半衿の製造方法
【課題】着物の着付け方によって襦袢の衿形状(湾曲度)が異なっても、着用者が衿形状にあった半衿を選ぶことで、この半衿を襦袢の衿に被嵌装着した際に、内側となる首と接する側に皺が殆ど寄らずに見た目を損なわない着姿が美しく見えるよう、皺が寄りにくい形状の半衿を容易に製造することができる半衿の製造方法を提供する。
【解決手段】地衿形成生地1に第一芯部2と切欠き部3を有する第二芯部4とを上下並設状態に重合して地衿部5を設け、この地衿部5は、前記切欠き部3から露出する前記地衿形成生地1を摘まんで該切欠き部3の両端を引き寄せ縫着して立体的な形状に構成し、この立体的な形状に構成した地衿部5の前記地衿形成生地1の反対側に表側生地6を縫着する半衿の製造方法。
【解決手段】地衿形成生地1に第一芯部2と切欠き部3を有する第二芯部4とを上下並設状態に重合して地衿部5を設け、この地衿部5は、前記切欠き部3から露出する前記地衿形成生地1を摘まんで該切欠き部3の両端を引き寄せ縫着して立体的な形状に構成し、この立体的な形状に構成した地衿部5の前記地衿形成生地1の反対側に表側生地6を縫着する半衿の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、襦袢の衿に被せて装着する半衿の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半衿は、襦袢の衿の汚れを防止するためのカバーとしての役割のものであったが、最近は、この半衿を装着する位置が顔に近く、相手から良く見られるところに位置することより、おしゃれとしての要素が強い装飾品として装着する人が増えてきている。
【0003】
この半衿は、一般的には細長い方形状を呈しており、これを半分に折り曲げて襦袢の衿に被せるように装着するものであるが、襦袢に装着した際に、内側、即ち、首に接する側に皺が寄ってしまい(図25参照)、折角、半衿を装飾品として装着しているのに、この皺ができることで見た目が損なわれてしまうという問題があった。
【0004】
このような問題を改善するために、従来、特許文献1のように、半衿を湾曲形状に形成して襦袢の衿に装着した際に皺が寄りにくくしたものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−13302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の特許文献1に示されるように単に湾曲形状に構成しただけでは、皺を無くすことはできず、また、この半衿の皺の生じ方は、着用時の衿形状、具体的には、例えば着物を着用する際に、品良く見せるために衿を丸くしたいときは、湾曲度が小さいので浅めの皺が広範囲に渡って生じ、例えば半玉のように衿を狭くして着物を着用する際は、湾曲度が大きくなり中央に深い皺が生じるといった具合に、衿の湾曲度によっても異なるものであるため、着物の着付け方によっては全く効果が見られない場合もあった。
【0007】
そこで、本発明は、着物の着付け方によって襦袢の衿形状(湾曲度)が異なっても、着用者が、着付ける際の衿形状にあった半衿を選ぶことで、この半衿を襦袢の衿に被嵌装着した際に、内側となる首と接する側に皺が殆ど寄らずに見た目を損なわない着姿が美しく見えるよう、着付けした着物の衿形状にフィットする皺が寄りにくい形状の半衿を容易に製造することができる半衿の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
襦袢14の衿15に被嵌装着する半衿の製造方法において、地衿形成生地1に第一芯部2と切欠き部3を有する第二芯部4とを上下並設状態に重合して地衿部5を設け、この地衿部5は、前記切欠き部3から露出する前記地衿形成生地1を摘まんで該切欠き部3の両端を引き寄せ縫着して立体的な形状に構成し、この立体的な形状に構成した地衿部5の前記地衿形成生地1の反対側に表側生地6を縫着することを特徴とする半衿の製造方法に係るものである。
【0010】
また、前記地衿形成生地1の上側に前記第一芯部2を配し下側に前記第二芯部4を配して、前記襦袢に装着した際に前記第一芯部2が外側に前記第二芯部4が内側に配するように構成したことを特徴とする請求項1記載の半衿の製造方法に係るものである。
【0011】
また、前記第二芯部4は、下端側をV字状に切欠いた前記切欠き部3を設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の半衿の製造方法に係るものである。
【0012】
また、前記第一芯部2及び前記第二芯部4は、接着芯であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半衿の製造方法に係るものである。
【0013】
また、前記第一芯部2と前記第二芯部4とを前記地衿形成生地1に並設する際に、この第一芯部2と第二芯部4との間に5mm以下の折曲部7となる隙間を設けて並設することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半衿の製造方法に係るものである。
【0014】
また、前記第二芯部4の長さを前記第一芯部2よりも短い長さに設定し、前記第二芯部4を設けた側が前記第一芯部2を設けた側よりも長手方向が短くなるように構成し、前記折曲部7に沿って折曲し第一芯部2側と第二芯部4側とを重合状態にした際に、前記第一芯部2側の両端部が前記第二芯部4側と重合しない構成としたことを特徴とする請求項5記載の半衿の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のようにしたから、着用者が襦袢を着用した際に湾曲形状且つ立体的となる襦袢の衿とほぼ同等の形状に形成されるので、半衿を襦袢の衿に被嵌装着した状態において、この半衿の内側、即ち首と接する側に皺が寄らず、見た目を損なわず、着姿を美しくする半衿を容易に製造することができる生産性に優れた半衿の製造方法となる。
