説明

医薬パッケージ

本発明は、臭気を発しうる医薬製剤、包装部材および化学吸着型乾燥剤を含む医薬パッケージに関する。本発明によれば、不快な臭気が低減された医薬パッケージが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不快な臭気が低減された医薬パッケージに関する。
【発明の背景】
【0002】
医薬化合物のなかで不快な臭気を発しうる化合物がある。例えば、ACE阻害剤であるカプトプリル、およびビタミンB1欠乏症治療薬であるフルスルチアミンは、硫黄化合物由来の臭気を発する。また、抗リウマチ薬であるリマチル、および肝機能増強剤であるL−システインは、それらの分子内のスルフヒドリル基由来の臭気を発する。また、アンジオテンシンII受容体拮抗剤であるオルメサルタン メドキソミルは、低分子カルボニル化合物であるビアセチル由来の臭気を発する。副作用の発生と異なり、臭気は医薬として致命的な特性ではないが、服用時の不快感は医薬としての利便性を損なう。特に、抗糖尿病薬や抗高血圧薬のような長期間服用する医薬の場合、その臭気により患者が不快に感じるので、臭気のために医薬の服用を避けようとすることが起こりうる。また、臨床試験においては、いわゆる二重盲検法を用いて、薬効をプラセボと比較することにより候補薬の薬効を評価するが、試験化合物が臭気を発すると、プラセボと化合物を識別することが容易になるため、二重盲検法において問題が生じるおそれがある。したがって、臭気を発する化合物を医薬に調製するには、できる限りその臭気を低減する必要がある。
【0003】
不快な臭気を低減する方法としては、一般に、分解法、吸着法およびマスキング法がある。分解法は臭気物質を分解する方法であり、オゾンによる分解、触媒による分解、および化学薬剤による分解がある。吸着法は臭気物質を物理的に吸着する方法であり、合成ゼオライト、シリカゲル、シリカ−アルミナもしくは活性炭、またはそれら2種以上の混合物による吸着、高電圧を加えた電場に吸着させる方法がある。マスキング法は芳香剤などを使用して不快な臭気を感じにくくする方法である。医薬製剤に適用する観点から、通常、臭気を低減するために、合成ゼオライト、シリカゲル、シリカ−アルミナまたは活性炭と共に瓶に充填することによって、臭気物質を吸着除去することが行われている。
【0004】
ところで、幾つかの医薬化合物は水分に対して不安定であり、そのような化合物を含有する医薬を調製するために、合成ゼオライト、シリカゲル、シリカ−アルミナまたは活性炭、あるいは酸化カルシウムのような金属酸化物を乾燥剤として使用することができる。金属酸化物による乾燥は、金属酸化物と水分との化学反応により生じていると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の開示
合成ゼオライト、シリカゲル、シリカ−アルミナまたは活性炭のような乾燥剤への水分または臭気物質の吸着は、可逆反応である。その結果、パッケージ中の水分または臭気物質の含有レベルは、パッケージ中のヘッドスペースと乾燥剤による脱着−吸着との平衡に基づく。
【0006】
換言すれば、輸送または保管中の保存環境の変化により、乾燥剤から臭気物質が脱着されることによって臭気の除去が不十分になるおそれがある。例えば、50℃を超える環境において、または陸路または空路による輸送中の温度の変化により、いったん吸着された水分または臭気が乾燥剤の吸着能の低下により乾燥剤から脱着され、乾燥剤が元々パッケージ中に存在する水分をまず第一に吸着する。さらに、パッケージを開封したときに、十分に除去されていない臭気の大部分がヘッドスペースの水分によって鼻腔に運ばれ、臭気を感じるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、不快な臭気を発する化合物を含有する医薬製剤の臭気を効率よくかつ継続的に低減するために、鋭意研究を行った。その結果、本発明者は、金属酸化物のような化学吸着型乾燥剤が、医薬製剤の臭気を効果的に低減することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
より詳細には、本発明は、
(1)臭気を発しうる医薬製剤、包装部材および化学吸着型乾燥剤を含む医薬パッケージ;
(2)化学吸着型乾燥剤が金属酸化物である、前記(1)記載のパッケージ;
(3)金属酸化物がアルカリ土類金属酸化物である、前記(2)記載のパッケージ;
(4)アルカリ土類金属酸化物が酸化カルシウムである、前記(3)記載のパッケージ;
(5)化学吸着型乾燥剤が、包装部材を構成する材料中に含有されている、前記(1)記載のパッケージ;
(6)化学吸着型乾燥剤が、包装部材により形成される内部空間に配置されている、前記(1)記載のパッケージ;
(7)臭気を発しうる医薬製剤が、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル基を有する化合物を含有する、前記(1)記載のパッケージ;
