説明

医療用接着剤塗布具及び塗布装置

【課題】医療用接着剤を患部に塗布した際に、発泡が残存せず、透明な皮膜を形成することができる医療用接着剤塗布具及び塗布装置を提供することを目的とする。
【解決手段】医療用接着剤(A)を患部に塗布する医療用接着剤塗布具であって、先端に吐出口(1)を有するシリンジ外筒(2)及びシリンジ外筒(2)後方からシリンジ外筒(2)内に挿入された移動操作する押し子(3)を備え、押し子(3)の操作方向に対して垂直方向に吐出口(1)を切断した断面において、吐出口(1)の形状が長辺3〜40mm及び短辺10〜100μmの長方形である医療用接着剤塗布具;医療用接着剤塗布用塗布具及び押し出し補助具とからなる塗布装置であって、押し出し補助具は基台(10)、ピストン(13)及び押し出し駆動部(12)とを備えたものである塗布装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用接着剤塗布具及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術では、従来、創傷部を縫い合わせるために縫合糸が用いられている。しかしながら、近年、手術時間が短くなる、抜糸が不要になる、血管等の細部の接着が可能である等の理由から、医療用接着剤が使用されている。
医療用接着剤としては、ウレタンプレポリマー接着剤(特許文献1〜3等)、シアノアクリレート接着剤(特許文献4)、ポリエーテルエステル接着剤(特許文献5)等が知られている。これらのうちウレタンプレポリマー接着剤においては、患部に塗布した際に発泡し、ウレタン皮膜に泡が残存する。この泡により、被膜が不透明となり追加処置の際に視界を妨げる、皮膜のシーリング性能が低下する、及び皮膜中の残存気泡に細菌が感染層をつくる等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−227762号公報
【特許文献2】特開2003−552828号公報
【特許文献3】特開2005−312935号公報
【特許文献4】特開平10−152650号公報
【特許文献5】特開2005−224445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医療用接着剤を患部に塗布した際に、皮膜に泡が残存せず、透明な皮膜を形成することができる医療用接着剤塗布具及び塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の医療用接着剤塗布具は、ウレタンプレポリマーを含む液状の医療用接着剤(A)を患部に塗布する医療用接着剤塗布具であって、先端に吐出口(1)を有するシリンジ外筒(2)及びシリンジ外筒(2)後方からシリンジ外筒(2)内に挿入された移動操作する押し子(3)を備え、押し子(3)の操作方向に対して垂直方向に吐出口(1)を切断した断面において、吐出口(1)の形状が長辺3〜40mm及び短辺10〜100μmの長方形である医療用接着剤塗布具である。
また、本発明の塗布装置は、医療用接着剤塗布用塗布具及び押し出し補助具とからなる塗布装置であって、押し出し補助具は基台(10)、ピストン(13)及び押し出し駆動部(12)とを備え、塗布具が基台(10)に固定され、ピストン(13)により塗布具の押し子(3)が吐出口(1)方向に向かって移動操作され、押し出し駆動部(12)によりピストン(13)が移動操作される塗布装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の医療用接着剤塗布具は、医療用接着剤を患部に塗布した際に、泡が残存せず、透明な皮膜を形成することができる。
また、本発明の塗布装置は、医療用接着剤を患部に塗布した際に、泡が残存せず、透明な皮膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の医療用接着剤塗布具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の医療用接着剤塗布具の一実施形態を示す上面図である。
【図3】本発明の医療用接着剤塗布具の一実施形態を示す左側面図である。
【図4】図1及び2の実施形態において、先端部(4)の斜視図である。
【図5】吐出口(1)の片面がもう一方の面より飛び出している構造を示す図2における投影方向に垂直な、シリンジ外筒(2)の中心を通る平面で切断した断面図である。
【図6】フタ(8)について、先端部(4)の先端から後端に向けて膨らむ角錐台構造を有することを示す正面図(図6(a))、さらに吐出口(1)の四角枠に対応する凹部を設けたことを示す正面図(図6(b))、さらにひっかかり部を設けたことを示す正面図(図6(c))である。
