説明

化粧用部材の可動機構

【課題】化粧料容器本体内への化粧用部材の収納性を確保しつつ、収納部の軸線方向に対する位置関係を無段階に調整し、その位置で留めるものとして、簡易且つ正確に作業できるようにする。
【解決手段】キャップ7内において固持する固持軸10に形成される保持部11先端と、該固持軸10の貫通孔10b内を進退機構12により進退自在となる進退軸13先端とでブラシ体14を保持するものとすることで、進退軸13を固持軸10内より突出又は収納させることで固持軸10の軸線方向に対するブラシ体14の位置関係を無段階に調整し、その位置で留めることができるので、化粧料容器本体内へ固持軸及びブラシ体を円滑、且つ容易に収納させつつ、マスカラを簡易且つ正確に塗布することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、被保持部材、例えばマスカラ等の液体化粧料、ファンデーション等の粉状化粧料、アイシャドウ等の固形化粧料(以下、「化粧料」という。)を塗布する他、マスカラの塗布前後において睫毛を梳かすブラシ体、ローラー体又は櫛体(以下、「化粧用部材」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マスカラを塗布するために使用する塗布具において、蓋本体と一体となる塗布軸の先端において、該塗布軸の軸線方向に沿って化粧用部材に相当する塗布ブラシが形成されているものがある。すなわち、上記塗布具では、塗布軸と塗布ブラシとは、その軸線方向が一致するように保持されているものである(特許文献1参照)。
【0003】
そのため、例えば液体化粧料収納容器を構成する容器本体内に該塗布ブラシを収容し、又容器本体内から該塗布ブラシを取り出すにあたっては、該塗布ブラシを容器本体に対して直線的に挿脱するだけで円滑、且つ容易に行うことができるものである。
【0004】
しかしながら、塗布軸と塗布ブラシとの軸線方向が一致するように保持されていると、放射状に生えている睫毛に対してマスカラを塗布する場合には、睫毛の生えている方向に合わせて持ち手を少しずつ動かすことで、塗布ブラシの角度を少しずつ変えながら何回も塗布しなけらばならないので非常に煩雑な作業となるものである。その上、塗布ブラシの角度を誤ると塗布軸が瞼や頬に接触してしまい、肌を汚損するおそれがある。
さらに、上記マスカラの塗布作業は利き手側では正確に行い易いものであるが、利き手ではない側では鼻が邪魔になってしまい、正確にマスカラの塗布を行えないものである。
また、睫毛をカールさせるにあたっては、塗布ブラシで睫毛を持ち上げるようにするが、塗布ブラシが塗布軸の先端に保持されていると、持ち手の微妙な震えが塗布ブラシに伝達して大きくなり、正確に睫毛を持ち上げることができなくなるおそれがある。
【0005】
さらに、睫毛においてより広範囲の部分に対して一度に塗布することができるように塗布ブラシを軸線方向に湾曲させると、液体化粧料収納容器を構成する収納筒内に収納し難くなるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−8729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、化粧用部材の収納性を確保しつつ、簡易且つ正確に化粧料を塗布し、又は睫毛を梳かすことができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の特徴として、
収納部と、該収納部より突出、収納自在となる進退軸と、該収納部先端に形成される保持部と、化粧用部材とから構成され、
該収納部では、進退軸を内外へ突出、収納自在とする進退機構を内装し、
該進退軸では、その先端を折曲自在とし、
該保持部では、その先端を折曲自在とし、
該進退軸先端と、保持部先端とで化粧用部材を保持してなるものであり、
また、第2の特徴として、
収納部と、該収納部に固持される中空の固持軸と、該固持軸より突出、収納自在となる進退軸と、該固持軸先端に形成される保持部と、化粧用部材とから構成され、
該収納部では、後述する進退軸を中空の固持軸内外へ突出、収納自在とする進退機構を内装し、
該進退軸では、その先端を折曲自在とし、
該保持部では、その先端を折曲自在とし、
該進退軸先端と、固持軸の保持部先端とで化粧用部材を保持してなるものである。
【0009】
そのため、収納部に内装される進退機構を操作することで、収納部又は該収納部に固持される固持軸内の進退軸は前進又は後退して収納部又は固持軸内外へ突出、収納自在となるものである。
