説明

医薬送達製剤、デバイス及び方法

噴射剤と少なくとも一つの医薬的に活性な化合物を含んでなる医薬組成物、並びにそれを使用するデバイス、方法と系が開示される。該噴射剤は、少なくとも2個の、しかし7個より少ない炭素原子を有する、少なくとも一つの、フルオロオレフィンを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、医薬送達組成物、系、デバイス及び方法に関する。特別な側面において、本発明は、医薬の肺、鼻腔、口腔又は局所投与に関連して使用されているもののような医薬的エアゾール製剤、方法及びデバイスに関する。
【0002】
発明の背景
定量投与式吸入器(MDI)は、気管支拡張剤及びステロイドのような医薬を、治療を必要とする患者の領域に送達するために長く使用されてきた。気管支拡張剤の経口投与と比較して、MDIを使用する吸入治療は、しばしば作用の比較的早い開始と比較的低い全身性副作用の事例の利益を有する。
【0003】
一般的に、MDIは、本明細書中で時に“標的領域”と呼ばれる治療を必要とする領域又は諸領域への医薬の運搬を補助する噴射剤の推進力に依存する。噴射剤は、これまで、一般に、所望の推進力を生じるために必要な蒸気圧を有し、一方同時に医薬製剤の安定性を与えるように選択される液化クロロフルオロカーボン(CFC)の混合物を含んでなっていた。テトラクロロメタン(CFC−11)、トリクロロフルオロメタン(CFC−12)及び1,2ジクロロテトラフルオロエタン(CFC−114)のようなメタン系列及びエタン系列のCFCが、吸入投与のためのエアゾール製剤中の噴射剤として一般に使用されてきた。
【0004】
CFCの使用は環境的な欠点を有する。CFCが地球周囲のオゾン層と反応する傾向があり、そしてこれによってある程度の水準のオゾンの破壊となることがいまや知られている。結果として、各国の政府と国際機関が、CFCの使用を減少又は排除するための努力に関与している。MDIに関連して使用されているCFCの量は、冷媒及び発泡剤のような他の使用と比較して低いと考えられる。しかしながら、潜在的なオゾン破壊の利益は、MDIと他の医薬送達系からCFCを減少又は排除することによって達成することができる。
【0005】
塩素を含有する化合物(クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)等のような)によって起こされる地球のオゾン層への潜在的な損傷のために、従って減少したオゾン破壊の潜在性を持つ代替物を提供する新しいフルオロカーボンとヒドロフルオロカーボン化合物及び組成物に対する増加する必要性が存在する。例えば、塩素を含有する噴射剤を、ヒドロフルオロカーボン(HFC)のようなオゾン層を破壊しないものである塩素を含有しない化合物と置換える努力が行われている。
【0006】
Purewal等の米国特許第5,776,434号は、CFCのオゾン破壊問題を認識し、そして医薬的エアゾール製剤のための噴射剤として、塩素を含有しない化合物、即ち、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(本明細書中で時にHFA−134a又はHFC−134aと呼ばれる)の使用を、界面活性剤と1,1,1,2−テトラフルオロエタンより高い極性を有するアジュバントとの組合せで使用する場合に提案している。しかしながら、1998年に、国際化学物質安全性計画(International Programme on Chemical Safety)(IPCS)は、Concise International Chemical Assessment Document (No.11)を刊行し、1,1,1,2−テトラフルオロエタンが、有意な地球温暖化の潜在性を有することを示した。
【0007】
HFC−227ea(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)も、MDI中のCFCのための低オゾン破壊潜在性の代替物として提案された。しかしながら、この化合物も更に有意な地球温暖化の潜在性を有する。
【0008】
米国特許第6,111,150号は、クロロフルオロ−置換及びフルオロ−置換のプロペンを、“医薬の中間体としてとして有用…”であるとして記載している(第2欄、I.4)。しかしながら、MDI又はMDI中で使用される他の噴射剤のいずれかの開示或いは示唆はない。米国特許第3,723,318号と3,884,826号は、それぞれエアゾール噴射剤及び冷媒に関連するトリフルオロプロペンの使用を記載しているが、しかしこれらの特許中にMDIに関する開示又は示唆はなく、更にエアゾールとしての又はMDIに関連したテトラフルオロプロペンの使用に関するいずれかの開示或いは示唆もない。
【0009】
臭素を含有するハロカーボン添加剤が、エアゾール噴射剤を含む多くの物質の燃焼性を減少するための努力に関連して使用するためにTapscottの米国特許第5,900,185号中で示唆されている。この特許に記載されている添加剤は、高い効率と短い大気中の寿命、即ち低いオゾン破壊係数(ODP)と低い地球温暖化係数(GWP)によって特徴づけられると記述されている。この特許は、このような化合物の約0.1乃至約20重量パーセントの量の使用を開示している。
【0010】
Topscottに記載されている臭素化されたオレフィンは、ある種の物質に関連する難燃剤としての使用に関連するある水準の有効性を有するが、このような物質のエアゾール又は噴射剤としての使用の開示はない。更にこのような化合物が、ある種の不利益を有することも更に考えられる。例えば、本発明者等は、Topscott中で規定された多くの化合物が、このような化合物の比較的高い分子量のために発泡剤として比較的低い効率を有するものであることを認識することとなった。更に、Tapscott中で開示された多くの化合物が発泡剤として使用された場合、このような化合物の比較的高い沸点のために問題に遭遇するものであることが考えられる。更に、高い水準の無意味な置換を有する多くの化合物が、好ましくない毒性の特性及び/又は潜在的に環境的に好ましくない生体内蓄積のような他の好ましくない特性を保有することができることを本発明者等は理解している。
【0011】
従って、本発明者等は、比較的低いオゾン破壊係数と比較的低い地球温暖化係数を一度に提供する医薬送達のための化合物、組成物、系、デバイスと方法に対する必要性を認識している。更に、本発明者等は、その中に含有される噴射剤のいずれかを含む組成物のいずれかが、更に医薬の安定性、低又は無毒性と医薬送達系の他の成分との適合性のような医薬の効力を確保する特性も保有しなければならないことを認識している。
【0012】
概要
