説明

単層型電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置

【課題】青色半導体レーザーを露光光源とする画像形成装置においても、十分な感度を有する単層型感光体およびそれを用いたが画像形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】導電性支持上に、電荷発生機能を有する材料と電荷輸送機能を有する材料とを含有する単層型感光層が積層されてなり、前記単層型感光層が、電荷輸送機能を有する材料として特定のエナミン系化合物および電子輸送機能と電荷発生機能とを有する材料として特定のビスアゾ化合物を含有し、波長400〜450nmの光に感光特性を有することを特徴とする単層型電子写真感光体により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる単層型電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置(「電子写真装置」ともいう)は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などに多用されている。
電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体(「感光体」ともいう)は、導電性基体上に光導電性材料を含有する感光層が積層されて構成される。
従来から、無機系光導電性材料を主成分とする感光層を備えた感光体(「無機系感光体」ともいう)が広く用いられてきたが、耐熱性、保存安定性、人体および環境に対する毒性、感度、耐久性、画像欠陥の発生、生産性、製造原価などのいずれかの点で欠点を有し、すべての点において満足できるものが得られていない。
【0003】
一方、有機系光導電性材料(Organic Photoconductor;略称:OPC)を主成分とする感光層を備えた感光体(「有機系感光体」ともいう)の研究開発が進み、感光体の主流を占めてきている。
有機系感光体は、感度、耐久性および環境に対する安定性などに若干の問題を有するが、毒性、製造原価および材料設計の自由度などの点において、無機系感光体に比べて多くの利点を有している。例えば、有機系感光体は、感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することができる。
【0004】
有機系感光体としては、電荷発生機能を有する材料(「電荷発生物質」、「電荷発生物質」ともいう)および電荷輸送機能を有する材料(「電荷輸送材料」、「電荷輸送物質」ともいう)を結着樹脂(「バインダ樹脂」、「結着剤樹脂」ともいう)に分散させた単層型感光層を導電性基体上に積層した構成、電荷発生材料を結着樹脂に分散させた電荷発生層と電荷輸送材料を結着樹脂に分散させた電荷輸送層とをこの順でまたは逆順で形成した積層型感光層または逆積層型感光層を導電性基体上に積層した構成などが提案されている。これらの中でも積層型感光層または逆積層型感光層を有する機能分離型の感光体は、電子写真特性および耐久性に優れ、材料選択の自由度の高さから感光体特性を様々に設計できることから広く実用化されている。
【0005】
他方、有機感光体を用いた画像形成装置は、プリンタなどの画像出力端末としての需要拡大に対して、高精細なデジタル画像の出力が求められ、露光光源としてレーザー光が多く用いられている。
レーザー光を露光光源とする画像形成装置としては、レーザープリンタが代表的な例であるが、近年では複写機においてもデジタル化が進み一般化してきている。
【0006】
露光光源として実用化されている半導体レーザーは、低コストで消費エネルギーが少なく、小型軽量であるという利点を有し、その発振波長は、発振波長や出力の安定性、寿命の点から、一般的に800nm付近の近赤外領域である。また、短波長で発振するレーザーが技術的な問題から実用化に到っていないという問題もあって。このような事情から、レーザーを露光光源とした画像形成装置では、長波長領域の光を吸収して感度を有する有機化合物、特にフタロシアニン顔料を電荷発生材料として含有する積層型感光体が開発されてきた。
1990年に青色発光ダイオードの製造方法が発明されて以来、青色半導体レーザーの関連技術は活発に開発が進められ、ブルーレイディスクと呼ばれる次世代ディスクが急速に普及しつつある。
【0007】
一方、画像形成装置の出力画像の画質向上を図るために、画質の高解像度化が検討されている。高い記録密度の高解像度の画質を達成する1つの手段として、レーザービームのスポット径を絞り、書込み密度を上げるという光学的な方法が挙げられる。そこで使用するレンズの焦点距離を短くすることが考えられるが、光学系の設計が難しいという問題がある。また、800nm付近の近赤外域に発振波長を有するレーザーでは、光学系の操作でビーム径を細くしてもスポット輪郭の鮮明さが得られ難いという問題がある。この原因は避けることのできないレーザー光の回折限界という現象にある。
【0008】
一般に感光体の表面に収束されるレーザー光(レーザービーム)のスポット径Dは、レーザー光の発振波長λおよびレンズ開口数NAと次式の関係にある。
D=1.22λ/NA
この式によれば、スポット径Dはレーザー光の発振波長に比例するので、スポット径Dを小さくするには発振波長の短いレーザーを用いればよいことがわかる。
つまり、現在主流の近赤外半導体レーザーに代えて、短波長の青色半導体レーザーを用いれば、さらなる高解像度の画質が実現できることがわかる。
【0009】
また、高解像度の画質を達成する1つの手段として、現在主流となっている積層型感光体に代えて単層型感光体を用いる手段がある。
一般に積層型感光体では、像露光において、電荷の散乱などの乱れにより静電潜像が不鮮明な状態になり易いが、単層型感光体では、電荷発生が表面近傍で行われるために電荷の乱れが起こり難く、静電潜像が像露光を忠実に再現できる。
【0010】
積層型有機系感光体は、主要機能成分である電荷輸送材料が正孔輸送物質である負帯電方式と電子輸送材料である正帯電方式に分類される。
有機系感光体の研究開発においては、優れた電荷輸送能を有する正孔輸送材料の開発が先行したことから、負帯電方式の感光体が実用化されているが、この方式は有害なオゾンや窒素酸化物を多く発生し、コロナ放電による帯電を均一化することが難しいなどの問題がある。
【0011】
一方、正帯電方式は上記のような負帯電方式の問題を有さず、セレン系感光体およびa−Si感光体などの正帯電方式の無機系感光体におけるプロセス技術を適用できることから、高性能な正帯電方式の有機系感光体の出現が望まれ、研究されている。
例えば、特許第2718048号公報(特許文献1)には、電子輸送機能を有する電荷輸送材料としてジフェノキノン化合物が開示されている。しかし、この電荷輸送材料は電荷移動速度が低く、感度が十分ではない。
【0012】
