説明

医療情報処理方法、医療情報処理プログラム、および医療情報処理装置

【課題】医師や臨床検査技師などのユーザに対して、検査結果値の正否の判定を適切におこなわせることを可能とすること。
【解決手段】検査結果値抽出条件取得部301は、複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する。検査結果値抽出部302は、抽出条件に該当する検査結果値を抽出する。検査結果値分布データ生成部303は、検査結果値の年齢別の分布データを生成する。判定基準範囲データ生成部304は、判定基準範囲データを年齢別に生成する。判定基準範囲平均化部305は、連続する複数の年齢の判定基準範囲データを平均化する。判定対象検査結果値取得部306は、判定対象の検査結果値を取得する。検査結果値正否判定部307は、判定対象の検査結果値の正否を判定する。判定結果出力部308は、判定結果を出力する。警告情報出力部309は、判定対象の検査結果値が正しくない旨を示す警告情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療情報を処理する、医療情報処理方法、医療情報処理プログラム、および医療情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査結果値が、判定条件(男女別および年齢範囲(大人、小人、または幼児))に対応する正常値範囲内であるか否かにより、検査結果値が異常であるか否かを自動的に判定する臨床検査システムがある(たとえば下記特許文献1参照。)。このような臨床検査システムによれば、検査結果値の判定を迅速に行うことができるものとされている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−151282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、判定条件が粗いうえに、判定条件に対応する正常値範囲をあらかじめ登録しておかなければならないので、手間がかかるうえに、正常値範囲の精度が低い。このため、医師や臨床検査技師などのユーザに対して、検査結果値の正否の判定を適切におこなわせることができない。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、医師や臨床検査技師などのユーザに対して、検査結果値の正否の判定を適切におこなわせることができる医療情報処理方法、医療情報処理プログラム、および医療情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる医療情報処理方法は、複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する検査結果値抽出条件取得工程と、複数の患者の検査結果値を格納するデータベースから、抽出条件に該当する検査結果値を抽出する検査結果値抽出工程と、検査結果値抽出工程が抽出した検査結果値の年齢別の分布データを生成する検査結果値分布データ生成工程と、分布データから、検査結果値の出現率が基準値以下となる範囲の検査結果値を年齢別に削除することにより、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する判定基準範囲データ生成工程と、判定対象の検査結果値を取得する判定対象検査結果値取得工程と、判定対象の検査結果値と、対応する年齢の判定基準範囲データとを比較することにより、判定対象の検査結果値の正否を判定する検査結果値正否判定工程と、検査結果値正否判定工程による判定結果を出力する判定結果出力工程と、を含んだことを特徴とする。
【0007】
この請求項1の発明によれば、抽出条件に該当する信頼性の高い複数の検査結果値に基づく判定基準範囲データを動的に生成することができる。そして生成した判定基準範囲データに基づいて、判定対象の検査結果値の正否を判定することができる。
【0008】
また、請求項2の発明にかかる医療情報処理方法は、請求項1に記載の発明において、連続する複数の年齢の判定基準範囲データを平均化する判定基準範囲平均化工程をさらに含み、検査結果値正否判定工程は、判定対象の検査結果値と、対応する年齢の判定基準範囲平均化工程による平均化後の判定基準範囲データとを比較することにより、判定対象の検査結果値の正否を判定することを特徴とする。
【0009】
この請求項2の発明によれば、年齢の変化による判定基準範囲の急激な変化が緩和された判定基準範囲データを生成することができる。
【0010】
また、請求項3の発明にかかる医療情報処理方法は、請求項1または2に記載の発明において、判定対象の検査結果値が正しくないと検査結果値正否判定工程が判断した場合に、判定対象の検査結果値が正しくない旨を示す警告情報を出力する警告情報出力工程をさらに含んだことを特徴とする。
【0011】
この請求項3の発明によれば、医師や臨床検査技師などのユーザに対して、正しくないと判断された検査結果値に対する対応を即座に促すことができる。
【0012】
