医療用ガーゼ
【課題】X線造影糸が織り込まれた医療用ガーゼにおいて、簡易な構造で、X線造影糸を抜け難くし、且つ、感触を良好にする。
【解決手段】医療用ガーゼ1は、経糸2と緯糸3とが一定の間隔をもって平織りされた平織り部5の端部で緯糸3が折り返された耳部8に経糸密織り部6が設けられている。経糸密織り部6では、複数の経糸2は、隣接するものどうしが互いに接触するように密に織り込まれている。X線造影糸4は、一側が経糸密織り部6に接触するように織り込まれており、X線造影糸4の他側の平織り部5の経糸2は、密に織り込まれていない。これにより、比較的少ない密織り部によってX線造影糸4を抜け難くすることができ、また、X線造影糸4がガーゼの端部に配置されていないので感触を損なうことがない。
【解決手段】医療用ガーゼ1は、経糸2と緯糸3とが一定の間隔をもって平織りされた平織り部5の端部で緯糸3が折り返された耳部8に経糸密織り部6が設けられている。経糸密織り部6では、複数の経糸2は、隣接するものどうしが互いに接触するように密に織り込まれている。X線造影糸4は、一側が経糸密織り部6に接触するように織り込まれており、X線造影糸4の他側の平織り部5の経糸2は、密に織り込まれていない。これにより、比較的少ない密織り部によってX線造影糸4を抜け難くすることができ、また、X線造影糸4がガーゼの端部に配置されていないので感触を損なうことがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線造影糸が織り込まれた医療用ガーゼに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用ガーゼは、手術等において、患者の体内で使用される場合、血液、体液等を吸収して、臓器、組織との区別がつきにくくなるため、体内に取り残さないように細心の注意が払われる。また、一般的にガーゼの繊維は、X線画像に写らないため、術後、体内に取り残されたガーゼの有無を確認することは困難であった。
【0003】
そこで、従来、ガーゼにX線造影糸を織り込み、術後、X線撮影により、ガーゼの取り残しを容易に確認できるようにした医療用ガーゼが種々提案されている。
しかしながら、単に、ガーゼを構成する複数の経糸の一本をX線造影糸に置き換えた医療用ガーゼでは、X線造影糸は、一般的にガーゼの構成糸より大径であり、表面が滑らかに形成されているため、ピンセットで摘まれたりすると、ガーゼから抜け落ちてしまう場合があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1、特許文献2には、X線造影糸の抜け止めを施した医療用ガーゼが記載されている。詳細には、特許文献1に記載された医療用ガーゼは、X線造影糸に対して略平行方向の構成糸の内、X線造影糸の両側に近接する複数本の縦糸が互いに接触し、かつ、X線造影糸とも接触するように密に織り込まれている。また、特許文献2に記載されたガーゼは、横糸の折り返し端付近の耳部の縦糸群を密織りし、耳部の密織り縦糸群にX線造影糸が縦糸として混入されている。このように特許文献1及び2に記載されたものでは、密に折込んだ経糸によってX線造影糸を両側から挟みこんで摩擦力を増大させることにより、X線造影糸の抜け止めを行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3648727号公報
【特許文献2】特開2007−330425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、X線造影糸を織り込んだ医療用ガーゼは、X線造影糸が簡単に抜け落ちないことが要求されるほか、柔軟性、良好な触感を損なわず、簡単な構造で安価に製造できることが望まれている。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、X線造影糸がガーゼから抜け難く、感触が良好で、且つ安価な医療用ガーゼを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療用ガーゼは、間隔をもって配置されて互いに交差する複数の経糸及び緯糸を構成糸とし、少なくとも1本の経糸としてX線造影糸が織り込まれた医療用ガーゼであって、
前記緯糸が折り返された耳部に、複数の前記経糸が隣接するものどうしが互いに接触するように密に織り込まれた経糸密織り部が設けられ、前記X線造影糸は、一側が前記経糸密織り部に接触するように配置され、前記X線造影糸の他側に隣接する前記経糸は、密に織り込まれていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構造で、X線造影糸がガーゼから抜け難く、感触が良好で、且つ安価な医療用ガーゼを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の医療用ガーゼの全体図である。
【図2】図1に示す医療用ガーゼの要部を拡大して示す図である。
【図3】図2に示す医療用ガーゼのA−A線に沿った断面図である。
【図4】図3に示す断面を模式的に示す説明図である。
【図5】図1に示す医療用ガーゼの製造工程を説明するための裁断前の医療用ガーゼを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の医療用ガーゼの要部の拡大図である。
【図7】図6に示す医療用ガーゼのB−B線に沿った断面を模式的に示す説明図である。
