説明

医薬製剤用の高圧圧縮

【課題】 活性医薬成分を含む圧縮融合粒子の医薬製剤の製造方法を開示する。この方法は、0.1 GPa〜10 GPaの範囲の圧力を適用し、圧縮サンプルを作成することを含む。本発明の圧縮融合粒子は、非経口投与用、特に持続放出製剤として有用である。この有用性は、溶解動態が活性医薬成分用の従来の結晶性または無定形充填粉末調製物より優れていることに起因する。また、このような圧縮融合微粒子を含む医薬製剤を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理学の分野に関し、特に活性医薬成分の持続放出製剤に関する。本発明はまた、活性医薬成分の高圧圧縮(high pressure compaction)によって上記製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の医薬製剤は、経口摂取または非経口的注射用の固形粒子として製剤化される。したがって活性医薬成分は、身体内への吸収のために、最終的に周囲の液中へ溶解することが必要である。しかしながら、多数の薬物は水に低溶解性である。例えば、Remington:製薬の科学および実務 (The Science and Practice of Pharmacy), 20th Ed. (2000), Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, pg. 209, Table 16-1を参照すること。したがって、当分野では非常に小さい粒子の製剤が一般に好まれてきた。その理由は、懸濁が非常に容易であるからであり、また典型的には、対体積表面積比が大きいほど、より高速に溶解するからである。したがって低溶解性の活性医薬成分は、多くの場合に、微粒子化調製物として製剤化されてきた。この微粒子化調製物中では、粒子の直径は典型的には< 10μmである。このような微粒子は、経口、皮下、静脈内、筋肉内または他の注射投与経路用の溶液剤または懸濁剤の調製に使用され;結合剤と混合して、経口または経直腸投与用の丸剤または錠剤に圧縮され;ならびにマトリクス材料と混合して埋入物とされてきた。この場合、この埋入物からは経時的に活性医薬成分が溶け出す。
【0003】
しかし、特定の状況では、活性医薬成分を持続放出製剤中で投与することが望ましい。その目的は、典型的には、長期間にわたってほぼ一定またはゼロ次の放出速度を達成することである。
【0004】
従来技術のほとんどの持続放出システムは、活性医薬成分の、細かく製粉した調製物または微粒子化調製物を製剤化の出発点として使用している。そして活性医薬成分の身体内への放出は、マトリクス、膜または他の不活性成分または装置を用いて制御される。持続放出製剤に関する当分野で既知の方法および装置の例には、リポソーム、生浸食性マトリクス(bioerodible matrices)(例えば、PLA/PGLAマトリクス)、薬物浸透性埋入物(例えば、Zaffaroniの米国特許第3,993,073号)、薬物浸透性および薬物不透性の膜を有する埋入物(例えば、Smithらの米国特許第5,378,475号)、および浸透性薬物送達システム(例えば、Higuchiの米国特許第4,439,196号)が含まれる。
【0005】
医薬粒子は構築的または崩壊的手段によって作成することができる。構築的手段には結晶化、スプレー乾燥、凍結乾燥、超臨界流体技術が含まれる。崩壊的技術には、圧縮力、剪断力、張力を用いる機械加工または製粉が含まれる。例えば、Crowder et al., 医薬微粒子科学ガイド (A Guide to Pharmaceutical Particulate Science), (2003), CRC Press, pgs. 9-26を参照すること。
【0006】
従来技術の持続放出製剤では活性医薬成分を通常、機械加工または製粉して、この薬物の小結晶または微粒子化結晶を作成し、次いでこれらの結晶をマトリクス、半透膜、ポンプまたは他の不活性成分もしくは装置と組み合わせて、持続放出送達の効果を達成する。
【0007】
活性医薬成分、例えばインシュリン、コルチコステロイドまたはペニシリンの大きい粒子を用いる従来技術の持続放出送達システムでは、溶媒和結晶化、熱結晶化、または種付け結晶化のような技術を用いて、より大きい粒子を作成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、部分的に、粉末化または微粒子化医薬製剤に高圧圧縮を適用すると、実質的により緩徐な溶解速度を有し、したがって持続放出製剤の調製において向上した有用性を有する別の状態への、物理的であるが、非化学的な変化を生じさせることができるという発見に基づく。特に、高圧圧縮に付された医薬製剤は、活性医薬成分の持続放出投与に関して、従来の結晶性または無定形充填粉末調製物より優れた溶解動態を示す。
【0009】
したがって一面では、本発明は、活性医薬成分を含む圧縮融合粒子(pressure-fused particles)からなる医薬製剤の製造方法であって、結晶性または無定形の活性医薬成分を含むサンプルを提供し;サンプルを0.1 GPa〜10 GPaの範囲の圧力での高圧圧縮に付して、圧縮サンプル(compacted sample)を作成し;ならびに圧縮サンプルから圧縮融合粒子を単離することによる製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施態様では、圧力は0.5 GPa〜7.5 GPaの範囲である。他の実施態様では、圧力は1 GPa〜5 GPaの範囲である。
【0011】
いくつかの実施態様では、圧力値は、1 g/cm3〜40 g/cm3の範囲、2 g/cm3〜20 g/cm3の範囲、4 g/cm3〜10 g/cm3の範囲の密度を有する圧縮サンプルを作成するのに十分である。いくつかの実施態様では、圧力値は、1 g/cm3〜40 g/cm3の範囲、2 g/cm3〜20 g/cm3の範囲、4 g/cm3〜10 g/cm3の範囲の密度を有する圧縮融合微粒子を作成するのに十分である。
【0012】
いくつかの実施態様では、圧縮サンプルは25μm〜400μmの範囲の厚さを有する。他の実施態様では、圧縮サンプルは50μm〜200μmの範囲の厚さを有する。さらに他の実施態様では、圧縮サンプルは100μm〜150μmの範囲の厚さを有する。
【0013】
いくつかの実施態様では、圧力は30秒〜10分の範囲の期間維持される。他の実施態様では、圧力は60秒〜5分の範囲の期間維持される。さらに他の実施態様では、圧力は90秒〜3分の範囲の期間維持される。
