半結晶性アモルファスポリオレフィンブロックコポリマーからの柔軟で強靭なエラストマー組成物
2以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフト、及び、1以上のアモルファスポリオレフィンブロックからなるポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーは、半結晶性ブロック領域の結晶化度を維持しつつ好ましくはブロック又はグラフトコポリマーのアモルファス領域に位置しこの領域を膨潤させる低分子量液状希釈剤と、混合され得る。力学的又は熱力学的処理の後、この組成物は、柔軟さと高強度及び高い回復可能弾性とを兼ね備える。力学的又は熱力学的処理の前又は後で希釈剤種が組成物から取り除かれることにより、この組成物は、アモルファス領域内に超低エンタングルメント密度を備えた強靭な弾性材料を作り出すことをも明らかにされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高分子の分野に関する。さらに詳しくは、低分子量液状希釈剤と混合された、半結晶性ポリオレフィンブロック及び(非結晶性)ポリオレフィンブロックを備えたポリオレフィンブロック及びグラフトコポリマーに関する。本発明は、そのような“ゲル組成物”の力学的又は熱力学的処理が、柔軟性、回復可能な弾性、及び強靭性の珍しい併存を導くということを開示している。組成物は、希釈剤が処理補助剤として用いられるが、続いてポリオレフィンブロックコポリマーから取り除かれ、高い回復可能弾性及び高強靱性を備えたポリマー材料を作り出すことをもクレームされている。
【背景技術】
【0002】
様々なグレードのポリエチレン及びポリプロピレンといったポリオレフィンは、プラスチック材料市場の最も重要な区分の1つを構成している。モノマー(例えば、エチレン、プロピレン)の低コスト、重合によって作られ得る材料の多用途性及び工程の簡便性のため、ポリオレフィンは、包装フィルム、容器、パイプ、裏地、自動車用プラスチック、ワイヤ及びケーブル被覆、射出及びブロー成形の分野を含む幅広い用途範囲において広く適用されている1)。
【0003】
ホモポリマーの形態では、ポリエチレンは、例えば高密度ポリエチレンのように高結晶性で剛直であるか、若しくは、低密度ポリエチレンのように低結晶性ではあるが柔らかく、強靭で弾力のあるものとなり得る。前者は、大部分が線状のポリエチレン(PE)鎖で構成され、一方、後者のポリマーは、高度に分岐している。メタロセンPEのような新規グレードのポリエチレンは、従来のHDPEやLDPE材料よりも、分子量分布及び分岐の程度や型の制御について、より正確に駆使した工程、及び触媒を用いて製造される。
【0004】
同様に、多くのグレード及びタイプのポリプロピレンホモポリマーが市場に存在する。PP鎖に沿ったペンダントメチル基によって提供される立体化学によって、ポリプロピレンの型及び特性は、ポリエチレンの場合より多様なものである。例えば、イソタクチック(iPP)、シンジオタクチック(sPP)、及びアタクチック(aPP)ポリプロピレンの全てが、商業的に製造されている。iPP及びsPPに基づく材料は、より高結晶性で剛直である一方で、aPP材料は、低結晶性又は非結晶性の柔らかいものである。PEの場合と同様に、異なる工程で製造されたポリプロピレンは、分子量分布、分岐度、工程中の挙動、及び物理的特性において異なり得る。分子の長鎖性質と、溶融及び溶液の両方の状態におけるエンタングルメント特性とは、完全な結晶化を妨げることから、PE及び(配列された)PP材料の両方は、“半結晶性”であると考えられる。半結晶性ポリオレフィンの固体状態モルフォロジーは、広く変化し得るものであり、結晶は、様々な型をとり得るものである一方で、一般的には、2領域構造は、アモルファス領域によって分断されポリマー鎖が結晶領域と結合し且つ力学的に絡みあっているところに存在している。
【0005】
オレフィンモノマーは、様々な化学的工程を経て共重合され、ランダム又は統計的コポリマーを作り出し得る。例えば、エチレン及びプロピレンの共重合は、エチレン−プロピレンゴム(EPR)として知られるゴム状材料を作るために用いられる。1−ヘキセン、又は1−オクテンのような長鎖のアルファ−オレフィンの少量もエチレンと共重合することで、広範囲の用途に適用される柔軟なエラストマ及びプラストマ材料類が作り出される。
【0006】
ブロック及びグラフトのコポリマーは、高分子材料の他の類で商業化されているが、スチレン、ブタジエン及びイソプレンのリビングアニオン重合によって調製されたスチレンブロックコポリマー(SBCs)のみが特に、最近、ポリオレフィンのブロック及びグラフトのコポリマーを作る合成方法として浮上してきた。過去10年、分子量、分子構造、及び立体化学の精密制御が達成されるように、連鎖停止や転移過程を抑制する、様々な“リビング”アルケン重合化学が確認された2)。これらの触媒システム及び手段によって、多種多様な半結晶性ポリオレフィンブロック及びグラフトのコポリマーを合成することが今では可能である。例えば、Aブロックは半結晶性でiPP若しくはsPPであり、Bブロックは、低ガラス転移温度を有するエチレン及びプロピレンのアモルファス(非結晶性)統計的コポリマー(即ち、EPR)である、直鎖A−B−A構造を有するトリブロックコポリマーが調製されている。そのような材料は、熱可塑性ポリオレフィンのうちでは珍しい、優れたエラストマー特性を示している3)。
【0007】
ダウグローバルテクノロジーズ(“ダウパテント”)のArriola及び共同発明者は、ポリ(エチレン−r−1−オクテン)アモルファスゴムブロックで変性された半結晶性PEブロックで構成される統計的マルチブロックコポリマーを調製するための商業的に実践されるシステムを開示している4)。この工程は、各ブロックタイプのための2種のシングルサイト触媒を用いることを含み、2つの触媒サイトの間で成長ポリマー鎖の交換を助ける“鎖シャトル剤”を含む。ダウプロセスは、制御された構造のブロックコポリマー材料を作るために活性のあるオレフィン触媒に頼らず;むしろ、鎖シャトリング及び末端/移動工程の統計的性質が、ブロックの分子量分布及び鎖あたりのブロック数を有するブロックコポリマー材料を生む。それにもかかわらず、エチレン−オクテン統計的マルチブロックコポリマーが熱可塑性エラストマーとして応用される標準的なエチレン−オクテンランダムコポリマーより優れた熱的及び力学的特性を有することが、開示されている5)。
【0008】
スチレンブロックコポリマー(SBC)に基づいた熱可塑性エラストマーは、しばしば、材料を軟化させ、工程やレオロジー特性や接着特性を改良するために、また、コストを下げるために、オイル、可塑剤、粘性付与剤、他の低分子量希釈剤と混合される。このような“オイル延伸”は、ゲル組成物に分類され得る、柔軟で熱可塑性のエラストマー材料を生み出す。Applied Elastomerics Inc. のChenは、1以上の半結晶性PEブロックを含むSBCに基づいたゲル組成物が、引き裂き特性を改善することを開示している6)。しかしながら、Chenの特許は、ポリオレフィンブロックコポリマーから得られたゲル組成物についてクレームしていない。
【0009】
上述したダウの特許4)は、ポリエチレン−ポリ(エチレン−r−オクテン)マルチブロックコポリマーをオイルと組み合わせ、柔軟であるが、エチレン−オクテンランダムコポリマー対照から得られたゲル組成物より良好な熱耐性を有するエラストマーゲル組成物を作ることを開示している。しかしながら、この特許は、力学的又は熱力学的工程を用いてそのようなポリオレフィンブロックコポリマー/オイルゲル組成物の強度や回復可能な弾性を改善することを開示しておらず、また、後に取り除く処理補助剤としてのオイルや他の希釈剤を用いて、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きい歪み、好ましくは5を超える歪みでの接線弾性係数とにおいて、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、70%を超える大きい歪み変形回復という優れた弾性回復とを備える新たな高強度エラストマー組成物を作ることも開示していない。
【0010】
1979年、P.Smith及び共同研究者7),8)は、高分子量ポリエチレン(PE)ホモポリマーは、モノフィラメントゲル繊維を得るためにデカリンのような希釈剤を用いて希釈溶液中で処理され得ることを報告した。その後のゲル繊維の力学的な伸張(延伸)、及び、熱処理による希釈剤の除去は、超高強度及び高弾性を有する高結晶性繊維を作り出す。しかしながら、この研究は、ポリオレフィンブロックコポリマーを含む組成物を有しておらず、また、エラストマー材料も作り出していない。
【0011】
本発明に導く研究では、剛直で超高強度の繊維及びフィルムを作り出すためだけに従来適用された、P.Smith及び共同研究者によって開発されたゲルプロセス技術が、ポリオレフィンブロックコポリマーに関連して用いられ、我々は、1未満の歪みでの初期弾性係数と破壊直前の大きい歪み(5を超える歪み)での接線弾性係数とにおける、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、70%を超える大きい歪み変形回復という優れた弾性回復とを備える珍しいエラストマー材料を作り出すという、予期できない発見をなしえた。
【発明の概要】
【0012】
本発明に従い、2以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフト、及び、少なくとも1のアモルファスポリオレフィンブロックを有するポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーは、半結晶性ブロック領域の結晶性を維持しつつ、好ましくはブロック又はグラフトコポリマーのアモルファス領域に位置しこの領域を膨潤させる低分子量液状希釈剤と混合され得る。力学的又は熱力学的処理の後、結果として生じる組成物は、優れた力学的特性を有し、特に、1未満の歪みでの初期弾性係数でとりわけ柔軟であること、好ましくは5より大きい破壊直前の大きい歪みでの接線弾性係数において、初期係数に対する破壊直前の接線係数が50を超える比と、70%を超える大きい歪み変形回復という優れた弾性回復とを備える。この組成物は、熱可塑的に成形され得るものであり、容易に加工され得る。本発明が、低歪み、高使用温度、高引張変形、高強度、及び/又は改善された弾性回復においてより柔軟な材料を潜在的に可能にするということを除いて、そのようなゲル組成物の有用性が、柔軟なポリ塩化ビニル(PVC)やオイル−伸長スチレンブロックコポリマー(SBC)エラストマーの有用性と類似していることを、私たちは期待する。
【0013】
アモルファス領域において超低エンタングルメント密度を備え、柔軟性及び強靱性の優れた併存を備えた材料を作り出すべく、力学的又は熱力学的処理の前又は後のいずれかで組成物から液状希釈剤種が取り除かれるという、組成物の第2群もクレームされている。これら“抽出された−ゲル”組成物は、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊前の大きい歪み、好ましくは5より大きい歪みでの接線弾性係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、70%を超える大きい歪み変形回復という優れた弾性回復とによっても特徴付けられる。“抽出された−ゲル”組成物は、優れたエラストマー特性及び高強度が求められるエラストマーフィルム及び繊維において有用性を有することが期待される。
【0014】
一実施形態では、ポリマーゲル組成物は、(a)1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマー及び(b)1種以上の低分子量液状希釈剤の混合物を含み、
(i)各半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーは、アモルファスポリオレフィンBの1以上のブロックでつながった半結晶性ポリオレフィンAの2以上のブロック又はグラフトでなるA−Bブロック又はグラフトコポリマー材料であり、
(ii)各低分子量液状希釈剤は、ポリオレフィンブロックコポリマーのアモルファスBブロックと混合又は部分的に混合し得るものであり、使用温度ではポリオレフィンブロックコポリマーの半結晶性Aブロック又はグラフトの結晶を溶解せず、そのガラス転移温度は室温以下であり、
(iii)1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーと1種以上の低分子量液状希釈剤とを組み合わせて作られるゲル組成物は、適した力学的又は熱力学的処理によって変形され得る結晶を有し、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きい歪みでの接線弾性係数とでの、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比を備える材料を作り出し、
(iv)応力又は規制力が取り除かれたときに70%を超えて回復する大きな歪みを有する。
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーは、限定されるものではないが、ABAトリブロックコポリマー、ABABAペンタブロックコポリマー、又は(AB)n放射状ブロックコポリマー;又は...ABABAB...構造を有するマルチブロックコポリマーであり、統計的プロセスによって決定されるコポリマーあたりのブロック数及びブロックサイズを備え、A半結晶性ブロックの数平均分子量は、500g/モルを下回らず、Bアモルファスブロックの数平均分子量は、少なくとも1000g/モルであり;又は、1000g/モルより大きい数平均分子量のアモルファスB骨格を有するグラフトコポリマーであり、これにはそれぞれ数平均分子量が500g/モルまたはそれ以上の半結晶性ポリオレフィンAの2以上のグラフト(枝)が結合し、B骨格に沿って規則的に又はランダムに配置されている。
【0015】
Aポリマーブロック又はグラフトは、限定されるものではないが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むイソタクチック若しくはシンジオタクチック長鎖アルファオレフィン;ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)又はポリ(ビニルシクロヘキサン)のイソタクチック若しくはシンジオタクチック変性体であり得る半結晶性ポリオレフィンである。
【0016】
アモルファスBポリオレフィンブロックは、限定されるものではないが、アタクチック又は位置不規則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選ばれたポリオレフィンランダム又は統計的コポリマー;プロピレンが1種以上の長鎖アルファ−オレフィンと、エチレン又はエチレンなしで共重合されることにより作られるアタクチック又は位置不規則性ランダム又は統計的コポリマー;又は、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られるポリオレフィン化合物であり得る。
【0017】
上記半結晶性ブロックコポリマーのアモルファスBポリオレフィンブロックは、室温よりはるかに低いガラス転移温度を有し、Aポリオレフィンブロック又はグラフトの結晶は、室温よりかなり高い温度で溶解し、半結晶性ブロックコポリマーが単独で熱可塑性エラストマーの力学的特性を示す。
【0018】
上述した半結晶性Aブロック又はグラフトは、好ましくは500〜200,000g/モル、より好ましくは2,000〜150,000g/モルの数平均分子量を有する。上述したアモルファスBブロックは、好ましくは1,000〜500,000g/モル、より好ましくは3,000〜400,000g/モルの数平均分子量を有する。
【0019】
上記実施形態では、低分子量液状希釈剤は、半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーのAブロック又はグラフトが結晶化した後に、結晶が続いて適当な力学的又は熱力学的処理によって変形される前若しくは後に、組成物から取り除かれ、1未満の歪みにおける初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪み、好ましくは5より大きい歪みにおける弾性接線係数とでの、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、応力又は規制力が取り除かれたときに70%を超えて回復する大きな歪みとを備える材料を作る。
【0020】
他の実施形態では、1以上のアモルファスポリオレフィンBのブロックで隔てられている2以上の半結晶性ポリオレフィンAのブロック又はグラフトを備えたA−Bポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーは、1以上のアモルファスポリオレフィンDのブロックで隔てられている2以上の半結晶性ポリオレフィンCのブロック又はグラフトを備えた第2のC−Dポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマー材料と混合され、ポリマーB及びDは、同じであるか又は異なり、低分子量液状希釈剤は、アモルファスB及びDブロックと混和又は部分的に混和し、半結晶性のA及びCブロック又はグラフトの結晶を溶解せず、A及びCの結晶は、適当な力学的又は熱力学的処理によって変形され得る。
【0021】
該実施形態では、半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーは、ABAトリブロックコポリマーとCDCトリブロックコポリマーとの混合物となり得る;又は、A半結晶性ブロックの数平均分子量が500g/モルより大きくBアモルファスブロックの数平均分子量が1000g/モルより大きい、統計的処理によって決定されるブロックサイズ及びブロック数を有する...ABABAB...構造のマルチブロックコポリマーと、ポリオレフィンブロックB及びDが同じ場合を含みC半結晶性ブロックの数平均分子量が500g/モルより大きくDアモルファスブロックの数平均分子量が1000g/モルより大きい、統計的処理によって決定されるブロックサイズ及びブロック数を有する...CDCDC...構造、又はCDCトリブロック構造の第2のブロックコポリマーとの混合物となり得る。組成物は、半結晶性ブロックコポリマーのアモルファスB又はDポリマーブロックが室温よりかなり低いガラス転移温度を有する場合も含まれ、A及びCポリマーブロック又はグラフトの結晶が室温よりかなり高い温度で溶融し、そして、半結晶性ブロックコポリマーが単独で熱可塑性エラストマーの力学的特性を備える。
【0022】
これら組成物においては、A及びCポリマーブロック又はグラフトは、限定されるものではないが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むイソタクチック若しくはシンジオタクチック長鎖アルファオレフィン;ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)又はポリ(ビニルシクロヘキサン)のイソタクチック若しくはシンジオタクチック変性体であり得る、半結晶性ポリオレフィンである。
【0023】
