説明

医療容器並びに医療用容器の密閉方法及び開封方法

【課題】 医療用容器において、雑菌や異物の混入を防止すべく容器を密閉する方法及び密閉体の切れ端などが異物として残留することなく開封する方法を提供し、同方法に使用する医療用容器を提供する。
【解決手段】 医療用容器1において、口元部3の表面に合成樹脂フィルム5を熱溶着により溶着し、口元部3の開口部4をシールする医療用容器の密閉方法を採用する。他に、超音波振動、高周波誘電加熱、レーザーによっても合成樹脂フィルム5を溶着することができる。また、開封においては、熱風、輻射熱、レーザー、高周波誘電加熱、電磁誘導、切欠、剥離により、合成樹脂フィルム5を溶解収縮し、開封する方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用容器並びに医療用容器の口元部の開口部をシールする密閉方法及びその開口部の開封方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液などの内容物を注入して、点滴など使用する医療用容器(以下、容器ということがある。)は、口元部を有し、該口元部の開口部から内容物が容器内に注入される。例えば、特許文献1に開示された医療用容器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−52413号(第2頁、第1〜3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、容器の製造と内容物の注入は、同時に行われるとは限らない。容器の輸送過程で雑菌や異物が容器内に混入している可能性もあるため、内容物を注入する前に、容器内を洗浄する必要があった。
【0005】
しかし、容器の洗浄工程がなければ、その分作業効率が向上する。そのため、輸送時に容器内を無菌状態に維持し、異物の混入を防止するため、あるいは輸送時における容器の変形を防止するため、容器内に無菌空気を充填した後、容器の口元部の開口部が密閉体により密閉された状態で提供されることが望まれてきた。
【0006】
かかる密閉方法に伴い、安全かつ迅速に容器を開封する方法も望まれる。すなわち、刃物などによる切断や突起物などに破断によって開封すると、密閉体の切れ端などが異物として残留するおそれがある。また、開封に際し時間を要すると、作業効率も低下する。
【0007】
本発明の目的は、医療用容器において、雑菌や異物の混入を防止すべく容器を密閉する方法及び密閉体の切れ端などが異物として残留することなく開封する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明は、口元部を有する医療用容器において、その口元部の表面に合成樹脂フィルムを熱溶着により溶着し、口元部の開口部をシールする医療用容器の密閉方法を採用した。
【0009】
医療用容器は、一般に合成樹脂製であるので、熱溶着(熱シール、ヒートシールとも呼ばれる。)によれば、口元部と密閉体としての合成樹脂フィルム(以下、フィルムという。)とを隙間なく溶着することができる。その結果、容器内に雑菌や異物の混入を防ぐことができる。また、輸送時の容器の変形も防止できる。
【0010】
また、口元部を有する医療用容器において、その口元部の表面に合成樹脂フィルムを超音波縦振動又は超音波ねじり振動若しくはこれらの混合の振動により溶着し、口元部の開口部をシールする医療用容器の密閉方法も採用できる。
【0011】
口元部の表面にフィルムを配し、超音波振動により振動させると、口元部とフィルムとの間に摩擦を生じる。該摩擦の発熱により、口元部とフィルムが溶解することに互いに溶着される。
【0012】
口元部を有する医療用容器において、その口元部の表面に合成樹脂フィルムを高周波誘電溶着により溶着し、口元部の開口部をシールする医療用容器の密閉方法も採用できる。
【0013】
合成樹脂の誘電損を利用し、高周波電界を印加することにより、合成樹脂が発熱する。この現象を利用し、口元部の表面にフィルムを配し、両者を2つの電極で挟み、電極間に高周波電流を流すことにより、口元部とフィルムが発熱する。該発熱により、両者が溶解するので、互いに溶着される。
【0014】
口元部を有する医療用容器において、その口元部の表面に合成樹脂フィルムをレーザー溶着により溶着し、口元部の開口部をシールする医療用容器の密閉方法も採用できる。
【0015】
