説明

半導体光変調器

【課題】長さ方向における短尺化を図ることができる半導体光変調器を提供する。
【解決手段】2つのカップラー11,17とそれらを結ぶ2つのアーム導波路を備え、同一のアーム導波路上に高周波を印加して変調を行う変調電極13a,13bと直流電圧を印加して動作点を調整する位相調整電極16a,16bとを備える半導体からなるマッハツェンダー型の半導体光変調器であって、変調電極13a,13bの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部14a,14bと、遅延部14a,14bの後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる折り返し部15a,15bと、折り返し部15a,15bの後に接続され光の位相調整を行う位相調整電極16a,16bとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、10GHz以上の高速変調器が普及し始めており、特に、小型なパッケージに収めたものが普及しつつある。これらの高速変調器の中では、固定波長の分布帰還型レーザ(DFBレーザ)から連続発振しているレーザ光を電界吸収型光変調器(EA変調器)で強度変調する形体や、DFBレーザにおいて直接変調して使用しているものがある。これらの場合、DFBレーザは固定波長であるのでチャンネル毎に異なる波長のEA変調器とDFBレーザ又はDFBレーザを故障に備えて在庫として完備しておく必要がある。
【0003】
そこで、レーザにチューナブルレーザを用いることが考えられる。これは、チューナブルレーザの波長可変範囲内であれば1つのレーザを用意するだけで可変範囲内のチャンネルをカバーすることができるためである。このため、故障に対する在庫管理も行いやすくすることができる。しかし、EA変調器では動作波長と電界吸収部のデチューニング量(電界吸収部のバンドギャップ波長と動作波長の差)で電界吸収の特性が変化して、遅延が発生してしまう。
【0004】
そこで考えられるのがマッハツェンダ変調器(MZ変調器)を利用することである。MZ変調器は帯域が広く設定できるため可変波長レーザとの組み合わせを考えた場合、小型で高性能な変調器を実現することができる。また、チャーピングによる信号劣化の問題が緩和されるために伝送距離も延ばすことができる。
【0005】
一方、半導体のマッハツェンダ回路は、2光束干渉を利用した光回路であり、製造直後の性能では、製造時に発生する位相誤差のために動作点が設計通りに作製することが難しい。そこで、信号を高速に変調する変調部に加えて、動作点を調整するための位相調整部が付加されている場合が多い。ここで、従来問題となっているのは、位相調整部の位相調整電極の電圧の高さである。
【0006】
位相調整を行う方法としては、二つの種類が考えられる。
一つは、電流注入を行うことで、注入による屈折率変化を利用して位相を調整する方法である。この場合、比較的短い位相調整電極で位相調整が可能であるが、欠点として位相調整のために電流を流すため消費電力がかかるという問題がある。また、電流注入型のデバイスであるため長期的信頼性が低くなりがちであるという問題がある。
【0007】
もう一つは、電界にて位相を調整する方法である。これは、電界で屈折率を変化させるので、電流がほとんど流れないため、消費電力を小さく抑えることができる。また、電流を流すデバイスではないので、長期信頼性に対しても高い信頼性が得られやすい。しかし、変調効率が低いため電流注入に比べて、位相調整電極の長さが長くなってしまうという問題がある。
【0008】
図7は、従来の直線型のMZ変調器の構成の一例を示した模式図である。
図7に示すように、従来の直線型のMZ変調器においては、入力導波路100が入口側カップラー101に接続されており、2つのアーム導波路102a,102bに光が分岐される。その後、変調部103である変調電極103a,103bが形成された光導波路を通過し、後に位相調整電極104a,104bが形成された位相調整部104を通過する。
【0009】
そして、変調と位相調整がなされた後に、再度出口側カップラー105で干渉した光が出力導波路106a,106bから出力され、変調部103で与えられた位相差によって出力が変化するようになっている。なお、図7においては、位相調整部104を変調部103の後に配置する場合を例として説明しているが、その逆の配置であっても同様の作用及び効果を得ることができる。
【0010】
ここで、簡単に従来のMZ変調器の動作について説明をする。
図8は、従来のMZ変調器においてプッシュプル駆動した際の変調アームへの駆動電圧に対する規格化した透過強度の特性を示した図である。
図8においては、縦軸は規格化した透過強度[dB]を示し、横軸はプッシュプル駆動した際の変調アームへの駆動電圧[V]を示している。また、横軸は便宜上、上側アームを負の方向に駆動した場合を図8中の左側の負の部分にプロットし、図8中の右側の正の部分に下側のアームを駆動した電圧に−1を掛けて表示している。例えば、バイアス電圧3Vの状態で横軸+2Vというのは、上側アームがバイアス電圧より2V高く−1V、下側アームが2V低く−4Vの状態の時を意味している。
【0011】
また、図8中に、破線でバイアス電圧2.5V、1点鎖線でバイアス電圧3.5V、2点鎖線で4.5V、実線で5.5Vとしたときの値を示す。また、測定する光の波長を1560nmとし、位相調整電極104a,104bの長さを1.2mmとし、位相調整電極104a,104bをノーマリーOFF状態で駆動した結果である。なお、半波長電圧は、半波長電圧のピークとピークの間の電圧に対応する。
【0012】
図8に示されるように、半導体の特徴として、バイアス電圧を印加することで半波長電圧を制御することができることが分かる。高周波変調器を駆動するデバイスの多くは、2.5V〜3Vの振幅電圧出力が可能であるため、OOK(ON−OFF−Keying)で駆動する場合は、図8においてONからOFFまでの間をドライバー振幅の2倍で遷移できればよく、バイアス電圧が4.5Vの場合、振幅0.85Vでの駆動が可能である。