本発明者等は、噴射剤と少なくとも一つの医薬的に活性な化合物を含んでなり、該噴射剤が該医薬的に活性な化合物に対して医薬的に受容可能な担体であり、そして少なくとも2個の、しかし7個より少ない、好ましくは6個より少ない、そしてなお更に好ましくは5個より少ない炭素原子を有する少なくとも一つのフルオロオレフィン、好ましくはヒドロフルオロオレフィンを含んでなる医薬組成物によって、そしてそれを使用するデバイス、方法及び系によって従来の組成物の欠点の多くを克服することができ、及び/又は上述の必要性の多くを満足することができることを見出した。本明細書中で使用される場合、用語、医薬的に受容可能な担体は、医薬的に活性な化合物の意図する受容者にとって少なくとも実質的に有害ではない物質を指す。本明細書中で使用される場合、用語、フルオロオレフィンは、少なくとも炭素とフッ素を、そして少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を含んでなる有機化合物を意味し、他の置換基は所望により存在していてもよい。本明細書中で使用される場合、用語ヒドロフルオロオレフィンは、炭素、水素とフッ素を、そして少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を含んでなる有機化合物を意味し、他の置換基は所望により存在していてもよいが、ある好ましい態様においては塩素は存在しない。本明細書中で使用される場合、用語“医薬”と“医薬”、等は、疾病、傷害又は他の病気、及び/又は疼痛又はこれらの他の徴候の治癒、治療又は軽減、及び/又はこれらの診断の特性を有するか或いは少なくとも有すると考えられているいずれかの、そしてすべての材料又は物質を指すためのその通常の広い意味で使用され、このようなものは例えば薬物と生物学的に活性な物質を含むものである。従って、用語“医薬的に活性な化合物”は、有効であるか或いは少なくとも医学的な意味で有効であると考えられる化合物又は化合物の組合せを指すために本明細書中で使用される。
【0013】
ある好ましい態様において、本発明のフルオロオレフィンは、一つ又はそれより多い以下のとおりの式I:
XCF3−z (I)
[式中、Xは、C又はCの不飽和の置換された又は置換されていないアルキルラジカルであり、それぞれのRは、独立にF、Br、I、Cl又はHであり、そしてzは、1乃至3であるが、一般的にRがClであることは好ましくない]
の化合物を含んでなり、好ましくは大部分それを含んでなり、そしてなお更に好ましくは本質的にそれからなる。好ましい態様において式Iの化合物は、テトラフルオロプロペン、更に好ましくは1,1,1,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)及び/又は1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)である。用語、HFO−1234zeは、それがcis−又はtrans−型のどちらであるかに関係なく、1,1,1,3−テトラフルオロプロペンを一般的に指すために本明細書中で使用される。用語“cisHFO−1234ze”と“transHFO−1234ze”は、それぞれ1,1,1,3−テトラフルオロプロペンのcis−とtrans−型を記載するために本明細書中で使用される。従って“HFO−1234ze”は、その範囲にcisHFO−1234ze、transHFO−1234zeと、これらのすべての組合せ及び混合物を含む。ある好ましい態様において、組成物は、1,1,1,3−テトラフルオロプロペンのtrans−異性体を含んでなる。
【0014】
本発明の好ましい態様のあるものにおいて、噴射剤は、大気の化学に実質的な負の影響を有しない。更に具体的には、好ましい態様において、本発明の噴射剤は、これまで一般にに使用されているハロゲン化された種のいくつかと比較してオゾン破壊に対して非常に低い又は無視できる寄与を有する。従って好ましい組成物は、オゾン破壊に実質的に寄与しない利益を有する。好ましい組成物は、更に一般に使用されている多くのヒドロフルオロアルカンと比較して地球温暖化にも実質的に寄与しない。
【0015】
図面の簡単な説明
本発明は、ここに付属する図面を参照して説明されるものであり、図1は、本発明の一つの態様による吸入器の断面図を表す。
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
I.組成物
本発明の組成物を、広い範囲の形態で使用することができ、そして全てのこのような形態が、本発明の広い範囲内であることは意図されている。一般的に、本発明の組成物が、治療を必要とするヒト又は他の哺乳動物上若しくはそれら内の特定の部位への、或いは治療又は診断が身体の他の領域で必要である場合でも、身体への導入のために好ましい場所である部位への送達のために適した形態であることが好ましい。例えば、本発明の好ましい組成物は、口、鼻、耳及び/又は他の粘膜を経由する或いは経皮的適用による送達のために一般的に十分に適合される。従って、本発明の化合物を、肺中で起こった疾患の治療のために、或いは他の場所の疾患を治療するために使用者の系(例えば血流)中に医薬を導入するための機構として、肺に送達することができる。
【0017】
噴射剤の量に対して存在する医薬的化合物の量は、本発明によって広く変化することができ、そしてもちろんすべてのこのような比率が、医薬的に活性な薬剤の全量が治療的に有効であるか、或いは少なくとも医薬を処方する医師と他の専門家によって治療的に有効であると信じられていることを条件として、本発明の範囲内の使用のために適合されると考えられる。しかしながら、ある好ましい態様において、本発明の組成物は、少なくとも50重量%、そしてなお更に好ましくは約60%乃至約99重量%又はそれより多い噴射剤を、組成物の全重量基準で含んでなる。更に、ある態様において、特定の医薬、処方された投与量と他の多くの因子によって、より少ない又はより多い量を使用することができることは認識されることであるが、組成物が、約0.01%乃至約0.5重量%の医薬的に活性な化合物を含んでなることが好ましい。
【0018】
A.医薬的に活性な化合物
本発明の医薬的に活性な化合物が、広い範囲の形態で存在することができることは意図されているが、多くの態様において、医薬的に活性な薬剤又は化合物が、溶液、分散物、懸濁液、乳液、等の一部であることが好ましい。本明細書中で以下に更に詳細に説明されるように、本発明の医薬的化合物は、医薬的化合物の安定な実質的に均一な分散物、懸濁液、等の形成のために微細な球形の形態が一般的に好ましいが、各種の大きさと他の物理的特性を有する粒子としてしばしば存在する。更にある態様において、二つ又はそれより多い医薬的に活性な物質が本発明の組成物中に含まれ、そしてなお更なる態様において、少なくとも一つの該医薬的に活性な物質が液相中に溶解された形態で存在し、及び/又は少なくとも一つの他の該医薬的に活性な物質が流体、好ましくは液相中に懸濁した形態で存在することは認識されるものである。