レーザー光が照射されると、レーザー光のエネルギーにより照射された部分が加熱される。口元部の表面にフィルムを配し、フィルムにレーザー光を照射すると、フィルムが加熱される。同時に、フィルムは透明又は半透明であるので、レーザー光の一部が透過し、口元部も加熱される。したがって、口元部とフィルムが溶解するので、互いに溶着される。なお、光学系により、レーザー光を口元部に沿って走査したり、レーザー照射の幅を変化させたりできる。また、プリズム、ハーフミラー、ビームスプリッターなどにより、レーザー光を複数に分岐すれば、同時に複数の容器に対してフィルムの溶着が可能である。
【0016】
前記合成樹脂フィルムは二層以上のイージーピール用多層フィルムである医療用容器の密閉方法も採用できる。
【0017】
合成樹脂フィルムが二層以上のイージーピール用多層フィルムであれば、切れ端等が残留することなくシールを開封することができる。なお、イージーピール用多層フィルムは、シール層とピール層を含む多層フィルムであって、容易に剥離され開封可能な(イージーピール性、易開封性)フィルムである。シール層が破壊されて剥離する凝集剥離タイプ、シール層が他の層から剥離する層間剥離タイプ、シール層が溶着面から剥離する界面剥離のいずれのタイプのフィルムも使用できる。
【0018】
また、以上述べたいずれかの方法により、口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器も採用できる。
【0019】
口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器であれば、
剥離や溶解により容易にシールを開封でき、しかもフィルム切れ端などが容器に残留するおそれがない。
【0020】
さらに、前記口元部がフランジを有し、前記フランジの内周部表面が前記フランジの外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置され、前記フランジの外周部表面に合成樹脂フィルムが溶着され、前記口元部の開口部がシールされた医療用容器も採用できる。
【0021】
後述する溶解収縮によるシール開封方法を採用する場合、フィルムは口元部内周辺縁部に収縮した状態で残留する。口元部がフランジを有し、前記フランジの内周部表面が前記フランジの外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置され、前記フランジの外周部表面に合成樹脂フィルムが溶着されているので、溶解収縮されたフィルムが前記段部に残留し、フランジの外周部表面より容器外側に突出することがない。その結果、内容物充填後に行われる合成樹脂フィルムやキャップ等の溶着が容易となる。
【0022】
また、前記フランジの外周部表面と前記フランジの内周部表面との段差が0.3〜1.5mmである医療用容器とすることもできる。
【0023】
0.3mm未満であると、段部が小さく収縮したフィルムが収まらず、内容物充填後に行われる合成樹脂フィルムやキャップ等の溶着の妨げとなる。また、1.5mmを越えると、段部のあるフランジの部分が薄くなりフランジの強度が低下することがある。
【0024】
また、前記口元部の内周部表面が前記口元部の外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置され、前記前記口元部の外周部表面に合成樹脂フィルムが溶着され、前記口元部の開口部がシールされた医療用容器とすることもできる。
【0025】
口元部の肉厚が比較的厚い場合、フランジを設けるまでもなく、口元部の外周部と内周部を設け、前記内周部表面が前記口元部の外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置することができ、同様に開封時に溶解収縮されたフィルムが前記段部に残留し、その後の合成樹脂フィルムやキャップ等の溶着が容易となる。
【0026】
以上述べた方法により密閉された容器内に内容物を注入する際に、フィルムを開封する必要がある。このとき、シールされたフィルムを除去する必要があるが、切断や破断によると、フィルムの切れ端が異物として残留するおそれがある。かかる場合、以下に述べる開封方法を採用できる。
【0027】
すなわち、口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封する医療用容器の開封方法を採用できる。
【0028】
合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封することにより、均等にかつ素早く開封することができる。
【0029】
また、合成樹脂フィルムの中央部と発熱先端部との距離が最短で、前記合成樹脂フィルムの周辺部と発熱周辺部との距離が相対的に長く、前記合成樹脂フィルムの中央部に到達する輻射熱量が最大となる発熱先端部及び発熱周辺部を備えた発熱体を用いて、当該発熱体を接近させ、前記発熱体からの輻射熱により、前記合成樹脂フィルムを中央部より溶解収縮させて開封する医療用容器の開封方法とすることができる。