アモルファスB及びDポリオレフィンブロックは、限定されるものではないが、アタクチック又は位置不規則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選ばれたポリオレフィンランダム又は統計的コポリマー;プロピレンが1種以上の長鎖アルファ−オレフィンと、エチレン又はエチレンなしで共重合されることにより作られるアタクチック又は位置不規則性のランダム又は統計的コポリマー;又は、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られるポリオレフィン化合物であり得る。
【0024】
アモルファスB及びDブロック、及び希釈剤のTg値は、好ましくは使用温度より低い10〜150℃、より好ましくは使用温度より低い50〜150℃である。結晶性AブロックのTm値は、好ましくは使用温度を超える20〜250℃、より好ましくは使用温度を超える50〜200℃である。
【0025】
本発明の実施形態で用いる低分子量液状希釈剤は、限定されるものではないが、鉱物オイル、パラフィンオイル、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤などの低揮発性の低分子量液状希釈剤;デカリンなどの比較的高揮発性の低分子量液状希釈剤;又は、液状、気体状若しくは超臨界流体状態の二酸化炭素であり得る。これら低分子量液状希釈剤は、10〜5000g/モルの、好ましくは10〜1000g/モルの分子量を有し得る。本発明のゲル組成物で用いる低分子量液状希釈剤の重量パーセンテージは、15%〜99.9%の範囲、好ましくは50%〜99.9%の範囲、最も好ましくは80%〜99.9%の範囲である。
【0026】
上記実施形態では、低分子量液状希釈剤は、半結晶性ブロックコポリマーのA及びCブロック又はグラフトが結晶化した後に、結晶が続いて適当な力学的又は熱力学的処理によって変形される前若しくは後に、組成物から取り除かれ、1未満の歪みにおける初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪み、好ましくは5より大きい歪みにおける弾性接線係数とでの、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、応力又は規制力が取り除かれたときに70%を超えて回復する歪みとを備える材料を作る。
【0027】
本発明のポリマーゲル組成物は、1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーと、1種以上の低分子量液状希釈剤とを混合し、加熱し、アニーリングし、そして混合物を冷却することにより作ることができる。他の方法としては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーと、1種以上の低分子量液状希釈剤とを混練機、混合機、押出機などの標準的なポリマー加工装置を用いて昇温しつつ機械的に混ぜ合わせるものがある。
【0028】
力学的又は熱力学的処理は、上記方法で形成されたポリマーゲル組成物を、エラストマー又はゲル液状マトリックスによって隔てられた結晶へと変化させ、この結晶は、負荷が取り除かれた時に80%を超えて回復する歪みである大きな歪みにおいて、とても大きな弾性係数(接線係数)を生み出すために適当な構造である。適当な力学的処理は、限定されるものではないが、引張による単純延伸、より大きい最大歪みが延伸と緩和との各サイクルにおいてなされる引張と緩和による繰り返し単純延伸、二軸延伸、単純引張を例とする漸進性二軸延伸及び緩和、適当に形成されたダイを通して又は適当に形成された空洞へ材料を押出すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向に沿った伸張を適用すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向及びそれと直交する方向の両方に沿った伸張を適用すること、厚さ減少を可能にする一対のローラ又は連続した一対のローラの間で圧迫することで材料の厚さの減少をもたらす変形、緩和、さらなる厚さの減少、緩和などがふくまれ得る。適当な熱力学的処理は、上記のごとく概要を記述した力学的処理の各段階の途中又は間で温度変化をかけるものである。
【0029】
加えて、低分子量液状希釈剤は、半結晶性ブロックコポリマーが結晶化した後に、結晶が続いて適当な力学的又は熱力学的処理によって変形される前若しくは後に、組成物から取り除かれ、1未満の歪みにおける初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪み、好ましくは5より大きい歪みにおける弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数の比が50を超え、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る。
【0030】
本発明のより深い理解のために、言及が添付の図面と併せて次の説明になされている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、力学的サイクル処理中におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6.0重量%)の応力歪み曲線を示す。
【図2】図2は、図1に示した力学的サイクル処理中におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6.0重量%)の弾性回復を示す。
【図3】図3は、図1のサンプルで示されたものと同様な力学的サイクル処理後におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6.0重量%)の単調負荷の応力歪みグラフを示す。
【図4】図4は、図1のサンプルで示されたものと同様な力学的サイクル処理後におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6.0重量%)の単調負荷を示す写真である。写真は、21の歪みで取られたものである。
【図5】図5は、力学的サイクル処理中におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の応力歪み曲線を示す。
【図6】図6は、図5に示した力学的サイクル処理中におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の弾性回復を示す。
【図7】図7は、力学的サイクル処理中の2回目におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の応力歪み曲線を示す(図5に示すようにサンプルは既に力学的処理を経ている)。
【図8】図8は、図7に示した力学的サイクル処理中の2回目におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の弾性回復を示す。
【図9】図9は、力学的サイクル処理中におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(5.2重量%)の応力歪み曲線を示す。
【図10】図10は、図9に示した力学的サイクル処理中におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(5.2重量%)の弾性回復を示す。
【図11】図11は、力学的サイクル処理中の1回目におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の応力歪み曲線を示す。
【図12】図12は、図11に示した力学的サイクル処理中におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の弾性回復を示す。
【図13】図13は、力学的サイクル処理中の2回目におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の応力歪み曲線を示す(図11に示すようにサンプルは既に力学的処理を経ている)。
【図14】図14は、図13に示した力学的サイクル処理中の2回目におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の弾性回復を示す。
【図15】図15は、図13のサンプルで示された力学的サイクル処理中の2回目におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の負荷の写真である。写真は、10.6の歪みで取られたものである。
【図16】図16は、力学的サイクル処理中の1回目におけるiPP-b-EPR-b-iPP/鉱物オイルゲル(10重量%)の応力歪み曲線を示す。iPP-b-EPR-b-iPPそのままのサンプルは、990℃の融点を有する。
【図17】図17は、図16に示した力学的サイクル処理中におけるiPP-b-EPR-b-iPP/鉱物オイルゲル(10重量%)の弾性回復を示す。iPP-b-EPR-b-iPPそのままのサンプルは、990℃の融点を有する。
【図18】図18は、sPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6重量%)、sPP-b-EPR-b-sPPそのままのサンプル、及び様々な抽出時間における抽出されたsPP- b-EPR-b-sPPサンプルの質量損失を示す。
【図19】図19は、鉱物オイルが抽出された6重量%sPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)ゲルサンプルの写真を示す。
【図20】図20は、sPP-b-EPR-b-sPPそのままのサンプル(単調及びサイクル引張試験)及びオイル抽出サンプル(単調試験)の応力歪み曲線を示す。
【図21】図21は、力学的サイクル試験中の段階におけるオイル抽出サンプルの応力歪み曲線を示す。
【図22】図22は、図20に示した力学的サイクル試験中のsPP-b-EPR-b-sPPそのままのサンプルの弾性回復を示す。
【図23】図23は、図21に示した力学的サイクル試験の段階におけるオイル抽出サンプルの弾性回復を示す。
【図24】図24は、sPP-b-EPR-b-sPPそのままのサンプル(単調及びステップサイクル試験)、オイル抽出サンプル(単調試験)、及び、伸張/オイル抽出サンプル(単調試験)の応力歪み曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で用いられる“半結晶性ポリマー”という用語は、そのセグメントが室温又は材料の使用温度において部分的に結晶化しているポリマーのことを表す。半結晶性ポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、イソタクチックポリプロピレン、及びシンジオタクチックポリプロピレンが挙げられる。そのような材料は、ポリマーの絡み合い性質によって溶融状態からの冷却において全てが結晶化するわけではない。その代わりに、良好な鎖レジストリー及び高結晶性を有する小さな“結晶”領域が、ポリマーセグメントの液状様の充填を備える“アモルファス”領域によって隔てられるように、材料は、非均一的な形式で結晶化する。結晶及びアモルファス領域の、形状、サイズ、及び幾何学的な特徴は、異なる半結晶性ポリマー間、また、単一のポリマー材料内でも冷却や処理条件によって広く変わり得る。
【0033】
2以上の半結晶性ブロック又はグラフト、及び、1以上のつながったアモルファスブロックを有するポリオレフィンブロック及びグラフトコポリマーは、半結晶性ブロック又はグラフト領域の結晶性を維持しつつブロック又はグラフトコポリマーのアモルファス領域に特異的に位置し該領域を膨潤させる低分子量液状希釈剤と混合される。力学的又は熱力学的処理の後、結果として得られるゲル組成物は、1未満の歪みでの初期弾性係数の非常に柔らかさと、破壊直前の大きい歪み、好ましくは5を超える大きな歪みでの接線弾性係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比を有し、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復するという驚くべき力学的特性を備える。組成物は、熱可塑的に成形され容易に加工される。本発明が、低歪み、高使用温度、高引張変形、高強度、及び/又は改善された弾性回復においてより柔軟な材料を潜在的に可能にするということを除いて、そのようなゲル組成物の有用性は、柔軟なポリ塩化ビニル(PVC)やオイル−伸長スチレンブロックコポリマー(SBC)エラストマーの有用性と類似し得る。
【0034】
アモルファス領域内における超低エンタングルメント(絡み合い)密度を備えた材料を作り出すべく、力学的又は熱力学的処理の前又は後のいずれかで、組成物から液状希釈剤種が取り除かれるという、組成物の第2群も開示されている。これら組成物は、優れたエラストマー特性及び高強度を備えたフィルム及び繊維を生み出すことが期待される。
【実施例】
【0035】
(試験例1)
シンジオタクチックポリプロピレン-b-エチレン-プロピレン-ゴム-b-シンジオタクチックポリプロピレン(sPP-b-EPR-b-sPP)というポリオレフィントリブロックコポリマー、及び鉱物オイル希釈剤を含む組成物を基にしたポリマー材料が、次のようにして調製された:鉱物オイル(Fisher Chemical, 重質 (USP/FCC) 8042-47-5 パラフィン, Fisher Scientific, Fair Lawn, NJ, 07410)に〜6重量%となる粉状sPP-b-EPR-sPPを入れた混合物を用意した。混合物は、真空オーブン中で170℃15時間加熱され、続いて次の温度で連続してアニーリングした:150℃で3時間、120℃で2時間、及び100℃で27時間、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。トリブロックコポリマーsPP-b-EPR-b-sPPは、全平均数分子量Mnが357kg/モルであり、sPPブロックの全重量%は26%であり、未希釈sPP-b-EPR-b-sPP におけるsPPブロックの結晶性Xcは、28.3%であった(DSC測定による)。sPP-b-EPR-b-sPPトリブロックコポリマーの重合及び特性といった他の詳細については、参考として記載されているHottaら9)の記述に見られる。このsPP-b-EPR-b-sPPトリブロックコポリマーは、TsPP26.357EPR.66という形に省略する。66という記号は、EPRブロック内におけるエチレン(Fe)画分のモルを示す。広角X線散乱は、ゲル中のsPPブロック結晶の結晶性が全ゲル質量に対して約0.6%であることを示した。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にして、サンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする歪み段階になるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0036】
図1は、力学的サイクル処理工程の1つにおける応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16, 18, 及び20であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも20の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜200kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜3kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、非常に大きく、初期サンプル領域に対して1MPaに迫る。
【0037】
図2は、ゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの85%を超えることを示す。12以下の歪みでは、弾性回復は90%を超え、;それを超えると値は90%より小さくなるが、それでも85%より大きい。サイクル変形工程における最後の段階がおこなわれた後に、仮にサイクル処理が繰り返されると、歪み16及びそれ以下となる弾性回復は、ほぼ100%である。
【0038】
図3は、力学的サイクル処理後におけるsPP-b-EPR-b-sPP/流動オイルゲルの単調引張荷重での単調応力歪み曲線を示す。サンプルは、36を超える最大歪みを示す。最終応力は、1MPaを超える。さらには、30未満の歪みにおける応力は、かなり小さく、0.1MPa未満である。ゲル中のsPP-b-EPR-b-sPPコポリマー質量濃度は、わずか6.0%であることに注目すべきである。力学的サイクル処理後、sPP-b-EPR-b-sPP/流動オイルゲルは、標準的なエラストマー(例えば、架橋ゴム)又は標準的な架橋ゲルのいずれでも通常得られない驚くべき力学的特性、特に破壊時の非常に大きな歪み(>36)、引張歪みにおける試料面積減少の見かけ応力測定値を補正することによって計算された、破壊前の非常に大きな真応力36MPa、及び、ポリマーによって作られた最終試料面積の6%に基づいた破壊応力〜600MPaを示す。大きな歪みにおけるこの高強度−高弾性率特性は、低歪みにおける極端な柔らかさ(低弾性率)と相まっている。この特性一式は、全てが応力歪み曲線において低弾性率先端部を示す、ヒト又は動物皮膚のものにも非常に柔らかい革のものにも似ている。さらには、これら引張試料の裂け目は、歪みの不均一性により大きな応力集中が起こる把持部に隣接して必ず直ちに生じることから、均一的に歪まされたサンプルは、破壊までより大きな歪み及び応力を有すると予想され得る。本発明のさらに特徴的な特性は、従来の化学的に架橋されたゴムやゲルと異なり、所望の形状へと溶融され熱可塑的に処理されることである。
【0039】
図4は、21の大きな歪みを付加された図1のサンプルで示されたものと同様に力学的サイクル処理された後の単調荷重sPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲルを示す。把持部近辺の歪み不均一性が容易に認識される。
【0040】
(試験例2)
別にトリブロックコポリマーsPP-b-EPR-sPPが同様な実験に用いられた。このトリブロックコポリマーsPP-b-EPR-sPPは、336kg/モルの全数平均分子量Mnを有し、sPPブロックの全重量%は32%であり、そして、希釈されていないsPP-b-EPR-sPPにおけるsPPブロックの結晶性Xcが32.4%であった(DSC測定による)。このsPP-b-EPR-sPPトリブロックコポリマーは、TsPP32.336EPR.70という形に省略する。このトリブロックコポリマー及び鉱物オイル希釈剤を有する組成物に基づいたポリマー材料は、次のようにして調製された:鉱物オイル中における〜5.4重量%のsPP-b-EPR-sPP粉体(TsPP32.336EPR.70)の混合物が準備された。混合物は、真空オーブン中で170℃で15時間加熱され、そしてその後次の温度でアニーリングされた:150℃で3時間、120℃で2時間、及び100℃で27時間、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にして、サンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする段階歪みになるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0041】
