説明

医療システム

【課題】放射線治療における位置決めのためにMRI画像を使用することで高度な治療を行うことができ、且つ複数の医療装置を効率良く使用することができる医療システムを提供するものである。
【解決手段】上記の課題を解決するために、医療システムが、被検体の診断又は治療を行う為の複数の医療装置と、複数の前記医療装置に対して共通に使用する複数の寝台と、前記寝台の前記医療装置間の移動を、複数の経路で案内するレール部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の医療装置による画像診断や治療を利用し、1つの病気に対処するケースが
増えてきている。そのような複数の医療装置が密接に関連する例として、X線CT(Co
mputed Tomography)とMRI(Magnetic Resonanc
e Imaging)の画像を重ね合わせてフュージョン画像を得る場合や、更にその画
像を元に放射線を照射する位置を決める放射線治療装置が挙げられる。放射線治療装置は
X線ターゲットに電子を衝突させて発生したX線を用いるものや、放射性同位元素から放
射されるγ線を用いるものがある。
【0003】
これらの放射線治療において位置決めは非常に重要である。放射線治療装置を用いた放射
線治療の際には、放射線を照射する位置決めを行う為の画像を予め撮像する必要があり、
その画像をもとに患部に放射線を照射する。その為、画像を取得した後放射線を照射する
までの間、被検体は寝台から降りることは勿論、動くことが許されない。
【0004】
つまり、一人の被検体がCT装置及び放射線治療装置を立て続けに使用するのである。
【0005】
この場合CT装置と放射線治療装置は同室に存在し、一人の被検体のみの診断・治療に用
いられる場合が多い。被曝の恐れがあるため、同室にて同時に二人の被検体に対してそれ
ぞれCT装置及び放射線治療装置による診断・治療を行う事はできない為である。よって
、例えば使用していない装置があるにも関わらず、前の被検体の診断及び治療が終わるま
で別の被検体に対して装置を使用することができないという非効率さがある。
【0006】
そして放射線治療において、従来は画像診断装置と放射線治療装置は別々の寝台を利用す
る場合もあった。しかしCT装置等の画像診断装置と放射線治療装置の寝台は共通の構造
、強度ではないため、被検体の加重によって生じる天板のたわみの大きさはそれぞれ異な
る。この寝台間でのたわみの差が位置決めに影響を与えてしまうため、位置決めの際には
たわみ誤差を考慮に入れなくてはならない。
【0007】
一方、放射線治療装置に用いられる磁性体がMRI装置の磁場に影響を及ぼす恐れがある
が故に、MRI装置と放射線治療装置を同室に設置することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−52308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、複数の医療装置を効率良く使用することができる医
療システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、被検体の診断又は治療を行う為の複数の医療装置と、複
数の前記医療装置に対して共通に使用する複数の寝台と、前記寝台の前記医療装置間の移
動を、複数の経路で案内するレール部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の全体構成の一例を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態におけるレール部のレイアウト及び寝台の移動の様子の一例を示した概略図である。
【図3】第1の実施形態の全体構成の一例を示す概略図である。
【図4】第1の実施形態におけるレール部のレイアウトの他の例、及び移動経路の一例を示す概略図である。
【図5】第1の実施形態におけるレール部の分岐の一例を示した概略図である。
【図6】第1の実施形態におけるレール部が環状のレイアウトである例を示した概略図である。
【図7】第1の実施形態における放射線治療室及び放射線治療装置の一例を示した概略図である。
【図8】第1の実施形態における寝台底面の一例を示す斜視図である。
【図9】第1の実施形態における寝台と床との関係の一例を示す概略図である。
【図10】第1の実施形態における寝台とレール部との関係を示す概略図である。
【図11】第1の実施形態における寝台が移動する際の、寝台の移動に伴う突起部の動きの一例を示す図である。
【図12】第1の実施形態における突起部とレール部との関係を示す概略図である。
【図13】第2の実施形態の全体構成の一例を示す概略図である。