【0019】
ある態様において、本発明の医薬的化合物は、好ましくは微細化された又は微粒子の形態で使用される。このような形態は、好ましくは比較的中空の、そして多孔質の形態を示し、そして、好ましくは約10ミクロンより大きくない、しかし好ましくは約5ミクロンより小さい質量平均空力学的直径(mass average aerodynamic diameter)(MAAD)を有する。この種類の医薬的化合物は、多くのMDI適用において使用するために好ましい。このような微粒子の医薬的化合物の、本発明の噴射剤成分との使用は、特に安定な、そして有効な組成物を製造すると考えられる。
【0020】
多くの医薬組成物、特にMDIに関連して使用するために適合されたものに伴う一つの問題は、医薬的に活性な化合物の個々の粒子が塊りになる傾向があることである。本明細書中で以下に詳細に記載されるように、本発明のある態様は、この及び他の種類の好ましくない変化に対して組成物を安定化する一つ又はそれより多いアジュバントを含む。更に、これに関するある態様は、分散された成分間の引力を減少し、そして密度の差を減少するように粒子の形態を使用及び/又は変更し、これによって凝結、沈降又はクリーム化による懸濁液、分散物、等の分解を遅延させることによって、組成物の安定性を向上する。ある態様におけるこのような向上は、MDIによる均一な用量の送達を容易にすることができ、そして更に濃縮された分散物を可能にする。このような好ましい態様において、少なくとも実質的な部分の、そして好ましくは大部分の医薬的に活性な粒子がファンデルワールス力のような引力を実質的に減少する中空及び/又は多孔質の穿孔された微小構造を有する。特定の動作理論のいずれかによって又はそれに束縛されることなく、周囲の流体又は懸濁媒体(これは一般的に本発明の噴射剤を含む)によって浸透或いは満たされている穿孔された(又は多孔質の)微細構造又は微小球の使用は、粒子間の分裂的な引力を有意に減少すると信じられる。更に分散物の成分は、分極率の差(即ち減少されたハーマーカー定数の差)を最小にし、そして製剤を更に安定化するように選択することができる。ある好ましい態様において、本発明の分散物は、粒子間の密度のわずかな差のみを伴った実質的に均質なものであり、好ましくは穿孔された微細球と懸濁媒体によって規定される。このような穿孔された微細球は、参照により本明細書に組込まれる米国特許第6,638,495号中に開示されている。
【0021】
医薬的化合物又は薬剤の特定の種類に関して、治療的と診断的薬剤のいずれかを、本発明の組成物、好ましくは本発明の分散物に組込むことができることを当業者は認識するものである。例えば、医薬的化合物は、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、気管支収縮剤、肺の肺胞界面活性物質、鎮痛剤、抗体、ロイコトリエン阻害剤又はアンタゴニスト、抗コリン剤、肥満細胞阻害剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗悪性腫瘍剤、麻酔剤、抗結核剤、造影剤、心血管治療剤、酵素、ステロイド、コルチコステロイド、短時間作用性ベータ−アゴニスト、長時間作用性ベータ−アゴニスト、遺伝子物質、ウイルス性ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチド、抗喘息薬物、及びこれらのいずれか二つ又はそれより多い組合せからなる群から選択することができる。本発明によって使用するために特に好ましい医薬剤は、吸入療法による喘息と慢性閉塞性肺炎(COPD)のような呼吸器疾患の治療において使用するための抗アレルギー剤、ペプチドとタンパク質、気管支拡張剤並びに抗炎症ステロイドを含む。
【0022】
例示的な医薬又は生理活性薬剤は、例えば、鎮痛剤例えばコデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニル、又はモルヒネ;狭心症製剤例えばジルチアゼム;肥満細胞阻害剤例えばクロモリンナトリウム;抗感染剤例えばセファロスポリン、マクロライド、キノリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリンとペンタミジン;抗ヒスタミン剤例えばメタピリレン;抗炎症剤例えばプロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、フランカルボン酸モメタゾン、トリペダン(tripedane)、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン(prednisilone)、デキサメタゾン、ベタメタゾン、又はトリアムシクロンアセトニド;鎮咳剤例えばノスカピン;気管支拡張剤例えばエフェドリン、エピネフリン、アドレナリン、フェノテロール、ホルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、サルブタモール(アルブテロール)、キシナホ酸サルメテロール、テルブタリン;利尿剤例えばアミロライド;抗コリン剤例えば臭化イプラトロピウム、チオトロピウム、アトロピン、又はオキシトロピウム;肺胞界面活性物質例えばSurfaxin、Exosulf、Survanta;キサンチン例えばアミノフィリン、テオフィリン、カフェイン;治療用タンパク質とペプチド例えばDNアーゼ、インスリン、グルカゴン、LHRH、ナファレリン、ゴセレリン、リュープロリド、インターフェロン、rhu IL−1受容体、リンフォカインとムラミルジペプチドのようなマクロファージ活性化因子、エンケファリン(enkaphalins)、エンドルフィン、レニン阻害剤、コレシストキニン、DNアーゼ、成長ホルモン、ロイコトリエン阻害剤等のようなオピオイドペプチドとニューロペプチド、から選択することができる。更に、RNA又はDNA配列を含んでなる生理活性薬剤、特に遺伝子療法、遺伝子的ワクチン接種、遺伝子的耐性化、又はアンチセンスの適用のために有用なものは、本明細書中に記載されたような開示された分散物中に組込むことができる。代表的なDNAプラスミドは、pCMVベータ(Genzyme Corp, Framington, Mass.から入手可能)とpCMV−ベータ−gal(酵素ベータ−ガラクトシダーゼをコードするE.coli Lac−Z遺伝子に連結されたCMVプロモーター)及び二つ又はそれより多いこれらの組合せを含む。多くの好ましい態様において、少なくとも二つの異なった医薬的に活性な化合物が組合せで組成物中に含まれる。
【0023】
B.噴射剤