なお、振幅2.5Vのドライバーを想定した場合には、長さをより短くすることができる。このため、位相調整電極104a,104bの長さを余裕を見て半分の600μmとしても駆動することができることとなる。
【0013】
ここで、位相調整部における位相調整電極の特性について説明する。
図9は、従来のMZ変調器において500μmの位相調整電極により片方のアームづつ駆動した際の変調アームへの駆動電圧に対する規格化した透過強度の特性を示した図である。
図9に示されるように、500μmの位相調整電極により片方のアームづつ駆動した場合、半波長電圧は−8Vにまでも及ぶ。このため、位相調整には高い電圧が必要となる。なお、実験的には、半波長電圧は−8Vでも位相調整が可能であるが、実際のデバイスとして運用する場合には用意される電源電圧の仕様により制約がある。
【0014】
また、実際のデバイスに用いる際には、駆動回路の電源電圧の仕様によってこの長さが決定されることとなるが、より高い電圧出力は、より大きな変圧回路が必要となり、それだけにコストもかかるので、半波長電圧は小さいことが望ましい。また、長期信頼性的に見ても低電圧で駆動できることが望ましいが、電圧を下げようとすると、位相調整電極104a,104bの長さが長くなってしまうという問題がある。
【0015】
例えば、電源電圧の仕様が5V以下だとすると、位相調整電極104a,104bは500μmでは不足で、少なくても1mm以上の長さが必要ということになる。これらの値に基づき実際に設計してみると、本来、MZ変調器における主たる機能を果たす変調電極103a,103bの長さが0.6mm程度でよいのに対し、単に位相調整をする位相調整電極104a,104bに1mm以上の電極が必要であるということになる。
【0016】
また、近年ではより大容量の通信を実現するためにより多彩なフォーマットによる伝送が試みられており、例えば、差動四相位相偏移変調(DQPSK;Differential Quadrature Phasa Shift Keying)があげられる。DQPSKとは、デジタル信号の変調方式のひとつで、変調された4つの位相にそれぞれ2ビットのデータを割り当てることのできる方式のことである(例えば、下記非特許文献1参照)。
【0017】
このDQPSKの場合は、それぞれのMZ変調器の後、2つのMZ変調器を通過したシグナル間に90度の位相差を与える必要がある。そして、この部分にも位相調整のための位相調整電極104a,104bが必要となり、長さ方向において一層長さを要するという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Nobuhiro Kikuchi、外7名、“80−Gb/s Low−Driving−Voltage InP DQPSK Modulator With an n−p−i−n Structure”、IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS、VOL.21、NO.12、2009年6月15日、p.787−789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、位相調整電極104a,104bを有する位相調整部104は、いかなる状態で製造された場合であっても位相調整が可能なようにするために、ある定まった電源電圧の仕様の元では、それ相応の程度の長さが必要となる。このため、本来、MZ変調器における主たる機能を果たす変調電極103a,103bよりも位相調整電極104a,104bの方が長くなってしまい、これに伴い、MZ変調器全体の長さも長くなってしまうという問題があった。
【0020】
また、MZ変調器を別に製造したレーザと同じ小型のパッケージに一緒に収容する場合には、それらの間にレンズ等を配置する必要があるため、パッケージの幅方向にはスペースに多少の余裕がある。しかしながら、パッケージの長さ方向にはスペースに余裕がないため、MZ変調器の長さの短尺化は非常に強く求められていた。
【0021】
以上のことから、本発明は、長さ方向における短尺化を図ることができる半導体光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る半導体光変調器は、
2つのカップラーとそれらを結ぶ2つのアーム導波路を備え、同一のアーム導波路上に高周波を印加して変調を行う変調電極と直流電圧を印加して動作点を調整する位相調整電極とを備える半導体からなるマッハツェンダー型の半導体光変調器であって、
入力導波路からの光を分岐する入力側カップラーと、
前記入力側カップラーの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部と、
前記展開部の後に接続され光の変調を行う変調電極と、
前記変調電極の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部と、
前記遅延部の後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる折り返し部と、
前記折り返し部の後に接続され光の位相調整を行う位相調整電極と、
前記位相調整電極の後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラーと、
前記出力側カップラーの後に接続され干渉させた光を出力する入力導波路が形成される面と同じ面に形成される出力導波路と
により構成される
ことを特徴とする。
【0023】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る半導体光変調器は、
2つのカップラーとそれらを結ぶ2つのアーム導波路を備え、同一のアーム導波路上に高周波を印加して変調を行う変調電極と直流電圧を印加して動作点を調整する位相調整電極とを備える半導体からなるマッハツェンダー型の半導体光変調器であって、
入力導波路からの光を分岐する入力側カップラーと、
