説明

卒中のインビトロ診断のための方法

この発明は、個体における卒中および一過性の虚血性発作(TIA)のインビトロ診断のための方法であって:(a)個体の生体サンプルにおいてproBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントのレベルを測定するステップと;(b)測定されたレベルをカットオフ値と比較するステップと;(c)それから、卒中またはTIAが個体に生じたかどうかを判断するステップとを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は卒中のインビトロ診断のための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
卒中は、脳血管障害(CVA)としても知られている、毎年卒中と診断される推定で700,000人の患者の死亡および病態の主要な原因の1つである。卒中は、現在、合衆国において、死因の第3位である。
【0003】
「卒中」という語は、区別するのに最も重要な2つの幅広く異なる臨床設定を包含する。虚血性卒中は、したがって通常は、血管の封鎖によって引き起こされ、最善の治療は、症状の発症の3時間以内におけるt−PAなどのような血栓溶解剤による。対照的に、出血性卒中は、脳内への出血によって引き起こされ、それは抗血液凝固剤による如何なる処置も禁じるものであり、なぜならば、それは致命的となり得るからである。
【0004】
一過性虚血発作(TIA、しばしば、口語的に、「ミニ卒中」とも呼ばれる)は、脳のある特定の領域への血液供給における変化によって引き起こされ、結果として、定義上では、24時間未満の間持続する短い神経機能障害をもたらし;症状が持続する場合には、それは卒中として分類される(たとえばTransient Ischemic Attacks: Stroke (CVA): Merck Manual Home Editionを参照)。TIAと診断された患者は、時として、近づきつつある卒中に対する警告を受けた、と言われることがある。血管供給障害の期間が数分以上続く場合、脳の当該領域の神経細胞は死に、永久的な神経障害を引き起こす。TIAのある人々の3分の1は、後に、再発性のTIAを引き起こし、3分の1が、永久的な神経細胞欠損のため、卒中を引き起こす(Transient ischemic attack Mount Sinai Hospital, New York)。したがって、TIAの同定は、これらの患者が将来において大きな卒中のリスクを有するという点において、有益である。
【0005】
突然の痺れ感または失明、錯乱、激しい頭痛、不明瞭な言語、および局部的麻痺など、卒中を示す症状を呈する患者における卒中の診断ならびに虚血性卒中と出血性卒中との間における区分は、現在のところ、本質的には、コンピュータ断層撮影(CT)に依存している。CTは、しかしながら、完全に満足のゆくものではなく、なぜならば、それは、急性卒中を診断する際において26%未満の推定感度を有し(Chalela et al. (2007) Lancet 369:293-298)、それは、33%未満の感度での、虚血性卒中を検出する際における非常に貧弱な性能に結びつけられる(Reynolds et al. (2003) Clin. Chem. 49:1733-1739)。磁気共鳴映像法(MRI)は、急性卒中、特に虚血性卒中を診断することにおいて、CTよりも優れていると示されている(84%感度、Chalela et al. (2007) Lancet 369:293-298)。しかしながら、MRIスキャナは高価な設備であり、救急処置室において常に利用可能であるとは限らない。
【0006】
したがって、特に、CTに対する代替的または相補的な、卒中およびTIAを診断するための方法に対するニーズが依然として存在する。
【0007】
この点において、生化学的マーカが、特に、虚血性卒中の早期検出に鑑み、卒中を検出する際における一助として提案されている。
【0008】
S−100b(アストロサイト賦活のマーカ)およびニューロン特異エノラーゼ(NSE)は、最もよく特徴付けられるそのようなマーカの中にある(Jauch et al. (2006) Stroke 37:2508-2513)。心臓型脂肪酸結合タンパク質(H−FABP)も有望なマーカとして考えられている(Lescuyer et al. (2005) Mol. Diagn. 9:1-7)。しかしながら、これらのマーカによって提供される識別能力は、個々では、臨床的な価値のものとしては十分ではないように思われる。
【0009】
したがって、S−100b、B型神経栄養成長因子(BNGF)、フォンビルブラント因子(vWF)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP−9)および単球走化性蛋白−1(MCP−1)などのような、虚血性卒中を診断するためのいくつかのマーカを組合せるパネルを用いることが提案されている(Reynolds et al. (2003) Clin. Chem. 49:1733-1739)。実際には、このパネルは、症状の発症から6時間以内の虚血性卒中サンプルに対して、93%の特異度で、92%の感度を与えることが示された。しかしながら、発症から3時間以内では、感度は僅か87%であり、それは、マーカが有するあまりに低い個々の感度/特異度のためであるかも知れない。
【0010】
したがって、感度/特異度を増大させるか、またはパネルにおいてレベルを測定しなければならないマーカの数を減じることを可能にすることによって、単一マーカのテストに用いられるか、または複数マーカパネルを改善するよう、十分な個々の感度/特異度比率を提供するような代替的マーカに対するニーズが依然としてある。
【0011】