【0014】
いくつかの実施態様では、圧縮融合粒子は20μm〜800μmの範囲の最大寸法を有する。他の実施態様では、圧縮融合粒子は40μm〜400μmの範囲の最大寸法を有する。さらに他の実施態様では、圧縮融合粒子は100μm〜250μmの範囲の最大寸法を有する。
【0015】
いくつかの実施態様では、圧縮サンプルから圧縮融合粒子を単離する段階は、20μm〜800μmの範囲の排除限界を有するふるいを通して、圧縮サンプルをふるい分けすることを含む。他の実施態様では、排除限界は40μm〜400μmの範囲である。さらに他の実施態様では、排除限界は100μm〜250μmの範囲である。
【0016】
いくつかの実施態様では、圧縮前のサンプルは活性医薬成分を含む微粒子化された粒子を含む。
【0017】
別の面では、本発明は、活性医薬成分を含む圧縮融合粒子からなる医薬製剤であって、圧縮融合粒子が、0.1 GPa〜10 GPaの範囲の圧力での高圧圧縮に付された活性医薬成分を含む調製物を提供する。いくつかの実施態様では、圧力は0.5 GPa〜7.5 GPaの範囲である。他の実施態様では、圧力は1 GPa〜5 GPaの範囲である。
【0018】
いくつかの実施態様では、圧縮融合粒子は20μm〜800μmの範囲の最大寸法を有する。他の実施態様では、圧縮融合粒子は40μm〜400μmの範囲の最大寸法を有する。さらに他の実施態様では、圧縮融合粒子は100μm〜250μmの範囲の最大寸法を有する。
【0019】
本発明のこれらの実施態様および他の実施態様ならびに利点は、以下の本発明の詳細な説明および特定の実施態様および実施例から当業者には明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
詳細な説明
本明細書中で参照する特許、科学および医学刊行物は発明がなされた時点での通常の当業者が入手可能であった知識を立証するものである。本明細書中で引用される発行済みの米国特許、公開された特許出願および係属中の特許出願、他の参考文献の全開示内容は、引用により本明細書中に包含される。
【0021】
定義
本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は以下に特に定義しない限り、通常の当業者が一般に理解している意味と同一の意味を有するものとする。本明細書中で用いる技術の言及は当分野で一般に理解されている技術を表すものとし、これには、それらの技術に関するバリエーションまたは等価な技術もしくは後に開発された技術の置換であって、当業者には明らかであろうバリエーションまたは置換を含む。さらに、主題である本発明をより明瞭かつ簡潔に記載するために、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する特定の用語に関する定義を以下に提供する。
【0022】
「粒子」 本明細書中で使用する用語「粒子」とは、化合物の任意の固形調製物を意味する。いくつかの実施態様では本発明の粒子は実質的に球状であるが、粒子は本発明の原理と矛盾しない任意の立体幾何学的形状であり得る。この形状には、非限定的に、楕円体、円柱、多面体、円板、不定形が含まれる。
【0023】
「円板」 本明細書中で使用する用語「円板」とは、第一次元がそれに垂直な2つの次元と比べてかなり小さい任意の固体を意味する。このような物体は、円板、ウエハー、または平面物体のように様々に説明されることがあり、これには、非限定的に、第一次元に対する垂直面において円形、楕円形または多角形である物体が含まれる。
【0024】
「活性医薬成分」 本明細書中で使用する用語「活性医薬成分」とは、医薬品または薬物として有用性を有する任意の化合物を意味し、これには、非限定的に、天然に存在する化合物(例えば、ホルモン)および合成薬物が含まれる。
【0025】
「持続放出」 本明細書中で使用する用語「持続放出」とは、一定期間にわたる、貯蔵器または供給源からの化合物の継続放出を意味する。
【0026】
「非経口投与」 本明細書中で使用する用語「非経口投与」とは、消化管または胃腸管以外の経路による身体内への医薬製剤の導入を意味し、これには、非限定的に、皮下、静脈内、筋肉内、眼内注射ならびに外科手術による埋入が含まれる。
【0027】
「ポリマーコーティング」 本明細書中で使用する用語「ポリマーコーティング」とは、1種またはそれ以上のモノマーを重合させて、直線状または分岐状または架橋高分子を形成させることによって形成される任意のコーティングを意味する。コーティングは、コーティング、層、膜、殻、カプセル等のように様々に特徴付けされることがあり、そして本発明のコア粒子を実質的に囲みまたは包まねばならない。
【0028】
「浸透性」 本明細書中で使用する用語「浸透性」とは、液体の流動によってではなく、拡散による分子の通過を許容することを意味する。
【0029】
「半透性」 本明細書中で使用する用語「半透性」とは、ある種の分子に対しては浸透性であるが、他の分子に対してはそうでないことを意味する。本明細書中で使用する半透性ポリマーコーティングは、少なくとも水および本発明の粒子内の活性医薬成分に対して浸透性である。
【0030】
「生体適合性」 本明細書中で使用する用語「生体適合性」とは、生体組織、特にヒトまたは他の哺乳類組織と接触させた場合に、毒性反応、有害反応または免疫反応を生じさせないことを特徴とすることを意味する。
【0031】
「生分解性(Biodegradable)」 本明細書中で使用する用語「生分解性」とは、生体組織、特にヒトまたは他の哺乳類組織中で部分的または完全に溶解または分解可能であることを意味する。生分解性化合物は任意のメカニズムによって分解することができ、このメカニズムには、非限定的に、加水分解、触媒作用、酵素作用が含まれる。
【0032】
「疑似ゼロ次の速度論」 本明細書中で使用する用語「疑似ゼロ次の速度論」とは、持続放出期間にわたって、ゼロ次である(すなわち、濃度と無関係である)か、あるいはゼロ次および一次(すなわち、濃度に比例する)の間の動態を示す活性医薬成分の持続放出を意味し、この場合、濃度は粒子内に含有される活性医薬成分の総量に基づく。いくつかの実施態様では、放出は、持続放出期間にわたって、活性医薬成分の濃度の平方根に比例するよりも小さい動態を示す。
【0033】
「Or」 本明細書中で使用する単語「or」は、特に指定しない限り、「either/or」の「排他的」意味ではなく、「and/or」の「包括的」意味において使用する。