【0016】
即ち、単に第二芯部に切欠き部を設けて、この切欠き部から露出する地衿形成生地を摘まみ寄せてダーツを形成するだけの極めて容易な作業で、地衿部を湾曲形状且つ立体的な形状とすることができる作業性、生産性に優れた画期的な半衿の製造方法となる。
【0017】
また、請求項2〜5記載の発明においては、更に一層簡易な方法で本発明を容易に実現できる、より一層生産性に優れた半衿の製造方法となる。
【0018】
また、請求項6記載の発明においては、例えば、腰紐付きの襦袢を着用した際に、従来の半衿は襦袢の衿を挟み込むようにして装着するので、この腰紐と干渉してしまうという不具合があったが、本発明の両端部は、襦袢の衿の表側としか重合せず、腰紐とは干渉しない構成としているので、腰紐付きの襦袢を着用した際にもきちんと腰紐を結ぶことができる実用性に優れた半衿を製造することができる半衿の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例の表側生地の内側面を示す図である。
【図2】本実施例の地衿形成生地の内側面を示す図である。
【図3】本実施例の第一芯部及び第二芯部を示す図である。
【図4】本実施例の地衿形成生地に第一芯部2と第二芯部4とを並設重合した状態の地衿部を示す図である。
【図5】本実施例の立体的な形状に形成した地衿部を示す図である。
【図6】本実施例の第一芯部と第二芯部とを地衿形成生地に縫着した状態の地衿部を示す図である。
【図7】本実施例の地衿部に補強芯部を設けた状態を示す図である。
【図8】本実施例を所定形状に形成するためのカット部を示す説明図である。
【図9】本実施例の内側面となる地衿部側を示す図である。
【図10】本実施例の外側面となる表側生地側を示す図である。
【図11】本実施例を折曲部に沿って折曲した状態の第一芯部を設けた側の面を示す図である。
【図12】本実施例を折曲部に沿って折曲した状態の第二芯部を設けた側の面を示す図である。
【図13】本実施例の表側生地の内側面に設けた合印を示す拡大説明図である。
【図14】本実施例の地衿形成生地の内側面に設けた合印を示す拡大説明図である。
【図15】本実施例の第二芯部に設けた切欠き部を示す拡大説明図である。
【図16】本実施例の地衿形成生地に第一芯部と第二芯部とを並設重合した際の折曲部を示す拡大説明図である。
【図17】本実施例の地衿部に設けたダーツを示す拡大説明図である。
【図18】本実施例の第一芯部と第二芯部とを地衿形成生地に縫着した状態の要部を示す拡大説明図である。
【図19】本実施例の補強芯部を示す拡大説明図である。
【図20】本実施例の端部カット部を示す拡大説明図である。
【図21】本実施例の内側面となる地衿部側の要部を示す拡大説明図である。
【図22】本実施例の外側面となる表側生地側の一部を示す拡大説明図である。
【図23】本実施例を示す説明斜視図である。
【図24】本実施例の使用状態を示す説明図である。
【図25】従来例を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
第二芯部4に設けた切欠き部3から露出している地衿形成生地1を摘まみ寄せて縫着することで、地衿形成生地1に第一芯部2と第二芯部4とを上下並設状態に重合した際の第二芯部4を設けた側の下方側端辺が上方側端辺よりも短くなり地衿部5の形状が正面視湾曲形状になると共に、立体的な形状になる。
【0022】
このように湾曲形状且つ立体的な形状に形成した地衿部5に合わせて表側生地6を縫着することで、襦袢14の衿15に被嵌装着した際には、滑らかな湾曲形状となり、従って、皺8が寄らずに見た目を損ねることもなく着姿の美しい半衿を製造することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、襦袢14の衿15に被嵌装着する半衿の製造方法において、地衿形成生地1に第一芯部2と切欠き部3を有する第二芯部4とを上下並設状態に重合して地衿部5を設け、この地衿部5は、前記切欠き部3から露出する前記地衿形成生地1を摘まんで該切欠き部3の両端を引き寄せ縫着して立体的な形状に構成し、この立体的な形状に構成した地衿部5の前記地衿形成生地1の反対側に表側生地6を縫着する半衿の製造方法である。
【0025】
本実施例の具体的な製造方法を以下に示す。
【0026】
先ず、半衿9を製造するにあたって、この半衿9を構成する芯部と生地の準備を行う。
【0027】
本実施例の半衿9は、芯部となる第一芯部2、第二芯部4と、これらの芯部と重合する地衿形成生地1及び表側生地6で構成される。
【0028】
この芯部となる第一芯部2と第二芯部4は、仕立て時に地衿形成生地1に位置決めされた状態で容易に重合できるように、熱可塑性の接着剤を付与した接着芯を用いており、この接着芯を夫々の所定形状に裁断して第一芯部2と第二芯部4とを形成し、また、第二芯部4においては、更に切欠き部3を複数箇所に設ける裁断処理を行う。
【0029】
具体的には、図3に示すように、第一芯部2と第二芯部4は、長方形状の芯地を裁断して形成しており、第一芯部2は略帯状に形成し、より具体的には、地衿形成生地1に、この第一芯部2と第二芯部4とを上下並設状態に重合する際の第二芯部4側となる下端側を湾曲形状に形成し、この第一芯部2を正面視した際に両端部が中央部よりも幅広形状となる帯状に形成する。
【0030】
一方、第二芯部4は、長手方向の長さを第一芯部2の長さよりも短くなるように設定しており、具体的には、この第二芯部4の両端部を短手方向に対して傾斜状態に切り落として、この第二芯部4が略台形状になるように形成し、更に、この第二芯部4の下端側となる台形状の短辺側の複数箇所に逆V字状の切欠き部3を設ける。
【0031】
