説明

卓球用のラバー及び卓球ラケット

【課題】ボールに対する高い反撥性と、ボールに対する回転力の付与及びコントロールの制御に優れ、温度によって打感などの変化が少ない卓球用のラバーを提供する。
【解決手段】シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シート3を有する卓球用のラバー1であり、前記弾性体シート3が、気泡体積含有率が30%以上かつ独立発泡率が60%以上の発泡ゴムシートであること及び、前記弾性体シートのヤング率E’が0.01MPa以上1MPa以下であり、損失正接tanδが0.03以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卓球用のラバー及び卓球ラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
卓球ラケットのブレードには、ボールを打撃するためのラバーが貼り付けられている。ラバーとしては、例えば、高反撥性のゴム材で形成されたラバーシートと、スポンジシートとが重ね合わされてなるラバーが用いられている。
【0003】
鋭いスマッシュを打つには、ラバーシート及びスポンジシートの反撥性が高いものでなければならず、この場合はラバーシートの材質として高反撥性ゴムが用いられる。一方、ボールに回転力を与えたり、ボールの飛ぶ方向をコントロールするためには、ボールとラバーとの接触時間が長い方が良い。従って、ラバーシートの裏面にスポンジを貼り合わせたり、ラバーシートを厚くして圧縮剛性を低下させたり、ラバーシートに突起を設けてラバー全体の圧縮剛性を低下させたりすることによって、ラバーシートの打撃面を柔らかくして、ボールとラバーとの接触時間を調整している。
【0004】
実際のラバーには、ボールに対する高い反撥性と、ボールに対する回転力の付与及びコントロールの制御とが同時に求められる。しかし、ボールとラバーとの接触時間を長くするために、可塑成分をラバーシートに添加してラバーシートの材質を柔らかくすると、反撥弾性が低下し、高スピードの打球が打てなくなる。また、高反撥性のラバーシートを用いたとしても、ラバーシートを貼り合わせるスポンジは一般に反撥性が低いので、ラバー全体として反発力が低下して高スピードのボールを打つことが困難になる。また、卓球のラバーには、1枚のラバーシートからなるものがあるが、このようなラバーは全体的に硬いものとなり、ラバーとボールとの接触時間が短くなり、ボールへの回転力の付与が難しくなる。
【0005】
下記特許文献1〜8には、各種のラバーが開示されているが、これらのラバーは、ボールに対する高い反撥性と、ボールに対する回転の付与及びコントロールの制御とを同時に達成できるものではない。
【0006】
例えば、特許文献1〜4に開示されたラバーは、ベースとなるゴム成分に、高反撥性のポリブタジエンゴムを添加したラバーシートを有するラバーである。これら特許文献1〜4におけるラバーシートは、ヤング率E’が3.5MPa程度、損失正接tanδが0.011程度と推測される。このような高いヤング率を有するラバーシートは、極めて高い反撥性を示すと考えられるから、このラバーシート単独からなるラバーでは、高スピードの返球が可能になるが、ラバーシートとボールとの接触時間が短く、ボールに十分な回転力が与えられない。
特許文献1〜4に開示されたラバーにおいて、ラバーシートとボールとの接触時間を長くするためには、ラバーシートのヤング率を低くすればよい。例えば、オイル等の可塑成分の添加や、ゴムの発泡化といった手段が考えられる。しかし、可塑性分の添加やゴムの発泡化は、同時に損失正接tanδの上昇を引き起こす。損失正接tanδが高まると、反発性が大幅に低下してしまう。
更に、特許文献1〜4に開示のラバーシートに突起を設け、このラバーシートの突起をスポンジに食い込ませたラバーを用いることもできる。このようなラバーにおいては、スポンジによってラバーシートの柔軟性を補うことが可能になり、ラバーシートとボールとの接触時間を長くすることが可能になる。しかし、スポンジは、ラバーシートに比べて低反撥性であるため、打撃の際にスポンジでエネルギーを散逸させてしまい、ボールのスピードが低下してしまう。
【0007】
更に、これらに紹介されている材料は、一般に、温度変化や経時変化で物性が変化しやすく、試合会場の温度が上がるとヤング率が低下したり、損失正接tanδが上昇したりするため、ボールの反発や回転が変わり、選手が感じる打感、コントロール性に違和感を感じ、ミスプレイが増えやすい。
【0008】
また、特許文献8には、損失正接tanδが0.01〜0.04であり、複素弾性率Eが1〜4MPaであるラバーシートを有するラバーが開示されている。ここで、損失正接tanδが小さい場合には、複素弾性率Eの実数部がヤング率に近似することになる。特許文献8では損失正接tanδが十分に小さいため、複素弾性率Eはその実数部の近似値になる。従って、特許文献8のラバーシートは、損失正接tanδが0.01〜0.04であり、ヤング率がほぼ1〜4MPaであるラバーシートである。ヤング率が1〜4MPaのラバーシートは、比較的低い反撥性を示すが、ボールに対する回転力の付与とボールのコントロールの面ではまだ十分ではない。
【0009】