【0034】
「数値域」 本明細書中で使用する変動値に関する数値域の列挙は、その範囲内の任意の値と等しい変動値を用いて本発明を実施してよいことを述べるものとする。したがって、本質的に不連続である変動値に関しては、この変動値は数値域内の端点を含む任意の整数値と等しくなり得る。同様に、本質的に連続である変動値に関しては、この変動値は数値域内の端点を含む任意の実数値と等しくなり得る。例として、非限定的には、0〜2の範囲の値を有すると記載される変動値は、この変動値が本質的に不連続である場合、値0、1または2をとり得、またこの変動値が本質的に連続であるならば、値0.0、0.1、0.01、0.001、または> 0および< 2の任意の他の実数値をとり得る。
【0035】
高圧圧縮による医薬製剤化
本発明は、部分的に、粉末化または微粒子化医薬製剤に高圧圧縮を適用すると、実質的により緩徐な溶解速度を有し、したがって持続放出製剤の調製において向上した有用性を有する別の状態への、物理的変化ではあるが、非化学的変化を生じさせることができるという発見に基づく。特に、高圧圧縮に付された医薬製剤は、活性医薬成分の持続放出投与に関して、従来の結晶性または無定形の充填粉末調製物より優れた溶解動態を示す。
【0036】
本発明の任意の特定の理論に拘束されることなく、高圧圧縮は、物理的ではあるが、非化学的な状態変化を生じさせ、圧縮融合粒子を形成させると考えられ、この圧縮融合粒子は、いくつかの実施態様では、ヒアリンまたはガラス質の特徴を示し、一方、他の実施態様では、結晶性または無定形の特徴を維持する。得られる圧縮融合粒子は、種々の溶解特性、更に特に、より緩徐な溶解速度を有する。
【0037】
いくつかの実施態様では、高圧圧縮は医薬製剤および/または活性医薬成分の見かけのガラス転移圧を超える。いくつかの上記実施態様では、得られる圧縮融合粒子はヒアリンまたはガラス質の外観を示す。
【0038】
実質的に均一の溶解特性を有する圧縮融合粒子調製物を作成するため、サンプル全体に均一な力の分配を確保することが有益である。したがって、いくつかの実施態様では、初期圧力の適用中にサンプルを回転させて、この材料を圧縮機内に均一に分配する。さらに、いくつかの実施態様では、圧縮機に加えるサンプルの量は、高圧圧縮後の材料の厚さが25μm〜400μmの範囲、50μm〜200μmの範囲または100μm〜150μmの範囲であるように選択する。材料を均一に分配し、サンプルの厚さを減少させることによって、より高度の均一性を達成する。
【0039】
いくつかの実施態様では、本発明の圧縮融合粒子を作成するのに必要とされる圧力の値は、1 mton/cm2〜100 mton/cm2の範囲、5 mton/cm2〜75 mton/cm2の範囲または10 mton/cm2〜50 mton/cm2の範囲である。別法では、1ギガ-Pascal(GPa)が10.197 mton/cm2に等しいことを考えると、圧力はおよそ0.1 GPa〜10 GPaの範囲、0.5 GPa〜7.5 GPaの範囲、または1 GPa〜5 GPaの範囲であり得る。いくつかの実施態様では、この圧力は30秒〜10分の範囲、60秒〜5分の範囲または90秒〜3分の範囲の期間適用する。
【0040】
いくつかの実施態様では、圧力の値は、1 g/cm3〜40 g/cm3の範囲、2 g/cm3〜20 g/cm3の範囲、4 g/cm3〜10 g/cm3の範囲の密度を有する圧縮サンプルを作成するのに十分な量である。いくつかの実施態様では、圧力の値は、1 g/cm3〜40 g/cm3の範囲、2 g/cm3〜20 g/cm3の範囲、4 g/cm3〜10 g/cm3の範囲の密度を有する圧縮融合微粒子を作成するのに十分な量である。
【0041】
粒子の寸法および形状
本発明はまた、部分的に、より大きい粒子の医薬製剤を導入する場合には、この大きい粒子の低下した対体積表面積比に起因して持続放出効果が生じるという認識に基づく。さらに、この粒子を製剤化して実質的に平らに、または平面状にすると、薬物放出動態はほぼ一定またはゼロ次動態により近いものとなる。さらに、いくつかの実施態様では、本発明の粒子は非経口投与用に使用することができる。例えば、いくつかの実施態様では、投与は、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、眼内)、あるいは創傷部位への、または外科手術中の導入(例えば、創傷または外科手術部位の洗浄または潅注)によって行う。このような実施態様では、粒子は懸濁物を形成させるのに十分に小さいものであり得て、また、特定の実施態様では、粒子は皮下注射針を通して注射するのに十分に小さいものであり得る。したがって、いくつかの実施態様では、粒子は20μm〜800μmの範囲、40μm〜400μmの範囲、または100μm〜250μmの範囲の最大寸法を有する。
【0042】
したがって、いくつかの実施態様では、サンプルを高圧圧縮に付した後には、得られた圧縮サンプルをふるい分けに付して、所望のサイズの粒子を得ることができる。例えば、圧縮サンプルを、20μm〜800μmの範囲、40μm〜400μmの範囲、または100μm〜250μmの範囲の排除限界を有するふるいに押し通すことができる。さらに、あるいは別法では、圧縮サンプルまたはふるい分け粒子を製粉加工に付して、より小さいサイズのまたは種々の形状を有する融合粒子を作成することができる。例えば、いくつかの実施態様では、圧縮融合粒子を製粉して、球状物を作成する。一方、他の実施態様では、圧縮融合粒子を製粉して、円板状の物質を作成する。
【0043】
本発明のいくつかの実施態様では、作成された圧縮融合粒子は、その少なくとも1つの長さ寸法が20μmより大きいか、40μmより大きいか、100μmより大きいか、250μmより大きいか、400μmより大きいか、または800μmより大きい。いくつかの実施態様において、製剤が粒子サイズに関して不均一である場合は、少なくとも70%、80%、90%または95%の粒子の少なくとも1つの長さ寸法が20μmより大きいか、40μmより大きいか、100μmより大きいか、250μmより大きいか、400μmより大きいか、または800μmより大きい。
【0044】
ポリマーコーティング
本発明の圧縮融合粒子は、場合により、当分野で既知の、または後に開発される任意の方法にしたがって、ポリマー層またはコーティングを用いてカプセル化、またはコーティングすることができる。このようなポリマーコーティングは、粒子の持続放出特性の改善、または非限定的に投与能、口当たり、安定性、または貯蔵期間を含む特徴の改善に有用であり得る。