本実施例では、この切欠き部3を三箇所に設けおり、具体的には、図15に示すように、第二芯部4の長手方向中央部に幅広の切欠き部3を一つ設け、この幅広の切欠き部3の左右両側に、この幅広の切欠き部3の略半分の幅の切欠き部3を一つずつ設けた構成としており、より具体的に説明すると、長手方向中央部に設ける幅広の切欠き部3は、開口幅を約15mmに形成しており、従って、この幅広の切欠き部3の略半分の幅となる左右両端部に設けた切欠き部3の開口幅は約8mmに形成している。
【0032】
尚、第二芯部4に設ける切欠き部3の設置数、設置位置、形状などの設定は、その特性を発揮する設定であれば適宜変更可能なものとし、例えば、着物の着姿を品良く見せたい場合には、襦袢14の衿15を湾曲度合いの少ない丸みを帯びた形状となるように衿15の形を整えるが、このような衿15の形にすると半衿9には浅い皺8が長手方向に広範囲に生じるので、このような場合に対応する半衿9とする場合は、開口幅を狭くした(例えば、10mm以下)切欠き部3を長手方向に複数並設し、例えば、舞妓さんなどで半玉と言われる所謂半人前のひとは、襦袢14を着用する際には湾曲度の大きい衿15を狭くした状態、即ち、衿15の中央部を尖った形状に整えるが、このような衿15の形にすると半衿9の長手方向中央部に皺8が集中して生じるので、このような場合に対応する半衿9とする場合は、開口幅が幅広(例えば10mm〜15mm程度)の切欠き部3を長手方向中央部に設ける構成としても良い。
【0033】
また、図2に示すように、地衿形成生地1は、長方形状(本実施例では、長さ約120cm、幅約12cmの長方形状)に裁断し、これに上述した第一芯部2と第二芯部4とを配置する際の位置決めの目印となる合印10aを設ける。
【0034】
具体的には、図14に示すように、地衿形成生地1に設ける合印10aは、この地衿形成生地1の裏面、即ち、表側生地6と重合した際の内側となる面に上述した第一芯部2と第二芯部4を配置する際の目印(基準点)となる合印10aを設け、本実施例では、第二芯部4に設けた切欠き部3の開口部側となる両先端部を配置する位置に二本一組の合印10aを三箇所に設けている。
【0035】
また、図1に示すように、表側生地6は、長方形状(本実施例では、長さ約120cm、幅約14cmの長方形状)に裁断し、これに後述する仕立て時に地衿部5と重合する際の合わせ位置の位置決め目印となる合印10bを設ける。
【0036】
具体的には、図13に示すように、表側生地6に設ける合印10bは、地衿部5において切欠き部3から露出する地衿形成生地1を摘まみ、切欠き部3の両端部を引き寄せて縫着して形成したダーツ11の位置に設け、言い換えると、前述した二本一組の合印10aの中間点となる位置と合わさる位置に合印10bを設け、本実施例では、上述のように合印10aを三箇所に設けているので、合印10bもこれに対応するように三箇所に設ける。
【0037】
尚、仕立て前準備である第一芯部2、第二芯部4の作製、及び地衿形成生地1、表側生地6に合印10を設ける作業に関しては、特に順序はない。
【0038】
このようにして各部材を準備した後、これらを仕立てて半衿9を形成する。
【0039】
仕立て順としては、先ず、図4に示すように、地衿形成生地1に第一芯部2と切欠き部3を設けた第二芯部4とを上下並設状態に重合する。
【0040】
具体的には、地衿形成生地1の合印10aを設けた裏面を表側とし、更に、合印10aを下方に配した状態にして、この状態に配した地衿形成生地1の下側に第二芯部4を配置する。この際、第二芯部4に設けられた切欠き部3の開口部の両端部を、合印10aに合わせて配置することで容易に位置決めできる。
【0041】
地衿形成生地1に第二芯部4を配置した後、この第二芯部4の上側に第一芯部2を配置するが、この第一芯部2を配置する際は、図16に示すように、この第一芯部2と第二芯部4との間に5mm以下、具体的には2mm〜3mmの隙間を設けて折曲部7を形成した状態で配置し、第一芯部2と第二芯部4とを上下方向並設状態に重合する。
【0042】
この第一芯部2と第二芯部4との間に折曲部7を形成したことで、襦袢14の衿15に被嵌装着する際の折曲重合を容易にすると共に、この折曲重合状態を保持し、即ち、折曲状態が広がらず装着時に衿15に確実に重合しずれが生じ難くなる。
【0043】
このように地衿形成生地1に第一芯部2と第二芯部4とを上下並設状態に重合した状態のまま、アイロンなどの加熱装置で表面を加熱し、接着芯である第一芯部2と第二芯部4とを地衿形成生地1に接着して仮止め状態にする。
【0044】
この地衿形成生地1に第一芯部2と第二芯部4とを重合接着した地衿部5において、図5に示すように、第二芯部4に設けた夫々の切欠き部3から露出している地衿形成生地1を摘まんで切欠き部3の両端部を引き寄せ、切欠き部3の両端部を接合した状態で縫着してダーツ11を形成し、この地衿部5を帯状の平面状態から立体的で且つ湾曲形状した形状状態にする。この際、縫着するのは地衿形成生地1のみであり、第二芯部4は縫わないように注意する。
【0045】
また、ダーツ11形成後は、このダーツ11形成の際に摘まみ寄せて余らせた地衿形成生地1の処理を行う。この地衿形成生地1の処理は、図17に示すように、長手方向中央部に設けた幅広の切欠き部3でダーツ11を形成した箇所は、摘まみ寄せた地衿形成生地1に切り込みを入れて縫代を左右に割った状態にし、この幅広の切欠き部3の左右に設けた幅の狭い切欠き部3でダーツ11を形成した箇所は、摘まみ寄せた地衿形成生地1を夫々外側(半衿9の先端部側)に向けて倒した片倒し状態にする。
【0046】
このようにしてダーツ11の処理を施してから、地衿形成生地1に接着した第一芯部2と第二芯部4とが剥がれないように、図6に示すように、この第一芯部2と第二芯部4とを地衿形成生地1に縫着する。
【0047】
具体的には、図18に示すように、夫々の芯部2,4の外周を、端から1mm〜2mm内側に入ったところを縫着する。
【0048】
この第一芯部2と第二芯部4とを縫着した地衿形成生地1に、図7に示すように、補強芯部12を重合して地衿部5を完成させる。