【図8】X線造影糸の引抜き強度の第1の試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図9】X線造影糸の引抜き強度の第2の試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図10】X線造影糸の引抜き強度の第3の試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図11】X線造影糸の引抜き強度の第4の試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図12】X線造影糸の引抜き強度の第1の比較試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図13】X線造影糸の引抜き強度の第2の比較試験における試料及び試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態の医療用ガーゼ1は、例えば外科手術等の医療行為に用いられ、体液や血液などを吸収させるために使用することができるものである。
図1から図4に示すように、医療用ガーゼ1は、複数の経糸2と、複数の緯糸3と、X線造影糸4とを有する。詳細には、医療用ガーゼ1は、複数の経糸2と、複数の経糸2に略直交する複数の緯糸3とを構成糸として、これらが略等間隔で交互に交差するように平織りしたものである。
【0013】
本実施形態では、経糸2及び緯糸3は、一例として太さ40番手の綿糸を採用しているが、任意の太さの糸を用いてもよい。また、経糸2及び緯糸3は、綿糸に限らず、例えば、セルロース繊維、合成繊維、それらの混合体等の任意の材料を用いたものとすることができる。
【0014】
X線造影糸4の材料としては、例えば、硫酸バリウム等のX線非透過性物質を含有する合成樹脂などを採用することができる。合成樹脂としては、例えば、シリコン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などを採用することができる。
また、X線造影糸4の外径は、経糸2及び緯糸3と比較して大径であり、本実施形態では、一例として、0.476mm又は0.76mm程度のものを使用しているが、適宜、決定することができる。
【0015】
医療用ガーゼ1は、中央部に、経糸2及び緯糸3が略等間隔となるように平織した平織り部5が設けられ、平織り部5の両側(図1において左右両側)の端部の緯糸3が折り返えされた耳部8、8に、平織り部5よりも経糸2を密に織り込んだ経糸密織り部6が設けられている。また、経糸2の両端側(図1において上下両側)に、平織り部5よりも緯糸3を密に織り込んだ緯糸密織り部7が設けられている。
【0016】
平織り部5は、経糸2と緯糸3とが略一定の間隔をもって1本毎に上下交互に交差するように平織りされている。経糸2及び緯糸3の間隔は、任意であり、適宜決定することができるが、本実施形態では、1インチ(2.54cm)当り30本の経糸2及び緯糸3が配置されるように設定されている(インチ本数(経×緯)=30×30)。
【0017】
これに対して、経糸密織り部6は、隣接する経糸2どうしが互いに接触するように複数の経糸2が密に織り込まれて、所定の幅に形成されている。また、経糸密織り部6は、図示の例では、8本の経糸2によって構成されて、それらの経糸2は、2本毎に上下交互に緯糸3と交差しているが(図2参照)、経糸2の本数及び緯糸3との交差の形態は、適宜変更してもよい。
【0018】
X線造影糸4は、2本織り込まれており、詳細には、中央の平織り部5と、その両側の経糸密織り部6との間に1本ずつ配置されている。そして、X線造影糸4は、一側が経糸密織り部6に接触するように配置され、X線造影糸4の他側に隣接する平織り部5の経糸2は、密に織り込まれていない。
【0019】
緯糸密織り部7は、複数の緯糸3が平織り部5よりも狭い間隔で密に織り込まれ、その外側には緯糸3が織り込まれず(杼間9)、最も外側に配置された緯糸3から経糸2が適当な長さだけ延出しており、これにより、緯糸3が解け難くなっている。
【0020】
上述の構成の医療用ガーゼ1は、例えば図5に示すように、中央の平織り部5及びその両側の経糸密織り部6を形成するように所定の間隔で配置した複数の経糸2に対して、1本の緯糸3を複数の経糸2の両端の耳部8で折り返しながら所定の間隔で織り込んで、順次、杼間9、緯糸密織り部7、平織り部5、緯糸密織り部7、杼間9、…を連続的に形成し、これを各杼間9で裁断することにより、製造することができる。
【0021】
以上のように構成した、医療用ガーゼ1の作用効果について、次に説明する。
手術等において、患者の体内で使用した場合、術後、X線撮影を行なうことにより、X線画像に映し出されるX線造影糸4によって、医療用ガーゼ1の取り残しを容易に確認することができる。このとき、医療用ガーゼ1には、2本のX線造影糸4が織り込まれているため、X線画像上での視認性に優れる。
【0022】
また、X線造影糸4は、長手方向に引張られたとき、これと交差した緯糸3との摩擦力及びこれと隣接する経糸2との摩擦力が抵抗力となる。このとき、X線造影糸4は、隣接する経糸2どうしが接触するように複数の経糸2が密に織り込まれた経糸密織り部6に隣接して接触するように織り込まれているので、引張られたX線造影糸4によって、これと交差する緯糸3が引き摺られる際、引き摺られて傾斜した緯糸3によって耳部8側に引き寄せられて、経糸密織り部6に押し付けられることになる。経糸密織り部6は、その端部が緯糸3を折り返した耳部8によって確実に支持され、密に織り込まれた経糸2によってX線造影糸4の耳部8側への移動を抑止するので、X線造影糸4が経糸2に強く押し付けられ、その摩擦力が増大することにより、X線造影糸4が抜け難くなる。
