説明

化粧用容器

【課題】容易にかつ確実に適量の化粧料を塗布面に供給することができる化粧用容器を提供する。
【解決手段】化粧用容器10は、容器20の内部に化粧料eが収納される容器20と、開口部23に装着されたポンプ部30と、ポンプ部30によって供給された化粧料eを塗布するための塗布具50とを備える。ポンプ部30は、上方に付勢された押下ヘッド部32と押下ヘッド部32の上下動により、容器20に収納されている化粧料eを吸い上げることができるシリンダ筒部31とを有する。塗布具50は、指fの腹面の一部のみと接触する押下面52を有し、指fによって押下ヘッド部32を上下動させるように、押下ヘッド部32に取り付けられた押下部、唇に接触可能な塗布面54、及び、押下ヘッド部32の上下動によってシリンダ筒部31によって吸い上げられた化粧料eを塗布面54に供給する流路部60を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、唇等の被塗布部に塗布する化粧用容器としては、粘性化粧料を収納する容器と、容器内において収納位置(下側)と最大突出位置(上側)との間を移動可能に配置された中皿と、容器の端部に設けられた化粧料の吐出量を調整するための回転体と、回転体の回転に応じて中皿を上下方向に移動させる上下動機構と、容器の先端に形成された分配口とを備えた回転タイプの化粧用容器が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。そのような回転タイプの化粧用容器は、回転体を左右に回転させることにより、中皿が上下動機構によって容器内を上下して、粘性化粧料を分配口から吐出し、かつ戻すことが可能であるとしている。
【0003】
そのような回転タイプの化粧用容器の利用者は、化粧料を利用者の唇に塗布する毎に、容器と回転体とを互いに相対的に回転させる回転操作を行うことによって、収納位置にある中皿を上方向(分配口側)に移動させて、分配口から吐出する化粧料の突出量を調整する。
しかし、中皿は、容器内において収納位置と最大突出位置との間を移動可能に容器内に設けられているにすぎないので、利用者が化粧料の突出量を十分に微調整することは難しい。
【0004】
また、利用者が化粧料の塗布作業をしている最中に、分配口からの化粧料の突出量が少なくなると、利用者は、化粧料の塗布作業を中断して、分配口からの化粧料の突出量が多くなるように、容器と回転体とを互いに相対的に回転させる必要がある。このため、利用者は、化粧料の塗布作業をしている最中に、化粧用容器を持つ位置を変えなければならないことがある。
【0005】
そこで、化粧料が収納された容器と、容器の内部に収納された化粧料を塗布面に供給する流路部を有する塗布具とを備えた化粧用容器が知られている(例えば、特許文献3参照)。
この塗布具は、図13及び図14に示すように、容器の開口部を塗布具110の装着口114に圧入して装着してから使用される。
利用者は、まず、容器の内部に収納された化粧料が装着口114及び流路115を介して塗布面111の中央に形成された吐出口112から出るように、容器の側面を押圧する。
次に、利用者は、適量が絞り出されたところで、容器を利用者の手のひらの内側に保持しつつ、指先(通常は、人差し指)を支持面113にあてがう。利用者は、塗布面111に絞り出された化粧料を、塗布面111を指先の替わりとして用いて、利用者の唇のような被塗布面に塗り広げる。このとき、利用者は、支持面113の凹曲面に指先の腹面がフィットするので、高い安定度で塗布をスムーズに行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−168745号公報
【特許文献2】特開2007−137827号公報
【特許文献3】特許4175661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3に記載の塗布具110を備えた化粧用容器は、所望の量の化粧料を塗布面111に絞り出すために必要な、容器の側面を押圧する押圧力を調整することが難しい構造を有するので、利用者が側面を押圧する毎に、適量の化粧料が塗布面111に絞り出されたか否かを目視で確認する必要がある。
また、塗布具110を備えた化粧用容器は利用者の指先の腹面を収容可能な曲面を有する支持面113を備えているので、支持面113の形状が利用者の指先の腹面にフィットしない場合、利用者は、高い安定度でかつスムーズに塗布を行うことが難しい。
【0008】