すなわち、該進退機構により進退軸が前進すると、該進退軸は収納部又は固持軸外へ突出するものである。
ここで、該進退軸の先端と、収納部又は固持軸に形成される保持部先端とで化粧用部材を保持しているので、進退軸と保持部とは化粧用部材を介して一体に連結されて連動するようになるが、保持部自身は収納部又は固持軸軸線方向へは延伸することはないものである。
そのため、進退軸は、その先端を内側に折曲しながら収納部又は固持軸外へ湾曲しつつ突出するとともに、収納部又は固持軸に形成される保持部は、その根元を外側に折曲し、さらに該保持部先端は外側へ折曲するものとなる。
すなわち、進退軸先端と、収納部又は固持軸に形成される保持部先端とで保持される化粧用部材は、収納部又は固持軸の軸線方向に対する位置関係を徐々に変化させ、且つその状態で留めることができるようになるものである。すなわち、進退軸の突出量を調整することで、当初収納部又は固持軸の軸線方向に沿って位置している化粧用部材は最終的に収納部又は固持軸の軸線方向に対して直交する位置にまで無段階に調整され、しかもその位置関係を保持しながら化粧用部材を留めることができるものである。
その結果、容器本体内へ円滑、且つ容易に収納することができるとともに、化粧用部材を使用部分及び作業用途に合わせて最適な位置関係に調整して、簡易且つ正確に化粧料を塗布し、又は睫毛を梳かすことができるものである。
【0010】
また、該進退機構を操作することで進退軸を後退させると、該進退軸は収納部又は固持軸内へ収納されるものである。
そして、上述のように進退軸と保持部とは化粧用部材を介して一体に連結されて連動するようになっているので、進退軸は、その先端を外側へ折曲しながら収納部又は固持軸内へ収納されるとともに、収納部又は固持軸に形成される保持部根元及び該保持部先端は内側へ折曲するものとなる。
その結果、化粧用部材を保持部において収納部又は固持軸の軸線方向に沿って直線的に位置するように保持することができるものである。
【0011】
そして、第1又は第2の特徴を踏まえて、第3の特徴として、
上記保持部と進退軸とで保持される化粧用部材を、インサート成形により予め保持部及び進退軸とともに一体化させ、
また、第4の特徴として、
上記保持部と、進退軸と、及び該保持部と進退軸とで保持される化粧用部材とを一体成形するものである。
【0012】
そのため、部品点数を低減することができる。その結果、製造工程での作業効率を高め、製品コストの削減を図ることができるものである。特に、保持部と、進退軸と、該保持部と進退軸とで保持される化粧用部品とを一体成形すると、一層の部品点数の低減によって、運搬、保存が容易となり、製造工程での作業効率をより高めるものであるので、製品コストの著しい削減を図ることができるものである。
【0013】
さらに、第1又は第2の特徴を踏まえて、第5の特徴として、
上記化粧用部材を、別体の保持部及び進退軸とで回転自在となる軸着部を介して保持するものである。
【0014】
そのため、進退軸の前進又は後退に合わせて、保持部先端及び進退軸先端は軸着部を中心に円滑、且つ確実に回転するものとなる。その結果、化粧用部材は収納部又は固持軸の軸線方向に対する位置関係を正確に調整することができるものとなる。
【0015】
そして、第1、第2、第3又は第4の特徴を踏まえて、第6の特徴として、
上記収納部又は固持軸先端に形成される保持部根元、保持部先端、及び進退軸先端に切り欠きを配設してなるものである。
【0016】
そのため、上記収納部又は固持軸先端に形成される保持部根元、保持部先端、及び進退軸先端の一部が配設する切り欠きにより薄肉化されるので容易に変形し易くなるものである。従って、進退機構を操作して進退軸が前進又は後退する際に、保持部根元、保持部先端、及び進退軸先端の切り欠きにおいて負荷が加わり又は負荷が抜けると、該保持部根元、保持部先端、及び進退軸先端で容易に折曲するものである。
その結果、僅かな操作力により化粧用部材の収納部又は固持軸の軸線方向に対する位置関係を簡易、且つ正確に、しかも迅速に調整することができるものである。
【0017】
なお、第1、第2、第3、第4、第5又は第6の特徴を踏まえて、第7の特徴として、
上記化粧用部材を、ブラシ体、ローラー体又は櫛体とするものである。
【0018】
すなわち、化粧用部材であるブラシ体としては、例えば繊維を挟持した芯線を巻回することで形成される螺旋状であって、円筒のブラシ体等であり、ローラー体としては、柔軟で且つ多孔質のスポンジからなるローラー体等であり、さらに櫛体としては、複数の櫛歯を並設してなる櫛体等がある。
【0019】