【0023】
一般的にX線造影糸4は、ガーゼの構成糸よりも太くて硬いので、ガーゼの端部に配置されていると、ガーゼの感触が損なわれることになるが、本実施形態の医療用ガーゼ1では、X線造影糸4が経糸密織り部6の内側に隣接して配置されているので、感触が良好である。また、医療用ガーゼ1では、X線造影糸4は、一側のみが経糸密織り部6に隣接し、他側は平織り部5に隣接しているので、最小限の経糸密織り部6を形成すればよく、前述の特許文献1及び2のものに比して、密織り部を少なくすることができ、経済的である。
【0024】
なお、経糸密織り部6の経糸2の本数が多く、X線造影糸4が耳部8から離れると、X線造影糸4の引抜き強度が低くなる傾向がある(後述の試験結果を参照)。また、経糸密織り部6の経糸2の本数が少なく、X線造影糸4が耳部8に近くなると、感触が悪化する傾向がある。したがって、経糸密織り部6の経糸2の本数は、引抜き強度や感触などを考慮して決定する。
【0025】
<第2の実施形態>
次に、図6、図7を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0026】
本実施形態に係る医療用ガーゼ1では、X線造影糸として、複数(図示のものでは2本)のX線造影糸を撚り合わせて大径としたX線造影糸4Aを用いている。
【0027】
また、図6に示すように、X線造影糸4Aは、撚り糸としたことにより、外周面に凹凸部11が形成され、この凹凸部11に複数の緯糸3が係合している。これにより、X線造影糸4Aは、経糸2及び緯糸3との間の摩擦力に加えて、緯糸3との係合による係止力によって更に抜け難くなっている。ここで、凹凸部11の間隔を緯糸3の間隔と略等しく、又は、その整数倍とすることにより、緯糸3に係合し易くなり、X線造影糸4Aの抜け難さ(引抜き強度)を効果的に高めることができる。また、X線造影糸4Aが大径となるので、X線画像上での視認性を高めることができる。
【0028】
上記第2の実施形態において、2本のX線造影糸4a、4bを撚ってX線造影糸4Aとする際、X線造影糸4a、4bの弾力性によって撚り形状の保持が困難な場合、1本の経糸2を加えた3本を寄り合わせることにより、容易に撚り形状を保持することができる。この場合、経糸2は、X線造影糸4a、4bに比して充分細いので、撚り形状には殆ど影響しない。
【0029】
なお、上記第1及び第2の実施形態では、経糸密織り部6及びX線造影糸4、4Aを平織り部5の両側に設けているが、片側のみに設けてもよく、X線造影糸4、4Aは、少なくとも1本設けられていればよい。また、緯糸密織り部7は省略してもよい。
【0030】
また、上記第1及び第2の実施形態では、医療用ガーゼ1は、一例として平織りされたものを示しているが、この形態に限らず、例えば、綾織り、朱子織など、各種任意の織り形態を採用してもよい。また、上記医療用ガーゼ1は、矩形状に形成されているが、任意の形状であってもよい。
【0031】
以下に、上記第1及び第2実施形態に係る医療用ガーゼ1について、X線造影糸4、4Aの引き抜き強度試験を行った試験結果について図8から図13を参照して説明する。本試験は、試料である医療用ガーゼ1を固定して、X線造影糸4、4Aを引抜き、引抜き時に要した荷重(引抜き強度)を測定することによって行なう。
なお、本試験に用いた医療用ガーゼ1は、一辺30.0cm±0.5cm(許容範囲)の正方形で、経糸/緯糸=40s/40s(40番手)、実測インチ本数(経×緯)=30×30(インチ打込本数(経×緯)=28×28)である。
また、X線造影糸4、4Aについては、X線造影糸BとX線造影糸Cの2種類を適宜用いており、X線造影糸Bは、固定材:ポリプロピレン他、造影剤:硫酸バリウム、着色:ブルー、形状:約60本からなるマルチフィラメント状、外径:平均0.476mmであり、X線造影糸Cは、固定材:ポリプロピレン他、造影剤:硫酸バリウム、着色:グリーン、形状:単一フィラメント状、外径:0.76±0.076mmである。
【0032】
<第1の試験>
第1の試験では、図8(a)に示すように、上記第1の実施形態の医療用ガーゼ1において、経糸密織り部6の経糸2を8本として、X線造影糸Bを織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。その結果を図8(b)に示す。図8(b)に示すように、A1〜A10の10個の試料について2回試験を行った結果、1回目の平均値は686.2cN、2回目の平均値は628.2cNであった。
【0033】
<第2の試験>
第2の試験では、図9(a)に示すように、上記第1の実施形態の医療用ガーゼ1において、経糸密織り部6の経糸2を4本として、X線造影糸B又はCを織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。その結果を図9(b)、(c)に示す。図9(b)に示すように、X線造影糸Bを織り込んだB1〜B10の10個の試料について2回試験を行った結果、1回目の平均値は961.6cN、2回目の平均値は916.5cNであった。
