説明

単一の平面状材料シートから折って組み立て可能なチェア

所定の外形および寸法を有するように形成され且つ所定の折り線2が設けられた単一の平面状材料シート1を備える。折り線2に沿ってシート1を曲げて組み立てることにより、直ちに使用可能な形状又は形態のチェアが形成される。チェアは、当初の単一のシートとなるように展開されることにより、格納及び輸送が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面状材料からなる単一のシートから折って組み立て可能なチェア(椅子)であって、座部と、選択的に採用可能な背もたれとを備え、前記単一のシートの、互いに隣接する部分が互いに接続しており、また、前記単一のシートには予め第一の折り線が設けられており、該第一の折り線に沿って前記平面状材料を曲げることにより、そのまま使用可能な形状又は形態にすることができるようになされたチェアに関する。
【背景技術】
【0002】
背もたれを有する形式の、かかるチェアは、フランス国特許第2,907,645号明細書から既知である。しかし、本発明は、背もたれが無く、また、一般にスツールと称される背もたれ無しのチェアにも関するものである。このため、本明細書にてチェアに言及するとき、このチェアはスツールの概念も含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】フランス国特許第2,907,645号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の既知のチェアに関する問題点は、チェアを直ちに使用可能な形状又は形態になるように折って組み立てたとき、安定性に欠けることである。既知のチェアは、実質的に、2つの円錐体を備え、該円錐体の頂部は互いに接し、着席する人間をチェアが支持し得るようにする必要がある。
【0005】
既知のチェアに関する更なる問題点は、相対的に弱体であるところの折り線の大部分が床と接触するため、耐久性に欠けることである。
【0006】
既知のチェアの更なる問題点は、平坦に折り畳んだとき、切り欠きの寸法が極めて大きいため、取り扱いが極めて困難となる点である。
【0007】
既知のチェアの更なる問題点は、チェアが直ちに使用可能な状態に折って組み立てられたとき、チェアの2つの部分の円錐体がその頂部を互いに正確に合せることができるよう、構造は高度の精密度を要求することである。
【0008】
本発明は、上述した問題点の1つ又は2つ以上を緩和し、且つ、以下の説明から明らかになるであろう利点を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチェアは、この目的のため、添付した請求項の1つ又は2つ以上に従って具体化される。
【0010】
本発明の第一の特徴によれば、チェアの平坦な材料の単一のシートは、4つの所定の第一の折り線を有し、該第一の折り線は湾曲しており、また、上記の4つの折り線の間に第一の領域を画定し得るよう該4つの所定の折り線の端部が2つずつ互いに合流しており、また、上記の所定の4つの折り線の各々は、上記第一の領域と、複数の第二の領域のうちの少なくとも1つとの間の境界となり且つ該少なくとも1つの第二の領域の限界を画し、チェアが直ちに使用可能な形状又は形態になるよう折って組み立てられたとき、第一の領域は第二の領域と共に全体としてチェアを形成する。従って、本発明の第一の特徴によれば、チェアは、所定の輪郭形状すなわち外形および寸法とされた平面状材料の単一のシートから折って組み立て可能であり、また、該シートには、所定の第一の折り線が設けられ、該折り線に沿って材料は曲げることができ、そのまま(直ちに)使用可能な形状又は形態となる。これらの第一の折り線は湾曲しており、チェアがその最終的な形状又は形態にあるとき、チェアの強度を支える。このようにして、上記の第一の領域は、チェアに対して所要の(側方向に対する)安定性を提供する。
【0011】
低コスト、及び組み立ての容易性を実現するため、第一の領域の両側部にて互いに対向する2つの第二の領域が設けられる。該第二の領域は、直ちに使用可能なチェアの側方下側部分を形成する。側方下側部分は、ヒンジを介して後方下側部分と接続する。2つの後方下側部分は、第一および第二の領域が折って組み立てられて直ちに使用可能な形状又は形態とされたとき、互いに係止するよう配置されることが好ましい。上記の後方下側部分は、チェアの構造の強度を向上させ、体重の重い人でも該チェアを使用することを可能にする。
【0012】
更に、好ましくは、上記の特徴が提供されるのとともに、第一の領域の一側部には、直ちに使用可能なチェアの少なくとも座部と、選択的に採用可能な背もたれとを形成する第二の領域が設けられる。かかる第二の領域は、ある2つの部分を備えている。これら2つの部分は、シートの第一および第二の領域を折って組み立てて該チェアが直ちに使用可能な形状又は形態となったときは互いに隣接するが、シートが平面状であるときは互いにある距離だけ離れている。