【図14】第1の実施形態の一連の動作の流れを示すフローチャートである。
【図15】第2の実施形態の一連の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の医療システムを、図1を参照して概要を説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態の全体構成の一例を示す概略図である。MRI室12にはMRI
装置10、放射線治療室22には放射線治療装置20が備わり、床にはレール部60が設
置されている。また、MRI室12及び放射線治療室22には扉90が備わっている。な
お本実施形態において、CT装置及びMRI装置などの画像診断装置、及び放射線治療装
置を総じて医療装置と呼ぶ。寝台70はそれら医療装置の台数分以上備わり、各医療装置
間をレール部60に沿って移動させて共通に使用する。
【0015】
MRI装置10は強磁場を発生させ、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic
Resonance:NMR)の原理を用いて被検体の断層画像を撮影することができ
、解剖学的情報や生化学的情報を得ることができる。そして自走式のガントリ11を備え
る。これは放射線治療の際には位置決めが重要となるので、天板(図示なし)がたわむこ
とによる誤差が生じてしまうのを防ぐために、寝台70及び天板は固定したままガントリ
11を移動させて診断を行う必要がある為である。寝台70がガントリ11に所定の位置
に固定されると、この寝台70に接近する方向若しくは寝台70から離れる方向に移動可
能となっている。
【0016】
放射線治療装置20は、ガントリ21に備わる放射線源が被検体の体軸方向の軸の周りに
回転し、その放射線源から照射される放射線が集まる位置をアイソセンタと呼ぶ。そして
MRI装置10で得られた画像をもとに照射の位置決めを行い、被検体の患部へ放射線を
照射する。
【0017】
扉90は各医療装置の部屋に備わり、放射線及び磁場を遮蔽し、寝台70を各医療装置が
備わる部屋への出入りを可能にするために設けている。
【0018】
寝台70は被検体を載置させて各医療装置まで運ぶためのものであり、MRI装置10及
び放射線治療装置20に共通で利用する。
【0019】
レール部60は各医療装置まで寝台70を移動させるためにある。そしてMRI装置10
のガントリ11に対向する所定位置、及び放射線治療装置20のガントリ21近くの所定
位置に設置されており、途切れることなく床に備わっている。レール部60は床に埋めて
設置してもよいし、床上に突き出た状態で設置してもよい。床に埋める場合は、少なくと
もレール部の上面は外部に露出している。またMRI装置10が設置されている部屋に備
わるレール部60は非磁性のものとする。
【0020】
ここでレール部60は、各医療装置間で複数の寝台を同時に移動させるときに、寝台同士
が接触しないようなレイアウトである必要がある。例えば、図1のような複数の経路を設
けたレイアウトである。図1において複数の経路とは、MRI室12と放射線治療室22
の間で寝台70を移動させる場合に、直線的に移動する経路(経路1)と、外側を周って
移動する経路(経路2)を意味している。この時平行しているレール部60同士の間隔は
、二台の寝台70、70aがすれ違う事を可能とするように、少なくとも一台分の寝台の
幅以上の間隔を有している。図2は寝台70が経路1、寝台70aが経路2を通って移動
している様子を示している。
【0021】
上記に限らず、図4のようなレイアウトをしている場合でも、寝台がMRI装置10と放
射線治療装置20の間を移動するにあたって複数の経路を有すると言える。経路1は直線
的な経路であり、そして経路2は一度横に退避した後、再び経路1上に戻る経路である。
本実施形態ではこのように、レール部上を複数の寝台が移動するにあたり、移動先の医療
装置へと向かう最短の経路から一度はずれた位置に移動し、その後再びもとの経路に戻る
ような移動を行った際の寝台の道程も一つの経路としてカウントしている。
【0022】
ここで、図1において、MRI室12から放射線治療室22へ向かう道程を矢印で示して
経路1、経路2としているが、逆に放射線治療室22からMRI室12へ向かう際に、各
矢印の向きの反対方向に矢印に沿って移動するのであれば、それは同様の経路であるとす
る。即ち放射線治療室22からMRI室12へ直線的に移動をする場合は経路1であり、
外側を周って移動する場合は経路2である。
【0023】
また、分岐とは、ある場所でレール部が枝分かれして道が2通り以上存在していることを
いう。図1においては経路2の途中で一回分岐をしている。図5に示したとおり、可動レ