【図7】ガスケット(7)の一実施形態であって、ガスケット(7)のシリンジ外筒(2)に挿入する側の先端外形が、先端部(4)の内部空洞の形と同じ形状であることを示す正面図(a)及び上面図(b)である。
【図8】シリンジ外筒(2)の一実施形態であって、円筒(5)及び先端部(4)が一体となっていているシリンジ外筒を示す正面図である。
【図9】シリンジ外筒(2)の一実施形態であって、先端部(4)と円筒(5)が別個に整形され、螺合により結合可能な構造を示す正面図である。
【図10】シリンジ外筒(2)の一実施形態であって、先端部(4)と円筒(5)が別個に整形され、凹部凸部からなるはめ込みによるロック機構を備えた嵌合により結合可能な構造を示す正面図である。
【図11】図10のシリンジ外筒(2)において、抜け落ちを防止するための取っ手(9)を有している構造を示す正面図である。
【図12】本発明の塗布装置の一実施形態を示す斜面図(a)及び塗布具がセットされていない押し出し補助具を示す斜面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面をもとに本発明について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態である医療用接着剤塗布具の正面図である。
本発明において、医療用接着剤塗布具は、ウレタンプレポリマーを含む液状の医療用接着剤(A)を患部に塗布する医療用接着剤塗布具であって、先端に吐出口(1)を有するシリンジ外筒(2)及びシリンジ外筒(2)後方からシリンジ外筒(2)内に挿入された移動操作する押し子(3)を備え、押し子(3)の操作方向に対して垂直方向に吐出口(1)を切断した断面において、吐出口(1)の形状が長辺3〜40mm及び短辺10〜100μmの長方形であるものである。
【0009】
シリンジ外筒(2)は、円筒(5)及び円筒(5)の片端に先端部(4)を有するものである。もう一方の後端には、後端外周に形成されたフランジ(6)を有してもいい。
シリンジ外筒(2)の円筒(5)の内径(直径)は、縫合する部分の大きさ及び使用する(A)の量によって適宜選択されるが、持ちやすさ及び(A)を収容できる容量の観点から、3〜50mmが好ましく、さらに好ましくは4〜20mmである。
円筒(5)の外径(直径)は、縫合する部分の大きさ及び使用する(A)の量によって適宜選択されるが、持ちやすさ及び(A)を収容できる容量の観点から、4〜60mmが好ましく、さらに好ましくは5〜30mmである。この太さであると、手術時に片手で持つことができ、患部への塗布が容易にできる。また、後述する押し出し補助具へのセットが容易である。
【0010】
シリンジ外筒(2)の長さは、縫合する部分の大きさ及び使用する(A)の量によって適宜選択されるが、持ちやすさ及び(A)を収容できる容量の観点から、30〜200mmが好ましく、さらに好ましくは40〜150mm、特に好ましくは50〜100mmである。
【0011】
シリンジ外筒(2)の素材としては、従来のシリンジ外筒の素材が使用でき、特に限定されないが、例えば、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、フッ素樹脂(PFA等)、シリコーン樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)及び環状ポリオレフィン等が挙げられる。
シリンジ外筒(2)の素材としては、成形の容易性及び耐熱性の観点から、ポリプロピレン及び環状ポリオレフィンが好ましい。
【0012】
押し子(3)は、シリンジ外筒(2)内に挿入され、移動操作することができるものである。押し子(3)をシリンジ外筒(2)内に挿入した際、押し子のシリンジ外筒(2)に挿入する側の先端及びシリンジ外筒(2)の円筒によって形成される空間には、医療用接着剤(A)に密閉し、(A)が外部へ漏れること及び外部からの異物混入を防ぐことができる。
押し子(3)のシリンジ外筒(2)に挿入する側の先端の形状は、(A)を密閉できれば特に限定はなく使用できる。シリンジ外筒(2)中の(A)をシリンジ外筒(2)に残さずに塗布できる観点から、押し子の先端外形が先端部(4)の内部空洞と同じ形状であることが好ましい。
【0013】
押し子(3)の外径は、シリンジ外筒(2)に挿入でき、押し子とシリンジ外筒の間が密閉でき、(A)を押し出す事ができればいい。