(8)(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル基を有する化合物が、2-エトキシ-1-{[2'-(5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}-1H-ベンズイミダゾール-7-カルボン酸 (5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル(以下、化合物Aと略することもある)もしくは2-シクロプロピル-1-{[2'-(5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}-1H-ベンズイミダゾール-7-カルボン酸 (5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル(以下、化合物Bと略することもある)、またはその塩である、前記(7)記載のパッケージ;
(9)化学吸着型乾燥剤を使用することを特徴とする、臭気を発しうる医薬製剤の臭気を低減する方法;
(10)臭気を発しうる医薬製剤を包装部材中に保存し、化学吸着型乾燥剤が包装部材を構成する材料中に含有されることを特徴とする、前記(9)記載の方法;
(11)臭気を発しうる医薬製剤を包装部材中に保存し、化学吸着型乾燥剤が包装部材により形成される内部空間に配置されることを特徴とする、前記(9)記載の方法などに関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、図5に示したブリスター基底部品を製造するための冷間成形可能なラミネートの層構造を示す図であり、図5のII-II線に対応する断面図である。
【図2】図2は、図5に示したブリスター基底部品のための、圧力を適用することにより開封できる蓋フィルムの層構造を示す図であり、図5のIII-III線に沿う断面図である。
【図3】図3は、ブリスター基底部品のための、剥離可能な蓋フィルムの層構造を示す図である。
【図4】図4は、図1のラミネートを冷間成形することにより製造されたブリスター基底部品の平面図である。
【図5】図5は、図4のブリスター基底部品のI-I線に沿う断面図である。
【図6】図6は、図2のプッシュスルーフィルム、または、図3の剥離可能な蓋フィルムによって密封された、図5のブリスター基底部品を示す図である。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明で用いられる化学吸着型乾燥剤は、水分との化学反応により乾燥効果を与え得るものであればいかなるものも使用でき、例えば、アルカリ土類金属酸化物(例、酸化カルシウム(CaO)など)のような金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物(例、水酸化カルシウムなど)、アルカリ土類金属の硫酸塩(例、硫酸マグネシウムなど)などが挙げられる。
【0011】
本発明において、化学吸着型乾燥剤は、医薬パッケージを構成する材料中に含有されていてもよく、または医薬パッケージの内部空間に配置されていてもよい。化学吸着型乾燥剤が医薬パッケージを構成する材料中に含有されている場合、医薬パッケージを構成する材料中の化学吸着型乾燥剤の含有量は、0.5重量%から60重量%、好ましくは5重量%から50重量%、より好ましくは10重量%から40重量%である。化学吸着型乾燥剤が医薬パッケージの内部空間に配置されている場合、医薬パッケージの内部空間中の化学吸着型乾燥剤の量は、臭気物質を除去するのに十分な量、すなわち、臭気を抑制または低減するのに十分な量であれば特に制限されない。化学吸着型乾燥剤の量は、乾燥剤の種類または形状、臭気を発しうる医薬製剤からの距離、臭気を発する化合物の量、製剤が何であるか、医薬製剤および乾燥剤が配置される空間の容積、存在するまたは発生する臭気物質の量、医薬パッケージの保存条件により変わりうる。例えば、本発明で用いられるパッケージの内部空間の容積が約200mlのとき、乾燥剤の量は約50mgから約100g、好ましくは約300mgから約50g、より好ましくは約500mgから約20gである。
【0012】
本発明において、臭気を発しうる医薬製剤を保存する包装部材は、臭気を発しうる医薬製剤を気密空間に保存しうる包装部材であればよく、包装部材は特に限定されず、ガラス瓶、プラスチック瓶などの瓶、プラスチック袋(アルミニウム、二酸化珪素(シリカ)を蒸着したものを含む)、アルミニウムラミネート袋などの包装袋、ストリップパッケージ、金属缶およびそれらの複合材料、およびブリスターパッケージなどが使用できる。
【0013】
包装部材が瓶の場合、瓶は単層または複数層で構成されていてもよい。瓶が単層で構成されている場合、化学吸着型乾燥剤と一体化された(integrated)樹脂で成形された瓶であることが好ましい。瓶が複数層で構成されている場合、外層が高バリアー特性(high barrier property)を有する層であり、化学吸着型乾燥剤を含有する層が、コーティング、ラミネート、または化学吸着型乾燥剤と樹脂との一体化(integration)(例えば、混合)により形成された瓶であることが好ましい。
【0014】
