説明

半導体集積回路

【課題】費用を殆ど掛けることなくリフレッシュ時のリップルをできるだけ低減することができる半導体集積回路を、提供する。
【解決手段】印刷装置10内のメモリコントローラ193は、1つのDRAMデバイス(15,16)についてみると、標準的な78μsの間隔でリフレッシュを要求し、4つのDRAMデバイス(15,16)についてみると、そのリフレッシュ要求のタイミングをDRAMデバイス毎に1.95μsずつずらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に、関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、DRAMデバイス内の記憶素子は、電荷の有無によって1bitの情報を記憶するものであるが、放置すると電荷が漏れ出て情報を損失する性質を持つ。このため、DRAMデバイスは、記憶素子に電荷を補充する処理が定期的に行われるものとなっている。なお、この電荷を補充する処理は、一般に、リフレッシュと称されている。
【特許文献1】特開2004−030825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の装置では、内部に組み込まれる複数のDRAMデバイスに対し、同じタイミングでリフレッシュが行われていた。
【0004】
しかしながら、デバイス数が多いと、リフレッシュ時に、瞬時ではあるが電流量が増加し、電源ラインに印加される定電圧に、±50mVを超えるリップルが生じてしまうことがある。このようなリップルが電源ラインに存在すると、例えばPLLのような低リップル(3.3V±50mV)が要求されるデバイスが同じ電源ラインを利用している場合に、そのデバイスに対して誤動作を生じさせることになる。
【0005】
このため、従来、このような誤動作を防止するため、DRAMデバイス用の電源を別途用意したり、リップル除去用のフィルタ回路を用意したりしていたが、これらの対策には、どうしても費用が掛かってしまっていた。
【0006】
本発明は、前述したような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、費用を殆ど掛けることなくリフレッシュ時のリップルをできるだけ低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために発明された半導体集積回路は、二つ以上のDRAMデバイスを制御するためのものであって、リフレッシュを周期的に行うタイミングをパルスで定義したデジタル信号を出力するリフレッシュタイマ,及び、前記リフレッシュタイマから出力されるデジタル信号に基づいて、前記DRAMデバイスのそれぞれについて、そのDRAMデバイス以外の全てのDRAMデバイスでのリフレッシュのタイミングとは重ならないタイミングをパルスで定義したデジタル信号を生成して出力するタイミング振分回路を備えることを、特徴としている。
【0008】
このように、各DRAMデバイスでのリフレッシュのタイミングをずらすと、リフレッシュ時の電流量の増加を抑えることができ、その結果として、リップルを低減することができる。然も、タイミング振分回路自体は、ゲート規模が小さい回路から構成することができるため、設計製造に掛かる費用を増大させることがない。
【発明の効果】
【0009】
従って、本発明によれば、費用を殆ど掛けることなくリフレッシュ時のリップルをできるだけ低減することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明を実施するための一つの形態である印刷装置について説明する。
【0011】
まず、本実施形態の印刷装置の構成を説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の印刷装置10の構成図である。印刷装置10は、図示せぬホストコンピュータから印刷要求を受信して動作する装置であり、主要な構成として、パラレルI/F11,ネットワークI/F12,USBI/F13,印刷エンジン14,ROM15,DRAM16,オプションDRAM17,CPU18,及び、ASIC19を、内蔵している。
【0013】
パラレルI/F11は、図示せぬホストコンピュータから印刷要求を受信するためのユニットであり、具体的には、IEEE1284の通信規格に従ったパラレルポートやセントロニクス仕様のパラレルポートである。
【0014】
ネットワークI/F12は、図示せぬホストコンピュータから印刷要求を受信するためのユニットであり、具体的には、LANボード等の通信インターフェースポートである。
【0015】
USBI/F13は、図示せぬカメラ装置から印刷要求を受信するためのユニットであり、具体的には、USB規格に従ったデータの通信を制御する通信インターフェースポートである。なお、カメラ装置は、静止画の画像データを取得することができるUSBポート付き装置であり、具体的には、デジタルスチルカメラ,デジタルビデオカメラ,カメラ付き携帯電話機などである。
【0016】
印刷エンジン14は、用紙上への印刷を実際に行なう機構である。
【0017】
DRAM15は、図示せぬホストコンピュータや図示せぬカメラ装置から送信されてきた印刷要求の一時記憶に使用されるとともにその印刷要求に基づいて印刷エンジン14へ供給するビデオデータを生成するために使用されるメモリである。
【0018】
オプションDRAM16は、印刷装置10の処理能力を向上させるために追加されたDRAMであり、DRAM15と本質的に同じものである。オプションDRAM16は、DRAM15とは別のメモリスロットに着脱自在に装着されたものである。なお、本実施形態では、メモリスロットが4個用意されており、オプションDRAM16は、3個増設することができるようになっている。