本発明の課題は、容易にかつ確実に適量の化粧料を塗布面に供給することができる化粧用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る化粧用容器は、開口部を有する容器であって前記容器の内部に化粧料が収納される容器と、前記開口部に装着されたポンプ部であって、上方に付勢された押下ヘッド部と前記押下ヘッド部の上下動により、前記容器に収納されている化粧料を吸い上げることができるシリンダ筒部とを有するポンプ部と、指の腹面の一部のみと接触する押下面を有し、前記指によって前記押下ヘッド部を上下動させるように、前記押下ヘッド部に取り付けられた押下部、被塗布面に接触可能な塗布面、及び、前記押下ヘッド部の上下動によって前記シリンダ筒部によって吸い上げられた化粧料を前記塗布面に供給する流路部を有する塗布具と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容易にかつ確実に適量の化粧料を塗布面に供給することができる化粧用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る化粧用容器の第1実施形態の一部を省略した正面図である。
【図2】図1に示した化粧用容器の塗布具の斜視図である。
【図3】図1に示した化粧用容器の一部を省略した上面図である。
【図4】図1に示した化粧用容器の使用状態を説明する断面図である。
【図5】図1に示した化粧用容器の使用状態を説明する斜視図である。
【図6】図1に示した化粧用容器の別の使用状態を説明する斜視図である。
【図7】本発明に係る化粧用容器の第2実施形態の断面図である。
【図8】本発明に係る化粧用容器の第3実施形態の断面図である。
【図9】本発明に係る化粧用容器の第4実施形態の断面図である。
【図10】本発明に係る化粧用容器の他の実施形態の塗布具の斜視図である。
【図11】本発明に係る化粧用容器のさらに他の実施形態の塗布具の斜視図である。
【図12】本発明に係る化粧用容器のさらに他の実施形態の塗布具の斜視図である。
【図13】従来の化粧用容器の塗布具の一例を示す斜視図である。
【図14】図13に示す化粧用容器の塗布具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1から図6を参照して、本発明に係る第1実施形態の化粧用容器10の説明をする。
図1に示すように、化粧用容器10は、容器20と、容器20の内部の化粧料e(図4参照)を供給するポンプ部30と、ポンプ部30を容器20に取り付けるキャップ部40と、ポンプ部30によって供給された化粧料eを塗布するための塗布具50と、塗布具50を取り外し可能に覆うカバー部70とを備える。以下の化粧用容器10の説明では、ポンプ部30の押下ヘッド部32がシリンダ筒部31に対して上下動する方向を上下方向Xとする。
【0013】
容器20は、化粧料eを収納することができるように、円筒部21と、円筒部21の一端に形成された底部24と、円筒部21の他端に形成された開口部23とを有する。
円筒部21の内周面22は、円盤形状の中皿27が内周面22内を摺動することができるような円筒側面形状を有する。
底部24には、円筒部21の内周面22と中皿27と底部24とにより形成される空間に容器20の外部の空気が通る空気抜き穴25が形成されている。このため、中皿27が内周面22内を上下方向Xに摺動すると、空気は、空気抜き穴25を介してその空間に入ったり、その空間から出たりする。
開口部23は円筒形状を有する。開口部23の内周面23aは、円筒部21の内周面22につながっている。開口部23の外周面には、キャップ部40と螺合するネジ部26が形成されている。
【0014】
ポンプ部30の種類は、容器20の内部に収納されている化粧料eを吸い上げることができれば、特に限定されるものではない。ポンプ部30の種類は、例えば、高粘度の化粧料をワンプッシュで吐出するという観点からは、高粘度ポンプシステム(High Viscosity Dispenser)であることが好ましい。ポンプ部30は、キャップ部40を介して容器20の開口部23に取り付けられる円筒形状のシリンダ筒部31と、シリンダ筒部31の内側に配置された圧縮コイルバネ33と、シリンダ筒部31の内部に挿通された押下ヘッド部32とを有する。
シリンダ筒部31の一端には、容器20の内部に充填された化粧料eを吸い込むための吸い込み口34が形成されている。
【0015】