また、図9(c)に示すように、X線造影糸Cを織り込んだC1〜C5の5個の試料について2回試験を行った結果、1回目の平均値は130.2cN、2回目の平均値は127.8cNであった。
なお、X線造影糸Cを織り込んだ試料C1〜C5では、X線造影糸Cが柔軟性を有しており、試験中に伸長して試験機のストロークを超えて引抜くことができなかったため、伸長時に測定された荷重を測定結果とした。
【0034】
<第3の試験>
第3の試験では、図10(a)に示すように、上記第2の実施形態の医療用ガーゼ1において、経糸密織り部6の経糸2を8本として、2本のX線造影糸Bを撚り合わせたX線造影糸4Aを織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。その試験結果を図10(b)に示す。図10(b)に示すように、D1〜D10の10個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は805.0cNであった。
【0035】
<第4の試験>
第4の試験では、図11(a)に示すように、上記第2の実施形態の医療用ガーゼ1において、経糸密織り部6の経糸2を4本として、2本のX線造影糸B又はCを撚り合わせたX線造影糸4Aを織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。その結果を図11(b)、(c)に示す。図11(b)に示すように、X線造影糸Bを織り込んだE1〜E5の5個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は2112.4cNであった。
また、図11(c)に示すように、X線造影糸Cを織り込んだF1〜F5の5個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は1233.6cNであった。
【0036】
上記第1及び第2の実施形態との比較として、次の2つの形態の医療用ガーゼについて、上記第1から第4の試験と同様の引抜き試験を行なった結果について説明する。
【0037】
<第1の比較試験>
第1の比較試験では、図12(a)に示すように、上記第1から第4の試験に用いたものと同様の医療用ガーゼにおいて、経糸密織り部6を設けず、平織り部5に、2本のX線造影糸Bを撚り合わせたX線造影糸4Aを経糸2として織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。
その試験結果を図12(b)に示す。図12(b)に示すように、G1〜G5の5個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は505.4cNであった。
【0038】
<第2の比較試験>
第2の比較試験では、図13(a)に示すように、上記第1から第4の試験に用いたものと同様の医療用ガーゼにおいて、経糸密織り部6を設けず、上記特許文献1に記載されているもののように、平織り部5に、経糸2としてX線造影糸4を織り込み、更に、その両側各6本の経糸2を隣接するものが互いに接触するように密に織り込み、X線造影糸4に接触するようにしたものについて、引抜き強度試験を行なった。
その試験結果を図13(b)に示す。図13(b)に示すように、H1〜H10の10個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は575.1cNであった。
【0039】
以上の試験結果により、次のことがわかる。
X線造影糸4の引抜き強度は、第4の試験(図11)のもの、すなわち、上記第2の実施形態において、経糸密織り部6の経糸2を4本として、2本を撚り合わせたX線造影糸Bを織り込んだものが最も高く(引抜き強度2112.4cN)、次いで、同試験においてX線造影糸Cを織り込んだものが高い(引抜き強度1233.6cN)。
以下、第2の試験(図9)のもの、すなわち、上記第1の実施形態において、経糸密織り部6の経糸を4本としてX線造影糸Bを織り込んだもの(引抜き強度 一回目:961.6cN、2回目:916.5cN)、次いで、第3の試験(図10)のもの、すなわち、上記第2の実施形態において、経糸密織り部6の経糸を8本として2本を撚り合わせたX線造影糸Bを織り込んだもの(引抜き強度805.5cN)、次いで、第1の試験(図8)のもの、すなわち、上記第1の実施形態において、経糸密織り部6の経糸2を8本としてX線造影糸Bを織り込んだもの(引抜き強度 一回目:686.8cN、2回目:628.2cN)の順で引抜き強度が高い。
そして、これらの本発明の第1及び第2の実施形態の医療用ガーゼ1は、いずれも第1及び第2の比較試験(図12、図13)のものよりもX線造影糸4、4Aの引抜き強度が高い。
【符号の説明】
【0040】
1…医療用ガーゼ、2…経糸、3…緯糸、4…X線造影糸、5…平織り部、6…経糸密織り部、8…耳部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線造影糸が織り込まれた医療用ガーゼに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用ガーゼは、手術等において、患者の体内で使用される場合、血液、体液等を吸収して、臓器、組織との区別がつきにくくなるため、体内に取り残さないように細心の注意が払われる。また、一般的にガーゼの繊維は、X線画像に写らないため、術後、体内に取り残されたガーゼの有無を確認することは困難であった。