図5は、力学的サイクル処理工程の1つにおけるsPP-b-EPR-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ0.1, 0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5, 10, 及び12.5であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも10の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜100kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜9.8kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、非常に大きく、初期サンプル領域に対して0.4MPaに迫る。
【0042】
図6は、ゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの80%を超えることを示す。6以下の歪みでは、弾性回復は90%を超え、;それを超えると値は90%より小さくなるが、それでも80%より大きい。
【0043】
図7は、図5に示された段階サイクル試験後における段階サイクル試験の2回目のsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)応力歪み曲線を示す。サンプルは、新たなサンプル寸法に対して7を超える最大歪みを示す。最終的な応力は、1.5MPaを超える。そのうえ、歪み4未満での応力は、ずっと小さく、0.1MPa未満である。
【0044】
図8は、段階サイクル処理されたゲルの弾性回復が、最大歪みが4未満のときに90%より大きく、5より大きい最大歪みでは弾性回復が85%より大きいことを示している。
【0045】
(試験例3)
ポリエチレン-b-エチレン-プロピレン-ゴム-b-ポリエチレン(PE-b-EPR-b-PE)のトリブロックコポリマー及び鉱物オイル希釈剤を有する組成物に基づいたポリマー材料は、次のようにして調製された:鉱物オイル中における〜5.2重量%のPE-b-EPR-b-PE粉体の混合物が準備された。混合物は、真空オーブン中で170℃で17時間加熱され、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却された。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。トリブロックコポリマーPE-b-EPR-b-PEは、166kg/モルの全数平均分子量Mnを有し、38kg/モル(PE)、115kg/モル(EPR)、13kg/モル(PE)のブロック長さを有していた。PEブロックの全重量%は31%であり、融点は119℃であり、PEブロックの結晶化度Xcは、37.1%であり、希釈されていないPE-b-EPR-b-PEにおける結晶化度Xcは、11.5%であった(DSC測定による)。広角X線散乱は、ゲル中のPEブロック結晶の結晶性が約0.94%であることを示した。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にしてサンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする段階歪みになるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0046】
図9は、PE-b-EPR-b-PEゲルの力学的サイクル処理工程の1つにおける応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ0.1, 0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5, 10, 12.5, 15, 及び17.5であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも17.5の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜76kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜6kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、大きく、初期サンプル領域に対して0.6MPaに迫る。
【0047】
図10は、PE-b-EPR-b-PEゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの75%を超えることを示す。14以下の歪みでは、弾性回復は80%を超え、;それを超えると値は80%より小さくなるが、それでも75%より大きい。
【0048】
(試験例4)
ポリエチレン-b-エチレン-プロピレン-ゴム-b-ポリエチレン(PE-b-EPR-b-PE)のトリブロックコポリマー及び鉱物オイル希釈剤を有する組成物に基づいたポリマー材料は、次のようにして調製された:鉱物オイル中における〜16.9重量%のPE-b-EPR-b-PE粉体の混合物が準備された。混合物は、真空オーブン中で170℃で17時間加熱され、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却された。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。トリブロックコポリマーPE-b-EPR-b-PEは、166kg/モルの全数平均分子量Mnを有し、38kg/モル(PE)、115kg/モル(EPR)、13kg/モル(PE)のブロック長さを有していた。PEブロックの全重量%は、31%であり、融点は119℃であり、PEブロックの結晶化度Xcは、37.1%であり、希釈されていないPE-b-EPR-PEにおける結晶化度Xcは、11.5%であった(DSC測定による)。広角X線散乱は、ゲル中のPEブロック結晶の結晶性が約1.95%であることを示した。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために、厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にしてサンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする段階歪みになるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0049】
図11は、力学的サイクル処理工程の1つにおける応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ0.1, 0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5, 10, 12.5, 15, 及び17.5であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも17.5の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜200kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜14kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、非常に大きく、初期サンプル領域に対して1.0MPaに迫る。
【0050】
図12は、ゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの85%を超えることを示す。10以下の歪みでは、弾性回復は90%を超え、;それを超えると値は90%より小さくなるが、それでも85%より大きい。
【0051】
図13は、図11に示された段階サイクル試験後における段階サイクル試験の2回目のPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)応力歪み曲線を示す。サンプルは、新たなサンプル寸法に対して10を超える最大歪みを示す。最終的な歪みは、3MPaをも超える。そのうえ、歪み3未満の応力は、ずっと小さく、0.1MPa未満である。
【0052】
図14は、最大歪みが4未満のときに2回サイクル処理されたゲルの弾性回復が最大歪みとともに増加し、4より大きい最大歪みでは弾性回復が85%より大きいことを示している。
【0053】
図15は、図13で示された10.6の大きな歪みにおける2回目の力学的サイクル処理中の、荷重を受けたPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)を示す。把持部近辺の歪み不均一性が容易に認識される。
【0054】
(試験例5)
イソタクチックポリプロピレン-b-エチレン-プロピレン-ゴム-b-イソタクチックポリプロピレン(iPP-b-EPR-b- iPP)のトリブロックコポリマー及び鉱物オイル希釈剤を有する組成物に基づいたポリマー材料は、次のようにして調製された:鉱物オイル中における〜10重量%のiPP-b-EPR-b- iPP粉体の混合物が準備された。混合物は、真空オーブン中で170℃で17時間加熱され、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却された。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。トリブロックコポリマーiPP-b-EPR-b- iPPは、235kg/モルの全数平均分子量Mnを有し、14kg/モル(iPP)、206kg/モル(EPR)、15kg/モル(iPP)のブロック長さを有していた。iPPブロックの全重量%は、12%であり、融点は99℃であり、iPPブロックの結晶化度Xcは、64.4%であり、希釈されていないiPP-b-EPR-b- iPPにおける結晶化度Xcは、7.7%であった(209J/gのiPP結晶性エンタルピー値を用いたDSC測定による)。DSCは、ゲル中のiPPブロック結晶の結晶性が約1.3%であることを示した。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために、厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にしてサンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする段階歪みになるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0055】
図16は、力学的サイクル処理工程の最初におけるiPP-b-EPR-b-iPPゲルサンプルの応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ0.1, 0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5, 10, 及び12.5であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも10の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜94kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜11kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、非常に大きく、初期サンプル領域に対して0.6MPaに迫る。
【0056】
図17は、ゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの90%を超えることを示す。弾性回復は、適用された全ての歪みにおいて珍しいことに一定である。
【0057】
(試験例6)
この試験では、6重量%のsPP-b-EPR-sPP(サンプルTsPP26.357EPR.66)ゲル中の鉱物オイルがヘキサン溶剤を用いて、40分又はそれ以上の時間でソックスレー抽出器によって抽出されている。抽出されたサンプルの熱重量測定曲線が図18に示されている。図より、20分間の抽出時間はゲルサンプルから鉱物オイルを抽出するのに不十分である一方、40分後には実質的に全ての鉱物オイルが抽出される。
【0058】
図19は、上述した方法によって鉱物オイルを抽出したsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)ゲルフィルムの一部の写真である。オイル抽出されたサンプルは、透明であると認識される。
【0059】
図20から23は、異なる方法で調製された2種のsPP-b-EPR-b-sPP組成物に関する。“そのままの”サンプルは、材料TsPP26.357EPR.66を170℃の溶融状態から室温に徐々に冷却することにより調製された。“オイル抽出”サンプルは、鉱物オイル中のTsPP26.357EPR.66の6重量%ゲルを作り、次に上述したヘキサンを用いて鉱物オイルを抽出することによって調製された。これら2種の材料が調製された後、これらは様々な力学的試験に供された。図20は、そのままのサンプルの単調及び段階サイクル応力歪み曲線と比較した、オイル抽出サンプルの単調引張応力歪み曲線を示す。オイル抽出サンプルは、そのままのサンプルと比較して、より小さい初期ヤング係数、より高い破壊時の真応力、及びより大きい破壊時の歪みを示す。
【0060】
図21は、オイル抽出ブロックコポリマーサンプルの引張サイクル応力歪み曲線を示す。このサイクル処理の後に、オイル抽出サンプルは、単調試験と比較して(図20)、より低い初期ヤング率、非常に大きい最大接線係数、及び非常に大きい歪み値を示す。最後の荷重サイクルでは、真応力に対して初期ヤング係数は〜7MPaであり、最大接線係数は〜870MPaである。ブロックコポリマーが伸張されると、このように係数は100倍を超えて増加する。破壊時の真応力は、>200MPaであり、驚くべき値である。
【0061】
図22及び23は、様々な引張歪みの後におけるそのままの及びオイル抽出後のサンプルそれぞれの弾性回復を示している。2サンプルの弾性回復は、概して類似している。オイル抽出サンプルにおけるEPR領域の間にエンタングルメント(絡みあい)がほとんどないことから、塑性変形に匹敵する力学的サイクル処理後の、オイル抽出サンプルの初期ヤング係数は、そのままのサンプル(〜10MPa)より低い(〜4MPa)。
【0062】
(試験例7)
試験例7は、6重量%のsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)ゲルが、鉱物オイルが抽出される前に単調に伸張されうることを実証している。そのような方法によって伸張され、次にオイル抽出されて、サンプルは調製される。図24は、試験例6に記載された“そのまま”及び“オイル抽出”サンプルと比較した、そのような“伸張/オイル抽出”サンプルの単調応力歪み曲線を示している。伸張/オイル抽出サンプルは、最も低い初期ヤング係数を示し、高い伸張性があり、高い破壊時の真応力(〜200MPa)を有する。様々なひときわ優れたエラストマー特性を備えた組成物の一群が、オイル抽出及び力学的処理段階の順序だけでなく、適用する力学的処理の型や程度を変えることによって調製され得ることを試験例6及び7はともに示している。
【0063】
(試験例8)
本発明におけるブロックコポリマーの半結晶性性質の重要性を実証すべく、我々は、鉱物オイル中に5.1重量%の標準的なSBC熱可塑性エラストマー、スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン(SEBS)の水添中心ブロックを有するトリブロックコポリマー(Kraton G1652M、29重量%のスチレンを有し50kg/モルの全分子量を有する対称トリブロックコポリマー)を含むゲル組成物を調製した。SEBSゲル組成物は、試験例1〜4のsPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲル及びPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲルと同様にして調製された。SEBSの力学的強さは、物理的架橋としてはたらくガラス領域にミクロ相分離しているSEBSのアモルファスポリスチレン末端ブロックによるものである。SEBSゲル組成物は、力学的サイクル処理を受け試験例1〜6におけるように試験された。SEBSゲルは得られる最大歪みが0.8であり、試験例1及び2のsPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲルでそれぞれ36及び10という歪み、また試験例3及び4のPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲルの歪み値よりかなり低いというように、非常にもろいことを我々は観察した。SEBSゲルの応力歪み曲線は、直線的であり、SEBSゲルの破壊時の歪みは、0.02MPaより小さかった。
【0064】
(試験例9)
本発明におけるブロックコポリマーの半結晶性性質のさらなる重要性を実証すべく、鉱物オイル中に5.3重量%の標準的な市販熱可塑性エラストマー、スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン(SEBS)のトリブロックコポリマー(Kraton G1651H)を含むゲル組成物が、試験例1〜4における鉱物オイルゲルと同様にして調製された。Kraton G1651Hは、Mw=174kg/モル、多分散性=1.09、スチレン/ゴム比=33/67重量/重量、及び、ブロック長さが29kg/モル(PS)、116 kg/モル(EB)、29kg/モル(PS)である。このより分子量の大きいSEBSの力学的強さも、物理的架橋としてはたらくガラス領域にミクロ相分離しているSEBSのアモルファスポリスチレン末端ブロックによるものである。SEBSゲル組成物は、力学的サイクル処理を受け試験例1におけるように試験された。力学的サイクル処理の後、この比較的高分子量のSEBSのゲルが破壊歪み15という比較的高い値を有し、90%を超える優れた弾性回復値を有するものの、その初期弾性係数は高く(4.5kPa)、大きい歪みにおける接線係数は、試験例1のsPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲルよりもずっと小さい(〜100kPa)ということを我々は観察した。加えて、破壊時のその応力(〜0.2MPa)は、試験例1のsPP-b-EPR-sPP/鉱物オイルゲルのもの(〜1MPa)よりかなり小さい。
【0065】
サイクル変形処理で獲得されたsPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲル、PE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル、iPP-b-EPR-iPP/鉱物オイルゲルの非常に優れた特性は、比較となるSEBS/鉱物オイルゲルのサイクル変形処理によっては得られないことを、試験例1〜9からの力学的試験結果における比較が示している。これは、クレームされた組成物の珍しい特性に関する、ブロックコポリマー成分における半結晶性硬質ブロックの重要性を実証している。
【0066】
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7. P. Smith, P. J. Lemstra, B. KaIb, 及び A. J. Pennings, Polymer Bull. 1, 733 (1979);.