押下ヘッド部32は、円筒形状を有し、圧縮コイルバネ33によって上下方向Xにおいて容器20から離れる方向に付勢された状態でシリンダ筒部31に差し込まれている。押下ヘッド部32は、圧縮コイルバネ33によって付勢された状態で、ストロークS(図4参照)だけ上下方向Xに上下動できるように、シリンダ筒部31に差し込まれている。押下ヘッド部32の端部には、押下ヘッド部32の上下動によって、シリンダ筒部31の吸い込み口34から吸い込まれた化粧料eが吐き出される吐出口35が形成されている。
【0016】
キャップ部40は、円筒本体部41aと、円筒本体部41aの外径よりも小さい外径を有する円筒本体部41bとを有する。
円筒本体部41aにおいて、ポンプ部30側の端部には、凹部42が形成されている。凹部42の側面には、開口部23のネジ部26と螺合するネジ溝部42aが形成されている。凹部42の底面52bには、凹部42のネジ溝部42aと開口部23のネジ部26とが螺合した状態において、開口部23の開口と凹部42の底部とが密閉状態になるように、リング状のシール49が配置されている。凹部42の底部には、ポンプ部30のシリンダ筒部31の端部が堅固に取り付けられている。
円筒本体部41bにおいて、ポンプ部30側とは反対側の端部には、凹部44が形成されている。凹部44の底部の中心には、円筒本体部41aの凹部42の底部に開口する、上下方向Xに延びる貫通孔43が形成されている。貫通孔43には、押下ヘッド部32の端部が挿通されている。円筒本体部41bの凹部44は、塗布具50の端部に形成された鍔部57の外径よりも大きい開口を有する。
【0017】
図1及び図2に示すように、塗布具50は、円筒形状の本体部51と、本体部51の一端部に一体的に形成された鍔部57と、本体部51の一端部に形成された押下ヘッド部32の端部が嵌入される嵌入穴56と、本体部51の他端部に形成された溝部53と、本体部51の他端部において、溝部53とは反対側に形成された塗布面54と、本体部51の内部に形成され、嵌入穴56に連通し、塗布面54に開口している吐出開口55aを有する貫通孔55からなる流路部60とを備える。
図3に示すように、本体部51の外径は、円筒本体部41bの外径よりも小さい。本体部51の外径は、一般的な利用者の人差し指fの幅よりも小さいことが好ましい。
【0018】
図1に示すように、溝部53は、一対の側面(一対の側面のうちポンプ部30側と反対側は側面52a)と底面52bにより形成され、上下方向Xに対して直角の方向(図1において紙面に直角の方向)に延びている。図4に示すように、一対の側面の間隔は、利用者の人差し指fの指先が挿入可能な寸法であることが好ましい。一対の側面のうちポンプ部30側の側面は、人差し指f(図5参照)の腹面の一部のみと接触する押下面52とされる。したがって、本体部51は、押下ヘッド部32に取り付けられた押下部の機能を有する。
溝部53は、利用者の人差し指fの先端が接触する底面52bを有するので、利用者は、人差し指fの先端を溝部53の底面52bに当てることにより、人差し指fを容易にかつ確実に押下面52に位置することができる。
【0019】
図2に示すように、塗布面54は、本体部51に形成されており、また、塗布具50の本体部51において押下面52(溝部53)とは反対側に形成されている。塗布面54は、利用者の唇g(図5参照)のような被塗布面に接触可能な外側に凸の曲面状に形成されている。曲面状の塗布面54の中央には、流路部60を構成する貫通孔55の吐出開口55aが形成されている。塗布面54は、利用者が手鏡等を介して、化粧料e1が唇gに付着している状態を視認できるように、透明度の高い透過性材料で形成されていることが好ましい。
【0020】
図1に示すように、流路部60は本実施形態では貫通孔55のみで構成されている。貫通孔55は、押下ヘッド部32の上下動によってシリンダ筒部31によって吸い上げられた化粧料を塗布面54に供給するように、本体部51の内部に形成されている。したがって、本実施形態では、塗布具50は、本体部51の一部である押下部、塗布面54及び流路部60は、互いに一体的に形成されているので、押下部、塗布面54及び流路部60を一体成形によって容易に製造することができる。
【0021】
カバー部70は、塗布具50を収納可能な大きさの内周面72を有する円筒形状の本体部71と本体部71の一端部に一体的に形成された端面部73とを有する。本体部71の他端部は、キャップ部40の円筒本体部41bの外周面に嵌入可能な開口とされている。したがって、本体部71の内周面72が塗布具50の塗布面54に非接触状態となるように、かつ、塗布具50の塗布面54にゴミ等が付着しないように、本体部71の他端部をキャップ部40の円筒本体部41bの外周面に嵌入することができる。