包装部材がブリスターパッケージである場合、ブリスター材料樹脂に、化学吸着型乾燥剤と一体化させた(integrated)樹脂を挿入することにより、包装部材を構成する材料中に化学吸着型乾燥剤を含有させることが望ましい。また、外層が高バリアー特性(high barrier property)を有する層であり、化学吸着型乾燥剤を、ブリスター材料樹脂の内部にコーティングもしくはラミネートすることにより、またはブリスター材料と直接一体化させる(integrated)(例えば、混合する)ことにより、化学吸着型乾燥剤を包装部材の材料中に含有させることも望ましい。
【0015】
さらに、包装部材が包装袋またはストリップパッケージの場合、化学吸着型乾燥剤と一体化された(integrated)樹脂を、袋またはストリップパッケージ材料樹脂に挿入することにより、包装部材を構成する材料中に化学吸着型乾燥剤を含有させることが望ましい。また、外層が高バリアー特性(high barrier property)を有する層であり、化学吸着型乾燥剤を、袋もしくはストリップパッケージ材料樹脂の内部にコーティングもしくはラミネートすることにより、または袋もしくはストリップパッケージの材料と直接一体化させる(integrated)(例えば、混合する)ことにより、化学吸着型乾燥剤を包装部材の材料中に含有させることも望ましい。
【0016】
本発明における臭気を発しうる医薬製剤は、それ自体が臭気を発する化合物を含有していてもよく、あるいは分解により臭気を発しうる化合物を含有していてもよい。「それ自体が臭気を発する化合物」であるか「分解により臭気を発しうる化合物」であるかを区別することが困難な化合物も多く、かような区別は本発明においては特段の意味を持たない(以下、「それ自体が臭気を発する化合物」と「分解により臭気を発しうる化合物」とを「臭気を発しうる化合物」と総称する)。
【0017】
臭気を発しうる化合物としては、例えば、分子内に(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル基(いわゆるメドキソミル基)を有する化合物(例、オルメサルタン メドキソミル、化合物A、化合物Bなど)などが挙げられる。分子内にメドキソミル基を有する化合物は、メドキソミルエステルが徐々に切断されることにより低分子化合物の2,3−ブタンジオン(ビアセチルまたはジアセチルともいう)を発生し、この2,3−ブタンジオンが特異な臭気の原因物質であると考えられている。
【0018】
化合物Aの5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル基には互変異性が存在することから、化合物Aは2-エトキシ-1-{[2'-(5-オキソ-2,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}-1H-ベンズイミダゾール-7-カルボン酸 (5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチルとも表される。同様に、化合物Bは2-シクロプロピル-1-{[2'-(5-オキソ-2,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}-1H-ベンズイミダゾール-7-カルボン酸 (5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチルとも表される。
【0019】
化合物Aおよび化合物Bは、国際公開第2005/080384号もしくは国際公開第2006/107062号に開示された方法またはそれに準じた方法によって製造することができる。
【0020】
臭気を発しうる化合物は、医薬的に許容される塩であってもよい。例えば、化合物が酸性官能基を有する場合には、無機塩基(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、鉄、銅等の遷移金属等)や有機塩基(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、トロメタミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、t−ブチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどの有機アミン類、アルギニン、リジン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸類等)などとの塩が挙げられる。また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
【0021】
臭気を発しうる医薬製剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤などの経口投与に適した固形製剤が挙げられる。
【0022】