8. P. Smith 及び P. J. Lemstra, Makromol. Chem. 180, 2983 (1979).
9. Proc. Natl. Acad. Sci. 103, 15327-15332 (2006).
【0067】
<関連文献の相互参照>
本出願は、2002年8月29日に出願された特許出願第60/498,790号の米国仮出願の利益を主張したものであり、参照することにより援用される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高分子の分野に関する。さらに詳しくは、低分子量液状希釈剤と混合された、半結晶性ポリオレフィンブロック及び(非結晶性)ポリオレフィンブロックを備えたポリオレフィンブロック及びグラフトコポリマーに関する。本発明は、そのような“ゲル組成物”の力学的又は熱力学的処理が、柔軟性、回復可能な弾性、及び強靭性の珍しい併存を導くということを開示している。組成物は、希釈剤が処理補助剤として用いられるが、続いてポリオレフィンブロックコポリマーから取り除かれ、高い回復可能弾性及び高強靱性を備えたポリマー材料を作り出すことをもクレームされている。
【背景技術】
【0002】
様々なグレードのポリエチレン及びポリプロピレンといったポリオレフィンは、プラスチック材料市場の最も重要な区分の1つを構成している。モノマー(例えば、エチレン、プロピレン)の低コスト、重合によって作られ得る材料の多用途性及び工程の簡便性のため、ポリオレフィンは、包装フィルム、容器、パイプ、裏地、自動車用プラスチック、ワイヤ及びケーブル被覆、射出及びブロー成形の分野を含む幅広い用途範囲において広く適用されている1)。
【0003】
ホモポリマーの形態では、ポリエチレンは、例えば高密度ポリエチレンのように高結晶性で剛直であるか、若しくは、低密度ポリエチレンのように低結晶性ではあるが柔らかく、強靭で弾力のあるものとなり得る。前者は、大部分が線状のポリエチレン(PE)鎖で構成され、一方、後者のポリマーは、高度に分岐している。メタロセンPEのような新規グレードのポリエチレンは、従来のHDPEやLDPE材料よりも、分子量分布及び分岐の程度や型の制御について、より正確に駆使した工程、及び触媒を用いて製造される。
【0004】
同様に、多くのグレード及びタイプのポリプロピレンホモポリマーが市場に存在する。PP鎖に沿ったペンダントメチル基によって提供される立体化学によって、ポリプロピレンの型及び特性は、ポリエチレンの場合より多様なものである。例えば、イソタクチック(iPP)、シンジオタクチック(sPP)、及びアタクチック(aPP)ポリプロピレンの全てが、商業的に製造されている。iPP及びsPPに基づく材料は、より高結晶性で剛直である一方で、aPP材料は、低結晶性又は非結晶性の柔らかいものである。PEの場合と同様に、異なる工程で製造されたポリプロピレンは、分子量分布、分岐度、工程中の挙動、及び物理的特性において異なり得る。分子の長鎖性質と、溶融及び溶液の両方の状態におけるエンタングルメント特性とは、完全な結晶化を妨げることから、PE及び(配列された)PP材料の両方は、“半結晶性”であると考えられる。半結晶性ポリオレフィンの固体状態モルフォロジーは、広く変化し得るものであり、結晶は、様々な型をとり得るものである一方で、一般的には、2領域構造は、アモルファス領域によって分断されポリマー鎖が結晶領域と結合し且つ力学的に絡みあっているところに存在している。
【0005】
オレフィンモノマーは、様々な化学的工程を経て共重合され、ランダム又は統計的コポリマーを作り出し得る。例えば、エチレン及びプロピレンの共重合は、エチレン−プロピレンゴム(EPR)として知られるゴム状材料を作るために用いられる。1−ヘキセン、又は1−オクテンのような長鎖のアルファ−オレフィンの少量もエチレンと共重合することで、広範囲の用途に適用される柔軟なエラストマ及びプラストマ材料類が作り出される。
【0006】
ブロック及びグラフトのコポリマーは、高分子材料の他の類で商業化されているが、スチレン、ブタジエン及びイソプレンのリビングアニオン重合によって調製されたスチレンブロックコポリマー(SBCs)のみが特に、最近、ポリオレフィンのブロック及びグラフトのコポリマーを作る合成方法として浮上してきた。過去10年、分子量、分子構造、及び立体化学の精密制御が達成されるように、連鎖停止や転移過程を抑制する、様々な“リビング”アルケン重合化学が確認された2)。これらの触媒システム及び手段によって、多種多様な半結晶性ポリオレフィンブロック及びグラフトのコポリマーを合成することが今では可能である。例えば、Aブロックは半結晶性でiPP若しくはsPPであり、Bブロックは、低ガラス転移温度を有するエチレン及びプロピレンのアモルファス(非結晶性)統計的コポリマー(即ち、EPR)である、直鎖A−B−A構造を有するトリブロックコポリマーが調製されている。そのような材料は、熱可塑性ポリオレフィンのうちでは珍しい、優れたエラストマー特性を示している3)。
【0007】
ダウグローバルテクノロジーズ(“ダウパテント”)のArriola及び共同発明者は、ポリ(エチレン−r−1−オクテン)アモルファスゴムブロックで変性された半結晶性PEブロックで構成される統計的マルチブロックコポリマーを調製するための商業的に実践されるシステムを開示している4)。この工程は、各ブロックタイプのための2種のシングルサイト触媒を用いることを含み、2つの触媒サイトの間で成長ポリマー鎖の交換を助ける“鎖シャトル剤”を含む。ダウプロセスは、制御された構造のブロックコポリマー材料を作るために活性のあるオレフィン触媒に頼らず;むしろ、鎖シャトリング及び末端/移動工程の統計的性質が、ブロックの分子量分布及び鎖あたりのブロック数を有するブロックコポリマー材料を生む。それにもかかわらず、エチレン−オクテン統計的マルチブロックコポリマーが熱可塑性エラストマーとして応用される標準的なエチレン−オクテンランダムコポリマーより優れた熱的及び力学的特性を有することが、開示されている5)。
【0008】
スチレンブロックコポリマー(SBC)に基づいた熱可塑性エラストマーは、しばしば、材料を軟化させ、工程やレオロジー特性や接着特性を改良するために、また、コストを下げるために、オイル、可塑剤、粘性付与剤、他の低分子量希釈剤と混合される。このような“オイル延伸”は、ゲル組成物に分類され得る、柔軟で熱可塑性のエラストマー材料を生み出す。Applied Elastomerics Inc. のChenは、1以上の半結晶性PEブロックを含むSBCに基づいたゲル組成物が、引き裂き特性を改善することを開示している6)。しかしながら、Chenの特許は、ポリオレフィンブロックコポリマーから得られたゲル組成物についてクレームしていない。
【0009】
上述したダウの特許4)は、ポリエチレン−ポリ(エチレン−r−オクテン)マルチブロックコポリマーをオイルと組み合わせ、柔軟であるが、エチレン−オクテンランダムコポリマー対照から得られたゲル組成物より良好な熱耐性を有するエラストマーゲル組成物を作ることを開示している。しかしながら、この特許は、力学的又は熱力学的工程を用いてそのようなポリオレフィンブロックコポリマー/オイルゲル組成物の強度や回復可能な弾性を改善することを開示しておらず、また、後に取り除く処理補助剤としてのオイルや他の希釈剤を用いて、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きい歪み、好ましくは5を超える歪みでの接線弾性係数とにおいて、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、70%を超える大きい歪み変形回復という優れた弾性回復とを備える新たな高強度エラストマー組成物を作ることも開示していない。
【0010】
1979年、P.Smith及び共同研究者7),8)は、高分子量ポリエチレン(PE)ホモポリマーは、モノフィラメントゲル繊維を得るためにデカリンのような希釈剤を用いて希釈溶液中で処理され得ることを報告した。その後のゲル繊維の力学的な伸張(延伸)、及び、熱処理による希釈剤の除去は、超高強度及び高弾性を有する高結晶性繊維を作り出す。しかしながら、この研究は、ポリオレフィンブロックコポリマーを含む組成物を有しておらず、また、エラストマー材料も作り出していない。
【0011】
本発明に導く研究では、剛直で超高強度の繊維及びフィルムを作り出すためだけに従来適用された、P.Smith及び共同研究者によって開発されたゲルプロセス技術が、ポリオレフィンブロックコポリマーに関連して用いられ、我々は、1未満の歪みでの初期弾性係数と破壊直前の大きい歪み(5を超える歪み)での接線弾性係数とにおける、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、70%を超える大きい歪み変形回復という優れた弾性回復とを備える珍しいエラストマー材料を作り出すという、予期できない発見をなしえた。
【発明の概要】
【0012】
本発明に従い、2以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフト、及び、少なくとも1のアモルファスポリオレフィンブロックを有するポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーは、半結晶性ブロック領域の結晶性を維持しつつ、好ましくはブロック又はグラフトコポリマーのアモルファス領域に位置しこの領域を膨潤させる低分子量液状希釈剤と混合され得る。力学的又は熱力学的処理の後、結果として生じる組成物は、優れた力学的特性を有し、特に、1未満の歪みでの初期弾性係数でとりわけ柔軟であること、好ましくは5より大きい破壊直前の大きい歪みでの接線弾性係数において、初期係数に対する破壊直前の接線係数が50を超える比と、70%を超える大きい歪み変形回復という優れた弾性回復とを備える。この組成物は、熱可塑的に成形され得るものであり、容易に加工され得る。本発明が、低歪み、高使用温度、高引張変形、高強度、及び/又は改善された弾性回復においてより柔軟な材料を潜在的に可能にするということを除いて、そのようなゲル組成物の有用性が、柔軟なポリ塩化ビニル(PVC)やオイル−伸長スチレンブロックコポリマー(SBC)エラストマーの有用性と類似していることを、私たちは期待する。
【0013】
アモルファス領域において超低エンタングルメント密度を備え、柔軟性及び強靱性の優れた併存を備えた材料を作り出すべく、力学的又は熱力学的処理の前又は後のいずれかで組成物から液状希釈剤種が取り除かれるという、組成物の第2群もクレームされている。これら“抽出された−ゲル”組成物は、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊前の大きい歪み、好ましくは5より大きい歪みでの接線弾性係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、70%を超える大きい歪み変形回復という優れた弾性回復とによっても特徴付けられる。“抽出された−ゲル”組成物は、優れたエラストマー特性及び高強度が求められるエラストマーフィルム及び繊維において有用性を有することが期待される。
【0014】
一実施形態では、ポリマーゲル組成物は、(a)1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマー及び(b)1種以上の低分子量液状希釈剤の混合物を含み、
(i)各半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーは、アモルファスポリオレフィンBの1以上のブロックでつながった半結晶性ポリオレフィンAの2以上のブロック又はグラフトでなるA−Bブロック又はグラフトコポリマー材料であり、
(ii)各低分子量液状希釈剤は、ポリオレフィンブロックコポリマーのアモルファスBブロックと混合又は部分的に混合し得るものであり、使用温度ではポリオレフィンブロックコポリマーの半結晶性Aブロック又はグラフトの結晶を溶解せず、そのガラス転移温度は室温以下であり、
(iii)1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーと1種以上の低分子量液状希釈剤とを組み合わせて作られるゲル組成物は、適した力学的又は熱力学的処理によって変形され得る結晶を有し、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きい歪みでの接線弾性係数とでの、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比を備える材料を作り出し、
(iv)応力又は規制力が取り除かれたときに70%を超えて回復する大きな歪みを有する。
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーは、限定されるものではないが、ABAトリブロックコポリマー、ABABAペンタブロックコポリマー、又は(AB)n放射状ブロックコポリマー;又は...ABABAB...構造を有するマルチブロックコポリマーであり、統計的プロセスによって決定されるコポリマーあたりのブロック数及びブロックサイズを備え、A半結晶性ブロックの数平均分子量は、500g/モルを下回らず、Bアモルファスブロックの数平均分子量は、少なくとも1000g/モルであり;又は、1000g/モルより大きい数平均分子量のアモルファスB骨格を有するグラフトコポリマーであり、これにはそれぞれ数平均分子量が500g/モルまたはそれ以上の半結晶性ポリオレフィンAの2以上のグラフト(枝)が結合し、B骨格に沿って規則的に又はランダムに配置されている。
【0015】
Aポリマーブロック又はグラフトは、限定されるものではないが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むイソタクチック若しくはシンジオタクチック長鎖アルファオレフィン;ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)又はポリ(ビニルシクロヘキサン)のイソタクチック若しくはシンジオタクチック変性体であり得る半結晶性ポリオレフィンである。
【0016】
アモルファスBポリオレフィンブロックは、限定されるものではないが、アタクチック又は位置不規則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選ばれたポリオレフィンランダム又は統計的コポリマー;プロピレンが1種以上の長鎖アルファ−オレフィンと、エチレン又はエチレンなしで共重合されることにより作られるアタクチック又は位置不規則性ランダム又は統計的コポリマー;又は、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られるポリオレフィン化合物であり得る。
【0017】
上記半結晶性ブロックコポリマーのアモルファスBポリオレフィンブロックは、室温よりはるかに低いガラス転移温度を有し、Aポリオレフィンブロック又はグラフトの結晶は、室温よりかなり高い温度で溶解し、半結晶性ブロックコポリマーが単独で熱可塑性エラストマーの力学的特性を示す。
【0018】
上述した半結晶性Aブロック又はグラフトは、好ましくは500〜200,000g/モル、より好ましくは2,000〜150,000g/モルの数平均分子量を有する。上述したアモルファスBブロックは、好ましくは1,000〜500,000g/モル、より好ましくは3,000〜400,000g/モルの数平均分子量を有する。
【0019】
上記実施形態では、低分子量液状希釈剤は、半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーのAブロック又はグラフトが結晶化した後に、結晶が続いて適当な力学的又は熱力学的処理によって変形される前若しくは後に、組成物から取り除かれ、1未満の歪みにおける初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪み、好ましくは5より大きい歪みにおける弾性接線係数とでの、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、応力又は規制力が取り除かれたときに70%を超えて回復する大きな歪みとを備える材料を作る。
【0020】
他の実施形態では、1以上のアモルファスポリオレフィンBのブロックで隔てられている2以上の半結晶性ポリオレフィンAのブロック又はグラフトを備えたA−Bポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーは、1以上のアモルファスポリオレフィンDのブロックで隔てられている2以上の半結晶性ポリオレフィンCのブロック又はグラフトを備えた第2のC−Dポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマー材料と混合され、ポリマーB及びDは、同じであるか又は異なり、低分子量液状希釈剤は、アモルファスB及びDブロックと混和又は部分的に混和し、半結晶性のA及びCブロック又はグラフトの結晶を溶解せず、A及びCの結晶は、適当な力学的又は熱力学的処理によって変形され得る。
【0021】
該実施形態では、半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーは、ABAトリブロックコポリマーとCDCトリブロックコポリマーとの混合物となり得る;又は、A半結晶性ブロックの数平均分子量が500g/モルより大きくBアモルファスブロックの数平均分子量が1000g/モルより大きい、統計的処理によって決定されるブロックサイズ及びブロック数を有する...ABABAB...構造のマルチブロックコポリマーと、ポリオレフィンブロックB及びDが同じ場合を含みC半結晶性ブロックの数平均分子量が500g/モルより大きくDアモルファスブロックの数平均分子量が1000g/モルより大きい、統計的処理によって決定されるブロックサイズ及びブロック数を有する...CDCDC...構造、又はCDCトリブロック構造の第2のブロックコポリマーとの混合物となり得る。組成物は、半結晶性ブロックコポリマーのアモルファスB又はDポリマーブロックが室温よりかなり低いガラス転移温度を有する場合も含まれ、A及びCポリマーブロック又はグラフトの結晶が室温よりかなり高い温度で溶融し、そして、半結晶性ブロックコポリマーが単独で熱可塑性エラストマーの力学的特性を備える。
【0022】
これら組成物においては、A及びCポリマーブロック又はグラフトは、限定されるものではないが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むイソタクチック若しくはシンジオタクチック長鎖アルファオレフィン;ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)又はポリ(ビニルシクロヘキサン)のイソタクチック若しくはシンジオタクチック変性体であり得る、半結晶性ポリオレフィンである。
【0023】
アモルファスB及びDポリオレフィンブロックは、限定されるものではないが、アタクチック又は位置不規則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選ばれたポリオレフィンランダム又は統計的コポリマー;プロピレンが1種以上の長鎖アルファ−オレフィンと、エチレン又はエチレンなしで共重合されることにより作られるアタクチック又は位置不規則性のランダム又は統計的コポリマー;又は、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られるポリオレフィン化合物であり得る。