【0022】
以上の化粧用容器10は、以下のようにして用いられる。
図4に示すように、容器20の内部には化粧料eが充填される。化粧料eは、ポンプ部30のシリンダ筒部31の吸い込み口34に達するように、円筒部21の内周面22において、中皿27よりも、ポンプ部30側に充填される。
【0023】
図5に示すように、利用者は、カバー部70をキャップ部40から取り外し、塗布具50の塗布面54を露出させる。次に、利用者は、例えば、人差し指以外の指で容器20を保持しつつ、人差し指fの腹面の一部が押下面52に接触するように、人差し指fの先端を溝部53に差し込む。このとき、人差し指fの先端は、溝部53の底面52bに接触していてもよい。
本体部51の押下面52は、溝部53においてポンプ部30側の側面なので、押下面52は、上下方向Xに対して概ね直角の方向に向いている。したがって、人差し指fの腹面は、人差し指fが本体部51すなわち押下部(押下面52)を押しやすいように、上下方向Xに対して直角の方向に向く。
【0024】
また、本体部51には、溝部53の底面52bの周囲を完全に囲む壁が形成されていないので、本体部51の外径が人差し指fの幅よりも小さくても、図3に示すように、人差し指fの先端の両端が溝部53からはみ出る。このため、人差し指fの先端が溝部53に確実に差し込むことができる。
また、人差し指fの爪に付け爪等を施している場合は、図6に示すように、人差し指fの第1関節と爪との間を溝部53に差し込むことができる。
【0025】
図4に示すように、利用者は、押下面52が上下方向Xに上下動するように、押下面52を何度も押すことができる。これにより、押下ヘッド部32が上下方向Xにおいて上下動され、シリンダ筒部31が容器20に充填されている化粧料eを吸い込み、吸い込んだ化粧料eは、吐出口35及び流路部60を構成する貫通孔55を介して、吐出開口55aから塗布面54に吐出される。塗布面54に吐出された化粧料e1は、塗布面54において吐出開口55a及びその周囲に付着する。このとき、塗布面54と押下面52とが一体的に形成されているので、塗布面54は、押下面52と共に上下方向Xに上下動する。
【0026】
図5に示すように、利用者は、容器20を人差し指f以外の指でしっかり押さえつつ、人差し指fの腹面が押下面52に接触している状態を維持しながら、塗布面54を唇gに接触させて、塗布面54に付着した化粧料e1を唇gに塗る。つまり、塗布具50の後側に人差し指fが常に位置しているので、人差し指fで塗布面54を正確に唇gの所望の位置に向けることができる。このように、塗布具50において塗布面54とは反対側に人差し指fが常に位置している状態で唇gに化粧料e1を塗る塗り方と、利用者が従来使用している回転タイプの化粧用容器を用いた塗り方とが同じであるので、利用者は、化粧用容器10を従来の回転タイプの化粧用容器と同様に、唇gに化粧料e1を塗布することができる。
【0027】
化粧用容器10はポンプ部30を備えているので、化粧料eが高粘度の内容物であっても、塗布具50の一部である押下部を上下方向Xに上下動させるだけで、容器20の内部に充填された化粧料eは、ポンプ部30の作動により、ほぼ確実に塗布面54に供給される。
【0028】
利用者が塗布面54に化粧料e1を補充する場合、利用者は、容器20を持ち替えることなく、押下面52がポンプ部30側に移動するように、人差し指fを曲げて、押下面52を押下するだけでよい。つまり、片手で化粧料eを塗布面54に補充することができる。このため、化粧用容器10を持っている手とは反対の手に、例えば、手鏡を持ったまま、塗布面54に化粧料eを補充することができる。
【0029】
シリンダ筒部31に対する押下ヘッド部32の変位量はストロークSと定まっているので、利用者が押下面52を一回押下することにより、塗布面54に吐出される化粧料e1の量は、略一定となる。このため、利用者は、塗布面54に補充された化粧料e1の量を確認しなくてもよい。
【0030】
容器20に充填されている化粧料eがポンプ部30によって吸い込み口34から吸い込まれると、容器20に充填されている化粧料eの量が減るので、中皿27が容器20の内周面22を摺動しながらポンプ部30側に移動する。このため、中皿27は、容器20に充填されている化粧料eが少量になっても、化粧料eがポンプ部30の吸い込み口34の周囲に集まっているので、化粧料eが容器20内に残る量は少ない。また、容器20内の化粧料eをポンプ部30によって吸い込んでいるので、容器20内の化粧料eの多くを効率よく塗布面54に供給することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図7を参照して、本発明に係る第2実施形態の化粧用容器10aの説明をする。第2実施形態の化粧用容器10aでは、第1実施形態の化粧用容器10と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図7に示すように、キャップ部40aは、円筒本体部41bの円周側面の一部から、ポンプ部30とは反対方向に延在しているリブ部63を有する。