押し子の素材としては、従来の押し子の素材が使用でき、特に限定されないが、例えば、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、フッ素樹脂(PFA等)、シリコーン樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)及び環状ポリオレフィン等が挙げられる。また、シリンジ外筒(2)の素材がガラスである場合、密閉性の観点から、押し子(3)の素材もガラスであり、すりガラスとなっていることが好ましい。
【0014】
また、押し子(3)のシリンジ外筒(2)に挿入する側の先端には、ガスケット(7)を有してもいい(図1)。(7)を有することより、(A)が低粘度のものでも、外部へ漏れることを防ぐことができる。また、(7)を有することにより、さらに外部からの異物混入防止効果が高くなる。
ガスケット(7)のシリンジ外筒(2)に挿入する側の先端形状は、(A)を密閉できれば特に限定はなく使用できる。シリンジ外筒(2)中の(A)をシリンジ外筒(2)に残さずに塗布できる観点から、ガスケット(7)の先端外形が先端部(4)の内部空洞と同じ形状(図7)であることが好ましい。
【0015】
ガスケット(7)の大きさは、(A)をシリンジ外筒に密閉し、(A)が外部へ漏れること及び外部からの異物混入を防ぐことができれば特に限定はないが、シリンジ外筒(2)の内径より0.0〜0.5mm小さい直径であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.4mm小さい直径である。
ガスケット(7)の素材としては、従来のガスケットの素材が使用でき、特に限定されないが、例えば、ゴム(天然ゴム、フッ素ゴム(PTFE等)、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム及びシリコーンゴム等)、熱可塑性樹脂(ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系及びスチレン系等)及びこれらの混合物等が挙げられる。
ガスケット(7)の素材としては、安全性、γ線に対する耐性及び強度の観点から、シリコーンゴムが好ましい。
【0016】
シリンジ外筒(2)は、先端に吐出口(1)を有するものである。先端とは、シリンジ外筒(2)の先端部(4)の先端である。また、塗布しやすさの観点から、先端部(4)の先端であり、押し子(3)を移動操作する方向に対して垂直な塗布面に吐出口(1)を有していることが好ましい。
【0017】
吐出口(1)は、押し子(3)の操作方向に対して垂直方向に吐出口(1)を切断した断面において、吐出口(1)の形状が長辺3〜40mm及び短辺10〜100μmの長方形であるものである。
断面における形状が上記であることにより、医療用接着剤を患部に塗布した際に、泡が残存せず、透明な皮膜を形成することができる。また、泡が残存すると、シーリング性能が低下する及び気泡に細菌が感染層をつくる等の問題もあるが、皮膜に気泡が残存することがなく、十分なシーリング性を発揮することができ、細菌が感染層をつくることを防止することができる。
上記長辺は、一般的な血管の縫合部を十分塗布する観点から、4〜30mmが好ましく、さらに好ましくは5〜20mmである。
上記短辺は、シーリングするために十分な厚さの皮膜を形成する観点から、10〜50μmが好ましく、さらに好ましくは15〜40μmである。
【0018】
本発明において、先端部(4)は、先端に吐出口(1)を有するものである。
先端部(4)の先端は、塗布しやすさの観点から、押し子(3)を移動操作する方向に対して垂直な塗布面を有しており、塗布面に吐出口(1)を有していることが好ましい。
先端部(4)の内部空洞の形状は、(A)を押し出す際に押し子にかかる圧力を軽減するために、吐出口(1)の短辺の方向に先端部後端から先細りの傾斜を有するテーパー形状(図4)であることが好ましい。テーパー角は、押し出しの容易性の観点から、3〜45°が好ましく、さらに好ましくは5〜30°である。
【0019】
先端部(4)の内部空洞の形状がテーパー形状である場合、外形も吐出口(1)の短辺の方向に先端部後端から先細り傾斜を有するテーパー形状であることが好ましい。テーパー角は、塗布しようとする患部がよく確認できる観点から、3〜45°が好ましく、さらに好ましくは5〜30°である。
【0020】
また、先端部(4)において、吐出口(1)の長辺側の先端部(4)の片面(上面)がもう一方の面(下面)よりも吐出口方向に1〜10mm飛び出している構造であってもいい(図5)。この構造であることにより、吐出口(1)から吐出された医療用接着剤を均一な厚さで塗布することができる。