【0045】
よく使用される、市販の生体適合性があり、かつ生分解性ポリマーの例には、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸(lactic-co-glycolic acid))(PLGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(バレロラクトン)(PVL)、ポリ(ε-デカラクトン)(PDL)、ポリ(1,4-ジオキサン-2,3-ジオン)、ポリ(1,3-ジオキサン-2-オン)、ポリ(パラ-ジオキサノン)(PDS)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)(PHB)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)(PHV)およびポリ(β-リンゴ酸)(PMLA)が含まれる。
【0046】
より一般的には、有用なポリマーには、非限定的に、天然に存在するポリマー、例えば炭水化物、例えば糖リン酸、アルキルセルロース(例えば、エチルセルロース)、およびヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、および1つまたはそれ以上の以下のモノマーを含む合成ポリマーまたはコポリマーが含まれる:乳酸、グリコール酸、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、ピバロラクトン、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシエチル酪酸、α-ヒドロキシイソ吉草酸、α-ヒドロキシ-β-メチル吉草酸、α-ヒドロキシカプロン酸、α-ヒドロキシイソカプロン酸、α-ヒドロキシヘプタン酸(α-hydroxy heptanic acid)、α-ヒドロキシオクタン酸(α-hydroxy octanic acid)、α-ヒドロキシデカン酸、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、α-ヒドロキシリグノセリン酸、β-フェノール乳酸、ポリビニルアルコール。乳酸コポリマーは、ポリマーマトリクスの耐用期間の選択に関してある程度の融通性を提供する。その理由は、使用するコモノマーの量およびタイプを変化させることによって、半減期を制御することができるからである。
【0047】
粒子上のポリマーコーティングを形成する方法は当分野で周知である。例えば、標準的技術には、溶媒蒸発/抽出技術、水中乾燥技術(例えば、米国特許第4,994,281号を参照すること)、有機相分離技術(例えば、米国特許第4,675,19号、米国特許第5,639,480号を参照すること)、スプレー乾燥技術(例えば、米国特許第5,651,990号を参照すること)、三重乳剤技術(例えば、米国特許第4,652,441号、米国特許第5,639,480号を参照すること)、エアサスペンジョン技術、ディップコーティング技術が含まれる。
【0048】
投与方法
本発明の被覆(コーティング)した微粒子は非経口的に投与する。いくつかの実施態様では、投与は、製薬的に許容される担体中の被覆した微粒子の懸濁物を注射することによって行う。一方、他の実施態様では、被覆した微粒子を開放性損傷(創傷)または外科手術部位に投与する。
【0049】
注射による投与には、非限定的に、皮下、静脈内、筋肉内、眼内注射が含まれる。このような投与経路では、被覆した微粒子は、注射に使用する針の内径より小さい最大寸法を有する必要がある。より大きな被覆した微粒子に適応するためにはより大きな針を用いてよいが、このような大きな被覆した微粒子は懸濁物を形成するには低い能力を有するに過ぎない。したがって、いくつかの実施態様では、被覆した微粒子は非経口注射用の標準針の内径より小さい最大寸法を有する。さらに、被覆した微粒子は、製薬的に許容される担体中の懸濁剤としての製剤化を許容する最大サイズを有するように選択することができる。
【0050】
開放性損傷または外科手術部位への非経口投与では、被覆した微粒子は、上記のように懸濁物中で、または固形物(例えば、粉末)、ペースト、クリーム、または軟膏として投与することができる。このような実施態様では、被覆した微粒子は創傷または外科手術部位の洗浄または潅注時に投与することができ、またこの被覆した微粒子は実質的により大きいものであり得る。
【0051】
活性医薬成分
本発明にしたがって製剤化してよい活性医薬成分には、その医薬的有用性に悪影響を及ぼす化学変化または分解を受けることなく、本発明の高圧圧縮法に付しても良い任意の医薬品が含まれる。通常の当業者であれば、圧縮融合粒子を調製し、その化学構造を活性型と比較することによって、任意の特定活性医薬成分が本発明において有用であるかどうかを容易に確かめることができる。
【0052】
非限定的な例として、潜在的に有用な活性医薬成分は、コルチコステロイド、抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、麻酔薬、麻薬、抗生物質、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、HMG CoAレダクターゼ阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、β-遮断薬、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、タキサン、アルキル化剤、免疫抑制剤、ホルモン、ホルモン受容体調節物質、ならびにその持続放出製剤が有益になるであろうその他の活性医薬成分を含む群から選択することができる。
【0053】
コルチコステロイドの非限定的な例には、デキサメタゾン、トリアムシノロン、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオメトロン、酪酸クロベタゾン、トリアムシノロンアセトニド、吉草酸ベタメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸フルチカゾン、17-酪酸ヒドロコルチゾン、フロエート(furoate)モメタゾン、メチルプレドニゾロンアセトナート(methylprednisolone acetonate)、プロピオン酸クロベタゾール、ジプロピオン酸ベタメタゾン、デソニド、フルチカゾンが含まれる。