【0030】
発熱体からの輻射熱を利用して、フィルムを溶解収縮させ、容器を開封することができる。発熱体との間隔や輻射熱の照射時間を調節すれば、口元部が溶解することはない。特に、合成樹脂フィルムの中央部と発熱先端部との距離が最短で、前記合成樹脂フィルムの周辺部と発熱周辺部との距離が相対的に長く、前記合成樹脂フィルムの中央部に到達する輻射熱量が最大となる発熱先端部及び発熱周辺部を備えた発熱体により、当該発熱体を接近させ、前記発熱体からの輻射熱により、前記合成樹脂フィルムを中央部より溶解収縮させて開封することにより、合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封することにより、均等にかつ素早く開封することができる。また、一様に加熱されることにより合成樹脂フィルムが周囲に溶解収縮せず、溶解した合成樹脂フィルムが容器内部に落下残留することも防止できる。
【0031】
また、合成樹脂フィルムの中央部に到達する熱風が最大となる熱風手段より、前記合成樹脂フィルムを中央部より溶解収縮させて開封する医療用容器の開封方法とすることができる。
【0032】
フィルムに熱風を当てると、フィルムの一部が溶解し開口すると共に、フィルム面方向に収縮し、容器が開封される。フィルムは収縮するので、一部が切れ端などとなり容器内に残留することはない。また、口元部はフィルムに比べ十分厚いので、ノズルなどで熱風を調整すれば、口元部が溶解することはない。特に、合成樹脂フィルムの中央部に到達する熱風が最大となる熱風手段よれば、合成樹脂フィルムを中央部より溶解収縮させて開封でき、均等にかつ素早く開封することができる。
【0033】
また、前記口元部がフランジを有し、前記フランジの内周部表面が前記フランジの外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置され、前記フランジの外周部表面に合成樹脂フィルムが溶着され、前記口元部の開口部がシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封する医療用容器の開封方法とすることもできる。
【0034】
開封前において、口元部がフランジを有し、前記フランジの内周部表面が前記フランジの外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置され、前記フランジの外周部表面に合成樹脂フィルムが溶着されているので、合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮されたフィルムが前記段部に残留し、フランジの外周部表面より容器外側に突出することがない。その結果、内容物充填後に行われる合成樹脂フィルムやキャップ等の溶着が容易となる。
【0035】
前記口元部の内周部表面が前記口元部の外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置され、前記口元部の外周部表面に合成樹脂フィルムが溶着され、前記口元部の開口部がシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封する医療用容器の開封方法とすることもできる。
【0036】
同様に、口元部の肉厚が比較的厚いと同様に段部を構成できる。かかる場合、合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮されたフィルムが前記段部に残留し、フランジの外周部表面より容器外側に突出することがなく、内容物充填後に行われる合成樹脂フィルムやキャップ等の溶着が容易となる。
【0037】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムにレーザー光を照射し、前記合成樹脂フィルムを溶解収縮させて開封する医療用容器の開封方法も採用できる。
【0038】
レーザー光を局所的にフィルムに照射すれば、照射された部分だけ溶解収縮するので、切れ端などが残留することなく、容器を開封することができる。
【0039】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムを高周波誘電により、前記合成樹脂フィルムを溶解収縮させ開封する医療用容器の開封方法も採用できる。
【0040】
フィルムの誘電損を利用した高周波誘電により、フィルムのみが加熱され、溶解収縮するので、切れ端などが残留することなく、容器を開封することができる。
