説明

医療情報管理装置、医療情報管理方法、医療情報管理プログラム

【課題】操作者の負担を軽減するとともに試料の廃棄によるコストアップを抑えること。
【解決手段】使用量情報取得部301は、消耗品の種別毎に消耗品使用量の情報を格納するデータベースから、各消耗品の消耗品使用量の情報を取得する。作成部302は、消耗品使用量の情報を用いて、各消耗品における消耗品使用量の分布データを作成する。生成部303は、分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成する。関連付け部304は、消耗品使用量の情報に紐付けられる使用時期の情報を含む付帯情報と、使用量パターンとを関連付ける。予測部306は、関連付け部304によって関連付けられた情報と、入力部305によって入力された今後の使用時期の情報を含む予測指定情報とに基づいて、今後の各時期の消耗品使用量を予測する。提示部307は、予測部306によって予測された消耗品使用量を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、臨床検査にて用いられる試薬を含む消耗品を管理する、医療情報管理装置、医療情報管理方法、医療情報管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機関等で臨床検査用測定装置が広く用いられている。臨床検査用測定装置は、たとえば、血液を遠心分離した血清などの患者検体を二次容器に小分けし、小分けした患者検体を測定する。また、臨床検査用測定装置では、測定精度を保証するために、標準試料を用いた分析装置の校正や、精度管理用試料を用いた測定結果に基づく統計学的品質管理がおこなわれる(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
試料や患者検体を測定するにあたり、試料や患者検体は、所定の分注ノズルによって小分けされる。このノズルには、分注チップが取り付けられ、試料や患者検体毎に交換される。 分注チップ、二次容器、標準試料、精度管理用試料は、消耗品であるため、臨床検査用測定装置の操作者は、これらの消耗品の在庫量および消費量を管理し、在庫がなくなる時期を予測して、適切な時期に適切な量の消耗品を購入すべく発注をおこなう必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−35970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、検査依頼数や項目数は日々異なるため、検査室では過剰な在庫を保管するための保管スペースを確保しなければならないといった不具合があった。また、臨床検査用測定装置にセットできる消耗品の量には限りがあるため、消耗品の数が少なくなった時に、装置の稼働を一旦停止して消耗品の補充をおこなっており、迅速な検査の妨げとなるといった不具合があった。
【0006】
さらに、従来技術では、迅速な検査をおこなうために、操作者が毎朝、稼働前に目視や残量計で消耗品の残量を確認して補充をおこなっており、操作者にとって負担であるといった問題があった。また、消耗品のうち、品質保証の観点から交換しなければならない試料については処分するため、試料の廃棄分、コストアップにつながるといった問題があった。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、日々の消耗品の使用量を予測することにより、操作者の負担を軽減することができるとともに、試料の廃棄によるコストアップを抑えることのできる、医療情報管理装置、医療情報管理方法、医療情報管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる医療情報管理装置は、臨床検査にて用いられる試薬を含む消耗品を管理する医療情報管理装置であって、消耗品の種別毎に消耗品使用量の情報を格納するデータベースから、各消耗品の消耗品使用量の情報を取得する使用量情報取得手段と、前記使用量情報取得手段によって取得された消耗品使用量の情報を用いて、各消耗品における消耗品使用量の分布データを作成する作成手段と、前記作成手段によって作成された分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成する生成手段と、消耗品使用量の情報に紐付けられる使用時期の情報を含む付帯情報と、前記使用量パターンとを関連付ける関連付け手段と、今後の使用時期の情報を含む予測指定情報を入力する入力手段と、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各時期の消耗品使用量を予測する予測手段と、前記予測手段によって予測された消耗品使用量を提示する提示手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明において、前記関連付け手段は、使用時期の情報として日の種類の情報を含む付帯情報と、前記使用量パターンとを関連付け、前記入力手段は、前記予測指定情報として今後の暦の情報を入力し、前記予測手段は、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各日の消耗品使用量を予測し、前記提示手段は、予測された各日の消耗品使用量を暦上に提示することを特徴とする。