前記入力側カップラーの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部と、
前記展開部の後に接続され光の変調を行う変調電極と、
前記変調電極の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部と、
前記遅延部の後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる第1の折り返し部と、
前記第1の折り返し部の後に接続され光の位相調整を行う第1の位相調整電極と、
前記第1の位相調整電極の後に接続され光の伝搬方向を再度180度変換する曲線導波路からなる第2の折り返し部と、
前記第2の折り返し部の後に接続され光の位相調整を行う第2の位相調整電極と、
前記第2の位相調整電極の後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラーと、
前記出力側カップラーの後に接続され干渉させた光を出力する入力導波路が形成される面と異なる面に形成される出力導波路と
により構成される
ことを特徴とする。
【0024】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る半導体光変調器は、
2つのカップラーとそれらを結ぶ2つのアーム導波路を備え、同一のアーム導波路上に高周波を印加して変調を行う変調電極と直流電圧を印加して動作点を調整する位相調整電極とを備える半導体からなるマッハツェンダー型の半導体光変調器であって、
入力導波路からの光を分岐する入力側カップラーと、
前記入力側カップラーの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部と、
前記展開部の後に接続され光の変調を行う変調電極と、
前記変調電極の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部と、
前記遅延部の後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる折り返し部と、
前記折り返し部の後に接続され光の位相調整を行う位相調整電極と、
前記位相調整電極の後に接続され光の伝搬方向を再度180度変換する曲線導波路からなる第2の折り返し部と、
前記第2の折り返し部からのそれぞれの光を干渉させる出力側カップラーと、
前記出力側カップラーの後に接続され干渉させた光を出力する出力導波路と
により構成される
ことを特徴とする。
【0025】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る半導体光変調器は、
2つの第3の発明に係る半導体光変調器と、
2つの前記半導体光変調器に光を分岐する入力側カップラーと、
2つの前記半導体光変調器の前記出力導波路に接続されそれぞれの出力光間に90度の位相差を与える位相差調整部と、
前記位相差調整部の後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラーと
により構成される
ことを特徴とする。
【0026】
上記の課題を解決するための第5の発明に係る半導体光変調器は、第1の発明から第4の発明のいずれか1つに係る半導体光変調器において、
前記変調電極を有する2つのアーム導波路の間隔をD1とし、前記位相調整電極を有する2つのアーム導波路の間隔をD2としたとき、「D1>D2」と設定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、長さ方向における短尺化を図ることができる半導体光変調器を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施例に係る半導体光変調器の構成を示した模式図である。
【図2】第1の実施例に係る半導体光変調器における遅延部の構成を示した模式図である。
【図3】第1の実施例に係る半導体光変調器のパッケージへの実装方法を示した模式図である。
【図4】第2の実施例に係る半導体光変調器の構成を示した模式図である。
【図5】第3の実施例に係る半導体光変調器の構成を示した模式図である。
【図6】第1〜3の実施例に係る半導体光変調器の製造方法を示した模式図である。
【図7】従来の直線型のMZ変調器の構成の一例を示した模式図である。
【図8】従来のMZ変調器においてプッシュプル駆動した際の変調アームへの駆動電圧に対する規格化した透過強度の特性を示した図である。
【図9】従来のMZ変調器において500μmの位相調整電極により片方のアームづつ駆動した際の変調アームへの駆動電圧に対する規格化した透過強度の特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る半導体光変調器を実施するための形態について説明する。
本発明に係る半導体光変調器における折り返し構造に関しては、従来周知のニオブ酸リチウム光変調器(LN変調器)等でも試みられている。しかし、LN変調器の場合は導波路の屈折率差が比較的小さく、ある程度の曲げ半径で導波路を曲げないと損失になる。このため、折り返しにはミラー構造等を採用している。
【0030】
これに対し、本発明に係る半導体光変調器においては、半導体で形成する場合は曲げ半径を小さくできるメリットを生かして、湾曲導波路にて180度の方向転換を実現している点がLN変調器の折り返し構造とは根本的に異なっている。
【0031】
また、従来、石英系平面光波回路(PLC)とLN変調器を張り合わせた回路による折り返しも提案されているものの、PLC部において位相調整は可能であるが、高速変調ができないという問題がある。つまり、高速変調部と位相調整部を平行して作成できず、高速変調部の電気的なクロストークに考慮してより小さくするために、位相調整部の間隔などについては考慮されていない。
【0032】
LN変調器等の変調器の半波長電圧は素子構造と主に使用する物性値で決まり、長さもそれに応じて決まる。一方、半導体変調器では、半波長電圧が、素子構造、物性値に加えてバイアス電圧にて可変である。そのため、バイアス電圧の印加により半波長電圧を小さくすることが可能であり、変調電極の長さも短い。