また、請求項4の発明にかかる医療情報処理プログラムは、複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する検査結果値抽出条件取得工程と、複数の患者の検査結果値を格納するデータベースから、抽出条件に該当する検査結果値を抽出する検査結果値抽出工程と、検査結果値抽出工程が抽出した検査結果値の年齢別の分布データを生成する検査結果値分布データ生成工程と、分布データから、検査結果値の出現率が基準値以下となる範囲の検査結果値を年齢別に削除することにより、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する判定基準範囲データ生成工程と、判定対象の検査結果値を取得する判定対象検査結果値取得工程と、判定対象の検査結果値と、対応する年齢の判定基準範囲データとを比較することにより、判定対象の検査結果値の正否を判定する検査結果値正否判定工程と、検査結果値正否判定工程による判定結果を出力する判定結果出力工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
この請求項4の発明によれば、抽出条件に該当する信頼性の高い複数の検査結果値に基づく判定基準範囲データをコンピュータに動的に生成させることができる。そして生成した判定基準範囲データに基づいて、判定対象の検査結果値の正否をコンピュータに判定させることができる。
【0014】
また、請求項5の発明にかかる医療情報処理装置は、複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する検査結果値抽出条件取得手段と、複数の患者の検査結果値を格納するデータベースから、抽出条件に該当する検査結果値を抽出する検査結果値抽出手段と、検査結果値抽出手段が抽出した検査結果値の年齢別の分布データを生成する検査結果値分布データ生成手段と、分布データから、検査結果値の出現率が基準値以下となる範囲の検査結果値を年齢別に削除することにより、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する判定基準範囲データ生成手段と、判定対象の検査結果値を取得する判定対象検査結果値取得手段と、判定対象の検査結果値と、対応する年齢の判定基準範囲データとを比較することにより、判定対象の検査結果値の正否を判定する検査結果値正否判定手段と、検査結果値正否判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この請求項5の発明によれば、抽出条件に該当する信頼性の高い複数の検査結果値に基づく判定基準範囲データを動的に生成することができる。そして生成した判定基準範囲データに基づいて、判定対象の検査結果値の正否を判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、医師や臨床検査技師などのユーザに対して、検査結果値の正否の判定を適切におこなわせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる医療情報処理方法、医療情報処理プログラム、および医療情報処理装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(システム構成)
まず、本実施の形態にかかる医療情報処理システムのシステム構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかる医療情報処理システムのシステム構成を示す説明図である。図1において、医療情報処理システム100は、医療情報処理装置110と、検査結果値DB120と、を備えて構成されている。
【0019】
検査結果値DB120は、複数の患者の検査結果値を格納する。具体的には、検査結果値DB120は、複数の患者の検査結果値を、患者情報および検査情報と関連付けて格納する。検査結果値に関連付けられる患者情報としては、たとえば、患者名、年齢、性別、血液型、疾患名、住所、入院期間、診療科名、医療機関名などが挙げられる。また、検査結果値に関連付けられる検査情報としては、たとえば、検査項目名、検査日、検査コメントなどが挙げられる。検査結果値DB120は、医療情報処理装置110に設けられていてもよい。
【0020】
医療情報処理装置110は、ネットワーク130を介して、検査結果値DB120から複数の患者の検査結果値を取得する。医療情報処理装置110は、取得した複数の患者の検査結果値に基づいて、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する。そして、医療情報処理装置110は、判定対象の検査結果値と、対応する年齢の判定基準範囲データとを比較することにより、判定対象の検査結果値の正否を判定し、判定結果を出力する。
【0021】
医療情報処理システム100は、上記処理を複数の情報処理装置が協業しておこなってもよい。一例を挙げると、医療情報処理装置110は、医療情報処理システム100が有する端末装置からの処理要求に応じて、判定対象の検査結果値の正否を判定してもよい。そして、医療情報処理装置110は、判定結果を、上記端末装置に送信してもよい。
【0022】
(医療情報処理装置110のハードウェア構成)
つぎに、医療情報処理装置110のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施の形態にかかる医療情報処理装置110のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0023】