108個のアミノ酸からなる前駆体タンパク質であるproBNP(1−108)は、インビボで開裂されることにより、(i)proBNP(1−108)の32個のC末端アミノ酸からなる脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP(32)または単にBNPとも称される)、および(ii)proBNP(1−108)の76個のN末端アミノ酸からなるNT−proBNP(1―76)を産生する(Giuliani et al. (2006) Clinical Chemistry 52:1054-61)。生物学的には、BNPは、体積膨張および圧力過負荷に応答して主に左心室から放出される血圧調整物質である。proBNP(1−108)は重度の心不全の患者の中で循環していることが示されている(Hammerer-Lercher et al. (2008) Clinical Chemistry 54:5)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、本発明者らによる、proBNP(1−108)単独で卒中検出において高い識別能力(たとえば血漿サンプルで測定して95%の感度および95%の特異度)を有したという予期せぬ知見から生じている。
【0013】
したがって、この発明は、個体における卒中および一過性の虚血性発作(TIA)のインビトロ診断のための方法であって:
(a)個体の生体サンプルにおいてproBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントのレベルを測定するステップと;
(b)測定されたレベルをカットオフ値と比較するステップと;
(c)それから、卒中またはTIAが個体に生じたかどうかを判断するステップとを含む方法に関する。
【0014】
上に規定される方法のある実施の形態では、この発明はさらに特に、
(a’)個体の生体サンプルにおいてproBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントのレベルを測定するステップと、
(b’)個体の生体サンプルにおいて少なくとも1つのさらなる卒中マーカのレベルを測定するステップと、
(c’)proBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントのレベルおよび少なくとも1つのさらなる卒中マーカのレベルを、1つまたはいくつかのカットオフ値と比較するステップと、
(d’)それから、卒中またはTIAが個体に生じたか否かを判断するステップとを含む方法に関する。
【0015】
この発明の別の実施の形態では、上に規定される方法は、さらに、少なくとも1つの心血管疾患のマーカのレベルを測定することをさらに含む。
【0016】
この発明は、さらに、
−proBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントを検出することに対して好適な少なくとも1つの抗体;および
−proBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントを、好ましくは1〜1000pg/mlの濃度で含む少なくとも1つのキャリブレータを含む、卒中を診断するためのキットにも関する。
【0017】
この発明は、さらに、卒中またはTIAのインビトロ診断のための、proBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】卒中母集団および対照母集団におけるH−FABP濃度(縦軸:ng/ml)の分布を表わす。
【図2】卒中母集団および対照母集団におけるproBNP(1−108)濃度(縦軸:pg/ml)の分布を表わす。
【図3】卒中母集団、TIA母集団および対照母集団におけるproBNP(1−108)濃度(縦軸:pg/ml)の分布を表わす。
【図4】卒中母集団および対照母集団におけるproBNP(1−108)濃度(縦軸:pg/ml)の分布を表わす。
【図5】卒中母集団および対照母集団におけるS−100b濃度(縦軸:ng/ml)の分布を表わす。
【図6】卒中母集団および対照母集団におけるNSE濃度(縦軸:ng/ml)の分布を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
ここで意図されるとおりでは、「診断する」または「診断」を確立するということは、卒中が個体に生じたかどうかを判断することに関する。
【0020】
ここに意図されるとおりでは、「卒中」はすべての脳血管障害に関する。特に、「卒中」という語は、急性卒中および慢性卒中、ならびに虚血性卒中および出血性卒中を包含する。
【0021】
虚血性卒中は、脳血管により供給を受ける脳細胞の梗塞および壊死に至るかも知れない、脳血管の部分的または全体的な閉塞により特徴付けられる。一過性の虚血性発作(TIA)では、閉塞は、機能不全を引き起こすが、それは24時間を超えては持続せず、自然に止まる。
【0022】
出血性卒中は、一般に、脳血管の破裂からの脳内出血により特徴付けられる。
好ましくは、この発明に従うと、卒中は、虚血性卒中および出血性卒中からなる群から選択される。より好ましくは、ここに意図される卒中は急性の虚血性卒中である。
【0023】
有利なことに、この発明の方法は早期の卒中診断を可能にする。早期の卒中診断は、虚血性卒中の場合において特に重要であり、なぜならば、閉塞した血管を卒中の症状の発症の3時間以内に処置することは大抵の不可逆的な脳損傷を防ぐことになる、と通常は推定されるからである。したがって、上に規定されるステップ(a)は、個体における卒中を示す少なくとも1つの症状の発症後、6時間以内、より好ましくは3時間以内、最も好ましくは2時間以内に実施されることが好ましい。
【0024】
卒中を示す症状は、当業者には周知であり、特に、突然の痺れ感または失明、錯乱、重度の頭痛、不明瞭言語および局部的麻痺を包含する。
【0025】
個体とは、好ましくはヒトである。
「proBNP(1−108)」は、前駆体BNP(32)およびNT−proBNP(1―76)に関する。ここに意図されるとおりでは、「proBNP(1−108)」はすべてのその天然の変異体を含む。例示的に、proBNP(1−108)はSEQ ID NO:4によって表わされる。