該固形製剤は、自体公知の方法(例えば、第14改正日本薬局方の製剤総則に記載されている方法)により製造できる。例えば、錠剤の場合は、有効成分と賦形剤(例:乳糖、白糖、ブドウ糖、でんぷん、コーンスターチ、蔗糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、ソルビトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなど)、崩壊剤(例:アミノ酸、デンプン、コーンスターチ、炭酸カルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウムなど)を加えて混合し、結合剤(例:ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デンプン、アラビアゴム、トラガント、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、プルラン、グリセリンなど)を加えて顆粒とし、これに滑沢剤(例:ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、精製タルクなど)等を加えて錠剤とする。また、顆粒剤、細粒剤においても錠剤とほぼ同様の方法で造粒を行うか、あるいはノンパレル(商品名、白糖75%(W/W)およびコーンスターチ25%(W/W)を含む球状顆粒)に、水または、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤溶液(濃度:約0.5〜70%(W/V))を噴霧しながら、有効成分および添加剤(例:白糖、コーンスターチ、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど)を含有してなる粉状散布剤をコーティングすることにより顆粒が得られる。カプセル剤の場合は、上記の顆粒剤、細粒剤をゼラチンやヒドロキシプロピルメチルセルロース等のカプセルに充填するか、もしくは、有効成分を賦形剤(例:乳糖、白糖、ブドウ糖、でんぷん、蔗糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなど)とともに、ゼラチンやヒドロキシプロピルメチルセルロース等のカプセルに充填すればよい。
【0023】
該固形製剤は、味のマスキング、腸溶性あるいは徐放性などのためのコーティング剤でコーティングされていてもよい。コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン80、プルロニックF68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などが挙げられるが、必要に応じ、二酸化チタン、ベンガラ等の遮光剤を用いてもよい。
【0024】
本発明の上記および他の目的および特徴は、添付の図面を参照して、好適な態様に関する以下の記載から明らかになる。
【0025】
図1 図5に示したブリスター基底部品を製造するための冷間成形可能なラミネートの層構造、図5のII-II線に対応する断面図;
図2 図5に示したブリスター基底部品のための、圧力を適用することにより開封できる蓋フィルムの層構造、図5のIII-III線に沿う断面図;
図3 ブリスター基底部品のための、剥離可能な蓋フィルムの層構造;
図4 図1のラミネートを冷間成形することにより製造されたブリスター基底部品の平面図;
図5 図4のブリスター基底部品のI-I線に沿う断面図;
図6 図2のプッシュスルーフィルム、または、図3の剥離可能な蓋フィルムによって密封された、図5のブリスター基底部品。
【0026】
図1に示すように、臭気を発しうる医薬製剤の包装用のブリスター基底部品の製造に使用される、冷間成形可能なラミネート10は次の構造を有する。
12 厚さ25μmの配向ポリアミド(oPA)のフィルム
14 接着剤層
16 厚さ45μmのアルミニウム・ホイル
18 結合剤(EAA)
21 厚さ7μmの高密度ポリエチレン(HDPE)の第一の層
20 厚さ45μmのポリエチレン(PE)の第二の層
24 水分、酸素および酸の吸収剤としての30%のCaO粒子
22 厚さ7μmの高密度ポリエチレン(HDPE)の第三の層
【0027】
oPAフィルム12は、ラミネート10から製造されるブリスターの外側の層を形成する;PE層20、21、22は、密封層としての内側の層を形成する。
【0028】
図2に示すように、ラミネート10から製造されるブリスターのためのプッシュスルーフィルムとして構成された蓋フィルム30は、次のような層構造を有する。
32 熱シールラッカーまたは密封コーティング
34 アルミニウム・ホイル
36 印刷下塗りラッカー
38 印刷
40 印刷上塗りラッカー
【0029】
この上塗りラッカーが施された印刷38は、後で蓋フィルム30の外側になる面を形成し、熱シールラッカーまたは密封コーティング32は、ラミネート10から製造されるブリスター基底部品の密封層22に対して蓋フィルム30を密封するために使用される。
【0030】
図3に示すように、ラミネート10から製造されるブリスター基底部品用の、剥離可能なフィルムとして構成された蓋フィルム50は、次のような層構造を有する。
52 熱シールラッカーまたは密封コーティング
54 アルミニウム・ホイル
56 接着剤層
58 ポリエチレン−テレフタレート(PET)フィルム
60 接着剤層
62 紙
64 印刷
66 印刷上塗りラッカー
【0031】
上塗りラッカー層66が施された印刷64は、後で剥離可能な蓋フィルム50の外側となる部分を形成し、熱シールラッカーまたは密封コーティング52は、ラミネート10から製造されるブリスター基底部品のPE層22に対して、蓋フィルム50を密封するために使用される。
