説明

医療用キャップ及びその製造方法

【課題】エラストマー栓の表面にひび割れ等の問題が生じることなく、製造にも支障を来たすことのないエラストマー栓が封入されたキャップ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】外栓1と、筒壁21を有し該外栓1内に嵌め込まれる内栓2と、該筒壁21の内周面21dに側面30aが全体に亘って融着されたエラストマー栓3とを有するキャップCであって、該筒壁21は可撓性を有すると共にその上端21a側に易撓性部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ及びその製造方法に関し、より詳細には、輸液容器や薬液容器等の口部に用いられる医療用キャップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野に用いられる薬液容器や輸液容器の口部には、略円柱状の熱可塑性エラストマー栓が封入されたキャップが用いられており、針を該エラストマー栓に刺して、薬液、輸液等の内溶液を取り出せるようにしている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−65459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、このようなキャップは、内枠体の上面に該エラストマー栓を融着し、該エラストマー栓を、該エラストマー栓とは別に成型された外栓に内枠体と共に嵌め込むことにより製造されるが、エラストマー栓に使用される熱可塑性エラストマーは、粘着性が強いため該エラストマー栓を該外栓に嵌め込むために整列搬送させる際に、該エラストマー栓同士がくっついたり、固着したりする問題が生じる。又、該エラストマー栓を該外栓に嵌め込む際には、該エラストマー栓の滑り性が悪いため、該外栓にスムーズに嵌らず、嵌着不良などの問題が生じる。
【0005】
このような問題を解決するために外栓とエラストマー栓を一体に成型しようとすれば、特許文献1にも記載されている通り、該外栓に用いられる樹脂と、熱可塑性エラストマーとの収縮率が異なるため、エラストマー栓の表面にひび割れ等が生じ、注射針等を刺した際に、ひび割れが拡張して液漏れ等が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、エラストマー栓の表面にひび割れ等の問題が生じることなく、製造にも支障を来たすことのないエラストマー栓が封入されたキャップ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外栓と、筒壁を有し該外栓内に嵌め込まれる内栓と、該筒壁の内周面に側面が全体に亘って融着されたエラストマー栓とを有するキャップであって、該筒壁は可撓性を有すると共にその上端側に易撓性部が形成されていることを特徴とするキャップである。
【0008】
又、本発明は、前記筒壁は上端側が下端側よりも薄くなるように形成されており、該筒壁の上端側が前記易撓性部となっていることを特徴とするキャップである。
【0009】
又、本発明は、前記筒壁は外周面及び内周面の少なくとも何れか一方が傾斜状になっていることを特徴とするキャップである。
【0010】
又、本発明は、前記筒壁は外周面及び内周面が共に傾斜状となっていることを特徴とするキャップである。
【0011】
又、本発明は、前記筒壁の内周面は階段状になっていることを特徴とするキャップである。
【0012】
又、本発明は、前記筒壁の少なくとも上端側には複数の凹部が周方向に間欠的に形成されており、該凹部が前記易撓性部となっていることを特徴とするキャップである。
【0013】
又、本発明は、前記エラストマー栓はその上面中央に傾斜段部を有すると共に該傾斜段部には針刺面が形成されていることを特徴とするキャップである。
【0014】
又、本発明は、前記外栓はその側壁が前記筒壁下端よりも厚く形成されることを特徴とするキャップである。
【0015】
又、本発明は、外栓と、内栓と、エラストマー栓とで構成されたキャップの製造方法であって、内栓を可撓性を有する程度の肉厚に成型すると共に上端側を下端側よりも可撓性が高くなるように成型する工程と、該内栓内にエラストマー栓をインサート成型する工程と、該内栓及び該エラストマー栓を、内筒の外周面を外栓の内周面に摺動させながら、外栓に嵌め込む工程とを含む、キャップの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、エラストマー栓の側面が内栓の筒壁によって覆われているため、エラストマー栓及び内栓を外栓に嵌めこむ際に滑り性がよく嵌着不良となることがなく、又、製造ライン上で整列搬送させる際に、エラストマー栓同士がくっついたり、固着したりする問題がない。そして、エラストマー栓の収縮に合わせて筒壁も変形可能であり、特にひび割れの生じ易いエラストマー栓の表面側の筒壁をより変形し易いものとしたのでエラストマー栓がひび割れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す図であり、(a)側は正面図に、(b)側は図1のII−II線における断面図に相当する図である。
【図3】本発明の第1実施形態における外栓を示す図であり、図1のII−II線における断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における内栓を示す正面図であり、(a)側は正面図に、(b)側は図1のII−II線における断面図に相当する図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるエラストマー栓を示す平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるエラストマー栓を示す図であり、(a)側は正面図に、(b)側は図1のII−II線における断面図に相当する図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示す図であり、図2に相当する図である。