【0033】
本発明に係る半導体光変調器は、半導体ならではの位相調整電極を有する位相調整部が変調部に比べて長くなってしまう問題を解決するものであって、解決すべき問題は半導体の変調器においてみられるものであり、LN変調器に見られるような単なる折り返し回路構造ではない。
【実施例1】
【0034】
以下、本発明に係る半導体光変調器の第1の実施例について、図面を参照しながら説明する。
本実施例に係る半導体光変調器においては、いわゆる片側ピッグテールの湾曲導波路による折り返し部を有するマッハツェンダー型の半導体光変調器を作製する。
はじめに、本実施例に係る半導体光変調器の製造方法について説明する。
図6は、本実施例に係る半導体光変調器の製造方法を示した模式図である。
はじめに、図6(a)に示すように、半絶縁性(SI(semi−insulating))−InP基板50上に第1のn型電極層51(n+−InP)を成長し、その上に第1のn型クラッド層52(n−InP)を形成し、第1のn型クラッド層52上には、第1の中間層53(i−InGaAsP)、多重量子井戸(MQW)コア層54、第2の中間層55(i−InGaAsP)が形成されている。
【0035】
第2の中間層55(i−InGaAsP)の上に第1の低濃度クラッド56(i−InP)を形成した後、第1の低濃度クラッド56(i−InP)の上には、電子バリアとして機能するp型クラッド層57(p−InP)が形成される。p型クラッド層57の上には、第2のn型クラッド層58(n−InP)が形成され、さらにその上に、第2のn型電極層59(n+−InP)が順に積層されている。
【0036】
ここで、多重量子井戸コア層54は、動作光波長で電気光学効果が有効に働くように構成され、例えば、1.5μm帯のデバイスであれば、InGaAlAsのGa/Al組成を変えた層を、それぞれ量子井戸層と量子バリア層にした多重量子井戸構造とすることができる。また、第1の中間層53は、光吸収で発生したキャリアをヘテロ界面でトラップされないようにするための接続層として機能する。
【0037】
本実施例に係る半導体光変調器を製作するには、まず、2つのアーム導波路(図7に示すアーム導波路102a,102b参照)を電気的に分離するために、導波路のアーム部分に分離溝を形成する。なお、後述する変調電極と位相調整電極が分かれているマッハツェンダー構造の場合は、その間にも分離溝を設けて電気的分離を行う。これは、電気的分離がなされていないと、片方のアームに変調のため印加した電圧が他方のアームの変調に影響を及ぼすためである。分離溝は、第2のn型電極層59から電子バリアとして機能するp型クラッド層57までの一部を標準的なフォトリソグラフィー、パターニングしウエットエッチング技術を用いて、導波路のアーム部分の何処かに幅数ミクロンの溝として取り除くことにより形成する。
【0038】
なお、本実施例においては、分離溝により電気的分離を行ったが、電極が接触する変調部周辺以外を石英のハードマスクを用いて第2のn型電極層59から電子バリアとして機能するp型クラッド層57までを除去した後、半絶縁性のInPで再度成長し置き換を実施して電気的分離を行ってもよい。
【0039】
次に、図6(b)に示すように、ドライエッチング技術を用いて第2のn型電極層59(n+−InP)から第1のn型クラッド層中間52までの層をエッチングすることにより、ハイメサ型の導波路構造を形成する。そして、第1のn型クラッド層52をエッチングすることにより、第1のn型電極層51を露出させる。
【0040】
最後に、図6(c)に示すように、後述する変調電極、位相調整電極となる第1のn型電極60を第2のn型電極層59上に、接地電極となる第2のn型電極61を第1のn型電極層51上にそれぞれ形成する。なお、必要に応じて、パッシベーション膜を堆積し、メサ表面を保護するようにしてもよいし、ポリマーなどを利用してハイメサ構造を保護してもよい。
【0041】
次に、本実施例に係る半導体光変調器の構成について説明する。
図1は、本実施例に係る半導体光変調器の構成を示した模式図である。なお、図1においては、本実施例に係る半導体光変調器を上方から見た場合の概略を示している。
図1に示すように、本実施例に係る半導体光変調器1は、2つのカップラー11,17とそれらを結ぶアーム導波路を備え、同一のアーム導波路上に高周波を印加して変調を行う後述する変調電極13a,13bを有する変調部13と、直流電圧を印加して動作点を調整する位相調整電極16a,16bを有する位相調整部16とを備える半導体からなるマッハツェンダー型の半導体光変調器である。
【0042】
本実施例に係る半導体光変調器1は、入力導波路10からの光を分岐する入力側カップラー11と、入力側カップラー11の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部12a,12bと、展開部12a,12bの後に接続され光の変調を行う変調電極13a,13bと、変調電極13a,13bの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部14a,14bと、遅延部14a,14bの後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる折り返し部15a,15bと、折り返し部15a,15bの後に接続され光の位相調整を行う位相調整電極16a,16bと、位相調整電極16a,16bの後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラー17と、出力側カップラー17の後に接続され干渉させた光を出力する入力導波路10が形成される面と同じ面に形成される出力導波路18a,18bとにより構成されている。
【0043】