リブ部63の先端は、利用者の唇gになめらかに接触する塗布面64が形成されている。リブ部63において、塗布面64とは反対側に凹面状の側面66が形成されている。また、塗布面64は外側に凸状の曲面を有している。
【0033】
塗布面64の中央には、上下方向Xに延びるスリット65が形成されている。スリット65の位置は、第1実施形態の吐出開口55aと略同じ位置であることが好ましい。
【0034】
塗布具50aは、本体部51の端部に形成されている溝部53の一対の側面のうち押下面52とは反対側の側面(第1実施形態の側面52a)が省略されている。本実施形態では、上下方向Xに直角の方向に延び、塗布具50aを横切る溝部53aは、押下面52と側面66と底面52bとによって形成されている。
また、本体部51に形成された貫通孔55の端部には、吐出パイプ55bが嵌入されている。吐出パイプ55bの外径は、吐出パイプ55bの先端がスリット65内に位置し、また、吐出パイプ55bの先端がスリット65内を上下方向Xに移動できるように、スリット65の幅より小さくされている。吐出パイプ55bの先端は、塗布面64の近傍に位置しているので、吐出開口として機能し、貫通孔55及び吐出パイプ55bは、流路部60を構成する。また、吐出パイプ55bは、押下面52の押下に伴って、上下方向Xに上下動する。
【0035】
以上の化粧用容器10aの本体部51は、押下ヘッド部32に取り付けられており、また、押下ヘッド部32を上下方向Xに上下動させるように、押下面52の押下に伴ってリブ部63に対して上下動する。したがって、本体部51は、押下部として機能する。
また、塗布面64は、押下部の一部を構成する押下面52が塗布面64に対して上下動するように、開口部23を介して容器20に取り付けられていることになる。このため、押下面52が上下動しても、塗布面64は押下面52と共に上下動しないので、利用者は、安定して塗布面64を被塗布面である唇gに向けることができる。
【0036】
化粧用容器10aは、塗布面64と押下面52とが連動しない構成を有しているので、塗布面64と押下面52を構成する押下部とを互いに異なる素材で形成することができる。このため、例えば、塗布面64が利用者の唇等の肌に接触する際に感じる接触性や、塗布面64に塗布された化粧料を利用者の唇等の肌に塗る塗り心地性等の使用感を向上させるように、塗布面64の素材のみをエラストマー等、押下面52の素材より柔らかい素材で形成することができる。
また、塗布面64のみに、押下面52よりも高度な表面加工を容易に施すことが可能である。例えば、図10に示す塗布面54dの吐出開口55aから上下方向Xに延びる液だめ溝55dを図7の塗布面64に形成する作業性を向上させることができる。
【0037】
(第3実施形態)
図8を参照して、本発明に係る第3実施形態の化粧用容器10bの説明をする。第3実施形態の化粧用容器10bでは、第1実施形態の化粧用容器10や第2実施形態の化粧用容器10aと同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0038】
図8に示すように、キャップ部40bは、円筒本体部41bの円周側面の一部から、ポンプ部30とは反対方向に延在しているリブ部63を有する。
リブ部63の先端は、利用者の唇gになめらかに接触するような塗布面64が形成されている。塗布面64の中央には、第1実施形態と同じ形状である吐出開口55aが形成されている。
塗布具50bの本体部51に形成された貫通孔55の端部には、伸び縮みしやすいゴムのような弾性を有する連結チューブ58が嵌合されている。連結チューブ58の他方は、リブ部63に形成された貫通孔65bに嵌入されている。貫通孔65bの塗布面64側の開口は、吐出開口55aとされる。したがって、貫通孔55、連結チューブ58及び貫通孔65bは流路部60を構成する。塗布具50bが上下方向Xに上下動して、貫通孔55の端部と吐出開口55aとの間の距離が大きくなっても、連結チューブ58が弾性変形して伸びるので、連結チューブ58の両端は、それぞれ、貫通孔55及び貫通孔65bに接続した状態を維持する。