これまでに開発された正帯電方式の有機感光体としては、例えば、ポリビニルカルバゾール(PVCz)とトリニトロフルオレノン(TNF)との電荷移動錯体からなる単層構造の単層型感光体(米国特許第3484237号明細書:特許文献2)、電荷発生材料と正孔輸送材料を結着剤に分散させた単層型感光体などがある。しかし、前者は低感度であり、TNFが発ガン性物質であることから、後者は低感度で帯電保持力が低く、繰り返し使用時に電気特性が低下することから、現在は使用されていない。
【0013】
また、青色半導体レーザー用単層型感光体としては、例えば、α型オキシチタニウムフタロシアニン顔料を電荷発生材料とするもの(特開平9−240051号公報:特許文献3)および多環キノン物質を電荷発生材料とするもの(特開2000−47408号公報:特許文献4)がある。しかし、これらの感光体では満足いく感度が得られていないのが現状である。
【0014】
【特許文献1】特許第2718048号公報
【特許文献2】米国特許第3484237号明細書
【特許文献3】特開平9−240051号公報
【特許文献4】特開2000−47408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、青色半導体レーザーを露光光源とする画像形成装置においても、十分な感度を有する単層型感光体およびそれを備えた成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本来、高移動度な電荷輸送物質として知られているエナミン系化合物と、他の電荷輸送材料と異なり、波長400〜450nmに吸収帯を有し(図4参照)かつ増感剤としても機能するビスアゾ顔料とを組み合わせることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0017】
かくして、本発明によれば、導電性支持上に、電荷発生機能を有する材料と電荷輸送機能を有する材料とを含有する単層型感光層が積層されてなり、前記単層型感光層が、電荷輸送機能を有する材料として一般式(A):
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、
aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子であり;
mは1〜6の整数であり、mが2以上のとき、複数のaは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく;
b、cおよびdは、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ハロゲン原子または水素原子であり;
i、kおよびjは、同一または異なって、1〜5の整数であり、iが2以上のとき、複数のbは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、kが2以上のとき、複数のcは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、jが2以上のとき、複数のdは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく;
Ar4およびAr5は、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよい複素環基または水素原子であり、ただし、Ar4およびAr5は共に水素原子ではなく、Ar4およびAr5は、原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよい)
で示されるエナミン系化合物、および電子輸送機能と電荷発生機能とを有する材料として一般式(B):
CP−N=N−D−N=N−CP (B)
(式中、Dは芳香族炭化水素を含む二価基または複素環を含む二価基であり、CPはカップリング残基である)
で示されるビスアゾ化合物を含有し、波長400〜450nmの光に感光特性を有することを特徴とする単層型感光体が提供される。
【0020】
また、本発明によれば、上記の単層型感光体と、前記単層型感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記単層型感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録材上に定着して画像を形成する定着手段と、前記単層型感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記単層型感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備え、
前記露光手段が、波長400〜450nmに中心発振波長を有する露光光源を備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、青色半導体レーザーによる露光および正帯電方式に適し、オゾン発生が少なく、高感度、高解像度で安定な単層型感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の単層型感光体は、導電性支持上に、電荷発生機能を有する材料と電荷輸送機能を有する材料とを含有する単層型感光層が積層されてなり、前記単層型感光層が、電荷輸送機能を有する材料として一般式(A)で示されるエナミン系化合物、および電子輸送機能と電荷発生機能とを有する材料として一般式(B)で示されるビスアゾ化合物を含有し、波長400〜450nmの光に感光特性を有することを特徴とする。
本発明では、エナミン系化合物とビスアゾ化合物との併用により、青色半導体レーザーによる露光においてエナミン系化合物がビスアゾ化合物の電荷発生を促進するので、実用上十分な感度が得られるものと考えられる。
【0023】
本発明の単層型感光体について図面を用いて具体的に説明する。
図1および2は、本発明の単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図1の単層型感光体1は、導電性支持11上に、エナミン系化合物12およびビスアゾ化合物13を含有する単層型感光層140が積層されてなる。
図2の単層型感光体2は、導電性支持11上に中間層18を介して、エナミン系化合物12およびビスアゾ化合物13を含有する単層型感光層140が積層されてなる。
なお、図番17はバインダ樹脂を示す。
【0024】
[導電性支持体11]
導電性支持体は、感光体の電極としての役割を果たすとともに、他の各層の支持部材としても機能する。
導電性支持体の構成材料は、当該分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属および合金材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、セルロース、ポリ乳酸などの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる基体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料または合金材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム、カーボンブラックなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。