本実施例においては、折り返し部15a,15bの最小曲げ半径は150μmとした。また、アーム導波路の幅は直線部と曲線部共に1.6μmとした。なお、これら以外のパラメーターを設定してもよいが、最小曲げ半径を小さくした方が半導体光変調器1のサイズを小さくできるので好ましい。
【0044】
ここで、本実施例に係る半導体光変調器と従来の従来の直線型のMZ変調器とのサイズの比較のため、同じ長さの変調部と位相調整部を持つ従来の直線型のMZ変調器を設計することを仮定し、変調電極の長さを800μmとし、位相調整電極の長さを1.1mmとした場合、従来の従来の直線型のMZ変調器は長さ3.7mm、幅800μmで設計が可能であったが、本実施例に係る半導体光変調器によれば、折り返し構造とすることにより長さ2.4mm、幅1mmで設計することが可能となった。
【0045】
このように、本実施例に係る半導体光変調器は、従来の直線型のMZ変調器に比べ、長さにおいては64%短くすることができる。また、占有面積においては、従来の直線型のMZ変調器が2.4mm2であるのに対し、本実施例に係る半導体光変調器においても同じ占有面積2.4mm2でレイアウトすることができる。つまり、本実施例に係る半導体光変調器によれば、ウェハから採取できるチップ数を低下させることなく、全長を短くすることが可能となった。
【0046】
ここで、本実施例に係る半導体光変調器における遅延部の構成について説明する。
図2は、本実施例に係る半導体光変調器における遅延部の構成を示した模式図である。
通常、入力導波路10が形成される面と同じ面に出力導波路18を形成した場合、内側に位置するアーム導波路と外側に位置するアーム導波路とで光路長が異なってしまう。
【0047】
このため、本実施例に係る半導体光変調器においては、図2に示すように、上側の遅延部14aの長さを下側の遅延部14bより長くすることにより、内側の折り返し部15a(図1参照)の方が短くなるので、この場合は変調電極13a,13b通過後に非対称に、幅を縮めることで、内側の折り返し部15aが短くなる分を補償するように遅延差を設ける。これにより、2つのアーム導波路間に発生する位相差を解消することができる。
【0048】
次に、本実施例に係る半導体光変調器のパッケージへの実装方法について説明する。
上述した半導体光変調器1の製作後に行うへき開が実施できる程度まで半絶縁性−InP基板50裏面に研磨を実施する。裏面に固定半田が接着するように金属膜を蒸着した後、各種素子にへき開を実施した後に、入力導波路10及び出力導波路18a,18bが形成された半導体光変調器1の端面に無反射コートを施した。本実施例に係る半導体光変調器1においては、入力導波路10及び出力導波路18a,18bが片方だけに形成されているため、無反射コートを施す回数を従来の2回から1回に低減することができ、工程数を削減することができる。
【0049】
図3は、本実施例に係る半導体光変調器のパッケージへの実装方法を示した模式図である。
図3に示すように、本実施例に係る半導体光変調器1を窒化アルミからなるサブマウント19に、標準的なチップボンダーで搭載したのち加熱固定し、続いて終端抵抗、コンデンサー、サーミスタ(抵抗変化として温度検出する温度センサ)、高速信号を伝送するための配線板等の各種素子20を同じくチップボンダーで搭載し、リフローにより固定を実施した。固定されたサブマウント19上の半導体光変調器1や各種素子や配線の電極をワイヤーボンディングにより結線した後、CuWからなるマウント21にサブマウント19を再度リフロー固定した。
【0050】
方端ファイバー22が固定できるようになった気密パッケージ内にマウント21を半田を用いて固定し、127μmピッチの2芯メタライズファイバーを半田をもって固定した。
方端のファイバー(以下、方端ファイバー22という)と半導体光変調器1の間にレンズ23を挿入して、位置合わせを実施した後、YAGレーザを用いてレンズ23を固定した。このレンズ23も、従来は入出力に2つで必要であったが、本実施例に係る半導体光変調器1を用いることにより1つだけでよく、部材を半分で済ませることができる。また、本実施例に係る半導体光変調器1を用いることによりレンズ23を固定する作業も半分にすることができるため、実装工程の工程数を削減することができる。
【0051】
なお、本実施例においては、入力側カップラー11として1入力2出力のMMI(multi−mode−interferometer)、出力側カップラー17として2入力2出力のMMIを用いているが、この他にも、出力側カップラー17を1入力2出力としてもよいし、その逆であってもよい。また、その他の方向性結合器等のその他のカップラーを用いてもよい。
【実施例2】
【0052】
以下、本発明に係る半導体光変調器の第2の実施例について、図面を参照しながら説明する。
本発明に係る半導体光変調器は、第1の実施例に係る半導体光変調器と作製方法は同じである。しかし、本発明に係る半導体光変調器は方端ではないファイバーに適用されるものであるため、半導体光変調器の両側に無反射コートを施し、パッケージング時も半導体光変調器の両側部にレンズを位置決めして配置する。本発明に係る半導体光変調器のその他の構成は、第1の実施例に係る半導体光変調器1と基本的に変わらない。
【0053】
はじめに、本実施例に係る半導体光変調器の構成について説明する。
図4は、本実施例に係る半導体光変調器の構成を示した模式図である。なお、図4においては、本実施例に係る半導体光変調器を上方から見た場合の概略を示している。