【0049】
具体的には、この補強芯部12は、図19に示すように、帯状の円弧形状に形成し、ダーツ11を形成した第二芯部4の略中央部に配して重合する。
【0050】
また、本実施例では、この補強芯部12にも接着芯を採用しており、従って、ダーツ11を形成した第二芯部4の略中央部に配した状態で加熱し接着させ、一旦、仮止め状態とした後、外周を縫着して地衿部5を完成させる。
【0051】
次いで、この完成した地衿部5に表側生地6を縫着するが、本実施例では、この地衿部5に表側生地6を縫着する際は、縫着後に表に返した際に地衿形成生地1及び表側生地6の夫々の表側がでるように、地衿部5の表側となる面、即ち、第一芯部2と第二芯部4との重合面でない面と、表側生地6の表側となる面とを重合させた状態で縫着し、表に返した際に縫い目が表側に出ずに、仕上がりの美しい半衿9となるようにしている。
【0052】
また、地衿部5と表側生地6とをあわせる際、表側生地6に予め設けた合印10bを地衿形成生地1の第二芯部側に形成したダーツ11に合わせて位置決めを行うことで、容易に地衿部5と表側生地6との合わせを行うことができる。
【0053】
このように表側となる面を内側に配した状態で長手方向の上端側及び下端側を縫着し筒状にした状態で、図8に示すように、第二芯部4を設けた側をこの第二芯部4の形状に合わせて地衿部5と表側生地6とを一緒に裁断する。
【0054】
また、裁断して所定形状に形成した後、表に返した際に縫代がつまらないように、図20に示すように、第二芯部4の先端部に切り込み13を設ける。
【0055】
次いで、この状態でキセを掛けてから、地衿部5、表側生地6の夫々の表側が表面となるように表に返し、アイロンで型を整え、両端部(両先端部)の縫代を内側に折り込んで整えてから、この両端部を縫着し完成となる。
【0056】
上述のような製造方法で製造した半衿9は、従来品に比して襦袢14の衿15に被嵌装着した際に皺8が寄りにくい形状、即ち、湾曲形状で且つ立体的な形状となるので、従来、装着時に生じていた皺8が殆ど生じることなく、見た目が損なわれずに着姿の美しい画期的な半衿を製造することができる。
【0057】
即ち、第二芯部4に切欠き部3を設け、この切欠き部3を引き寄せてダーツ11を形成するだけの極めて簡易な構成で容易に地衿部5を立体的形状に形成することができ、従来の湾曲形状だけのものに比して、より襦袢14の衿15形状にフィットするので半衿9自体の形状も崩れず、より一層皺8が生じ難くなる半衿9を容易に製造することができるので、着付けした着物の衿形状にフィット形状となる半衿9を極めて容易に且つ低コストで製造することができる画期的な半衿の製造方法となる。
【0058】
従って、従来の半衿は、襦袢14の衿15に被嵌装着する際は、この半衿と襦袢14の衿15とを縫着していたが、本実施例においては、折曲状態の半衿9で襦袢14の衿15を挟み込むだけの装着でも殆どズレが生じることがなく極めて容易に装着できる半衿9となる。
【0059】
しかも、本実施例によれば、図23に示すように、半衿9を襦袢14の衿15に被嵌装着した際に、衿15の内側に配する第二芯部4側が、衿15の外側(表側)に配する第一芯部2側よりも長手方向を短くした形状に形成し、折曲部7に沿って折曲し第一芯部2側と第二芯部4側とを重合状態にした際に、第一芯部2側の両端部が第二芯部4側と重合しない形状としているので、例えば、腰紐16付きの襦袢14を着用した際に、従来の半衿は襦袢14の衿15を挟み込むようにして装着するので、この腰紐16と干渉してしまい、腰紐16を上手く結ぶことができなかった、若しくは半衿9の先端部をきちんと襦袢14の衿15を挟み込まずに着用感にゴロツキを生じてしまう不具合があったが、本実施例のように製造した半衿9の両端部は、図24に示すように、襦袢14の衿15の表側としか重合せず、腰紐16とは干渉しない構成としているので、腰紐16付きの襦袢14を着用した際にもきちんと腰紐16を結ぶことができる実用性に優れた半衿を製造することができる。
【0060】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0061】
1 地衿形成生地
2 第一芯部
3 切欠き部
4 第二芯部
5 地衿部
6 表側生地
7 折曲部
14 襦袢
15 衿
【技術分野】
【0001】
本発明は、襦袢の衿に被せて装着する半衿の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半衿は、襦袢の衿の汚れを防止するためのカバーとしての役割のものであったが、最近は、この半衿を装着する位置が顔に近く、相手から良く見られるところに位置することより、おしゃれとしての要素が強い装飾品として装着する人が増えてきている。
【0003】
この半衿は、一般的には細長い方形状を呈しており、これを半分に折り曲げて襦袢の衿に被せるように装着するものであるが、襦袢に装着した際に、内側、即ち、首に接する側に皺が寄ってしまい(図25参照)、折角、半衿を装飾品として装着しているのに、この皺ができることで見た目が損なわれてしまうという問題があった。
【0004】
このような問題を改善するために、従来、特許文献1のように、半衿を湾曲形状に形成して襦袢の衿に装着した際に皺が寄りにくくしたものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−13302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の特許文献1に示されるように単に湾曲形状に構成しただけでは、皺を無くすことはできず、また、この半衿の皺の生じ方は、着用時の衿形状、具体的には、例えば着物を着用する際に、品良く見せるために衿を丸くしたいときは、湾曲度が小さいので浅めの皺が広範囲に渡って生じ、例えば半玉のように衿を狭くして着物を着用する際は、湾曲度が大きくなり中央に深い皺が生じるといった具合に、衿の湾曲度によっても異なるものであるため、着物の着付け方によっては全く効果が見られない場合もあった。