【0025】
導電性支持体の形状としては、図1および2に示すようなシート状および後述する円筒状に限定されず、円柱状、無端ベルト(シームレスベルト)状などであってもよい。
導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
【0026】
乱反射処理は、レーザーを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザーを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザー光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザー光と感光体の内部で反射されたレーザー光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性支持体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザー光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
【0027】
[単層型感光層140]
単層型感光層は、電荷発生機能を有する材料と電荷輸送機能を有する材料として、一般式(A)で示されるエナミン系化合物および一般式(B)で示されるビスアゾ化合物と、バインダ樹脂とを含有する。
「電荷発生機能」とは、光を吸収することにより電荷を発生する機能を意味し、「電荷輸送機能」とは、発生した電荷を受け入れて輸送する機能を意味する。
また、「電荷」とは「電子」および/または「正孔」を意味する。
【0028】
エナミン系化合物およびビスアゾ化合物は、それぞれ電荷輸送機能、および電子輸送機能と電荷発生機能を有する。
本発明の単層型感光層は波長400〜450nmの光に感光特性を有するので、図4に示すように、エナミン系化合物がこの波長の光を吸収して、ビスアゾ化合物の電荷発生を促進するものと考えられる。
図4は、本発明のエナミン系化合物の吸収スペクトルを示す図である。
この吸収スペクトルは、エナミン系化合物を0.01%濃度でテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、分光光度計(日立株式会社製)で測定した結果である。
【0029】
本発明のエナミン系化合物は、一般式(A)で示される。
一般式(A)における置換基について説明する。
aの置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メトキシエチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられ、これらの中でも、メチル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0030】
aの置換基を有してもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基などが挙げられ、これらの中でも、メトキシ基が特に好ましい。
【0031】
aの置換基を有してもよいジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいジアルキルアミノ基が挙げられる。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
【0032】
aの置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基、メチルメトキシフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、ナフチル基、メトキシナフチル基などが挙げられる。
【0033】
aのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、これらの中でも、フッ素原子が特に好ましい。
【0034】
b、cおよびdの置換基を有してもよいアルキル基は、上記aと同義であり、メチル基が特に好ましい。
b、cおよびdの置換基を有してもよいアルコキシ基は、上記aと同義であり、メトキシ基が特に好ましい。
b、cおよびdの置換基を有してもよいジアルキルアミノ基は、上記aと同義であり、ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0035】
b、cおよびdの置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基、メチルメトキシフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、ビフェニルイル基、ナフチル基、メトキシナフチル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、ビフェニルイル基が特に好ましい。
【0036】
b、cおよびdの置換基を有してもよいアリールオキシ基としては、4−メチルフェノキシ基などが挙げられる。
b、cおよびdの置換基を有してもよいアリールチオ基としては、フェニールチオ基などが挙げられる。
b、cおよびdのハロゲン原子は、上記aと同義である。
【0037】
Ar4およびAr5の置換基を有してもよいアルキル基は、上記aと同義であり、メチル基が特に好ましい。
Ar4およびAr5の置換基を有してもよいアリール基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜6のジアルキルアミノ基およびハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。
具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、メトキシフェニル基、メチルメトキシフェニル基、t−ブチルフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、4−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロエチルフェニル基、ナフチル基、メトキシナフチル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ナフチル基が特に好ましい。
【0038】
Ar4およびAr5の置換基を有してもよいアリールアルキル基としては、ベンジル基などが挙げられる。
Ar4およびAr5の置換基を有してもよい複素環基としては、クロマニル基、チエニル基、5−メリルチエニル基、フリル基などが挙げられる。
【0039】
一般式(A)で示されるエナミン系化合物の具体例(例示化合物1〜143)を表1−1〜1−21に示すが、本発明のエナミン系化合物はこれらの具体例により限定されるものではない。
これらの化合物の中でも、例示化合物1、43および111が特に好ましい。
なお、これらの化合物は特開2004−151666号公報に記載の方法により合成できる。
【0040】
【表1−1】