【0026】
インビボでは、proBNP(1−108)はしばしば部分的に切断され、特に、N末端側または選択肢的にC末端側において1つ以上のアミノ酸を、たとえばプロテアーゼを循環させることによって削除することにより、いわゆる「proBNP(1−108)フラグメント」を形成する。そのようなproBNP(1−108)フラグメントの一例である、ジベプチターゼによる開裂により産生されるproBNP(3−108)がLam et al. (2007) J. Am. Coll. Cardiol. 49:1193-1202において記載されている。診断価値があるのは、proBNP(1−108)のみならず、そのさまざまな天然のフラグメントもそうである、と考えられる。したがって、この発明は、proBNP(1−108)のレベルを測定することのみならず、proBNP(1−108)のフラグメントのレベルにも依存する。
【0027】
「proBNP(1−108)」および「proBNP(1−108)のフラグメント」という表現は、リン酸化、糖鎖形成などのような、少なくとも1つの翻訳後修飾を受けた任意のポリペプチドも含む。たとえば、Schellenberger et al. (2006) Arch. Biochem. Biophys. 51 :160-6は、proBNP(1−108)は全体的または部分的にO糖鎖形成される糖タンパク質であることを示した。
【0028】
ここにおいて意図されるとおりでは、proBNP(1−108)のフラグメントはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含む。このRAPRSP配列は、インビボで開裂することでNT−proBNP(1―76)およびBNP(32)を産生するproBNP(1−108)の部位を含む。したがって、RAPRSPはproBNP(1−108)に特有であり、BNP(32)およびNT−proBNP(1―76)には見出され得ないため、それらは、したがって、この発明に従うと、proBNP(1−108)のフラグメントの定義からは除外される。
【0029】
この発明に従うproBNP(1−108)のフラグメントはFGRKMDR配列(SEQ ID NO:2)を含むことがさらに好ましい。この配列は、proBNP(1−108)のBNP(32)部分に含まれる。さらにより好ましくは、proBNP(1−108)のフラグメントは、BNP(32)の全配列を含む(SEQ ID NO:3)。
【0030】
「さらなる卒中マーカ」という表現は、上に定義されるproBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメント以外の任意の生化学的マーカに関するものであり、そのレベルは上に定義される卒中またはTIAを示すものである。
【0031】
「心疾患のマーカ」という表現は、心血管疾患を検出または診断するのに有用な任意のマーカに関する。そのようなマーカは当業者には周知である。好ましくは、心血管疾患のマーカは,C反応性タンパク質(CRP)および心筋トロポニンI(cTnI)からなる群から選択される。心血管疾患のマーカのレベルを測定することはこの発明の方法において有利であるかも知れず、なぜならば、それは、proBNP(1−108)のレベルの変動に対する原因として、心血管疾患を排除することを可能にするからである。
【0032】
好ましくは、proBNP(1−108)、proBNP(1−108)のフラグメント、少なくとも1つのさらなる卒中マーカ、または少なくとも1つの心血管疾患のマーカのレベルを測定または判断することは、イムノアッセイを用いて判断される。
【0033】
ここに意図されるとおりでは、「イムノアッセイ」は、proBNP(1−108)、proBNP(1−108)のフラグメント、少なくとも1つのさらなる卒中マーカ、または少なくとも1つの心血管疾患のマーカのレベルを、それに特異的に結合する少なくとも1つの化合物(またはリガンド)を用いて判断する任意の方法に関する。それに特異的に結合する化合物(またはリガンド)は如何なる種類のものでもあり得るが、好ましくは、ファージディスプレイによって得られる抗体、アプタマーまたはペプチドである。イムノアッセイ法は当業者には周知であり、当業者に周知のさまざまなフォーマット、たとえば、固相または均相、1つまたは2つのステップ、サンドイッチ法または競合法で実施されてもよい。
【0034】
好ましくは、一方は捕捉リガンドであり他方は検出リガンドである2つのリガンド間における固相におけるサンドイッチ法が用いられることになる。この種のイムノアッセイは当業者には特に周知である。たとえば、Seferian et al. (2007) Clin. Chem. 53:866-873による論文は、各回毎に、抗体の対(固相で固定された抗体および検出で標識された抗体)を用いる、BNP(32)およびproBNP(1−108)を検定するためのサンドイッチイムノアッセイ(または2つの部位におけるイムノメトリックアッセイ)の一例を示している。
【0035】
生体サンプルにおける抗原の存在は、検出手段、特に「検出リガンド」によって明らかにされる。検出リガンドは、標識され、捕捉リガンドによって認識されるものとは異なるエピトープの部位を認識することにより、捕捉された抗原に結合することができる。
【0036】
「標識された」という表現は、直接的な標識および間接的な標識(例えば、それら自体が標識されている他のリガンドにより、または、排他的ではないが、標識されたアビジン−ビオチン対などの、標識された「親和対」の試薬を用いて)の双方を指す。
【0037】
サンドイッチ法の場合では、捕捉リガンドは、好ましくは、それが患者の天然の抗原におけるエピトープを特異的に認識するように選択され、一方、検出リガンドは、好ましくは、それが患者の天然の抗原における他のエピトープを特異的に認識するような態様で選択される。
