説明

医療用寝巻き

【課題】襟刳り7を気管切開部8形成位置よりも下方まで開き、開閉蓋片11付の胃瘻カテーテル挿通孔10を設け、裏面に収納ポケット12を設け、且つ左右後身頃3、4は互いに重合せず連結手段も有さないことで、着脱が簡便で寝たきり患者の背中を浮かせて保温性を向上し褥瘡ができることを防止可能とする。
【解決手段】
高吸湿性、高柔軟性及び輪奈の長いタオル織物を材料とし、前身頃2、左右後身頃3、4及び袖5よりなる。襟刳り7は、患者の気管切開部位置よりも下方に位置するように深く下方に窪んだ開口縁を有する。前身頃2の表面には開閉蓋片11を具備した正背視四角形状胃瘻カテーテル挿通孔10が開設され、裏面には、胃瘻カテーテル挿通孔10の下方に収納ポケット12を設けている。左後身頃3と右後身頃4は、互いに重合しないように横幅は前身頃2の横幅の1/2未満に形成され、左後身頃3と右後身頃4を連結する手段を有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管前側に形成された気管切開部より気道内に気管カニョーレが挿入され、胃瘻を付し自分の意思で身体を自由に動かすことができない仰臥状態の寝たきり患者に用いる医療用寝巻きに関する。
【背景技術】
【0002】
脳疾患により所謂寝たきり状態の患者は痰が詰まりやすく、呼吸困難となるため、気管前側を切開し、該気管切開部に気管カニョーレを挿入配設して呼吸の補助や、吸引による除痰措置を行い、又、経口栄養摂取ができないために胃に孔を形成し胃瘻カテーテルから栄養を補給するようした医療行為が行われている。
従来、胃瘻患者用肌着としては、頭から被るシャツ形式肌着の前身頃に於ける胃瘻対応位置に縦長なスリットを開設し、前身頃表面に於けるスリットの横或は鎖骨対応位置付近に面ファスナーよりなる胃瘻カテーテル固定手段を設け、胃瘻と連通接続されスリットから外部に導出されているチューブは肌着表面を這わせ胃瘻カテーテル固定手段により肌着前身頃表面に固定するようにしたものや(例えば、特許文献1参照)、股部を開閉自在にしたつなぎ服の前身頃胃瘻対応位置に開口部を設け、この開口部には周縁を開閉具で開閉可能な蓋片を設けたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献1又は2に記載の発明は服を頭から被らなければならず、自分の意思で身体を自由に動かすことのできない寝たきり患者には不向きであった。又、カテーテルを挿通孔が縦長スリットであるので、第三者は胃瘻を視認困難で、患者自身がカテーテルを胃瘻に接続する場合のための肌着であると推測される。又、特許文献1に記載の発明であると、胃瘻カテーテル固定手段を肌着の前身頃の表面に設けているので、患者がカテーテルを引き抜く事態が生じるおそれがありという問題点があった。
人工透析(腹膜透析)患者用シャツとして腰丈の長さを有するシャツの前身頃腹部位置に縦長なチューブ孔を開設し、該チューブ孔の前身頃表側には右隣に収納ポケットを設けたものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に記載の発明であると、頭から被るシャツ形式であるので、身体を自分の意思で自由に動かすことのできない患者用としては使用できず、又、チューブ収納ポケットが前身頃表面に設けているので、透析中に患者が引き抜く虞があり危険であるという問題点があった。
右前身頃にドレナージ容器通過スリットとドレナージ容器収納ポケットを設けた浴衣形式の病衣が提案されている(特許文献4)。特許文献4に記載の発明は胆嚢摘出手術後の行動の自由な患者が胆汁を貯留するドレナージと共に自由に行動するための病衣である。特許文献4に記載の発明を自分の意思で自由に動けない仰臥状態の胃瘻患者に着用させると仮定すると、看護者が患者の身体を左右に傾けて後身頃を背中の下に敷設しなけらばならず看護者にとって腰に負担の掛かる重労働となり、又、胃瘻に胃瘻カテーテルを接続する場合は左右前身頃を開かなければならず、患者が風邪を引くおそれがあり、また、寝床と背中との間に介在する後身頃が均一な平面状であるので緩衝機能を持たず背中が寝床に密着して圧接し褥瘡ができるという問題点があった。