【0041】
【表1−2】

【0042】
【表1−3】

【0043】
【表1−4】

【0044】
【表1−5】

【0045】
【表1−6】

【0046】
【表1−7】

【0047】
【表1−8】

【0048】
【表1−9】

【0049】
【表1−10】

【0050】
【表1−11】

【0051】
【表1−12】

【0052】
【表1−13】

【0053】
【表1−14】

【0054】
【表1−15】

【0055】
【表1−16】

【0056】
【表1−17】

【0057】
【表1−18】

【0058】
【表1−19】

【0059】
【表1−20】

【0060】
【表1−21】

【0061】
本発明のビスアゾ化合物は、一般式(B):
CP−N=N−D−N=N−CP (B)
(式中、Dは芳香族炭化水素を含む二価基または複素環を含む二価基であり、CPはカップリング残基である)
で示される。
一般式(B)における芳香族炭化水素を含む二価基または複素環を含む二価基としては、表2に示す例示化合物のものが挙げられる。
【0062】
本発明のビスアゾ化合物は、次式のようにビスアゾ成分:N2+−D−N2+によってカップリング成分:H−CPがカップリングされることによって合成される。
2+−D−N2++2H−CP→CP−N=N−D−N=N−CP+2H+
カップリング残基とは、ビスアゾ化合物中のカップリング成分由来の基を表す。
【0063】
一般式(B)で示されるビスアゾ化合物は、副式(I):
【化2】

(式中、CPはカップリング残基である)、
【0064】
副式(II):
【化3】

(式中、CPはカップリング残基であり、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、水素原子またはハロゲン原子であり、mは1または2の整数である)、および
【0065】
副式(III):
【化4】

(式中、CPはカップリング残基である)
から選択される化合物であるのが好ましい。
【0066】
副式(II)における置換基Rの置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基およびハロゲン原子としては、一般式(A)の置換基aに例示のものが挙げられる。
【0067】
一般式(B)のカップリング残基CPは、次式:
【化5】

【0068】
[式中、X1は水素原子、−CONR12または−CONR2(式中、R1は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基であり、R2は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基である)であり、Zはベンゼン環と縮合して芳香族環または芳香族複素環を形成する残基である]、
【0069】
【化6】

【0070】
(式中、X2は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基であり、X3は水素原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、エステル基またはアシル基であり、X4は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基である)、
【0071】
【化7】

(式中、Yは芳香族炭化水素の二価基または窒素原子を環内に含む複素環の二価基の環である)、
【0072】
【化8】

【0073】
(式中、X5は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基であり、X6は水素原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、エステル基またはアシル基であり、X7およびX8は互いに同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアルコキシ基である]、および
【0074】
【化9】