【0010】
上記発明において、前記作成手段は、時間帯毎の消耗品使用量の情報を用いて、時間帯毎の消耗品使用量の分布データを作成し、前記生成手段は、時間帯毎の消耗品使用量の分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成し、前記関連付け手段は、前記付帯情報と、前記使用量パターンとを関連付け、前記入力手段は、前記予測指定情報としてその日の検査環境情報といった統計要素を入力し、前記予測手段は、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各時期における時間帯毎の消耗品使用量を予測することを特徴とする。
【0011】
上記発明において、現在の消耗品残量の情報を取得する残量情報取得手段をさらに備え、前記予測手段は、残量情報取得手段によって取得された消耗品残量の情報と、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、消耗品残量がなくなる時間帯を予測し、前記提示手段は、前記消耗品残量がなくなる時間帯を提示することを特徴とする。
【0012】
上記発明において、前記付帯情報は、統計要素の情報を含み、前記入力手段は、今後の検査項目の情報を含む前記予測指定情報を入力し、前記予測手段は、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各時期の消耗品使用量を予測することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる医療情報管理方法は、臨床検査にて用いられる試薬を含む消耗品を管理する医療情報管理装置の医療情報管理方法であって、消耗品の種別毎に消耗品使用量の情報を格納するデータベースから、各消耗品の消耗品使用量の情報を取得する使用量情報取得工程と、前記使用量情報取得工程にて取得された消耗品使用量の情報を用いて、各消耗品における消耗品使用量の分布データを作成する作成工程と、前記作成工程にて作成された分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成する生成工程と、消耗品使用量の情報に紐付けられる使用時期の情報を含む付帯情報と、前記使用量パターンとを関連付ける関連付け工程と、今後の使用時期の情報を含む予測指定情報を入力する入力工程と、前記関連付け工程にて関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各時期の消耗品使用量を予測する予測工程と、前記予測工程にて予測された消耗品使用量を提示する提示工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる医療情報管理プログラムは、上記に記載の医療情報管理方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、今後の各時期の消耗品使用量を予測するようしたので、操作者の負担を軽減することができるとともに、試料の廃棄によるコストアップを抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態にかかる医療情報管理システムのシステム構成を示す説明図である。
【図2】医療情報管理装置のハードウェア構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる医療情報管理装置の機能的構成を示したブロック図である。
【図4】医療情報管理装置がおこなう医療情報管理処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】使用量パターンの一例を示す説明図である。
【図6】インデックスの作成要領を示す説明図である。
【図7】消耗品使用量の予測を示した説明図である。
【図8】医療情報管理装置がおこなう残量情報表示処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる、医療情報管理装置、医療情報管理方法、医療情報管理プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態)
(システム構成)
図1を用いて、本実施の形態にかかる医療情報管理システムのシステム構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかる医療情報管理システムのシステム構成を示す説明図である。図1において、医療情報管理システム100は、病院や検査機関など一施設に設けられるものであり、医療情報管理装置110と、データベース120と、検体検査装置130とからなる。
【0019】
医療情報管理装置110は、臨床検査にて用いられる試薬を含む消耗品を管理する。試薬は、分析装置を校正するための標準試料や、統計学的品質管理をおこなうための精度管理用試料である。消耗品は、これらの試料のほか、患者検体を二次容器に小分けする際に患者検体毎に用いられるノズルチップや、試験紙および試験片などの試薬を含む。
【0020】