そのため、多くの使用部分について、上記化粧用部材を各々対応させるものである。その結果、化粧料の塗布や睫毛を梳かす作業を簡易且つ正確に行うことができるものである。
【発明の効果】
【0020】
本願発明は、進退軸先端と保持部先端とによって保持される化粧用部材を収納部又は固持軸の軸線方向に対する位置関係を無段階に調整し、しかもその位置で留めるものであるので、容器本体内へ円滑、且つ容易に収納することができるとともに、化粧用部材を作業用途に合わせて最適な位置に調整して、簡易且つ正確に作業を行うことができる優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本願発明の実施例1である化粧用用具の一つである化粧料容器の縦断面図である。
【図2】図2は、本願発明の実施例1である化粧用用具の一つである化粧料容器を構成するキャップに固持される固持軸、ブラシ体、進退軸の縦断面図である。
【図3】図3(イ)乃至(ハ)は、本願発明の実施例1である化粧用用具の一つである化粧料容器を構成するキャップにおける進退機構の作動状況に応じた縦断面図である。
【図4】図4(イ)は、進退機構作動前の本願発明の実施例2である化粧用用具の一つである化粧料容器を構成するキャップの縦断面図であり、(ロ)は、進退機構作動後の本願発明の実施例2である化粧用用具の一つである化粧料容器を構成するキャップの縦断面図である。
【図5】図5は、本願発明の実施例2である化粧料容器を構成するキャップに固持される固持軸、ブラシ体、進退軸の縦断面図である。
【図6】図6(イ)は、進退機構作動前の本願発明の実施例3である化粧用用具の一つである化粧料容器を構成するキャップの正面図であり、(ロ)は、進退機構作動後の本願発明の実施例3である化粧用用具の一つである化粧料容器を構成するキャップの正面図である。
【図7】図7(イ)は、進退機構作動前の本願発明の実施例4である化粧用用具の一つである化粧用ブラシの正面図であり、(ロ)は、進退機構作動後の本願発明の実施例4である化粧用用具の一つである化粧用ブラシの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
化粧用部材の収納性を確保しつつ、化粧料の塗布や睫毛を梳かす等の作業を簡易且つ正確に行えるように、化粧料部材の収納部又は固持軸の軸線方向に対する位置関係を無段階に調整し、さらにその位置で留まることができるようにすることで実現した。
【実施例1】
【0023】
図1において示すのは、本願発明の化粧用部材の可動機構を具える実施例1の化粧料容器1である。該化粧料容器1は、化粧料容器本体2と、本願発明の収納部に相当するキャップ7とから構成されるものである。
ここで、該化粧料容器本体2は、その内部にマスカラ3を貯留するとともに、その開口部4では、後述するキャップ7に一体に固持される固持軸10及び該固持軸10先端に形成される保持部11において保持されるマスカラ3を塗布する化粧用部材の一つである円筒のブラシ体14に密着して、それらの表面に過剰に付着したマスカラ3を拭去するシゴキ5を内装し、その外周面には雄ネジ部6を螺設してなるものである。
また、該キャップ7は、開口部8の内周面に前記雄ネジ部6と螺合する雌ネジ部9を螺設するものであって、巻回した芯線によって挟持された繊維を螺旋状とする円筒のブラシ体14を保持してなる保持部11を先端に形成し、その先端が開口する貫通孔10bを内部に有してなる固持軸10を根元部10aをもって固持するとともに、該固持軸10内の貫通孔10b内において該固持軸10軸線方向に沿って進退軸13を進退自在に挿通させてなる進退機構12を内装してなるものである。
【0024】
そして、キャップ7内に内装される前記進退機構12は、キャップ7に溝設されたスライド溝12aにおいてキャップ7の軸線方向へスライド自在となるスライドボタン12b、固持軸10の根元部10a内においてスライドボタン12aと一体となって摺動可能となるスライド駒12c、及び該スライド駒12cに一体に取り付けられ、折曲自在となるその先端においてブラシ体14を保持してなる進退軸13とから構成されるものである。
その結果、上記スライドボタン12bを前方又は後方へスライドさせることで、該スライドボタン12bと一体となるスライド駒12cが固持軸10内を前方又は後方へ摺動することから、該摺動するスライド駒12cに一体に取り付けられた進退軸13は固持軸10の貫通孔10b内を前進又は後退するものとなる。
【0025】
その上で、前記ブラシ体14は、進退軸13先端と、固持軸10に形成される保持部11先端とでインサート成形により一体に保持されているので、進退軸13と固持軸10の保持部11とは連結して互いに連動するようになっているものである。