【0013】
低コスト及び組み立ての容易性は、背もたれにて互いに隣接する、第二の領域の2つの部分に、ベルクロ(面ファスナーに関する登録商標)、ボルトとナット、クリック留め締結具から成る群から選んだ接続手段を設けるようにすることにより、更に向上させることができる。
【0014】
望ましくは、背もたれにて互いに隣接する、第二の領域の二つの部分には、互いに掛け止めするように協働する切り欠きと突出部とが設けられるものとする。
【0015】
本発明のチェアの更なる望ましい特徴は、チェアの格納及び輸送を容易にするため、該チェアが当初の単一のシートとなるように展開可能なことである。
【0016】
具体的には、輸送は、チェアに真直ぐな所定の第二の折り線を設け、該第二の所定の折り線に沿って材料を曲げ、ケースのようにして直ちに使用可能な形状とすることが可能なチェアを提供することにより、特に容易である。このことは、旅行中、チェアを容易に携行することを可能にする。
【0017】
単一の平面状材料シートを加工することにより、かかるチェアを製造する方法は、
所定の位置にてシートに折り線を提供するステップと、
上記シートを所定の寸法に形成するステップと、
シートを折り線に沿って折って組み立て、直ちに使用可能な形状又は形態の一品の家具となるようにするステップと、を備える。
【0018】
本発明によるチェア及びその製造方法は、極めて経済的であり、且つ、容易に具体化することができることは明らかであるが、更なる利点は、その格納及び輸送の容易性を向上させるべく、チェアは当初の単一のシートへと簡単に展開させることができる点にある。さらには、持ち運びやすいケースの形態とすることもできる。本発明のチェアは、追加的な構造的支持要素を必要としない。該チェアは、単一のシートにおける(湾曲した)第一の折り線のみに由来して、その強度を得る。このことは、製造する間、また、所望であれば輸送(携帯)中も、完全に平坦であり(1mm−5mm)、堅牢、軽量で且つ製造及び特別仕様(即ち、平坦なシートなので印刷可能)が容易であるという幾つかの明確な特徴を本発明の製品に与える。特に、この最後に述べた特徴は有利である。すなわち、チェアは、平面状材料から作り始めるため、所望の印刷又は切り欠き又はその他の処理を上記の平面状シートに施すことにより、顧客の要求に合うようにチェアを特別仕様化することが極めて容易である。
【0019】
コストを極めて低レベルに維持するため、単一のシートは、板紙、合成材料から成る群から選んだ材料にて製造することが更に好ましい。かかるチェアは驚異的に、日常的な摩損及び極めて多数回使用されることによる摩耗に抵抗するのに十分な強度を維持することができる。
【0020】
シートは、射出成形法により所定の外形(輪郭)および寸法となるように形成されることが好ましい。しかし、切削、プレス加工を含む群から選んだ加工作業を施すことも可能である。
【0021】
シートに折り線を付ける作業は、シート材料に対応する一連の工程から選んだ工程にて実行されることが好ましい。例えば、板紙シートには、目打ち線が設けられ、また、合成材料のシートには、リビングヒンジ(折り曲げ可能ヒンジ)として機能するよう溝が設けられることが更に好ましい。
【0022】
上述したように、低コストのチェアを提供することを容易にするため、チェアには、少なくとも1つの座部と、選択的に採用可能な背もたれとが設けられることが望ましい。単一のシートは、互いに接続可能な二つの部分を有し、該二つの部分は、チェアが組み立てられたときは互いに隣接し(通常、背もたれの箇所にて)、シートが平面状の形態であるときは互いに離れている。互いに隣接し且つ互いに接続すべきシートの部分は、多数の異なる仕方にて実現することができる。第一の実施の形態にて、互いに隣接する(例えば、背もたれの箇所にて)シートの部分には、ベルクロ(登録商標)、ボルトとナット、クリック留め式締結具から成る群から選んだ接続手段が設けられることが好ましい。このようにして、互いに接続すべき部分に対してもシートの薄い厚さの値を維持し、このため、チェアが単一シートのその当初の形態に戻るように展開されたとき、チェアを格納し且つ輸送し易い状態に維持することが可能である。
【0023】
しかし、第二のより好ましい実施の形態は、互いに隣接するシートの部分には、互いに掛け止めする協働する切り欠き及び突出部が設けられることを特徴とする。このようにして、接続手段を単に単一のシートの材料の一部とすることにより、追加の接続手段は全く不要である。
【0024】