前後身頃と両長袖を具備し一側部に開閉具を設け、肩部や脇部に通気穴を穿設し、心臟対応位置にポケット蓋を有するポケット孔を設けた中風患者のリハビリ用プルオーバー形式の病衣が提案されている(例えば、特許文献5参照)。特許文献5に記載の病衣は、後身頃と前身頃が同一横幅をもって縫着されているため、患者の背中と寝床との間の緩衝機能を有さず褥瘡ができ、又、病衣の取替え作業が患者の身体を起こさなければならず看護者及び患者の双方にとって重労働であり、本願発明が目的とする自分の意思で身体を動かすことのできない患者には不向きである。
又、後方開放式エプロンとして特許文献6に記載の発明が提案されている。特許文献6に記載のエプロンは左右後身頃の上端に接続手段を設け、左右側縁には凹部を形成するための伸縮機能を有させている。特許文献6に記載のエプロンを仰臥状態の患者に着用させると仮定すると、左右後身頃の上端接続手段で左右後身頃を接続すると、左右後身頃が掛け布団の如く患者の正面に展開状態で被覆されず、又、接続する際に頭部を持ち上げなければならず看護者及び患者にとっては重労働である。又、左右後身頃の左右側縁に伸縮機能を有させているため、背中に後身頃を差し込んでも、差し込まれた後身頃が一部分で固まってしまい、患者は不快感を感じ、更に、ナイロン、ポリエステル等の防水性合成樹脂製繊維を材料とする平織り等の布からなるため、背中と寝床間に介在する後身頃により空気層が殆ど形成されず、保温性もなく、褥瘡防止効果もないという問題点があった。
【特許文献1】実用新案登録第3115184号の登録実用新案公報
【特許文献2】特開2006−299496号公報
【特許文献3】実用新案登録第3103127号の登録実用新案公報
【特許文献4】実用新案登録第2552260号の実用新案登録公報
【特許文献5】実開平6−83723号公報
【特許文献6】実用新案登録第3048789号の登録実用新案公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創案されたものであって、着替え作業が極めて簡便で、空気を大量に抱え込む性質の高保温性の織物を使用することで患者の身体を冷えから守り、背骨を中心として左右背中を左右後身頃で寝床から浮かせることで背中と寝床との間に形成される空気層を大にし、左右背中体表面を持ち上げることで背骨と寝床との間に隙間を形成し、患者が仰臥状態の長時間静止状態(所謂寝たきり状態)であっても褥瘡ができないようにした医療用寝巻きを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本願発明のうち請求項1に記載の発明は、呼吸を確保する為に気管前側に気管切開部を設け、該気管切開部より気管カニョーレを気管内に挿入取着された患者又は/及び胃瘻を付された患者が着用するための医療用寝巻きであって、前身頃と、左右後身頃と、両袖とよりなり、患者が寝巻きを着用すると、患者の首元に形成した気管カニョーレを挿入した気管切開部が露出し、第三者が前記気管カニョーレを容易に脱着可能に、前記前身頃の襟刳りは該襟刳りの略中心が患者の首元の気管切開部形成位置より下方に位置するようにし、前記前身頃には胃瘻対応位置に胃瘻カテーテル挿通孔を開設し、該胃瘻カテーテル挿通孔には開閉蓋片を備え、前記胃瘻カテーテル挿通孔の近傍には、不使用時の胃瘻カテーテルを収納するための収納ポケットを設け、前記左右後身頃は患者の背中側に於いて連結されることなく背中側が開放され、仰臥状態の患者の両腕を前記両袖に夫々通し、前記左右後身頃は患者の脇から背中方へ差し入れて着用させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、前身頃の襟刳り略中心が患者の首元に形成された気管切開部より下方に位置しているため、患者の気管カニョーレ挿入口が常時寝巻きの襟刳りより露出し、第三者が寝巻きに接触することなく気管切開部を視認でき、容易に気管切開部の消毒やチューブの交換ができるという効果がある。
本発明は、胃瘻カテーテル挿通孔に開閉蓋片を備えているため、経管栄養補給をしていないときには胃瘻カテーテル挿通孔を蓋片で閉蓋し患者腹部を露出せず患者の羞恥心を和らげ、又、胃瘻が埃等により汚染されることを防止し、又、身体と寝巻きとの間に形成される体温により暖められた空気を胃瘻カテーテル挿通孔から外部に漏れ出にくくして保温性を保持し、特に腹部の冷えを防止するという効果を有する。