図4に示すように、本実施例に係る半導体光変調器2は、入力導波路30からの光を分岐する入力側カップラー31と、入力側カップラー31の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部32a,32bと、展開部32a,32bの後に接続され光の変調を行う変調電極33a,33bと、変調電極33a,33bの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部34a,34bと、遅延部34a,34bの後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる第1の折り返し部35a,35bと、第1の折り返し部35a,35bの後に接続され光の位相調整を行う第1の位相調整電極36a,36bと、第1の位相調整電極36a,36bの後に接続され光の伝搬方向を再度180度変換する曲線導波路からなる第2の折り返し部37a,37bと、位相調整部36の後に接続され光の位相調整を行う第2の位相調整電極36c,36dと、第2の位相調整電極36c,36dの後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラー38と、出力側カップラー38の後に接続され干渉させた光を出力する入力導波路30が形成される面と異なる面に形成される出力導波路39a,39bとにより構成されている。
【0054】
次に、本実施例に係る半導体光変調器の特徴について説明する。
高周波による変調部33は、電気的なクロストークに配慮して2つのアーム導波路の間隔D1をある程度広く取ることとし、「D1=100μm」とした。高周波が通過する2本の変調電極33a,33bは、差動信号入力でGSSG(GND−SIGNAL−SIGNAL−GND)の電極設計をした場合には、ある程度間隔D1を縮めても問題はないが、製造は難しくなる。
【0055】
また、一般的なGSG(GND=SIGNAL=GND)で設計した場合には、ある程度の距離の間隔D1が必要となる。さらに、用途によっては異なる信号が入る場合があるため、電気的なクロストークを削減するために距離D1を離す必要がある。つまり、変調部33においては、ある程度間隔D1を離す構成にすることで電気的なクロストークを削減することができる。
【0056】
そこで、変調部33を通過後、2つのアーム導波路間の間隔D2を一旦「D2=10μm」まで狭めた。なお、間隔D2を狭めずに180度の折り返しを行った場合、設計上第1の折り返し部35a,35bの幅が広くなり、占有面積が大きくなってしまう。つまり、ここで間隔D2を狭くすることで、第1の折り返し部35a,35bの横幅を狭くすることができる。
【0057】
また、折り返し箇所である第1の折り返し部35a,35b以降は、直流電圧を印加して駆動する位相調整部36だけであるので2本のアーム導波路の間隔D2を狭めても動作上問題がない。なお、間隔D2を狭めることができる範囲は、製造上可能な範囲内で、かつ2つのアーム導波路を伝搬する光が結合しない距離であれば設定することが可能である。
【0058】
その後、D2の間隔を保ったまま第1の位相調整電極36a,36bを形成し、第1の位相調整電極36a,36bの後に再度180度の折り返しを実施する第2の折り返し部37a,37bを形成する。また、第2の折り返し部37a,37bの後にアーム導波路の間隔D3を「D3=D2」として第2の位相調整電極36c,36dを形成し、第2の位相調整電極36c,36dの後に出力側カップラー38を設置する。
【0059】
そして、本実施例に係る半導体光変調器2においては、第1の位相調整電極36a,36bと第2の位相調整電極36c,36dの同じアーム導波路上にある電極が並列に接続されている。これにより、位相調整部36の全体の長さを短くすることができる。なお、言い換えれば、位相調整部36が第2の折り返し部37a,37bを備えているということもできる。
【0060】
この場合、半導体光変調器2の長さは、本来、主たる機能を果たす変調電極33a,33bにより、より正確には「入力導波路30の長さ+変調電極33a,33bの長さ+第1の折り返し部35a,35bの長さ」により決定することができるため、従来の直線型のMZ変調器ように、位相調整電極104a,104b(図7参照)によって長さ方向の長さが決定されることを回避することができる。したがって、本実施例に係る半導体光変調器2によれば、長さ方向の長さを非常に短くすることができ、かつ、十分な長さの第1の位相調整電極36a,36b及び第2の位相調整電極36c,36dを得ることができる。
【0061】
以上説明したように、本実施例に係る半導体光変調器2においては、少なくても「D1>D2」の関係で変調電極33a,33bと位相調整電極36a,36bを配置することで、設計上、第1の位相調整電極36a,36b及び第2の位相調整電極36c,36dを十分な長さ確保しつつ、位相変調部36の長さを短くすることができるため、半導体光変調器2の長さ方向の長さを短くすることができ、かつ、半導体光変調器2の幅の増大を抑えて折り返し構造を実現することができ、さらに、変調部33における電気的なクロストークを抑制することもできる。
【0062】
なお、本実施例においては、第2の折り返し部37a,37bの後にも第2の位相調整電極36c,36dを配置したが、特に必要なければ必ずしも配置する必要はない。しかしながら、位相調整部36においてはより低い直流電圧を印加する方が長期的信頼性も得やすいため、占有面積が変わらないのであれば第2の位相調整電極36c,36dを形成することが好ましい。また、本実施例においては、間隔D1,D2について「D1>D2」と設定することとしたが、これ以外の設定とすることも可能である。
【実施例3】
【0063】
以下、本発明に係る半導体光変調器の第3の実施例について、図面を参照しながら説明する。
本発明に係る半導体光変調器は、第1の実施例に係る半導体光変調器1と作製方法は同じである。しかし、本発明に係る半導体光変調器が適用されるファイバーは方端ではないので、半導体光変調器の両側に無反射コートを施し、パッケージング時も半導体光変調器の両側部にレンズを位置決めして配置する。本発明に係る半導体光変調器のその他の構成は、第1の実施例に係る半導体光変調器1と基本的に変わらない。
【0064】
はじめに、本実施例に係る半導体光変調器の構成について説明する。
図5は、本実施例に係る半導体光変調器の構成を示した模式図である。なお、図5においては、本実施例に係る半導体光変調器を上方から見た場合の概略を示している。