データベース120は、ノズルチップ等の消耗品の種別毎に消耗品使用量を格納する。消耗品使用量は、たとえば過去1年分の消耗品の使用量であり、使用された時期(たとえば、年、季節、月、日、時間帯)などと関連付けられて格納されている。データベース120に格納される消耗品使用量は、随時更新される。検体検査装置130は、血液や尿などの患者検体を検査項目毎に測定する医療検査用測定装置であり、消耗品の交換を要するものである。
【0021】
(医療情報管理装置のハードウェア構成)
次に、図2を用いて、医療情報管理装置110のハードウェア構成について説明する。図2は、医療情報管理装置110のハードウェア構成を示す説明図である。
【0022】
図2において、医療情報管理装置110は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、HDD(ハードディスクドライブ)204と、HD(ハードディスク)205と、ディスプレイ206と、I/F(インタフェース)207と、キーボード208と、マウス209とを備えている。各構成部201〜209は、それぞれバス200に接続されている。
【0023】
CPU201は、医療情報管理装置110の全体の制御を司る。ROM202は、医療情報管理装置110を起動させるブートプラグラムや、医療情報管理プログラムなどの各種データを記憶する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。医療情報管理プログラムは、データベース120から取得した消耗品使用量の情報を用いて、今後の各時期の消耗品使用量を予測するプログラムである。
【0024】
HDD204は、HD205に対するデータの読み込みおよび書き込みを制御する。HD205は、各種データを記憶する。ディスプレイ206は、消耗品使用量などの各種データを表示する。I/F207は、医療情報管理装置110と、検体検査装置130やデータベース120とを接続し、データの送受をおこなう。キーボード208およびマウス209は、操作者からの操作入力を受け付ける。
【0025】
(医療情報管理装置の機能的構成)
次に、図3を用いて、本実施の形態にかかる医療情報管理装置110の機能的構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態にかかる医療情報管理装置110の機能的構成を示したブロック図である。図3において、医療情報管理装置110は、使用量情報取得部301と、作成部302と、生成部303と、関連付け部304と、入力部305と、予測部306と、提示部307と、残量情報取得部308とを備えている。
【0026】
使用量情報取得部301は、データベース120から、各消耗品の消耗品使用量の情報を取得する。消耗品使用量は、時期毎の消耗品数量である。作成部302は、使用量情報取得部301によって取得された消耗品使用量の情報を用いて、各消耗品における消耗品使用量の時期毎の分布データを作成する。分布データは消耗品毎に複数作成され、その形状は棒グラフ、折れ線グラフ、散布図などである。
【0027】
生成部303は、作成部302によって作成された分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成する。具体的には、生成部303は、クラスタ分析によって、似通った分布データ毎の使用量パターンを複数生成する。生成された使用量パターンの情報は、データベース120やHD205に格納される。
【0028】
関連付け部304は、付帯情報と、生成部303によって生成された使用量パターンとを関連付ける。付帯情報は、消耗品使用量の情報に紐付けられる使用時期の情報を含む。使用時期は、具体的には、年、季節、月、日、時間帯などである。また、付帯情報は、各消耗品の検査項目の情報を含む。検査項目の情報は、血液検査、尿検査といった検査の種類の情報のほか、透析の有無といった診療の内容や、休診日であるか否かなどの情報を含む。関連付け部304は、具体的には、分布データ毎に、各分布データに最も近似する使用量パターンと、付帯情報とを関連付ける。関連付けられた情報は、データベース120やHD205に格納される。
【0029】
入力部305は、今後の使用時期の情報を含む予測指定情報を入力する。今後の使用時期は、今後の、年、季節、月、日、時間帯などである。また、予測指定情報には、今後の検査項目の情報が含まれる。予測部306は、関連付け部304によって関連付けられた情報と、予測指定情報とに基づいて、今後の各時期の消耗品使用量を予測する。
【0030】
予測指定情報と、付帯情報とは対応しており、予測部306は、予測指定情報に対応する付帯情報を抽出するとともに、当該付帯情報が関連付けられている使用量パターンを抽出して、今後の各時期の消耗品使用量を予測する。具体例を挙げると、入力部305に予測指定情報として「今年の8月」が入力された場合、予測部306は、関連付け部304によって関連付けられた、たとえば「前年の8月」の使用量パターンを抽出して、今年の8月の消耗品使用量を予測する。
【0031】
提示部307は、予測部306によって予測された消耗品使用量を提示する。提示部307は、操作者に対し、データの分布状況を視覚的に認識させるために、たとえば、度数分布をグラフ化したヒストグラムにより、消耗品使用量を提示する。また、提示部307による情報の提示は、ディスプレイ206を用いた表示としているが、これに限らず、音声のみ、または表示と音声とを組み合わせたものとすることも可能である。