【0054】
抗精神病薬の非限定的な例には、ベンゾジアゼピン、例えばオランザピン(ZyprexaTM)、クロザピン、ロクサピン、ケチアピン;ベンズイソキサゾール誘導体、例えばリスペリドン(RisperdalTM)、モリンドン、ピモジドが含まれる。
【0055】
抗うつ薬の非限定的な例には、第三級アミン三環系薬、例えばアミトリプタリン(amitriptaline)、ドキセピン、イミプラミン;第二級アミン三環系薬、例えばデシプラミン、ノルトリピチレン(nortrypitylene);四環系薬、例えばミルタザピン;トリアゾロピリジン、例えばトラザドール(trazadole);アミノケトン、例えばブプロプリオン(buproprion);フェネチルアミン、例えばベンラファクシン;フェニルピペラジン、例えばネファザドン(nefazadone);および選択的セロトニン再摂取阻害剤(SSRI)、例えばシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルタリン(sertaline)が含まれる。
【0056】
抗てんかん薬の非限定的な例には、ヒダントイン、例えばディランチン;バルビツール酸系薬、例えばフェノバルビタール;デオキシバルビツール酸系薬、例えばプリミドン;イミノスチルベン、例えばカルバマゼピン(cabamazepine);スクシンイミド、例えばエトスクシミド;ベンゾジアゼピン、例えばクロナゼパム;ならびにバルプロ酸、ガバペンチン、レベチラセタム、チアガビン、トピラメート、ゾニサミドが含まれる。
【0057】
抗パーキンソン病薬の非限定的な例には、レボドパ調製物、例えばレボドパベンセラジドおよびレボドパ/カルビドパ;麦角ドーパミンアゴニスト、例えばブロモクリプチン、カベルゴリン、ペルゴリド;非麦角ドーパミンアゴニスト、例えばプラミペキソール、ロピネロール(ropinerole)、スポモルフィン(spomorphine);カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばエンタカポン、トルカポン;モノアミン酸化酵素B阻害剤、例えばセレギリン;NMDAアンタゴニスト、例えばアマンタジン;および抗コリン作動薬、例えばベンズヘキソール、ベンズトロピン、ビペリデン、オルフェナドリン(orphenedrine)、プロシクリジンが含まれる。
【0058】
麻酔薬の非限定的な例には、プロカイン(NovocainTM)、ブピバカイン(MarcaineTM)、リドカイン(XylocaineTM)、エチドカイン、ロピバカイン、クロロプロカイン(choloroprocaine)、テトラカイン、メピバカイン(mepivacine)が含まれる。
【0059】
麻薬の非限定的な例には、モルヒネ、ヒドロモルフォン、メペリジン、フェンタニル、プロポキシフェン、レボルファノール、コデイン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、酢酸レボメタジル、オキシコドン、メタドンが含まれる。
【0060】
抗生物質の非限定的な例には、テトラサイクリン系抗生物質、例えばテトラサイクリン、 クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン;ペニシリン系抗生物質、例えばペニシリン、クロルペニシリン、オキシペニシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン;マクロライド系抗生物質、例えばエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン;フルオロキノロン系抗生物質、例えばノルフロキサシン、シプロフロキサシン、オフォキサシン(ofoxacin)、スパルフロキサシン、ロメフロキサシン、フレロキサシン、ペルフロキサシン(perfloxacin)、レボフロキサシン、トロバフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、クロキサシリン;セファロスポリン系抗生物質、例えばセファロチン、セファゾリン、セファレキシン、セファドロキシル、セファマナドール(cefamanadole)、セフォキシチン、セファクロール、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、ロラカルベフ、セフォニシド、セファテタン(cefatetan)、セフォラニド、セフォタキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、セフェピム;アミノグリコシド系抗生物質にはゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン(netilimicin)、ネオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン;ならびにイソニアジド(INH)、リファンピン、リファペンチン、ピラジナミド、エタンブトール、エチオナミド、カレオマイシン(careomycin)、サイクロセリンが含まれる。
【0061】
HIVプロテアーゼ阻害剤の非限定的な例には、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、アンプレナビル、ロピナビルが含まれる。
【0062】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤の非限定的な例には、ヌクレオシドベースの逆転写酵素阻害剤、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ラムビジン(lamuvidine)、アバカビル、ならびに非ヌクレオシドベースの逆転写酵素阻害剤にはデラビルジン、エファビレネツ(efavirenez)、ネビラピンが含まれる。
【0063】
HMG Co-Aレダクターゼ阻害剤の非限定的な例には、シンバスタチン(ZocorTM)、ロバスタチン(MevacorTM)、アトルバスタチン(LipitorTM)、プラバスタチンナトリウム、フルバスタチン、セリバスタチンが含まれる。
【0064】
カルシウムチャネル遮断薬の非限定的な例には、ジヒドロピリジン、例えばニフェジピン;フェニルアルキルアミン、例えばベラパミル;ベンゾチアゼピン、例えばジルチアゼム;ならびにアムリノン、アムロジピン、ベンシクラン、フェロジピン、フェンジリン(fendiline)、フルナリジン、イスラジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ペルヘキシレン、ガロパミル、チアパミル(tiapamil)、フェニトイン、バルビツール酸系薬、ダイノルフィン、オメガ-コノトキシン、オメガ-アガトキシンが含まれる。