図5に示すように、本実施例に係る半導体光変調器3は、第1の実施例に係る半導体光変調器1において位相調整電極16a,16bの後に第2の実施例に係る第2の折り返し部37a,37bを配置した半導体光変調器を2つ用い、それぞれの半導体光変調器の出力光の位相を90度ずらす位相差調整部を備えたDQPSKである。
【0065】
本実施例に係る半導体光変調器3は、入力導波路40の後に接続される入力側カップラー41と、入力側カップラー41の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部42a,42bと、展開部42a及び展開部42bの後にそれぞれ接続され光を分岐する入力側カップラー11と、入力側カップラー11の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部12a,12bと、展開部12a,12bの後に接続され光の変調を行う変調電極13a,13bと、変調電極13a,13bの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部14a,14bと、遅延部14a,14bの後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる折り返し部15a,15bと、折り返し部15a,15bの後に接続され光の位相調整を行う位相調整電極16a,16bと、位相調整電極16a,16bの後に接続され光の伝搬方向を再度180度変換する曲線導波路からなる第2の折り返し部37a,37bと、第2の折り返し部37a,37bの後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラー38と、出力側カップラー38の後に接続され出力側カップラー38からのそれぞれの出力光間に90度の位相差を与える位相調整電極43a,43bと、位相調整電極43a,43bの後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラー44と、出力側カップラー44の後に接続され干渉させた光を出力する入力導波路40が形成される面と異なる面に形成される出力導波路45とにより構成されている。
【0066】
次に、本実施例に係る半導体光変調器の特徴について説明する。
DPSKは、シングルMZ変調器を2つ備えるような構成となっており、2つのシングルMZ変調器からのそれぞれの出力光間に90度の位相差を与える位相差調整部43にも位相調整電極43a,43bを形成する必要がある。このため、単に2つのシングルMZ変調器を横に並べただけでは済まないため、長さ方向の長さが一段と長くなるという問題があった。
【0067】
そこで、本実施例に係る半導体光変調器3は、位相調整電極16a,16bの後に第2の折り返し部37a,37bを設け、第2の折り返し部37a,37bの後に出力側カップラー38を設ける。その後、2つの出力側カップラー38からのそれぞれの出力光間に90度の位相差を与える位相調整電極43a,43bを形成する。なお、本実施例においては、位相差調整部43の位相調整電極43a,43bの長さは、位相調整電極16a,16bと同じ1.1mmとした。
【0068】
本実施例に係る半導体光変調器3の構成によれば、長さ方向の長さは入力側カップラー41と展開部42a,42bを配置した分だけ長さが長くなるだけで済むため、半導体光変調器3の全長は短く抑えることができる。なお。実際の設計では2.8μmの長さでの設計が可能であった。しかし、単に2つのシングルMZ変調器を横に並べて直線的にレイアウトした場合には6.1mmの長さが必要となり、本実施例に係る半導体光変調器3の倍以上の長さが必要であった。
【0069】
そして、本実施例に係る半導体光変調器3の幅は、単に2つのシングルMZ変調器を横に並べた従来のDQPSKよりも狭くすることができ1.8mmでのレイアウトが可能である。なお、TOSA(Transmitter Optical Sub−Assembly)を想定した場合、容器内部の幅は5.5mm程度取ることができ、本実施例に係る半導体光変調器3は幅は1.8mmであるため、問題なくTOSA内に収めることができる。また、本実施例に係る半導体光変調器3の長さは、単に2つのシングルMZ変調器を横に並べた従来のDQPSKよりも短くできているため、波長可変レーザをTOSA内に集積し得る長さに収めることができる。
【0070】
なお、本実施例においては、2つの半導体光変調器を上下対称に配置し、直流電圧が印加される位相調整電極16a,16bが内側に位置するように構成している。このため、2つの半導体光変調器における高周波が印加される変調電極13a,13bの間の距離を離すことができるため、電気的なクロストークを抑制することができる。
【0071】
また、本実施例に係る半導体光変調器3はDQPSKとして構成する場合を例として説明したが、本実施例に係る半導体光変調器3をさらに2つ並べてDP−QPSK(Dual Polarization Differential Quadrature Phase Shift Keying)等を構成した場合であっても同様な作用や効果が得られ、DP−QPSK等の長さ方向の長さを短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば、10GHz以上の高速変調器、特に、小型なパッケージに収める高速変調器に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3 半導体光変調器
10 入力導波路
11 入力側カップラー
12a,12b 展開部
13 変調部
13a,13b 変調電極
14a,14b 遅延部
15a,15b 折り返し部
16 位相調整部
16a,16b 位相調整電極
17 出力側カップラー
18a,18b 出力導波路
19 サブマウント
20 各種素子
21 マウント
22 方端ファイバー
23 レンズ
30 入力導波路
31 入力側カップラー
32a,32b 展開部
33 変調部
33a,33b 変調電極
34a,34b 遅延部
35a,35b 第1の折り返し部
36 位相調整部
36a,36b 第1の位相調整電極
36c,36d 第2の位相調整電極