【0038】
好ましくは、捕捉リガンドは固相において固定される。固相の非限定的な例として、マイクロプレート、特に、デンマークのNuncによって販売されているようなポリスチレンマイクロプレートを用いることができる。固形粒子またはビーズ、常磁性ビーズ、たとえば、(EstaporTMの商標で)Dynal, Merck-Eurolab(フランス)およびPolymer Laboratoriesによって製造されるようなもの、またはポリスチレンもしくはポリプロピレン試験管、ガラス、プラスチックもしくはシリコンチップなどさえも、用いられてもよい。
【0039】
ELISAアッセイ、ラジオイムノアッセイ、または任意の他の検出方法を用いて、形成された抗原抗体複合体の存在を明らかにしてもよい。このように、異なる種類のリガンド、特に抗体の標識が可能である(放射性、酵素、蛍光など)。
【0040】
さらに、検出は、表面プラズモン共鳴(SPR)のような質量蓄積に基づく方法、圧電検出、さらには質量分析法または第2の標識されたリガンドが存在しない状態でリガンド−抗原タイプの相互作用の研究を可能にするとして規定される任意の他の方法によって実行されてもよい。
【0041】
「特異的」という語は、それがリガンドの認識または標的に対するリガンドの結合に言及する場合、リガンドと標的との相互作用が、そのリガンドがその標的と構造上類似しない他の標的と実質的に相互作用することなく生ずることを意味する。
【0042】
「抗体」は、ここで意図されるとおりでは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギまたはラクダ科の種などのような任意の種に属する抗体に関する。抗体は、さらに、キメラ抗体、つまり異なる種に由来する部分を含む抗体でもあり得る。好ましいキメラ抗体は、いわゆる「人体に適合された」抗体であり、定常部(CおよびC)はヒト起源であり、可変部(VおよびV)はたとえばマウスなどの他の種である。この発明の抗体は、動物感作、またはたとえば組換え法もしくは合成法などのような、当業者に公知の任意の方法で産生することができる。その上、この発明による「抗体」は、さらに、Fab、F(ab’)2、scFvフラグメント、およびラクダ科単鎖抗体などのような、前記抗体のパラトープの少なくとも1つを含む抗体フラグメントを包含する。この発明の抗体は、ポリクローナル抗体、特に単一特異性ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体であり得る。
【0043】
「アプタマー」は当業者に周知である。アプタマーは、ヌクレオチドの化合物、特にリボヌクレオチドもしくはデゾキシリボヌクレオチド、または標的、特にタンパク質標的に特異的に結合することができる天然のペプチドである。天然のヌクレオチドのアプタマーおよびその産生は、特に、Ellington et al. (1990) Nature 346:818-22およびBock et al. (1992) Nature 355:564-6によって記載されている。
【0044】
「ファージディスプレイ」とは、バクテリオファージのキャプシド上に発現し、キャプシド符号化遺伝子に挿入される核酸配列によって符号化されるポリペプチドリガンドを選択するための技術である。この方法は、当業者には周知であり、特に、ScottおよびSmith (1990) Science 249:386-390、ならびにMarks et al. (1991) J. Mol. Biol. 222:581-597によって記載されている。好ましくは、ファージディスプレイによって得られ得るポリペプチドはscFvタイプのポリペプチド(一本鎖可変フラグメント)である。この技術は、特に、Winter et al. (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:433-455に記載されている。
【0045】
好ましくは、上に定義されるイムノアッセイは、RAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むエピトープを標的とする抗体を含む。より好ましくは、抗体は、ブダペスト条約の下で、2005年4月29日に、登録番号I−3073でCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25, rue du Docteur Roux, 75 724 Paris Cedex 15, France)に寄託されたハイブリドーマによって分泌される。そのような抗体は、特に、国際公開WO2004/014952に記載されている。この抗体が有利であるのは、それが、BNP(32)、NT−proBNP(1―76)およびそれらのそれぞれのフラグメントを特に除く、この発明に従うproBNP(1−108)およびproBNP(1−108)のすべてのフラグメントの特異的検出を可能にし、それによって、proBNP(1−108)およびそのさまざまなフラグメントの十分な診断の恩恵を得ることを確実にするという点である。
【0046】
さらに好ましくは、このイムノアッセイは、FGRKMDR配列を含むエピトープを標的とする抗体を含む。より好ましくは、この抗体は、ブダペスト条約の下で、2007年4月13日に登録番号I−3746でBio−Rad(3 boulevard Raymond Poincare, 92430 Marnes la Coquette, France)によりCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25, rue du Docteur Roux, 75 724 Paris Cedex 15, France)に寄託されたハイブリドーマによって分泌される。そのような抗体は、特に、国際出願PCT/EP2008/060188に記載されている。
【0047】