更に、特許文献5または9には、発泡ゴム成形体または気泡を含むゴム成形体を有するラバーが開示されている。しかし、発泡ゴム成形体または気泡を含むゴム成形体は、損失正接tanδの小さいものが得られないので、反撥性が低いラバーしか得られず、高いスピードの返球が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−8714号公報
【特許文献2】特開2004−24662号公報
【特許文献3】特開2004−41370号公報
【特許文献4】特開2004−97556号公報
【特許文献5】特開2004−244505号公報
【特許文献6】特開2004−255070号公報
【特許文献7】特開2004−305602号公報
【特許文献8】特開2004−254808号公報
【特許文献9】特開2004−89551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ボールに対する高い反撥性と、ボールに対する回転力の付与及びコントロールの制御に優れ、更に、温度変化や経時変化で物性が変化することが少なく、如何なる会場環境下においても安定した打感とコントロール性が得られる卓球用のラバー及び卓球ラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の卓球用のラバーは、シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートを備えたことを特徴とする。
また、本発明の卓球用のラバーにおいては、前記弾性体シートが、気泡体積含有率が30%以上かつ独立発泡率が60%以上の発泡ゴムシートであることが好ましい。
更に、本発明の卓球用のラバーにおいては、前記弾性体シートのヤング率E’が0.01MPa以上1MPa以下であり、損失正接tanδが0.03以下であることが好ましい。
また、本発明の卓球ラケットは、先の何れかに記載のラバーが備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のラバーには、シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートが備えられているので、ボールに対する反発性を高めることができ、打球のスピードを高めることができる。また、上記の弾性体シートを備えることで、打撃時のラバーとボールとの接触時間が長くなるので、ボールに対して回転を容易に与えることができるとともに、打球のコントロール性を高めることができる。
更にシリコーンゴムを用いているので、温度変化や経時変化で物性が変化しにくく、試合会場の温度が変化した場合でも、ボールのスピードや回転、方向、コントロールあるいは打感といった面で選手が違和感を感じることがなく、常に同じコンディションでプレイでき、ミスプレイの頻度も減らせる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態の卓球用のラバーの第1の例を示す断面模式図である。
【図2】図2は、卓球用のラバーを構成するラバーシートのヤング率E’及び損失正接tanδとの関係を示すグラフである。
【図3】図3は、ラバーシートに独立気泡を設けた場合の効果を説明する模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態の卓球用のラバーの第2の例を示す断面模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態の卓球用のラバーの第3の例を示す断面模式図である。
【図6】図6は、図5に示すラバーの製造方法の一例を説明する工程図である。
【図7】図7は、図5に示すラバーの製造方法の別の例を説明する工程図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態の卓球用のラバーの第4の例を示す断面模式図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態の卓球用のラバーの第5の例を示す断面模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態の卓球用のラバーの第6の例を示す断面模式図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態の卓球用のラバーの更に別の例を示す断面模式図である。
【図12】図12は、実験例1のラバーシートの電子顕微鏡写真である。
【図13】図13は、実験例2〜8のボールの接触時間とヤング率との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、実験例1の弾性率及び損失正接と温度との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、反撥弾性係数と独立気泡率との関係を示すグラフである。
【図16】図16は、ラバーの反撥係数と損失正接との関係を示すグラフである。
【図17】図17は、実験例9の弾性率及び損失正接と温度との関係を示すグラフである。
【図18】図18は、実験例10の弾性率及び損失正接と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(卓球用のラバーの第1の例)
本発明の実施形態である卓球用のラバーの第1の例について、図面を参照して説明する。