【0065】
β遮断薬の非限定的な例には、プロプラノロール、アテノロール、アセブトロール、アルプレノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ブニトロロール、カルテオロール、セリプロロール、ヘドロキサロール(hedroxalol)、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール(mepindolol)、メチプラノール(methypranol)、メチンドール(metindol)、メトプロロール、メトリゾラノロール(metrizoranolol)、オクスプレノロール、ピンドロール、プラクトロール、ソタロールナドロール、チプレノロール、トマロロール(tomalolol)、チモロール、ブプラノロール、ペンブトロール、トリメプラノール(trimepranol)が含まれる。
【0066】
アンギオテンシンII受容体アンタゴニストの非限定的な例には、サララシンが含まれる。
【0067】
ACE阻害剤の非限定的な例は、カプトプリル、ゾフェノプリル(zofenopril)、エナラプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、ペリンドプリル、シラザプリル、ベナザプリル(benazapril)、フォシノプリル、トランドロプリル(trandolopril)である。
【0068】
タキサンの非限定的な例には、パクリタキセル、ドセタキセルが含まれる。
【0069】
アルキル化剤の非限定的な例には、ニトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素(nitrosurea)、エチレンイミン、メチルメラミン、トリアゼン類には、シクロホスファミド、イフォサミド(ifosamide)、チオテパ、メルファラン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、ストレプトゾシンが含まれる。
【0070】
免疫系を抑制する免疫抑制剤の非限定的な例には、コルチコステロイド、プリンアンタゴニスト、例えばアザチオプリン、シクロスポリン、タクロリムン(tacrolimun)、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチルが含まれる。
【0071】
ホルモンおよびホルモン受容体調節物質の非限定的な例には、インシュリン、脳下垂体成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、テストステロン、プロゲステロン、エストロゲン、レボノルゲストレル(NorplantTM)、タモキシフェン、ラロキシフェン、フルベストラントが含まれる。
【0072】
本発明において潜在的に有用である他の活性医薬成分の非限定的な例には、ビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン;白金配位錯体、例えばシスプラチン、カルボプラチン;イソフラボン、例えばゲニステイン、ホルモモネチン(formomonetin)、ダイゼイン(daidzein)、エクオル;エピドフィロトキシン(epidophylotoxins)には、例えばエトポシド、テニポシド;カンプトセシンには、例えばトポテカン、イリテカン(iritecan);葉酸アナログには、例えばメトトレキセート;ピリミジンアナログには、例えば5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シトシンアラビノシド;プリンアナログには、例えば6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、2-デオキシコホルマイシン(2-deoxycoformycin);ならびに抗アルコール中毒薬には、ジスルフィラム(AntabuseTM)が含まれる。
【0073】
以下の実施例は、本発明を実施するいくつかの具体的様式を説明するものであるが、特許請求されている発明の範囲を限定することを意図しない。同様の結果を得るために、別の材料および方法を利用しても構わない。
実施例
【実施例1】
【0074】
圧縮融合粒子の形成
圧縮融合粒子を活性医薬成分オランザピンから調製した。オランザピンは非定型抗精神病薬である。この成分は商業上の供給元(Dr. Reddy Labs, Upper Saddle River, NJ)から微粒子化型(90%の粒子の直径が< 5μm)で入手したものであった。IRペレットの作成に使用される水圧プレスの下側型押し器を、直径8 mmを有する打ち型内へ配置し、そして約30 mgのオランザピンをこの打ち型内へ加えた。上側型押し器をこの打ち型内へ配置し、手で適度な圧力を加え、活性医薬成分を打ち型中に充填し、均一に分配した。この打ち型組立て物を圧縮機中で密封し、力を25-30 mtonsに増大させ、最低でも30秒、典型的には90秒間維持した。この打ち型が8 mmの直径を有することから考えると、打ち型の面積は約0.50 cm2であり、したがって圧力は50-60 mtons/cm2であった。あるいは、1 GPaが10.197 mtons/cm2に等しいことから考えると、圧力は約5-6 GPaであった。
【0075】
30 mgの初期サンプルが直径8 mmで厚さ150 umのサンプルに圧縮されたことから考えると、圧縮サンプルの密度は約4 g/cm3であった。
【0076】
高圧圧縮により、オランザピンの「融合した」または「ガラス質の」ウエハーが生じ、これを圧縮機から取り出した。次いでこの圧縮サンプルを、約250μmの孔を有する60メッシュのふるい格子に押し通し、おおよそ立方体様の粒子を得た。
【実施例2】
【0077】
PVAポリマーコーティングの形成
分子量が124,000-186,000の範囲であるポリビニルアルコール(PVA)を入手した。過剰のPVAを水中65℃で加熱した。冷却後、このPVA溶液をデカンテーションし、上記のように調製したコア粒子と混合した。このコア粒子をPVA溶液のビーカー中で数秒間撹拌し、直径9 cmのブフナー漏斗中、#42の濾紙(Whatman, Inc., Clifton, NJ)上へ減圧ろ過した。コーティングされたコア粒子を保持しているこの濾紙を時計皿へ移し、155℃または165℃で10分間乾燥した。このプロセスを4-5回繰り返した。