【0007】
そこで、本発明は、着物の着付け方によって襦袢の衿形状(湾曲度)が異なっても、着用者が、着付ける際の衿形状にあった半衿を選ぶことで、この半衿を襦袢の衿に被嵌装着した際に、内側となる首と接する側に皺が殆ど寄らずに見た目を損なわない着姿が美しく見えるよう、着付けした着物の衿形状にフィットする皺が寄りにくい形状の半衿を容易に製造することができる半衿の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
襦袢14の衿15に被嵌装着する半衿の製造方法において、地衿形成生地1に第一芯部2と切欠き部3を有する第二芯部4とを上下並設状態に重合して地衿部5を設け、この地衿部5は、前記切欠き部3から露出する前記地衿形成生地1を摘まんで該切欠き部3の両端を引き寄せ縫着して立体的な形状に構成し、この立体的な形状に構成した地衿部5の前記地衿形成生地1の反対側に表側生地6を縫着することを特徴とする半衿の製造方法に係るものである。
【0010】
また、前記地衿形成生地1の上側に前記第一芯部2を配し下側に前記第二芯部4を配して、前記襦袢に装着した際に前記第一芯部2が外側に前記第二芯部4が内側に配するように構成したことを特徴とする請求項1記載の半衿の製造方法に係るものである。
【0011】
また、前記第二芯部4は、下端側をV字状に切欠いた前記切欠き部3を設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の半衿の製造方法に係るものである。
【0012】
また、前記第一芯部2及び前記第二芯部4は、接着芯であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半衿の製造方法に係るものである。
【0013】
また、前記第一芯部2と前記第二芯部4とを前記地衿形成生地1に並設する際に、この第一芯部2と第二芯部4との間に5mm以下の折曲部7となる隙間を設けて並設することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半衿の製造方法に係るものである。
【0014】
また、前記第二芯部4の長さを前記第一芯部2よりも短い長さに設定し、前記第二芯部4を設けた側が前記第一芯部2を設けた側よりも長手方向が短くなるように構成し、前記折曲部7に沿って折曲し第一芯部2側と第二芯部4側とを重合状態にした際に、前記第一芯部2側の両端部が前記第二芯部4側と重合しない構成としたことを特徴とする請求項5記載の半衿の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のようにしたから、着用者が襦袢を着用した際に湾曲形状且つ立体的となる襦袢の衿とほぼ同等の形状に形成されるので、半衿を襦袢の衿に被嵌装着した状態において、この半衿の内側、即ち首と接する側に皺が寄らず、見た目を損なわず、着姿を美しくする半衿を容易に製造することができる生産性に優れた半衿の製造方法となる。
【0016】
即ち、単に第二芯部に切欠き部を設けて、この切欠き部から露出する地衿形成生地を摘まみ寄せてダーツを形成するだけの極めて容易な作業で、地衿部を湾曲形状且つ立体的な形状とすることができる作業性、生産性に優れた画期的な半衿の製造方法となる。
【0017】
また、請求項2〜5記載の発明においては、更に一層簡易な方法で本発明を容易に実現できる、より一層生産性に優れた半衿の製造方法となる。
【0018】
また、請求項6記載の発明においては、例えば、腰紐付きの襦袢を着用した際に、従来の半衿は襦袢の衿を挟み込むようにして装着するので、この腰紐と干渉してしまうという不具合があったが、本発明の両端部は、襦袢の衿の表側としか重合せず、腰紐とは干渉しない構成としているので、腰紐付きの襦袢を着用した際にもきちんと腰紐を結ぶことができる実用性に優れた半衿を製造することができる半衿の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例の表側生地の内側面を示す図である。
【図2】本実施例の地衿形成生地の内側面を示す図である。
【図3】本実施例の第一芯部及び第二芯部を示す図である。
【図4】本実施例の地衿形成生地に第一芯部2と第二芯部4とを並設重合した状態の地衿部を示す図である。
【図5】本実施例の立体的な形状に形成した地衿部を示す図である。
【図6】本実施例の第一芯部と第二芯部とを地衿形成生地に縫着した状態の地衿部を示す図である。
【図7】本実施例の地衿部に補強芯部を設けた状態を示す図である。
【図8】本実施例を所定形状に形成するためのカット部を示す説明図である。
【図9】本実施例の内側面となる地衿部側を示す図である。
【図10】本実施例の外側面となる表側生地側を示す図である。
【図11】本実施例を折曲部に沿って折曲した状態の第一芯部を設けた側の面を示す図である。
【図12】本実施例を折曲部に沿って折曲した状態の第二芯部を設けた側の面を示す図である。
【図13】本実施例の表側生地の内側面に設けた合印を示す拡大説明図である。
【図14】本実施例の地衿形成生地の内側面に設けた合印を示す拡大説明図である。
【図15】本実施例の第二芯部に設けた切欠き部を示す拡大説明図である。
【図16】本実施例の地衿形成生地に第一芯部と第二芯部とを並設重合した際の折曲部を示す拡大説明図である。
【図17】本実施例の地衿部に設けたダーツを示す拡大説明図である。
【図18】本実施例の第一芯部と第二芯部とを地衿形成生地に縫着した状態の要部を示す拡大説明図である。
【図19】本実施例の補強芯部を示す拡大説明図である。
【図20】本実施例の端部カット部を示す拡大説明図である。
【図21】本実施例の内側面となる地衿部側の要部を示す拡大説明図である。
【図22】本実施例の外側面となる表側生地側の一部を示す拡大説明図である。