【0026】
さらに、上記固持軸10先端に形成される保持部11根元、該保持部11先端、及び進退軸13先端において、各々切り欠き15a、15b、15cが配設されているものである。
その結果、該切り欠き15a、15b、15cに対して負荷が加わったり、又は抜けたりすると、各所に配設される切り欠き15a、15b、15cでは薄肉となっているので容易に折曲するものとなる。
【0027】
本願発明の化粧用部材の可動機構を具える実施例1の化粧料容器1は以上のように構成されるのでマスカラ3を塗布するにあたっては次のようになるものである(図3参照)。
すなわち、化粧料容器本体2からキャップ7を引き抜くと、該キャップ7において固持される固持軸10に形成される保持部11先端と、固持軸10内の貫通孔10bに挿通される進退軸13先端とで保持されるブラシ体14は該固持軸10の軸線方向に沿って直線状に保持されているものである〔同図(イ)参照〕。
そして、上記固持軸10の軸線方向に沿って直線状に保持されているブラシ体14の位置を調整するために、キャップ7のスライドボタン12bを固持軸10の軸線方向にスライド溝12aに沿って前方へスライドさせるものである。
そのため、スライドボタン12bと一体となるスライド駒12cが固持軸10の根元部10a内を前方へスライドするとともに、該スライド駒12cに一体に取り付けられた進退軸13が固持軸10の貫通孔10b内を前進して突出するものとなる。
ここで、該進退軸13の先端と、固持軸10に形成される保持部11とは、ブラシ体14を保持することで、進退軸13と保持部11とは一体に連結されて連動するようになっているが、保持部11自身は固持軸10の軸線方向に延伸することはないものである。
従って、進退軸13は、その13先端を内側に折曲させながら固持軸10外へ湾曲しつつ突出するとともに、固持軸10に形成される保持部11根元は外側に折曲し、さらに該保持部11先端も外側へ折曲するものとなる。
その結果、進退軸13先端と、固持軸10に形成される保持部11先端とで保持されるブラシ体14は、固持軸10の軸線方向に対する位置関係を徐々に変化させ、且つその位置で留めておくことができるものとなる。すなわち、進退軸13の突出量を調整することで、当初固持軸10の軸線方向に沿って直線状に位置するブラシ体14は固持軸10の軸線方向に対して直交する位置まで、該ブラシ体14を固持軸10の軸線方向に対する位置関係を無段階に調整できるとともに、その位置で留めておくことができるものである〔同図(ロ)、(ハ)参照〕。
従って、キャップ7において固持軸10に保持されるブラシ体14を最適な位置に調整した上で、マスカラ3の塗布作業を簡易且つ正確に行うことができるものである。
【0028】
また、キャップ7に固持される固持軸10の保持部11に保持されたブラシ体14を収納するにあたっては以下のようにするものである。すなわち、進退機構12であるキャップ7のスライドボタン12bをスライド溝12aに沿って後方へスライドさせると、該スライドボタン12bと一体となるスライド駒12cが固持軸10の根元部10a内を後方へ向かってスライドして、固持軸10の根元部10a内を摺動するスライド駒12cに一体に取り付けられる進退軸13は固持軸10の貫通孔10b内を後退するものである。
そこで、該進退軸13は、該進退軸13先端で外側へ折曲しながら固持軸10内へ収納されるとともに、固持軸10に形成される保持部11根元及び該保持部11先端では内側へ折曲するものとなる。
その結果、ブラシ体14は当初のように固持軸10の軸線方向に沿って直線状に位置させることができるものである。
従って、該ブラシ体14及び固持軸10は略直線状となっているので、化粧料容器本体2内に円滑、且つ容易に収納することができるものである。
【0029】
なお、上記固持軸10に形成される保持部11根元、該保持部11先端、及び進退軸13先端において、切り欠き15a、15b、15cを配設してなるものである。その結果、進退機構12を操作して進退軸13が前進又は後退する際に、各所に配設される切り欠き15a、15b、15cに対して負荷が加わり又は負荷が抜けると、該切り欠きによって容易に折曲するものとなる。その結果、僅かな操作力によりブラシ体14の位置を簡易、且つ正確に、しかも迅速に調整することができるものである。
【実施例2】
【0030】