【0032】
また、本実施の形態において、関連付け部304は、使用時期の情報として日の種類の情報を含む付帯情報と、使用量パターンとを関連付ける。日の種類は、たとえば、休日や平日といった種類のほか、平日であっても前日の休日の有無や、前日の休日数などを含む日の種類である。具体的には、関連付け部304は、休日、平日、休日明けの平日といった消耗品の使用日の付帯情報と、使用量パターンとを関連付ける。この場合、入力部305は、予測指定情報として今後の暦の情報を入力する。
【0033】
予測部306は、関連付け部304によって関連付けられた情報と、今後の暦(日の種類)の情報とに基づいて、今後の各日の消耗品使用量を予測する。たとえば、予測部306は、来週の暦に対応する過去の暦の使用量パターンを抽出して、来週の暦の消耗品使用量を予測する。すなわち、予測部306は、休日、平日、休日明けの平日といった日の種類別に、消耗品量を予測する。提示部307は、予測された消耗品使用量を暦上に提示する。
【0034】
また、本実施の形態において、使用量情報取得部301によって取得される消耗品使用量の情報には、時間帯毎の消耗品使用量の情報が含まれる。この場合、作成部302は、時間帯毎の消耗品使用量の情報を用いて、時間帯毎の消耗品使用量の分布データを作成する。また、生成部303は、時間帯毎の消耗品使用量の分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成する。
【0035】
さらに、関連付け部304は、付帯情報を使用量パターンと関連付ける。入力部305は、予測指定情報としてその日の検査環境情報といった統計要素の情報を入力する。予測部306は、関連付け部304によって関連付けられた情報と、予測指定情報とに基づいて、今後の各時期における時間帯毎の消耗品使用量を予測する。たとえば、予測部306は、今週金曜日の各時間帯に対応する先週金曜日の各時間帯の使用量パターンを抽出して、時間帯毎の消耗品使用量を予測する。提示部307は、時間帯毎の消耗品使用量を提示する。
【0036】
また、本実施の形態において、残量情報取得部308は、現在の消耗品残量の情報を取得する。予測部306は、残量情報取得部308によって取得された消耗品残量の情報と、関連付け部304によって関連付けられた情報と、予測指定情報とに基づいて、消耗品残量がなくなる時間帯を予測する。具体的には、予測部306は、当日の時間帯毎の使用量パターンと消耗品残量とを用いて、消耗品残量がなくなる時間帯を予測する。たとえば、当日の13時00分から14時00分までの予測使用量が60であり、13時00分現在の消耗品残量が50の場合、時間当たりの消費量(たとえば1個/1分)を用いて、消耗品残量がなくなる時間帯(13時50分)を予測する。
【0037】
提示部307は、消耗品残量がなくなる時間帯を提示する。提示部307は、消耗品残量がなくなる時間に差し迫っている場合には、消耗品の補給を促す警告をおこなう。消耗品残量がなくなる時間に差し迫っているとは、たとえば、消耗品残量がなくなる所定時間前としたり、消耗品残量が所定数以下となった時としたりすればよい。
【0038】
なお、上述した、使用量情報取得部301と、作成部302と、生成部303と、関連付け部304と、入力部305と、予測部306と、提示部307と、残量情報取得部308とは、CPU201によって実現される。すなわち、CPU201が、医療情報管理プログラムを実行することにより、各部を実現する。
【0039】
(医療情報管理処理)
次に、図4を用いて、医療情報管理装置110がおこなう医療情報管理処理について説明する。図4は、医療情報管理装置110がおこなう医療情報管理処理の手順を示すフローチャートである。
【0040】
図4において、医療情報管理装置110は、使用量情報取得部301がデータベース120から各消耗品の消耗品使用量の情報を取得する(ステップS401)。そして、作成部302が、消耗品使用量の情報を用いて、各消耗品における消耗品使用量の分布データを作成する(ステップS402)。この後、生成部303が、分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成する(ステップS403)。
【0041】
さらに、関連付け部304が、日の種類の情報や検査項目の情報を含む付帯情報と、使用量パターンとを関連付ける(ステップS404)。さらに、入力部305が、今後の暦の情報および今後の検査項目を含む予測指定情報を入力する(ステップS405)。そして、予測部306が、関連付けられた情報と暦の情報とに基づいて、今後の各日の消耗品使用量を予測する(ステップS406)。この後、提示部307が、消耗品使用量を暦上に提示し(ステップS407)、一連の処理を終了する。
【0042】
(使用量パターンの一例)
次に、図5を用いて、使用量パターンの一例について説明する。図5は、使用量パターンの一例を示す説明図である。図5において、パターンマップ500は、分布データを、クラスタ分析によって似通った分布データ毎にグループ化させた、たとえば16種類の使用量パターンを示している。この使用量パターンは、たとえば、ノズルチップの場合を示している。各使用量パターンは、横軸を時間(時)、縦軸を数量(個)としたヒストグラムであり、各時間帯の消耗品使用量を示している。なお、使用量パターンは、ここでは、16種類としているが、これに限られるものではない。
