説明

医療介護用手袋

【課題】患者の手指の動きを拘束するために用いられる医療介護用手袋に関し、患者への精神的なストレスを軽減しつつ、手を安全に拘束することができる医療介護用手袋を提供する。
【解決手段】手を収納する袋状のミトン部2と、ミトン部の掌側に配置され、衝撃吸収用のクッションパッドを内蔵するクッション部3とを有し、ミトン部の手が挿入される開口部には、開口部を締め付けて、手首に固定するリストベルト4が設けられている医療介護用手袋において、ミトン部には、指先をクッション部の側面に差し込んで、クッション部の縁の一部を掴むことができるポケット部23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の手指の動きを拘束するために用いられる医療介護用手袋に関し、さらに詳しく言えば、患者の精神的なストレス負担を軽減することができる医療介護用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば重度の認知症患者や意識レベルが低い患者は、無意識的に暴れたり、点滴ラインなどを引き抜いたりすることがしばしばある。そこで、このような行為を防止するために、例えば特許文献1に記載された医療介護用手袋が用いられる。
【0003】
この医療介護用手袋は、患者の手全体をすっぽりと包み込む袋状のミトン部を有し、ミトン部の掌側には、患者が暴れた際に、手や周囲を傷つけないようにするため、クッション部が設けられている。
【0004】
これによれば、患者が手を使って暴れたり、点滴ラインなどを強引に引き抜いたりすることを防止でき、さらに暴れた際に手を汚したり、周囲を破損したりすることをクッション部によって効果的に防止することができる。
【0005】
しかしながら、この医療介護用手袋には、次のような問題があった。すなわち、従来の医療介護用手袋は、ミトン部やクッション部を手で掴んだり、指でつまめないよう掌側がフラットに形成されていたが、このようにすると、逆に患者への精神的なストレス負担が増え、暴れたりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−150726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、患者への精神的なストレスを軽減しつつ、手を安全に拘束することができる医療介護用手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、手を収納する袋状のミトン部と、上記ミトン部の掌側に配置され、衝撃吸収用のクッションパッドを内蔵するクッション部とを有し、上記ミトン部の手が挿入される開口部には、上記開口部を締め付けて、手首に固定するリストベルトが設けられている医療介護用手袋において、上記ミトン部には、指先を上記クッション部の側面に差し込んで、上記クッション部の縁の一部を掴むことができるポケット部が設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記ミトン部は、手の甲から指先にかけてを覆う布片を有し、上記布片は、上記クッション部の下端から側面の間の位置で縫着されることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記ポケット部は、少なくとも指先から第1関節までが挿入可能な深さを有することを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1,2または3において、記クッションパッドは、上記ミトン部側に配置され、柔軟な発泡体からなる軟質クッションパッドと、上記軟質クッションパッドよりも硬質な硬質クッションパッドとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クッション部の側面に指を差し込むことができるポケット部を備えていることにより、ポケット部に指を入れてクッション部の縁を掴むことができ、患者のストレス緩和を促して、より安全に手を拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療介護用手袋の平面図
【図2】上記医療介護用手袋の中央横断面図。
【図3】以上医療介護用手袋の使用状態図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
図1および図2に示すように、この医療介護用手袋1は、指先から手首に至るまでの手H全体を覆う袋状のミトン部2と、同ミトン部2の掌側(図2では下面側)に沿って配置されるクッション部3とを有し、ミトン部2の手Hが挿入される開口部21には、ミトン部2に手を入れた状態で固定するためのリストベルト4が設けられている。
【0016】
ミトン部2は、通気性を有するメッシュ布からなる外布22を有し、この外布22がクッション部3の下端縁に沿って縫着されている。この例において、外布22はメッシュ布からなるが、例えばメリヤス綿布などの基布と、メッシュ布などを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
外布22は、クッション部3の下端縁に沿って縫着されることで、クッション部3の側面に指を差し込むポケット部23が形成される。この例において、外布22は、クッション部3の下端縁に沿って縫着されることでポケット部23を形成しているが、ポケット部23を形成するには、少なくともクッション部3の下端縁から側面にかけての間で縫着すればよい。
【0018】
ポケット部23は、クッション部3の側面と外布22との間に形成される空間であり、少なくとも指の第1関節までが差し込み可能な深さを有していることが好ましい。これによれば、ポケット部23に指を差し込んで、クッション部3の縁を掴むことができ、患者の拘束ストレスを緩和することができる。
