説明

医療介護用手袋

【課題】リストバンドと手袋本体とが一体となっている医療用手袋において、リストバンドを保護して手袋の耐久性を向上させる。
【解決手段】
開口部11を介して手首から先の部分が収納される手袋本体10には、手首より上の指先までの部分が配置される手挿入部12と、手首部分が配置される手首固定部13とが備えられ、手首固定部13には、リストバンド20が一体的に設けられているとともに、リストバンド20の係止部分を覆い隠すバンドカバー30が着脱自在に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護や看護を必要とする者の手に装着される医療介護用手袋に関し、さらに詳しく言えば、手袋を手に固定するために用いられるリストバンドを交換可能な部品で保護することにより、手袋の耐久性を向上させるようにした医療介護用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、認知症患者や要介護者、あるいは手術直後の意識レベルの低い状態にある患者等(以下、「患者等」という。)は、病状等に応じて点滴を投与するためのチューブやバイタル計測用のケーブル等が身体に装着される。
【0003】
しかしながら、これらの治療行為では一定の姿勢を長時間保つ必要があり、患者等にとっては非常に不快で煩わしく、例えば、寝ているときなどに無意識に取り外そうとしたり、外そうとしてパニック状態に陥り暴れたりすることがある。
【0004】
このような行為を防止するため、医療分野においては種々の拘束用具が提案されている。その拘束用具の一つとして医療介護用手袋があり、その一例を図4に示す。
【0005】
図4に示すように、この医療介護用手袋1は、ミトン状の手袋本体2と手袋本体2と一体的に設けられたベルト状のリストバンド3とを備えており、開口部4を介して手首より先の部分を手袋本体2内に挿入した後、リストバンド3を手首回りに巻き付けて固定するようにし、患者等の手を手袋本体2内に保持させるようにしている。
【0006】
また、この場合、リストバンド3には、その一端側に1つの上フックボタン3a、その他端側に並列に配列された3つの下フックボタン3bとがそれぞれ設けられており、上フックボタン3aを3つの下フックボタン3bのいずれかに係着させることにより、リストバンド3の固定位置および巻き付け強度の調整をしている。
【0007】
このように、リストバンド3を患者等の手首回りのサイズに合わせて巻き付けて固定することにより、患者等の手の動きを手袋本体2内で規制し、患者等が点滴用チューブやバイタル計測用ケーブル等を外すことがないようにしている。
【0008】
また、患者等の手を手袋本体2内に保持させることにより、患者等がパニック状態に陥って暴れたとしても、患者等自身の手を傷付けたり、周囲の者に対して怪我をさせないようにしている。
【0009】
さらに、最近では、下記特許文献1や2に示すように、患者等の手袋装着時の不快感をできる限り減らすために手袋本体の通気性を良くしたり、その装着状態を観察できるように配慮した医療介護用手袋も提案されている。
【0010】
しかしながら、患者等にとっては、健常者ですら苦痛を感じる一定姿勢を長時間強いられるため、強いストレスによる精神的圧迫がパニック状態を引き起こし、どうにかしてリストバンドを外して手を手袋から出そうと衝動的な行動を起こすことがある。
【0011】
例えば、リストバンドのフックボタンを口でこじ開けようとしてフックボタンを壊したり、リストバンドを噛み千切ろうとしたりするものであり、その多くはリストバンドの係止部分の当たりを損傷させるものが多い。
【0012】
このような患者等の行動は予想以上に多いが、従来の医療用手袋ではリストバンドと手袋本体とが一体として設けられているため、手袋全体を修理に出さなければならない。しかしながら、この修理には相当期間を要するため、手袋自体には何らの支障がないにもかかわらず、別の手袋を新たに購入しなければならないという無駄が生じていた。
【0013】
また、このような問題は、経年使用によるリストバンドの劣化の場合であっても同様に生じるが、医療介護用手袋は医療介護という特殊な専門分野に用いられるものであるため、新たな手袋の購入費やその修理に要する費用のいずれも高額であり、コスト的にも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−108431号公報