【0043】
また、ノズルチップのほかにも、試料などの消耗品についても同様のパターンマップ500を生成する。また、パターンマップ500に示すXおよびYは、各使用量パターンを特定するためのものであり、0〜3のXの番号、および0〜3のYの番号によって、使用量パターンが特定される。なお、このパターンマップ500に示す各使用量パターンには、日の種類を示す日付データや、検査項目を示す情報などのインデックス(付帯情報)が関連付けられている。インデックスの作成要領について、以下に図6を用いて説明する。
【0044】
(パターンマップのインデックスの作成)
次に、図6を用いて、パターンマップのインデックスの作成について説明する。図6は、インデックスの作成要領を示す説明図である。図6に示す消耗品データ600は、付帯情報601と、分布データ602と、使用量パターン603とからなる。付帯情報601は、日付データと、検査項目データとからなる。日付データは、日付および曜日からなる。なお、この日付データには、季節の情報や、前日の休日の有無や休日数などの情報も含まれる。たとえば、「3月1日(日)」は、春の休日を示すデータが含まれ、「3月2日(月)」は、春の休日明けを示すデータが含まれる。
【0045】
また、検査項目データは、透析の有無や、休診日であるか否かなどを示している。なお、検査項目データは、このほかにも、測定内容を示す情報や、たとえば、午前8時〜9時といった早い時間帯に多くの測定がおこなわれる外来患者用の検体かを示す情報など、消耗品使用量の可変要因となる情報を含めてもよい。
【0046】
分布データ602は、消耗品使用量の情報を用いて作成した、たとえばノズルチップの消耗品使用量の時期毎のデータである。使用量パターン603は、図5に示したパターンマップ500のうち、分析データ602に最も近似するものである。具体的には、使用量パターン603は、パターンマップ500にパターンマッチングにより選出される。
【0047】
パターンマッチングは、パターンマップ500の使用量パターン602のうち、分析データ602への近似の度合いを示す近似度を計算し、最も近似度が小さい使用量パターン603を選出することである。なお、近似度の計算手法は、比較する複数の使用量パターン602のうち、分析データ602と使用量パターン602との最短の使用量パターン602を計算できる手法であればよく、たとえば、ユークリッド距離を用いた手法が用いられる。
【0048】
たとえば「3月1日(日)」の分布データ602は、パターンマップ500のうち、(X=0,Y=3)の使用量パターンに近似することを示している。このように、消耗品使用量の情報を用いて、全ての時期における消耗品使用量を、最も似通った使用量パターン603に当てはめる。
【0049】
各使用量パターン603は、付帯情報601としてのインデックスが関連付けられる。なお、同一の使用量パターン603に対して、複数の異なる分布データ602がある場合には、同一の使用量パターン603に複数の異なる付帯情報601が関連付けられる。インデックスが付された使用量パターン603の情報は、データベース120やHD205などに格納される。このような使用量パターン603を用いて、たとえば、次月以降の消耗品使用量を予測する点について、以下に図7を用いて説明する。
【0050】
(消耗品使用量の予測)
図7は、消耗品使用量の予測を示した説明図である。図7において、予測データ700は、2009年4月下旬〜5月上旬の消耗品使用量を予測したものであり、予測指定情報701と、使用量パターン702とからなる。予測指定情報701は、日付データと検査項目データとを含み、インデックス(図6の付帯情報601)に対応する。日付データは、暦上の月日を示したものであり、平日や休日のほか、前日の休日の有無や休日数などを示す日の種類の情報を含んでいる。
【0051】
検査項目データは、透析の有無や、休診日であるか否かの情報を含み、操作者から操作入力されたものである。なお、検査項目データは、このほかにも、測定内容を示す情報など、消耗品使用量の可変要因となる情報を含めてもよい。
【0052】
使用量パターン702は、日付データに含まれる日の種類の情報や検索項目データに基づいて、データベース120やHD205などに格納されているパターンマップ500の中から抽出された予測データである。「4月29日(水)」のデータを例に挙げると、「4月29日」の日の種類は休日であり、予測指定情報701は「透析あり」および「休診日なし」となっている。この予測指定情報701から、予測される使用量パターン702は、パターンマップ500の(X=0,Y=3)であり、図6に示した「3月1日(日)」のデータに近いものとなっている。これは、検査項目データとともに「4月29日(水)」に含まれる春の休日を示すデータなどに基づいて、パターンマップ500の中から抽出されたものである。
【0053】