ール部62を設け、レール部60と接続させることで少なくとも2通りの経路が得られる
レイアウトでも分岐と呼ぶ。
【0024】
そしてレール部60は、環状のレイアウトを取ってもよい。環状のレイアウトとは図6(
a)に示すような曲線を持つレイアウトのことをいい、本実施形態では例えば図6(b)
のように少なくとも一つの角を持ったレイアウトや、図6(c)のように複数の角が存在
し、曲線を持たない場合も環状のレイアウトであるとする。即ち図1においては、レール
部60は環状であり且つ分岐をしているレイアウトであると言える。
【0025】
レール部60のレイアウトは、例えば図1のようにレール部の一端が何処にも接続されて
いない場合と、図6(a)のように環状のレイアウトのみで構成されて端が存在しない場
合がある。端がある場合は、MRI装置10と放射線治療装置20とを結ぶ直線上からは
ずれた位置に少なくとも一つの端がくる。直線上からはずれた位置とは、例えば図1に示
した分岐点の横にあるレール部60の一端がある位置を言う。本実施形態ではこのような
位置を、医療装置と関係しない位置と呼ぶ。
【0026】
ここで、図3はMRI装置10、放射線治療装置20、CT装置30がそれぞれMRI室
12、放射線治療室22、CT室31に備わる例を示した概略図である。このようなレイ
アウトを例に取ると、レール部60の一端が、医療装置と関係しない位置に五箇所存在す
る。寝台70の出し入れのため、レール部60一端は図3に示したように、各医療装置が
備わる部屋から近い位置にそれぞれ存在することが好適である。また扉90とは別に、操
作者が出入りするための扉91を設けてもよい。
【0027】
図7(a)に示した放射線治療室22内に備わる放射線治療装置20は治療に放射線を利
用することから、放射線治療室22は放射線防護の為にガントリ21正面に向かって左右
方向(X方向)の壁90を厚くする必要がある。これは図7(b)のように、放射線源2
3及び検出器24はY方向を軸として回転するためである。よって寝台70の通り道とな
るY方向に設置される扉を軽く簡易なものにするために、各医療装置は対向するように設
置されている事が望ましい。
【0028】
一方、MRI装置10はNMRを用いて撮像している為、高磁場が発生する。内部の強力
な磁場や電波が漏洩したり外部からのこれらの影響を受けないよう、MRI装置10が設
置されたMRI室12の壁には磁気シールド板が備わっている。
【0029】
図8は寝台70の斜視図である。寝台70の底面には車輪71を有し、所定の場所に接続
部73が備わっている。この接続部73は図中では寝台70内部に収容されているが、側
面に露出した配置をとってもよい。そして寝台70の底面には突起部72が備わる。この
突起部72は必ずしも寝台70底面の真ん中に位置する必要は無く、寝台70の幅を二等
分する直線上のいずれかの場所に備わっていればよい。そしてこの直線上であれば、寝台
70底面ではなく寝台70側面に備わっていてもよい。また、MRI装置において利用す
ることから、寝台70はレール部60と同様に全体的に非磁性の材料により構成される。
【0030】
図9(a)、(b)は寝台70と床50との関係を示した側面図であり、寝台70に備わ
った接続部73の挿入が可能な凹部51が床50に備わり、接続部73によって床50と
寝台70が固定されている例を示している。アイソセンタ位置からずれることなく寝台7
0を各医療装置に設置するために、予め床50には寝台70との結合を補助する機構を具
備しておく。例えば図9(a)に示したように、床50に設置した凹部51に寝台70側
から接続部73を挿入して図9(b)のように固定してもよいし、あるいは逆に床50側
に備わった接続部を寝台70に挿入してもよい。その他、寝台70を定位置に固定できる
種々の手段が適用可能である。寝台70内部に接続部73を有する場合は、接続部73を
操作するための把持部(図示なし)が寝台70外部に露出して備わっていてもよい。また
、装置使用中に寝台70が所定位置から移動するのを防止するために、上述の凹部51を
利用した場合を例に取ると、接続部73が凹部51からはずれないような仕組みを備えて
おく。例えば床50または凹部51に接続部73を固定する機構と、部屋の扉の開閉など
を探知するセンサを設置し、その扉が閉まっている場合は、接続部73は凹部51と固定
されていて動かすことを不可能にするなどの手段がある。他にも、例えば寝台70に備わ
る通信手段が装置の使用情報を取得し、それをもとに接続部73又は車輪71の固定を行
ってもよい。
【0031】
図10(a)、(b)は寝台70とレール部60との関係を示した略図である。レール部
60には溝61が設けられており、この溝61は寝台70下部に設けられた突起部72が