【0003】
そこで、従来、ガーゼにX線造影糸を織り込み、術後、X線撮影により、ガーゼの取り残しを容易に確認できるようにした医療用ガーゼが種々提案されている。
しかしながら、単に、ガーゼを構成する複数の経糸の一本をX線造影糸に置き換えた医療用ガーゼでは、X線造影糸は、一般的にガーゼの構成糸より大径であり、表面が滑らかに形成されているため、ピンセットで摘まれたりすると、ガーゼから抜け落ちてしまう場合があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1、特許文献2には、X線造影糸の抜け止めを施した医療用ガーゼが記載されている。詳細には、特許文献1に記載された医療用ガーゼは、X線造影糸に対して略平行方向の構成糸の内、X線造影糸の両側に近接する複数本の縦糸が互いに接触し、かつ、X線造影糸とも接触するように密に織り込まれている。また、特許文献2に記載されたガーゼは、横糸の折り返し端付近の耳部の縦糸群を密織りし、耳部の密織り縦糸群にX線造影糸が縦糸として混入されている。このように特許文献1及び2に記載されたものでは、密に折込んだ経糸によってX線造影糸を両側から挟みこんで摩擦力を増大させることにより、X線造影糸の抜け止めを行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3648727号公報
【特許文献2】特開2007−330425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、X線造影糸を織り込んだ医療用ガーゼは、X線造影糸が簡単に抜け落ちないことが要求されるほか、柔軟性、良好な触感を損なわず、簡単な構造で安価に製造できることが望まれている。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、X線造影糸がガーゼから抜け難く、感触が良好で、且つ安価な医療用ガーゼを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療用ガーゼは、間隔をもって配置されて互いに交差する複数の経糸及び緯糸を構成糸とし、少なくとも1本の経糸としてX線造影糸が織り込まれた医療用ガーゼであって、
前記緯糸が折り返された耳部に、複数の前記経糸が隣接するものどうしが互いに接触するように密に織り込まれた経糸密織り部が設けられ、前記X線造影糸は、一側が前記経糸密織り部に接触するように配置され、前記X線造影糸の他側に隣接する前記経糸は、密に織り込まれていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構造で、X線造影糸がガーゼから抜け難く、感触が良好で、且つ安価な医療用ガーゼを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の医療用ガーゼの全体図である。
【図2】図1に示す医療用ガーゼの要部を拡大して示す図である。
【図3】図2に示す医療用ガーゼのA−A線に沿った断面図である。
【図4】図3に示す断面を模式的に示す説明図である。
【図5】図1に示す医療用ガーゼの製造工程を説明するための裁断前の医療用ガーゼを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の医療用ガーゼの要部の拡大図である。
【図7】図6に示す医療用ガーゼのB−B線に沿った断面を模式的に示す説明図である。
【図8】X線造影糸の引抜き強度の第1の試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図9】X線造影糸の引抜き強度の第2の試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図10】X線造影糸の引抜き強度の第3の試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図11】X線造影糸の引抜き強度の第4の試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図12】X線造影糸の引抜き強度の第1の比較試験における試料及び試験結果を示す図である。
【図13】X線造影糸の引抜き強度の第2の比較試験における試料及び試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態の医療用ガーゼ1は、例えば外科手術等の医療行為に用いられ、体液や血液などを吸収させるために使用することができるものである。
図1から図4に示すように、医療用ガーゼ1は、複数の経糸2と、複数の緯糸3と、X線造影糸4とを有する。詳細には、医療用ガーゼ1は、複数の経糸2と、複数の経糸2に略直交する複数の緯糸3とを構成糸として、これらが略等間隔で交互に交差するように平織りしたものである。
【0013】
本実施形態では、経糸2及び緯糸3は、一例として太さ40番手の綿糸を採用しているが、任意の太さの糸を用いてもよい。また、経糸2及び緯糸3は、綿糸に限らず、例えば、セルロース繊維、合成繊維、それらの混合体等の任意の材料を用いたものとすることができる。
【0014】
X線造影糸4の材料としては、例えば、硫酸バリウム等のX線非透過性物質を含有する合成樹脂などを採用することができる。合成樹脂としては、例えば、シリコン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などを採用することができる。
