説明

医療用針の処理装置

【課題】構造的な効率および処理効率がよく、医療現場で安全に使用できる医療用針の処理装置を提供する。
【解決手段】樹脂製の針基1に金属製の針管2が取り付けられた医療用針30の処理装置であって、上記針管1の針基2にインサートされた部分に焦点を当てて、光透過性の樹脂からなる針基2を通して針管1に加熱光を照射することにより針管1を加熱する光加熱手段3と、上記加熱された針管1を針基2から抜き取る抜き取り手段4とを備えたことにより、針管1加熱の熱源として赤外領域や可視領域の加熱光を用いることから、従来のように高周波が他の医療機器に障害を与えることがない。また、放電加熱や火炎加熱に比べてピンポイント加熱が可能であるため熱傷事故の原因になりにくく、加熱光によって針管1を加熱しながら針管1を抜き取ることも可能となって、従来に比べて構造的な無駄を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析針や注射針等の使用済み医療用針を安全に廃棄するために処理する医療用針の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂製の針基に金属製の針管がインサート成形された透析針や注射針等の医療用針は、使用済みのものを安全に廃棄するため、針管を加熱することにより樹脂製の針基から針管を抜き取ることが行なわれている。従来の処理装置では、針管を加熱する加熱手段として、主として高周波加熱が使用され、その他、放電加熱、火炎加熱、超音波加熱等が例示されている(例えば、下記の特許文献1および2)。
【特許文献1】特開平11−104192号公報
【特許文献2】特開2001−25493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、高周波加熱では、当然のことながら高周波を発生するため、他の医療機器への障害を発する可能性があり、医療現場で使用するには問題がある。また、放電加熱や火炎加熱では、熱傷事故の原因になりやすく、医療現場で使用するには安全面に問題がある。さらに、超音波加熱では、金属製の針管を振動子に接触させなければ加熱できないため、針管を加熱する動作と、針管を掴んで針基から抜き取る動作とを異なるアクションで行なわねばならず、構造的に無駄の多い装置とならざるをえないうえ、処理工程も2段階になるため、処理効率も悪いという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、構造的な効率および処理効率がよく、医療現場で安全に使用できる医療用針の処理装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の医療用針の処理装置は、樹脂製の針基に金属製の針管が取り付けられた医療用針の処理装置であって、上記針管の針基にインサートされた部分に焦点を当てて、光透過性の樹脂からなる針基を通して針管に加熱光を照射することにより針管を加熱する光加熱手段と、上記加熱された針管を針基から抜き取る抜き取り手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
すなわち、本発明の医療用針の処理装置は、上記針管の針基に接合された部分に焦点を当てて、光透過性の樹脂からなる針基を通して針管に加熱光を照射することにより針管を加熱し、上記加熱された針管を針基から抜き取る。このように、針管加熱の熱源として赤外領域や可視領域の加熱光を用いることから、従来のように高周波が他の医療機器に障害を与えることがない。また、放電加熱や火炎加熱に比べてピンポイント加熱が可能であるため熱傷事故の原因になりにくい。さらに、加熱光によって針管を加熱しながら針管を抜き取ることも可能となって、従来に比べて構造的な無駄を少なくでき、処理効率も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0008】
図1は、本発明の医療用針の処理装置の一実施の形態を示す。この処理装置が処理対象とする医療用針30は、樹脂製の針基2に金属製の針管1がインサート成形等により取り付けられたものであり、例えば、注射針、透析針、針付医療用チューブ等があげられる。
【0009】
上記処理装置は、上記針管1の針基2に接合された部分に焦点を当てて、光透過性の樹脂からなる針基2を通して針管1に加熱光を照射することにより針管1を加熱する光加熱手段3と、上記加熱された針管1を針基2から抜き取る抜き取り手段4とを備えて構成されている。
【0010】
より詳しく説明すると、上記処理装置は、医療用針30の針管1の先端が挿入される挿入穴11が形成された位置決め部材10と、上記挿入穴11に挿入された針管1をガイドするガイド穴12が形成されたガイド部材9とを備えている。
【0011】