入ることができる程度に空間を有する。寝台70は、車輪71がレール部60を跨ぐよう
に配置され突起部72がレール部60の溝61に入る。なお移動中に寝台70の車輪71
がレール部60を乗り越える場合もあるため、車輪71が溝61に引っかからないよう、
溝61の幅は車輪71の幅より狭い方が好ましい。そして、この突起部72先端には車輪
71が備わっているか、若しくはレール部60の溝61に入る部分が突起部72長軸方向
に回転可能とした構造をとっていてもよい。
【0032】
図12は突起部72の先端を長軸方向に回転可能とした場合の、レール部60と突起部7
2の関係を示した図である。寝台70を移動させる際に、突起部72が少なからずレール
部60の溝61の片側の側面に衝突する場合が考えられる。そこで、寝台70の移動をス
ムーズに行うために、突起部72の先端は長軸方向に回転可能な機構を設けてもよい。
【0033】
先端に車輪71が備わる場合(図示なし)は、寝台70底面に備わる車輪71と同様の高
さとする。先端部分を回転可能にした場合、回転する部分は円柱の形状をしていることが
求められる。また、図10(b)のようにレール部60を床50に埋め込まれた状態で設
置させた場合、突起部72をレール部60の溝61に収容するためには床面よりも下に突
起部72を配置する必要がある。その場合は、突起部72を上下に動かす為の機構を寝台
70に備える。
【0034】
ここで、各医療装置が備わる部屋に備わる扉90は、例えば放射線照射中は常にロックが
かかるように電子的制御を行うなど、診断中及び治療中は開かないような機構を備える。
そして扉90は開き戸でも引き戸でもよく、種々の構造が適用可能である。
【0035】
次に、本実施形態に係る医療システムの動作を説明する。
【0036】
放射線治療を行うにあたり位置決めが必要であり、それに用いる画像を得る為に被検体8
0Aに対してまずMRI装置10を使用する例を、図14のフローチャートを用いて説明
する。
【0037】
ステップS101において、操作者が被検体80Aを寝台70に載置させる。
【0038】
ステップS102において、操作者はMRI装置10が空いているかどうかを判断する。
空いている場合(Y)はステップS103へ、空いていない場合(N)は空くまで待機す
る。
【0039】
ステップS103において、操作者が寝台70の底面両端に備わる車輪71を用いて、寝
台70をレール部60に沿ってMRI装置10まで移動させ、前述の方法で床50に寝台
70を固定する。
【0040】
ステップS104において、操作者はガントリ11を被検体80Aの体軸方向に移動させ
てMRI装置10での被検体80Aの撮像を行う。ここで、別の被検体に対してMRI装
置10を使用する予定があるならば、予め別の寝台に被検体を載置させて撮影の準備を行
っておく。
【0041】
ステップS105において、操作者はMRI装置10での被検体80Aの撮像後に、続け
て被検体80Aに対して放射線治療装置20を使用するか否かの判断を行う。使用する場
合(Y)は被検体80を寝台に載置させたままステップS106へ、使用しない場合(N
)は終了する。
【0042】
ステップS106において、操作者はMRI装置10に使用していた寝台70をMRI室
12の外部へ移動させる。図1を例にとると、経路1に沿って移動させる。室外へ移動さ
せるのは、次の被検体に対してMRI装置10を使用できるようにするためである。
【0043】
ステップS107において、操作者は放射線治療装置20が空いているかどうかを判断す
る。空いている場合(Y)はステップS108へ、空いていない場合(N)は空くまで待
機する。
【0044】
ステップS108において、操作者はステップS6に引き続き経路1を通り、寝台70を
放射線治療装置20まで移動させる。そしてステップS3と同様に床50に寝台70を固
定させる。このとき、もし直前まで他の被検体に対して放射線治療装置20を利用してい
たならば、他の操作者はその被検体を載置した寝台を経路2を通って移動させ、経路1を
通る寝台70との接触を避ける。
【0045】
ステップS109において、放射線技師が放射線治療装置20を用いて被検体80Aに対
して放射線照射の治療を行う。治療が済んだら被検体80Aを寝台70から降ろし、終了
する。
【0046】
ここで図11(a)に示すように、寝台70の移動の際に左折あるいは右折を行う場合は
、突起部72の向きを固定したまま移動してもよいし、図11(b)のように突起部72
の角度を変えながら移動してもよい。そして対向した位置に設置された他の医療装置に寝
台70を移動させる場合は、移動の際に寝台70を180度回転させる必要がある。この