【0075】
(式中、X9は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基である)
から選択される基であるのが好ましい。
【0076】
式(IV)における置換基X1の−CONR12および−CONR2の置換基R1およびR2の置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアリール基としては、一般式(A)の置換基aに例示のものが挙げられ、置換基R2の置換基を有してもよい複素環基としては、一般式(A)の置換基Ar4およびAr5に例示のものが挙げられる。
また、置換基Zのベンゼン環と縮合して芳香族環または芳香族複素環を形成する残基としては、一般式(A)の置換基Ar4およびAr5が互いに結合して形成する環構造の残基が挙げられる。
【0077】
式(V)における置換基X2の置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアリール基としては、一般式(A)の置換基aに例示のものが挙げられ、置換基X2の置換基を有してもよい複素環基としては、一般式(A)の置換基Ar4およびAr5に例示のものが挙げられる。
また、置換基X3のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられる。
さらに、置換基X4の置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアリール基としては、一般式(A)の置換基aに例示のものが挙げられ、置換基X4の置換基を有してもよいアリールアルキル基および置換基を有してもよい複素環基としては、一般式(A)の置換基Ar4およびAr5に例示のものが挙げられる。
また、置換基X4の置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、置換基X4の置換基を有してもよいアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられる。
【0078】
式(VI)における置換基Yの芳香族炭化水素の二価基または窒素原子を環内に含む複素環の二価基の環としては、例えば、ベンズイミダゾール残基などが挙げられる。
【0079】
式(VII)における置換基X5の置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアリール基としては、一般式(A)の置換基aに例示のものが挙げられ、置換基X5の置換基を有してもよい複素環基としては、一般式(A)の置換基Ar4およびAr5に例示のものが挙げられる。
また、置換基X6のアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられる。
置換基X7およびX8のハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアルコキシ基としては、一般式(A)の置換基aに例示のものが挙げられる。
【0080】
式(VIII)における置換基X9の置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアリール基としては、一般式(A)の置換基aに例示のものが挙げられ、置換基を有してもよいアリールアルキル基および置換基X9の置換基を有してもよい複素環基としては、一般式(A)の置換基Ar4およびAr5に例示のものが挙げられる。
また、置換基X9の置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、置換基X9の置換基を有してもよいアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられる。
【0081】
一般式(B)で示されるビスアゾ化合物の具体例(化合物(1)〜(13))を表2に示すが、本発明のビスアゾ化合物はこれらの具体例により限定されるものではない。
化合物(1)および(2)が副式(I)、化合物(5)、(10)および(11)が副式(II)、化合物(8)および(9)が副式(III)で示されるビスアゾ化合物の具体例である。
これらの化合物の中でも、例示化合物(1)、(3)、(5)、(6)、(8)および(10)が好ましく、例示化合物(5)が特に好ましい。
【0082】
【表2】