図2に示すように、医療情報処理装置110は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、HDD(ハードディスクドライブ)204と、HD(ハードディスク)205と、ディスプレイ206と、ネットワークI/F(インターフェイス)207と、キーボード208と、マウス209とを備える。各構成部201〜209のそれぞれは、バス200に接続される。
【0024】
CPU201は、医療情報処理装置110の全体の制御を司る。ROM202は、医療情報処理装置110を起動させるブートプログラムや、医療情報処理プログラムなどの各種データを記憶する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。
【0025】
HDD204は、HD205に対するデータの読み込みおよび書き込みを制御する。HD205は、各種データを記憶する。ディスプレイ206は、各種データを表示する。ネットワークI/F207は、医療情報処理装置110と他の情報処理装置とのデータ通信を制御する。キーボード208およびマウス209は、医療情報処理装置110へ情報を入力するための入力手段として機能する。
【0026】
(医療情報処理装置110の機能構成)
つぎに、医療情報処理装置110の機能構成について説明する。図3は、本実施の形態にかかる医療情報処理装置110の機能構成を示すブロック図である。
【0027】
図3に示すように、医療情報処理装置110は、検査結果値抽出条件取得部301と、検査結果値抽出部302と、検査結果値分布データ生成部303と、判定基準範囲データ生成部304と、判定基準範囲平均化部305と、判定対象検査結果値取得部306と、検査結果値正否判定部307と、判定結果出力部308と、警告情報出力部309とを備える。
【0028】
検査結果値抽出条件取得部301は、複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する。たとえば、抽出条件としては、年齢、性別、血液型、疾患名、入院期間、投薬名、医療機関名、診療科名、検査名、検査項目名、検査日、検査コメントなどが挙げられる。
【0029】
検査結果値抽出条件取得部301は、医療情報処理装置110が備えるキーボード208などの入力デバイスからユーザにより入力された抽出条件を取得してもよい。また、検査結果値抽出条件取得部301は、医療情報処理装置110が備えるメモリなどの記憶媒体に予め格納されている抽出条件を取得してもよい。また、検査結果値抽出条件取得部301は、他の情報処理装置から送信された抽出条件を取得してもよい。
【0030】
検査結果値抽出部302は、検査結果値DB120から、検査結果値抽出条件取得部301が取得した抽出条件に該当する検査結果値を抽出する。
【0031】
検査結果値分布データ生成部303は、検査結果値抽出部302が抽出した検査結果値の年齢別の分布データを生成する。検査結果値分布データ生成部303は、検査結果値抽出部302が抽出した検査結果値の年齢別の分布図を生成してもよい。
【0032】
判定基準範囲データ生成部304は、検査結果値分布データ生成部303が生成した分布データから、検査結果値の出現率が基準値以下となる範囲の検査結果値を年齢別に削除することにより、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する。
【0033】
一例を挙げると、年齢「20歳」の検査結果値数が「100件」ある場合において、基準値が「2%」の場合、判定基準範囲データ生成部304は、検査結果値分布データ生成部303が生成した分布データから、年齢「20歳」の検査結果値の上位「2件(または1件)」が含まれる範囲を特定する。また、年齢「20歳」の検査結果値の下位「2件(または1件)」が含まれる範囲を特定する。
【0034】
そして、判定基準範囲データ生成部304は、年齢「20歳」の分布データから、特定した範囲内の検査結果値を削除する。判定基準範囲データ生成部304は、残った年齢「20歳」の「96件(または98件)」分の分布データを年齢「20歳」の判定基準範囲データとして決定してもよい。
【0035】
また、判定基準範囲データ生成部304は、残った年齢「20歳」の「96件(または98件)」分の分布データの上限値と下限値とを、年齢「20歳」の判定基準範囲データとして決定してもよい。判定基準範囲データ生成部304は、各年齢毎に、上記手順による処理をおこなうことにより、年齢別の判定基準範囲データを生成する。
【0036】
判定基準範囲データ生成部304は、医療情報処理装置110が備えるキーボード208などの入力デバイスからユーザ入力された基準値を取得してもよい。また、判定基準範囲データ生成部304は、医療情報処理装置110が備えるメモリなどの記憶媒体に予め格納されている基準値を取得してもよい。また、判定基準範囲データ生成部304は、他の情報処理装置から送信された基準値を取得してもよい。また、判定基準範囲データ生成部304は、判定基準範囲データを年齢別に示す年齢別の分布図を生成してもよい。
【0037】
判定基準範囲平均化部305は、判定基準範囲データ生成部304が生成した連続する複数の年齢の判定基準範囲データを平均化する。たとえば、判定基準範囲平均化部305は、上記連続する複数の年齢の判定基準範囲データの上限値および下限値を平均化する。これにより、判定基準範囲平均化部305は、上記判定基準範囲データに対し、年齢の変化による判定基準範囲の急激な変化を緩和することができる。なお、判定基準範囲平均化部305は、上記連続する複数の年齢の判定基準範囲データを密度(検査結果値の出現数)別に平均化してもよい。