【0032】
図4に示されたブリスター基底部品70は、ラミネート10から製造され、例えば、錠剤を収容するためにラミネート10から形成されるカップ72は、例えば、パンチと金型を用いる深絞り加工によって、ラミネート10を冷間成形することによって形成される。
【0033】
図5および6に示すように、カップ72に内容物を充填した後、プッシュスルー蓋フィルム30または剥離可能な蓋フィルム50が、ブリスター基底部品70の上に密封され、所望のブリスター・パック80が形成される。
【0034】
ヨーロッパ特許出願第05405383号に記載されたブリスター基底部品およびブリスター・パックが本発明に好ましく使用することができる。
【0035】
ブリスター基底部品の内側層はポリオレフィンで構成されるのが好ましく、内側層は、吸収材料として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される酸化物を含むことが好ましい。吸収材料としては、酸化カルシウム(CaO)が特に好ましい。ポリオレフィン内側層の好ましいCaO含有量は、0.5から50重量%であり、特に10から30重量%のCaOである。
【0036】
内側層のポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE)および/または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および/または低密度ポリエチレン(LDPE)および/またはポリプロピレン(PP)によって構成されるのが好ましい。内側層は、アイオノマー(例、Surlyn(登録商標))、EAAまたはPP−MSAのような酸改質ポリオレフィンの成分を含有してもよい。これらの酸改質ポリオレフィンは結合剤として機能するので、特定の場合には、個別のプライマーを省略することができる。この内側層のポリオレフィンは、単一層または複数層によって構成することができる。
【0037】
本発明において、内側層のポリオレフィンが少なくとも二つの層からなり、これらの層のうちのアルミニウム・ホイルから最も離れた最外側層が実質的に吸収材料を含まないように構成された、ラミネート製の基底部品が特に好ましく使用される。この処置によって滑らかな表面が得られ、その結果、本発明によるラミネートの摩擦係数は従来のラミネートと同等の値になる。最外側層にはCaOのような添加剤が存在しないから、従来のラミネートと比較して、成形用金型や他の機械要素で加工する間にも、摩耗を生じない。
【0038】
本発明において、内側層のポリオレフィンが少なくとも二つの層から成る共押出し層であり、これらの層のうちのアルミニウム・ホイルから最も離れた最外側層が実質的に吸収材料を含まない、ラミネート製の基底部品が、特に好ましく使用される。
【0039】
この基底部品のラミネートにおいては、バリアー層がアルミニウム・ホイルであることが好ましく、バリアー層のポリオレフィンに面する面が、結合剤で被覆されること、特に、水性のまたは溶剤性のプライマーで被覆されること、または、高分子結合剤で被覆されることが好ましい。
【0040】
バリアー層に最も近接して配置された最内側層は、実質的に吸収材料を含有しないことが好ましい。その結果、圧縮冷間成形工程の間にバリアー層として使用されるアルミニウム・ホイルに、吸収材料の粒子が圧入されることはない。したがって、アルミニウム・ホイルに潜在的な脆弱点が生成されないため、アルミニウム・ホイルの無細孔成形能を減少させることもない。
【0041】
この外側層は、接着剤層を介してアルミニウム・ホイルに結合され、かつ、配向ポリアミド(oPA)、配向ポリプロピレン(oPP)または配向ポリエステルのプラスチックフィルムであることが好ましい。
【0042】
本発明で用いられるブリスター・パックは、ブリスター基底部品の内側に密封され、かつ、水蒸気と気体に対する遮断壁としてのバリアー層を有する蓋フィルムと、バリアー層の第一の面に配置された密封可能な内側層を有する。
【0043】
内側層のポリオレフィンは、単一層からなるのが好ましい。密封可能な内側層は、ラッカーの形態、特に、熱シールラッカーの形態の密封媒体と、フィルムまたは密封可能なコーティングとを有し、蓋フィルムをブリスター基底部品の内側に対して密封するために使用され、この密封を半永久的なシールにすることが可能であり、または、剥離可能な開口を形成するために、低接着力を有するシールにすることもできる。
【0044】
バリアー層は、好ましくはアルミニウム・ホイルである。
【0045】
臭気を発しうる医薬製剤を包装するためのブリスター・パックを製造するために、先ず、本発明によるラミネートから冷間成形によってブリスター基底部品が製造される。次いで、ブリスター基底部品に製剤を充填した後、水蒸気と気体に対する障壁としてのバリアー層を含有する蓋フィルムが、ブリスター基底部品の内側層にシールされる。
【実施例】
【0046】