上記抜き取り手段4は、金属製の針管1の焼損手段を兼ねており、図示しない制御手段により回転駆動制御されることにより、ガイド部材9でガイドされた針管1を挟んで送る一対のロール電極5と、上記ロール電極5で送られる針管1の先端が突き当てられる突き当て電極6とを含んで構成されている。上記ロール電極5と突き当て電極6との間には、所定の電圧が印加されている。
【0012】
これにより、ロール電極5に挟まれて送られる針管1の先端が突き当て電極6に突き当てられると、ロール電極5と突き当て電極6との間で針管1に電流が流れ、抵抗加熱により針管1が加熱されて先端側から順次焼損するようになっている。針管1の先端部分が焼損すると、さらにロール電極5で針管1が送られて先端側が突き当て電極6に接触し、順次、針管1の焼損と送りを行なうようになっている。
【0013】
一方、上記針管1の焼損と送りが行なわれていくと、針管1は位置決め部材10の挿入穴11に順次挿入され、やがて針基2が位置決め部材10に突き当たって針管1の送りが停止する。この針管1の送りの停止は、例えば、所定位置にきたことを図示しないセンサで検知してロール電極5の回転駆動を停止することにより行なうことができる。したがって、上記位置決め部材10やセンサ等により、医療用針30の位置決め手段を構成している。
【0014】
そして、上記光加熱手段3は、上記所定位置に位置決めされた医療用針30の針管1と針基2がインサートにより接合された部分に焦点を当て、光透過性の樹脂からなる針基2を通して針管1に加熱光を照射して加熱する。
【0015】
上記光加熱手段3としては、具体的には、例えばハロゲンランプ、赤外線ランプ、キセノンランプ、レーザ等をあげることができるが、高密度照射が可能で、起動時間が短くてスポット的な短時間加熱が容易で、放射への変換効率も高いハロゲンランプを好ましく用いることができる。上記ハロゲンランプとしては、ハロゲン球の光を凹面鏡で集光して針管1と針基2の接合部に焦点をあて、針基2を通過した光を針管1に照射して加熱するものを用いることができる。具体的には、例えば、インフリッヂ工業株式会社のハロゲンスポットヒーターLCB−50を用いることができるが、これに限定するものでないことは言うまでもない。
【0016】
上記位置決め手段により医療用針30が所定位置に位置決めされたのを検知すると、上記光加熱手段3による光照射が開始される。光照射の照射時間はタイマ等で計測され、所定時間の照射が終わると、再びロール電極5の回転駆動が開始されて針管1が挟んで送られ、加熱された針管1が針基2から抜き取られる。
【0017】
このように、ロール電極5と突き当て電極6との針管1の焼損により、医療用針30の根元の針基2が所定位置に位置決めされるまで焼損したら、光加熱手段3による加熱が行なわれ、抜き取り手段4による針管1の抜き取りが行なわれる。
【0018】
針管1の抜き取りに伴って針管1がロール電極5により送られると、針管1はさらに突き当て電極6に付き当てられて焼損が続けられる。このように、抜き取り手段4による針管1の抜き取りは、焼損に使用するロール電極5の回転駆動によって行なわれる。このように、焼損手段として使用されるロール電極5が抜き取り手段4を兼ねていることから、部品点数が少なく設備効率がよくなる。焼損した針管1は、ホッパ7で集められて回収箱8に回収される。
【0019】
以上のように、本実施形態の医療用針30の処理装置は、上記針管1の針基2にインサートされた部分に焦点を当てて、光透過性の樹脂からなる針基2を通して針管1に加熱光を照射することにより針管1を加熱し、上記加熱された針管1を針基2から抜き取る。このように、針管1加熱の熱源として赤外領域や可視領域の加熱光を用いることから、従来のように高周波が他の医療機器に障害を与えることがない。また、放電加熱や火炎加熱に比べてピンポイント加熱が可能であるため熱傷事故の原因になりにくい。さらに、加熱光によって針管1を加熱しながら針管1を抜き取ることも可能となって、従来に比べて構造的な無駄を少なくでき、処理効率も向上させることができる。
【0020】
図2は、本発明の第2実施形態の医療用針の処理装置を示す図である。
【0021】
この例では、ガイド部材9に代えて一対の抜き取りロール13が設けられ、上記抜き取りロール13が抜き取り手段4を構成している。そして、針管1を焼損するための焼損手段16として、電圧が印加された第1ロール電極14と第2ロール電極15が設けられている。
【0022】
これにより、医療用針30の針管1が挿入穴11から挿入されたのを図示しない検知手段としてのセンサで検知すると、図示しない制御手段は、抜き取りロール13を回転駆動するよう制御して針管1を前方に送る。こうすることにより、針管1が先端から第1ロール電極14と第2ロール電極15に挟まれて電流が流されることにより加熱され、先端側から順次焼損され、焼損くずが回収箱8に収容される。このとき、第1ロール電極14と第2ロール電極15に挟まれて送られながら電流を流すことにより焼損を行なうことから、焼損の過程で針管1の表面に酸化皮膜が生じても、焼損の継続に悪影響が生じにくく、スムーズに焼損を行なうことができる。