【実施例3】
【0078】
溶解試験
商業上の供給元(Dr. Reddy Labs, Upper Saddle River, NJ)から入手した微粒子化オランザピン(90%の粒子の直径が< 5μm)の溶解を、上記のように調製したオランザピンの被覆微粒子の溶解と比較した。
【0079】
粉末溶解試験を25℃の蒸留水中で実施した。水25 ml中のこの粉末のサンプル2-3 mgは約1分の時点で50%溶解し、そして2.5分のうちに完全に溶解した。
【0080】
また、被覆した微粒子の溶解試験を25℃の蒸留水中で実施した。サンプル2-3 mgを水25 ml中に入れた。微粒子を溶液で完全に覆った。5日間24時間毎に、上澄液5 mlを注意して取り出し、新鮮な溶媒と交換し、バッファーとの混合を回避して、生理的に「沈んでいる(sink)」条件をシミュレートした。図1は、被覆した微粒子からの活性医薬成分の経時的放出に関するデータを表す。この図に示されるように、放出速度は数日にわたって実質的に一定または疑似ゼロ次であった。PVA被覆した微粒子からの放出速度は、より低温で乾燥したものほど大きかった。このことは、乾燥温度によって浸透性および放出速度を変化させることができることを示す。
【実施例4】
【0081】
活性医薬成分の安定性
コア粒子またはポリマーコーティングの形成が活性医薬成分を変化させ、あるいは分解するかどうかを決定するために、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用した。可変波長の検出器を備えたHP 1050 HPLCシステムクロマトグラフ(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)をシリカHPLCカラム(Grace Vydac, inc., Columbia, MD, Product #101TP54)とともに使用した。このカラムは、順相(非結合型)、孔サイズ300Å、粒子サイズ5μm、4.6 mm x 250 mmであった。注入容量は20μlであり、流速は25℃(周囲)で1.0 ml/分であった。ポンプは定組成モード(isochratic mode)で操作し、溶出時間(post time)は3.0分であり、254 nmで吸光度を測定した。移動相は50:50のクロロホルム:イソオクタンであった。
【0082】
サンプルは上記溶解試験から採取した。HPLC分析の実施により、本発明の被覆した微粒子由来のオランザピンの純度を確認し、また分解産物が存在しないことを確認した。
【実施例5】
【0083】
インビボ実験
活性医薬成分ニフェジピン(カルシウムチャネル遮断薬)、カルバマゼピン(抗てんかん薬)、シクロスポリン(免疫抑制剤)、シプロフロキサシン(抗生物質)を本発明の方法に従う圧縮サンプルとして調製した。各事例で、活性医薬成分30-40 mgのサンプルを、約5-6 GPaという非常に高圧の圧縮に付して、圧縮サンプルを作成した。この圧縮サンプルの寸法は直径約8 mmであり、厚さ約125-200μmであった。得られた圧縮サンプルを断片に分解し、以下に記載する動物への投与に適切な量を秤量した。
【0084】
初期サンプル30-40 mgが直径8 mm、厚さ150μmのサンプルに圧縮されたことを考えると、この圧縮サンプルの密度は約3.9-5.3 g/cm3であった。
【0085】
各活性医薬成分用に、雄性Sprague-Dawleyラット3-5匹の頸静脈を通してカニューレを挿入し、静脈確保(venous access)を可能にした。ケタミン(60 mg/kg)およびメデトミジン(0.3 mg/kg)の組み合わせを腹腔内投与して全身麻酔した後に、ラットの背部を剃毛し、長さ約6 mmの切開を皮膚に施した。先が鈍いはさみを用いて皮下組織を広げ、6 mg/kgの圧縮サンプルを切開部位から約5 mmの皮下組織内へ入れた。切開をステープルで閉じ、抗生物質を局所適用した。
【0086】
定期的に約2週間、カニューレを通して静脈サンプルを採取し、活性医薬成分の血漿レベルを測定した。このアッセイは約1 ng/mlの感度を有するものであった。
【0087】
すべての動物において埋入部位の組織学的検査を実施した。動物は健康を維持し、また正常に体重が増加しているようであった。埋入部位の死後組織学的検査によれば、局所毒性、組織反応、または感染の証拠は認められなかった。
【0088】
図2はニフェジピンに関する結果を示し、図3はカルバマゼピンに関する結果を示し、図4はシクロスポリンに関する結果を示し、図5はシプロフロキサシンに関する結果を示す。概してこれらの結果は、微粒子の標準的な医薬製剤よりも、より一定速度の放出を示す。
【0089】
等価な態様
本発明をその特定実施態様に関して具体的に示し、説明してきたが、この場合、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の思想および範囲から逸脱することなく、形式および詳細に関して種々の変更を施してよいことは当業者の理解するところである。当業者であれば、本明細書中で具体的に記載されている本発明の特定実施態様に等価な多数の態様を認識し、あるいは定型的に過ぎない実験を用いて確認することができる。このような等価な態様は、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0090】
以下の図面は本発明の実施態様を説明するものであり、特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図1】図1は、持続放出期間にわたる、本発明の被覆した微粒子からの活性医薬成分オランザピンのインビトロ放出に関するデータを示す。
【図2】図2は、持続放出期間にわたる、本発明の圧縮融合微粒子を含む圧縮サンプルからの活性医薬ニフェジピンのインビボ放出に関するデータを示す。
【図3】図3は、持続放出期間にわたる、本発明の圧縮融合微粒子を含む圧縮サンプルからの活性医薬カルバマゼピンのインビボ放出に関するデータを示す。
【図4】図4は、持続放出期間にわたる、本発明の圧縮融合微粒子を含む圧縮サンプルからの活性医薬シクロスポリンのインビボ放出に関するデータを示す。