【0083】
バインダ樹脂としては、例えば、単層型感光層の機械的強度、耐久性などを向上させる目的で使用され、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用できる。
具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂;フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどの熱硬化性樹脂、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂)などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
【0084】
これらの樹脂の中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートは特に好適に使用できる。
【0085】
エナミン系化合物は、単層型感光層中に5〜70重量%含有するのが好ましい。より好ましくは30〜50重量%である。
エナミン系化合物が5重量%未満の場合には、電荷を輸送することができず感度が低下するおそれがある。一方、エナミン系化合物が70重量%を超える場合には、単層型感光層の膜強度が低下するおそれがある。
【0086】
ビスアゾ化合物は、単層型感光層中に1〜15重量%含有するのが好ましい。より好ましくは3〜8重量%である。
ビスアゾ化合物が1重量%未満の場合には、電子を輸送することができず感度が低下するおそれがある。一方、ビスアゾ化合物が15重量%を超える場合には、単層型感光層の膜強度が低下するおそれがある。
【0087】
バインダ樹脂は、単層型感光層中に30〜80重量%含有するのが好ましい。より好ましくは40〜60重量%である。
バインダ樹脂が30重量%未満の場合には、単層型感光層の膜強度が低下するおそれがある。一方、バインダ樹脂が80重量%を超える場合には、単層型感光層の機能が低下するおそれがある。
【0088】
単層型感光層は、本発明の効果を阻害しない範囲で電荷輸送能を向上させるために、一般式(A)で示されるエナミン系化合物以外の電荷輸送材料を含有してもよい。
このような電荷輸送材料としては、例えばエナミン誘導体、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体およびベンジジン誘導体、ならびにこれらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレンおよびポリ−9−ビニルアントラセンなどが挙げられる。
【0089】
単層型感光層は、必要に応じて当該分野で用いられる酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤などの各種添加剤を含有してもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物およびアミン系化合物などが挙げられ、これらの中でも、ヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体およびこれらの混合物が特に好ましい。
酸化防止剤、紫外線吸収剤の配合により、オゾン、窒素酸化物などの酸化性のガスに対する単層型感光層の劣化を低減でき、かつ塗布液の安定性を向上させることができる。
【0090】
酸化防止剤の含有量は、電荷輸送物質100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましい。酸化防止剤の含有量が50重量部を超える場合には、感光体特性に悪影響を及ぼすことがある。一方、酸化防止剤の含有量が0.1重量部未満の場合には、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができないことがある。
【0091】
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
可塑剤、レベリング剤の配合により、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させることができる。
【0092】
単層型感光層140は、エナミン系化合物12、ビスアゾ化合物13およびバインダ樹脂17、ならびに必要に応じて上記の添加剤を適当な有機溶剤に溶解または分散して単層型感光層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の表面に、または導電性支持体1上に形成された中間層18の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。より具体的には、例えば、バインダ樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液に構成物質を溶解または分散させることにより、単層型感光層用塗布液を調製する。
【0093】
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤;ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。また、このような溶剤に、アルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンを加えた混合溶剤を使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0094】
単層型感光層形成用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮して最適な方法を選択すればよく、具体的には、ロール塗布、スプレー塗布、ブレード塗布、リング塗布、アプリケータ塗布、浸漬塗布などが挙げられる。
これらの塗布方法の中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗布槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れている。したがって、浸漬塗布法は、感光体を製造する場合に多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。
【0095】
単層型感光層の製造における乾燥工程の温度は、使用した有機溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50〜140℃が適当であり、80〜130℃が特に好ましい。
乾燥温度が140℃を超える場合には、単層型感光体の繰返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化するおそれがある。一方、乾燥温度が50℃未満の場合には、乾燥時間が長くなることがある。
このような単層型感光層の製造における温度条件は、単層型感光層のみならず後述する中間層などの層形成や他の処理においても共通する。
【0096】
単層型感光層の膜厚は特に限定されないが、5〜40μmが好ましく、10〜30μmが特に好ましい。
単層型感光層の膜厚が40μmを超える場合には、感光体の生産性が低下するおそれがある。一方、単層型感光層の膜厚が5μm未満の場合には、感光体表面の帯電保持能が低下し、出力画像のコントラストが低下するおそれがある。
【0097】
[中間層18]
本発明の単層型感光体は、導電性支持体11と単層型感光層140との間に中間層18を有するのが好ましい。
中間層は、導電性支持体から単層型感光層への電荷の注入を防止する機能を有する。すなわち、単層型感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
また、中間層で導電性支持体の表面を被覆する中間層は、導電性支持体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、単層型感光層の成膜性を高め、導電性支持体と単層型感光層との密着性を向上させることができる。
【0098】
中間層は、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解させて中間層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
樹脂材料としては、単層型感光層に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が特に好ましい。アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロンおよび12−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
【0099】
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
その他の工程およびその条件は、単層型感光層の形成に準ずる。
【0100】
また、中間層形成用塗布液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、中間層の体積抵抗値を容易に調節でき、単層型感光層または積層型感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
【0101】
中間層形成用塗布液におけるバインダ樹脂と金属酸化物粒子との合計重量Cと溶剤の重量Dとの比率(C/D)は、1/99〜40/60が好ましく、2/98〜30/70が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の重量Eと金属酸化物粒子の重量Fとの比率E/Fは、90/10〜1/99が好ましく、70/30〜5/95が特に好ましい。
【0102】
中間層の膜厚は特に限定されないが、0.01〜20μmが好ましくは、0.05〜10μmが特に好ましい。
中間層の膜厚が20μmを超える場合には、均一な中間層を形成し難く、また中間層上に均一な単層型感光層を形成し難く、感光体の感度が低下するおそれがある。一方、中間層の膜厚が0.01μm未満の場合には、中間層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面が得られないおそれがある。すなわち、導電性支持体からの単層型感光層への電荷の注入を防止することができなくなり、単層型感光層の帯電性の低下が生じる。
なお、導電性支持体の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、中間層とすることができる。
【0103】
本発明の画像形成装置は、本発明の単層型感光体と、前記単層型感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記単層型感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録材上に定着して画像を形成する定着手段と、前記単層型感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記単層型感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備え、前記露光手段が、波長400〜450nmに中心発振波長を有する露光光源を備えたことを特徴とする。