【0019】
ROM17は、印刷装置10を制御するためのプログラムや、印刷要求からビデオデータを生成する際に使用されるフォントデータを記憶した不揮発性メモリである。
【0020】
CPU18は、ROM17内のプログラムに従って各部を統合的に制御することにより、図示せぬホストコンピュータや図示せぬカメラ装置から送信されてきた印刷要求に応じた印刷を印刷エンジン14に行なわせるための印刷制御処理や、この印刷装置10の上面に設けられている図示せぬ操作パネルに対する操作を通じてユーザから実行すべき処理についての指示を取得する処理を行なう制御回路である。
【0021】
ASIC19は、各ハードウエア11〜18間のデータや指示の遣り取りを制御する半導体集積回路であり、各ハードウエア11〜18に接続されている。このASIC19は、各ハードウエア11〜18との間のインターフェースとして、ビデオコントローラ191,IOコントローラ192,及び、メモリコントローラ193を、備えている。
【0022】
ビデオコントローラ191は、印刷エンジン14へ供給する印刷用のビデオデータをその印刷エンジン14内の図示せぬ走査ユニットが処理可能な形態の電気信号に変換するための回路モジュールである。
【0023】
IOコントローラ192は、各I/F11〜13や図示せぬ操作パネルを制御するための回路モジュールである。
【0024】
メモリコントローラ193は、前述したメモリスロットに装着されたDRAM15やオプションDRAM16に対するプログラムやデータの読み書きを制御する機能,及び、ROM17からのプログラムやデータの読み出しを制御する機能を有する回路モジュールである。
【0025】
次に、そのメモリコントローラ193におけるDRAMデバイス(DRAM15及びオプションDRAM16)の制御を行う部分について、説明する。
【0026】
図2は、メモリコントローラ193内におけるDRAMデバイスの制御を行う部分の構成図である。メモリコントローラ193は、DRAMデバイスの制御を行うため、DRAMアクセスデコーダ193a,DMAコントローラ193b,リフレッシュタイマ193c,及び、DRAMコントローラ193d,を、備えている。
【0027】
DRAMアクセスデコーダ193aは、CPU18からアドレスバスを通じて送られてきたIOアドレス情報を解釈して、CPU18がアクセスしようとするDRAMデバイスを特定するチップセレクト信号を出力する回路モジュールである。このチップセレクト信号を通じてイネーブルとされたDRAMデバイスは、その機能がアクティブとなったデバイスとして、CPU18から何らかの制御がなされるようになる。
【0028】
DMAコントローラ193bは、各I/F11〜13からDRAM15及びオプションDRAM16への印刷要求,及び、DRAM15及びオプションDRAM16からビデオコントローラ191への転送を制御するための回路モジュールである。
【0029】
リフレッシュタイマ193cは、DRAMデバイスのリフレッシュを実行するタイミングの時間間隔をカウントして、リフレッシュ要求を意味するLレベルが周期的に起こるパルス信号をリフレッシュ制御信号として生成する回路モジュールである。本実施形態では、このリフレッシュタイマ193cは、標準的な7.8μs(=64ms/8192回)の間隔でLレベルが起きるパルス信号ではなく、その7.8μsをメモリスロットの個数と同数に等分した時間間隔(すなわち、7.8/4=1.95μs)でLレベルが起きるパルス信号(実質的には標準周期を1/4倍した信号)を、発生するようになっている。
【0030】
DRAMコントローラ193dは、DRAMアクセスデコーダ193a,DMAコントローラ193b,及び、リフレッシュタイマ193cからのアクセスを調停して、DRAMデバイスを制御する回路モジュールである。より具体的には、DRAMコントローラ193dは、DRAMアクセスデコーダ193aを介してCPU18からリード要求又はライト要求があった場合には、指定されたDRAMデバイスに対してリード制御又はライト制御を行い、DMAコントローラ193bからリード要求又はライト要求があった場合には、指定されたDRAMデバイスに対してリード制御又はライト制御を行い、リフレッシュタイマから193cからリフレッシュ要求があった場合には、DRAMデバイスに対してリフレッシュ制御を行う。
【0031】
このDRAMコントローラ193dは、その内部にCSセレクタ回路1931を内蔵している。このCSセレクタ回路1931は、全てのメモリスロットにDRAMデバイスが装着されている場合において、その全てのDRAMデバイスにおけるリフレッシュのタイミングを振り分けるための振分回路モジュールである。
【0032】
図3は、CSセレクタ回路1931の構成図である。CSセレクタ回路1931は、2bitカウンタ1931a,及び、デコーダ1931bからなる。
【0033】
2bitカウンタ1931aは、リフレッシュタイマ193cから出力されるリフレッシュ制御信号のパルス回数を4回ずつカウントする回路モジュールである。
【0034】
デコーダ1931bは、2bitカウンタ1931aにおいてカウントされた値に応じて、リフレッシュタイマ193cからのリフレッシュ制御信号から4個おきのパルスだけを抽出してなるリフレッシュ制御信号(実質的に周期が4倍となって標準周期に戻された信号)を、位相を90度ずつずらしながら、4個のメモリスロットのそれぞれに出力する回路モジュールである。
【0035】