本発明は、胃瘻カテーテル挿通孔の近傍にカテーテルを収納するための収納ポケットを設けているため、固定用の粘着テープでカテーテルを患者の腹部に固定する必要性が無く、患者の皮膚が固定用テープでかぶれることが無いという効果がある。又、収納ポケットには必要な小物や部品類等を収納できるので、必要時には即座に使用ができ便利である。
本発明は、患者の手が収納ポケットに触れることができないように収納ポケットを前身頃の裏面に設けたので、経管栄養補給中に患者がカテーテルを引き抜くという事態が生じることがなく、安全に胃瘻カテーテルによる経管栄養補給ができるという効果がある。
本発明は、左右後身頃の後端縁が互いに連結されることなく背中側が開放されているため、患者に介護用寝巻きを着用させる場合は両袖に患者の両腕を通して寝巻きを患者に覆い被せ、脱がせる場合は寝巻きを上方に引っ張り外せば足りるので、寝巻き取替作業の際に、患者にとっては体位の変更等の苦痛が無く、看護者にとっては余分な力や無理な体形での作業が不要であるため腰痛等を発症することがなく、寝巻き取替え作業性が向上し、患者及び看護者の双方にとって極めて寝巻き取替作業が簡便になるという効果がある。
本発明は、左右後身頃を前身頃と共に患者の正面に展開した状態で被覆して使用することで夏期等の高温時期には例えばタオルケットのような上掛け寝具としての作用をなすという効果がある。又、左右後身頃を仰臥状態の患者の側部から背中側に差し込むことで、差し込んだ左右の後身頃が背中左右脇部と寝床との緩衝材となり、且つ、患者の背中と寝床間に滞留する空気の出入を遮断する作用をなし、保温性が向上するという効果がある。又、人体は肩が背骨より前方に位置するため、人の背中は、背骨を中心として正面方へ緩やかなカーブを描いているが、寝巻きの左右後身頃を患者の側脇から背中方へ差し入れることで、差し入れられた左右後身頃が寝たきり患者の背中を支持し、寝床から患者の背中が僅かばかり持ち上げられ、患者の背中と寝床との間に僅かに隙間を形成し、そのため患者の背中に褥瘡ができないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前身頃の襟刳りの略中心が首元の下方に位置するように形成することで気管切開部を寝巻きより露出させ、第三者による気管切開部の消毒やチューブの迅速な取替え作業を実現した。又、胃瘻対応位置に開閉蓋付の胃瘻カテーテル挿通孔を設けることで、腹部の冷えや胃瘻を菌や埃から保護することを実現した。又、胃瘻カテーテル挿通孔の近傍で寝巻き裏面に収納ポケットを設けることで、カテーテルを固定することを実現した。又、左右後身頃を背面開放式にすることで、患者への寝巻きの着替え作業を簡便にし、さらに、左右後身頃を患者の左右脇部から夫々背中側へ差し入れ、左右後身頃を背中と寝床との間に介在させることで、背中を寝床から浮かせると共に、左右後身頃に緩衝材及び空気層形成材としての作用をなさせ、患者の背中を寝床から僅かばかり浮かせて患者の背中に褥瘡ができることを防止することを実現した。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明医療用寝巻きの正面図、図2は右後身頃の裾を外方へ広げた状態を示す背面図、図3は胃瘻カテーテル挿通孔と開閉蓋片と収納ポケットとの関係を示す拡大断面図、図4は患者に医療用寝巻を着用させている状態を示す正面説明図、図5は左右後身頃を患者の脇から背中側に差し込んだ状態を示す平面図、図6はタオルシーツを敷設したベッド上で医療用寝巻きを患者に着用させた状態を示す正面図である。図1から図6において、医療用寝巻き1は両面パイルの高吸湿性、高柔軟性及び輪奈の長いタオル織物を材料とする。具体的には、無撚糸ふわふわタオル(株式会社カネヤの商品名)や、エアパイル(内野株式会社の商品名)等の無撚糸で輪奈を大にして織成されたタオル織物や、空気を取り込む中空部を有する繊維を用いて輪奈を大きくして織成されたタオル織物であることが好適である。尚、本願医療用寝巻き1の材料はタオル織物に限定せず、空気層を有する材質のものであればよい。医療用寝巻き1は、前身頃2、左後身頃3、右後身頃4及び両袖5よりなる。前身頃2は患者6の横幅よりも10〜30cm程度長い横幅を有し、患者6の肩から脹脛程度までの縦幅を有する略矩形状に形成され、上端縁は首元形状に沿うU状の窪みを有する襟刳り7に形成されている。U状襟刳り7は、前身頃2の横幅中心線上に溝底が位置するようにし、医療用寝巻き1を患者6が着用した場合に、襟刳り7の溝底は患者6の首元に形成された気管切開部8の位置よりも下方に位置するように深く下方に窪んで開かれている。患者6の気管切開部8には気管カニョーレ9が連通接続されている。実施例1では、前身頃2は縦幅が120cm程度、襟刳り7の横幅は28cm程度、襟刳り7の溝深さは21cm程度に形成されているが、患者6の体格によりこれらの数値は適宜決定される。