【特許文献2】特開2010−150726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するため、リストバンドと手袋本体とが一定的に設けられている医療介護用手袋において、リストバンドを交換可能な部品で保護することにより、手袋自体の修理を不要として手袋の耐久性を向上させるとともに、使用者の経済的負担を軽減させるようにした医療介護用手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、開口部を介して手首から先の部分が収納される手袋本体と、上記手袋本体の外皮面側に一体的に設けられたリストバンドとを含み、上記リストバンドを上記手袋本体の外皮面側から手首回りに巻き付けて係止することにより上記手首に固定させ、上記手袋本体内に手を保持させる医療介護用手袋において、上記手袋本体の手の甲側および/または掌側の外皮面には、上記リストバンドの少なくとも係止部分を覆い隠す着脱自在なバンドカバーが取り付けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、上記バンドカバーは、上記リストバンドの上下面を挟むように覆い隠す上フラップと下フラップと、上記各フラップが重ね合わされた状態で係着される係着手段とが設けられており、上記手袋本体と上記下フラップとの対向する面には、それらの着脱を自在とする着脱手段が設けられていることを特徴としている。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、上記手袋本体の手の甲側の外布には、手首より上の部分が配置される部分に通気窓が設けられており、上記通気窓は通気性シートで覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の医療介護用手袋。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項3において、上記通気性シートが、網目状のメッシュシートであることを特徴としている。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項3または4において、上記通気性シートには、上記手挿入部の内部を視認可能な開閉手段が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、手首挿入部の手の甲側および/または掌側にリストバンドを覆い隠す着脱自在なバンドカバーを取り付け、リストバンドをバンドカバーによって保護したことにより、患者等がバンドカバーを損傷することがあるとしてもリストバンドを損傷させることを避けることができるため、手袋自体の耐久性を向上させることができるとともに、修理や新たな手袋を買う等の経済的負担を回避することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、バンドカバーを、リストバンドの上下面を挟む開閉自在な上下フラップで構成するとともに、下フラップと手袋本体との対向面に着脱手段を設けたことにより、バンドカバーとリストバンドおよびバンドカバーと手袋本体との取り付け取り外しを容易に行うことができるため使用性を向上させることができる。
【0023】
請求項3または4に記載の発明によれば、手袋本体の手の甲側の手首より上が位置する部分に通気窓を設け、ここに、例えば、網目状のメッシュシートなどの通気性シートを設けたことにより、手袋本体内の蒸れによる不快感を解消することができ、より快適な使用感を図ることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、通気性シートに、例えば、ファスナ等の開閉手段を設けることにより、手袋を外すことなく手挿入部内の手指等の状態を観察することができるため、使用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療介護用手袋の(a)正面図および(b)側面図。
【図2】本発明に係るバンドカバーを手袋本体から外した状態の正面図。
【図3】本発明に係るバンドカバーの(a)正面図、(b)展開図および(c)背面図。
【図4】従来の医療用手袋の一例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、この医療用手袋1Aは、開口部11を介して手首から上の部分が収納される手袋本体10と、手首回りを手袋本体10の表面側から固定するリストバンド20と、リストバンド20の一部を覆い隠すように配設されたバンドカバー30とを備えている。
【0027】
手袋本体10には、その内部に手首より上の指先までの部分を収納するのに十分な空間を備えた手挿入部12と、開口部11と連通して手首部分を収納する空間を備えた手首固定部13とが備えられ、手首固定部13の外皮側の所定位置にリストバンド20とバンドカバー30が配設されるようになっている。
【0028】
この例で、手袋本体10は、同一形状の手の甲側のシート14aと掌側のシート14bの外縁が、バイアス14cを介して手首固定部13の部分を除いて縫合され、その全体がミトン状に形成されている。
【0029】
手の甲側のシート14aと掌側のシート14bは、図示はされていないが、外皮と内皮とが重ね合わされた二重構造で形成され、これにより、通気性と強度を確保するようにしている。