【図5】図5は、持続放出期間にわたる、本発明の圧縮融合微粒子を含む圧縮サンプルからの活性医薬シプロフロキサシンのインビボ放出に関するデータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性医薬成分を含む圧縮融合粒子の医薬製剤の製造方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)結晶性または無定形の活性医薬成分を含むサンプルを提供する段階;
(b)0.1 GPa〜10 GPaの範囲の圧力での高圧圧縮にサンプルを付して、圧縮サンプルを作成する段階;および
(c)圧縮サンプルから圧縮融合粒子を単離する段階。
【請求項2】
圧力が0.5 GPa〜7.5 GPaの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧力が1 GPa〜5 GPaの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
作成された圧縮融合微粒子が1 g/cm3〜40 g/cm3の範囲の密度を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
作成された圧縮融合微粒子が2 g/cm3〜20 g/cm3の範囲の密度を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
作成された圧縮融合微粒子が4 g/cm3〜10 g/cm3の範囲の密度を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
圧縮サンプルが25μm〜400μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
圧縮サンプルが50μm〜200μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
圧縮サンプルが100μm〜150μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
圧力を30秒〜10分の範囲の期間維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
圧力を60秒〜5分の範囲の期間維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
圧力を90秒〜3分の範囲の期間維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
圧縮融合粒子が20μm〜800μmの範囲の最大寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
圧縮融合粒子が40μm〜400μmの範囲の最大寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
圧縮融合粒子が100μm〜250μmの範囲の最大寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
圧縮サンプルから圧縮融合粒子を単離する段階が、20μm〜800μmの範囲の排除限界を有するふるいを通して圧縮サンプルをふるい分けすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
圧縮サンプルから圧縮融合粒子を単離する段階が、40μm〜400μmの範囲の排除限界を有するふるいを通して圧縮サンプルをふるい分けすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
圧縮サンプルから圧縮融合粒子を単離する段階が、100μm〜250μmの範囲の排除限界を有するふるいを通して圧縮サンプルをふるい分けすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
活性医薬成分を含む微粒子化粒子をサンプルが含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
活性医薬成分を含む圧縮融合粒子の医薬製剤であって、0.1 GPa〜10 GPaの範囲の圧力での高圧圧縮に付された活性医薬成分を含む圧縮融合粒子の医薬調整物。
【請求項21】
圧力が0.5 GPa〜7.5 GPaの範囲である、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項22】
圧力が1 GPa〜5 GPaの範囲である、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項23】
作成された圧縮融合微粒子が1 g/cm3〜40 g/cm3の範囲の密度を有する、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項24】
作成された圧縮融合微粒子が2 g/cm3〜20 g/cm3の範囲の密度を有する、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項25】
作成された圧縮融合微粒子が4 g/cm3〜10 g/cm3の範囲の密度を有する、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項26】
圧縮融合粒子が20μm〜800μmの範囲の最大寸法を有する、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項27】
圧縮融合粒子が40μm〜400μmの範囲の最大寸法を有する、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項28】
圧縮融合粒子が100μm〜250μmの範囲の最大寸法を有する、請求項20に記載の医薬製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−521287(P2006−521287A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510070(P2005−510070)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041392
【国際公開番号】WO2004/058222
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505226345)エスティ.ジェイムス アソシエイト エルエルシー/フェイバー リサーチ シリーズ (3)
【Fターム(参考)】