寝台70の回転はレール部60上の何れの場所でも可能であるが、図11(a)、(b)
に示したレール部60の分岐点においては溝61の空間が広くなっているため、寝台70
の回転を行うのに適している。その場で回転させることなく、分岐点にて一度左折(右折
)した後に寝台70の進行方向を逆方向にして移動させても問題ないということは言うま
でもない。
【0047】
ちなみに、寝台70がレール部60の存在しない範囲にあり、そこからレール部60上に
進入する場合は、寝台70の底面にある突起部72がレール部60の溝61に入っている
ことを確認する。もしここで突起部72が溝61に入っていないままだと、寝台70を医
療装置まで移動させても使用することはできない。故にそのような状態になると、再びレ
ール部60の先端の場所まで移動させなくてはならない。
【0048】
次に、本実施形態に係る医療システムの効果を説明する。
【0049】
以上説明した通り、本実施形態によれば同一の寝台を複数の装置で使用できるため、被
検体に対してMRI装置10の使用後、そのまま放射線治療装置20まで運ぶことができ
る。そのため放射線治療において、寝台70のたわみ誤差を考慮することなく位置決めを
行うことが実現する。故にMRI画像によって放射線治療における位置決めが容易となり
、CT画像を用いたVGRT等の位置決めでは成しえなかった高度な治療を簡便に行うこ
とができる。そして図3に示すようにMRI室12、放射線治療室22、CT室31をそ
れぞれ設けると、MRI画像とCT画像とを融像させることによって、放射線治療におけ
る位置決めのための更なる最適な画像を得ることができる。MRI画像を用いることで神
経などの確認が容易になるため、放射線照射部位近くの不要な放射線照射による神経の損
傷を避けることもできる。
【0050】
また、装置間を寝台70が移動するにあたって複数の経路を設けることにより、複数の寝
台を同時に移動させることが可能である。故に、例えば図4において被検体80AがMR
I装置10で断層撮影を行った後に放射線治療装置20へ移動した場合、位置決めの為の
画像処理等を行っている間に、予め撮影の準備を整えた被検体80Bに対してMRI装置
10をすぐに使用することができる。また、図2に示したようなレール部60のレイアウ
トの場合においては、二台の寝台がすれ違うことが可能であるため、より円滑に複数の寝
台を移動させることができる。一方でレール部60は図4のようなレイアウトの場合は、
図2の場合と比較して、床50に設置しなくてはならないレール部60を最小限に抑える
ことができる。
【0051】
以上の理由から、本実施形態によると、MRI画像を用いた放射線治療が容易に行えるだ
けでなく、患者にかかる負担を抑え効率的に診断・治療を行うことができる。
【0052】
また、図12のように突起部72先端を突起部72長軸方向に回転可能とした場合、突起
部72は寝台70の転倒防止になるだけでなく、回転することでレール部60の溝61の
側面と突起部72との摩擦によるエネルギーの損失を避けることにより、寝台70の移動
をスムーズに行うことができる。一方、突起部72先端に車輪を設けた場合は、寝台70
の底面に備わる車輪71だけでなく、突起部72先端の車輪によっても寝台を支えること
ができ、その結果寝台70の移動を容易に行うことができる。そしてレール部60を床5
0に埋設した場合(図10(b))は、レール部60と床50との境界に段差が無いため
に、寝台70の移動が容易であるというメリットがある。
【0053】
(第2の実施形態)
次に図13を用いて第2の実施形態を説明する。
【0054】
図13は第2の実施形態の全体構成の一例を示す概略図である。これは第1の実施形態と
比較して医療装置及び寝台の数が増えた形態であり、レール部及び寝台の機構は第1の実
施形態と相違ない為ここでの説明は省略する。
【0055】
図13は二部屋ある放射線治療室22にそれぞれ放射線治療装置20が1台と、MRI
室12にMRI装置10、CT室31にCT装置30、そしてPET室41にPET(P
ositron Emission Tomography)装置40が設置され、寝台
70を8台有している例を示している。この場合、待機している寝台70は図13のCT
装置30とMRI装置10の間のスペースに配置されていることが望ましい。各医療装置
に近いので、移動が容易になるためである。装置を使用する前に予め被検体を寝台70に
載置させて待機している場合においては、上記のスペースから装置の近くまで移動させて
おくことが好ましい。
【0056】
ここで、図15のフロー図をもとに本実施形態の医療システムの動作を説明していく。
【0057】
ステップS201において、操作者が被検体を寝台70に載置させる。