【0030】
なお、外布としては、衛生上、抗菌加工が施されていることが好ましく、汚染性、撥水性加工が施されているものが好ましい。また、内布は手に直接触れるものであるため、低刺激であり、吸水・拡散作用によって通気性がよく、汚れを落としやすい材質の布材が用いられることが好ましい。
【0031】
また、掌側のシート14bの手挿入部12が位置する外皮と内皮との間に、衝撃を吸収するクッション材を装着してもよく、例えば、内皮にクッション材着脱用のスリットを設け、このスリットを介してクッション材を開口部側で着脱自在に装着するようにしてもよい。
【0032】
クッション材としては、ある程度の弾性を持つポリエステル製のフェルトをパット状にしたものが用いることができるが、これ以外に、硬質発泡ウレタンや低反発発泡ウレタン、クッション性を有する繊維体であってもよい。
【0033】
これによれば、患者等がパニック状態に陥って暴れた場合でも、患者等自身の手を守ることができるとともに、周囲の者に対する危害を抑えることができ、安全性を向上させることができる。
【0034】
本発明において、手の甲側のシート14aには、手挿入部12と対向する面に通気窓15が設けられ、ここにメッシュシート等の通気性シート16が張設されて手挿入部12と外気との通気性を確保するようにしている。
【0035】
また、通気性シート16には、その幅方向に沿って開閉自在なファスナ17が設けられており、ファスナ17を開放することで、手挿入部12内に配置された患者等の手を観察できるようになっている。
【0036】
なお、ファスナ17の閉着位置には引き手カバー部18が設けられており、その閉着状態において、引き手カバー部18内にファスナ17の引き手17aを収容することで、患者等の口により引き手17aが引っ張られてファスナ17が開けられないようにしている。
【0037】
手袋本体10の手首固定部13には、リストバンド20が一体的に取り付けられており、手首固定部13の手の甲側および掌側の所定位置には、それぞれベルト通し13a,13bが設けられている。
【0038】
リストバンド20は、非伸縮性の帯状テープからなり、その一端がDカン19を包持した状態で手首固定部13の開口端側に縫着されており、その自由端側にフック面ファスナ21が、その他端側にループ面ファスナ22がそれぞれ設けられている。
【0039】
この実施形態において、手首固定部13の手の甲側には、バンドカバー30が係着されている。この例で、バンドカバー30は、図3に示すように、ほぼ同一形状の上フラップ31と下フラップ32とが重ね合わされ、その対向する一辺同士が縫合されて五角形状に形成されている。
【0040】
図2および図3(c)に示すように、バンドカバー30と手首固定部13には、それらが係着される着脱手段40が設けられており、この例において、着脱手段40は、バンドカバー30の下フラップ32の裏面(手首固定部13との対向面)にはフック面ファスナ40aが、手首固定部13側にはループ面ファスナ40bがそれぞれ設けられている。
【0041】
また、上フラップ31と下フラップ32の対向面には、それらを重ね合わせた状態で係着する一対のフックボタン33,34が設けられており、上フラップ31の上フックボタン33と下フラップ32の下フックボタン34とを互いに係着させることにより、それら上下フラップ31,32を固定することができる。
【0042】
なお、この例において、上フックボタン33と下フックボタン34とは、その係着状態が、上フックボタン33の中央に設けられた凹部33aを押圧しなければその係着状態を容易に解除できないようになっている。
【0043】
次に、図1および図2を参照して、この医療介護用手袋1Aの使用手順の位置について説明する。まず、この医療用手袋1Aを装着するにあたって、手の甲側のシート14aの手首固定部13に設けられたループ面ファスナ40b上にバンドカバー30の下フラップ32のフック面ファスナ40aを係着させ、手袋本体10にバンドカバー30を取り付ける。
【0044】
そして、バンドカバー30の上下フラップ31,32の上下フックボタン33,34の係着状態を解除して上フラップ31を開き、リストバンド20を下フラップ32上に掛け渡してベルト通し13aに挿通した後、掌側のシート14b側へと回し込み、リストバンド20を掌側のシート14bのベルト通し13bとDカン19へと通す。
【0045】
次に、開口部11から手を挿入し、リストバンド20をDカン19への挿通方向とは逆方向に折り返し、折り返したリストバンド20の自由端側を再び手の甲側のシート14a側に回し込み下フラップ32上に掛け渡した後、リストバンド20を患者等の手首サイズに合わせてリストバンド20のフック面ファスナ21とループ面ファスナ22とを係止させる。
【0046】