図1に示す卓球用のラバー1は、裏ソフトラバーであり、スポンジシート2とラバーシート3が積層されて構成されている。ラバーシート3の上面がボールに対する打撃面3aであり、スポンジシート2の下面が卓球ラケットのブレード4に接着される接着面2aである。ラバーシート3のスポンジシート2側の面には、複数の突起3bが設けられ、突起3bの頂部がスポンジシート2に接合されている。
【0016】
ラバーシート3は、シロキサン結合(−O−Si−)を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートで構成されている。このシリコーンゴムは発泡化されていてもよい。ラバーシート3の突起3bを除く厚みは、0.02〜2.0mmがよい。また、突起3bの高さは0.03〜2.0mmがよい。また、弾性体シートは、ヤング率E’が0.01MPa以上1MPa以下であり、損失正接tanδが0.03以下であることがより好ましい。
【0017】
また、スポンジシート2は、シリコーンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴムの何れか一種または2種以上の混合物からなるものが好ましい。スポンジシート2の気泡体積含有率及び独立発泡率はそれぞれ、気泡体積含有率が30〜80%、独立発泡率が60〜100%の範囲がよい。スポンジシート2の厚みは、1.0〜3.9mm程度がよい。
【0018】
ラバーシート3のヤング率E’が0.01MPa以上であれば、ラバーシート3が比較的硬質になり、打撃時のラバーシート3とボールとの接触時間が短くなって、打球の方向がボールの回転に影響されにくくなる。これにより、打球のコントロール性が向上する。また、ヤング率E’が0.01MPa以上なら、ラバーシート3の強度が低下せず形状保持性も高まるので実用的である。また、ヤング率E’が1MPa以下なら、ラバーシート3が硬すぎることがなく、打撃時のラバーシート3とボールとの接触時間が比較的長くなりボールに十分な回転力を与えることができる。より好ましいヤング率E’の範囲は、0.02MPa〜1MPaの範囲である。
尚、ヤング率の調整は、後述するように製造時の成形型に対するシリコーンゴムの充填量等で調整できる。
【0019】
また、損失正接tanδが0.03以下にすることで、ボールがラバーシート3に衝突した際のエネルギー損失を小さくでき、打球のスピードを低下させるおそれがない。損失正接tanδのより好ましい範囲は0.02以下である。また、損失正接tanδの下限は、0.003以上が好ましいが、これより小さなものでも差し支えない。
【0020】
図2には、損失正接tanδとヤング率の関係を示す。従来のラバーは、ブタジエンゴムからなるラバーシートを備えたものが多い。ブタジエンゴムからなるラバーシートの損失正接tanδ及びヤング率は、図2のCの領域に分布している。ブタジエンゴムは、損失正接tanδが小さな値を示すものもあるが、ヤング率E’が高くなってしまう。一方、可塑成分や油分の添加によって、ブタジエンゴムを軟化させてヤング率E’を1.0以下にすると、損失正接tanδが高くなってしまう。
【0021】
更に、ブタジエンゴムを発泡化すると、その損失正接tanδ及びヤング率は、図2のDの領域に分布するようになる。損失正接tanδ及びヤング率の関係がDの領域になると、ヤング率E’は低下するが損失正接tanδが大きくボールの反撥性が低下する。
【0022】
従って、ブタジエンゴムからなるラバーシートは、その下にスポンジシートを重ねることで、全体の圧縮剛性を小さくしてボールとラバーとの接触時間を長くし、高い回転力と打球スピードを確保している。但し、スポンジシートは損失正接tanδが小さいものが多く、反撥係数が低いので、スポンジシートでエネルギーを損失し、ボールに対する反撥性が低下してしまう。
【0023】
一方、本実施形態のラバーシートの損失正接tanδとヤング率は、図2のAの領域(ヤング率が0.01〜1.0MPaで損失正接tanδが0.03以下の領域)、好ましくはBの領域(ヤング率が0.02〜1.0MPaで損失正接tanδが0.02以下の領域)に広がっている。図2に示すように、本例のラバーシート3は、打撃時のボールとラバーシート3との接触時間が長くなってボールに対して強力な回転を与えることができ、同時にボールに対する反撥性が高くなって打球スピードを高めることができる。
【0024】
ヤング率が図2のBの領域内に入る材料としては、上述のように、シロキサン結合を有するシリコーンゴムを例示でき、より好ましくは発泡化させたシリコーンゴムが良い。また、ヤング率を0.01〜1.0MPaに保ったままで損失正接tanδを0.03以下にするには、発泡化させたシリコーンゴムの気泡体積含有率を30%以上かつ独立発泡率を60%以上とすればよい。
【0025】
発泡化させたラバーシート3にボールが衝突した状態を図3に示す。図3(a)には、ラバーシート3中の気泡が全て独立泡の場合を示し、図3(b)には、ラバーシート3中の気泡が全て連続泡の場合を示している。図3(a)に示すように、気泡が全て独立泡であると、ボール5の打撃の圧力によって打撃面3aが変形し、独立泡の内部の空気が圧縮される。空気の圧縮によって、打撃時のボール5の運動エネルギーがラバーシート3の弾性エネルギーと独立泡中の空気の圧縮エネルギーとして蓄積される。その後、蓄積されたエネルギーが開放されてボール5に反撥力が加わる。独立泡内の空気の損失正接はもともと小さいが、ラバーシート3の損失正接が小さいとラバーシート3において熱として散逸されるエネルギーも小さくなる。このため、蓄えられたラバーシート3の弾性エネルギーと、空気の弾性エネルギーが反撥エネルギーとなるので、ボール5が大きく弾む。