【0039】
また、塗布面64に、図7に示すスリット65のような隙間が形成されないので、塗布面64に吐出された化粧料が、塗布面64とは反対側に凹面状の側面66に流れ込まない。
また、塗布面64と押下面52とは、別体であるので、両者の材質を化粧用容器の用途に応じて互いに異なるものにすることができる。
【0040】
また、図示はしないが、塗布面64及び押下面52の一方の材質を弾性変形可能な程度に柔らかい材質で形成し、その一方に弾性変形可能なチューブ状の接続部を形成し、形成されたチューブ状の接続部を他方に接続させてもよい。このようにすることで、弾性変形可能なチューブ状の接続部を連結チューブ58の代わりとすることができる。このようにすることにより、化粧用容器の部品数を削減することができる。
【0041】
以上の化粧用容器10bの本体部51は、押下ヘッド部32に取り付けられており、また、押下ヘッド部32を上下方向Xに上下動させるように、押下面52の押下に伴ってリブ部63に対して上下動する。したがって、本体部51は、押下部として機能する。
また、キャップ部40bの塗布面64は開口部23を介して容器20に取り付けられているので、押下面52が塗布面64に対して上下動しても、塗布面64は押下面52と共に上下動しない。このため、利用者は、安定して塗布面64を被塗布面である唇gに向けることができる。
【0042】
(第4実施形態)
図9を参照して、本発明に係る第4実施形態の化粧用容器10cの説明をする。第4実施形態の化粧用容器10cでは、第1から第3実施形態の化粧用容器10、10a、10bと同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
図9に示すように、塗布具50cの本体部51aには、リブ部63の側面66側に出っ張っている凸部51bが形成されている。凸部51bの頂部には貫通孔55の端部が開口している。キャップ部40cのリブ部63の側面66には、凸部66aが、凸部51bと凸部66aとが互いの先端が互いに向き合うように、形成されている。凸部66aの頂部には、貫通孔66bの一方が開口されている。貫通孔66bの他方は塗布面64に開口し、その開口は吐出開口55aとされている。凸部51b及び凸部66aには、それぞれ、伸び縮みしやすいゴムのような弾性を有する連結チューブ58aの両端が、連結チューブ58aの両端近傍の内側が凸部51b及び凸部66aの外側に接触するように、嵌合されている。したがって、貫通孔55、連結チューブ58a及び貫通孔66bは流路部60を構成する。
塗布具50cが上下方向Xに上下動して、凸部51bと凸部66aとの間の距離が大きくなっても、連結チューブ58aが弾性変形して伸びるので、連結チューブ58aの両端は、それぞれ、貫通孔55及び貫通孔66bに接続した状態を維持する。
【0043】
以上の化粧用容器10cの本体部51aは、押下ヘッド部32に取り付けられており、また、押下ヘッド部32を上下方向Xに上下動させるように、押下面52の押下に伴ってリブ部63に対して上下動する。したがって、本体部51aは、押下部として機能する。
また、キャップ部40cのリブ部63の塗布面64は開口部23を介して容器20に取り付けられているので、押下面52が塗布面64に対して上下動しても、塗布面64は押下面52と共に上下動しない。このため、利用者は、安定して塗布面64を被塗布面である唇gに向けることができる。
【0044】
(他の実施形態)
図10から図12を参照して、本発明に係る化粧用容器の他の実施形態の塗布具の説明をする。塗布具の塗布面及び開口部は図1から図9に示す形状には限定されるものではなく、化粧料eの種類、性状等に応じて、適宜選択することができる。
図10に示すように、塗布具50dの塗布面54dは、第1実施形態の塗布具50の塗布面54よりも幅が狭い。また、塗布具50dの塗布面54dには、流路部60から吐出された化粧料eが溜まるように、吐出開口55aから上下方向Xに延びる液だめ溝55dが形成されている。液だめ溝55dは、例えば、吐出開口55aから離れるに従って浅くなるテーパー形状を有する。この場合、テーパー形状の吐出開口55aは、塗布面54dに付着した化粧料が溜まる液だまり部として機能する。
液だめ溝55dは、図10に示すように、容器20(鍔部57)から離れる側に延びるように形成しているが、容器20(鍔部57)に近づく側に延びるように形成してもよいし、容器20から離れる側及び近づく側に延びるように形成してもよい。