【0038】
判定対象検査結果値取得部306は、判定対象の検査結果値を取得する。判定対象検査結果値取得部306は、複数の判定対象の検査結果値を同時に取得してもよい。判定対象検査結果値取得部306は、医療情報処理装置110が備えるキーボード208などの入力デバイスからユーザ入力された判定対象の検査結果値を取得してもよい。また、判定対象検査結果値取得部306は、医療情報処理装置110が備えるメモリなどの記憶媒体に予め格納されている判定対象の検査結果値を取得してもよい。また、判定対象検査結果値取得部306は、他の情報処理装置から送信された判定対象の検査結果値を取得してもよい。
【0039】
検査結果値正否判定部307は、判定対象検査結果値取得部306が取得した判定対象の検査結果値と、判定基準範囲データ生成部304が生成した対応する年齢の判定基準範囲データとを比較することにより、判定対象検査結果値取得部306が取得した判定対象の検査結果値の正否を判定する。たとえば、検査結果値正否判定部307は、上記判定対象の検査結果値が、上記判定基準範囲データが示す判定基準範囲内であった場合、上記判定対象の検査結果値が正しいと判断する。
【0040】
検査結果値正否判定部307は、判定対象検査結果値取得部306が取得した判定対象の検査結果値と、判定基準範囲平均化部305が平均化した後の、判定基準範囲データ生成部304が生成した対応する年齢の判定基準範囲データとを比較することにより、判定対象検査結果値取得部306が取得した判定対象の検査結果値の正否を判定してもよい。
【0041】
判定結果出力部308は、検査結果値正否判定部307による判定結果を出力する。具体的には、判定結果出力部308は、判定対象検査結果値取得部306が取得した検査結果値と、対応する上記判定結果とを関連付けて出力する。
【0042】
判定結果出力部308は、上記判定結果を、医療情報処理装置110または他の情報処理装置が備えるディスプレイなどの出力装置から出力してもよい。また、判定結果出力部308は、上記判定結果を、他の情報処理装置に送信してもよい。また、判定結果出力部308は、上記判定結果を、医療情報処理装置110または他の情報処理装置が備えるファイルやデータベースなどに記録してもよい。
【0043】
警告情報出力部309は、判定対象検査結果値取得部306が取得した判定対象の検査結果値が正しくないと検査結果値正否判定部307が判断した場合に、判定対象検査結果値取得部306が取得した判定対象の検査結果値が正しくない旨を示す警告情報を出力する。具体的には、警告情報出力部309は、判定対象検査結果値取得部306が取得した検査結果値と、上記警告情報とを関連付けて出力する。
【0044】
警告情報出力部309は、上記警告情報を、医療情報処理装置110または他の情報処理装置が備えるディスプレイやスピーカなどの出力装置から出力してもよい。また、警告情報出力部309は、上記警告情報を、他の情報処理装置に送信してもよい。また、警告情報出力部309は、上記警告情報を、医療情報処理装置110または他の情報処理装置が備えるファイルやデータベースなどに記録してもよい。
【0045】
上述した各機能部において、検査結果値抽出条件取得部301、検査結果値抽出部302、および判定対象検査結果値取得部306は、たとえば、ネットワークI/F207、キーボード208、またはマウス209によってその機能が実現される。また、検査結果値分布データ生成部303、判定基準範囲データ生成部304、判定基準範囲平均化部305、および検査結果値正否判定部307は、たとえば、CPU201、ROM202およびRAM203によってその機能が実現される。また、判定結果出力部308および警告情報出力部309は、たとえば、ディスプレイ206またはネットワークI/F207によってその機能が実現される。
【0046】
(医療情報処理の手順)
つぎに、医療情報処理装置110による医療情報処理の手順について説明する。図4は、医療情報処理装置110による医療情報処理の手順を示すフローチャートである。
【0047】
まず、検査結果値抽出条件取得部301によって、複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する(ステップS401)。つぎに、検査結果値抽出部302によって、検査結果値DB120から、ステップS401で取得した抽出条件に該当する検査結果値を抽出する(ステップS402)。
【0048】
つぎに、検査結果値分布データ生成部303によって、ステップS402で抽出した検査結果値の年齢別の分布データを生成する(ステップS403)。つぎに、判定基準範囲データ生成部304によって、ステップS403で生成した分布データから、検査結果値の出現率が基準値以下となる範囲の検査結果値を年齢別に削除することにより、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する(ステップS404)。
【0049】
つぎに、判定基準範囲平均化部305によって、ステップS404で生成した連続する複数の年齢の判定基準範囲データの上限値および下限値を平均化する(ステップS405)。つぎに、判定対象検査結果値取得部306によって、判定対象の検査結果値を取得する(ステップS406)。
【0050】