【0026】
一方、図3(b)に示すように、気泡が連続泡の場合は、ボール5の打撃の圧力によりラバーシート3が変形し、泡内部の空気が圧縮されるが、泡が連続気泡のために、空気が隣接する気泡を伝って外部に漏れ、泡に蓄えられるべき弾性エネルギーがすぐ失われる。このため、使えるはずの反撥エネルギーが小さくなってしまい、ボール5が弾まない。
【0027】
ラバーシート3の気泡体積含有率を30%以上とし、かつ独立発泡率が60%以上とすることで、ヤング率を高めることなく損失正接tanδを低くすることが可能になり、また反撥弾性係数が高くなるので、ボールに対する反撥性、回転の付与及び打球のコントロール性をいずれも向上できる。
また、空気による反発を利用することは、温度によって反発率が変わるといった不都合も生みにくい。
【0028】
ラバーシート3を製造するには、触媒の存在下で、オルガノヒドロキシシロキサン類とオルガノハイドロジェンシロキサン類とを反応させて硬化させると同時に発泡させることで製造できる。オルガノヒドロキシシロキサン類とオルガノハイドロジェンシロキサン類とが硬化反応を起こすと水素が発生し、この水素によってラバーシート3が発泡化される。気泡体積含有率は、オルガノヒドロキシシロキサン類とオルガノハイドロジェンシロキサン類との混合比で制御できる。また、発砲率は、成形型に対するシリコーンゴムの充填量でも調整できる。
触媒としては、白金化合物等を用いることができる。硬化反応を成形型内で行うことで、打撃面と反対側の面に複数の突起3bを設けたラバーシート3を製造できる。
【0029】
オルガノヒドロキシシロキサン類としては、下記式(1)に示すような、直鎖状のオルガノポリシロキサン中のメチル基の一部をヒドロキシル基で置換したもので、n=3〜100程度のものがよい。
また、オルガノハイドロジェンシロキサン類としては、下記式(2)または(3)に示すような、直鎖状のオルガノポリシロキサン中のメチル基の一部を水素で置換したもので、n=3〜100程度のものがよい。
更に、これらシロキサン類の他に、ベース樹脂として、下記式(4)に示すような、分子鎖両末端がビニル基で封鎖された直鎖状のn=50程度の両末端ビニル基置換のジメチルポリシロキサンを添加してもよい。
【0030】
更に、これらシロキサン類の他に、添加成分として、微粒子白金をアルミナなどに担持させたもの、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩と、オレフィンまたはジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体などが、反応のための触媒として1〜500ppm程度用いられる。
オルガノハイドロジェンシロキサン(B)の水素基の当量が、オルガノヒドロキシポリシロキサン(A)の水酸基の当量と両末端ビニル基置換ジメチルポリシロキサン(C)のもつビニル基の当量の合計値と等しくなるような比で配合されていると、(A)と(B)の脱水素縮合反応と、(A)と(C)の付加反応が過不足なく進む。(A)を多少おおめに配合してもよい。
【0031】
【化1】

【0032】
ラバーシート3のヤング率は、成形型に対するシリコーンゴムの充填量で調整できる。例えば、成形型の内容積に対してシリコーンゴムの充填量を90%とし、発泡倍率を1.1倍にすると、相対的にシリコーンゴムの硬度が硬くなり、弾性率が1.2MPa程度になる。更にシリカフィラーを加えると、更にシリコーンゴムの硬度が高まり、ヤング率が2.1MPa程度のものが得られる。
一方、成形型に対してシリコーンゴムの充填量を33%とし、発泡倍率を3倍にすると、相対的にシリコーンゴムが軟らかくなり、弾性率が0.15MPa程度になる。更に発泡剤を添加して硬化時に追加発泡させると、発泡倍率が更に高まり、ヤング率が0.034MPa程度のものが得られる。
【0033】
また、イソシアネートエトキシシランのような添加剤を加えて、架橋密度を下げて軟化させることで、ラバーシート3のヤング率を低下させることもできる。
更に、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを減らして架橋密度を下げることで、ラバーシート3のヤング率を低下させることができる。以上のようにして、ヤング率を調整できる。
【0034】
そして、製造したラバーシート3をスポンジシート2に貼り合わせることで、本例のラバー1を製造できる。
【0035】
(卓球用のラバーの第2の例)
図4には、卓球用のラバーの第2の例を示す。この例のラバー11は、平坦なラバーシート13のみで構成されている。ラバーシート13の上面がボールに対する打撃面13aであり、打撃面13aと反対側の面が卓球ラケットのブレード4に接着される接着面13dである。ラバーシート13の打撃面13aは平坦面とされている。
【0036】
ラバーシート13は、第1の例と同様に、シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートで構成され、より好ましくは発泡化されたシリコーンゴムがよい。発泡化されたシリコーンゴムは、気泡体積含有率が30%以上かつ独立発泡率が60%以上のものがよい。ラバーシート13の厚みは、1.0〜3.9mmがよい。