【0104】
図面を用いて本発明の画像形成装置およびその動作について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図3の画像形成装置(レーザープリンタ)100は、本発明の単層型感光体1(図1および2参照)と、帯電手段(コロナ帯電器)32と、露光手段(半導体レーザー)31と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35、クリーニング手段(クリーナ)36と、除電手段(図示せず、通常クリーニング手段36に併設される)とを含んで構成される。図番51は転写紙を示す。
【0105】
単層型感光体1は、図示しない画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を単層型感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、単層型感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電器32、露光手段31、現像器33、転写帯電器34およびクリーナ36は、この順序で、単層型感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される単層型感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
【0106】
帯電器32は、単層型感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
本発明の画像形成装置における帯電手段は、有害なオゾンガスの発生を低減させる観点から、正帯電方式であるのが好ましい。
【0107】
露光手段31は、露光光源から出力されるレーザービームの光を、帯電器32と現像器33との間の単層型感光体1の表面に照射することによって、帯電された単層型感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である単層型感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して単層型感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された単層型感光体1の帯電量がレーザービームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
本発明の画像形成装置では、露光光源は波長400〜450nmに中心発振波長を有する。その露光光源としては、青色半導体レーザーが好ましく、その青色半導体レーザーとしては、窒化ガリウム系材料の半導体レーザーが好ましい。
【0108】
現像器33は、露光によって単層型感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、単層型感光体1を臨んで設けられ、単層型感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを単層型感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0109】
転写帯電器34は、現像によって単層型感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から単層型感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる非接触式の転写手段である。
【0110】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に単層型感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、単層型感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電手段(除電ランプ)と共に設けられる。
【0111】
また、画像形成装置100には、単層型感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
また、図番37は転写紙と感光体を分離する分離手段、38は画像形成方法の各手段を収容するケーシングを示す。
【0112】
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。まず、単層型感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも単層型感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、単層型感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
【0113】
次いで、露光手段32から、単層型感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。単層型感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段33による光の結像点よりも単層型感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された単層型感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0114】
単層型感光体1に対する露光と同期して、単層型感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、単層型感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
【0115】
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も単層型感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって単層型感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された単層型感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、単層型感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、単層型感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
【実施例】
【0116】
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0117】
(実施例1)
金属酸化物粒子としての酸化チタン微粒子(形状:樹枝状、平均一次粒径:短軸40〜70nm、長軸200〜300nm、石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1)9重量部と、樹脂材料としての共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製、製品名:アミランCM8000、)9重量部とを、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカで12時間分散処理し、中間層用塗布液を調製した。
得られた中間層用塗布液を、導電性支持体としてアルミニウムを蒸着したPETフィルム上にアプリケータ塗布法により塗布し、膜厚1μmの中間層を形成した。
【0118】
次いで、ビスアゾ化合物としての例示化合物(5)4重量部をテトラヒドロフラン(THF)14重量部と共にペイントシェーカで5時間分散処理した。一方、エナミン系化合物としての例示化合物1の120重量部とバインダ樹脂としてのポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、製品名:PCZ−400)144重量部とを、THF1056重量部に加えて溶解させた。得られた溶液に先に調製した分散液を添加し、ホモジナイザーで均一になるように混合して単層型感光層用塗布液を調製した。
得られた単層型感光層用塗布液をアプリケータ塗布法で、先に設けた中間層上に塗布し、得られた塗膜を110℃の熱風で60分間乾燥させ、膜厚30μmの単層型感光層を形成し、図2の単層型感光体を作製した。
【0119】
(実施例2)
エナミン系化合物としての例示化合物1の代わりに例示化合物43を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0120】
(実施例3)
エナミン系化合物としての例示化合物1の代わりに例示化合物111を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0121】
(実施例4)
ビスアゾ化合物としての例示化合物(5)の代わりに例示化合物(1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0122】
(実施例5)
エナミン系化合物としての例示化合物1の代わりに例示化合物43を、ビスアゾ化合物としての例示化合物(5)の代わりに例示化合物(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0123】
(実施例6)
エナミン系化合物としての例示化合物1の代わりに例示化合物111を、ビスアゾ化合物としての例示化合物(5)の代わりに例示化合物(6)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0124】
(実施例7)
ビスアゾ化合物としての例示化合物(5)の代わりに例示化合物(8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0125】
(実施例8)
ビスアゾ化合物としての例示化合物(5)の代わりに例示化合物(10)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0126】
(比較例1)
エナミン系化合物としての例示化合物1の代わりに下記構造式で示されるトリフェニルアミン系化合物(TPD)(東京化成工業株式会社製、製品名:D2448)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
TPDは、図5に示すような吸収スペクトルを有する。
この吸収スペクトルは、エナミン系化合物を0.01%濃度でテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、分光光度計(日立株式会社製)で測定した結果である。
【0127】
【化10】