【図8】本発明の第3実施形態を示す内栓及びエラストマー栓の平面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例を示す図であり、図2の相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1実施形態を図1乃至6により説明する。キャップCは外栓1、内栓2及びエラストマー栓3より構成される。
【0019】
外栓1は、プルトップ10aと封膜部10bから為るプルトップ型封膜部10、封膜部10の下面周縁部10cに薄肉部11を解して連続する頂壁12、頂壁12の周縁部12aより下方へと延在する略円筒形状の側壁13及び側壁13の下端13aと連続するフランジ部14から構成されている。
【0020】
頂壁12には、常時は封膜部10bにより閉塞され、使用時はプルトップ10aを引っ張ることにより開放される開口予定部12bが形成され、側壁13は内栓2の筒壁21よりも厚肉に形成される。又、フランジ部14は容器(図示せず)に設けられているフランジと融着し、キャップCを該容器に固定するために設けられるものであると共に、その内周面には嵌合凹部14aが形成されている。本実施形態において、側壁13の内周面13bは、内栓2の筒部21の外周面21cの傾斜に合わせて傾斜している。又、開口予定部12bは、エラストマー栓3の傾斜段部32と同形状に形成されている。
【0021】
内栓2は、熱可塑性エラストマーよりも滑り性のよい合成樹脂でできており、略円環状の基部20及び基部20に立設された筒壁21より構成される。基部20は、外周面に嵌合凸部20aが形成され、内周面側には段部20bが形成される。嵌合凸部20aは、内栓2が外栓1に嵌め込まれる際に、外栓1の嵌合凹部14aと嵌合し、内栓2を外栓1に固定するために形成される。
【0022】
筒壁21は、可撓性を有する程度の肉厚に形成されると共に易撓性部が形成される。本発明において易撓性とは少なくとも熱可塑性エラストマーの収縮に追随して変形できる程度に高い可撓性を有することを指す。本実施形態では、筒壁21は、上端部21aが下端21bよりも薄くなるように形成されており、つまり、その上端21a側に易撓性部が形成されていることとなる。又、筒壁21は外周面21c及び内周面21dが共に傾斜し断面略台形状となっていると共に上端21aの外周面は、内筒2を外筒1により嵌め込み易くするために面取りされている。
【0023】
エラストマー栓3は、熱可塑性エラストマーからできており、内栓2をあらかじめ成型金型内に挿入し、内栓2の段部20b上に且つ筒壁21内に溶融した熱可塑性エラストマーを射出充填後、冷却することによって成型される(インサート成型法)。このため、エラストマー栓3の本体30の側面30aは略全体に亘って、筒壁21の内周面21dに融着されている。つまり、本体30の側面30aは、内栓2の筒壁21によって覆われていることとなる。又、本体30の上面30bの中央には、使用者が注射針(図示せず)等を刺すための針刺面31が形成される。
【0024】
本実施形態においては、上面30bの中央は略円錐台状の傾斜段部32が形成されており、傾斜段部32は、キャップCを組み立てる際に開口予定部12bに嵌め込まれる。又、針刺面31は、傾斜段部32の上面に設けられ、複数の略半球面状の凹部33が形成される。凹部33は、使用者が前記注射針等を刺す目安となる様に形成されるものであり、傾斜段部32の高さよりも浅く形成されている。
【0025】
本実施形態のキャップCは、
(1)射出成型等の既存の成型方法によって、内栓2を、その筒壁21が上端21a側を下端21b側よりも薄くなるように、つまり部分的に易撓性を有するように形成すると共に全体的に可撓性を有する程度の肉厚に成型し、
(2)内栓2を成型金型(図示せず)に挿入し、溶融した熱可塑性エラストマーを内栓2の筒壁21内に射出充填後、冷却することによってエラストマー栓3を内栓2と一体に成型する。この際に、エラストマー栓3の側面30aは筒壁21の内周面21dに融着される。
(3)その後、内栓2及びエラストマー栓3を、別途に成型された外栓1に嵌めこみ、外栓1の嵌合凹部14aと内栓2の嵌合凸部20aを嵌合することによって、製造される。
【0026】
本実施形態では、エラストマー栓3を成型する上記(2)の工程の際には、内栓2の筒壁21は可撓性を有する程度の肉厚に形成されているため、冷却時のエラストマー栓3の収縮に応じて、筒壁21もまた変形することが可能であり、特に、筒壁21は、ひび割れ等の問題が生じ易いエラストマー栓3の上面30b側、つまり、その上端21abは易撓性となっており、エラストマー栓3の上面30bの変形に追随して変形することができる。従って、エラストマー栓3にひび割れ等の問題が生じることがない。
【0027】
又、本実施形態では、エラストマー栓3の側面30aは、内栓2によって覆われており、露出していないため、外栓1に嵌めこむため整列搬送させる際に、エラストマー栓3同士がくっついたり、固着したりする問題が生じることがない。
【0028】
そして、内栓2及びエラストマー栓3を外栓1に嵌め込む上記(3)の工程の際には、エラストマー栓3の側面30aが内栓2によって覆われているため、滑り性がよい内栓2の筒壁21の外周面21cを、外栓1の側壁13の内周面13bに摺動させ、内栓2及びエラストマー栓3を外栓1内の所定の位置に収めることができる。従って、本実施形態は、嵌着不良を起こすことがない。