本発明は、以下に、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明によるチェアを製造するための単一の平面状材料シートの1つの実施の形態の図である。
【図1B】本発明によるチェアを製造するための単一の平面状材料シートの別の実施の形態の図である。
【図2A】図1Aの単一のシートから形成された本発明のチェアを示す図である。
【図2B】図1Bの単一のシートから形成された本発明のチェアを示す図である。
【図3】図3Aないし図3Hは、ケースの形状とされた一品の家具を、直ちに使用可能なチェアの形態に変換する過程を示す一連の図である。
【0026】
図面にて同一の参照番号を使用するとき、これらの参照番号は同一の部品を表わすものとする。
【発明を実施するための形態】
【0027】
最初に図1A及び図1Bを参照すると、両方の図面は、例えば板紙又はポリプロピレンの如き合成材料のような平面状材料の単一のシート1を示す。このシート1は、所定の形状にカットされ、また、湾曲した第一の折り線2が設けられ、該折り線に沿って単一のシート1を折って組み立てることにより、図2A、2Bに示したようなチェア3が出来上がる。
【0028】
シート1の折り線2は、図2A及び図2Bに示したようにチェアがその最終的な形状又は形態にあるとき、チェア3の予め選択された部分を画定する。チェアの予め選択された部分として、例えば、チェア3の前方下側部分が参照番号4にて示され、底部分が参照番号5で示され、側方下側部分が参照番号6(図2B)及び7(図2A)にて示されている。ヒンジ2’により側方下側部分6、7と接続する後方下側部分が参照番号8、9にて示され、座部分及び選択的に採用可能な背もたれ部分が全体として参照番号10にて表示されている。
【0029】
図2A、図2Bにて示したように、背もたれ13の位置にて最終的に互いに隣接する位置となるシート1の部分は、図1A及び図1Bにて参照番号11、12にて表示されている。図1A及び図2Aにおいて、参照番号11、12は、シート1に設けられ且つベルクロ(登録商標)、ボルトとナット又はクリック留め式締結具から成る群から選んだ接続手段を表示する。図1B及び図2Bにおいて、参照番号11、12は、背もたれ部分13にて互いに協働する切り欠き11及び突出部12として形成された接続手段を表示する。図1Bは、この実施の形態では後方下側部分8、9に切り欠き14、15が設けられていることを示す。これらの切り欠き14、15は、図1Bに示す単一のシートが図2Bに示すような直ちに使用可能な形状または形態に変換されたときに互いに協働することを意図されている。この点については、以下に更に説明する。
【0030】
図1Bの実施の形態を図1Aに示した実施の形態と比較すると、図1Bの実施の形態には、追加的な真直ぐな第二の折り線16が設けられている。この第二の折り線16は、単一の材料シートを該第二の折り線16に沿って曲げることにより、図示した単一の材料シートをケースのようにしてそのまま即ち直ちに運搬可能な形態に変換することを意図している。シートをケースのように容易に持ち運び得るよう、シート1には、握り部17も設けられている。
【0031】
そのまま携行可能なケースの形態の形状とされた一点の家具を直ちに使用可能なチェアの形態に変換する様子が図3Aから図3Hの一連の図面に示されている。
【0032】
図3Aは、上端に握り部17を有するケースの態様をした一点の家具を示す。本発明の設計の一つの特徴は、ケースの形に変換されたときに使用するために設けられた握り部17によって、このケースの形にされた家具を取り扱い易くする点である。それでいながら、チェアの形に変換されたとき、握り部17は外部から見えない。
【0033】
図3Bでは、図3Aにおけるケースの形態は展開されており、図3Cでは、チェアとなったときに下方部分となる部分が地面(床)に接地した状態に置かれている。
【0034】
図3Dでは、背もたれとなるべき部分が、下方部分から持ち上げられていることが示され、図3E及び図3Fでは、切り欠き11及び突出部12が互いに協働してそれらの接続を完成させ、背もたれ部分13を完成させている状態が示されている。
【0035】
図3Gは、その後、切り欠き14、15を互いに係止することにより後方下側部分8、9を互いに接続することを示し、図3Hは、その後、直ちに使用可能なチェアとして完成された状態での背側部を示す。
【0036】
図1A及び図1Bに図示したシート1は、1mm−5mm程度と非常に薄くすることが可能であり、また、本発明の折り畳み可能なチェア3を多数格納し又は輸送することができるよう、多数のシート1を積重ねることが可能であり、そのために使用するスペースは極めて僅かであることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状材料からなる単一のシート(1)から折って組み立て可能なチェア(3)であって、座部と、選択的に採用可能な背もたれとを備え、前記シートの、互いに隣接する部分が互いに接続可能であり、また、該シートには予め第一の折り線(2)が設けられており、該第一の折り線(2)に沿って前記平面状材料を曲げることにより、そのままチェアとして使用可能な形状又は形態にすることができるチェアにおいて、