【0019】
この例において、外布22の一部には、ミトン部2の指先側を3つのエリアに区画するための縫着部24,24が設けられている。縫着部24,24は、外布22とクッション部3との間を直線状に縫着することで、親指が差し込まれる第1エリア24aと、人差し指から薬指までが収納される第2エリア24bと、小指が収納される第3エリア24cとの3つのエリアに区画される。これによれば、ミトン部2の指先側の空間が区画されることにより、指の収まりがよくなり、患者への負担をより軽減することができる。
【0020】
この例において、外布22は単なるメッシュシートが用いられているが、例えば看護師がいちいち医療介護用手袋1を取り外すことなく患者の手を看ることができるように、一部にファスナー等の開閉手段が設けられててもよい。なお、開閉手段は手の甲側に配置されることが好ましい。
【0021】
次に、クッション部3は、ミトン部2の掌側に配置されており、内部に所定の厚さを有する肉厚なクッション材31が設けられている。この例において、クッション材31は、例えばウレタンフオームなどの軟質な衝撃吸収特性を有する軟質クッション材32と、例えばフェルトなどの硬質な硬質クッション材33とを組み合わせたものからなり、掌側(図2では上側)に軟質クッション材32が、反掌側(図2では下側)に硬質クッション材33が配置されている。
【0022】
クッション部3は、掌が載置される載置面3aと、載置面3aの周縁からほぼ直角に形成された側面3bとを有する扁平な円盤状に形成されている。本発明において、クッション部3は載置面3aと側面3bとが明瞭に形成されていることが好ましい。
【0023】
クッション材31は、上述した少なくとも第1関節までの差し込み可能な深さを有するポケット部23を形成するに十分な肉厚を備えていることが好ましい。この例において、クッション材31は、軟質クッション材32の厚さが30〜40mm、硬質クッション材33の厚さが3〜8mmで、合計厚さ33〜48mmに形成されている。
【0024】
この例において、軟質クッション材32は、ウレタンフォームが用いられるが、例えば低反発ポリウレタンや天然スポンジなどが用いられてもよい。さらには、羽毛などが用いられてもよく、適度なクッション性が得られるものであれば、仕様に応じて任意に選択されてよい。また、硬質クッション材33についても、フェルト以外に、発泡スチロールや各種発泡樹脂、クッション性を有する繊維体などが用いられてもよい。
【0025】
リストベルト4は、帯状のベルト本体41と、ベルト本体41の一端側に取り付けられたバックル42とを有し、ベルト41を手首に沿って締め付けたのち、バックル42でその締め付け状態を固定できるようになっている。
【0026】
この例において、リストベルト4は、バックル式の固定手段が用いられているが、これ以外に、面ファスナーやボタン式の固定手段が用いられてもよく、手がミトン部2の中から抜けないようにすることができれば、仕様に応じて任意に選択可能である。
【0027】
次に、図3を参照しながら、この医療介護用手袋1の使用手順の一例について説明する。装着方法は至って簡単であって、まず、患者の手Hを開口部21からミトン部2内に挿入したのち、リストベルト4を締め付けることにより、装着することができる。
【0028】
このとき、患者の手Hは、指先がポケット部23に差し込むことができるため、指でクッション部3の角を引っ掛けたり、掴んだりすることができ、指を自由に動かすことができる。これにより、患者が拘束によるストレスで暴れたりするのを効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 医療介護用手袋
2 ミトン部
23 ポケット部
3 クッション部
4 リストベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手を収納する袋状のミトン部と、上記ミトン部の掌側に配置され、衝撃吸収用のクッションパッドを内蔵するクッション部とを有し、上記ミトン部の手が挿入される開口部には、上記開口部を締め付けて、手首に固定するリストベルトが設けられている医療介護用手袋において、
上記ミトン部には、指先を上記クッション部の側面に差し込んで、上記クッション部の縁の一部を掴むことができるポケット部が設けられていることを特徴とする医療介護用手袋。
【請求項2】
上記ミトン部は、手の甲から指先にかけてを覆う布片を有し、上記布片は、上記クッション部の下端から側面の間の位置で縫着されることを特徴とする請求項1に記載の医療介護用手袋。
【請求項3】
上記ポケット部は、少なくとも指先から第1関節までが挿入可能な深さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療介護用手袋。
【請求項4】
上記クッションパッドは、上記ミトン部側に配置され、柔軟な発泡体からなる軟質クッションパッドと、上記軟質クッションパッドよりも硬質な硬質クッションパッドとを有することを特徴とする請求項1,2または3に記載の医療介護用手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−224953(P2012−224953A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92645(P2011−92645)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(506061923)竹虎ヒューマンケア株式会社 (4)
【Fターム(参考)】