【0029】
又、キャップCが前記容器に固定され、使用する際には、前記注射針等を抜き差しする際に、内容液の漏れが生じないように、エラストマー栓3には、常にある程度の付勢力が掛かっている必要がある。内栓2の筒壁21は、上端21aよりも下端21bが厚くなっており、これによって、該付勢力を確保しつつ、上記易撓性の部分が確保されるようになっており、液漏れ等の新たな問題を生じることがない。
【0030】
本願発明の第2実施形態を図7により説明する。第1実施形態との相違は傾斜状の筒壁21の代わりに複数の段部からなる階段状の筒壁21Aを内栓2の基部20より立設させたことである。尚、同一の符号で示される部材は第1実施形態と同様である。
【0031】
筒壁21Aは、可撓性を損なわない程度に肉厚で形成され、内周方向に凸の下段部21eと下段部21eよりも薄く形成された上段部21fから構成される。即ち、本実施形態は、上段部21fが、エラストマー栓3の本体30の収縮に追随して変形できる易撓性部となっており、下段部21eによって、注射針等を刺した際の内容液の漏れを防止するための上記付勢力を確保されるものである。
【0032】
本発明の第3実施形態について図8により説明する。第1実施形態との相違は内栓2の筒壁21の上端21a側にリブ21gにより離間する複数の凹所21hが内栓2の周方向に間欠的に形成されていることである。尚、同一の符号で示される部材は第1実施形態と同様である。
【0033】
本実施形態では、凹所21hが易撓性部になっており、凹所21hエラストマー栓3の収縮に追随して変形することによって、エラストマー栓3の上面30bにひび割れが入ることを防止し、筒壁21の下端21b側に加えて、リブ21gによっても注射針等を刺した際の内容液の漏れを防止するための上記付勢力を確保されるものである。
【0034】
尚、リブ21g及び凹所21hは少なくとも筒壁21の上端21a側に形成されていればよく、上端21a側から下端21b側にかけて形成してもよい。又、凹所21hが易撓性となっていればよく、リブ21gの肉厚は適宜設計することができ、例えば、リブ21gを筒壁21から突出するように形成することもできるし、筒壁21と面一に形成することもできる。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、プルトップ型封膜部10の代わりに外栓1に貼着されたシール型封膜部15を設けても良い。又、必ずしも、傾斜段部32等を設けなくとも良い。そして、他の構成は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0036】
C キャップ 1 外栓 10 プルトップ型封膜部
10a プルトップ 10b 封膜部 10c 下面周縁部
11 薄肉部 12 頂壁 12a 周縁部
12b 開口予定部 12c 下面 13 側壁
13a 下端 13b 内周面 14 フランジ部
14a 嵌合凹部 15 シール型封膜部 2 内栓
20 基部 20a 嵌合凸部 20b 段部
21 筒壁 21a 上端 21b 下端
21c 外周面 21d 内周面 21e 下段部
21f 上段部 21g リブ 21h 凹所
3 エラストマー栓 30 本体 30a 側面
30b 上面 31 針刺面 32 傾斜段部
33 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外栓と、
筒壁を有し該外栓内に嵌め込まれる内栓と、
該筒壁の内周面に側面が全体に亘って融着されたエラストマー栓とを有するキャップであって、
該筒壁は可撓性を有すると共にその上端側に易撓性部が形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記筒壁は上端側が下端側よりも薄くなるように形成されており、該筒壁の上端側が前記易撓性部となっていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記筒壁は外周面及び内周面の少なくとも何れか一方が傾斜状になっていることを特徴とする請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記筒壁は外周面及び内周面が共に傾斜状となっていることを特徴とする請求項3に記載のキャップ。
【請求項5】
前記筒壁の内周面は階段状になっていることを特徴とする請求項2に記載のキャップ。
【請求項6】
前記筒壁の少なくとも上端側には複数の凹所が周方向に間欠的に形成されており、該凹所が前記易撓性部となっていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項7】
前記エラストマー栓はその上面中央に傾斜段部を有すると共に該傾斜段部には針刺面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のキャップ。
【請求項8】
前記外栓はその側壁が前記筒壁下端よりも厚く形成されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のキャップ。
【請求項9】
外栓と、内栓と、エラストマー栓とで構成されたキャップの製造方法であって、
内栓を可撓性を有する程度の肉厚に成型すると共に上端側を下端側よりも可撓性が高くなるように成型する工程と、
該内栓内にエラストマー栓をインサート成型する工程と、
該内栓及び該エラストマー栓を、内筒の外周面を外栓の内周面に摺動させながら、外栓に嵌め込む工程とを含む、キャップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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