有利なことに、RAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むエピトープを標的とする抗体、およびFGRKMDR配列を含むエピトープを標的とする抗体は、同じイムノアッセイにおいて組合され、それによって、この発明に従うproBNP(1−108)およびproBNP(1−108)のフラグメントの特異的検出を可能にする。
【0048】
好ましくは、proBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントに関する場合、上に規定されるカットオフ値は、明らかに健康な個体の母集団から得られた生体サンプルにおいてこの発明に従うproBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントの少なくとも中央値レベルである。より好ましくは、上に規定されるカットオフ値は、明らかに健康な個体の母集団から得られたこの発明に従うproBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントのレベルの少なくとも第75百分位数、第95百分位数または第99百分位数に対応する値である。最も好ましくは、このカットオフ値は、少なくとも0pg/ml、1pg/ml、2pg/ml、3pg/ml、5pg/ml、10pg/ml、50pg/ml、または100pg/mlである。カットオフ値が少なくとも0pg/mlである場合、これは、この発明の方法の上で規定されたステップa)およびb)、またはa’)またはc’)は、単に、上に定義されるproBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントが個体の生体サンプルに存在するかどうかを判断することにあることを意味する。
【0049】
同様に、少なくともさらなる卒中マーカに関する場合、上に定義されるカットオフ値は、好ましくは、明らかに健康な個体の母集団から得られる生体サンプルにおける前記少なくとも1つのさらなる卒中マーカの少なくとも中央値レベルである。
【0050】
この発明に従ってカットオフ値を判断することは、十分に当業者の通常の技術の範囲内である。特に、好ましくは、同じ性質の生体サンプルにおいて、この発明に従うproBNP(1−108)、proBNP(1−108)のフラグメント、または少なくとも1つのさらなる卒中マーカのレベルを測定する際に注意すべきである。ここに意図されるとおりでは、「明らかに健康な個体の母集団」は、好ましくは、上に定義されるような卒中を示す症状を何も呈さない個体に関係する。
【0051】
proBNP(1−108)、proBNP(1−108)のフラグメント、および少なくとも1つのさらなる卒中マーカのレベルを1つまたはいくつかのカットオフ値と比較する場合、それは、一方のproBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントのレベル、および他方の少なくとも1つのさらなる卒中マーカのレベルは、各々それぞれのカットオフ値と比較することができること、またはそれらは両方とも単一のカットオフ値と比較できることを意味する。
【0052】
少なくともさらなる卒中マーカまたは少なくとも1つの心血管疾患のマーカのレベルは、proBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントのレベルが測定されるサンプルと同じ生体サンプルにおいて測定されることが好ましい。
【0053】
ここに意図されるとおりでは、「生体サンプル」という表現は、採取されたとおりのサンプル、ならびに、特に、この発明に従うプロセスおよび方法において用いるのに好適にするためにさまざまな処理を経たサンプルの両方を含む。この発明に従う生体サンプルはどのような種類のものでもあり得るが、好ましくは、その生体サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液サンプル、尿サンプルおよび唾液サンプルからなる群から選択されることが好ましい。
【0054】
実施例
【実施例1】
【0055】
1.方法
a.サンプル
proBNP(1−108)およびH−FABPのレベルを、発症後3時間以内に卒中が生じた個体から得られた70の血清サンプル(15の出血性卒中サンプル(HM)および55の虚血性卒中サンプル(IM))ならびに明らかに健康な個体からの148の対照血清サンプルにおいて測定した。
【0056】
b.バイオマーカ測定
proBNP(1−108)レベルの測定を、BioPlex(商標)2200 proBNP(1−108)アッセイ(Bio−Rad)を用いて行なった。
【0057】
BioPlex(商標)2200は、多重の磁気ビーズおよびフローサイトメトリ技術を組合せて、十分に自動化されたランダムアクセスプラットホーム上において複数分析物検出を提供する。磁気粒子(8μm直径、カルボキシル修飾された表面)を、別個の波長で発光し、635nmで有意に吸収する、2つの発蛍光団(分類染料、CL1およびCL2)で染色する。レポータ発蛍光団、β−フィコエリトリン(PE)が、その高いモル吸光係数、量子収量、耐光退色性、自己消光がないこと、および安定性のために選ばれた。検出器は、同時に、3つの波長:つまり2つの分類染料およびレポータ染料を測定する。
【0058】
BioPlex(商標)2200 proBNP(1−108)アッセイは2ステップサンドイッチ蛍光イムノアッセイである。第1のステップでは、BioPlex(商標)2200システムは、50μLの患者サンプル、登録番号I−3073でCNCMに寄託されたハイブリドーマによって分泌される抗proBNP(1−108)モノクロナール抗体でコーティングされた磁気染色ビーズおよびアッセイバッファを反応容器において組合せる。次いで、11分間のインキュベーションおよび洗浄サイクルの後、フィコエリトリン(PE)にコンジュゲートされた登録番号I−3746でCNCMに寄託されたハイブリドーマにより分泌される抗ヒトBNPモノクロナール抗体を添加し、2分間インキュベーションを行なった。過剰なコンジュゲート物の除去後、ビーズ混合物を検出器に通し、それによって、染色されたビーズおよびPEの蛍光によりビーズ上に捕捉された抗原の量を同定する。6つの別個のキャリブレータの組を用いた較正の後、3つのレベルの品質コントロールおよび患者サンプル結果をpg/mLで表わす。