図4において示すのは、本願発明の化粧用部材の可動機構を具える実施例2の化粧料容器を構成するキャップ7である。そして、該キャップ7は、マスカラを貯留する化粧料容器本体(図示せず、以下同じ)に対して脱着自在となる他に、キャップ7内において内装する進退機構等が実施例1であるキャップ7と主たる構成を共通にするものである。
【0031】
しかしながら、本願発明の実施例2の化粧料容器を構成するキャップ7において、図5に示すように、該キャップ7内に固持される固持軸10’、該固持軸10’に形成される保持部11’及び化粧用部材に相当する櫛体16、及び進退軸13’が一体成形されている点で、化粧用部材に相当するブラシ体14がインサート成形により進退軸13先端及び保持部11先端で一体に保持されて各々別体となる実施例1とは相違するものである(図5参照)。
なお、本願発明の実施例2のキャップ7においては、化粧用部材に相当するものが櫛体16である点でも、化粧用部材に相当するものがブラシ体14である実施例1のキャップ7とは相違するものである。
【0032】
本願発明の化粧用部材の可動機構を具える実施例2の化粧料容器(図示せず。)は以上のように構成されるのでマスカラを塗布するにあたっては、次のようになるものである(図4参照)。
すなわち、化粧料容器本体2からキャップ7を引き抜くと、該キャップ7において固持される固持軸10’先端に形成される保持部11’先端と、固持軸10’内の貫通孔10b’に挿通される進退軸13’先端とで保持される櫛体16は該固持軸10’軸線方向に沿って直線状に保持されているものである〔同図(イ)参照〕。
そのため、キャップ7のスライドボタン12bを固持軸10’軸線方向にスライド溝12aに沿って前方へスライドさせると、該スライドボタン12bと一体となるスライド駒12cは固持軸10’の根元部10a’内を前方へスライドするので、該スライド駒12cに一体に取り付けられた進退軸13’は固持軸10’の貫通孔10b’内を前進して突出するものとなる。
ここで、該固持軸10’の保持部11’、櫛体16、及び進退軸13’は一体成形されているので進退軸13’と保持部11’とが一体に連結されて連動するようになっているが、保持部11’自身は固持軸10’の軸線方向に延伸することはないものである。
従って、進退軸13’は、その先端を内側に折曲させながら固持軸10’外へ湾曲しつつ突出するとともに、固持軸10’に形成される保持部11’は外側に折曲し、さらに該保持部11’先端も外側へ折曲するものとなる。
その結果、進退軸13’先端と、固持軸10’に形成される保持部11’とを一体成形する櫛体16は、固持軸10’の軸線方向に対する位置関係を徐々に変化させ、且つその位置で留めておくことができるものとなる。すなわち、進退軸13’の突出量を調整することで、当初固持軸10’の軸線方向に沿って直線状に位置する櫛体16は固持軸10’の軸線方向に対して直交する位置まで、該櫛体16を固持軸10’の軸線方向に対する位置関係を無段階に調整し、その位置で留めておくことができるものである。
従って、マスカラを塗布するにあたり、キャップ7において固持軸10’に保持される櫛体16を最適な位置に調整した上で、マスカラの塗布作業を、簡易且つ正確に行うことができるものである。
【0033】
また、キャップ7に固持される固持軸10’の保持部11’に保持された櫛体16を収納するにあたっては以下のようにするものである。
すなわち、キャップ7のスライドボタン12bをスライド溝12aに沿って後方へスライドさせると、該スライドボタン12bと一体となるスライド駒12cが固持軸10’の根元部10a’内を後方へ向かってスライドして、該スライド駒12c’に一体に取り付けられる進退軸13’が固持軸10’の貫通孔10b’内を後退するものである。
そして、該進退軸13’は、その先端で外側へ折曲しながら固持軸10’内へ収納されるとともに、固持軸10’と一体形成される保持部11’根元及び該保持部11’先端では内側へ折曲するものとなる。
その結果、櫛体16は当初のように固持軸10’の軸線方向に沿って直線状に位置させることができるものである。
従って、該櫛体16及び固持軸10’は略直線状となっているので、化粧料容器本体内に円滑、且つ容易に収納することができるものである。
【0034】
なお、上記固持軸10’に形成される保持部11’根元、該保持部11’先端、及び進退軸13’先端において、切り欠き15a、15b、15cを配設しているので、実施例1と同様に、各所に配設される切り欠き15a、15b、15cに対する負荷によって容易に折曲するものとなる。その結果、僅かな操作力により櫛体16の位置を簡易、且つ正確に、しかも迅速に調整することができるものである。
【実施例3】
【0035】