【0024】
アモルファスB及びDブロック、及び希釈剤のTg値は、好ましくは使用温度より低い10〜150℃、より好ましくは使用温度より低い50〜150℃である。結晶性AブロックのTm値は、好ましくは使用温度を超える20〜250℃、より好ましくは使用温度を超える50〜200℃である。
【0025】
本発明の実施形態で用いる低分子量液状希釈剤は、限定されるものではないが、鉱物オイル、パラフィンオイル、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤などの低揮発性の低分子量液状希釈剤;デカリンなどの比較的高揮発性の低分子量液状希釈剤;又は、液状、気体状若しくは超臨界流体状態の二酸化炭素であり得る。これら低分子量液状希釈剤は、10〜5000g/モルの、好ましくは10〜1000g/モルの分子量を有し得る。本発明のゲル組成物で用いる低分子量液状希釈剤の重量パーセンテージは、15%〜99.9%の範囲、好ましくは50%〜99.9%の範囲、最も好ましくは80%〜99.9%の範囲である。
【0026】
上記実施形態では、低分子量液状希釈剤は、半結晶性ブロックコポリマーのA及びCブロック又はグラフトが結晶化した後に、結晶が続いて適当な力学的又は熱力学的処理によって変形される前若しくは後に、組成物から取り除かれ、1未満の歪みにおける初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪み、好ましくは5より大きい歪みにおける弾性接線係数とでの、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比と、応力又は規制力が取り除かれたときに70%を超えて回復する歪みとを備える材料を作る。
【0027】
本発明のポリマーゲル組成物は、1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーと、1種以上の低分子量液状希釈剤とを混合し、加熱し、アニーリングし、そして混合物を冷却することにより作ることができる。他の方法としては、1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーと、1種以上の低分子量液状希釈剤とを混練機、混合機、押出機などの標準的なポリマー加工装置を用いて昇温しつつ機械的に混ぜ合わせるものがある。
【0028】
力学的又は熱力学的処理は、上記方法で形成されたポリマーゲル組成物を、エラストマー又はゲル液状マトリックスによって隔てられた結晶へと変化させ、この結晶は、負荷が取り除かれた時に80%を超えて回復する歪みである大きな歪みにおいて、とても大きな弾性係数(接線係数)を生み出すために適当な構造である。適当な力学的処理は、限定されるものではないが、引張による単純延伸、より大きい最大歪みが延伸と緩和との各サイクルにおいてなされる引張と緩和による繰り返し単純延伸、二軸延伸、単純引張を例とする漸進性二軸延伸及び緩和、適当に形成されたダイを通して又は適当に形成された空洞へ材料を押出すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向に沿った伸張を適用すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向及びそれと直交する方向の両方に沿った伸張を適用すること、厚さ減少を可能にする一対のローラ又は連続した一対のローラの間で圧迫することで材料の厚さの減少をもたらす変形、緩和、さらなる厚さの減少、緩和などがふくまれ得る。適当な熱力学的処理は、上記のごとく概要を記述した力学的処理の各段階の途中又は間で温度変化をかけるものである。
【0029】
加えて、低分子量液状希釈剤は、半結晶性ブロックコポリマーが結晶化した後に、結晶が続いて適当な力学的又は熱力学的処理によって変形される前若しくは後に、組成物から取り除かれ、1未満の歪みにおける初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪み、好ましくは5より大きい歪みにおける弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数の比が50を超え、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る。
【0030】
本発明のより深い理解のために、言及が添付の図面と併せて次の説明になされている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、力学的サイクル処理中におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6.0重量%)の応力歪み曲線を示す。
【図2】図2は、図1に示した力学的サイクル処理中におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6.0重量%)の弾性回復を示す。
【図3】図3は、図1のサンプルで示されたものと同様な力学的サイクル処理後におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6.0重量%)の単調負荷の応力歪みグラフを示す。
【図4】図4は、図1のサンプルで示されたものと同様な力学的サイクル処理後におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6.0重量%)の単調負荷を示す写真である。写真は、21の歪みで取られたものである。
【図5】図5は、力学的サイクル処理中におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の応力歪み曲線を示す。
【図6】図6は、図5に示した力学的サイクル処理中におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の弾性回復を示す。
【図7】図7は、力学的サイクル処理中の2回目におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の応力歪み曲線を示す(図5に示すようにサンプルは既に力学的処理を経ている)。
【図8】図8は、図7に示した力学的サイクル処理中の2回目におけるsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の弾性回復を示す。
【図9】図9は、力学的サイクル処理中におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(5.2重量%)の応力歪み曲線を示す。
【図10】図10は、図9に示した力学的サイクル処理中におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(5.2重量%)の弾性回復を示す。
【図11】図11は、力学的サイクル処理中の1回目におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の応力歪み曲線を示す。
【図12】図12は、図11に示した力学的サイクル処理中におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の弾性回復を示す。
【図13】図13は、力学的サイクル処理中の2回目におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の応力歪み曲線を示す(図11に示すようにサンプルは既に力学的処理を経ている)。
【図14】図14は、図13に示した力学的サイクル処理中の2回目におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の弾性回復を示す。
【図15】図15は、図13のサンプルで示された力学的サイクル処理中の2回目におけるPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)の負荷の写真である。写真は、10.6の歪みで取られたものである。
【図16】図16は、力学的サイクル処理中の1回目におけるiPP-b-EPR-b-iPP/鉱物オイルゲル(10重量%)の応力歪み曲線を示す。iPP-b-EPR-b-iPPそのままのサンプルは、990℃の融点を有する。
【図17】図17は、図16に示した力学的サイクル処理中におけるiPP-b-EPR-b-iPP/鉱物オイルゲル(10重量%)の弾性回復を示す。iPP-b-EPR-b-iPPそのままのサンプルは、990℃の融点を有する。
【図18】図18は、sPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)/鉱物オイルゲル(6重量%)、sPP-b-EPR-b-sPPそのままのサンプル、及び様々な抽出時間における抽出されたsPP- b-EPR-b-sPPサンプルの質量損失を示す。
【図19】図19は、鉱物オイルが抽出された6重量%sPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)ゲルサンプルの写真を示す。
【図20】図20は、sPP-b-EPR-b-sPPそのままのサンプル(単調及びサイクル引張試験)及びオイル抽出サンプル(単調試験)の応力歪み曲線を示す。
【図21】図21は、力学的サイクル試験中の段階におけるオイル抽出サンプルの応力歪み曲線を示す。
【図22】図22は、図20に示した力学的サイクル試験中のsPP-b-EPR-b-sPPそのままのサンプルの弾性回復を示す。
【図23】図23は、図21に示した力学的サイクル試験の段階におけるオイル抽出サンプルの弾性回復を示す。
【図24】図24は、sPP-b-EPR-b-sPPそのままのサンプル(単調及びステップサイクル試験)、オイル抽出サンプル(単調試験)、及び、伸張/オイル抽出サンプル(単調試験)の応力歪み曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で用いられる“半結晶性ポリマー”という用語は、そのセグメントが室温又は材料の使用温度において部分的に結晶化しているポリマーのことを表す。半結晶性ポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、イソタクチックポリプロピレン、及びシンジオタクチックポリプロピレンが挙げられる。そのような材料は、ポリマーの絡み合い性質によって溶融状態からの冷却において全てが結晶化するわけではない。その代わりに、良好な鎖レジストリー及び高結晶性を有する小さな“結晶”領域が、ポリマーセグメントの液状様の充填を備える“アモルファス”領域によって隔てられるように、材料は、非均一的な形式で結晶化する。結晶及びアモルファス領域の、形状、サイズ、及び幾何学的な特徴は、異なる半結晶性ポリマー間、また、単一のポリマー材料内でも冷却や処理条件によって広く変わり得る。
【0033】
2以上の半結晶性ブロック又はグラフト、及び、1以上のつながったアモルファスブロックを有するポリオレフィンブロック及びグラフトコポリマーは、半結晶性ブロック又はグラフト領域の結晶性を維持しつつブロック又はグラフトコポリマーのアモルファス領域に特異的に位置し該領域を膨潤させる低分子量液状希釈剤と混合される。力学的又は熱力学的処理の後、結果として得られるゲル組成物は、1未満の歪みでの初期弾性係数の非常に柔らかさと、破壊直前の大きい歪み、好ましくは5を超える大きな歪みでの接線弾性係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比を有し、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復するという驚くべき力学的特性を備える。組成物は、熱可塑的に成形され容易に加工される。本発明が、低歪み、高使用温度、高引張変形、高強度、及び/又は改善された弾性回復においてより柔軟な材料を潜在的に可能にするということを除いて、そのようなゲル組成物の有用性は、柔軟なポリ塩化ビニル(PVC)やオイル−伸長スチレンブロックコポリマー(SBC)エラストマーの有用性と類似し得る。
【0034】
アモルファス領域内における超低エンタングルメント(絡み合い)密度を備えた材料を作り出すべく、力学的又は熱力学的処理の前又は後のいずれかで、組成物から液状希釈剤種が取り除かれるという、組成物の第2群も開示されている。これら組成物は、優れたエラストマー特性及び高強度を備えたフィルム及び繊維を生み出すことが期待される。
【実施例】
【0035】
(試験例1)
シンジオタクチックポリプロピレン-b-エチレン-プロピレン-ゴム-b-シンジオタクチックポリプロピレン(sPP-b-EPR-b-sPP)というポリオレフィントリブロックコポリマー、及び鉱物オイル希釈剤を含む組成物を基にしたポリマー材料が、次のようにして調製された:鉱物オイル(Fisher Chemical, 重質 (USP/FCC) 8042-47-5 パラフィン, Fisher Scientific, Fair Lawn, NJ, 07410)に〜6重量%となる粉状sPP-b-EPR-sPPを入れた混合物を用意した。混合物は、真空オーブン中で170℃15時間加熱され、続いて次の温度で連続してアニーリングした:150℃で3時間、120℃で2時間、及び100℃で27時間、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。トリブロックコポリマーsPP-b-EPR-b-sPPは、全平均数分子量Mnが357kg/モルであり、sPPブロックの全重量%は26%であり、未希釈sPP-b-EPR-b-sPP におけるsPPブロックの結晶性Xcは、28.3%であった(DSC測定による)。sPP-b-EPR-b-sPPトリブロックコポリマーの重合及び特性といった他の詳細については、参考として記載されているHottaら9)の記述に見られる。このsPP-b-EPR-b-sPPトリブロックコポリマーは、TsPP26.357EPR.66という形に省略する。66という記号は、EPRブロック内におけるエチレン(Fe)画分のモルを示す。広角X線散乱は、ゲル中のsPPブロック結晶の結晶性が全ゲル質量に対して約0.6%であることを示した。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にして、サンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする歪み段階になるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0036】
図1は、力学的サイクル処理工程の1つにおける応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16, 18, 及び20であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも20の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜200kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜3kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、非常に大きく、初期サンプル領域に対して1MPaに迫る。
【0037】
図2は、ゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの85%を超えることを示す。12以下の歪みでは、弾性回復は90%を超え、;それを超えると値は90%より小さくなるが、それでも85%より大きい。サイクル変形工程における最後の段階がおこなわれた後に、仮にサイクル処理が繰り返されると、歪み16及びそれ以下となる弾性回復は、ほぼ100%である。
【0038】
図3は、力学的サイクル処理後におけるsPP-b-EPR-b-sPP/流動オイルゲルの単調引張荷重での単調応力歪み曲線を示す。サンプルは、36を超える最大歪みを示す。最終応力は、1MPaを超える。さらには、30未満の歪みにおける応力は、かなり小さく、0.1MPa未満である。ゲル中のsPP-b-EPR-b-sPPコポリマー質量濃度は、わずか6.0%であることに注目すべきである。力学的サイクル処理後、sPP-b-EPR-b-sPP/流動オイルゲルは、標準的なエラストマー(例えば、架橋ゴム)又は標準的な架橋ゲルのいずれでも通常得られない驚くべき力学的特性、特に破壊時の非常に大きな歪み(>36)、引張歪みにおける試料面積減少の見かけ応力測定値を補正することによって計算された、破壊前の非常に大きな真応力36MPa、及び、ポリマーによって作られた最終試料面積の6%に基づいた破壊応力〜600MPaを示す。大きな歪みにおけるこの高強度−高弾性率特性は、低歪みにおける極端な柔らかさ(低弾性率)と相まっている。この特性一式は、全てが応力歪み曲線において低弾性率先端部を示す、ヒト又は動物皮膚のものにも非常に柔らかい革のものにも似ている。さらには、これら引張試料の裂け目は、歪みの不均一性により大きな応力集中が起こる把持部に隣接して必ず直ちに生じることから、均一的に歪まされたサンプルは、破壊までより大きな歪み及び応力を有すると予想され得る。本発明のさらに特徴的な特性は、従来の化学的に架橋されたゴムやゲルと異なり、所望の形状へと溶融され熱可塑的に処理されることである。
【0039】
図4は、21の大きな歪みを付加された図1のサンプルで示されたものと同様に力学的サイクル処理された後の単調荷重sPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲルを示す。把持部近辺の歪み不均一性が容易に認識される。
【0040】
(試験例2)
別にトリブロックコポリマーsPP-b-EPR-sPPが同様な実験に用いられた。このトリブロックコポリマーsPP-b-EPR-sPPは、336kg/モルの全数平均分子量Mnを有し、sPPブロックの全重量%は32%であり、そして、希釈されていないsPP-b-EPR-sPPにおけるsPPブロックの結晶性Xcが32.4%であった(DSC測定による)。このsPP-b-EPR-sPPトリブロックコポリマーは、TsPP32.336EPR.70という形に省略する。このトリブロックコポリマー及び鉱物オイル希釈剤を有する組成物に基づいたポリマー材料は、次のようにして調製された:鉱物オイル中における〜5.4重量%のsPP-b-EPR-sPP粉体(TsPP32.336EPR.70)の混合物が準備された。混合物は、真空オーブン中で170℃で15時間加熱され、そしてその後次の温度でアニーリングされた:150℃で3時間、120℃で2時間、及び100℃で27時間、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にして、サンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする段階歪みになるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0041】