【0037】
本例のラバー11は、第1の例に比べてスポンジシートを省略したものだが、ラバーシート13自身が軟質であるため.打撃時にボールとの充分な接触時間が得られる。接触時間が長いので、回転加速を与えるための充分な時間を付与でき、ボールに強烈な回転を与えることができる。同時に、ラバーシート13の反撥弾性が高いため.高スピードの打球を打つことができる。
【0038】
本例のラバーシート13は、第1の例の場合と同様にして製造できる。
【0039】
(卓球用のラバーの第3の例)
次に、図5には、卓球用のラバーの第3の例を示す。この例のラバー21は、スポンジシート23上に、ラバーシート26が積層されて構成されている。ラバーシート26の上面がボールに対する打撃面26aであり、スポンジシート23の打撃面26a側と反対側の面が卓球ラケットのブレード4に接着される接着面26dである。ラバーシート26の打撃面26aは平坦面とされている。
【0040】
スポンジシート23は、シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートで構成され、より好ましくは発泡化されたシリコーンゴムがよい。スポンジシート23の厚みは、1.0〜3.9mmがよい。発泡化されたシリコーンゴムの場合、気泡体積含有率が30%以上かつ独立発泡率が60%以上のものがよい。
【0041】
また、ラバーシート26としては、摩擦係数の大きな天然ゴム、ブチルゴムまたはニトリルゴムや、高強度な天然ゴム、ブタジエンゴムまたはウレタンゴム等のゴムシートを例示できる。スポンジシート23の特性を活かすためには、ラバーシート26の厚みは可能な限り薄いことが望ましく、例えば、0.3mm程度がよい。
本例のラバー21によれば、スポンジシート23にラバーシート26を積層することで、ボールに対してより強い回転力を与えることができ、同時にラバー21の耐久性を高めることができる。
【0042】
本例のラバー21の製造方法の一例としては、図6(a)に示すように、成形型の下型27に、あらかじめラバーシート26を配置しておく。このとき、シリコーンゴムの硬化阻害を防止するために、ラバーシート26上に硬化防止阻害剤を塗布しておくとよい。次に図6(b)に示すように、硬化前の樹脂23eを注入してから、下型27に上型28を嵌め合わせて成形型とする。次に、図6(c)に示すように、硬化前の樹脂23eを硬化するとともに発泡させることで、スポンジシート23をラバーシート26上に形成する。その後、図6(d)に示すように脱型することで本例のラバー21が製造できる。硬化前の樹脂23eとしては、第1の例のラバーシートの原料として例示したものを用いることができる。
【0043】
また、本例のラバー21の製造方法の他の例としては、図7(a)に示すように、スポンジシート23を成形しておき、スポンジシート23上にシリコーン系接着剤29を塗布し、ラバーシート26を重ね合わせる。次に図7(b)に示すように、スポンジシート23とラバーシート26を接着することで、本例のラバー21が製造できる。スポンジシート23の原料は、第1の例のラバーシートの原料と同様のものを用いることができる。
【0044】
(卓球用のラバーの第4の例)
図8には、卓球用のラバーの第4の例を示す。この例のラバー31は、表ソフトラバーであり、スポンジシート32とラバーシート33が積層されて構成されている。ラバーシート33の上面がボールに対する打撃面33aであり、スポンジシート32の下面が卓球ラケットのブレード4に接着される接着面32aである。ラバーシート33の打撃面33aには、複数の突起33bが設けられている。スポンジシート32は、第1の例と同様のものでよい。
【0045】
ラバーシート33は、第1の例と同様に、シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートで構成され、より好ましくは発泡化されたシリコーンゴムがよい。発泡化されたシリコーンゴムは、気泡体積含有率が30%以上かつ独立発泡率が60%以上のものがよい。ラバーシート33の突起33bを除く厚みは、0.02〜2.0mmがよい。また、突起33bの高さは0.03〜2.0mmがよい。
【0046】
本例では、ラバーシート33の打撃面33a側に突起33bを設けることで、第3の例の場合に比べて、ラバーシート33の圧縮剛性が小さくなり、これにより打撃時のボールとラバーシート33との接触時間を長くなり、ボールに回転力が与えやすくなる。また、元来、表ソフトラバーは打球のスピードが高いので、スピードが速く回転も十分な打球を打つことができる。
また、スポンジシート32を備えることで、ラバー31全体の圧縮剛性を低下させることができ、ボールに対して回転力をより与えやすくなる。
【0047】
(卓球用のラバーの第5の例)
図9に示す本例のラバー41は、裏ソフトラバーであり、スポンジシート42とラバーシート43が積層されて構成され、ラバーシート43の上面が打撃面43aとされ、スポンジシート42の下面が接着面42aとされている。ラバーシート43のスポンジシート側の面には、複数の突起43bが設けられており、突起43bの頂部がスポンジシート42に接合されている。
【0048】