図6において示すのは、本願発明の化粧用部材の可動機構を具える実施例3の化粧料容器を構成するキャップ7である。そして、該キャップ7は、マスカラを貯留する化粧料容器本体(図示せず、以下同じ)に対して脱着自在となる他に、キャップ7内において内装する進退機構等が実施例1のキャップ7と主たる構成はほとんど共通するものである。
【0036】
しかしながら、まず、本願発明の実施例3の化粧料容器を構成するキャップ7は、図6に示すように、進退軸13先端と、キャップ7内に固持される固持軸10”に形成される保持部11”とで保持される化粧用部材に相当するローラー体17が回転自在となる軸着部18を介して保持されている点で、切り欠き15a、15b、15cを配して折曲自在となる進退軸13先端と固持軸10先端とで化粧用部材に相当するブラシ体14をインサート成形により一体に保持してなる実施例1とは相違するものである。
なお、本願発明の実施例3のキャップ7においては、ファンデーションを塗布する、化粧用部材に相当するものが柔軟で、かつ多孔質のスポンジからなるローラー体17である点でも、化粧用部材に相当するものがブラシ体14である実施例1とは相違するものである。
【0037】
本願発明の化粧用部材の可動機構を具える実施例3の化粧料容器は以上のように構成されるのでファンデーションを塗布するにあたっては、次のようになるものである(図6参照)。
すなわち、化粧料容器本体からキャップ7を引き抜くと、固持軸10”内の貫通孔に挿通される進退軸13先端とキャップ7において固持される固持軸10”に形成される保持部11”先端とで保持されるローラー体17は、該固持軸10”軸線方向に沿って直線状に保持されているものである〔同図(イ)参照〕。
そして、キャップ7のスライドボタン12bを固持軸10”軸線方向にスライド溝12aに沿って前方へスライドさせると、該スライドボタン12bと一体となるスライド駒は固持軸10”の根元部内を前方へスライドするので、該スライド駒に一体に取り付けられた進退軸13は固持軸10”の貫通孔内を前進して突出するものとなる。
ここで、該ローラー体17、該ローラー体17を保持する進退軸13先端及び固持軸10”の保持部11”先端とは、回転自在となる軸着部18を介して一体に連結されて連動するようになっているが、保持部11”自身は固持軸10”の軸線方向に延伸することはないものである。
従って、進退軸13は、該進退軸13先端を内側方向へローラー体17を回転させながら突出するとともに、固持軸10”に形成される保持部11”は外側方向へローラー体17を回転させるものとなる。
その結果、固持軸10”に形成される保持部11”と、進退軸13先端とで保持されるローラー体17は、軸着部18を中心に回転しながら固持軸10”の軸線方向に対する位置関係を徐々に変化させ、且つその位置で留めておくことができるものとなる。すなわち、進退軸13の突出量を調整することで、当初固持軸10”の軸線方向に沿って直線状に位置するローラー体17は固持軸10”の軸線方向に対して直交する位置まで、該ローラー体17を固持軸10”の軸線方向に対する位置関係を無段階に調整できるとともに、その位置で留めておくことができるものである。
したがって、キャップ7において固持軸10”に保持されるローラー体17を最適な位置に調整した上で、ファンデーションの塗布作業を簡易且つ正確に行うことができるものである。
【0038】
また、キャップ7に固持される固持軸10”の保持部に保持されたローラー体17を化粧料容器本体内に収納するにあたっては以下のようにするものである。
すなわち、キャップ7のスライドボタン12bをスライド溝12aに沿って後方へスライドさせると、該スライドボタン12bと一体となるスライド駒が固持軸10”の根元部内を後方へ向かってスライドして、該スライド駒に一体に取り付けられる進退軸13が固持軸10”の貫通孔内を後退するものである。
そして、該進退軸13は、その先端を外側方向へローラー体17を回転させながら固持軸10”内へ収納されるとともに、固持軸10”に形成される保持部11”先端ではローラー体17を内側方向へ回転させるものである。
その結果、ローラー体17は当初のように固持軸10”の軸線方向に沿って直線状に位置させることができるものである。
従って、該ローラー体17及び固持軸10”は略直線状となっているので、化粧料容器本体内に円滑、且つ容易に収納することができるものである。
【実施例4】
【0039】