図5は、力学的サイクル処理工程の1つにおけるsPP-b-EPR-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)の応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ0.1, 0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5, 10, 及び12.5であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも10の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜100kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜9.8kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、非常に大きく、初期サンプル領域に対して0.4MPaに迫る。
【0042】
図6は、ゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの80%を超えることを示す。6以下の歪みでは、弾性回復は90%を超え、;それを超えると値は90%より小さくなるが、それでも80%より大きい。
【0043】
図7は、図5に示された段階サイクル試験後における段階サイクル試験の2回目のsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP32.336EPR.70)/鉱物オイルゲル(5.4重量%)応力歪み曲線を示す。サンプルは、新たなサンプル寸法に対して7を超える最大歪みを示す。最終的な応力は、1.5MPaを超える。そのうえ、歪み4未満での応力は、ずっと小さく、0.1MPa未満である。
【0044】
図8は、段階サイクル処理されたゲルの弾性回復が、最大歪みが4未満のときに90%より大きく、5より大きい最大歪みでは弾性回復が85%より大きいことを示している。
【0045】
(試験例3)
ポリエチレン-b-エチレン-プロピレン-ゴム-b-ポリエチレン(PE-b-EPR-b-PE)のトリブロックコポリマー及び鉱物オイル希釈剤を有する組成物に基づいたポリマー材料は、次のようにして調製された:鉱物オイル中における〜5.2重量%のPE-b-EPR-b-PE粉体の混合物が準備された。混合物は、真空オーブン中で170℃で17時間加熱され、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却された。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。トリブロックコポリマーPE-b-EPR-b-PEは、166kg/モルの全数平均分子量Mnを有し、38kg/モル(PE)、115kg/モル(EPR)、13kg/モル(PE)のブロック長さを有していた。PEブロックの全重量%は31%であり、融点は119℃であり、PEブロックの結晶化度Xcは、37.1%であり、希釈されていないPE-b-EPR-b-PEにおける結晶化度Xcは、11.5%であった(DSC測定による)。広角X線散乱は、ゲル中のPEブロック結晶の結晶性が約0.94%であることを示した。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にしてサンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする段階歪みになるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0046】
図9は、PE-b-EPR-b-PEゲルの力学的サイクル処理工程の1つにおける応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ0.1, 0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5, 10, 12.5, 15, 及び17.5であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも17.5の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜76kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜6kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、大きく、初期サンプル領域に対して0.6MPaに迫る。
【0047】
図10は、PE-b-EPR-b-PEゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの75%を超えることを示す。14以下の歪みでは、弾性回復は80%を超え、;それを超えると値は80%より小さくなるが、それでも75%より大きい。
【0048】
(試験例4)
ポリエチレン-b-エチレン-プロピレン-ゴム-b-ポリエチレン(PE-b-EPR-b-PE)のトリブロックコポリマー及び鉱物オイル希釈剤を有する組成物に基づいたポリマー材料は、次のようにして調製された:鉱物オイル中における〜16.9重量%のPE-b-EPR-b-PE粉体の混合物が準備された。混合物は、真空オーブン中で170℃で17時間加熱され、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却された。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。トリブロックコポリマーPE-b-EPR-b-PEは、166kg/モルの全数平均分子量Mnを有し、38kg/モル(PE)、115kg/モル(EPR)、13kg/モル(PE)のブロック長さを有していた。PEブロックの全重量%は、31%であり、融点は119℃であり、PEブロックの結晶化度Xcは、37.1%であり、希釈されていないPE-b-EPR-PEにおける結晶化度Xcは、11.5%であった(DSC測定による)。広角X線散乱は、ゲル中のPEブロック結晶の結晶性が約1.95%であることを示した。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために、厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にしてサンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする段階歪みになるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0049】
図11は、力学的サイクル処理工程の1つにおける応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ0.1, 0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5, 10, 12.5, 15, 及び17.5であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも17.5の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜200kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜14kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、非常に大きく、初期サンプル領域に対して1.0MPaに迫る。
【0050】
図12は、ゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの85%を超えることを示す。10以下の歪みでは、弾性回復は90%を超え、;それを超えると値は90%より小さくなるが、それでも85%より大きい。
【0051】
図13は、図11に示された段階サイクル試験後における段階サイクル試験の2回目のPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)応力歪み曲線を示す。サンプルは、新たなサンプル寸法に対して10を超える最大歪みを示す。最終的な歪みは、3MPaをも超える。そのうえ、歪み3未満の応力は、ずっと小さく、0.1MPa未満である。
【0052】
図14は、最大歪みが4未満のときに2回サイクル処理されたゲルの弾性回復が最大歪みとともに増加し、4より大きい最大歪みでは弾性回復が85%より大きいことを示している。
【0053】
図15は、図13で示された10.6の大きな歪みにおける2回目の力学的サイクル処理中の、荷重を受けたPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル(16.9重量%)を示す。把持部近辺の歪み不均一性が容易に認識される。
【0054】
(試験例5)
イソタクチックポリプロピレン-b-エチレン-プロピレン-ゴム-b-イソタクチックポリプロピレン(iPP-b-EPR-b- iPP)のトリブロックコポリマー及び鉱物オイル希釈剤を有する組成物に基づいたポリマー材料は、次のようにして調製された:鉱物オイル中における〜10重量%のiPP-b-EPR-b- iPP粉体の混合物が準備された。混合物は、真空オーブン中で170℃で17時間加熱され、そして、オーブン中で室温にまで徐々に冷却された。この処理の後、混合物はきれいな透明ゲルになった。トリブロックコポリマーiPP-b-EPR-b- iPPは、235kg/モルの全数平均分子量Mnを有し、14kg/モル(iPP)、206kg/モル(EPR)、15kg/モル(iPP)のブロック長さを有していた。iPPブロックの全重量%は、12%であり、融点は99℃であり、iPPブロックの結晶化度Xcは、64.4%であり、希釈されていないiPP-b-EPR-b- iPPにおける結晶化度Xcは、7.7%であった(209J/gのiPP結晶性エンタルピー値を用いたDSC測定による)。DSCは、ゲル中のiPPブロック結晶の結晶性が約1.3%であることを示した。ゲルサンプルは、力学的処理及び力学的試験のために、厚さ約0.5mm、長さ7.3mm及び幅2.0mmの長方形試料へと切断された。力学的処理及び力学的試験は、Instron (Norwood, MA) 1123引張試験機を用いて実行された。力学的処理は、次のようにして実行された:引張サイクル処理は、室温(20℃)で徐々に大きな引張歪みとなるように段階的に行われた。各段階で、サンプルが一旦所定の引張歪みに到達すると、クロスヘッド方向を逆にしてサンプル歪みが、応力0になるまで同じ名目歪み速度(当初サンプル長さに対し〜0.07分-1)で減らされた。続いてサンプルは、次の目的とする段階歪みになるまで、再び同じ一定の歪み速度で引き延ばされた。サイクル処理は、最終サイクルにおいて目的とする歪みになるまで続けられた。
【0055】
図16は、力学的サイクル処理工程の最初におけるiPP-b-EPR-b-iPPゲルサンプルの応力緩和曲線を示す。最大応力は、それぞれ0.1, 0.5, 1.0, 2.5, 5.0, 7.5, 10, 及び12.5であった。ゲルサンプルは、破損を生じず達成可能な少なくとも10の歪みを有する、非常に弾性力のあるものである一方、力学的サイクル処理は、低歪みにおけるその応力緩和曲線を、〜94kPaの比較的高い初期弾性係数のものから、〜11kPaの非常に低い初期弾性係数のものへと完全に変形させる。力学的サイクル処理の後の大きな歪みにおける接線係数は、非常に大きく、初期サンプル領域に対して0.6MPaに迫る。
【0056】
図17は、ゲルの弾性回復が、適用された全ての歪みの90%を超えることを示す。弾性回復は、適用された全ての歪みにおいて珍しいことに一定である。
【0057】
(試験例6)
この試験では、6重量%のsPP-b-EPR-sPP(サンプルTsPP26.357EPR.66)ゲル中の鉱物オイルがヘキサン溶剤を用いて、40分又はそれ以上の時間でソックスレー抽出器によって抽出されている。抽出されたサンプルの熱重量測定曲線が図18に示されている。図より、20分間の抽出時間はゲルサンプルから鉱物オイルを抽出するのに不十分である一方、40分後には実質的に全ての鉱物オイルが抽出される。
【0058】
図19は、上述した方法によって鉱物オイルを抽出したsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)ゲルフィルムの一部の写真である。オイル抽出されたサンプルは、透明であると認識される。
【0059】
図20から23は、異なる方法で調製された2種のsPP-b-EPR-b-sPP組成物に関する。“そのままの”サンプルは、材料TsPP26.357EPR.66を170℃の溶融状態から室温に徐々に冷却することにより調製された。“オイル抽出”サンプルは、鉱物オイル中のTsPP26.357EPR.66の6重量%ゲルを作り、次に上述したヘキサンを用いて鉱物オイルを抽出することによって調製された。これら2種の材料が調製された後、これらは様々な力学的試験に供された。図20は、そのままのサンプルの単調及び段階サイクル応力歪み曲線と比較した、オイル抽出サンプルの単調引張応力歪み曲線を示す。オイル抽出サンプルは、そのままのサンプルと比較して、より小さい初期ヤング係数、より高い破壊時の真応力、及びより大きい破壊時の歪みを示す。
【0060】
図21は、オイル抽出ブロックコポリマーサンプルの引張サイクル応力歪み曲線を示す。このサイクル処理の後に、オイル抽出サンプルは、単調試験と比較して(図20)、より低い初期ヤング率、非常に大きい最大接線係数、及び非常に大きい歪み値を示す。最後の荷重サイクルでは、真応力に対して初期ヤング係数は〜7MPaであり、最大接線係数は〜870MPaである。ブロックコポリマーが伸張されると、このように係数は100倍を超えて増加する。破壊時の真応力は、>200MPaであり、驚くべき値である。
【0061】
図22及び23は、様々な引張歪みの後におけるそのままの及びオイル抽出後のサンプルそれぞれの弾性回復を示している。2サンプルの弾性回復は、概して類似している。オイル抽出サンプルにおけるEPR領域の間にエンタングルメント(絡みあい)がほとんどないことから、塑性変形に匹敵する力学的サイクル処理後の、オイル抽出サンプルの初期ヤング係数は、そのままのサンプル(〜10MPa)より低い(〜4MPa)。
【0062】
(試験例7)
試験例7は、6重量%のsPP-b-EPR-b-sPP(TsPP26.357EPR.66)ゲルが、鉱物オイルが抽出される前に単調に伸張されうることを実証している。そのような方法によって伸張され、次にオイル抽出されて、サンプルは調製される。図24は、試験例6に記載された“そのまま”及び“オイル抽出”サンプルと比較した、そのような“伸張/オイル抽出”サンプルの単調応力歪み曲線を示している。伸張/オイル抽出サンプルは、最も低い初期ヤング係数を示し、高い伸張性があり、高い破壊時の真応力(〜200MPa)を有する。様々なひときわ優れたエラストマー特性を備えた組成物の一群が、オイル抽出及び力学的処理段階の順序だけでなく、適用する力学的処理の型や程度を変えることによって調製され得ることを試験例6及び7はともに示している。
【0063】
(試験例8)
本発明におけるブロックコポリマーの半結晶性性質の重要性を実証すべく、我々は、鉱物オイル中に5.1重量%の標準的なSBC熱可塑性エラストマー、スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン(SEBS)の水添中心ブロックを有するトリブロックコポリマー(Kraton G1652M、29重量%のスチレンを有し50kg/モルの全分子量を有する対称トリブロックコポリマー)を含むゲル組成物を調製した。SEBSゲル組成物は、試験例1〜4のsPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲル及びPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲルと同様にして調製された。SEBSの力学的強さは、物理的架橋としてはたらくガラス領域にミクロ相分離しているSEBSのアモルファスポリスチレン末端ブロックによるものである。SEBSゲル組成物は、力学的サイクル処理を受け試験例1〜6におけるように試験された。SEBSゲルは得られる最大歪みが0.8であり、試験例1及び2のsPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲルでそれぞれ36及び10という歪み、また試験例3及び4のPE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲルの歪み値よりかなり低いというように、非常にもろいことを我々は観察した。SEBSゲルの応力歪み曲線は、直線的であり、SEBSゲルの破壊時の歪みは、0.02MPaより小さかった。
【0064】
(試験例9)
本発明におけるブロックコポリマーの半結晶性性質のさらなる重要性を実証すべく、鉱物オイル中に5.3重量%の標準的な市販熱可塑性エラストマー、スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン(SEBS)のトリブロックコポリマー(Kraton G1651H)を含むゲル組成物が、試験例1〜4における鉱物オイルゲルと同様にして調製された。Kraton G1651Hは、Mw=174kg/モル、多分散性=1.09、スチレン/ゴム比=33/67重量/重量、及び、ブロック長さが29kg/モル(PS)、116 kg/モル(EB)、29kg/モル(PS)である。このより分子量の大きいSEBSの力学的強さも、物理的架橋としてはたらくガラス領域にミクロ相分離しているSEBSのアモルファスポリスチレン末端ブロックによるものである。SEBSゲル組成物は、力学的サイクル処理を受け試験例1におけるように試験された。力学的サイクル処理の後、この比較的高分子量のSEBSのゲルが破壊歪み15という比較的高い値を有し、90%を超える優れた弾性回復値を有するものの、その初期弾性係数は高く(4.5kPa)、大きい歪みにおける接線係数は、試験例1のsPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲルよりもずっと小さい(〜100kPa)ということを我々は観察した。加えて、破壊時のその応力(〜0.2MPa)は、試験例1のsPP-b-EPR-sPP/鉱物オイルゲルのもの(〜1MPa)よりかなり小さい。
【0065】
サイクル変形処理で獲得されたsPP-b-EPR-b-sPP/鉱物オイルゲル、PE-b-EPR-b-PE/鉱物オイルゲル、iPP-b-EPR-iPP/鉱物オイルゲルの非常に優れた特性は、比較となるSEBS/鉱物オイルゲルのサイクル変形処理によっては得られないことを、試験例1〜9からの力学的試験結果における比較が示している。これは、クレームされた組成物の珍しい特性に関する、ブロックコポリマー成分における半結晶性硬質ブロックの重要性を実証している。
【0066】
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9. Proc. Natl. Acad. Sci. 103, 15327-15332 (2006).