前記第一の折り線(2)が、湾曲した状態で4つ設けられており、該4つの折り線の間に第一の領域(4)を画定し得るよう該4つの折り線の端部が2つずつ互いに合流しており、前記所定の4つの折り線(2)の各々は、前記第一の領域(4)と、複数の第二の領域(5、6、7、10)のうちの少なくとも1つとの間の境界となり且つ該少なくとも1つの第二の領域の限界を画しており、チェアが直ちに使用可能な形状又は形態に折って組み立てられたとき、前記第一の領域は前記第二の領域と共に全体としてチェアを形成するようになされていることを特徴とする、チェア。
【請求項2】
請求項1に記載のチェアにおいて、前記第一の領域(4)の両側部にて互いに対向するようにして前記第二の領域(6、7)が2つ存在し、該2つの第二の領域は、直ちに使用可能な状態のチェアの2つの側方下側部分(6,7)を形成し、該側方下側部分(6,7)は、ヒンジを介して、直ちに使用可能な状態のチェアの2つの後方下側部分(8,9)と接続しており、該後方下側部分(8、9)は、前記第一および第二の領域(4、5、6、7、10)が折って組み立てられて直ちに使用可能な形状又は形態のチェア(3)とされたとき、互いに係止するよう配置されていることを特徴とする、チェア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のチェアにおいて、前記第一の領域(4)の一側部には、直ちに使用可能な状態のチェアの少なくとも座部および選択的に採用可能な背もたれを形成する第二の領域(10)が存在し、該第二の領域(10)は2つの部分を備えており、該2つの部分は、前記シート(1)の前記第一および第二の領域を折って組み立ててチェアが直ちに使用可能な形状又は形態となったときは互いに隣接し、且つ、前記シート(1)が平面状であるときは互いにある距離だけ離れていることを特徴とする、チェア。
【請求項4】
請求項3に記載のチェアにおいて、前記第一および第二の領域を折って組み立ててチェアが直ちに使用可能な形状又は形態となったときに互いに隣接する前記第二の領域(10)の前記2つの部分に、ベルクロ(登録商標)、ボルトおよびナット、クリック留め式締結具から成る群から選んだ接続手段(11、12)が設けられることを特徴とする、チェア。
【請求項5】
請求項4に記載のチェアにおいて、前記背もたれの箇所にて互いに隣接する、前記第二の領域の前記2つの部分には、互いに掛け止めするように協働する切り欠きと突出部とが設けられることを特徴とする、チェア。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかの項に記載のチェアにおいて、チェアの格納及び輸送を容易にするために、折って組み立てられた状態から当初の前記単一のシート(1)となるように展開可能であることを特徴とする、チェア。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れかの項に記載のチェアにおいて、真直ぐな所定の第二の折り線が設けられており、該第二の所定の折り線に沿って前記平面状材料を曲げ、ケースのように直ちに携行可能な形状とすることができることを特徴とする、チェア。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れかの項に記載のチェアにおいて、前記平面状材料からなる単一のシートは、板紙および合成材料から成る群から選んだ材料から成ることを特徴とする、チェア。
【請求項9】
請求項8に記載のチェアにおいて、前記材料は板紙であり、前記折り線は目打ち線であることを特徴とする、チェア。
【請求項10】
請求項8に記載のチェアにおいて、前記材料は合成材料であり、前記折り線はリビングヒンジを形成するための溝であることを特徴とする、チェア。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【公表番号】特表2012−510311(P2012−510311A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538581(P2011−538581)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050725
【国際公開番号】WO2010/064904
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(502053029)