温度が適温であるか否かを表示できるようにしたものがなかった。このため、使用者がフェイスマスクに含浸させた美容液量に過不足を生じたり、包装袋から取り出された状態で長時間放置されたフェイスマスクにおける美容液の含浸量が蒸発によって不足する場合や、使用者が加熱又は冷却したフェイスマスクの温度が適温よりも高過ぎたり、低過ぎたりする場合があり、充分な美容効果及び心地よい温感又は冷感を確実に得ることができない問題がある。このような問題は、フェイスマスクだけでなく、美容液等の液体を含浸させたり、加熱又は冷却して使用される化粧用シート体に一般的に生じる。
【0005】
この発明の目的は、湿潤状態や温度状態等を色によって表示できるようにし、適正な液体含浸量又は温度下で使用することができ、充分な美容効果及び心地よい温感又は冷感を確実に得ることができる化粧用シート体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の化粧用シート体は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えたものである。
【0007】
(1)液体を含浸させて皮膚に載置される化粧用シート体において、状態に応じて変色する呈色インクを、表面に塗布したことを特徴とする。
【0008】
この構成においては、化粧用シート体の状態に応じて表面に塗布された呈色インクが変色する。したがって、表面の色から化粧用シート体の状態が判別される。
【0009】
(2)前記呈色インクは、温度に応じて変色することを特徴とする。
【0010】
この構成においては、化粧用シート体の温度状態に応じて表面に塗布された呈色インクが変色する。したがって、表面の色から化粧用シート体の温度が判別される。
【0011】
(3)前記呈色インクは、水分量に応じて変色することを特徴とする。
【0012】
この構成においては、化粧用シート体の水分量に応じて表面に塗布された呈色インクが変色する。したがって、表面の色から化粧用シート体の水分量が判別される。
【発明の効果】
【0013】
この発明の化粧用シート体は、以下の効果を奏するものである。
【0014】
(1)化粧用シート体の状態に応じて表面に塗布された呈色インクが変色することにより、表面の色から化粧用シート体の状態を判別することができ、使用時に使用の適否を正確に判断できる。
【0015】
(2)化粧用シート体の温度状態に応じて表面に塗布された呈色インクが変色することにより、表面の色から化粧用シート体の温度を判別することができ、使用時に適温状態であるか否かを正確に判断できる。
【0016】
(3)化粧用シート体の水分量に応じて表面に塗布された呈色インクが変色することにより、表面の色から化粧用シート体の水分量を判別することができ、使用時に適正な水分量であるか否かを正確に判断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、この発明の実施形態に係る化粧用シート体であるフェイスマスクを示す平面図である。この実施形態に係るフェイスマスク10は、一例として、人間の顔面に対応した略円形における口、鼻及び目に接触する部分に孔部2A〜2Cを形成し、鼻及び目に接触する部分に切込3Bを形成し、さらに、周囲の5箇所に切込3Aを形成したものである。切込3Aは、平面状のフェイスマスク10を複数の曲面によって構成される顔の皮膚に密着させるためのものである。また、孔部2A〜2C及び切込3Bは、美容水等を含浸したウェットマスク10を顔に被せた際に、視界を完全に塞ぐことがなく、かつ、自由に呼吸できるようにするためのものである。
【0018】
フェイスマスク10において、孔部2Cの下方で切込3Bの側方には、呈色インク5が塗布されている。呈色インク5及びその塗布位置については後述する。
【0019】
図2は、この発明の実施形態に係るフェイスマスクの製造工程を説明する図である。この発明の実施形態に係るフェイスマスクは、以下の工程によって形成される。まず、図2(A)に示すように、不織布、織布又は編布のシート体1から、打ち抜き加工によって孔部2(2A〜2C)及び切込3(3A,3B)を含むフェイスマスク10を打ち抜く。
【0020】
次に、図2(B)に示すように、シート体1から打ち抜かれたフェイスマスク10の表面の所定の位置に、一例として、ノズル6を介して呈色インク5を塗布する。呈色インク5は、温度状態又は湿潤状態に応じて可逆的に変色するインクである。
【0021】
この後、図2(C)に示すように、マスクシート4は、フェイスマスク10として、包装用袋に収納可能な大きさに折り畳まれた後、図2(D)に示すように、1枚ずつ又は所定枚数積層して包装シート7A及び7Bの間に挿入される。包装シート7A及び7Bは、両者の間にフェイスマスク10を挟持した状態で周縁部がシールされた後に、包装用袋7として切断される。
【0022】
呈色インク5が、温度状態に応じて変色する場合、一例として、25℃以下の温度のときに青色、45℃以上の温度ときに赤色になる。これによって、フェイスマスク10の表面がその温度によって変色し、使用者は表面色を視認することによってフェイスマスク10の温度を知ることができる。
【0023】
例えば、フェイスマスク10を顔に載置した時に冷感を得たい場合、表面が青色を呈するまでフェイスマスク10を冷却する。また、フェイスマスク10を顔に載置した時に温感を得たい場合、表面が赤色を呈するまで加熱する。
【0024】
呈色インク5が、湿潤状態に応じて変色する場合、フェイスマスク10がその含有水分量に応じて変色し、使用者は表面色を視認することによってフェイスマスク10の含有随分量知ることができる。これによって、使用者は、表面色を視認することによってフェイスマスク10に適量の美容液を過不足なく含浸させることができる。また、巣でに美容液を含浸させた状態フェイスマスク10を露出した状態で放置した場合に、美容液を補充すべきか否かを正確に判断することができる。
【0025】
呈色インク5は、必ずしもフェイスマスク10の表面の全面に塗布する必要はなく、少なくとも一部において使用者容易に視認できる程度の面積に塗布されていればよい。したがって、温度状態に応じて変色する呈色インク及び湿潤状態に応じて変色する呈色インクの両方をマスクシート4の表面における互いに異なる部分に塗布することもできる。
【0026】
フェイスマスク10の表面の一部に呈色インク5を塗布する場合、包装用袋7を開封した際にフェイスマスク10が折り畳まれている状態で外側に露出する位置であって、フェイスマスク10を拡げることなく視認できる位置に呈色インク5を塗布しておくことにより、使用前に温度状態や湿潤状態を素早く認識することができる。フェイスマスク10に美容液を含浸させたり加熱又は冷却する作業は、フェイスマスク10を折り畳んだ状態で行われるため、これらの作業を容易に行うことができる。
【0027】
なお、上記の実施形態では、フェイスマスクを例にあげて説明したが、液体を含浸させたり、加熱又は冷却して使用される他の化粧用シート体についても、この発明を同様に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施形態に係るフェイスマスクを示す平面図である。
【図2】上記フェイスマスクの製造工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
1 シート体
2 孔部
3 切込
5 呈色インク
7 包装用袋
10 ウェットマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を含浸させて皮膚に載置される化粧用シート体において、状態に応じて変色する呈色インクを、表面に塗布したことを特徴とする化粧用シート体。
【請求項2】
前記呈色インクは、温度に応じて変色することを特徴とする請求項1に記載の化粧用シート体。
【請求項3】
前記呈色インクは、水分量に応じて変色することを特徴とする請求項1に記載の化粧用シート体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−25847(P2006−25847A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204802(P2004−204802)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(592061810)株式会社ニチエイ (12)