図7において示すのは、本願発明の化粧用部材の可動機構を具える実施例4のマスカラ塗布の前後に睫毛を梳かすために使用され、別体のコンパクトケース内に収容されるマスカラブラシ19である。そして、該マスカラブラシ19は、収納部に相当する把持部20において、巻回した芯線によって挟持された繊維を放射状とする円筒のブラシ体14’を保持する保持部11”’を先端に形成するとともに、その内部に進退軸13”を進退自在とする進退機構12’を内装してなるものである。
【0040】
そして、把持部20内に内装される進退機構12’は、該把持部20に溝設されたスライド溝12a’において把持部20の軸線方向へスライド自在となるスライドボタン12b’、把持部20内においてスライドボタン12b’と一体となって摺動可能となるスライド駒、及び該スライド駒に一体に取り付けられ、折曲自在となるその先端においてブラシ体14’を保持してなる進退軸13”とから構成されるものである。
その結果、上記スライドボタン12b’を前方又は後方へスライドさせることで、該スライドボタン12b’と一体となるスライド駒が把持部20内を前方又は後方へ摺動することから、該摺動するスライド駒に一体に取り付けられた進退軸13’は把持部20より突出し、又は収納されるものとなる。
【0041】
その上で、前記ブラシ体14’は、進退軸13’先端と、把持部20に形成される保持部11”’先端とで一体に保持されているので、進退軸13’と把持部20に成形される保持部11”’とは該ブラシ体14’を介して一体に連結して互いに連動するようになっているものである。
【0042】
さらに、上記把持部20先端に形成される保持部11”’根元、該保持部11”’先端、及び進退軸13’先端において、各々切り欠き15a、15b、15cが配設されているものである。
その結果、該切り欠き15a、15b、15cに対して負荷が加わったり、又は抜けたりすると、各所に配設される切り欠き15a、15b、15cでは薄肉となっているので容易に折曲するものとなる。
【0043】
本願発明の化粧用部材の可動機構を具える実施例4のマスカラブラシ19は以上のように構成されるので睫毛を梳かすにあたっては次のようになるものである(図7参照)。
すなわち、コンパクトケースより取り出した当初のマスカラブラシ19においては、進退軸13’先端と、該把持部20の先端に形成される保持部11”’先端とで保持されるブラシ体14’は該把持部11”’の軸線方向に沿って直線状に保持されているものである〔同図(イ)参照〕。
そして、上記把持部20の軸線方向に沿って直線状に保持されているブラシ体14’の位置関係を調整するために、把持部20のスライドボタン12b’を把持部20の軸線方向にスライド溝12a’に沿って前方へスライドさせるものである。
そのため、スライドボタン12b’と一体となるスライド駒が把持部20内を前方へスライドするとともに、該スライド駒に一体に取り付けられた進退軸13’が把持部20内を前進して突出するものとなる。
ここで、該進退軸13’の先端と、把持部20に形成される保持部11”’先端とは、ブラシ体14’を一体に保持することで、進退軸13’と保持部11”’とが一体に連結されて連動するようになっているが、保持部11”’自身は把持部20の軸線方向に延伸することはないものである。
従って、進退軸13’は、該進退軸13’先端を内側に折曲させながら把持部20外へ湾曲しつつ突出するとともに、保持部11”’根元は外側に折曲し、さらに該保持部11”’先端も外側へ折曲するものとなる。
その結果、進退軸13’先端と、保持部11”’先端とで保持されるブラシ体14’は、把持部20の軸線方向に対する位置関係を徐々に変化させ、且つその位置で留めておくことができるものとなる。すなわち、進退軸13’の突出量を調整することで、当初把持部20の軸線方向に沿って直線状に位置するブラシ体14’は把持部20の軸線方向に対して直交する位置まで、該ブラシ体14’を把持部20の軸線方向に対する位置関係を無段階に調整することができるとともに、その位置で留めておくことができるものである。
したがって、把持部20に保持されるブラシ体14’を最適な位置に調整した上で、睫毛を梳かす作業を簡易且つ正確に行うことができるものである。
【0044】
また、把持部20の保持部11”’に保持されたブラシ体14’をコンパクトケース内に収納するにあたっては以下のようにするものである。すなわち、進退機構である把持部20のスライドボタン12b’をスライド溝12a’に沿って後方へスライドさせると、該スライドボタン12b’と一体となるスライド駒が把持部内を後方へ向かってスライドして、該スライド駒に一体に取り付けられる進退軸13’は把持部20内を後退するものである。
そして、該進退軸13’は、その先端で外側へ折曲しながら把持部20内へ収納されるとともに、把持部20に形成される保持部11”’及び該保持部11”’先端では内側へ折曲するものとなる。