【0023】
つぎに、上記針管1の焼損と送りが行なわれていくと、針基2が位置決め部材10に突き当たって針管1の送りが停止する。この針管1の送りの停止は、例えば、所定位置にきたことを図示しないセンサで検知して抜き取りロール13の回転駆動を停止することにより行なうことができる。このとき、第1ロール電極14と第2ロール電極15の駆動や通電も同時に停止することが行なわれる。
【0024】
上記位置決め手段により医療用針30が所定位置に位置決めされたのを検知すると、上記光加熱手段3による光照射が開始され、上記所定位置に位置決めされた医療用針30の針管1と針基2がインサートにより接合された部分に焦点を当て、光透過性の樹脂からなる針基2を通して針管1に加熱光を照射して加熱する。光照射の照射時間はタイマ等で計測され、所定時間の照射が終わると、再び抜き取りロール13の回転駆動および第1ロール電極14と第2ロール電極15の駆動や通電が開始され、加熱された針管1が針基2から抜き取られるとともに送られた針管1の焼損が行なわれる。
【0025】
それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、上記以外は、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0026】
図3は、本発明の第3実施形態の医療用針の処理装置を示す図である。
【0027】
この例では、ガイド部材9に代えて一対の抜き取りロール13が設けられ、上記抜き取りロール13が抜き取り手段4を構成し、焼損手段は設けられていない。
【0028】
これにより、医療用針30の針管1が挿入穴11から挿入されたのを図示しない検知手段としてのセンサで検知すると、図示しない制御手段は、抜き取りロール13を回転駆動するよう制御して針管1を前方に送る。そして、上記針管1が送られて針基2が位置決め部材10に突き当たって針管1の送りが停止する。この針管1の送りの停止は、例えば、所定位置にきたことを図示しないセンサで検知して抜き取りロール13の回転駆動を停止することにより行なうことができる。
【0029】
上記位置決め手段により医療用針30が所定位置に位置決めされたのを検知すると、上記光加熱手段3による光照射が開始され、上記所定位置に位置決めされた医療用針30の針管1と針基2がインサートにより接合された部分に焦点を当て、光透過性の樹脂からなる針基2を通して針管1に加熱光を照射して加熱する。光照射の照射時間はタイマ等で計測され、所定時間の照射が終わると、再び抜き取りロール13の回転駆動が開始され、加熱された針管1が針基2から抜き取られる。そして、抜き取られた針管1は焼損されずにそのまま回収箱8に収容される。
【0030】
それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、上記以外は、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の医療用針の処理装置を示す構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態の医療用針の処理装置を示す構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態の医療用針の処理装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0032】
1:針管
2:針基
3:光加熱手段
4:抜き取り手段
5:ロール電極
6:突き当て電極
7:ホッパ
8:回収箱
9:ガイド部材
10:位置決め部材
11:挿入穴
12:ガイド穴
13:抜き取りロール
14:第1ロール電極
15:第2ロール電極
16:焼損手段
30:医療用針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の針基に金属製の針管が取り付けられた医療用針の処理装置であって、上記針管の針基に接合された部分に焦点を当てて、光透過性の樹脂からなる針基を通して針管に加熱光を照射することにより針管を加熱する光加熱手段と、上記加熱された針管を針基から抜き取る抜き取り手段とを備えたことを特徴とする医療用針の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−69032(P2010−69032A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240258(P2008−240258)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000252506)和田金属工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】