また、X線造影糸4の外径は、経糸2及び緯糸3と比較して大径であり、本実施形態では、一例として、0.476mm又は0.76mm程度のものを使用しているが、適宜、決定することができる。
【0015】
医療用ガーゼ1は、中央部に、経糸2及び緯糸3が略等間隔となるように平織した平織り部5が設けられ、平織り部5の両側(図1において左右両側)の端部の緯糸3が折り返えされた耳部8、8に、平織り部5よりも経糸2を密に織り込んだ経糸密織り部6が設けられている。また、経糸2の両端側(図1において上下両側)に、平織り部5よりも緯糸3を密に織り込んだ緯糸密織り部7が設けられている。
【0016】
平織り部5は、経糸2と緯糸3とが略一定の間隔をもって1本毎に上下交互に交差するように平織りされている。経糸2及び緯糸3の間隔は、任意であり、適宜決定することができるが、本実施形態では、1インチ(2.54cm)当り30本の経糸2及び緯糸3が配置されるように設定されている(インチ本数(経×緯)=30×30)。
【0017】
これに対して、経糸密織り部6は、隣接する経糸2どうしが互いに接触するように複数の経糸2が密に織り込まれて、所定の幅に形成されている。また、経糸密織り部6は、図示の例では、8本の経糸2によって構成されて、それらの経糸2は、2本毎に上下交互に緯糸3と交差しているが(図2参照)、経糸2の本数及び緯糸3との交差の形態は、適宜変更してもよい。
【0018】
X線造影糸4は、2本織り込まれており、詳細には、中央の平織り部5と、その両側の経糸密織り部6との間に1本ずつ配置されている。そして、X線造影糸4は、一側が経糸密織り部6に接触するように配置され、X線造影糸4の他側に隣接する平織り部5の経糸2は、密に織り込まれていない。
【0019】
緯糸密織り部7は、複数の緯糸3が平織り部5よりも狭い間隔で密に織り込まれ、その外側には緯糸3が織り込まれず(杼間9)、最も外側に配置された緯糸3から経糸2が適当な長さだけ延出しており、これにより、緯糸3が解け難くなっている。
【0020】
上述の構成の医療用ガーゼ1は、例えば図5に示すように、中央の平織り部5及びその両側の経糸密織り部6を形成するように所定の間隔で配置した複数の経糸2に対して、1本の緯糸3を複数の経糸2の両端の耳部8で折り返しながら所定の間隔で織り込んで、順次、杼間9、緯糸密織り部7、平織り部5、緯糸密織り部7、杼間9、…を連続的に形成し、これを各杼間9で裁断することにより、製造することができる。
【0021】
以上のように構成した、医療用ガーゼ1の作用効果について、次に説明する。
手術等において、患者の体内で使用した場合、術後、X線撮影を行なうことにより、X線画像に映し出されるX線造影糸4によって、医療用ガーゼ1の取り残しを容易に確認することができる。このとき、医療用ガーゼ1には、2本のX線造影糸4が織り込まれているため、X線画像上での視認性に優れる。
【0022】
また、X線造影糸4は、長手方向に引張られたとき、これと交差した緯糸3との摩擦力及びこれと隣接する経糸2との摩擦力が抵抗力となる。このとき、X線造影糸4は、隣接する経糸2どうしが接触するように複数の経糸2が密に織り込まれた経糸密織り部6に隣接して接触するように織り込まれているので、引張られたX線造影糸4によって、これと交差する緯糸3が引き摺られる際、引き摺られて傾斜した緯糸3によって耳部8側に引き寄せられて、経糸密織り部6に押し付けられることになる。経糸密織り部6は、その端部が緯糸3を折り返した耳部8によって確実に支持され、密に織り込まれた経糸2によってX線造影糸4の耳部8側への移動を抑止するので、X線造影糸4が経糸2に強く押し付けられ、その摩擦力が増大することにより、X線造影糸4が抜け難くなる。
【0023】
一般的にX線造影糸4は、ガーゼの構成糸よりも太くて硬いので、ガーゼの端部に配置されていると、ガーゼの感触が損なわれることになるが、本実施形態の医療用ガーゼ1では、X線造影糸4が経糸密織り部6の内側に隣接して配置されているので、感触が良好である。また、医療用ガーゼ1では、X線造影糸4は、一側のみが経糸密織り部6に隣接し、他側は平織り部5に隣接しているので、最小限の経糸密織り部6を形成すればよく、前述の特許文献1及び2のものに比して、密織り部を少なくすることができ、経済的である。
【0024】
なお、経糸密織り部6の経糸2の本数が多く、X線造影糸4が耳部8から離れると、X線造影糸4の引抜き強度が低くなる傾向がある(後述の試験結果を参照)。また、経糸密織り部6の経糸2の本数が少なく、X線造影糸4が耳部8に近くなると、感触が悪化する傾向がある。したがって、経糸密織り部6の経糸2の本数は、引抜き強度や感触などを考慮して決定する。
【0025】
<第2の実施形態>
次に、図6、図7を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0026】
本実施形態に係る医療用ガーゼ1では、X線造影糸として、複数(図示のものでは2本)のX線造影糸を撚り合わせて大径としたX線造影糸4Aを用いている。
【0027】
また、図6に示すように、X線造影糸4Aは、撚り糸としたことにより、外周面に凹凸部11が形成され、この凹凸部11に複数の緯糸3が係合している。これにより、X線造影糸4Aは、経糸2及び緯糸3との間の摩擦力に加えて、緯糸3との係合による係止力によって更に抜け難くなっている。ここで、凹凸部11の間隔を緯糸3の間隔と略等しく、又は、その整数倍とすることにより、緯糸3に係合し易くなり、X線造影糸4Aの抜け難さ(引抜き強度)を効果的に高めることができる。また、X線造影糸4Aが大径となるので、X線画像上での視認性を高めることができる。