【0008】
前身頃2には、医療用寝巻き1を着用した場合に、胃瘻形成位置に相当する位置に胃瘻カテーテル挿通孔10が開設されている。胃瘻カテーテル挿通孔10は、正背視が四角形状の開口よりなる。図3に示すように、前身頃2の表面に於ける胃瘻カテーテル挿通孔10の開口上端縁近傍には、胃瘻カテーテル挿通孔10を被覆可能な開閉蓋片11を起伏自在に縫着して取り付けている。前身頃2の裏面には、胃瘻カテーテル挿通孔10の下方に収納ポケット12を設けている。収納ポケット12は、前身頃2に於ける裏面に下辺及び左右両辺を縫着し、上辺は縫着しないで、上辺が収納ポケット12の開口縁となるようにしている。本実施例では、開閉蓋片11と収納ポケット12は前身頃2と同じタオル織物を用いている。尚、収納ポケット12は前身頃2の表面に於ける胃瘻カテーテル挿通孔10の下方に設けてもよい。
【0009】
前身頃2の左右両肩部及び左右両側部には、左後身頃3と右後身頃4が夫々縫着されている。左後身頃3と右後身頃4は、縦幅が前身頃2と同一長さで、横幅は前身頃2の横幅の1/2未満に形成されている。図1に示すように、左後身頃3と右後身頃4は、前身頃2の左右両側縁で折り畳んでも、左後身頃3と右後身頃4は重合しないように形成されている。又、左後身頃3と右後身頃4には、紐や面ファスナー等の左後身頃3と右後身頃4を連結する手段を一切有しない。
【0010】
前身頃2、左後身頃3及び右後身頃4には、袖5、5を縫着している。袖5、5は患者6にとって楽な大きさであればよい。本実施例では、成人女性用として襟刳り7から袖口までの長さが50〜60cm程度で、アームホールが20〜30cm程度、袖口が25cm程度に形成されている。これらのサイズは、着用者の性別や体格に応じて適宜決定するものとし、任意である。
【0011】
先ず、実施例1の医療用寝巻き1の使用方法について説明する。図4に示すように、看護者は、仰臥状態の患者6の両腕に夫々袖5、5を通し、前身頃2と左後身頃3及び右後身頃4を展開状態で患者6の正面に覆い被せる。次に、図4中に矢印で示すように、左後身頃3を患者6の左脇から背中下方へ差し入れ、右後身頃4は患者6の右脇から背中下方へ差し入れ、図6に示すように患者6に医療用寝巻き1を着用させる。人の背中は背骨を中心として左右体表面は前側に彎曲しているので、極めて容易に左右後身頃3、4は患者6の背中の背骨左右側に入り込む。寝床には医療用寝巻き1の材料として使用している輪奈の長い(毛の長い)タオル織物よりなるタオルシーツ13を敷設する。
気管カニョーレ9が気道に挿入されている患者6に対しては、襟刳り7から上方に位置して外部から視認し得る気管切開部8に気管カニョーレ9を連通接続して呼吸補助や除痰措置を行う。
胃瘻が付されている患者6に対しては、開閉蓋片11を起こして胃瘻カテーテル挿通孔10を開口し、カテーテルを胃瘻に連通接続し、カテーテルの一部は収納ポケット12内に入れて、カテーテルを固定する。経管栄養供給が終了すると、カテーテルを胃瘻から離脱させ、開閉蓋片11を伏して胃瘻カテーテル挿通孔10を閉口し、胃瘻の保護と患者6の身体を冷えから守る。
医療用寝巻き1を患者6から脱がせる場合は、看護者は左後身頃3を患者6の背中下方から左脇方へ引き出すと共に右後身頃4は患者6の背中下方から右脇方へ引き出した後、前身頃2を上方に引っ張り上げて患者6から医療用寝巻き1を脱がせるものである。
左右後身頃3、4を患者6の背中に差し込むことで、輪奈の大きいタオル織物よりなる左右後身頃3、4により患者6の背中と寝床との間に空気層が形成され、背骨付近に滞留する患者の体温により温められた空気が左右後身頃3、4で堰止め状態となり、保温性が向上するという効果がある。介護用寝巻き1は輪奈の著しく大きいタオル織物よりなるので、空気層の厚みも極めて大となる。