【図23】本実施例を示す説明斜視図である。
【図24】本実施例の使用状態を示す説明図である。
【図25】従来例を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
第二芯部4に設けた切欠き部3から露出している地衿形成生地1を摘まみ寄せて縫着することで、地衿形成生地1に第一芯部2と第二芯部4とを上下並設状態に重合した際の第二芯部4を設けた側の下方側端辺が上方側端辺よりも短くなり地衿部5の形状が正面視湾曲形状になると共に、立体的な形状になる。
【0022】
このように湾曲形状且つ立体的な形状に形成した地衿部5に合わせて表側生地6を縫着することで、襦袢14の衿15に被嵌装着した際には、滑らかな湾曲形状となり、従って、皺8が寄らずに見た目を損ねることもなく着姿の美しい半衿を製造することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、襦袢14の衿15に被嵌装着する半衿の製造方法において、地衿形成生地1に第一芯部2と切欠き部3を有する第二芯部4とを上下並設状態に重合して地衿部5を設け、この地衿部5は、前記切欠き部3から露出する前記地衿形成生地1を摘まんで該切欠き部3の両端を引き寄せ縫着して立体的な形状に構成し、この立体的な形状に構成した地衿部5の前記地衿形成生地1の反対側に表側生地6を縫着する半衿の製造方法である。
【0025】
本実施例の具体的な製造方法を以下に示す。
【0026】
先ず、半衿9を製造するにあたって、この半衿9を構成する芯部と生地の準備を行う。
【0027】
本実施例の半衿9は、芯部となる第一芯部2、第二芯部4と、これらの芯部と重合する地衿形成生地1及び表側生地6で構成される。
【0028】
この芯部となる第一芯部2と第二芯部4は、仕立て時に地衿形成生地1に位置決めされた状態で容易に重合できるように、熱可塑性の接着剤を付与した接着芯を用いており、この接着芯を夫々の所定形状に裁断して第一芯部2と第二芯部4とを形成し、また、第二芯部4においては、更に切欠き部3を複数箇所に設ける裁断処理を行う。
【0029】
具体的には、図3に示すように、第一芯部2と第二芯部4は、長方形状の芯地を裁断して形成しており、第一芯部2は略帯状に形成し、より具体的には、地衿形成生地1に、この第一芯部2と第二芯部4とを上下並設状態に重合する際の第二芯部4側となる下端側を湾曲形状に形成し、この第一芯部2を正面視した際に両端部が中央部よりも幅広形状となる帯状に形成する。
【0030】
一方、第二芯部4は、長手方向の長さを第一芯部2の長さよりも短くなるように設定しており、具体的には、この第二芯部4の両端部を短手方向に対して傾斜状態に切り落として、この第二芯部4が略台形状になるように形成し、更に、この第二芯部4の下端側となる台形状の短辺側の複数箇所に逆V字状の切欠き部3を設ける。
【0031】
本実施例では、この切欠き部3を三箇所に設けおり、具体的には、図15に示すように、第二芯部4の長手方向中央部に幅広の切欠き部3を一つ設け、この幅広の切欠き部3の左右両側に、この幅広の切欠き部3の略半分の幅の切欠き部3を一つずつ設けた構成としており、より具体的に説明すると、長手方向中央部に設ける幅広の切欠き部3は、開口幅を約15mmに形成しており、従って、この幅広の切欠き部3の略半分の幅となる左右両端部に設けた切欠き部3の開口幅は約8mmに形成している。
【0032】
尚、第二芯部4に設ける切欠き部3の設置数、設置位置、形状などの設定は、その特性を発揮する設定であれば適宜変更可能なものとし、例えば、着物の着姿を品良く見せたい場合には、襦袢14の衿15を湾曲度合いの少ない丸みを帯びた形状となるように衿15の形を整えるが、このような衿15の形にすると半衿9には浅い皺8が長手方向に広範囲に生じるので、このような場合に対応する半衿9とする場合は、開口幅を狭くした(例えば、10mm以下)切欠き部3を長手方向に複数並設し、例えば、舞妓さんなどで半玉と言われる所謂半人前のひとは、襦袢14を着用する際には湾曲度の大きい衿15を狭くした状態、即ち、衿15の中央部を尖った形状に整えるが、このような衿15の形にすると半衿9の長手方向中央部に皺8が集中して生じるので、このような場合に対応する半衿9とする場合は、開口幅が幅広(例えば10mm〜15mm程度)の切欠き部3を長手方向中央部に設ける構成としても良い。
【0033】
また、図2に示すように、地衿形成生地1は、長方形状(本実施例では、長さ約120cm、幅約12cmの長方形状)に裁断し、これに上述した第一芯部2と第二芯部4とを配置する際の位置決めの目印となる合印10aを設ける。
【0034】
具体的には、図14に示すように、地衿形成生地1に設ける合印10aは、この地衿形成生地1の裏面、即ち、表側生地6と重合した際の内側となる面に上述した第一芯部2と第二芯部4を配置する際の目印(基準点)となる合印10aを設け、本実施例では、第二芯部4に設けた切欠き部3の開口部側となる両先端部を配置する位置に二本一組の合印10aを三箇所に設けている。
【0035】
また、図1に示すように、表側生地6は、長方形状(本実施例では、長さ約120cm、幅約14cmの長方形状)に裁断し、これに後述する仕立て時に地衿部5と重合する際の合わせ位置の位置決め目印となる合印10bを設ける。
【0036】
具体的には、図13に示すように、表側生地6に設ける合印10bは、地衿部5において切欠き部3から露出する地衿形成生地1を摘まみ、切欠き部3の両端部を引き寄せて縫着して形成したダーツ11の位置に設け、言い換えると、前述した二本一組の合印10aの中間点となる位置と合わさる位置に合印10bを設け、本実施例では、上述のように合印10aを三箇所に設けているので、合印10bもこれに対応するように三箇所に設ける。
【0037】
尚、仕立て前準備である第一芯部2、第二芯部4の作製、及び地衿形成生地1、表側生地6に合印10を設ける作業に関しては、特に順序はない。