以下の実施例、比較例および試験例において、2-エトキシ-1-{[2'-(5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}-1H-ベンズイミダゾール-7-カルボン酸 (5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル カリウム塩(以下、化合物aと称する)を使用した。
【0047】
実施例
以下の実施例において、化合物a以外の成分(添加物)として、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格などに掲載の成分を使用することができる。
製剤A
(1)化合物a 21.34 mg
(2)造粒乳糖 135.1 mg
(3)軽質無水ケイ酸 0.320 mg
(4)ステアリン酸マグネシウム 3.200 mg
【0048】
化合物a、造粒乳糖、軽質無水ケイ酸、およびステアリン酸マグネシウムを混合し、カプセルに充填し、1カプセルあたり上記の処方を含有する製剤(製剤A)を得た。
製剤Aを、上記(図1、2および4〜6に示す)のCaOを含有するブリスターパッケージの空間に充填した。
【0049】
比較例
製剤Aを、乾燥剤を含まず、水分不透過性包装フィルムが水分不透過性シール材料上に熱シールされたブリスターパッケージの空間に充填した。
【0050】
試験例
実施例および比較例で得た医薬パッケージを25℃-60%RHの条件下で6ヶ月、または40℃-75%RHの条件下で1、3または6ヶ月保存し、臭気成分のひとつであるビアセチルのブリスターパッケージ中の濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
ガスクロマトグラフィーの測定条件
装置:ガスクロマトグラフ 島津GC-2010
検出器:水素炎イオン化検出器
カラム:SPB-5 (SUPELCO社製; 0.53 mm i.d.×30 m; 膜厚5.0 μm)
カラム温度:80℃
キャリヤーガス:ヘリウム
流量:4.5 mL/min
注入口温度:200℃
検出器温度:260℃
注入量:0.2 mL
【0051】
ブリスターパッケージ中のビアセチル濃度(μg/mL)の結果を表1および表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の医薬パッケージは、医薬の安定性試験で通常用いられる条件下で、ビアセチルの濃度を顕著に低減させ、脱臭活性を維持した。
【0055】
したがって、本発明は、臭気を発しうる医薬製剤の製品価値を改善するのに有用である。
【0056】
本願は、米国特許出願第60/846,732号を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気を発しうる医薬製剤、包装部材および化学吸着型乾燥剤を含む医薬パッケージ。
【請求項2】
化学吸着型乾燥剤が金属酸化物である、請求項1記載のパッケージ。
【請求項3】
金属酸化物がアルカリ土類金属酸化物である、請求項2記載のパッケージ。
【請求項4】
アルカリ土類金属酸化物が酸化カルシウムである、請求項3記載のパッケージ。
【請求項5】
化学吸着型乾燥剤が、包装部材を構成する材料中に含有されている、請求項1記載のパッケージ。
【請求項6】
化学吸着型乾燥剤が、包装部材により形成される内部空間に配置されている、請求項1記載のパッケージ。
【請求項7】
臭気を発しうる医薬製剤が、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル基を有する化合物を含有する、請求項1記載のパッケージ。
【請求項8】
(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル基を有する化合物が、2-エトキシ-1-{[2'-(5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}-1H-ベンズイミダゾール-7-カルボン酸 (5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチルもしくは2-シクロプロピル-1-{[2'-(5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}-1H-ベンズイミダゾール-7-カルボン酸 (5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル、またはその塩である、請求項7記載のパッケージ。
【請求項9】
化学吸着型乾燥剤を使用することを特徴とする、臭気を発しうる医薬製剤の臭気を低減する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−504252(P2010−504252A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513148(P2009−513148)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【国際出願番号】PCT/JP2007/069129
【国際公開番号】WO2008/041663
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】