好ましい態様において、本発明の噴射剤の主たる機能の一つは、医薬的化合物の所望の部位への送達を助ける運動エネルギーの源を提供することである。MDIは、例えば一般的にその製造において使用された噴射剤系の推進力に依存する。噴射剤系は、好ましくは所望の蒸気圧を提供するだけでなく、更に少なくとも分解せず、そして好ましくは懸濁液の安定性を向上する。本発明の噴射剤系が、可溶化された又は懸濁された薬剤を送達するために使用することができ、及び/又は、好ましい態様において、選択された医薬的化合物を分散物を与える微細な粒子の形態で送達するために使用することができるということが意図されている。従って、本発明のある好ましい態様において、噴射剤は、更に一つ又はそれより多い本発明の医薬的化合物を保持及び/又は溶解及び/又は懸濁するために貢献する。
【0024】
本発明において使用するための好ましい化合物に関して、噴射剤は、少なくとも一つのフルオロオレフィン、好ましくは3ないし4個の炭素原子、好ましくは3個の炭素原子を含有するヒドリフルオロオレフィンを含んでなり、好ましくは本質的にそれからなり、そしていくつかの好ましい態様においてはそれからなる。本発明のヒドロフルオロオレフィン化合物は、本明細書中で便宜上の目的のために、これらが少なくとも1個の水素、少なくとも1個のフッ素を含有し、そして塩素を含有しない場合、時に“HFO”と呼ばれる。本発明のある種のHFOが二つの炭素−炭素二重結合を含有することができることは意図されているが、このような化合物は、現時点では好ましいとは考えていない。
【0025】
先に記述したように、本発明の化合物は、好ましくは一つ又はそれより多い式Iによる化合物を含んでなる。好ましい態様において、組成物は、以下の式II:
【0026】
【化1】

【0027】
[式中、それぞれのRは、独立にF、Br、I、Cl又はHであるが、好ましくはClではない
R’は、(CRYであり
Yは、CRFであり
そしてnは、0又は1である]
の化合物を含む。
【0028】
非常に好ましい態様において、YはCFであり、nは0であり、そして残りのRの少なくとも一つはFである。
本発明者等は、一般的に先に定義した式IとIIの化合物が、本明細書中で記載したような医薬的化合物中の噴射剤として、特にエアゾール組成物に関連して一般的に有効であると考えている。しかしながら、本発明者等は、驚くべきことに、そして予期せずに先に記載した式による構造を有するある種の形態の化合物が、他のこのような化合物と比較して非常に好ましい低い水準の毒性を示すことを見出した。容易に認識することができるように、薬理学的に、そして医学的に受容可能な賦形剤は、一般的に実質的な水準の毒性を有してはならないために、この発見は、医薬組成物の処方にとって潜在的に莫大な、そして決定的な重要性を持つものである。更に特に、本発明者等は、相対的に低い水準の毒性が、式中、好ましくはYがCFであり、不飽和の末端炭素上の少なくとも一つのRがHであり、そして残りのRの少なくとも一つがFである式IIの化合物と関連していると考えている。本発明者等は、更にこのような化合物のすべての構造、幾何及び立体異性体も有効であり、そして有利に低い毒性であると考える。
【0029】
非常に好ましい態様、特に先に記述した低い毒性の化合物を含んでなる態様において、nはゼロである。ある非常に好ましい態様において、本発明の組成物は、一つ又はそれより多いテトラフルオロプロペンを含んでなり、そしてある態様においては本質的にそれからなる。先に記述したように、用語“HFO−1234”は、すべてのテトラフルオロプロペンを指すために本明細書中で使用される。テトラフルオロプロペンの中で、HFO−1234yfは、多くの態様において特に好ましい。cis−とtrans−の形態のHFO−1234zeも、ある種の態様において好ましいものであることができる。更に先に記述したように、用語、HFO−1234zeは、それがcis−又はtrans−の形態であるか否かに関わらず、1,1,1,3−テトラフルオロプロペンを一般的に指すために本明細書中で使用され、そして用語“cisHFO−1234ze”と“transHFO−1234ze”は、それぞれcis−とtrans−の形態の1,1,1,3−テトラフルオロプロペンを記載するために本明細書中で使用される。
【0030】
ある好ましい態様において、HFO−1234zeは、transHFO−1234zeとcisHFO−1234zeの組合せを、そして更に好ましくは全HFO−1234ze基準で約90%乃至約99%のtransを、同一基準で約1%乃至約10%を構成するcis異性体を伴って含んでなる。従ってある態様において、本発明の噴射剤組成物は、cisHFO−1234zeとtransHFO−1234zeの組合せを、好ましくは約1:99乃至約10:99、更に好ましくは約1:99乃至約5:95、そしてなお更に好ましくは約1:99乃至約3:97のcis:transの重量比で含んでなる。
【0031】
cisHFO−1234zeとtransHFO−1234zeの特性は、少なくともいくつかの側面において異なるが、それぞれのこれらの化合物が、単独で又はその立体異性体を含む他の化合物と一緒のいずれかで、それぞれの適用、方法、系とデバイスに関連して使用するために適合されることは意図されている。例えば、transHFO−1234zeは、その比較的低い沸点(−19℃)のために、ある種の系において使用するために好ましいものであることができるが、しかしながら+9℃の沸点を持つcisHFO−1234zeも更に本発明に関連した用途を有することは意図されている。従って、用語“HFO−1234ze”と1,1,1,3−テトラフルオロプロペンが両方の立体異性体を指し、そしてこの用語の使用が、cis−とtrans−の形態のそれぞれが、他に示されない限り、記述した目的のために適用され及び/又は有用であることを示すことを意図することは理解されることである。
【0032】
HFO−1234化合物は、既知の物質であり、そしてケミカルアブストラクトのデータベースに収載されている。CFCH=CHのようなフルオロプロペンの、各種の飽和と不飽和のハロゲンを含有するC化合物の触媒的気相フッ素化による製造は、そのそれぞれが参照により本明細書に組込まれる米国特許第2,889,379号;4,798,818号と4,465,786号中に記載されている。更に参照により本明細書に組込まれるEP974,571は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を、気相でクロム基剤の触媒と高温で、又は液相でKOH、NaOH、Ca(OH)又はMg(OH)のアルコール溶液と接触させることによる、1,1,1,3−テトラフルオロプロペンの製造を開示している。更に、本発明による化合物を製造するための方法は、参照により本明細書に組込まれる弁護士ドケット番号(H0003789(26267))を有する“Process for Producing Fluoropropenes”の表題の同時係属中の米国特許出願に関連して一般的に記載されている。