【0059】
2つの品質コントロールビーズも各サンプルで試験を行なって、全体のシステムの統合性を向上させる。
【0060】
H−FABPレベルを、Hycult biotechnologyからのヒトH−FABP ELISAキットを製造業者の指示に従って用いて測定した。
【0061】
c.統計学的分析
患者の状態に従ったバイオマーカの分布をボックスプロット表現によって表現した、というのも、それは、数値データの群を、5つの数による概要(最小観測値、下位四分位数(Q1)、中央値(Q2)、上位四分位数(Q3)、および最大観測値)を介して図形的に表現する便利な方法であるからである。
【0062】
データは、Box−Cox法を用いて、ガウス分布に従い、統計学的分析を可能にするよう、正規化されている(Box, G. E. P. and Cox, D. R. (1964) An analysis of transformations. JRSS B 26, 211-246)。
【0063】
対照サンプルと卒中サンプルとの間における微分解析を、以下の統計学的検定:ノンパラメトリックである(統計学的分布の仮定を必要とせず、スチューデントのt検定の代替物となり得る)the Wilcoxon Rank Sum Test (Wilcoxon, F. (1945). Individual comparisons by ranking methods. Biometrics, 1, 80-83) 、および恐らくは不等分散を有する2つのサンプルを用いて使用することに対して意図されるスチューデントのt検定の適合物であるウェルチの検定を用いて行なった。解析は、さらに、Benjamini/Hochber法(Benjamini and Y. Hochberg (1995). Controlling the False Discovery Rate: a practical and powerful approach to multiple testing. J. R. Statist. Soc. B. Vol. 57: 289-300)によるこれらの検定の調整(補正)版も行なった。
【0064】
マーカの診断性能は2つの指標:感度(疾患母集団を検出する能力)および特異度(対照母集団を検出する能力)によって特徴付けられた。診断検査の結果は、さらに、ROC(受信者動作特性)分析の曲線下面積(AUC)を判断することによって特徴付けられ得る。ROC曲線は、さまざまな濃度に対する検査の感度(Se)と特異度(Sp)との間における相反関係のグラフによる視覚化である(M. H. Zweig and G. Campbell (1993). "Receiver-operating characteristic (ROC) plots: a fundamental evaluation tool in clinical medicine". Clinical chemistry 39 (8): 561-57)。
【0065】
2.結果
a.ボックスプロット表現によるバイオマーカの分布
図1および図2は、それぞれ、卒中母集団および対照母集団におけるH−FABP濃度およびproBNP(1−108)濃度の分布を表わす。
【0066】
表1:対照母集団および卒中母集団におけるH−FABPレベルおよびproBNP(1−108)レベル
【0067】
【表1】

【0068】
proBNP(1−108)マーカは、対照サンプルにおいてよりも卒中サンプルにおいてより高い濃度レベルを示す。一方、測定されたH−FABP濃度は、卒中患者サンプルと対照サンプルとの間において有意な差異を全く示さない。
【0069】
b)微分解析
卒中サンプルと対照サンプルとの間におけるH−FABPレベルおよびproBNP(1−108)レベルにおける差異の統計学的有意性を判断した:
表2:H−FABPマーカおよびproBNP(1−108)マーカに関して対照母集団および卒中母集団から測定された濃度間における微分解析
【0070】
【表2】

【0071】
卒中サンプルと対照サンプルとの間における濃度間の差異は、双方のマーカ(proBNP(1−108)およびH−FABP)について統計学的に有意であったが、proBNP(1−108)は、非常に低いp値(10-4)を伴う特に興味深い特性を呈している(表2)。
【0072】
c)ROC曲線分析
臨床状態に対する受信動作特性(ROC)分析に基づき、および表3にまとめられるように、proBNP(1−108)に対する曲線下領域は、90%の感度、85%の特異度で、卒中について診断された患者を健康な被験者と区別することに成功している。さらに、この識別能力は、虚血性卒中患者および出血性卒中患者の双方に対して、それぞれ、0.936および0.935のAUCで、非常に高い。
【0073】
表3:対照被験者と比較した場合の卒中患者に関するproBNP(1−108)についての受信動作特性分析データ
【0074】
【表3】

【0075】
下の表4に示されるように、H−FABPマーカは、57%の感度、54.7%の特異度で、卒中診断に対する低い識別能力を有する。
【0076】
表4:対照被験者と比較した場合の卒中患者についてのH−FABPに対する受信動作特性分析データ
【0077】
【表4】

【実施例2】
【0078】
1.方法
a.サンプル
proBNP(1−108)のレベルを、発症後3時間以内に卒中が生じた個体から得られた23の血清サンプル(5つの出血性卒中サンプル(HM)および18の虚血性卒中サンプル(IM))、TIAが臨床診断された個体から得られた7つの血清サンプル、ならびに明らかに健康な個体からの94の対照血清サンプルにおいて測定した。