【0028】
上記第2の実施形態において、2本のX線造影糸4a、4bを撚ってX線造影糸4Aとする際、X線造影糸4a、4bの弾力性によって撚り形状の保持が困難な場合、1本の経糸2を加えた3本を寄り合わせることにより、容易に撚り形状を保持することができる。この場合、経糸2は、X線造影糸4a、4bに比して充分細いので、撚り形状には殆ど影響しない。
【0029】
なお、上記第1及び第2の実施形態では、経糸密織り部6及びX線造影糸4、4Aを平織り部5の両側に設けているが、片側のみに設けてもよく、X線造影糸4、4Aは、少なくとも1本設けられていればよい。また、緯糸密織り部7は省略してもよい。
【0030】
また、上記第1及び第2の実施形態では、医療用ガーゼ1は、一例として平織りされたものを示しているが、この形態に限らず、例えば、綾織り、朱子織など、各種任意の織り形態を採用してもよい。また、上記医療用ガーゼ1は、矩形状に形成されているが、任意の形状であってもよい。
【0031】
以下に、上記第1及び第2実施形態に係る医療用ガーゼ1について、X線造影糸4、4Aの引き抜き強度試験を行った試験結果について図8から図13を参照して説明する。本試験は、試料である医療用ガーゼ1を固定して、X線造影糸4、4Aを引抜き、引抜き時に要した荷重(引抜き強度)を測定することによって行なう。
なお、本試験に用いた医療用ガーゼ1は、一辺30.0cm±0.5cm(許容範囲)の正方形で、経糸/緯糸=40s/40s(40番手)、実測インチ本数(経×緯)=30×30(インチ打込本数(経×緯)=28×28)である。
また、X線造影糸4、4Aについては、X線造影糸BとX線造影糸Cの2種類を適宜用いており、X線造影糸Bは、固定材:ポリプロピレン他、造影剤:硫酸バリウム、着色:ブルー、形状:約60本からなるマルチフィラメント状、外径:平均0.476mmであり、X線造影糸Cは、固定材:ポリプロピレン他、造影剤:硫酸バリウム、着色:グリーン、形状:単一フィラメント状、外径:0.76±0.076mmである。
【0032】
<第1の試験>
第1の試験では、図8(a)に示すように、上記第1の実施形態の医療用ガーゼ1において、経糸密織り部6の経糸2を8本として、X線造影糸Bを織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。その結果を図8(b)に示す。図8(b)に示すように、A1〜A10の10個の試料について2回試験を行った結果、1回目の平均値は686.2cN、2回目の平均値は628.2cNであった。
【0033】
<第2の試験>
第2の試験では、図9(a)に示すように、上記第1の実施形態の医療用ガーゼ1において、経糸密織り部6の経糸2を4本として、X線造影糸B又はCを織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。その結果を図9(b)、(c)に示す。図9(b)に示すように、X線造影糸Bを織り込んだB1〜B10の10個の試料について2回試験を行った結果、1回目の平均値は961.6cN、2回目の平均値は916.5cNであった。
また、図9(c)に示すように、X線造影糸Cを織り込んだC1〜C5の5個の試料について2回試験を行った結果、1回目の平均値は130.2cN、2回目の平均値は127.8cNであった。
なお、X線造影糸Cを織り込んだ試料C1〜C5では、X線造影糸Cが柔軟性を有しており、試験中に伸長して試験機のストロークを超えて引抜くことができなかったため、伸長時に測定された荷重を測定結果とした。
【0034】
<第3の試験>
第3の試験では、図10(a)に示すように、上記第2の実施形態の医療用ガーゼ1において、経糸密織り部6の経糸2を8本として、2本のX線造影糸Bを撚り合わせたX線造影糸4Aを織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。その試験結果を図10(b)に示す。図10(b)に示すように、D1〜D10の10個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は805.0cNであった。
【0035】
<第4の試験>
第4の試験では、図11(a)に示すように、上記第2の実施形態の医療用ガーゼ1において、経糸密織り部6の経糸2を4本として、2本のX線造影糸B又はCを撚り合わせたX線造影糸4Aを織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。その結果を図11(b)、(c)に示す。図11(b)に示すように、X線造影糸Bを織り込んだE1〜E5の5個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は2112.4cNであった。
また、図11(c)に示すように、X線造影糸Cを織り込んだF1〜F5の5個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は1233.6cNであった。
【0036】
上記第1及び第2の実施形態との比較として、次の2つの形態の医療用ガーゼについて、上記第1から第4の試験と同様の引抜き試験を行なった結果について説明する。