つぎに、検査結果値正否判定部307によって、ステップS406で取得した判定対象の検査結果値と、ステップS405で平均化した後の、ステップS404で生成した対応する年齢の判定基準範囲データとを比較することにより、ステップS406で取得した判定対象の検査結果値が正しいか否かを判定する(ステップS407)。
【0051】
ステップS407において、ステップS406で取得した判定対象の検査結果値が正しいと判定した場合(ステップS407:Yes)は、判定結果出力部308によって、ステップS407による判定結果を出力して(ステップS409)、一連の処理を終了する。
【0052】
一方、ステップS407において、ステップS406で取得した判定対象の検査結果値が正しくないと判定した場合(ステップS407:No)は、警告情報出力部309によって、ステップS406で取得した判定対象の検査結果値が正しくない旨を示す警告情報を出力する(ステップS408)。そして、判定結果出力部308によって、ステップS407による判定結果を出力して(ステップS409)、一連の処理を終了する。
【0053】
つぎに、検査結果値の年齢別の分布データの一例について説明する。図5は、検査結果値の年齢別の分布データの一例を示す説明図である。複数の検査結果値の中には、稀にしか出現しないような値も含まれている。たとえば、図5に示す分布データにおいては、「70歳程度」の検査結果値の中に、極端に数値の高い「700」を示すものがある。このように平均的な検査結果値から逸脱する検査結果値は、検査ミスによるものがほとんどである。仮に、この「700」を判定基準範囲の上限値としてしまうと、判定対象の検査結果値が「700」以下でさえあれば、この検査結果値は正しいと医師や臨床検査技師が判断してしまう恐れがある。
【0054】
つぎに、年齢別の判定基準範囲データの一例について説明する。図6は、年齢別の判定基準範囲データの一例を示す説明図である。図6に示す判定基準範囲データは、図5に示した分布データに基づいて、判定基準範囲データ生成部304によって生成された判定基準範囲データを示す。
【0055】
図6に示す判定基準範囲データでは、年齢別に判定基準範囲が示されている。また、図6に示す判定基準範囲データでは、図5に示したような、平均的な検査結果値から逸脱する検査結果値が除去されている。また、図6に示す判定基準範囲データは、判定基準範囲平均化部305によって平均化されている。特に、図6に示す判定基準範囲データは、密度(検査結果値の出現数)別に平均化されている。これにより、年齢の変化による判定基準範囲の急激な変化(分布図におけるエッジの急激な変化)が密度別に緩和(スムージング)されている。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態の医療情報処理装置110によれば、抽出条件に該当する複数の検査結果値を検査結果値DB120から取得して、取得した複数の検査結果値に基づいて、年齢別の判定基準範囲データを生成するので、判定基準範囲データを予め登録する手間がかからないうえ、医師や臨床検査技師などのユーザの要求に応じた精度の高い判定基準範囲データを、迅速かつ自動的に生成することができる。このため、医師や臨床検査技師などのユーザに対して、判定対象とする検査結果値の正否を、その医療機関を利用する患者特性に合致した判断基準範囲データで適切に判定させることができる。
【0057】
また、本実施の形態の医療情報処理装置110によれば、信頼性の低い検査結果値を含まない年齢別の判定基準範囲データを生成することができる。このため、医師や臨床検査技師などのユーザに対して、判定対象とする検査結果値の正否を、適切に判定させることができる。
【0058】
また、本実施の形態の医療情報処理装置110によれば、判定基準範囲データを平均化することで、たとえば極端に検査結果値が少ない年齢が存在した場合であっても、当該年齢の判定基準範囲データを、前後の年齢の判定基準範囲データから補完することができる。このため、医師や臨床検査技師などのユーザに対して、判定対象とする検査結果値の正否を、適切に判定させることができる。
【0059】
なお、本実施の形態で説明した医療情報処理方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、RAM、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録され、コンピュータによって記憶媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる医療情報処理方法、医療情報処理プログラム、および医療情報処理装置は、医療情報を処理する医療情報処理システムなどにおいて有用であり、特に、年齢などの条件によって平均的な検査結果値が異なる検査の検査データを扱う医療情報処理システムなどへの利用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施の形態にかかる医療情報処理システムのシステム構成を示す説明図である。
【図2】本実施の形態にかかる医療情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態にかかる医療情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】医療情報処理装置による医療情報処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】検査結果値の年齢別の分布データの一例を示す説明図である。