【0079】
b.マーカレベル測定
proBNP(1−108)レベルを実施例1に示されるように測定した。
【0080】
c.統計学的分析
proBNP(1−108)レベル分布のボックスプロット表現およびROC分析を実施例1に示されるように行なった。
【0081】
2.結果
a)ボックスプロット表現によるバイオマーカの分布
図3は、卒中母集団、TIA母集団および対照母集団におけるproBNP(1−108)濃度の分布を表現する。
【0082】
表5:対照母集団、TIA母集団および卒中母集団におけるproBNP(1−108)分布値
【0083】
【表5】

【0084】
proBNP(1−108)マーカは、対照サンプルにおいてよりも卒中患者サンプルまたはTIA患者サンプルにおいてより高い濃度レベルを示す。
【0085】
b)ROC曲線分析
臨床状態に対する受信動作特性(ROC)分析に基づき、および表6にまとめられるように、proBNP(1−108)に対する曲線下領域は、91%の感度、84%の特異度で、卒中について診断された患者を健康な被験者と区別することに成功している。
【0086】
表6:対照被験者と比較した場合の卒中患者に関するproBNP(1−108)についての受信動作特性分析データ
【0087】
【表6】

【0088】
実施例1において立証された、卒中患者を診断するためのproBNP(1−108)の能力が、かくして、これらの新たな病的母集団および健康な母集団において確認される。
【実施例3】
【0089】
proBNP(1−108)が有する識別能力を、さらに、同一の母集団において、先行技術の2つの基準卒中マーカ(S−100bおよびNSE)のそれと比較した。
【0090】
1.方法
a.サンプル
マーカのレベルを、発症から3時間以内に卒中が生じた個体から得られた41の血漿サンプル、および明らかに健康な個体からの対照血漿サンプルにおいて測定した。
【0091】
b.マーカレベル測定
proBNP(1−108)レベルを実施例1に示されるように測定した。
【0092】
NSEレベルを、NanogenからのNexus DX(商標) Neuron Specific Enolase (NSE) Testキットを用いて、製造業者の指示に従い測定した。
【0093】
S−100bレベルを、NanogenからのNexus DX(商標) S-100 ELISA Testキットを用いて、製造業者の指示に従い測定した。
【0094】
c.統計学的分析
統計学的分析を実施例1に示されるように行なった。
【0095】
2.結果
a)ボックスプロット表現によるバイオマーカの分布
図4、図5および図6は、それぞれ卒中母集団および対照母集団におけるproBNP(1−108)濃度、S−100b濃度およびNSE濃度の分布を表現する。
【0096】
表7:対照母集団および卒中母集団におけるproBNP(1−108)分布値、S100分布値およびNSE分布値
【0097】
【表7】

【0098】
proBNP(1−108)マーカおよびNSEマーカは、対照サンプルにおいてよりも卒中サンプルにおいてより高い濃度レベルを示す。双方の母集団間における最もよい識別は、proBNP(1−108)マーカで観察される。一方、測定されたS−100濃度は卒中患者サンプルと対照サンプルとの間において有意差を全く示さない。
【0099】
b)微分解析
卒中サンプルおよび対照サンプルにおけるproBNP(1−108)レベル、NSEレベルおよびS−100レベルにおける差の統計学的有意性を判断した:
表8:NSEマーカ、S−100マーカおよびproBNP(1−108)マーカに関して対照母集団および卒中母集団から測定された濃度間における微分解析
【0100】
【表8】

【0101】
NSEおよびproBNP(1−108)は、非常に低いp値(p<0.001)を伴って、統計学的に有意である。
【0102】
c)ROC曲線分析
臨床状態に対する受信動作特性(ROC)分析に基づき、および表9にまとめられるように、proBNP(1−108)に対する曲線下領域は、95%の感度、95%の特異度および0.974のAUCで、卒中について診断された患者を健康な被験者と区別することに成功している。
【0103】
表9:対照被験者と比較した場合の卒中患者に関する、proBNP(1−108)、NSEおよびS−100についての受信動作特性分析データ
【0104】
【表9】

【0105】
proBNP(1−108)は、卒中患者を対照被験者から区別することにおいて、NSEおよびS−100bにより提供される識別能力を超える高い識別能力を呈することがわかる。
【実施例4】
【0106】
proBNP(1−108)の診断能力を、さらに、虚血性卒中患者において、実施例1に記載されるようにBioPlex(商標)2200 proBNP(1−108)アッセイを用いて評価した。
【0107】
a)サンプル
−卒中発症の3時間以内に救急部に受入れられた虚血性卒中患者からの32のクエン酸塩添加血漿サンプルを検査した。卒中重症度は米国立衛生研究所の脳卒中スケール(NIHSS)で評価した。
【0108】
−卒中母集団からの患者と性別および年齢を適合させた明らかに健康な血液提供者からの42のクエン酸塩添加血漿サンプルを検査した。
【0109】
すべてのクエン酸塩添加血漿サンプルを−80℃で保存した。分析に先立って、サンプルを解凍し、3000gで15分間4℃で遠心分離した。
【0110】
b)結果
対照母集団および虚血性卒中母集団に対するproBNP(1−108)値の分布を表10に示す。proBNP(1−108)のレベルは、対照群と比較して虚血性卒中群において有意に高かった(Mann-Whitney、p<0.0001)。これらの結果により、proBNP(1−108)はしたがって虚血性卒中の早期診断に対して有用な血漿バイオマーカであることが確認される。
【0111】
表10:虚血性卒中のクエン酸塩添加血漿サンプルおよび対照のクエン酸塩添加血漿サンプルにおけるproBNP(1−108)濃度(最小値、第一四分位数、中央値、第三四分位数および最大値)