図4は、4個のDRAMデバイス(メモリスロット)にそれぞれ入力されるリフレッシュ制御信号のシーケンス図である。図4に示されるように、「CS0X」のチップセレクト信号でイネーブルが規定されるDRAMデバイス,「CS1X」のチップセレクト信号でイネーブルが規定されるDRAMデバイス,「CS2X」のチップセレクト信号でイネーブルが規定されるDRAMデバイス,及び、「CS3X」のチップセレクト信号でイネーブルが規定されるDRAMデバイスにそれぞれ入力されるリフレッシュ制御信号のLレベル(リフレッシュ要求)パルスは、1.95μsずつずれている。但し、一つのDRAMデバイスについて見ると、入力されるリフレッシュ制御信号のLレベル(リフレッシュ要求)パルスは、7.8μs間隔ずつ生ずるようになっており、従来の仕様どおりの標準周期となる。なお、図4中のRASXとCASXは、DRAMデバイス内のロウアドレスとカラムアドレスの指定の有無を規定する制御信号である。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0037】
従来のメモリコントローラによると、図5に示されるように、4つのDRAMデバイスにおいて、リフレッシュのタイミングが揃っていたため、電源ラインに印加される電圧には、リップルが存在してしまうことがあった。しかし、本実施形態によれば、1つのDRAMデバイスについてみると、標準的な78μsの間隔でリフレッシュが行われるものの、4つのDRAMデバイスについてみれば、そのリフレッシュのタイミングが1.95μsずつずれているため、図4に示されているように、電源ラインに印加される電圧には、リップルが生じない。
【0038】
なお、CSセレクタ回路1931自体は、ゲート規模が小さい回路から構成することができるため、DRAMコントローラ193dの内部にこのCSセレクタ回路1931を組み込む構成を採用したとしても、ASIC19の設計製造の費用は殆ど増加しない。
【0039】
ところで、前述した本実施形態では、DRAMデバイスを着脱自在に装着するためのメモリスロットが4個であるとして説明したが、これに限定されるものではない。メモリスロットの数は、3個以下であっても良いし、5個以上であっても良い。何れの場合においても、メモリスロットに装着された各DRAMデバイスにおけるリフレッシュのタイミングが互いに重なっていなければ、本実施形態に係る効果を奏することができることになる。
【0040】
また、前述した本実施形態では、メモリスロットに入力するリフレッシュ制御信号の位相のずれ量が、メモリスロットの個数で標準周期を等分した長さであるとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、メモリスロットに実際に装着されたDRAMデバイスにだけリフレッシュ制御信号を入力するものとし、DRAMデバイスに入力されるリフレッシュ制御信号の位相のずれ量を、メモリスロットに装着されたDRAMデバイスの個数で等分した長さとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態の印刷装置の構成図
【図2】メモリコントローラ内におけるDRAMデバイスの制御を行う部分の構成図
【図3】CSセレクタ回路の構成図
【図4】本実施形態における4個のDRAMデバイスにそれぞれ入力されるリフレッシュ制御信号のシーケンス図
【図5】従来の形態における4個のDRAMデバイスにそれぞれ入力されるリフレッシュ制御信号のシーケンス図
【符号の説明】
【0042】
10 印刷装置
11 印刷エンジン
16 DRAM
17 オプションDRAM
19 ASIC
193 メモリコントローラ
193d DRAMコントローラ
1931 CSセレクタ回路
1931a 2bitカウンタ
1931b デコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ以上のDRAMデバイスを制御するための半導体集積回路であって、
リフレッシュを周期的に行うタイミングをパルスで定義したデジタル信号を出力するリフレッシュタイマ,及び、
前記リフレッシュタイマから出力されるデジタル信号に基づいて、前記DRAMデバイスのそれぞれについて、そのDRAMデバイス以外の全てのDRAMデバイスでのリフレッシュのタイミングとは重ならないタイミングをパルスで定義したデジタル信号を生成して出力するタイミング振分回路
を備えることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記振分回路は、前記DRAMデバイスのそれぞれに生成する信号の位相のずれ量を、一つのDRAMデバイスに入力される信号のパルスで定義されるタイミングの間隔を前記DRAMデバイスの個数と同数に等分した間隔と同じ時間となるようにする
ことを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記リフレッシュタイマは、前記各DRAMデバイスでのリフレッシュの全てのタイミングをパルスで定義したデジタル信号を出力し、
前記振分回路は、前記リフレッシュタイマから出力されたデジタル信号の中からDRAMデバイスの個数と同数おきのパルス群をそれぞれ取り出すことにより、前記各DRAMデバイス用のデジタル信号を生成する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−209176(P2006−209176A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16369(P2005−16369)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】