図示はしないが、吐出開口55aの形状は、円形状や楕円形状であったり、少しずつ浅くなるようなテーパー形状であったりしてもよい。
容器20の内部に充填される化粧料eがコンシーラーやネイルといった細かい部分に塗布する用途に用いられる化粧料である場合、塗布具の塗布面は、例えば、図10に示すように、上下方向Xに延びる細い形状の塗布面54dとしたり、図11に示すように、面積が第1実施形態の塗布具50の塗布面54よりも小さい塗布面54eとしたりしてもよい。また、図12に示すように、吐出開口55eの位置を、第1実施形態の塗布具50の吐出開口55aよりも塗布面54の先端に近い位置に配置してもよい。
容器20に充填された化粧料eの種類に応じて、塗布面54、64、54d、54eには、例えば、フロッキー加工を施してもよい。
【0045】
以上の説明から明らかなように、化粧用容器はポンプ部を備えているので、化粧料が高粘度の内容物であっても、押下部を上下動させるだけで、ポンプ部の作動により、ほぼ確実に塗布面に供給することができる。したがって、化粧用容器は、容易にかつ確実に適量の化粧料を塗布面に供給することができる。
【0046】
塗布具は、押下ヘッド部が上下動する上下方向に直角の方向に延び、押下ヘッド部を横切る溝部を有し、押下面は、溝部の一部である場合、押下面は、利用者の指によって押下面を上下動させやすい形状を有することになるので、利用者は、塗布面に化粧料を補充する場合、容器を持ち替えることなく、押下面がポンプ部側に移動するように、人差し指を曲げて、押下面を押下するだけでよい。このため、化粧用容器を持っている手とは反対の手に、例えば、手鏡を持ったまま、塗布面に化粧料を補充することができる。
【0047】
塗布面は、塗布面の所定の箇所に開口する吐出開口を有し、流路部は、吸い上げられた化粧料を、吐出開口を介して、塗布面に供給するようにした場合、塗布面に吐出された化粧料は、吐出開口及びその周囲に付着するので、利用者は、付着した化粧料を塗布面の全体を用いて、利用者の被塗布面に塗布することができる。
【0048】
塗布面は、塗布具の、押下面とは反対側に形成されている場合、塗布面は、塗布具を間において、利用者の指がある位置とは反対側に位置する。つまり、利用者は、容器を押下面に接触する指以外の他の指でしっかり押さえつつ、指の腹面が押下面に接触している状態を維持しながら、塗布面を利用者の被塗布面に接触させて、塗布面に付着した化粧料を被塗布面に容易に塗ることができる。
【0049】
押下部、塗布面及び流路部は、互いに一体的に形成されていてもよいし、塗布面は、押下部が塗布面に対して上下動するように、開口部に取り付けられていてもよい。押下部、塗布面及び流路部が互いに一体的に形成されていれば、押下部、塗布面及び流路部を一体成形によって安価に製造することができる。また、塗布面は、押下部が塗布面に対して上下動するように、開口部に取り付けられていれば、塗布面は開口部を介して容器に取り付けられていることになる。このため、押下部が上下動しても、塗布面は押下部と共に上下動しないので、利用者は、安定して塗布面を被塗布面に向けることができる。
【0050】
塗布面は透明度の高い透過性材料で形成されていてもよい。この場合、利用者は、塗布面と被塗布面との間の状況を視認することができる。
【0051】
塗布面は曲面を有するようにしてもよい。これにより、塗布面は利用者にとって被塗布面に塗布しやすい形状となる。
【0052】
塗布面には、流路部から吐出された化粧料が溜まるように、吐出開口から上下方向に延びる液だめ溝が形成されていてもよい。これにより、流路部から吐出された少量の化粧料は、液だめ溝に溜まり、塗布面からこぼれにくくすることができる。また、この液だめ溝に化粧料を溜めておいて、液だめ溝に溜めておいた化粧料を被塗布面に一旦塗布しその塗布された化粧料を塗布面で広げながら使うこともできる。
【0053】
塗布具50、50a、50b、50c、50d、50e、50fの材質としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ニトリルゴム、ブチルゴム等の合成ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)等の熱可塑性エラストマー、シリコン、ポリウレタン、HDPE・MDPE・LDPE・LLDPE等のポリエチレン(PE)、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、PET・PCT・PCTA等のポリエステル樹脂、メタクリル酸エステル重合体等のアクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等を使用することができる。