また、4月30日(木)のデータを例に挙げると、4月30日の日の種類は休日明けであり、予測指定情報701は「透析なし」および「休診日なし」となっている。この予測指定情報701から、予測される使用量パターン702は、パターンマップ500の(X=2,Y=1)であり、図6に示した3月2日(月)のデータに近いものとなっている。これは、検査項目データとともに「4月30日(木)」に含まれる春の休日明けを示すデータなどに基づいて、パターンマップ500の中から抽出されたものである。
【0054】
このように予測された予測データ700を用いて、ディスプレイ206から、カレンダーを表示するとともに、各日に対応する使用量パターン702のヒストグラムや、予測される消耗品の数量などを表示できるようになっている。また、各日の時間帯毎の、予測される消耗品の数量などを表示できるようになっている。
【0055】
(残量情報表示処理)
次に、図8を用いて、医療情報管理装置110がおこなう残量情報表示処理について説明する。図8は、医療情報管理装置110がおこなう残量情報表示処理の手順を示すフローチャートである。
【0056】
図8において、医療情報管理装置110は、残量情報取得部308が現在の消耗品残量の情報を取得する(ステップS801)。そして、予測部306が、消耗品残量の情報と、付帯情報および使用量パターンが関連付けられた情報とに基づいて、消耗品残量がなくなる時間帯を予測する(ステップS802)。この後、所定時間以内に消耗品残量がなくなるか否かを判断する(ステップS803)。
【0057】
所定時間以内に消耗品残量がなくならないと判断した場合(ステップS803:No)、予測した消耗品残量がなくなる時間帯を表示し(ステップS804)、一連の処理を終了する。所定時間以内に消耗品残量がなくなると判断した場合(ステップS803:Yes)、消耗品がなくなる旨を示す警告表示をおこない(ステップS805)、一連の処理を終了する。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、使用量パターンを生成し、生成した使用量パターンと付帯情報とを関連付け、この関連付けた情報を用いるようにしたので、消耗品使用量の情報のみを用いて、今後の各時期の消耗品使用量を予測して提示することができる。すなわち、他の装置等を設けることなく、簡単な構成にて各時期の消耗品使用量を予測して提示することができる。また、消耗品の取り替えタイミングや、発注タイミングを操作者に知らせることができる。
【0059】
したがって、操作者の負担を軽減することができるとともに、試料の廃棄によるコストアップを抑えることができる。さらに、消耗品交換時における検体検査装置130の稼働を停止させる回数を低減することができ、よって、迅速な検査をおこなうことができる。
【0060】
また、本実施の形態では、日の種類の情報を含む付帯情報と、使用量パターンとを関連付け、関連付けられた情報と暦の情報とに基づいて、今後の各日の消耗品使用量を予測してカレンダー上に表示するようにした。したがって、操作者は、いつ、どの程度消耗品が必要であるかということを容易に認識することができる。
【0061】
本実施の形態では、今後の各時期における時間帯毎の消耗品使用量を予測して提示するようにしたので、消耗品使用量をより詳細に、操作者に知らせることができる。
【0062】
さらに、本実施の形態では、付帯情報および使用量パターンが関連付けられた情報と、現在の消耗品残量の情報とに基づいて、消耗品残量がなくなる時間帯を予測して、提示するようにしたので、リアルタイムにて消耗品の取り替えタイミングや発注タイミングを操作者に知らせることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、検査項目の情報を含む付帯情報と、使用量パターンとを関連付け、関連付けられた情報と暦の情報とに基づいて、今後の各日の消耗品使用量を予測するようにしたので、より的確な予測をおこなうことができる。したがって、検査依頼数や項目数などに応じて消耗品を発注することができ、過剰な在庫を保管するための保管スペースを削減することができる。
【0064】
以上説明したように、医療情報管理装置、医療情報管理方法、医療情報管理プログラムによれば、操作者の負担を軽減することができるとともに、試料の廃棄によるコストアップを抑えるができる。
【0065】
なお、本実施の形態で説明した医療情報管理方法は、予め用意された医療情報管理プログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。この医療情報管理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、この医療情報管理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明にかかる医療情報管理装置、医療情報管理方法、医療情報管理プログラムは、病院や臨床検査機関などでおこなわれる臨床検査の自動分析に有用であり、特に、臨床検査にて用いられる試薬を含む消耗品の管理に適している。
【符号の説明】
【0067】
100 医療情報管理システム
110 医療情報管理装置
120 データベース
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 HDD
205 HD
206 ディスプレイ
207 I/F
208 キーボード
209 マウス
301 使用量情報取得部
302 作成部
303 生成部
304 関連付け部
