説明

医療用マイクロ波発振機

【課題】 装置内に短絡事故が生じても、出力インタフェースに結合された同軸ケーブル等を介して外部に漏電が発生する虞がなく、安全に取り扱うことができる医療用マイクロ波発振機を得る。
【解決手段】 マイクロ波を患者の患部に照射する出力インタフェース9が接続される出力部コネクタ23と、この出力部コネクタ23にマイクロ波を誘導する導波管25との接続部に、両者間を電気的に絶縁する絶縁機構27を装備し、且つ、両者間の絶縁部位からのマイクロ波漏洩を防止する電磁シールド手段29を装備して、安全性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波のエネルギーを直接患者の患部に当てて治療や診断等を行う医療用マイクロ波発振機に関する。
【背景技術】
【0002】
図5乃至図7は、従来の医療用マイクロ波発振機の構成例を示したものである。
この医療用マイクロ波発振機1は、金属製の本体筐体3内に装備されてマイクロ波を発生するマグネトロン5と、同軸ケーブル7を介して供給されるマイクロ波を患者の患部に照射する出力インタフェース9と、この出力インタフェース9の同軸ケーブル7が着脱可能な出力部コネクタ11と、マグネトロン5の発生したマイクロ波を出力部コネクタ11に誘導する金属製の導波管13とを備えている。
【0003】
出力部コネクタ11は、外装が金属製で、図7に示すように、金属製の導波管13の表面に重なるフランジ部11aを有し、このフランジ部11aを、例えば導波管13に溶接することで、出力部におけるマイクロ波漏洩を防止している。なお、図7において、符合Ybは、フランジ部11aと導波管13との間の溶接部を示している。
【0004】
出力インタフェース9は、例えば、患部をマイクロ波エネルギーで切断する医療用メス等である。
【0005】
従来、このような医療用マイクロ波発振機1では、出力インタフェース9の部分に絶縁構造(BF構造)を採用することで、マグネトロン5等の漏電事故時における感電防止を図ることが考えられていた(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−8940号公報
【特許文献2】特開平5−84255号公報
【特許文献3】特開平6−246013号公報
【特許文献4】特開平9−28716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、図7に示したような出力部の構造では、導波管13が出力部コネクタ11と導通状態にあって、結局、同軸ケーブル7まで導波管13に導通した状態になるため、マグネトロン5側で短絡事故が生じた場合に、同軸ケーブル7等を介して外部に漏電が発生する虞があり、医用電気機器のクラスIII機器等に要求されている十分な絶縁性を確保することが難しいという問題があった。
【0008】
本発明の目的は上記課題を解消することにあり、仮にマグネトロン側に短絡事故が生じても、出力インタフェースに結合された同軸ケーブル等を介して外部に漏電が発生する虞がなく、医用電気機器のクラスIII機器等に要求されている十分な絶縁性を確保して、安全に取り扱うことができる医療用マイクロ波発振機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は下記構成により達成される。
(1) 本体筐体内に装備されてマイクロ波を発生するマグネトロンと、同軸ケーブルを介して供給されるマイクロ波を患者の患部に照射する出力インタフェースと、前記出力インタフェースの同軸ケーブルが着脱可能な出力部コネクタと、前記マグネトロンの発生したマイクロ波を前記出力部コネクタに誘導する導波管とを備える医療用マイクロ波発振機において、
前記導波管と出力部コネクタとの接続部を絶縁する絶縁機構と、
前記導波管と出力部コネクタとの接続部におけるマイクロ波漏洩を防止する電磁シールド手段とを備えたことを特徴とする医療用マイクロ波発振機。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)に記載の医療用マイクロ波発振機では、出力インタフェースの同軸ケーブルが接続される出力部コネクタと、この出力部コネクタにマイクロ波を供給する導波管との接続部に、絶縁機構が装備されていて、出力部コネクタは導波管側と非導通の状態に維持されている。
従って、もしもマグネトロン側に短絡事故が生じても、出力部コネクタや、この出力部コネクタに接続された同軸ケーブルに漏電が発生することがない。
従って、出力インタフェースに結合された同軸ケーブルや出力部コネクタを介して外部に電力の漏洩が発生する虞がなく、医用電気機器のクラスIII機器等に要求されている十分な絶縁性を確保して、安全に取り扱うことができる。
また、上記(1)に記載の医療用マイクロ波発振機は、出力部コネクタと導波管との接続部に、これらの接続部からのマイクロ波の漏洩を防止する電磁シールド手段も設けている。従って、絶縁構造が原因となって出力部コネクタと導波管との継ぎ目からマイクロ波が漏洩することも防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る医療用マイクロ波発振機の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図4は本発明に係る医療用マイクロ波発振機の一実施の形態を示したもので、図1は一実施の形態の医療用マイクロ波発振機の概略構成図、図2(a)は図1のD部の拡大図、図2(b)は図2(a)におけるE断面図、図3は図2(a)のF矢視図、図4は図3のG−G線に沿う断面図である。
【0012】
この一実施の形態の医療用マイクロ波発振機21は、金属製の本体筐体3内に装備されてマイクロ波を発生するマグネトロン5と、マグネトロン5に給電する電源部6と、同軸ケーブル7を介して供給されるマイクロ波を患者の患部に照射する出力インタフェース9と、この出力インタフェース9の同軸ケーブル7が着脱可能な出力部コネクタ23と、マグネトロン5の発生したマイクロ波を出力部コネクタ23に誘導する金属製の導波管25と、導波管25と出力部コネクタ23との接続部を絶縁する絶縁機構27(図4参照)と、導波管25と出力部コネクタ23との接続部におけるマイクロ波漏洩を防止する電磁シールド手段29(図3,4参照)とを備えている。