【0033】
本発明の組成物、特にHFO−1234(HFO−1234yfとHFO−1234zeを含む)を含んでなるものは、多くの重要な理由について有利である特性を有すると考えられる。例えば、本発明者等は、少なくとも一部数学的モデルに基づいて、本発明のフルオロオレフィンが大気の化学に実質的な負の影響を有せず、いくつかの他のハロゲン化された種と比較してオゾン破壊にほとんど寄与しない物質であると考える。従って、本発明の好ましい組成物は、オゾン破壊に対して実質的に寄与しないという利益を有する。好ましい組成物は、更に現在使用中の多くのハロゲン化された分子と比較して、地球温暖化に対しても実質的に寄与しない。
【0034】
ある好ましい形態において、本発明の組成物は、約1000より大きくない、更に好ましくは約500より大きくない、そしてなお更に好ましくは約150より大きくない地球温暖化係数(GWP)を有する。ある態様において、本発明の組成物のGWPは、約100より大きくなく、そしてなお更に好ましくは、約75より大きくない。本明細書中で使用される場合、“GWP”は、参照により本明細書に組込まれる、“The Scientific Assessment of Ozone Depletion, 2002, a report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project”中で定義されているように、二酸化炭素のそれに対して、そして100年の時間範囲にわたって測定される。
【0035】
ある好ましい形態において、本発明の組成物は、更に、好ましくは0.05より大きくない、更に好ましくは0.02より大きくない、そしてなお更に好ましくは約0のオゾン破壊係数(ODP)も有する。本明細書中で使用される場合、“ODP”は、参照により本明細書に組込まれる、“The Scientific Assessment of Ozone Depletion, 2002, a report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project”中で定義されているとおりである。
【0036】
本発明の組成物の噴射剤成分中に含有されるフルオロオレフィン、特に式Iの化合物、そしてなお更に特にHFO−1234の量は、組成物のそれぞれの特別な使用に関連する多くの因子によって広く変化することができ、そして痕跡の量より多く、そして100%までの量の化合物を含んでなる噴射剤が本発明の広い範囲内にある。更に、本発明の組成物は、共沸、共沸様又は非共沸であることができる。好ましい態様において、本発明の組成物は、HFO−1234を、好ましくはHFO−1234zeを、約5重量%乃至約99重量%、そしてなお更に好ましくは約5%乃至約95%の量で含んでなる。
【0037】
フルオロオレフィンではなく、そして特に式(I)によらない多くの化合物は、本発明のこのような化合物と組合わせて噴射剤を形成することができ、そしてすべてのこのような化合物の存在は、本発明の広い範囲内である。ある好ましい態様において、本発明の組成物は、フルオロオレフィン、好ましくは式(I)の化合物、そしてなお更に好ましくはHFO−1234zeに加えて、一つ又はそれより多い、他のヒドロフルオロアルケン、並びにヒドロフルオロアルカン、フルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、フルオロカーボン/炭化水素二元ブロック、炭化水素、アルコール及びエーテルを含む。
【0038】
ある好ましい態様において、本発明の噴射剤は、一つ又はそれより多い式(I)の化合物を、全噴射剤の重量に基づいて、約1重量パーセント乃至約99重量パーセントの量で、そして一つ又はそれより多い、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、例えばヒドロフルオロエタン(例えば、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a));及びヒドロフルオロプロパン(例えば、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea))等、を含んでなる。本発明の化合物、特に式(I)の化合物と先に記述した更なる噴射剤成分、並びに本発明の組成物中に含むことができる更なる成分のいずれか(本明細書中で以下に記載される)の相対的な量は、組成物の具体的な適用に従って、本発明の幅広い範囲内で広く変化することができる。
【0039】
C.他の成分
当業者にとって既知であるように、多くの改良剤、添加物及びアジュバント、並びに他の噴射剤を、医薬組成物中に含むことができ、そしてすべてのこのような成分は、本発明の組成物と共に使用するために容易に適合されると考えられる。例えば、医薬製剤は、時に微粉化粉末と呼ばれる粉末製剤の形態でしばしば調製される。しかしながら、このような粉末は、微細な粉末間の疎水性相互作用又は静電気的相互作用のためにしばしば凝集する傾向がある。このような凝集は、本発明の組成物中に一つ又はそれより多い抗凝集剤を組込むことによって少なくとも部分的に克服することができる。本発明の組成物と共に使用するために適合可能と考えられる抗凝集剤の一つの種類は、大きい担体粒子例えば、凝集を阻害すると考えられるラクトースである。
【0040】
更に、本発明の組成物は、組成物を強化する共溶媒及び/又は界面活性剤のような一つ又はそれより多い特別な目的のアジュバントを含むことができる。本発明の組成物の多くの態様は、医薬的に活性な活性化合物と噴射剤間の相互作用によって、共溶媒及び/又は界面活性剤を必要としないものであることができる。ある態様において、共溶媒は、医薬的に活性な化合物を噴射剤中に溶解又は懸濁することを援助するために必要又は好ましいことであることができる。多くの態様のために好ましい又は必要な共溶媒の一つの重要な特質は、共溶媒が、薬理学的に許容できるということである。従って、このような態様のあるものにおいて共溶媒は、薬理学的に許容できる炭化水素、薬理学的に許容できるアルコール、薬理学的に許容できるエステル、薬理学的に許容できるエーテル、水、及びこれらのいずれか二つ又はそれより多い組合せからなる群から選択される。このような炭化水素の中で、ある態様において、組成物が一つ又はそれより多いプロパン、ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタンを含んでなることが好ましい。このようなアルコールの中で、ある態様において、組成物が一つ又はそれより多いエチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール及びグリセロールを含んでなることが好ましい。このようなエステル中で、ミリスチン酸イソプロピルをあげることができ、そしてこのようなエーテルの中で、ジメチルエーテルをあげることができる。これらのいずれものいずれか二つ又はそれより多くを、組合わせて使用することができる。もちろん、ほとんどの態様において、共溶媒又は共溶媒の組合せが、噴射剤と混和性、そしてなお更に好ましくは完全に混和性であることが一般的に好ましい。