【0067】
<関連文献の相互参照>
本出願は、2002年8月29日に出願された特許出願第60/498,790号の米国仮出願の利益を主張したものであり、参照することにより援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマー、及び(b)1種以上の低分子量液状希釈剤の混合物を含むポリマーゲル組成物であって、
各半結晶性ポリオレフィンコポリマーが、1以上のアモルファスポリオレフィンBのブロックでつながった2以上の半結晶性ポリオレフィンAのブロック又はグラフトを含むA−Bブロック又はグラフトコポリマー材料であり;
各低分子量液状希釈剤が、半結晶性ブロックコポリマーのアモルファスBブロックと混和又は部分的に混和し、使用温度で半結晶性ブロック又はグラフトコポリマーの半結晶性Aブロック又はグラフトの結晶を溶解せず、そのガラス転移温度が使用温度以下であり;
1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマー及び1種以上の低分子量液状希釈剤を組み合わせることにより調製されたゲル組成物は、力学的又は熱力学的な処理によって変形され得る結晶を有し、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数との、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、
応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復するポリマーゲル組成物。
【請求項2】
破壊直前の歪みが5より大きい請求項1記載の組成物。
【請求項3】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーがABAトリブロックコポリマー、ABABAペンタブロックコポリマー、又は(AB)n放射状ブロックコポリマーである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーが...ABABAB...構造を有するマルチブロックコポリマーであり、統計的処理によって決定されるブロックサイズ及び鎖あたりのブロック数を有し、A半結晶性ブロックの数平均分子量が500g/モルより大きく、Bアモルファスブロックの数平均分子量が1000g/モルより大きい請求項1記載の組成物。
【請求項5】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーが1000g/モルより大きい数平均分子量のアモルファスB主鎖を有するグラフトコポリマーであり、該コポリマーには500g/モルより大きい数平均分子量のグラフトである、半結晶性ポリマーAの2以上のグラフト(枝)が結合している請求項1記載の組成物。
【請求項6】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーのアモルファスBポリオレフィンブロックが使用温度以下のガラス転移温度を有し、Aポリオレフィンブロック又はグラフトの結晶が使用温度以上で溶融し、半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマー単独で熱可塑性エラストマーの力学的特性を有する請求項1記載の組成物。
【請求項7】
Aポリマーブロック又はグラフトが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むイソタクチック若しくはシンジオタクチック長鎖アルファオレフィン;ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)又はポリ(ビニルシクロヘキサン)のイソタクチック若しくはシンジオタクチック変性体からなる群より選ばれた半結晶性ポリオレフィンである請求項1記載の組成物。
【請求項8】
アモルファスBポリマーブロックが、アタクチック又は位置不規則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選ばれたポリオレフィンランダム又は統計的コポリマー;プロピレンが1種以上の長鎖アルファ−オレフィンとエチレン又はエチレンなしで共重合されることにより作られるアタクチック、又は位置不規則性ランダム、又は統計的コポリマー、からなる群より選ばれたポリオレフィンである請求項1記載の組成物。
【請求項9】
アモルファスBポリマーブロックが、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られるポリオレフィン化合物であり、半結晶性Aポリマーブロック又はグラフトが、ポリブタジエンの水素添加により作られるポリオレフィン化合物である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
低分子量液状希釈剤が、鉱物オイル、パラフィンオイル、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤のような低揮発性の低分子量液状有機化合物;又は、デカリンのような高揮発性の低分子量液状有機化合物である請求項1記載の組成物。
【請求項11】
低分子量液状希釈剤が、液状、気体状若しくは超臨界流体状態の二酸化炭素である請求項1記載の組成物。
【請求項12】
アモルファスポリオレフィンBの1以上のブロックによってつながった半結晶性ポリオレフィンAの2以上のブロック又はグラフトを有するA−Bブロック又はグラフトコポリマーが、アモルファスポリオレフィンDの1以上のブロックによってつながった半結晶性ポリオレフィンCの2以上のブロック又はグラフトを有する第2のポリオレフィンC−Dブロック又はグラフトコポリマー材料と混合されており、ポリマーB及びDが、同じであるか又は異なり、低分子量液状希釈剤が、アモルファスB及びDブロックと混和性又は一部混和性であり、半結晶性A及びCブロック又はグラフトの結晶を溶解せず、A及びCの結晶が変形されうる請求項1記載のポリマーゲル組成物。
【請求項13】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーが、ABAトリブロックコポリマー及びCDCトリブロックコポリマーの混合物である請求項12記載の組成物。
【請求項14】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーが、統計的工程で決定されるブロックサイズ及び鎖あたりのブロック数を有する...ABABAB...構造のマルチブロックコポリマーと、CDCトリブロック構造又は統計的工程で決定されるブロックサイズ及び鎖あたりのブロック数を有する...CDCDC...構造の第2の半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーとの混合物であって、A半結晶性ポリオレフィンブロックが500g/モルより大きい数平均分子量を有し、Bアモルファスポリオレフィンブロックが1000g/モルより大きい数平均分子量を有し、C半結晶性ポリオレフィンブロックが500g/モルより大きい数平均分子量を有し、Dアモルファスポリオレフィンブロックが1000g/モルより大きい数平均分子量を有し、ポリマーB及びDが同じ場合を含む請求項12記載の組成物。
【請求項15】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーのアモルファスB及びDポリオレフィンブロックが使用温度以下のガラス転移温度を有し、A及びCポリオレフィンブロック又はグラフトの結晶が使用温度以上で溶融し、半結晶性ブロックコポリマー混合物単独で熱可塑性エラストマーの力学的特性を有する請求項12記載の組成物。
【請求項16】
A及びCポリオレフィンブロック又はグラフトが、半結晶性ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むイソタクチック若しくはシンジオタクチック長鎖アルファオレフィン;又はポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)又はポリ(ビニルシクロヘキサン)のイソタクチック若しくはシンジオタクチック変性体、からなる群より選ばれた化合物である請求項12記載の組成物。
【請求項17】
アモルファスB及びDポリオレフィンブロックが、
アタクチック又は位置不規則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選ばれたポリオレフィンランダム又は統計的コポリマー;プロピレンが1種以上の長鎖アルファ−オレフィンと、エチレン又はエチレンなしで共重合されることにより作られるアタクチック、又は位置不規則性ランダム、又は統計的コポリマー、からなる群より選ばれたものである請求項12記載の組成物。
【請求項18】
アモルファスBポリマーブロックが、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られるポリオレフィン化合物であり、半結晶性Aポリマーブロック又はグラフトが、ポリブタジエンの水素添加により作られるポリオレフィン化合物である請求項12記載の組成物。
【請求項19】
低分子量液状希釈剤が、鉱物オイル、パラフィンオイル、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤のような低揮発性の低分子量液状有機化合物;又は、デカリンのような高揮発性の低分子量液状有機化合物である請求項12記載の組成物。
【請求項20】
低分子量液状希釈剤が、液状、気体状若しくは超臨界流体状態の二酸化炭素である請求項12記載の組成物。
【請求項21】
半結晶性ブロックコポリマーが、アモルファスポリオレフィンBによってつながった半結晶性A及びCのポリオレフィンブロックを有するA−B−Cポリオレフィントリブロックコポリマーであり、各低分子量液状希釈剤は、半結晶性ブロックコポリマーのアモルファスBブロックと混和性又は一部混和性であり、半結晶性ブロックコポリマーの半結晶性A及びCブロックの結晶を使用温度で溶解せず、そのガラス転移温度が使用温度以下である請求項1記載の組成物。
【請求項22】
半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーのAブロック又はグラフトが結晶化した後、力学的又は熱力学的処理によって結晶が続いて変形される前又は後のいずれかに、低分子量液状希釈剤を組成物から取り除いた時、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る結果をもたらす請求項1記載の組成物。
【請求項23】
半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーのA及びCブロック又はグラフトが結晶化した後、適当な力学的又は熱力学的処理によって結晶が続いて変形される前又は後のいずれかに、低分子量液状希釈剤を組成物から取り除いた時、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る結果をもたらす請求項12記載の組成物。
【請求項24】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーと1種以上の低分子量液状希釈剤とを混合し、
混合物を加熱し、
混合物をアニーリングし、
混合物を冷却することを含むポリマーゲル組成物の製造方法。
【請求項25】
エラストマー又はゲル液状マトリックスによって隔てられた結晶へとゲル組成物を変化させる力学的又は熱力学的処理をさらに含み、結晶は、負荷が取り除かれた時に70%を超えて回復する歪みである大きな歪みで、大きな弾性係数(接線係数)を生み出すために適当な構造である請求項24記載の製造方法。
【請求項26】
力学的又は熱力学的処理が、引張による単純延伸、より大きい最大歪みが延伸と緩和との各サイクルにおいてなされた引張と緩和による繰り返し単純延伸、二軸延伸、単純引張を例とする漸進性二軸延伸及び緩和、適当に形成されたダイを通して又は適当に形成された空洞へ材料を押出すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向に沿った伸張を適用すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向及びそれと直交する方向の両方に沿った伸張を適用すること、厚さ減少を可能にする一対のローラ又は連続した一対のローラの間で圧迫することで材料の厚さの減少をもたらす変形、緩和、さらなる厚さの減少、緩和などからなる群より選ばれた請求項25記載の製造方法。
【請求項27】
温度変化が処理のどの段階中又は段階間でも与えられる請求項26記載の製造方法。
【請求項28】
低分子量液状希釈剤を、半結晶性ブロックコポリマーが結晶化した後に組成物から取り除き、適当な力学的又は熱力学的処理によって続いて結晶が変形される前又は後のいずれかに、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る請求項26記載の製造方法。
【請求項29】
請求項25記載の製造方法で製造されたポリマーゲル組成物。
【請求項30】
請求項28記載の製造方法で製造されたポリマーゲル組成物。
【請求項31】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーと、1種以上の低分子量液状希釈剤とを混練機、混合機、押出機のような標準的なポリマー加工装置を用いて昇温しつつ機械的に混ぜ合わせること、
混合物を冷却すること、をさらに含むポリマーゲル組成物の製造方法。
【請求項32】
エラストマー又はゲル液状マトリックスによって隔てられた結晶へとゲル組成物を変化させる力学的又は熱力学的処理をさらに含み、結晶は、負荷が取り除かれた時に70%を超えて回復する歪みである大きな歪みで大きな弾性係数(接線係数)を生み出すために適当な構造である請求項31記載の製造方法。
【請求項33】
力学的又は熱力学的処理が、引張による単純延伸、より大きい最大歪みが延伸と緩和との各サイクルにおいてなされた引張と緩和による繰り返し単純延伸、二軸延伸、単純引張を例とする漸進性二軸延伸及び緩和、適当に形成されたダイを通して又は適当に形成された空洞へ材料を押出すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向に沿った伸張を適用すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向及びそれと直交する方向の両方に沿った伸張を適用すること、厚さ減少を可能にする一対のローラ又は連続した一対のローラの間で圧迫することで材料の厚さの減少をもたらす変形、緩和、さらなる厚さの減少、緩和などからなる群より選ばれた請求項32記載の製造方法。
【請求項34】
温度変化が処理のどの段階中又は段階間でも与えられる請求項33記載の製造方法。
【請求項35】
低分子量液状希釈剤を、半結晶性ブロックコポリマーが結晶化した後に組成物から取り除き、適当な力学的又は熱力学的処理によって結晶が続いて変形される前又は後のいずれかに、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る請求項33記載の製造方法。
【請求項36】
請求項32記載の製造方法で製造されたポリマーゲル組成物。
【請求項37】
請求項35記載の製造方法で製造されたポリマーゲル組成物。
【請求項1】
(a)1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマー、及び(b)1種以上の低分子量液状希釈剤の混合物を含むポリマーゲル組成物であって、
各半結晶性ポリオレフィンコポリマーが、1以上のアモルファスポリオレフィンBのブロックでつながった2以上の半結晶性ポリオレフィンAのブロック又はグラフトを含むA−Bブロック又はグラフトコポリマー材料であり;
各低分子量液状希釈剤が、半結晶性ブロックコポリマーのアモルファスBブロックと混和又は部分的に混和し、使用温度で半結晶性ブロック又はグラフトコポリマーの半結晶性Aブロック又はグラフトの結晶を溶解せず、そのガラス転移温度が使用温度以下であり;