37a,37b 第2の折り返し部
38 出力側カップラー
39a,39b 出力導波路
40 入力導波路
41 入力側カップラー
42a,42b 展開部
43 位相差調整部
43a,43 位相調整電極
44 出力側カップラー
45 出力導波路
50 半絶縁性−InP基板
51 第1のn型電極層
52 第1のn型クラッド層
53 第1の中間層
54 多重量子井戸コア層
55 第2の中間層
56 第1の低濃度クラッド
57 p型クラッド層
58 第2のn型クラッド層
59 第2のn型電極層
60 第1のn型電極
61 第2のn型電極
100 入力導波路
101 入口側カップラー
102a,102b アーム導波路
103 変調部
103a,103b 変調電極
104 位相調整部
104a,104b 位相調整電極
105 出口側カップラー
106a,106b 出力導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのカップラーとそれらを結ぶ2つのアーム導波路を備え、同一のアーム導波路上に高周波を印加して変調を行う変調電極と直流電圧を印加して動作点を調整する位相調整電極とを備える半導体からなるマッハツェンダー型の半導体光変調器であって、
入力導波路からの光を分岐する入力側カップラーと、
前記入力側カップラーの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部と、
前記展開部の後に接続され光の変調を行う変調電極と、
前記変調電極の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部と、
前記遅延部の後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる折り返し部と、
前記折り返し部の後に接続され光の位相調整を行う位相調整電極と、
前記位相調整電極の後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラーと、
前記出力側カップラーの後に接続され干渉させた光を出力する入力導波路が形成される面と同じ面に形成される出力導波路と
により構成される
ことを特徴とする半導体光変調器。
【請求項2】
2つのカップラーとそれらを結ぶ2つのアーム導波路を備え、同一のアーム導波路上に高周波を印加して変調を行う変調電極と直流電圧を印加して動作点を調整する位相調整電極とを備える半導体からなるマッハツェンダー型の半導体光変調器であって、
入力導波路からの光を分岐する入力側カップラーと、
前記入力側カップラーの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部と、
前記展開部の後に接続され光の変調を行う変調電極と、
前記変調電極の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部と、
前記遅延部の後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる第1の折り返し部と、
前記第1の折り返し部の後に接続され光の位相調整を行う第1の位相調整電極と、
前記第1の位相調整電極の後に接続され光の伝搬方向を再度180度変換する曲線導波路からなる第2の折り返し部と、
前記第2の折り返し部の後に接続され光の位相調整を行う第2の位相調整電極と、
前記第2の位相調整電極の後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラーと、
前記出力側カップラーの後に接続され干渉させた光を出力する入力導波路が形成される面と異なる面に形成される出力導波路と
により構成される
ことを特徴とする半導体光変調器。
【請求項3】
2つのカップラーとそれらを結ぶ2つのアーム導波路を備え、同一のアーム導波路上に高周波を印加して変調を行う変調電極と直流電圧を印加して動作点を調整する位相調整電極とを備える半導体からなるマッハツェンダー型の半導体光変調器であって、
入力導波路からの光を分岐する入力側カップラーと、
前記入力側カップラーの後に接続され2つのアーム導波路の間隔を広げるための展開部と、
前記展開部の後に接続され光の変調を行う変調電極と、
前記変調電極の後に接続され2つのアーム導波路の間隔を狭くし、かつ2つのアーム導波路の伝搬距離を等しくする遅延部と、
前記遅延部の後に接続され光の伝搬方向を180度変換する曲線導波路からなる折り返し部と、
前記折り返し部の後に接続され光の位相調整を行う位相調整電極と、
前記位相調整電極の後に接続され光の伝搬方向を再度180度変換する曲線導波路からなる第2の折り返し部と、
前記第2の折り返し部からのそれぞれの光を干渉させる出力側カップラーと、
前記出力側カップラーの後に接続され干渉させた光を出力する出力導波路と
により構成される
ことを特徴とする半導体光変調器。
【請求項4】
2つの請求項3に記載の半導体光変調器と、
2つの前記半導体光変調器に光を分岐する入力側カップラーと、
2つの前記半導体光変調器の前記出力導波路に接続されそれぞれの出力光間に90度の位相差を与える位相差調整部と、
前記位相差調整部の後に接続されそれぞれの光を干渉させる出力側カップラーと
により構成される
ことを特徴とする半導体光変調器。
【請求項5】
前記変調電極を有する2つのアーム導波路の間隔をD1とし、前記位相調整電極を有する2つのアーム導波路の間隔をD2としたとき、「D1>D2」と設定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体光変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−163876(P2012−163876A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25617(P2011−25617)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】