第1実施形態における塗布具50は、硬すぎず柔らかすぎずという素材が好ましい。この場合、塗布具50の塗布面54の近傍の硬さは、塗布面54の近傍を肉薄にすること等により調節することが好ましい。
第2から4実施形態における塗布面64や連結チューブ58、58aの材質としては、熱可塑性エラストマーやポリアミド樹脂、シリコン等の柔らかい素材が好適である。塗布具50a、50b、50cの本体部51の材質としては、ABS、PP、AS等の比較的硬めの材質が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る化粧用容器は、リップグロス、リップエッセンス、美容液、リキッドファンデーション、コンシーラー、ネイルカラー、アイブロウカラー、リキッドチーク、リキッドアイシャドーとして好適に用いられる。特に、本発明に係る化粧用容器は、容易にかつ確実に適量の化粧料を塗布面に供給することができるため、リップグロスやリップエッセンス等唇に塗布する液体化粧料に適用することが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
X 上下方向
e、e1 化粧料
f 人差し指
g 利用者の唇
10、10a、10b、10c 化粧用容器
20 容器
21 円筒部
23 開口部
27 中皿
30 ポンプ部
31 シリンダ筒部
32 押下ヘッド部
33 圧縮コイルバネ
40、40a、40b、40c キャップ部
50、50a、50b、50c、50d、50e、50f 塗布具
51、51a 本体部
52 押下面
53、53a 溝部
54、54d、54e、64 塗布面
55 貫通孔(流路部)
55a、55e 吐出開口
55b 吐出パイプ(流路部)
55d 液だめ溝
58、58a 連結チューブ(流路部)
60 流路部
65b 貫通孔(流路部)
66a 凸部
66b 貫通孔(流路部)
70 カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器であって前記容器の内部に化粧料が収納される容器と、
前記開口部に装着されたポンプ部であって、
上方に付勢された押下ヘッド部と前記押下ヘッド部の上下動により、前記容器に収納されている化粧料を吸い上げることができるシリンダ筒部とを有するポンプ部と、
指の腹面の一部のみと接触する押下面を有し、前記指によって前記押下ヘッド部を上下動させるように、前記押下ヘッド部に取り付けられた押下部、被塗布面に接触可能な塗布面、及び、前記押下ヘッド部の上下動によって前記シリンダ筒部によって吸い上げられた化粧料を前記塗布面に供給する流路部を有する塗布具と、を備える、化粧用容器。
【請求項2】
前記塗布具は、前記押下ヘッド部が上下動する上下方向に直角の方向に延び、前記塗布具を横切る溝部を有し、
前記押下面は、前記溝部の一部である、請求項1に記載の化粧用容器。
【請求項3】
前記塗布面は、前記塗布面の所定の箇所に開口する吐出開口を有し、
前記流路部は、吸い上げられた化粧料を、前記吐出開口を介して、前記塗布面に供給する、請求項1又は2に記載の化粧用容器。
【請求項4】
前記塗布面には、前記流路部から吐出された化粧料が溜まるように、前記吐出開口から前記押下ヘッド部が上下動する上下方向に延びる液だめ溝が形成されている、請求項3に記載の化粧用容器。
【請求項5】
前記塗布面は、前記塗布具の、前記押下面とは反対側に形成されている、請求項1から4のいずれかに記載の化粧用容器。
【請求項6】
前記押下部、前記塗布面及び前記流路部は、互いに一体的に形成されている、請求項1から5のいずれかに記載の化粧用容器。
【請求項7】
前記塗布面は、前記押下部が前記塗布面に対して上下動するように、前記開口部に取り付けられている、請求項1から5のいずれかに記載の化粧用容器。
【請求項8】
前記塗布面は透過性材料で形成されている、請求項1から7のいずれかに記載の化粧用容器。
【請求項9】
前記塗布面は曲面を有する、請求項1から8のいずれかに記載の化粧用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−143355(P2012−143355A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3196(P2011−3196)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)