その結果、ブラシ体14’は当初のように把持部20の軸線方向に沿って直線状に位置させることができるものである。
従って、該把持部20、保持部11”’及びブラシ体14’は略直線状となっているので、コンパクトケース内に円滑、且つ容易に収納することができるものである。
【0045】
なお、上記把持部20に形成される保持部11”’根元、該保持部11”’先端、及び進退軸13’先端において、切り欠き15a、15b、15cを配設しているので、実施例1と同様に、各所に配設される切り欠き15a、15b、15cに対する負荷によって容易に折曲するものとなる。その結果、僅かな操作力によりブラシ体14’の位置を簡易、且つ正確に、しかも迅速に調整することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明の化粧用部材の可動機構は、該化粧用部材の収納性を確保しつつ、その位置関係を無段階に調整することができるものであるので、部分的な塗布を必要とする染毛剤の容器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 化粧料容器
2 化粧料容器本体
3 マスカラ
4 開口部
5 シゴキ
6 雄ネジ部
7 キャップ
8 開口部
9 雌ネジ部
10、10’ 固持軸
10a、10a’ 根元部
10b、10b’ 貫通孔
11、11’、11”、11”’ 保持部
12、12’ 進退機構
12a、12a’ スライド溝
12b、12b’ スライドボタン
12c スライド駒
13、13’ 進退軸
14、14’ ブラシ体
15a、15b、15c 切り欠き
16 櫛体
17 ローラー体
18 軸着部
19 マスカラブラシ
20 把持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部と、該収納部より突出、収納自在となる進退軸と、該収納部先端に形成される保持部と、化粧用部材とから構成され、
該収納部では、進退軸を内外へ突出、収納自在とする進退機構を内装し、
該進退軸では、その先端を折曲自在とし、
該保持部では、その先端を折曲自在とし、
該進退軸先端と、保持部先端とで化粧用部材を保持してなる
ことを特徴とする化粧用部材の可動機構。
【請求項2】
収納部と、該収納部に固持される中空の固持軸と、該固持軸より突出、収納自在となる進退軸と、該固持軸先端に形成される保持部と、化粧用部材とから構成され、
該収納部では、後述する進退軸を中空の固持軸内外へ突出、収納自在とする進退機構を内装し、
該進退軸では、その先端を折曲自在とし、
該保持部では、その先端を折曲自在とし、
該進退軸先端と、固持軸の保持部先端とで化粧用部材を保持してなる
ことを特徴とする化粧用部材の可動機構。
【請求項3】
上記保持部と進退軸とで保持される化粧用部材を、インサート成形により予め保持部及び進退軸とともに一体化させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の化粧用部材の可動機構。
【請求項4】
上記保持部と、進退軸と、及び該保持部と進退軸とで保持される化粧用部材とを一体成形する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の化粧用部材の可動機構。
【請求項5】
上記化粧用部材を、別体の保持部及び進退軸とで回転自在となる軸着部を介して保持する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の化粧用部材の可動機構。
【請求項6】
上記収納部又は固持軸先端に形成される保持部根元、保持部先端、及び進退軸先端に切り欠きを配設してなる
ことを特徴とする請求項1、2、3又は4のうちいずれか一つ記載の化粧用部材の可動機構。
【請求項7】
上記化粧用部材を、ブラシ体、ローラー体又は櫛体とする
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6のうちいずれか一つ記載の化粧用部材の可動機構。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−81661(P2013−81661A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224212(P2011−224212)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)