【0021】
吐出口(1)には、異物の混入、湿気の混入及び液の漏洩を防ぐために、塗布するまでの間、フタ(8)をしてもいい。フタ(8)としては、吐出口(1)には差し込むことができ、吐出口(1)を塞ぐことができれば特に限定されない。例えば、差し込んだ際に簡単に抜けないように、先端部(4)の先端から後端に向けて膨らむ角錐台構造を有するもの(図6(a))、さらに吐出口(1)の四角枠に対応する凹部を設けたもの(図6(b))、さらにひっかかりをつけたもの(図6(c))等が挙げられる。湿気硬化等により先端が固化し、液が吐出しにくくなるのを防ぐ観点から、フタ(8)を差し込む深さは、吐出口(1)先端から1〜20mmの深さであることが好ましい。
フタ(8)の素材としては、弾性のある素材であれば特に限定されないが、例えば、ゴム(天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム及びシリコーンゴム等)、熱可塑性樹脂(ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系及びスチレン系等)及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0022】
先端部(4)を有するシリンジ外筒(2)としては、特に限定ないが、例えば、下記(i)〜(iii)等が挙げられる。
(i)円筒(5)及び先端部(4)が一体となっていているシリンジ外筒(図8)。
(ii)先端部(4)と円筒(5)が別個に整形され、螺合により結合可能な構造(図9)。
(iii)先端部(4)と円筒(5)が別個に整形され、必要によりロックする機構を備えた嵌合により結合可能な構造(図10)。ロック機構としては、凹部凸部からなるはめ込みによる機構が例示できる。。
(iii)の構造を有する場合、過度の圧力がかかると外れてしまう恐れがあるため、抜け落ちを防止するために、取っ手(9)を有していてもいい(図11)。
【0023】
医療用接着剤(A)としては、公知のウレタンプレポリマーを含む液状の医療用接着剤が使用でき、例えば、特開昭62−148666、特開昭62−290465、特開平01−227762、特開2003−552828又は特開2005−312935等に記載されているウレタンプレポリマーを含む医療用接着剤等が挙げられる。
ウレタンプレポリマーは硬化時に発泡してしまう問題があるが、本発明の医療用接着剤塗布具を用いることで、ウレタン皮膜に発泡が残存して被膜が不透明となることなく、透明な皮膜を形成できる。また、発泡によるシーリング性能の低下もない。さらに、発泡の残存がないので、気泡に細菌が感染層をつくる心配がない。
【0024】
医療用接着剤組成物(A)の25℃における粘度は、透明な膜を形成する観点から、3,000〜200,000mPa・sが好ましく、さらに好ましくは、5000〜100,000mPa・sである。また、この粘度範囲であると、塗布した際に液だれが起こりにくく、厚さの均一な膜を形成することができる。
【0025】
粘度は、JIS K7117−2:1999「プラスチック−液状、乳濁状又は分散状の樹脂−回転円時計による定せん断速度での粘度の測定方法」に準拠し回転粘度計{たとえば、(株)トキメック製のEL型粘度計及びEH型粘度計}を用いて測定される。
【0026】
医療用接着剤(A)の粘度が高い場合、医療用接着剤塗布具から(A)を押出すために大きな力が必要となり、透明な皮膜を形成することができない場合がある。その場合、押し出し補助具を用いて、本発明の塗布装置としてもよい。本発明の塗布装置を用いることにより、医療用接着剤の押し出しを容易にし、透明な皮膜を容易に形成することができる。さらに、均一な膜厚の皮膜を形成するためにも有効である。
【0027】
以下、本発明の塗布装置について詳細に説明する。また以下、医療用接着剤塗布具を、単に塗布具と記載する。
本発明の塗布装置は、上記塗布具及び押し出し補助具とからなる塗布装置であって、押し出し補助具は基台(10)、ピストン(13)及び押し出し駆動部(12)とを備え、塗布具が基台(10)に固定され、ピストン(13)により塗布具の押し子(3)が吐出口(1)方向に向かって移動操作され、押し出し駆動部(12)によりピストン(13)が移動操作されるものである。
【0028】
基台(10)は、塗布具を乗せ、固定するためのものである。固定する方法としては、留め具(11)を用いる方法、接着剤で固定する方法等が挙げられる。
基台(10)は、送りねじ機構を設けるための支持部(11a)を有している。基台(10)の大きさは、塗布具を乗せることができれば特に限定はない。