1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマー及び1種以上の低分子量液状希釈剤を組み合わせることにより調製されたゲル組成物は、力学的又は熱力学的な処理によって変形され得る結晶を有し、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数との、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、
応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復するポリマーゲル組成物。
【請求項2】
破壊直前の歪みが5より大きい請求項1記載の組成物。
【請求項3】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーがABAトリブロックコポリマー、ABABAペンタブロックコポリマー、又は(AB)n放射状ブロックコポリマーである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーが...ABABAB...構造を有するマルチブロックコポリマーであり、統計的処理によって決定されるブロックサイズ及び鎖あたりのブロック数を有し、A半結晶性ブロックの数平均分子量が500g/モルより大きく、Bアモルファスブロックの数平均分子量が1000g/モルより大きい請求項1記載の組成物。
【請求項5】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーが1000g/モルより大きい数平均分子量のアモルファスB主鎖を有するグラフトコポリマーであり、該コポリマーには500g/モルより大きい数平均分子量のグラフトである、半結晶性ポリマーAの2以上のグラフト(枝)が結合している請求項1記載の組成物。
【請求項6】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーのアモルファスBポリオレフィンブロックが使用温度以下のガラス転移温度を有し、Aポリオレフィンブロック又はグラフトの結晶が使用温度以上で溶融し、半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマー単独で熱可塑性エラストマーの力学的特性を有する請求項1記載の組成物。
【請求項7】
Aポリマーブロック又はグラフトが、ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むイソタクチック若しくはシンジオタクチック長鎖アルファオレフィン;ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)又はポリ(ビニルシクロヘキサン)のイソタクチック若しくはシンジオタクチック変性体からなる群より選ばれた半結晶性ポリオレフィンである請求項1記載の組成物。
【請求項8】
アモルファスBポリマーブロックが、アタクチック又は位置不規則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選ばれたポリオレフィンランダム又は統計的コポリマー;プロピレンが1種以上の長鎖アルファ−オレフィンとエチレン又はエチレンなしで共重合されることにより作られるアタクチック、又は位置不規則性ランダム、又は統計的コポリマー、からなる群より選ばれたポリオレフィンである請求項1記載の組成物。
【請求項9】
アモルファスBポリマーブロックが、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られるポリオレフィン化合物であり、半結晶性Aポリマーブロック又はグラフトが、ポリブタジエンの水素添加により作られるポリオレフィン化合物である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
低分子量液状希釈剤が、鉱物オイル、パラフィンオイル、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤のような低揮発性の低分子量液状有機化合物;又は、デカリンのような高揮発性の低分子量液状有機化合物である請求項1記載の組成物。
【請求項11】
低分子量液状希釈剤が、液状、気体状若しくは超臨界流体状態の二酸化炭素である請求項1記載の組成物。
【請求項12】
アモルファスポリオレフィンBの1以上のブロックによってつながった半結晶性ポリオレフィンAの2以上のブロック又はグラフトを有するA−Bブロック又はグラフトコポリマーが、アモルファスポリオレフィンDの1以上のブロックによってつながった半結晶性ポリオレフィンCの2以上のブロック又はグラフトを有する第2のポリオレフィンC−Dブロック又はグラフトコポリマー材料と混合されており、ポリマーB及びDが、同じであるか又は異なり、低分子量液状希釈剤が、アモルファスB及びDブロックと混和性又は一部混和性であり、半結晶性A及びCブロック又はグラフトの結晶を溶解せず、A及びCの結晶が変形されうる請求項1記載のポリマーゲル組成物。
【請求項13】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーが、ABAトリブロックコポリマー及びCDCトリブロックコポリマーの混合物である請求項12記載の組成物。
【請求項14】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーが、統計的工程で決定されるブロックサイズ及び鎖あたりのブロック数を有する...ABABAB...構造のマルチブロックコポリマーと、CDCトリブロック構造又は統計的工程で決定されるブロックサイズ及び鎖あたりのブロック数を有する...CDCDC...構造の第2の半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーとの混合物であって、A半結晶性ポリオレフィンブロックが500g/モルより大きい数平均分子量を有し、Bアモルファスポリオレフィンブロックが1000g/モルより大きい数平均分子量を有し、C半結晶性ポリオレフィンブロックが500g/モルより大きい数平均分子量を有し、Dアモルファスポリオレフィンブロックが1000g/モルより大きい数平均分子量を有し、ポリマーB及びDが同じ場合を含む請求項12記載の組成物。
【請求項15】
半結晶性ポリオレフィンブロックコポリマーのアモルファスB及びDポリオレフィンブロックが使用温度以下のガラス転移温度を有し、A及びCポリオレフィンブロック又はグラフトの結晶が使用温度以上で溶融し、半結晶性ブロックコポリマー混合物単独で熱可塑性エラストマーの力学的特性を有する請求項12記載の組成物。
【請求項16】
A及びCポリオレフィンブロック又はグラフトが、半結晶性ポリエチレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリ(1−ブテン)、シンジオタクチックポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むイソタクチック若しくはシンジオタクチック長鎖アルファオレフィン;又はポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4,4−ジメチル−1−ペンテン)又はポリ(ビニルシクロヘキサン)のイソタクチック若しくはシンジオタクチック変性体、からなる群より選ばれた化合物である請求項12記載の組成物。
【請求項17】
アモルファスB及びDポリオレフィンブロックが、
アタクチック又は位置不規則性ポリプロピレン;ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)又はポリ(1−オクテン)を含むアタクチックポリ(アルファ−オレフィン);ポリ(エチレン−r−プロピレン)、ポリ(エチレン−r−ブテン)、ポリ(エチレン−r−ペンテン)、ポリ(エチレン−r−ヘキセン)、ポリ(エチレン−r−ヘプテン)、ポリ(エチレン−r−イソブチレン)、及びポリ(エチレン−r−オクテン)からなる群より選ばれたポリオレフィンランダム又は統計的コポリマー;プロピレンが1種以上の長鎖アルファ−オレフィンと、エチレン又はエチレンなしで共重合されることにより作られるアタクチック、又は位置不規則性ランダム、又は統計的コポリマー、からなる群より選ばれたものである請求項12記載の組成物。
【請求項18】
アモルファスBポリマーブロックが、ポリイソプレン、ポリブタジエン、又はそれらのランダムコポリマーの水素添加により作られるポリオレフィン化合物であり、半結晶性Aポリマーブロック又はグラフトが、ポリブタジエンの水素添加により作られるポリオレフィン化合物である請求項12記載の組成物。
【請求項19】
低分子量液状希釈剤が、鉱物オイル、パラフィンオイル、可塑剤、低揮発性溶剤、粘着付与剤のような低揮発性の低分子量液状有機化合物;又は、デカリンのような高揮発性の低分子量液状有機化合物である請求項12記載の組成物。
【請求項20】
低分子量液状希釈剤が、液状、気体状若しくは超臨界流体状態の二酸化炭素である請求項12記載の組成物。
【請求項21】
半結晶性ブロックコポリマーが、アモルファスポリオレフィンBによってつながった半結晶性A及びCのポリオレフィンブロックを有するA−B−Cポリオレフィントリブロックコポリマーであり、各低分子量液状希釈剤は、半結晶性ブロックコポリマーのアモルファスBブロックと混和性又は一部混和性であり、半結晶性ブロックコポリマーの半結晶性A及びCブロックの結晶を使用温度で溶解せず、そのガラス転移温度が使用温度以下である請求項1記載の組成物。
【請求項22】
半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーのAブロック又はグラフトが結晶化した後、力学的又は熱力学的処理によって結晶が続いて変形される前又は後のいずれかに、低分子量液状希釈剤を組成物から取り除いた時、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る結果をもたらす請求項1記載の組成物。
【請求項23】
半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーのA及びCブロック又はグラフトが結晶化した後、適当な力学的又は熱力学的処理によって結晶が続いて変形される前又は後のいずれかに、低分子量液状希釈剤を組成物から取り除いた時、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る結果をもたらす請求項12記載の組成物。
【請求項24】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーと1種以上の低分子量液状希釈剤とを混合し、
混合物を加熱し、
混合物をアニーリングし、
混合物を冷却することを含むポリマーゲル組成物の製造方法。
【請求項25】
エラストマー又はゲル液状マトリックスによって隔てられた結晶へとゲル組成物を変化させる力学的又は熱力学的処理をさらに含み、結晶は、負荷が取り除かれた時に70%を超えて回復する歪みである大きな歪みで、大きな弾性係数(接線係数)を生み出すために適当な構造である請求項24記載の製造方法。
【請求項26】
力学的又は熱力学的処理が、引張による単純延伸、より大きい最大歪みが延伸と緩和との各サイクルにおいてなされた引張と緩和による繰り返し単純延伸、二軸延伸、単純引張を例とする漸進性二軸延伸及び緩和、適当に形成されたダイを通して又は適当に形成された空洞へ材料を押出すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向に沿った伸張を適用すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向及びそれと直交する方向の両方に沿った伸張を適用すること、厚さ減少を可能にする一対のローラ又は連続した一対のローラの間で圧迫することで材料の厚さの減少をもたらす変形、緩和、さらなる厚さの減少、緩和などからなる群より選ばれた請求項25記載の製造方法。
【請求項27】
温度変化が処理のどの段階中又は段階間でも与えられる請求項26記載の製造方法。
【請求項28】
低分子量液状希釈剤を、半結晶性ブロックコポリマーが結晶化した後に組成物から取り除き、適当な力学的又は熱力学的処理によって続いて結晶が変形される前又は後のいずれかに、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る請求項26記載の製造方法。
【請求項29】
請求項25記載の製造方法で製造されたポリマーゲル組成物。
【請求項30】
請求項28記載の製造方法で製造されたポリマーゲル組成物。
【請求項31】
1種以上の半結晶性ポリオレフィンブロック又はグラフトコポリマーと、1種以上の低分子量液状希釈剤とを混練機、混合機、押出機のような標準的なポリマー加工装置を用いて昇温しつつ機械的に混ぜ合わせること、
混合物を冷却すること、をさらに含むポリマーゲル組成物の製造方法。
【請求項32】
エラストマー又はゲル液状マトリックスによって隔てられた結晶へとゲル組成物を変化させる力学的又は熱力学的処理をさらに含み、結晶は、負荷が取り除かれた時に70%を超えて回復する歪みである大きな歪みで大きな弾性係数(接線係数)を生み出すために適当な構造である請求項31記載の製造方法。
【請求項33】
力学的又は熱力学的処理が、引張による単純延伸、より大きい最大歪みが延伸と緩和との各サイクルにおいてなされた引張と緩和による繰り返し単純延伸、二軸延伸、単純引張を例とする漸進性二軸延伸及び緩和、適当に形成されたダイを通して又は適当に形成された空洞へ材料を押出すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向に沿った伸張を適用すること、ダイを通して材料を押出した後に延伸方向及びそれと直交する方向の両方に沿った伸張を適用すること、厚さ減少を可能にする一対のローラ又は連続した一対のローラの間で圧迫することで材料の厚さの減少をもたらす変形、緩和、さらなる厚さの減少、緩和などからなる群より選ばれた請求項32記載の製造方法。
【請求項34】
温度変化が処理のどの段階中又は段階間でも与えられる請求項33記載の製造方法。
【請求項35】
低分子量液状希釈剤を、半結晶性ブロックコポリマーが結晶化した後に組成物から取り除き、適当な力学的又は熱力学的処理によって結晶が続いて変形される前又は後のいずれかに、1未満の歪みでの初期弾性係数と、破壊直前の大きな歪みでの弾性接線係数とで、初期係数に対する破壊前の接線係数が50を超える比であり、応力又は規制力が取り除かれたときにその大きな歪みが70%より大きく回復する材料を作る請求項33記載の製造方法。
【請求項36】
請求項32記載の製造方法で製造されたポリマーゲル組成物。
【請求項37】
請求項35記載の製造方法で製造されたポリマーゲル組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図4】
【図15】
【図19】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図4】
【図15】
【図19】
【公表番号】特表2010−523793(P2010−523793A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503030(P2010−503030)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/004504
【国際公開番号】WO2008/124127
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(508085729)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, 94607−5200, US
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/004504
【国際公開番号】WO2008/124127
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(508085729)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (6)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, 94607−5200, US
【Fターム(参考)】
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