本例のラバー41のスポンジシート42は、シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートで構成され、より好ましくは発泡化されたシリコーンゴムがよい。スポンジシート42の厚みは、1.0〜3.9mm程度がよい。発泡化されたシリコーンゴムの場合の気泡体積含有率は30〜80%がよく、独立発泡率は60〜100%の範囲がよい。
また、本例のラバー41のラバーシート43は、天然ゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の材料から構成されている。ラバーシート43の突起43bを除く厚みは、0.02〜2.0mmがよい。また、突起43bの高さは0.03〜2.0mmがよい。
【0049】
本例のラバー41においては、ラバーシート43の下側にスポンジシート42が備えられており、打撃時にスポンジシート42が変形することで、ラバー41全体の圧縮剛性を小さくできる。これにより、打撃時のボールとラバー41との接触時間が長くなり、ボールに対して大きな回転力を与えることができる。また、スポンジシート42が本発明に係るシートで構成されるので、ラバー41全体の反撥力を高めることができ、打球のスピードを高めることができる。
【0050】
(卓球用のラバーの第6の例)
図10に示す本例のラバー51は、裏ソフトラバーであり、スポンジシート52とラバーシート53が積層されて構成され、ラバーシート53の上面が打撃面53aとされ、スポンジシート52の下面が接着面52aとされている。ラバーシート53のスポンジシート側の面には、複数の突起53bが設けられており、突起53bの頂部がスポンジシート52に接合されている。
【0051】
本例のラバー51のラバーシート53及びスポンジシート52はいずれも、シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートで構成されている。ラバーシート53及びスポンジシート52は、より好ましくは発泡化されたシリコーンゴムがよい。発泡化されたシリコーンゴムの、気泡体積含有率は30%以上がよく、独立発泡率は60%以上がよい。また、ラバーシート53の気泡体積含有率が、スポンジシート52の気泡体積含有率よりも低いことが好ましい。ラバーシート53の突起を除く厚み及び突起の高さは、第1の例と同様でよい。また、スポンジシート52は、気泡体積含有率がラバーシート53より高いことを除き、第5の例のスポンジシートと同様でよい。
【0052】
本例によれば、ラバーシート53とスポンジシート52の両方が本発明に係る弾性体シートで構成されるので、ボールに対する反撥性、回転力の付与、及び打撃時のコントロール性をいずれも向上できる。
【0053】
本発明の卓球用ラバーは、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に説明するものであっても良い。
図11(a)に示す卓球用ラバー61は、表ソフトラバーであり、スポンジシート62とラバーシート63とが積層されて構成されている。この例では、ラバーシート63が、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴムまたはウレタンゴム等のゴムシートで構成される。一方、スポンジシート62は、本発明に係る弾性体シートで構成される。
図11(b)に示す卓球用ラバー71は、ラバーシート73のみで構成されている。この例では、ラバーシート73の上面が打撃面73aとされ、ラバーシート73のラケットブレード4側には、複数の突起73bが設けられ、突起73bの頂部がラケットブレード4に接合されている。ラバーシート73は、本発明に係る弾性体シートで構成される。
【0054】
図11(c)に示す卓球用ラバー81は、ラバーシート83のみで構成されている。この例では、ラバーシート83の上面が打撃面83aとされ、打撃面83aに複数の突起83bが設けられている。ラバーシート83のラケットブレード4側は平坦面とされ、この平坦面がラケットブレード4に接合されている。ラバーシート83は、本発明に係る弾性体シートで構成される。
図11(d)に示す卓球用ラバー91は、スポンジシート92のみで構成されている。スポンジシート92は、本発明に係る弾性体シートで構成される。この例のラバー91は、ラバー自体が軟質なので、打球時にボールに対して十分な接触時間が得られ、ボールに強い回転力を付与できる。同時に、スポンジシート92の反撥弾性が高いので、スピードのある打球を打つことが出来る。
【0055】
図11(e)に示す卓球用ラバー101は、ラバーシート103とスポンジシート102とが積層されて構成されている。ラバーシート103は、本発明に係る弾性体シートで構成される。スポンジシート102は、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴムまたはウレタンゴム等から構成され、より好ましくは発泡化されたゴムがよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の卓球用ラバーによれば、ボールに対する反発性を高めることができ、打球のスピードを高めることができる。また、上記の弾性体シートをラバーシートまたはスポンジシートとして備えることで、打撃時のラバーとボールとの接触時間が長くなり、ボールに対して回転を容易に与えることができるとともに、打球のコントロール性を高めることができる。