【0041】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムを電磁誘導により、前記合成樹脂フィルムを溶解収縮させて開封する医療用容器の開封方法も採用できる。
【0042】
電磁誘導により、フィルムのみが加熱され、溶解収縮するので、切れ端などが残留することなく、容器を開封することができる。
【0043】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムを保持し、前記合成樹脂フィルムの内周部を切欠し、切欠された前記合成樹脂フィルム片を除去して開封する医療用容器の開封方法も採用できる。
【0044】
合成樹脂フィルムを保持して、前記合成樹脂フィルムの内周部を切欠し、切欠された前記合成樹脂フィルム片を除去するので、開封されたフィルムが容器内部等に残留することがない。フィルムの保持は、チューブや管等による吸引により保持することができ、フィルムを切欠した後、同様にフィルムを除去することができる。
【0045】
口元部を有し、前記口元部の開口部が剥離可能な合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムを剥離して開封する医療用容器の開封方法も採用できる。
【0046】
特に、剥離可能な合成樹脂フィルムによりシールされている場合、前記合成樹脂フィルムを剥離すれば、切れ端等が残留することなく開封することができる、なお、剥離可能な合成樹脂フィルムとして、イージーピール用多層フィルムが好適に使用でき、凝集剥離、層間剥離、界面剥離のいずれのタイプのフィルムも使用できる。
【0047】
内容物を注入後、すぐに容器を使用することが多いが、一時的に再保管する必要なときがある。かかる場合、上述した熱風、輻射熱、レーザー、高周波誘電、電磁誘導、切欠、剥離のいずれかの方法により、医療用容器の口元部の開口部をシールする合成樹脂フィルムを開封し、前記医療用容器内に内容物を充填し、上述した熱溶着、超音波振動溶着、高周波誘電溶着、レーザー溶着のいずれかの方法により、再び口元部の開口部を合成樹脂フィルム又はキャップの溶着により密封する医療用容器の内容物充填方法が採用できる。
【0048】
かかる方法により、再度、フィルムをシールすることができ、雑菌や異物が混入することなく、内容物の保存が可能となる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、医療用容器において、口元部に合成樹脂フィルムが溶着され、シールされるので、雑菌や異物の混入を防止でき、輸送時の変形を防止できる。また、開封時においては、合成樹脂フィルムが溶解収縮されるので、切れ端などが異物として残留することなく開封できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る方法の対象である医療用容器を示す概略断面図である。
【図2】熱溶着によりフィルムを溶着する方法を示す図である。
【図3】超音波振動によりフィルムを溶着する方法を示す図である。
【図4】高周波誘電によりフィルムを溶着する方法を示す図である。
【図5】レーザーによりフィルムを溶着する方法を示す図である。
【図6】本発明に係る医療用容器の口元部の要部断面図である。(a)は開封前の断面、(b)は開封後の断面を示す。(c)は溶着しろにより段部を構成する様子を、(d)は溶着しろにより段部が構成された様子を示す。
【図7】熱風によりシールを開封する方法を示す図である。
【図8】輻射熱によりシールを開封する方法を示す図である。
【図9】輻射熱によりシールを開封する他の方法を示す図である。
【図10】レーザーによりシールを開封する方法を示す図である。
【図11】電磁誘導によりシールを開封する方法を示す図である。
【図12】切欠によりシールを開封する方法を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 医療用容器
2 容器部
3 口元部
3a フランジ部
4 開口部
5 合成樹脂フィルム
10 発熱体
11 アンビル
12 巻き取り装置
15 刃部
16 溶着部
20 超音波振動子
30 高周波電源
40、70 レーザー発振器
【発明の実施の形態】
【0052】
以下、図面を用いて本発明に係る密閉方法及び開封方法について説明する。図1は、本発明に係る方法の対象である医療用容器を示す概略断面図である。図1において、1は医療用容器、2は容器部、3は口元部、4は開口部である。医療用容器1は、容器部2に略円筒状の口元部3が取り付けられた構造を有する。口元部3を介して、容器部2に内容物が注入される。図1では、容器部2は、ボトル形状を有しているが、バッグ形状や内容物に応じて他の形状とすることができる。