【0041】
本発明の組成物中に使用される共溶媒の量は、医薬の特定の種類と使用される噴射剤を含む多くの因子によって広く変化することができるが、多くの態様において、組成物が約50:50ないし約99:1の噴射剤:共溶媒の重量比を有することが好ましい。
【0042】
本発明の医薬組成物が懸濁物、そして特にエアゾール懸濁物である態様において、組成物は、更に共溶媒に加えて、しかし好ましくはそれよりも界面活性剤を含む。特別な動作理論のいずれかによって又はそれに束縛されることを意図するものではないが、このような態様において、界面活性剤が粒子の凝集、粒子の容器の壁面への付着を防止しすることを助けるものであり、そして分配弁の潤滑を与えると考えられる。このような態様において、それぞれの組成物とその意図する適用の特殊性によって、より多くの量を含むことができることを当業者が認識するものであるが、存在する場合、界面活性剤が組成物の約5重量%より多くない量で組成物中にあることが一般的に好ましい。ある種の界面活性剤又は界面活性剤の組合せが、本発明の医薬組成物中に又は特に噴射剤中に完全に溶解することができないことは意図されているが、保存及び/又は使用の条件下で、噴射剤中に溶解する、そして好ましくは噴射剤中に実質的に完全に溶解する界面活性剤を使用することが一般的に好ましい。本発明の組成物中に使用される界面活性剤の量は、使用される医薬の具体的な種類と噴射剤を含む多くの因子によって、広く変化することができるが、多くの態様において、組成物が約1:100乃至10:1の界面活性剤:医薬重量比を有することが好ましい。
【0043】
本発明によって単独で又は他のもう一つのものとの組合せで使用することができる例示的な界面活性剤は、C5−C20脂肪族アルコール、C5−C20脂肪酸、C5−C20脂肪酸エステル、レシチン、グリセリド、プロピレングリコールエステル、ポリオキシエタン、ポリソルベート、ソルビタンエステル及び炭水化物を含む。受容可能な界面活性剤の更に具体的な例は、オレイン酸、モノ、ジ又はトリオレイン酸ソルビタン、及びこれらの二つ又はそれより多くの組合せを含む。
【0044】
本発明の多くの態様、特に組成物が懸濁液、乳液又は分散物の形態、そして特にこれらのエアゾールであるものは、好ましくは安定剤を含む。このような懸濁液、乳液及び分散物のための安定剤は周知であり、そしてすべてのこのような安定剤が本発明によって使用するために適合されることは意図されている。例示的な安定剤は、単独又は組合せのいずれかの塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、アスコルビン酸、クエン酸、塩化ベンザルコニウム、エチレンジアミン四酢酸、及び薬理学的に許容できるこれらの塩を含む。記述した本発明の安定剤を、これを組成物中に広く変化する量で含むことができることは意図されているが、多くの態様において、安定剤が組成物の約40乃至約100重量ppmの量で存在することが一般的に好ましい。
【0045】
先に記述したように、多くの医薬組成物は、好ましくは比較的中空の、そして多孔質の形状を示す微細粒子の形態の医薬的化合物を提供する。このような形態は、本発明の範囲内であり、そして普通にMDI中で使用される。このような微細粒子の医薬的化合物の本発明による噴射剤成分との組合せの使用は、特に安定した組成物を製造すると考えられる。
【0046】
本発明の組成物、特にHFO−1234を含んでなる又は本質的にそれからなる組成物は、不燃性の液化ガス噴射剤と地球温暖化又はオゾン破壊に実質的に寄与しないエアゾールを提供することが可能である。従ってある好ましい態様において、本発明の組成物は、非常に低い地球温暖化係数とオゾン破壊係数を有する実質的に不燃性の液化ガス噴射剤を提供する。
【0047】
本発明の組成物は、多くの形態で調製することができるが、ある態様において、組成物は、医薬的使用のためのエアゾール製品の形態である。好ましい態様のエアゾールは、少なくとも一つの本発明の噴射剤と一つ又はそれより多い活性な医薬的成分を含み、そして所望により不活性成分、安定剤、界面活性剤、他の噴射剤及び/又は溶媒を含有していてもよい。本発明の噴射剤は、エアゾール化された形態の産物を排出することに、好ましくは少なくとも寄与し、そしてなお更に好ましくはその力の実質的にすべてを提供する。本発明の好ましい態様によれば、噴射剤は、保存と使用の条件下で液化ガスである。
【0048】
II.デバイスと方法
本発明の一つの側面は、本発明の医薬組成物の送達のための、好ましくは吸入による送達のための、デバイスを提供する。ある好ましい態様において、デバイスは、容器、好ましくは加圧された本発明の医薬又は製剤を含有するエアゾールキャニスターを含んでなり、そして好ましくは非投与と投与位置間で操作可能な定量投与分配弁を有する。本発明のデバイスは、好ましくは更に操作部を含んでなる。そしてそれは、好ましい態様において、エアゾール容器を収容するために、そして、患者の口腔及び/又は鼻腔の空洞に医薬を導入するための、好ましくはマウスピース及び/又は鼻腔アダプターの形態の患者用ポートと流体連絡するチャンバーを規定するために適合されたハウジングを含んでなる。操作部は、好ましくは更に投与弁の弁棒を収容するノズルブロックを含み、ノズルブロックは、好ましくは弁棒と流体連絡する通路を含んでなり、そして弁棒からチャンバーへ医薬を導くオリフィスで終結する。
【0049】
例として、しかし制約されるものではなく、ある態様において、本発明のデバイスは、患者の吸入による空気の流れが、オリフィスの近辺において、全時間、或いは弁からの医薬の投与中のみ防止又は減少されるように構築される。このような配置のいずれかは、医薬の分配中にノズルブロックの近辺で自由な空気の流れを可能にする吸入器と比較して、放射された噴霧の速度を実質的に減少する効果を有する。
【0050】
ある態様において、操作部は、ノズルからマウスピースまでの距離が、概略1乃至15cm、好ましくは4乃至6cmであり、チャンバー/マウスピースの直径が、1乃至4cm、鼻腔アダプターの場合0.5ないし1cmであるように構築される。
【0051】