【0058】
ステップS202において、操作者は画像診断装置が空いているかどうかを判断する。空
いている場合(Y)はステップS203へ、空いていない場合(N)は空くまで待機する

【0059】
ステップS203において、操作者が寝台を画像診断装置まで移動させ、寝台70を床と
固定させる。
【0060】
ステップS204において、操作者は画像診断装置のガントリを移動させて該被検体の撮
像を行う。撮像終了後、ステップS205以降の動作と並行して、ステップS204で得
られた画像の処理や、治療計画の修正を行う。複数の画像診断装置で撮影した画像をフュ
ージョンし、照射野変更、照射線量の再計算などを行うと時間がかかってしまうため、そ
れらは寝台の移動の際に行っておく。
【0061】
ステップS205において、操作者はステップS204での撮像後に他の画像診断装置を
使用するかどうかを判断する。使用する場合はステップS205aへ、使用しない場合は
ステップS206へ。
【0062】
ステップS205aにおいて、操作者は寝台70を移動させて、ステップS204で使用
した画像診断装置から離した後にステップS202へ。ここで画像診断装置から寝台70
をすぐに移動させるのは、他の被検体に対してステップS204で使用した画像診断装置
を使用することを可能にするためである。
【0063】
ステップS206において、操作者は放射線治療装置20を使用するかどうかを判断する
。使用する場合(Y)はステップS207へ、使用しない場合(N)は該被検体に対する
診断及び治療を終了する。
【0064】
ステップS207において、操作者が放射線治療装置20へと寝台70を移動させる。
【0065】
ステップS208において、操作者は放射線治療装置20が空いているかどうかを判断す
る。空いている場合(Y)はステップS209へ。空いていない場合(N)は空くまで待
機する。
【0066】
ステップS209において、操作者は寝台70を放射線治療装置20へと移動させて、寝
台70を床50と固定する。
【0067】
ステップS210において、放射線技師は放射線治療装置20を使用して放射線を該被検
体に照射し、治療を行う。治療を終えたら該被検体に対する診断及び治療を終了する。
【0068】
本実施形態の有する効果として、共通で利用可能な寝台をMRI装置10とCT装置30
の両装置に用いることで、放射線治療の位置決めにMRI画像とCT画像とのフュージョ
ン画像を利用することが容易に可能となり、より高度な治療を行うことができる。
【0069】
そして複数の画像診断装置で撮影した画像をフュージョンし、IGRT(Image−g
uided radiotherapy:画像誘導放射線治療)やART(Adapti
ve radiotherapy:適応放射線治療)などを行う場合、処理に時間がかか
る照射野の変更や照射線量の再計算を、寝台70を移動している間に行うことができる。
つまり寝台70の移動及び放射線治療装置20へのセッティングと、計算処理を並列に行
うことで、放射線治療における効率が向上する。
【0070】
また、本実施形態においても効率的に各装置を使用することが当然可能である。例えば図
13において、被検体80C及び被検体80DがそれぞれMRI装置10、放射線治療装
置20を使用しており、CT装置30のみを使用する必要がある他の被検体がいる場合、
MRI装置10や放射線治療装置20と比較して装置使用時間の短いCT装置30を多数
の被検体に対して利用するということも可能になる。
【0071】
上述の通り一回当たりのCT装置30の使用時間はMRI装置10や放射線治療装置20
のそれと比べて短いため、CT室31にて寝台70を頻繁に入れ替えて利用する場合が想
像できる。その為、図13のようにレール部60先端、すなわち寝台70を移動させて寝
台70底面にある突起部72がレール部60の溝61に進入する場所から近い位置にCT
装置30を設けていることが好ましい。そして待機している寝台70は、図13のように
レール部60先端或いは外部ではなく、使用する各医療装置が備わる部屋の近くのレール
部60上にて待機させていてもよい。これにより、より効率的な各医療装置の利用が可能
になる。
【0072】
また、図13はCT装置30及びMRI装置10が、それぞれ放射線治療装置20と対向
して設置されている例である。これにより、放射線治療時において必要となる、CT装置
30から放射線治療装置20への寝台70の移動、そしてMRI装置10から放射線治療
装置20への寝台70の移動が容易になる。
【0073】
ここで、実施形態1及び2において、各医療装置は異なるフロアに設置され、エレベータ
ーを用いて寝台70の移動を行ってもよい。この場合、同一フロアでは各装置を設置する