また、シリコーンゴムを用いることで、温度変化で物性が変化することがない。これにより、試合会場の気温の変化があっても、ボールのスピードや回転、方向、コントロールあるいは打感が変わることがなく、また、物性の経時的な劣化も少なくなる。
【実施例】
【0057】
(実験例1)
二液型の液状ゴムとして、モメンティブパフォーマンスマテリアルスジャパン社のトスフォーム300(商品名)を用い、主剤(A剤)と硬化剤(B剤)をそれぞれ83.5mlづつ秤取ってよく混合した。次に、内容積が500mlの成形型に混合物を充填した。成形型に対するシリコーンゴムの充填量を33%とし、発泡倍率が3倍になるように設定した。その後、室温で10分経過後に硬化及び発泡が開始させ、20分後に硬化及び発泡を終了させた。その後、70℃で1時間の条件で熱処理することによって、実験例1のスポンジシートを製造した。
【0058】
得られたスポンジシートの電子顕微鏡写真を図12に示す。図12に示すように、スポンジシート中には多数の気泡が形成されていた。また、ヤング率を測定したところ、0.16MPaを示した。更に、損失正接tanδは20℃で0.012を示した。また、密度は0.33g/cmであった。
【0059】
(実験例2〜8)
シリカ充填材を質量比で25%加えたA剤及びB剤を用意し、A剤250ml、B剤250mlを500mlの金型にチャージし、金型内に発泡する余地になる空隙がない状態で金型を閉じ、発泡できない状態で硬化させることで密度がほぼ1.1g/cmで、ほぼ無発泡の硬化物を得る以外は上記と同様にして、実験例2のスポンジシートを製造した。このスポンジシートは、ヤング率が2.9MPaであった。
【0060】
また、A剤208ml、B剤208mlを500mlの金型にチャージし、発泡倍率1.2倍、密度がほぼ0.83g/cmの硬化物にする以外は上記と同様にして、実験例3のスポンジシートを製造した。このスポンジシートは、ヤング率が0.95MPaであった。
【0061】
更に、A剤125ml、B剤125mlを500mlの金型にチャージし、発泡倍率2.0倍、密度がほぼ0.5g/cmの硬化物にする以外は上記と同様にして、実験例4のスポンジシートを製造した。このスポンジシートは、ヤング率が0.32MPaであった。
【0062】
更に、A剤75ml、B剤75mlを500mlの金型にチャージし、発泡倍率3.3倍、密度がほぼ0.3g/cmの硬化物にする以外は上記と同様にして、実験例5のスポンジシートを製造した。このスポンジシートは、ヤング率が0.11MPaであった。
【0063】
また、A剤95ml、B剤55mlを500mlの金型にチャージし、B剤を減らして架橋密度を低下させることで軟化させ、発泡倍率3.3倍、密度がほぼ0.3g/cmの硬化物にする以外は上記と同様にして、実験例6のスポンジシートを製造した。このスポンジシートは、ヤング率が0.019MPaであった。
【0064】
更に、A剤110ml、B剤40mlを500mlの金型にチャージし、架橋成分のB剤を減らして架橋密度を低下させ、更に軟化を促進させるイソシアネートエトキシラン(信越化学工業製、KBE9007)を0.1g添加して、発泡倍率3.3倍、密度がほぼ0.3g/cmの硬化物にする以外は上記と同様にして、実験例7のスポンジシートを製造した。このスポンジシートは、ヤング率が0.01Paであった。
【0065】
更に、A剤115ml、B剤35mlを500mlの金型にチャージし、架橋成分のB剤を減らして架橋密度を低下させ、更に軟化を促進させるイソシアネートエトキシラン(信越化学工業製、KBE9007)を1g添加して、発泡倍率3.3倍、密度がほぼ0.3g/cmの硬化物にする以外は上記と同様にして、実験例8のスポンジシートを製造した。このスポンジシートは、ヤング率が0.005MPaであった。
【0066】
実験例2〜8のスポンジシートを卓球用ラバーとしてラケットブレードに貼り合わせて卓球ラケットを製造した。得られたラケットについて、ボールとの接触時間を測定した。接触時間とラバーのヤング率との関係を図13に示す。
【0067】
図13に示すように、ヤング率が低下するほどスポンジシートとボールとの接触時間が長くなっている。ヤング率が1.0MPaを超えると、ボールとの接触時間が大幅に小さくなり、ボールに対して回転を十分に与えられないおそれがある。また、スポンジシ−トのヤング率が0.01MPaを下回ると、接触時間が4msを超えるので、打球速度が低下するとともにスポンジシートの強度も極端に低くなり、耐久性がなくなる。
このことから、少なくともヤング率は0.01MPa以上1MPa以下、理想的には0.02MPa以上1MPa以下の弾性率のスポンジシ−トが望ましいことが分かる。
【0068】
また、図14には、実験例1のラバーシートについて、動的貯蔵弾性率E’(ヤング率)、動的損失弾性率E”及び損失正接tanδの温度依存性を示す。図14に示すように、−20℃から80℃の範囲では、E'、E"及びtanδの値はほぼ一定となり、温度変化によって性能が変動していないことが分かる。
これによって、試合会場の温度が変わっても、あるいはライト照明でラケット面の温度が上昇しても、ボールの反撥や回転、あるいは打感が変化することがなく、選手が違和感を感じることがなく、ミスプレイの頻度も減る。
【0069】
また、図15には、実験例1〜8のラバーシートについて、独立気泡率と反撥弾性係数との関係を示す。独立気泡率が60%以上になると、反撥弾性係数が0.6を超えており、優れた反撥性を示すことが分かる。