【0038】
このようにして各部材を準備した後、これらを仕立てて半衿9を形成する。
【0039】
仕立て順としては、先ず、図4に示すように、地衿形成生地1に第一芯部2と切欠き部3を設けた第二芯部4とを上下並設状態に重合する。
【0040】
具体的には、地衿形成生地1の合印10aを設けた裏面を表側とし、更に、合印10aを下方に配した状態にして、この状態に配した地衿形成生地1の下側に第二芯部4を配置する。この際、第二芯部4に設けられた切欠き部3の開口部の両端部を、合印10aに合わせて配置することで容易に位置決めできる。
【0041】
地衿形成生地1に第二芯部4を配置した後、この第二芯部4の上側に第一芯部2を配置するが、この第一芯部2を配置する際は、図16に示すように、この第一芯部2と第二芯部4との間に5mm以下、具体的には2mm〜3mmの隙間を設けて折曲部7を形成した状態で配置し、第一芯部2と第二芯部4とを上下方向並設状態に重合する。
【0042】
この第一芯部2と第二芯部4との間に折曲部7を形成したことで、襦袢14の衿15に被嵌装着する際の折曲重合を容易にすると共に、この折曲重合状態を保持し、即ち、折曲状態が広がらず装着時に衿15に確実に重合しずれが生じ難くなる。
【0043】
このように地衿形成生地1に第一芯部2と第二芯部4とを上下並設状態に重合した状態のまま、アイロンなどの加熱装置で表面を加熱し、接着芯である第一芯部2と第二芯部4とを地衿形成生地1に接着して仮止め状態にする。
【0044】
この地衿形成生地1に第一芯部2と第二芯部4とを重合接着した地衿部5において、図5に示すように、第二芯部4に設けた夫々の切欠き部3から露出している地衿形成生地1を摘まんで切欠き部3の両端部を引き寄せ、切欠き部3の両端部を接合した状態で縫着してダーツ11を形成し、この地衿部5を帯状の平面状態から立体的で且つ湾曲形状した形状状態にする。この際、縫着するのは地衿形成生地1のみであり、第二芯部4は縫わないように注意する。
【0045】
また、ダーツ11形成後は、このダーツ11形成の際に摘まみ寄せて余らせた地衿形成生地1の処理を行う。この地衿形成生地1の処理は、図17に示すように、長手方向中央部に設けた幅広の切欠き部3でダーツ11を形成した箇所は、摘まみ寄せた地衿形成生地1に切り込みを入れて縫代を左右に割った状態にし、この幅広の切欠き部3の左右に設けた幅の狭い切欠き部3でダーツ11を形成した箇所は、摘まみ寄せた地衿形成生地1を夫々外側(半衿9の先端部側)に向けて倒した片倒し状態にする。
【0046】
このようにしてダーツ11の処理を施してから、地衿形成生地1に接着した第一芯部2と第二芯部4とが剥がれないように、図6に示すように、この第一芯部2と第二芯部4とを地衿形成生地1に縫着する。
【0047】
具体的には、図18に示すように、夫々の芯部2,4の外周を、端から1mm〜2mm内側に入ったところを縫着する。
【0048】
この第一芯部2と第二芯部4とを縫着した地衿形成生地1に、図7に示すように、補強芯部12を重合して地衿部5を完成させる。
【0049】
具体的には、この補強芯部12は、図19に示すように、帯状の円弧形状に形成し、ダーツ11を形成した第二芯部4の略中央部に配して重合する。
【0050】
また、本実施例では、この補強芯部12にも接着芯を採用しており、従って、ダーツ11を形成した第二芯部4の略中央部に配した状態で加熱し接着させ、一旦、仮止め状態とした後、外周を縫着して地衿部5を完成させる。
【0051】
次いで、この完成した地衿部5に表側生地6を縫着するが、本実施例では、この地衿部5に表側生地6を縫着する際は、縫着後に表に返した際に地衿形成生地1及び表側生地6の夫々の表側がでるように、地衿部5の表側となる面、即ち、第一芯部2と第二芯部4との重合面でない面と、表側生地6の表側となる面とを重合させた状態で縫着し、表に返した際に縫い目が表側に出ずに、仕上がりの美しい半衿9となるようにしている。
【0052】
また、地衿部5と表側生地6とをあわせる際、表側生地6に予め設けた合印10bを地衿形成生地1の第二芯部側に形成したダーツ11に合わせて位置決めを行うことで、容易に地衿部5と表側生地6との合わせを行うことができる。
【0053】
このように表側となる面を内側に配した状態で長手方向の上端側及び下端側を縫着し筒状にした状態で、図8に示すように、第二芯部4を設けた側をこの第二芯部4の形状に合わせて地衿部5と表側生地6とを一緒に裁断する。
【0054】
また、裁断して所定形状に形成した後、表に返した際に縫代がつまらないように、図20に示すように、第二芯部4の先端部に切り込み13を設ける。
【0055】
次いで、この状態でキセを掛けてから、地衿部5、表側生地6の夫々の表側が表面となるように表に返し、アイロンで型を整え、両端部(両先端部)の縫代を内側に折り込んで整えてから、この両端部を縫着し完成となる。
【0056】
上述のような製造方法で製造した半衿9は、従来品に比して襦袢14の衿15に被嵌装着した際に皺8が寄りにくい形状、即ち、湾曲形状で且つ立体的な形状となるので、従来、装着時に生じていた皺8が殆ど生じることなく、見た目が損なわれずに着姿の美しい画期的な半衿を製造することができる。
【0057】
即ち、第二芯部4に切欠き部3を設け、この切欠き部3を引き寄せてダーツ11を形成するだけの極めて簡易な構成で容易に地衿部5を立体的形状に形成することができ、従来の湾曲形状だけのものに比して、より襦袢14の衿15形状にフィットするので半衿9自体の形状も崩れず、より一層皺8が生じ難くなる半衿9を容易に製造することができるので、着付けした着物の衿形状にフィット形状となる半衿9を極めて容易に且つ低コストで製造することができる画期的な半衿の製造方法となる。
【0058】
従って、従来の半衿は、襦袢14の衿15に被嵌装着する際は、この半衿と襦袢14の衿15とを縫着していたが、本実施例においては、折曲状態の半衿9で襦袢14の衿15を挟み込むだけの装着でも殆どズレが生じることがなく極めて容易に装着できる半衿9となる。