【0029】
留め具(11)で固定する場合、留め具(11)の位置は、塗布具が固定できれば特に限定はなく、シリンジ外筒(2)の円筒(5)を固定するものでも、先端部(4)を固定するものでもよい。また、留め具(11)を複数有してもいい。
留め具(11)は、塗布具の安定性の観点から、塗布具の先端部(4)を固定するもの1つ及び円筒(5)を固定するもの1つの合計2つ(図12)を有していることが好ましい。
【0030】
押し出し駆動部(12)には、螺進退動作する送りねじ機構(16)と、この送りねじ機構を螺進退操作する回転操作ハンドル(14)又は電動モーター(15)を有し、ピストン(13)を移動操作させることができる。
【0031】
送りねじ機構(16)は、ピストン(13)に回転可能に接続されたねじ棒(16a)と、基台(10)の支持部(10a)に設置されたナット部(16b)とからなる。
【0032】
ねじ棒(16a)は、その先端がピストン(13)の中心部に回転可能に接続されるとともに、その基端側が外部へ突出して延びて配されている。このねじ棒(16a)の基端部には、回転操作ハンドル(14)又は電動モーター(15)が回転操作可能に取り付けられており、(14)又は(15)を回転させ、ねじ棒(16a)を螺進退操作することにより、ピストンを移動操作させることができる。
ナット部(16b)は、支持部(11a)にねじ棒(16a)を挿通するための穴であり、ねじ棒(16a)のねじに対応する溝を有している。
【0033】
ピストン(13)は、ねじ棒(16a)が軸線方向へ螺進退動作することにより前後方向へ動作する。前方向へ動作することにより塗布具の押し子に対して力を加え、医療用接着剤を押し出すことができる。また後方向へ動作することにより、ピストン(13)が塗布具の邪魔となることなく、基台(10)に設置することができる。
【0034】
本発明の医療用接着剤塗布具によれば、医療用接着剤を患部に塗布した際に、発泡が残存せず、透明な皮膜を形成することができる。また、本発明の塗布装置によれば、発泡が残存せず、透明な皮膜を容易に形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の医療用接着剤塗布具及び塗布装置は、医療用接着剤を患部に塗布した際に、発泡が残存せず、透明な皮膜を形成することができるので、人及び動物(ペットや家畜)の外科手術において内臓、皮膚、粘膜及び血管等の患部に医療用接着剤を塗布する器具として使用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 吐出口
2 シリンジ外筒
3 押し子
4 先端部
5 円筒
6 フランジ
7 ガスケット
8 フタ
9 取っ手
10 基台
10a 支持部
11 留め具
12 押し出し駆動部
13 ピストン
14 回転操作ハンドル
16 送りねじ機構
16a ねじ棒
16b ナット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーを含む液状の医療用接着剤(A)を患部に塗布する医療用接着剤塗布具であって、
先端に吐出口(1)を有するシリンジ外筒(2)及びシリンジ外筒(2)後方からシリンジ外筒(2)内に挿入された移動操作する押し子(3)を備え、
押し子(3)の操作方向に対して垂直方向に吐出口(1)を切断した断面において、吐出口(1)の形状が長辺3〜40mm及び短辺10〜100μmの長方形である医療用接着剤塗布具。
【請求項2】
25℃における粘度が3,000〜200,000mPa・sである医療用接着剤(A)を塗布する目的で使用される請求項1に記載の医療用接着剤塗布具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療用接着剤塗布用塗布具及び押し出し補助具とからなる塗布装置であって、
押し出し補助具は基台(10)、ピストン(13)及び押し出し駆動部(12)とを備え、
塗布具が基台(10)に固定され、ピストン(13)により塗布具の押し子(3)が吐出口(1)方向に向かって移動操作され、押し出し駆動部(12)によりピストン(13)が移動操作される塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−217564(P2012−217564A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85075(P2011−85075)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】