【0112】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における卒中および一過性の虚血性発作(TIA)のインビトロ診断のための方法であって:
(a)前記個体の生体サンプルにおいてproBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントのレベルを測定するステップと;
(b)前記測定されたレベルをカットオフ値と比較するステップと;
(c)それから、卒中またはTIAが前記個体に生じたかどうかを判断するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記proBNP(1−108)のフラグメントはFGRKMDR配列(SEQ ID NO:2)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記proBNP(1−108)のフラグメントはBNP(32)の配列(SEQ ID NO:3)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記卒中は、虚血性卒中、出血性卒中、および一過性の虚血性発作(TIA)からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)は前記個体において卒中を示す少なくとも1つの症状の発症後6時間以内に実施される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
proBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントのレベルはイムノアッセイを用いて測定される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記イムノアッセイは、RAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むエピトープを標的とする抗体を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体は、ブダペスト条約の下2005年4月29日に登録番号I−3073でCNCM(フランス、パリ)に寄託されたハイブリドーマによって分泌される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記イムノアッセイは、FGRKMDR配列(SEQ ID NO:2)を含むエピトープを標的とする抗体を含む、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記抗体は、ブダペスト条約の下2007年4月13日に登録番号I−3746でCNCM(フランス、パリ)に寄託されたハイブリドーマによって分泌される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カットオフ値は少なくとも1pg/mlである、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
(a’)個体の生体サンプルにおいてproBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントのレベルを測定するステップと、
(b’)前記個体の生体サンプルにおいて少なくとも1つのさらなる卒中マーカのレベルを測定するステップと、
(c’)proBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントのレベルおよび前記少なくとも1つのさらなる卒中マーカのレベルを、1つまたはいくつかのカットオフ値と比較するステップと、
(d’)それから、卒中またはTIAが前記個体に生じたか否かを判断するステップとを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記少なくともさらなる卒中マーカのレベルは、proBNP(1−108)またはproBNP(1−108)のフラグメントのレベルが測定される生体サンプルと同じサンプルにおいて測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記生体サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液サンプル、尿サンプルおよび唾液サンプルからなる群から選択される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの心血管疾患のマーカのレベルを測定することをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの心血管疾患のマーカはCRPおよびcTnIからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
卒中またはTIAのインビトロ診断のための、proBNP(1−108)またはRAPRSP配列(SEQ ID NO:1)を含むproBNP(1−108)のフラグメントの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−501209(P2013−501209A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520529(P2011−520529)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059982
【国際公開番号】WO2010/012834
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(506215582)
【氏名又は名称原語表記】BIO−RAD INNOVATIONS
【Fターム(参考)】