この状態で、バンドカバー30の上フラップ31を下フラップ32側に重ね合わせ、リストバンド20をバンドカバー30で覆い隠すようにして上フックボタン33と下フックボタン34とを係着させる。これにより、患者等の手が医療用手袋1Aに装着される。
【0047】
このように、リストバンド20の係止部分をバンドカバー30で覆い隠すようにすることができるため、患者等の衝動的な行動によってリストバンド20の係止部分に損傷を与えることがなく、手袋の耐久性を向上させることができる。
【0048】
また、例えば、患者等の衝動的な行動によってバンドカバー30のフックボタン33,34が壊れる等の損傷が起きた場合でも、バンドカバー30のみを交換すればよく、手袋全体を修理に出したり新たな手袋を購入する必要もなく経済性を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、バンドカバー30を手首固定部13の手の甲側のみに設けた例で説明したが、掌側に設けても良く、手の甲側と掌側の双方に設けても良く、バンドカバー30の配設位置は、リストバンド20の巻回方向、係止位置に合わせて適宜選択されてよい。
【0050】
また、この例では、バンドカバー30を面ファスナ等の着脱手段40により手袋本体10に取り付けるようにしているが、リストバンド20を、単にバンドカバー30の上下フラップ31,32内に挿通することによってもリストバンド20を覆い隠すことができる。
【0051】
本実施形態では、リストバンド20の両端に設けられたフック面ファスナ21とループ面ファスナ22とを係着することによりリストバンド20の締着位置を調整しているが、これに限られることはなく、例えば、バンドカバー30の上下フックボタン33,34と同様のフックボタンにより締着位置を調整するようにしてもよい。
【0052】
また、手袋本体10の手挿入部12に収納された手を観察するため、その開閉手段として通気性シート16の幅方向にファスナ17を設けているが、通気性シートの斜め方向あるいは長さ方向に設けても良く、また、通気性シートを重ね合わせる構成とし、その重なり部分に面ファスナ等の開閉手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1A 医療介護用手袋
10 手袋本体
11 開口部
12 手挿入部
13 手首固定部
13a,13b ベルト通し
14a 甲側のシート
14b 掌側のシート
14c バイアス
15通気窓
16 通気性シート
17 ファスナ
18 引き手カバー部
19 Dカン
20 リストバンド
21,22 面ファスナ
30 バンドカバー
31,32 フラップ
33,34 フックボタン
40 着脱手段(面ファスナ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を介して手首から先の部分が収納される手袋本体と、上記手袋本体の外皮面側に一体的に設けられたリストバンドとを含み、上記リストバンドを上記手袋本体の外皮面側から手首回りに巻き付けて係止することにより上記手首に固定させ、上記手袋本体内に手を保持させる医療介護用手袋において、
上記手袋本体の手の甲側および/または掌側の外皮面には、上記リストバンドの少なくとも係止部分を覆い隠す着脱自在なバンドカバーが取り付けられていることを特徴とする医療介護用手袋。
【請求項2】
上記バンドカバーは、上記リストバンドの上下面を挟むように覆い隠す上フラップと下フラップと、上記各フラップが重ね合わされた状態で係着される係着手段とが設けられており、上記手袋本体と上記下フラップとの対向する面には、それらの着脱を自在とする着脱手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の医療介護用手袋。
【請求項3】
上記手袋本体の手の甲側の外布には、手首より上の部分が配置される部分に通気窓が設けられており、上記通気窓は通気性シートで覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の医療介護用手袋。
【請求項4】
上記通気性シートが、網目状のメッシュシートであることを特徴とする請求項3に記載の医療介護用手袋。
【請求項5】
上記通気性シートには、上記手袋本体の内部を視認可能な開閉手段が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の医療介護用手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−172280(P2012−172280A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36016(P2011−36016)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(506061923)竹虎ヒューマンケア株式会社 (4)
【Fターム(参考)】