【0053】
容器1が製造された時点では、口元部3は開口した状態である。そのため、内容物が注入されるまで、開口部4を覆った状態に保ち、雑菌や異物の混入を防止する必要がある。また、輸送時において、容器部2の変形を防止する必要もある。
本発明においては、口元部3の表面に合成樹脂フィルムを溶着し、開口部4を該合成樹脂フィルムでシールし、医療用容器1を密閉する方法を採用する。溶着方法は、熱、超音波、高周波誘電、レーザーのいずれによる溶着方法でも可能である。以下、それぞれの方法について説明する。なお、合成樹脂フィルムの材質は、口元部3と同質の材料であることが好ましく、ポリプロピレン又はポリエチレンが好適である。
【0054】
図2は、熱溶着によりフィルムを溶着する方法を示す図である。図において、合成樹脂フィルム5が口元部3を覆うように配置されている。溶着面積を増やすために、口元部3はフランジ3aを有し、フランジ3aがアンビル11上に固定されている。発熱体10は、フランジ3aに当接可能に突条10aを有し、突条10aは、フランジ3aに沿った形状を有している。
発熱体10の突条10aがフィルム5に当接し、フィルム5が溶解し始める。次に、フランジ3aも溶解し、フィルム5とフランジ3aとが溶着される。溶着終了後、フィルム5を適当に切断すれば、密封が完了する。なお、巻き取り装置12とローラ13とを備えていれば、フィルム5を順次供給できるので、フィルム溶着の効率が向上する。また、発熱体10は、電気ヒーター等により加熱することができる。なお、刃部15を設けて、溶着完了後、刃部15を下方に移動させてフィルム5を切断することも可能である。
【0055】
図3は、超音波振動によりフィルムを溶着する方法を示す図である。図2と同様に、合成樹脂フィルム5が口元部3を覆うように配置され、フランジ3aがアンビル11上に固定されている。超音波振動子20は、フランジ3aに当接可能に突条20aを有し、突条10aは、フランジ3aに沿った形状を有している。超音波振動子20は、縦振動(図中、A方向の上下往復運動の振動)又はねじり振動(図中、B方向の回転往復運動の振動)、もしくはこれらの混合の振動を発生する振動子である。
超音波振動子20が振動しながら下方に移動すると、突条20aがフィルム5に当接し、フィルム5が加圧されながら振動される。フィルム5とフランジ3aとの間に摩擦が生じ、摩擦熱が発生する。該摩擦熱によりフィルム5とフランジ3aが溶解することにより、溶着される。
【0056】
なお、突条20aは、1又は複数のリング状突条とすることができる。ねじり振動を含む振動の場合、振動子20が刃部を備えていれば、ねじり振動により、溶着と共にフィルムの切断も可能となる。また、発熱が局所的であるので、比較的薄いフィルムの溶着も可能となる。
【0057】
図4は、高周波誘電によりフィルムを溶着する方法を示す図である。一対の電極30が、フィルム5とフランジ3aとを密着して挟むように配置され(説明のため、図中、間隔をあけて描いている。)、電極30には高周波電源31が接続されている。
【0058】
高周波電流が電極30の間を流れると、フィルム5とフランジ3aの誘電損により、フィルム5とフランジ3aは誘電加熱される。その結果、フィルム5とフランジ3aが溶解することにより、溶着される。この方法も、発熱が局所的であるので、比較的薄いフィルムの溶着も可能となる。なお、フィルム5とフランジ3aは、誘電損の高い材質であれば、効率よく溶着できる。誘電損の高い周波数を選択し、さらに効率を上げることができる。
【0059】
図5は、レーザーによりフィルムを溶着する方法を示す図である。図において、レーザー発振器40から発せられるレーザー光41は、光学系42により方向を変換され、フランジ3a上に配置されたフィルム5を照射する。レーザー光41のエネルギーにより照射されたフィルム5が加熱される。同時に、フィルム5は透明又は半透明であるので、レーザー光41の一部が透過し、フランジ3aも加熱される。その結果、フィルム5とフランジ3aが溶解するので、互いに溶着される。この方法も、発熱が局所的であるので、比較的薄いフィルムの溶着も可能となる。なお、光学系42により、レーザー光41をフランジ3aに沿って走査したり、レーザー照射の幅を変化させたりできる。また、プリズム、ハーフミラー、ビームスプリッターなどにより、レーザー光41を複数に分岐すれば、同時に複数の容器に対してフィルムの溶着が可能であり、レーザー光がフィルム5を透過するので、フィルム5とフランジ3aとの接触部が直接加熱されるので、厚さが1mm以上のフィルムに対しても良好に溶着可能である。なお、図3〜図5に示した溶着方法においても、図2に示した刃部15を設けてフィルム5を切断することもできる。