【0059】
しかも、本実施例によれば、図23に示すように、半衿9を襦袢14の衿15に被嵌装着した際に、衿15の内側に配する第二芯部4側が、衿15の外側(表側)に配する第一芯部2側よりも長手方向を短くした形状に形成し、折曲部7に沿って折曲し第一芯部2側と第二芯部4側とを重合状態にした際に、第一芯部2側の両端部が第二芯部4側と重合しない形状としているので、例えば、腰紐16付きの襦袢14を着用した際に、従来の半衿は襦袢14の衿15を挟み込むようにして装着するので、この腰紐16と干渉してしまい、腰紐16を上手く結ぶことができなかった、若しくは半衿9の先端部をきちんと襦袢14の衿15を挟み込まずに着用感にゴロツキを生じてしまう不具合があったが、本実施例のように製造した半衿9の両端部は、図24に示すように、襦袢14の衿15の表側としか重合せず、腰紐16とは干渉しない構成としているので、腰紐16付きの襦袢14を着用した際にもきちんと腰紐16を結ぶことができる実用性に優れた半衿を製造することができる。
【0060】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0061】
1 地衿形成生地
2 第一芯部
3 切欠き部
4 第二芯部
5 地衿部
6 表側生地
7 折曲部
14 襦袢
15 衿
【特許請求の範囲】
【請求項1】
襦袢の衿に被嵌装着する半衿の製造方法において、地衿形成生地に第一芯部と切欠き部を有する第二芯部とを上下並設状態に重合して地衿部を設け、この地衿部は、前記切欠き部から露出する前記地衿形成生地を摘まんで該切欠き部の両端を引き寄せ縫着して立体的な形状に構成し、この立体的な形状に構成した地衿部の前記地衿形成生地の反対側に表側生地を縫着することを特徴とする半衿の製造方法。
【請求項2】
前記地衿形成生地の上側に前記第一芯部を配し下側に前記第二芯部を配して、前記襦袢に装着した際に前記第一芯部が外側に前記第二芯部が内側に配するように構成したことを特徴とする請求項1記載の半衿の製造方法。
【請求項3】
前記第二芯部は、下端側をV字状に切欠いた前記切欠き部を設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の半衿の製造方法。
【請求項4】
前記第一芯部及び前記第二芯部は、接着芯であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半衿の製造方法。
【請求項5】
前記第一芯部と前記第二芯部とを前記地衿形成生地に並設する際に、この第一芯部と第二芯部との間に5mm以下の折曲部となる隙間を設けて並設することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半衿の製造方法。
【請求項6】
前記第二芯部の長さを前記第一芯部よりも短い長さに設定し、前記第二芯部を設けた側が前記第一芯部を設けた側よりも長手方向が短くなるように構成し、前記折曲部に沿って折曲し第一芯部側と第二芯部側とを重合状態にした際に、前記第一芯部側の両端部が前記第二芯部側と重合しない構成としたことを特徴とする請求項5記載の半衿の製造方法。
【請求項1】
襦袢の衿に被嵌装着する半衿の製造方法において、地衿形成生地に第一芯部と切欠き部を有する第二芯部とを上下並設状態に重合して地衿部を設け、この地衿部は、前記切欠き部から露出する前記地衿形成生地を摘まんで該切欠き部の両端を引き寄せ縫着して立体的な形状に構成し、この立体的な形状に構成した地衿部の前記地衿形成生地の反対側に表側生地を縫着することを特徴とする半衿の製造方法。
【請求項2】
前記地衿形成生地の上側に前記第一芯部を配し下側に前記第二芯部を配して、前記襦袢に装着した際に前記第一芯部が外側に前記第二芯部が内側に配するように構成したことを特徴とする請求項1記載の半衿の製造方法。
【請求項3】
前記第二芯部は、下端側をV字状に切欠いた前記切欠き部を設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の半衿の製造方法。
【請求項4】
前記第一芯部及び前記第二芯部は、接着芯であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半衿の製造方法。
【請求項5】
前記第一芯部と前記第二芯部とを前記地衿形成生地に並設する際に、この第一芯部と第二芯部との間に5mm以下の折曲部となる隙間を設けて並設することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半衿の製造方法。
【請求項6】
前記第二芯部の長さを前記第一芯部よりも短い長さに設定し、前記第二芯部を設けた側が前記第一芯部を設けた側よりも長手方向が短くなるように構成し、前記折曲部に沿って折曲し第一芯部側と第二芯部側とを重合状態にした際に、前記第一芯部側の両端部が前記第二芯部側と重合しない構成としたことを特徴とする請求項5記載の半衿の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−252239(P2011−252239A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124910(P2010−124910)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(500147805)株式会社 きものブレイン (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(500147805)株式会社 きものブレイン (13)
【Fターム(参考)】
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