スペースの無い病院及び診療所においても本実施形態を実施することが可能となる。また
、本実施形態では放射線治療に特化して述べたが、例えばCT装置30、MRI装置10
及びPET装置40などの画像診断装置が複数ある場合に、複数の画像診断装置間のみ共
通の寝台で使用する場合にも好適である。すなわち放射線治療装置20を所有していない
医療機関においても、本実施形態は有用である。
【0074】
そしてレール部60には溝が備わり、寝台70の突起部72がその溝に入ることによって
寝台70の移動を案内している例を示したが、その他種々のレール部及び寝台の形状の変
形例がある。
【0075】
例えば、鉄道車両を走行させるためのレールの様に、車輪がレールの上を転がるような仕
組みをしてもよいし、寝台底面に備わる突起部の先端が枝分かれした形状を取り、その枝
分かれした部分でレール部を包含してもよい。
【0076】
更に、寝台70の移動に関して操作者が手動で行う例を挙げたが、これに拘ることはない
。寝台70若しくはレール部60に、寝台70を自動走行させるための機構が備わり、コ
ンピューター制御によって寝台70を移動させてもよい。
【0077】
自動走行させる場合は、寝台70には走行を制御する制御部と、車輪71を駆動させるた
めの駆動部が最低限備わり、信号を受け取って移動の制御を行う。信号は操作者が寝台に
備わる操作部を操作することによって得てもよいし、寝台70外部から無線通信によって
得てもよい。また、センサなどを設けて寝台の位置を把握し、寝台が他の寝台などと衝突
しないような仕組みを設けるのが好ましい。センサは人感センサを寝台に設けてもよいし
、若しくは部屋の天井などに設けて寝台の位置を把握してもよい。あるいはGPSなどの
システムを寝台に搭載することで寝台位置の把握を行うなど、その他種々の手段が考えら
れる。
【0078】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、
発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で
実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、
変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると
同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
10 MRI装置
11 ガントリ
12 MRI室
20 放射線治療装置
21 ガントリ
22 放射線治療室
23 放射線源
24 検出器
30 CT装置
31 CT室
40 PET装置
41 PET室
50 床
51 凹部
60 レール部
61 溝
62 可動レール部
70 寝台
71 車輪
72 突起部
73 接続部
80A、80B、80C、80D 被検体
90、91 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の診断又は治療を行う為の複数の医療装置と、
複数の前記医療装置に対して共通に使用する複数の寝台と、
前記寝台の前記医療装置間の移動を、複数の経路で案内するレール部と、
を備える医療システム。
【請求項2】
複数の前記医療装置は、MRI装置と、
前記被検体に放射線を照射して治療を行うための放射線治療装置と、
を含み、それぞれ別室に配置される請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記画像診断装置及び前記放射線治療装置は同一直線状に対向して配置され、それらの装
置間の前記レール部は直線状に備わる請求項1または2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記レール部は、分岐を有するレイアウトである、請求項1乃至3に記載の医療システム

【請求項5】
前記レール部の少なくとも一端は、前記医療装置と関係しない位置である請求項4に記載
の医療システム。
【請求項6】
前記レール部は、環状のレイアウトを含む請求項1乃至5のいずれかに記載の医療システ
ム。
【請求項7】
複数の前記医療装置はそれぞれ異なる階に設置される請求項1乃至6のいずれかに記載の
医療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−78397(P2013−78397A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218689(P2011−218689)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】