【図6】年齢別の判定基準範囲データの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
100 医療情報処理システム
110 医療情報処理装置
120 検査結果値DB
130 ネットワーク
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 HDD
205 HD
206 ディスプレイ
207 ネットワークI/F
208 キーボード
209 マウス
301 検査結果値抽出条件取得部
302 検査結果値抽出部
303 検査結果値分布データ生成部
304 判定基準範囲データ生成部
305 判定基準範囲平均化部
306 判定対象検査結果値取得部
307 検査結果値正否判定部
308 判定結果出力部
309 警告情報出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する検査結果値抽出条件取得工程と、
複数の患者の検査結果値を格納するデータベースから、前記抽出条件に該当する検査結果値を抽出する検査結果値抽出工程と、
前記検査結果値抽出工程が抽出した検査結果値の年齢別の分布データを生成する検査結果値分布データ生成工程と、
前記分布データから、検査結果値の出現率が基準値以下となる範囲の検査結果値を年齢別に削除することにより、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する判定基準範囲データ生成工程と、
判定対象の検査結果値を取得する判定対象検査結果値取得工程と、
前記判定対象の検査結果値と、対応する年齢の前記判定基準範囲データとを比較することにより、前記判定対象の検査結果値の正否を判定する検査結果値正否判定工程と、
前記検査結果値正否判定工程による判定結果を出力する判定結果出力工程と、
を含んだことを特徴とする医療情報処理方法。
【請求項2】
連続する複数の年齢の前記判定基準範囲データを平均化する判定基準範囲平均化工程をさらに含み、
前記検査結果値正否判定工程は、
前記判定対象の検査結果値と、前記判定基準範囲平均化工程が平均化した後の、対応する年齢の前記判定基準範囲データとを比較することにより、前記判定対象の検査結果値の正否を判定することを特徴とする請求項1に記載の医療情報処理方法。
【請求項3】
前記判定対象の検査結果値が正しくないと前記検査結果値正否判定工程が判断した場合に、前記判定対象の検査結果値が正しくない旨を示す警告情報を出力する警告情報出力工程をさらに含んだことを特徴とする請求項1または2に記載の医療情報処理方法。
【請求項4】
複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する検査結果値抽出条件取得工程と、
複数の患者の検査結果値を格納するデータベースから、前記抽出条件に該当する検査結果値を抽出する検査結果値抽出工程と、
前記検査結果値抽出工程が抽出した検査結果値の年齢別の分布データを生成する検査結果値分布データ生成工程と、
前記分布データから、検査結果値の出現率が基準値以下となる範囲の検査結果値を年齢別に削除することにより、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する判定基準範囲データ生成工程と、
判定対象の検査結果値を取得する判定対象検査結果値取得工程と、
前記判定対象の検査結果値と、対応する年齢の前記判定基準範囲データとを比較することにより、前記判定対象の検査結果値の正否を判定する検査結果値正否判定工程と、
前記検査結果値正否判定工程による判定結果を出力する判定結果出力工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする医療情報処理プログラム。
【請求項5】
複数の患者の検査結果値の抽出条件を取得する検査結果値抽出条件取得手段と、
複数の患者の検査結果値を格納するデータベースから、前記抽出条件に該当する検査結果値を抽出する検査結果値抽出手段と、
前記検査結果値抽出手段が抽出した検査結果値の年齢別の分布データを生成する検査結果値分布データ生成手段と、
前記分布データから、検査結果値の出現率が基準値以下となる範囲の検査結果値を年齢別に削除することにより、検査結果値の正否の判定基準範囲とする判定基準範囲データを年齢別に生成する判定基準範囲データ生成手段と、
判定対象の検査結果値を取得する判定対象検査結果値取得手段と、
前記判定対象の検査結果値と、対応する年齢の前記判定基準範囲データとを比較することにより、前記判定対象の検査結果値の正否を判定する検査結果値正否判定手段と、
前記検査結果値正否判定部による判定結果を出力する判定結果出力手段と、
を備えたことを特徴とする医療情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−193148(P2009−193148A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30751(P2008−30751)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(591258484)株式会社エイアンドティー (23)