【0013】
出力部コネクタ23は、外装が金属製で、図4に示すように、金属製の導波管25の上に重ねるフランジ部23aを有している。
絶縁機構27は、医用電気機器の分野において絶縁性を確保するためのBF構造を構築したもので、本実施の形態の場合、導波管25の表面と出力部コネクタ23のフランジ部23aとの間に介在する第1絶縁シート31と、第1絶縁シート31の上に重ねられてフランジ部23aの外周に絶縁層を形成する第2絶縁シート32と、この第2絶縁シート32及びフランジ部23aの表面に跨って重ねられる第3絶縁シート33とから構成されていて、これらの3種の絶縁シート31,32,33によって、フランジ部23aの両面及び外周の3方向を絶縁状態に囲う。
【0014】
第2絶縁シート32は、フランジ部23aの外周の隙間を埋めるスペーサ的な役割を果たすもので、厚さ寸法がフランジ部23aの厚さと略同じ4mmのテフロン(登録商標)シートが採用されている。
第1絶縁シート31は、厚さ寸法が0.2mmのテフロン(登録商標)シートで、導波管25とフランジ部23aとが直接接触しないように、導波管25の表面を覆っている。
第3絶縁シート33は、厚さ寸法が0.5mmのテフロン(登録商標)シートで、フランジ部23a及び第2絶縁シート32の表面を覆っている。
これらの第1絶縁シート31及び第3絶縁シート33の厚さは、マイクロ波の漏洩原因となる隙間ができるだけ生じないように、薄く設定している。
【0015】
出力部コネクタ23のフランジ部23aは、以上のように3種の絶縁シート31,32,33で覆った状態にした上で、第3絶縁シート33の上からフランジ部23aの周縁を押さえる金属製の押さえ板35によって、導波管25に固定される。
押さえ板35は、金属板で、ねじ36によって導波管25に締結・固定される。
押さえ板35とフランジ部23aとの間には第3絶縁シート33が介在して、押さえ板35とフランジ部23aとの直接接触は生じない。
【0016】
電磁シールド手段29は、本実施の形態の場合、フランジ部23aの外周縁に全周に渡って形成した座ぐり部23bに装着されたドーナツ盤状の電波吸収体である。
本実施の形態の場合は、2mm厚の2枚のドーナツ盤状の電波吸収体を、出力部コネクタ23の座ぐり部23bに重ねて装備している。
電磁シールド手段29としての電波吸収体は、3種の絶縁シート31,32,33の厚さ寸法がマイクロ波の漏洩路とならないように、半径方向に適度の大きさを持たせて、マイクロ波の漏洩を防止するチョーク構造を形成することが好ましい。
【0017】
以上の医療用マイクロ波発振機21では、出力インタフェース9の同軸ケーブル7が接続される出力部コネクタ23と、この出力部コネクタ23にマイクロ波を供給する導波管25との接続部に、絶縁機構27が装備されていて、出力部コネクタ23は導波管25側と非導通の状態に維持されている。
従って、もしもマグネトロン5側に短絡事故が生じても、出力部コネクタ23や、この出力部コネクタ23に接続された同軸ケーブル7に漏電が発生することがない。
従って、出力インタフェース9に結合された同軸ケーブル7や出力部コネクタ23を介して外部に電力の漏洩が発生する虞がなく、医用電気機器のクラスIII機器等に要求されている十分な絶縁性を確保して、安全に取り扱うことができる。
【0018】
また、以上の医療用マイクロ波発振機21は、出力部コネクタ23と導波管25との接続部に、これらの接続部からのマイクロ波の漏洩を防止する電磁シールド手段29として、電波吸収体を設けている。従って、絶縁構造が原因となって出力部コネクタ23と導波管25との継ぎ目からマイクロ波が漏洩することも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る医療用マイクロ波発振機の一実施の形態の概略構成図である。
【図2】(a)は図1のD部の拡大図、(b)は(a)におけるE断面図である。
【図3】図2(a)のF矢視図である。
【図4】図3のG−G線に沿う断面図である。
【図5】従来の医療用マイクロ波発振機の概略構成図である。
【図6】(a)は図5のA部の拡大図、(b)は(a)のB矢視図である。
【図7】図6(b)のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0020】
3 本体筐体
5 マグネトロン
7 同軸ケーブル
9 出力インタフェース
21 医療用マイクロ波発振機
23 出力部コネクタ
23a フランジ部
25 導波管
27 絶縁機構
29 電磁シールド手段(電波吸収体)
31 第1絶縁シート
32 第2絶縁シート
33 第3絶縁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筐体内に装備されてマイクロ波を発生するマグネトロンと、同軸ケーブルを介して供給されるマイクロ波を照射する出力インタフェースと、前記出力インタフェースの同軸ケーブルが着脱可能な出力部コネクタと、前記マグネトロンの発生したマイクロ波を前記出力部コネクタに誘導する導波管とを備える医療用マイクロ波発振機において、
前記導波管と出力部コネクタとの接続部を絶縁する絶縁機構(BF構造)と、
前記導波管と出力部コネクタとの接続部におけるマイクロ波漏洩を防止する電磁シールド手段とを備えたことを特徴とする医療用マイクロ波発振機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−247294(P2006−247294A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71807(P2005−71807)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】