【0060】
本発明に係る方法で使用される合成樹脂フィルムは、1層であっても多層であっても構わないが、二層以上の剥離可能な多層フィルムであれば、剥離により容易に開封可能であり、フィルムが残留又は破断することがない。特に、イージーピール用多層フィルム(イージーピール性を有する多層フィルム)が好適に使用でき、凝集剥離、層間剥離、界面剥離のいずれのタイプのフィルムも使用できる。なお、イージーピール用多層フィルムは、上述の熱溶着又は超音波溶着により好適に溶着することができる。
【0061】
上述した方法でシールされた医療用容器は、口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされているので、剥離や溶解により容易にシールを開封でき、しかもフィルム切れ端などが容器に残留するおそれがない。
【0062】
さらに、図6(a)に示すように、口元部3がフランジ3aを有し、フランジ3aの内周部3bの表面がフランジ3aの外周部3cの表面に対し段部3dをなして容器1の下部側に配置され、フランジ3aの外周部3cの表面に合成樹脂フィルム5が溶着部16において溶着され、口元部1の開口部4がシールされた医療用容器1とすることができる。
【0063】
かかる場合、後述する溶解収縮によるシール開封方法を採用する場合、図6(b)に示すように、溶解収縮されたフィルム5は段部3dに残留し、フランジ3aの外周部3cの表面より容器1外側に突出することがない。その結果、内容物充填後に行われる合成樹脂フィルムやキャップ等の溶着が容易となる。
【0064】
なお、フランジ3aの外周部3cの表面と内周部3bの表面との段差は、0.3〜1.5mmであることが好ましい。0.3mm未満であると、段部3dが小さく収縮したフィルム5が収まらず、内容物充填後に行われる再シールやキャップ溶着の妨げとなる。また、1.5mmを越えると、フランジ3aの厚さが部分的に薄くなりフランジ3aの強度が低下することがある。
【0065】
また、図6(c)に示すように、熱溶着や超音波溶着などにおいて、フランジ3aの表面3eに突起状の溶着しろ17を設け、溶着しろ17とフィルム5とを互いに溶着させる。この場合、図6(d)に示すように、溶着しろ17の突起高さを高くしておき、溶着しろ17の一部が残るように溶着し、残った溶着しろ17とフランジ表面3eにより段部3dを構成することができる。予めフランジ3aに段差を設けなくても、段部3dが構成されるので、同様の効果が得られる。なお、同じく段差dは、0.3〜1.5mmであることが好ましい。
【0066】
口元部3の肉厚が比較的厚い場合、外周部及び内周部を設け、段部3dと同様の段部を設けた口元部とすることができる。同じく、開封時に溶解収縮したフィルムが段部に残留するので、同様の効果が得られる。
【0067】
次に、上述した方法でシールされた容器を開封する方法について説明する。既に述べたように、溶着されたフィルムは薄いので、切断や破断により開封できるが、フィルムの切れ端が異物として残留するおそれがある。したがって、フィルムを溶解収縮させて、開封することが好ましい。特に、合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封する方法がより好ましい。以下、その方法について述べる。
【0068】
図7は、熱風によりシールを開封する方法を示す図である。図において、合成樹脂フィルム5の中央部に到達する熱風が最大となるように、熱風発生装置(図示せず)の送出口51から送出される熱風50がフィルム5の略中央部に当てられている。熱風50により、フィルム5の溶解が始まるが、同時にフィルム5が、フィルム5の中央部から口元部3の縁部へ収縮する。その結果、容器1が開封される。なお、熱風発生装置は公知のもので構わず、電気ヒーターなどの発熱体とファンなどの送風装置との組み合わせなどがある。
【0069】
図8は、輻射熱によりシールを開封する方法を示す図である。図において、トンネル形状の発熱体60より輻射熱61が発せられている。容器1の口元部3を、発熱体60内を通過させると、輻射熱61により、フィルム5の溶解が始まるが、同時にフィルム5が、フィルム5の中央部から口元部3の縁部へ収縮する。その結果、容器1が開封される。なお、発熱体は、トンネル形状でなくても、平板や山形など任意の形状で構わない。
【0070】