【0037】
<第1の比較試験>
第1の比較試験では、図12(a)に示すように、上記第1から第4の試験に用いたものと同様の医療用ガーゼにおいて、経糸密織り部6を設けず、平織り部5に、2本のX線造影糸Bを撚り合わせたX線造影糸4Aを経糸2として織り込んだものについて、引抜き強度を測定した。
その試験結果を図12(b)に示す。図12(b)に示すように、G1〜G5の5個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は505.4cNであった。
【0038】
<第2の比較試験>
第2の比較試験では、図13(a)に示すように、上記第1から第4の試験に用いたものと同様の医療用ガーゼにおいて、経糸密織り部6を設けず、上記特許文献1に記載されているもののように、平織り部5に、経糸2としてX線造影糸4を織り込み、更に、その両側各6本の経糸2を隣接するものが互いに接触するように密に織り込み、X線造影糸4に接触するようにしたものについて、引抜き強度試験を行なった。
その試験結果を図13(b)に示す。図13(b)に示すように、H1〜H10の10個の試料について1回試験を行った結果、その平均値は575.1cNであった。
【0039】
以上の試験結果により、次のことがわかる。
X線造影糸4の引抜き強度は、第4の試験(図11)のもの、すなわち、上記第2の実施形態において、経糸密織り部6の経糸2を4本として、2本を撚り合わせたX線造影糸Bを織り込んだものが最も高く(引抜き強度2112.4cN)、次いで、同試験においてX線造影糸Cを織り込んだものが高い(引抜き強度1233.6cN)。
以下、第2の試験(図9)のもの、すなわち、上記第1の実施形態において、経糸密織り部6の経糸を4本としてX線造影糸Bを織り込んだもの(引抜き強度 一回目:961.6cN、2回目:916.5cN)、次いで、第3の試験(図10)のもの、すなわち、上記第2の実施形態において、経糸密織り部6の経糸を8本として2本を撚り合わせたX線造影糸Bを織り込んだもの(引抜き強度805.5cN)、次いで、第1の試験(図8)のもの、すなわち、上記第1の実施形態において、経糸密織り部6の経糸2を8本としてX線造影糸Bを織り込んだもの(引抜き強度 一回目:686.8cN、2回目:628.2cN)の順で引抜き強度が高い。
そして、これらの本発明の第1及び第2の実施形態の医療用ガーゼ1は、いずれも第1及び第2の比較試験(図12、図13)のものよりもX線造影糸4、4Aの引抜き強度が高い。
【符号の説明】
【0040】
1…医療用ガーゼ、2…経糸、3…緯糸、4…X線造影糸、5…平織り部、6…経糸密織り部、8…耳部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をもって配置されて互いに交差する複数の経糸及び緯糸を構成糸とし、少なくとも1本の経糸としてX線造影糸が織り込まれた医療用ガーゼであって、
前記緯糸が折り返された耳部に、複数の前記経糸が隣接するものどうしが互いに接触するように密に織り込まれた経糸密織り部が設けられ、
前記X線造影糸は、一側が前記経糸密織り部に接触するように配置され、前記X線造影糸の他側に隣接する前記経糸は、密に織り込まれていないことを特徴とする医療用ガーゼ。
【請求項2】
前記経糸密織り部は、4本の前記経糸で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガーゼ。
【請求項3】
前記X線造影糸は、複数のX線造影糸が撚り合わされて、外周部に前記緯糸と係合する凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用ガーゼ。
【請求項1】
間隔をもって配置されて互いに交差する複数の経糸及び緯糸を構成糸とし、少なくとも1本の経糸としてX線造影糸が織り込まれた医療用ガーゼであって、
前記緯糸が折り返された耳部に、複数の前記経糸が隣接するものどうしが互いに接触するように密に織り込まれた経糸密織り部が設けられ、
前記X線造影糸は、一側が前記経糸密織り部に接触するように配置され、前記X線造影糸の他側に隣接する前記経糸は、密に織り込まれていないことを特徴とする医療用ガーゼ。
【請求項2】
前記経糸密織り部は、4本の前記経糸で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガーゼ。
【請求項3】
前記X線造影糸は、複数のX線造影糸が撚り合わされて、外周部に前記緯糸と係合する凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用ガーゼ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−218089(P2011−218089A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93197(P2010−93197)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(595016071)スズラン株式会社 (9)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(595016071)スズラン株式会社 (9)
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