ある好ましい、しかし非制約的態様において、操作部は空気流入口を保有し、これは例えば喘息の発作中に薬物を摂取する場合患者が呼吸困難になり得るために、好ましくは患者が有意な抵抗を受けることなく患者用ポートを経由して呼吸することを可能にする。しかしながら、例えばマウスピース中の空気流入口は、これがマウスピースの空気流入口の反対側の壁面に噴霧を偏向するものである流入する空気に高い速度を与えるものであるために、好ましくは狭すぎる領域への空気の流れを収束しない。ある好ましい態様において、空気流入口は、ノズルの下流の乱流域の領域及び/又は乱流域の下流に位置する。空気流入口の配置と方向は、更にチャンバーとマウスピース内の医薬の堆積にも影響することができる。一つの配置において、空気流入口は一連の孔を含んでなり、そして所望によりチャンバーの壁面の流体偏向構造により、空気をエアゾールの流れと混合するために空気を乱流域に向けて内部分散することができる。更に、多数の微細に分割された空気口が大きい表面積にわたって空気の流れを供給できるように、マウスピースを多孔質の物質で構築することができる。
【0052】
ある態様において、操作部は、ノズルの上流又はその近辺に空気流入口を保有するが、しかし空気流入口は、弁がエアゾールの噴霧を放出するために発射された時に遮断される。空気流入口は、噴霧が放出された後に開かれ、その時点までに流れの速度は減少され、そして乱流域が形成されるものである。吸入時に空気流入口からマウスピースへの空気の流れが確立され、これは残存するエアゾールの噴霧を同伴する。操作部は、第1の態様に関して先に記載したように、ノズルの下流に更なる空気流入口を含むことができる。これらの下流の空気流入口は、エアゾールの噴霧の放出中に閉鎖する必要はない。
【0053】
ある態様において、乱流域に又はその下流に空気を導入するための多孔質の膜が存在する。このような膜の使用の一つの利益は、空気が更に均一に、そして噴霧の周囲を取巻いて分散性に導入され、これによって乱流の流れと壁面間の緩衝物として作用することである。効果はデバイス中の薬物の沈積を減少することである。膜はマウスピースの付加的部分によって埃又は使用者の唇との接触から所望により保護することができる。存在する場合、これは、多孔質膜の物質(50)がデバイスを通して吸入する患者の能力を有意に妨害してはならないことが好ましい。適した物質は、Whatmann No.4濾紙であるが;しかし円筒形空気フィルター又は膜フィルターで使用されているもののような又は焼成されたポリマーによって形成されたもののような他の物質を使用することができる。好ましい多孔質膜の物質は、ポリプロピレンの小さいペレットを一緒に溶融することによって製造された円筒の形態である。
【0054】
ある種の医薬のために、デバイスを、接触することを意図していない患者の身体の部分と医薬との間の接触を減少するように構成することが好ましい。例えば、操作部の内部表面に堆積した医薬の残留物が指に触れ、そして他の身体の部分に運搬され得る。このような場合、デバイスを、噴霧が通過することを可能にする一方、操作部の内部表面への患者による接近を制約する一つ又はそれより多い流体の流れの偏向器を含んで構成することができる。もちろん、デバイスは、鼻腔内送達のために構成することができる。これは、医薬の呼吸器系への送達のために設計され、そして中咽頭に堆積されて消化器管への進入が可能にされた場合、適当な効果を有することができないために通常全く好ましくない。この問題を克服するための一つの努力において、本発明のデバイスのある態様は、そこで医薬が発射される通常スペーサーと呼ばれる保持体積の提供を含む。スペーサーは、好ましくは医薬の速度を減少することを可能にし、そして更にある程度の噴射剤の蒸発が起こることを可能にすることができる。スペーサーは、定量投与式吸入器の性能を、口咽頭の堆積を減少することによって改良することができる。
【0055】
一つの好ましい態様は、図1に関連して開示される。このデバイスは、弁棒(6)を有する定量投与投与弁(4)を備えた、エアゾールキャニスター(2)を含んでなる。一般的に(8)で示される操作部は、エアゾールコンテナー(2)、チャンバー(12)及びマウスピース(14)を収容するハウジング(10)を含んでなる。ノズルブロック(16)は、弁棒(6)を収容し、そしてエアゾール弁からチャンバーへの噴霧を方向づけるオリフィス(18)で終結する通路(示されていない)を有する。ハウジングは、ノズルブロックの近辺に固体の壁(20)を含んでなり、オリフィスの近辺においてデバイスを通る空気の流れがないようにする。空気流入口通路(22)が、チャンバー(12)の末端に向かって位置し、そしてマウスピース(14)に向いている。
【0056】
操作時に、エアゾール弁が発射され、そしてエアゾール製剤の計量された投与量がオリフィス(18)からチャンバー(12)に出る。好ましくは、オリフィス(18)の近辺では空気の流れはなく、この場合、噴霧は急速に減速し、そして乱流域がチャンバー(12)内に形成される。患者がマウスピース(14)を通して呼吸すると、空気は入口(22)を通ってマウスピース(14)に向かって通過し、エアゾール製剤の噴霧の廻りに空気の鞘を形成する。このような図1に開示したような好ましい態様において、吸入器は、これも本発明のデバイスの範囲内である標準的な、押して呼吸する型、の吸入器と比較して、実質的に減少された患者の中咽頭の堆積を与える。
【0057】
他の態様において、マウスピースは、乱流域の下流のマウスピースの断面積の増加を与え、続いてマウスピースのはるか下流の末端で断面積の減少を提供する球根状の構造であることができる。このような態様において、球根状の構造は、慣用的なスペーサーと同様な様式で作用する。
【0058】
従って本発明のある側面は、吸入器を、そして好ましくは定量投与式吸入器(MDI)を、喘息と他の慢性閉塞性肺疾病の治療のために、そして接近可能な膜に又は鼻腔内的に医薬を送達するために提供する。従って本発明は、生物(ヒト又は動物のような)の病気、疾病又は同様な健康に関するの問題を治療するための方法を含み、そしてその方法は、医薬又は他の治療的成分を含有する本発明の組成物を、治療を必要とする生物に適用することを含む。ある好ましい態様において、本発明の組成物を適用する工程は、本発明の組成物を含有するMDIを用意し(例えば、組成物をMDI中に導入すること)、そして次いで本発明の組成物をMDIから放出することを含んでなる。
【0059】
本発明は、ある好ましい態様に関連して先に記載し、そして例示してきたが、これらの例及び態様に必ずしも制約されない。本発明の範囲は、本明細書中に与えられる特許請求の範囲に定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の一つの態様による吸入器の断面図を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射剤と少なくとも一つの医薬的に活性な化合物を含んでなる医薬組成物であって、該噴射剤は、該医薬的に活性な化合物のための医薬的に受容可能な担体であり、そして少なくとも2個の、しかし7個より少ない炭素原子を有するフルオロオレフィンを含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該フルオロオレフィンが、少なくとも一つの以下の式、式I:
XCF3−z (I)
[式中、Xは、C又はCの不飽和の置換された又は置換されていないアルキルラジカルであり、それぞれのRは、独立にF、Br、I、Cl又はHであり、そしてzは、1乃至3である]
の化合物を含んでなる医薬組成物。
【請求項3】
噴射剤で駆動される適用のための医薬製剤の形態の請求項1に記載の医薬組成物であって、ここにおいて、該少なくとも一つの医薬的に活性な化合物が該噴射剤との懸濁液又は溶液である医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬製剤であって、ここにおいて、該医薬的に活性な化合物が、該噴射剤中に可溶化された二つ又はそれより多い医薬的に活性な物質の組合せを含んでなる医薬製剤。
【請求項5】
請求項1に記載の医薬製剤であって、ここにおいて、該医薬的に活性な化合物が、副腎皮質ステロイド剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、長時間作用性ベータアゴニスト剤、短時間作用性ベータアゴニスト剤、抗コリン剤、タンパク質及びペプチド、抗感染剤、疼痛管理剤、ワクチン、ホルモン剤、遺伝子療法ベクター、オリゴヌクレオチド、免疫グロブリン、及び抗IgEモノクローナル抗体からなる群から選択される医薬製剤。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物であって、ここにおいて、該医薬的に活性な化合物が、サルブタモール(アルブテロール)、キラルアルブテロール、ブデソニド、エピネフリン、ホルモテロール、キシナホ酸サロメテロール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、クロモグリシン酸(cromoglycinic acid)、フェノテロール、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、インスリン、ネドクロミル、オルシプレナリン、臭化オキシトロピウム、レプロテロール(repreterol)、クロモグリク酸二ナトリウム、ピルブテロール、イソプレナリン、アドレナリン、リミテロール、テルブタリン、チオトロピウム、臭化イプラトロピウム、エピネフリン、オマリズマブ、これらのエステル、塩、溶媒和物又は組合せからなる群から選択される一つ又はそれより多い医薬的に活性な成分を含んでなる医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物であって、更に、C5−C20脂肪族アルコール、C5−C20脂肪酸、C5−C20脂肪酸エステル、レシチン、グリセリド、プロピレングリコールエステル、ポリオキシエタン、ポリソルベート、ソルビタンエステル及び炭水化物、又はこれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも一つの界面活性剤を含んでなる組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の医薬組成物であって、ここにおいて、噴射剤がHFO−1234を含んでなる医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該噴射剤が、約1000より大きくない地球温暖化係数(GWP)及び/又は、約0.05より大きくないオゾン破壊係数(ODP)を有する医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物のための吸入器であって、医薬製剤を収容するキャニスター、該キャニスターと流体的な連絡が可能なチャンバーと該医薬組成物を該チャンバーから意図する使用者の口腔又は鼻腔の空洞に導入するための患者用ポートを含んでなり、該医薬組成物が、噴射剤と少なくとも一つの医薬的に活性な化合物を含んでなり、該噴射剤が少なくとも2個の、しかし7個より少ない炭素原子を有するフルオロオレフィンを含んでなる、前記吸入器。
【請求項11】
請求項10に記載の吸入器であって、ここにおいて、該フルオロオレフィンが少なくとも一つの以下の式、式I:
XCF3−z (I)
[式中、Xは、C2又はC3の不飽和の置換された又は置換されていないアルキルラジカルであり、それぞれのRは、独立にF、Br、I、Cl又はHであり、そしてzは、1乃至3である]
の化合物を含んでなる、前記吸入器。
【請求項12】
哺乳動物を治療するための方法であって、少なくとも一つの噴射剤と少なくとも一つの医薬的に活性な化合物を含んでなる医薬製剤を哺乳動物に投与することを含んでなり、該噴射剤が少なくとも2個のしかし7個より少ない炭素原子を有するフルオロオレフィンを含んでなる、前記方法。
【請求項13】
その中に含有される噴射剤の蒸気圧を封じ込めることが可能であり、そして更に哺乳動物への投与のために適した医薬組成物を収容する種類のキャニスターであって、該医薬組成物が該噴射剤と少なくとも一つの医薬的に活性な化合物を含んでなり、該噴射剤が該医薬的に活性な化合物のための医薬的に受容可能な担体であり、そして少なくとも2個の、しかし7個より少ない炭素原子を有するフルオロオレフィンを含んでなる、前記キャニスター。
【請求項14】
吸入によって哺乳動物の肺に送達するために適したエアゾール製剤を製造する方法であって:
(a)医薬的に受容可能な担体を含んでなり、そして少なくとも2個のしかし7個より少ない炭素原子を有する少なくとも一つのフルオロオレフィンを含んでなる、少なくとも一つの噴射剤を用意すること;
(b)少なくとも一つの医薬的に活性な化合物を用意すること;及び
(c)該医薬的に活性な化合物を、これが該噴射剤中に保持されるように該噴射剤に導入すること;
の工程を含んでなる方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−546634(P2008−546634A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501991(P2008−501991)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/009271
【国際公開番号】WO2006/101882
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】