図9は、輻射熱によりシールを開封する他の方法を示す図である。図において、合成樹脂フィルム5の中央部と発熱先端部62aとの距離が最短で、合成樹脂フィルム5の周辺部と発熱周辺部62bとの距離が相対的に長く、合成樹脂フィルム5の中央部に到達する輻射熱量が最大となる発熱先端部62a及び発熱周辺部62bを備えた発熱体62より輻射熱61が発せられている。先端部62aをフィルム5の略中央部に接近させると、輻射熱61によりフィルム5の中央部から溶解が始まり、同時にフィルム5がフィルム5の中央部から口元部3の縁部へ収縮する。その結果、容器1が開封されるが、フィルム5の中央部から周囲に向かって、フィルム5が均等に溶解収縮するので、効率よく開封可能となる。
【0071】
また、合成樹脂フィルム5の中央部と発熱先端部62aとの距離が最短で、合成樹脂フィルム5の周辺部と発熱周辺部62bとの距離が相対的に長いので、フィルム5に発せられる輻射熱量は中央部が最も多く一様でないので、溶解収縮が周囲に広がらず、溶解したフィルムが容器1内に落下残留することがない。もちろん、口元部3は図6に示した段部3dを有するフランジ構造を有していることが好ましい。また、口元部3の肉厚が厚いときは、フランジを設けず口元部3に段部を設けた構造としてもよい。
【0072】
図10は、レーザーによりシールを開封する方法を示す図である。図において、レーザー発振器70から発せられるレーザー光71は、光学系42により方向を変換され、広げられ、フィルム5の略中央を照射する。レーザー光71のエネルギーにより照射されたフィルム5が加熱される。フィルム5の溶解が始まるが、同時にフィルム5が、フィルム5の中央部から口元部3の縁部へ収縮する。その結果、容器1が開封される。なお、溶着の場合と同様に、レーザー光71を分岐すれば、同時に複数の容器を開封できる。
【0073】
金属体の周りに高周波電流を流すことにより、溶着と同様に高周波誘電により金属体が発熱し、その発熱体を近いづけることでフィルムが溶解収縮され、容器が開封される。他に、誘電損を利用する方法として、マイクロ波を照射する方法が可能である。マイクロ波は周波数が高いので、材質の内部まで浸透しないので、表面だけ加熱される。本発明の場合、比較的薄いフィルムのみ溶解収縮し、容器を開封することができる。
【0074】
図11は、電磁誘導によりシールを開封する方法を示す図である。図において、棒状の発熱体80を取り巻くようにコイル81が巻かれている。高周波電源82により、コイル81に高周波電流を流すと、電磁誘導により発熱体80が加熱される。その結果、発熱体80からの輻射熱により、容器1が開封される。なお、発熱体80は、鉄やステンレスなどの金属や磁性体が使用でき、形状は、棒状の他、他の形状であっても構わない。また、コイル81自体の発熱による断線を抑えるため、コイル81内に冷却水を流動させることが好ましく、例えば、銅パイプなどが導電性・熱伝導性が良く好適に使用できる。
【0075】
図12は、切欠よりシールを開封する方法を示す図である。図において、チューブや管等の吸引部90はフィルム5の略中央部に当接し、フィルム5を吸引し、保持している。そして、刃部91はフィルム5の内周部を沿うようにして、フィルム5を切欠する。フィルム5が切欠されても、吸引部90により保持されていて、吸引部90によりフィルム5を除去することができ、容器1の内部に残留することはない。
【0076】
ところで、容器内に内容物を注入した後、一時的に再保管する必要性があることがある。かかる場合、まず、上述した熱風、輻射熱、レーザー、高周波誘電、電磁誘導、切欠、剥離のいずれかの方法により、合成樹脂フィルムを開封する。次に、容器内に内容物を充填し、上述した熱溶着、超音波振動溶着、高周波誘電溶着、レーザー溶着のいずれかの方法により、再び口元部の開口部を合成樹脂フィルム又はキャップの溶着により密封する医療用容器の内容物充填方法が採用でき、雑菌や異物が混入することなく、内容物の保管が可能となる。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封する医療用容器の開封方法。
【請求項2】
合成樹脂フィルムの中央部と発熱先端部との距離が最短で、前記合成樹脂フィルムの周辺部と発熱周辺部との距離が相対的に長く、前記合成樹脂フィルムの中央部に到達する輻射熱量が最大となる発熱先端部及び発熱周辺部を備えた発熱体を用いて、当該発熱体を接近させ、前記発熱体からの輻射熱により、前記合成樹脂フィルムを中央部より溶解収縮させて開封する請求項1記載の医療用容器の開封方法。
【請求項3】
合成樹脂フィルムの中央部に到達する熱風が最大となる熱風手段より、前記合成樹脂フィルムを中央部より溶解収縮させて開封する請求項1記載の医療用容器の開封方法。
【請求項4】