左後身頃3と右後身頃4の横幅合計が前身頃2の横幅よりも短いため、左後身頃3と右後身頃4は背中で重合しない。そのため、背中のうち背骨を中心とした左右体表面が、背中側に差し込まれた左後身頃3と右後身頃4の厚みにより寝床から浮き上り、結果的に背骨部分も寝床から僅かばかり隙間を有して上方に浮き上り、従来のように患者の体位を頻繁に看護者が変えなくても患者の背中に褥瘡ができないという効果がある。
シーツも輪奈の大きいタオルシーツ13を使用することで、左後身頃3と右後身頃4に使用されているタオル生地の輪奈とタオルシーツ13の輪奈の両方の厚みで患者6の背中と寝床との間に形成される空気層が一層厚くなり、且つタオル織物の輪奈が皮膚に点接触するため患者6は自重による圧迫を受けず褥瘡ができないという効果がある。
左右後身頃3、4の横幅合計が前身頃2の横幅よりも短く形成されているため、左右後身頃3、4を背中の下方へ差し入れても、左後身頃3と右後身頃4の何れもが仰臥状態の患者6の背骨の下方に配設されることなく、容易に着用させることができる。又、たとえ左右後身頃3、4を患者6の背中方へ深く差し入れても、左右後身頃3、4は患者6の背骨の下方に到達しないことより、左右後身頃3、4に患者6の全体重がかかることがなく、また、背骨に引っ掛かることもなく、前身頃2を上方に軽く引き上げるだけの僅かな力で容易に医療用寝巻き1を患者6から脱がせることができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本願発明は挿通孔10の位置を変えることにより、腹膜透析患者や泌尿器系手術後のカテーテルを接続された患者用寝巻きの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明医療用寝巻きの正面図である。(実施例1)
【図2】右後身頃の裾を外方へ広げた状態を示す背面図である。(実施例1)
【図3】胃瘻カテーテル挿通孔と開閉蓋片と収納ポケットとの関係を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図4】患者に医療用寝巻きを着用させている状態を示す正面説明図である。(実施例1)
【図5】左右後身頃を患者の脇から背中側に差し込んだ状態を示す平面図である。(実施例1)
【図6】タオルシーツを敷設したベッド上で医療用寝巻きを患者に着用させた状態を示す正面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0014】
1 医療用寝巻き
2 前身頃
3 左後身頃
4 右後身頃
5 袖
6 患者
7 襟刳り
8 気管切開部
9 気管カニョーレ
10 胃瘻カテーテル挿通孔
11 開閉蓋片
12 収納ポケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸を確保する為に気管前側に気管切開部を設け、該気管切開部より気管カニョーレを気管内に挿入取着された患者又は/及び胃瘻を付された患者が着用するための医療用寝巻きであって、
前身頃と、左右後身頃と、両袖とよりなり、
患者が寝巻きを着用すると、患者の首元に形成した気管カニョーレを挿入した気管切開部が露出し、第三者が前記気管カニョーレを容易に脱着可能に、前記前身頃の襟刳りは該襟刳りの略中心が患者の首元の気管切開部形成位置より下方に位置するようにし、
前記前身頃には胃瘻対応位置に胃瘻カテーテル挿通孔を開設し、該胃瘻カテーテル挿通孔には開閉蓋片を備え、
前記胃瘻カテーテル挿通孔の近傍には、不使用時の胃瘻カテーテルを収納するための収納ポケットを設け、
前記左右後身頃は患者の背中側に於いて連結されることなく背中側が開放され、
仰臥状態の患者の両腕を前記両袖に夫々通し、前記左右後身頃は患者の脇から背中方へ差し入れて着用させるようにしたことを特徴とする医療用寝巻き。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265570(P2010−265570A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136683(P2009−136683)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(509158462)