305 入力部
306 予測部
307 提示部
308 残量情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床検査にて用いられる試薬を含む消耗品を管理する医療情報管理装置であって、
消耗品の種別毎に消耗品使用量の情報を格納するデータベースから、各消耗品の消耗品使用量の情報を取得する使用量情報取得手段と、
前記使用量情報取得手段によって取得された消耗品使用量の情報を用いて、各消耗品における消耗品使用量の分布データを作成する作成手段と、
前記作成手段によって作成された分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成する生成手段と、
消耗品使用量の情報に紐付けられる使用時期の情報を含む付帯情報と、前記使用量パターンとを関連付ける関連付け手段と、
今後の使用時期の情報を含む予測指定情報を入力する入力手段と、
前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各時期の消耗品使用量を予測する予測手段と、
前記予測手段によって予測された消耗品使用量を提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする医療情報管理装置。
【請求項2】
前記関連付け手段は、使用時期の情報として日の種類の情報を含む付帯情報と、前記使用量パターンとを関連付け、
前記入力手段は、前記予測指定情報として今後の暦の情報を入力し、
前記予測手段は、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各日の消耗品使用量を予測し、
前記提示手段は、予測された各日の消耗品使用量を暦上に提示することを特徴とする請求項1に記載の医療情報管理装置。
【請求項3】
前記作成手段は、時間帯毎の消耗品使用量の情報を用いて、時間帯毎の消耗品使用量の分布データを作成し、
前記生成手段は、時間帯毎の消耗品使用量の分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成し、
前記関連付け手段は、前記付帯情報と、前記使用量パターンとを関連付け、
前記入力手段は、前記予測指定情報として統計要素の情報を入力し、
前記予測手段は、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各時期における時間帯毎の消耗品使用量を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の医療情報管理装置。
【請求項4】
現在の消耗品残量の情報を取得する残量情報取得手段をさらに備え、
前記予測手段は、残量情報取得手段によって取得された消耗品残量の情報と、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、消耗品残量がなくなる時間帯を予測し、
前記提示手段は、前記消耗品残量がなくなる時間帯を提示することを特徴とする請求項3に記載の医療情報管理装置。
【請求項5】
前記付帯情報は、検査項目の情報を含み、
前記入力手段は、今後の検査項目の情報を含む前記予測指定情報を入力し、
前記予測手段は、前記関連付け手段によって関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各時期の消耗品使用量を予測することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の医療情報管理装置。
【請求項6】
臨床検査にて用いられる試薬を含む消耗品を管理する医療情報管理装置の医療情報管理方法であって、
消耗品の種別毎に消耗品使用量の情報を格納するデータベースから、各消耗品の消耗品使用量の情報を取得する使用量情報取得工程と、
前記使用量情報取得工程にて取得された消耗品使用量の情報を用いて、各消耗品における消耗品使用量の分布データを作成する作成工程と、
前記作成工程にて作成された分布データを用いて、似通った分布データ毎にグループ化させた使用量パターンを生成する生成工程と、
消耗品使用量の情報に紐付けられる使用時期の情報を含む付帯情報と、前記使用量パターンとを関連付ける関連付け工程と、
今後の使用時期の情報を含む予測指定情報を入力する入力工程と、
前記関連付け工程にて関連付けられた情報と、前記予測指定情報とに基づいて、今後の各時期の消耗品使用量を予測する予測工程と、
前記予測工程にて予測された消耗品使用量を提示する提示工程と、
を含むことを特徴とする医療情報管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の医療情報管理方法をコンピュータに実行させることを特徴とする医療情報管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−256983(P2010−256983A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103114(P2009−103114)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(591258484)株式会社エイアンドティー (23)