前記口元部がフランジを有し、前記フランジの内周部表面が前記フランジの外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置され、前記フランジの外周部表面に合成樹脂フィルムが溶着され、前記口元部の開口部がシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封する請求項1記載の医療用容器の開封方法。
【請求項5】
前記口元部の内周部表面が前記口元部の外周部表面に対し段部をなして容器下部側に配置され、前記口元部の外周部表面に合成樹脂フィルムが溶着され、前記口元部の開口部がシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムをその中央部から溶解収縮させて開封する請求項1記載の医療用容器の開封方法。
【請求項6】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムにレーザー光を照射し、前記合成樹脂フィルムを溶解収縮させて開封する請求項1記載の医療用容器の開封方法。
【請求項7】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムを高周波誘電により、前記合成樹脂フィルムを溶解収縮させ開封する請求項1記載の医療用容器の開封方法。
【請求項8】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムを電磁誘導により、前記合成樹脂フィルムを溶解収縮させて開封する請求項1記載の医療用容器の開封方法。
【請求項9】
口元部を有し、前記口元部の開口部が合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムを保持し、前記合成樹脂フィルムの内周部を切欠し、切欠された前記合成樹脂フィルム片を除去して開封する医療用容器の開封方法。
【請求項10】
口元部を有し、前記口元部の開口部が剥離可能な合成樹脂フィルムによりシールされた医療用容器において、前記合成樹脂フィルムを剥離して開封する医療用容器の開封方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法により、医療用容器の口元部の開口部をシールする合成樹脂フィルムを開封し、前記医療用容器内に内容物を充填し、上記口元部の表面に合成樹脂フィルムを超音波縦振動又は超音波ねじり振動若しくはこれらの混合の振動により溶着し、再び口元部の開口部を合成樹脂フィルムの溶着により密封する医療用容器の内容物充填方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法により、医療用容器の口元部の開口部をシールする合成樹脂フィルムを開封し、前記医療用容器内に内容物を充填し、上記口元部の表面に合成樹脂フィルムを高周波誘電溶着により溶着し、再び口元部の開口部を合成樹脂フィルムの溶着により密封する医療用容器の内容物充填方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法により、医療用容器の口元部の開口部をシールする合成樹脂フィルムを開封し、前記医療用容器内に内容物を充填し、上記口元部の表面に合成樹脂フィルムをレーザー溶着により溶着し、再び口元部の開口部を合成樹脂フィルムの溶着により密封する医療用容器の内容物充填方法。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法により、医療用容器の口元部の開口部をシールする合成樹脂フィルムを開封し、前記医療用容器内に内容物を充填し、上記口元部の表面に合成樹脂フィルムを熱溶着により溶着し、口元部の開口部をシールする医療用容器の内容物充填方法。
【請求項15】
前記合成樹脂フィルムは二層以上のイージーピール用多層フィルムである請求項11乃至14のいずれかに記載の医療用容器の内容物充填方法。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−183749(P2009−183749A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120743(P2009−120743)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【分割の表示】特願2003−38202(P2003−38202)の分割
【原出願日】平成15年2月17日(2003.2.17)
【出願人】(000225278)内外化成株式会社 (27)
【Fターム(参考)】