【0070】
更に、図16には、各種のラバーシートの材料について、損失正接tanδと反撥係数との関係を示している。反撥係数は、JIS K 6400−3の鋼球落下方式による反撥係数の測定方法によって求めた。用意したラバーシートは、実験例1のラバーシート、ブチルゴムからなるラバーシート(損失正接tanδ=0.61)、クルルプレンゴムからなるラバーシート(損失正接tanδ=0.19)、ブタジエンゴムと天然ゴムの混合物からなる発泡体(損失正接tanδ=0.07)である。図16に示すように、損失正接tanδが0.03を超えると、反撥弾性係数が大幅に低下し、打球のスピードが低下するおそれのあることが分かる。
【0071】
(実験例9)
モメンティブパフォーマンスマテリアルスジャパン社のトスフォーム300(商品名)を用い、主剤(A剤)と硬化剤(B剤)をそれぞれ200mlづつ秤取ってよく混合した。次に、内容積が500mlの成形型に混合物を充填した。成形型に対するシリコーンゴムの充填量を、発泡倍率が1.25倍になるように設定した。その後、室温で10分経過後に硬化及び発泡が開始され、20分後には硬化及び発泡が終了した。その後、70℃で1時間の条件で熱処理することによって、厚さ4mmの実験例9のスポンジシートを製造した。
【0072】
実験例9のスポンジシートのヤング率を測定したところ、0.91MPaを示した。更に、損失正接tanδは20℃で0.004を示した。また、密度は0.81g/cmであった。
【0073】
実験例9のスポンジシートを卓球用ラバーとしてラケットブレードに貼り合わせて卓球ラケットを製造した。得られた卓球ラケットについて、弾性率及び損失正接と温度との関係を測定した。結果を図17に示す。このラケットを試打したところ、非常に球速の速いスマッシュを打てた。若干硬い打感があるため、接触時間がやや短い感があるが、一応十分な回転力をボールに付与できる感触が得られた。すなわち、スピードと回転の両方に優れた攻撃的なラケットになった。
図18に示されるように、−20℃〜80℃ではE’、E”およびtanδはほぼ一定値となり、会場の温度が変わっても、ボールの反発や回転、打感が変わることはなく、選手が違和感を感じることがなく、ミスプレイの頻度が減少する。
【0074】
(実験例10)
モメンティブパフォーマンスマテリアルスジャパン社のトスフォーム300(商品名)を用い、主剤(A剤)を100ml、硬化剤(B剤)を50ml秤取ってよく混合した。次に、内容積が500mlの成形型に混合物を充填した。成形型に対するシリコーンゴムの充填量を、発泡倍率が3.3倍になるように設定した。その後、室温で10分経過後に硬化及び発泡が開始され、20分後には硬化及び発泡が終了した。その後、70℃で1時間の条件で熱処理することによって、厚さ4mmの実験例10のスポンジシートを製造した。
【0075】
実験例10のスポンジシートのヤング率を測定したところ、0.025MPaを示した。更に、損失正接tanδは20℃で0.019を示した。また、密度は0.3g/cmであった。
【0076】
実験例10のスポンジシートを卓球用ラバーとしてラケットブレードに貼り合わせて卓球ラケットを製造した。得られた卓球ラケットについて、弾性率及び損失正接と温度との関係を測定した。結果を図18に示す。このラケットを試打したところ、非常に球持ちがよく、鋭い回転がつけられた上に、球速の速い打球を打てた。軟らかい打感があるため、接触時間がやや長い感があるが、一応十分な反撥力を有している。すなわち、スピードと回転の両方に優れた攻撃的なラケットになった。
図17に示されるように、−20℃〜80℃ではE’、E”およびtanδはほぼ一定値となり、会場の温度が変わっても、ボールの反発や回転、打感が変わることはなく、選手が違和感を感じることがなく、ミスプレイの頻度が減少する。
【符号の説明】
【0077】
1,21,31,41,51…卓球用のラバー、42、52…スポンジシート(弾性体シート)、3、13、23、33、54…ラバーシート(弾性体シート)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン結合を有するシリコーンゴムからなる弾性体シートを備えたことを特徴とする卓球用のラバー。
【請求項2】
前記弾性体シートが、気泡体積含有率が30%以上かつ独立発泡率が60%以上の発泡ゴムシートであることを特徴とする請求項1に記載の卓球用のラバー。
【請求項3】
前記弾性体シートのヤング率E’が0.01MPa以上1MPa以下であり、損失正接tanδが0.03以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の卓球用のラバー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のラバーが備えられていることを特徴とする卓球ラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−56005(P2011−56005A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208162(P2009−208162)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)