【0128】
(比較例2)
ビスアゾ化合物としての例示化合物(5)の代わりに下記構造式で示されるチタニルフタロシアニン(TiOPc、特許第3569422号公報に記載された方法により作製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0129】
【化11】

【0130】
(比較例3)
ビスアゾ化合物としての例示化合物(5)の代わりに下記構造式で示されるペリレン化合物(クラリアントジャパン株式会社製、製品名:PV FAST RED B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして単層型感光体を作製した。
【0131】
【化12】

【0132】
(比較例4)
実施例1と同様にして、導電性支持体上に中間層を形成した。
次いで、電荷発生材料としての比較例2と同様のチタニルフタロシアニン(TiOPc)2重量部と、バインダ樹脂としてのブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックBM−2)1重量部とを、有機溶剤としてのメチルエチルケトン97重量部に加え、ボールミルで72時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を調製した。
得られた電荷発生層用塗布液をアプリケータ塗布法で、先に設けた中間層上に塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送材料としての比較例1と同様のトリフェニルアミン系化合物(TPD)(東京化成工業株式会社製、製品名:D2448)120重量部と、バインダ樹脂としてのポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、製品名:PCZ−400)144重量部とを、THF1056重量部に加えて溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。
得られた電荷輸送層用塗布液をアプリケータ塗布法で、先に設けた電荷発生層上に塗布し、得られた塗膜を120℃の熱風で60分間乾燥させ、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、積層型感光体を作製した。
【0133】
(比較例5)
中間層上に電荷輸送層、電荷発生層の順に形成したこと以外は、比較例4と同様にして逆積層型感光体を作製した。
【0134】
(評価)
実施例1〜8および比較例1〜5で得られた各感光体について、以下のようにして電気特性および画像を評価した。
【0135】
[電気特性]
表面電位が600Vになるように感光体を正帯電させ、出力300Wのキセノンランプ光を干渉フィルターで分光し、波長400nm、NDフィルターで強度5μW/cm2に調整した光で、帯電された感光体の表面を露光し、静電紙試験装置(商品名:EPA−8200、株式会社川口電機製作所製)を用いて、感光体の表面電位を300Vまで半減させるのに要した露光量を半減露光量E1/2(μJ/cm2)として測定した。
得られた半減露光量E1/2が0.8μJ/cm2以下のものを○、0.8μJ/cm2以上のものを×として評価した。
【0136】
[画像]
解像度1200dpiの負帯電方式のデジタル複写機(シャープ株式会社製、製品名:AR−266FP)を正帯電方式に改造し、露光ユニット(LSU)を青色半導体レーザー(405nm)用に改造した試験用複写機に感光体を装着し、下記の自己印字モードで解像度を評価した。試験用複写機に搭載されている感光体ドラム上に、アース部分を接地して感光体を貼り付けた。
自己印字モード:1ライン画像、縦横の2ライン画像、黒ベタの1ライン抜け画像、1by1ドット(1ドット置きに1ドットを印字)画像
得られた評価結果が目視でラインが鮮明に見えるものを○、ラインが潰れて鮮明にみえないものを×として評価した。
得られた結果を、感光体に用いた電荷輸送材料および電荷発生材料と共に表3に示す。
【0137】
【表3】

【0138】
表3の結果から次のことがわかる。
(1)本発明のエナミン系化合物とビスアゾ化合物とを併用した単層型感光体(実施例1〜8)は、両化合物を併用しない単層型感光体(比較例1〜3)と比較して、高感度を達成している。これは、図4に示すようにエナミン系化合物が波長400〜450nmの光を吸収して、ビスアゾ化合物の電荷発生を促進しているためと考えられる。一方、TPDと本発明のビスアゾ化合物とを併用した単層型感光体(比較例1)では、図5に示すようにTPDが波長400〜450nmの光を吸収しないので、ビスアゾ化合物の電荷発生の促進効果がないものと考えられる。
したがって、本発明は、高解像度化においても露光光源の短波長化による光学系のメリットを十分に生かした画像形成装置を実現できる。
【0139】
(2)TiOPc/TPDからなる電荷発生層/電荷輸送層の積層型感光体(比較例4)では光感度が観測されなかった。これは、上記のようにTPDに吸収されずに透過した波長400〜450nmの光がTiOPcに吸収されて、TiOPcから電荷が発生しても、TiOPcが電子輸送機能を有さないために表面電荷が打ち消されなかったためと考えられる。
【0140】
(3)TPD/TiOPcからなる電荷輸送層/電荷発生層の積層型感光体(比較例5)では高感度であった、画像評価用に使用を繰り返しているうちに線状のキズが増加して評価不能となった。レーザープリンタ用に広範に用いられているTiOPcは、近赤外領域の広い吸収帯と共に400nm付近の短波長領域にも狭い吸収帯を有し、電荷発生がなされる。TiOPcを含有する電荷発生層の表面近傍で発生した負電荷が表面電荷を打ち消し、正電荷がTPDを含有する電荷輸送層に移動し、中間層を経て導電性支持体に抜けたため、高感度が得られたものと考えられる。このように電気特性上の問題はないものの、表面の電荷発生層は電荷発生材料(有機顔料)の含有比率が高く、膜強度が弱いために、容易にキズが発生して評価不能になったものと考えられる。すなわち、耐摩耗性に大きな問題がある。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の単層型感光体構成(形態1)を示す模式断面図である。
【図2】本発明の単層型感光体構成(形態2)を示す模式断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
【図4】本発明のエナミン系化合物(例示化合物1)の吸収スペクトルを示す図である。
【図5】比較例に用いたトリフェニルアミン系化合物(TPD)の吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0142】
1、2 感光体
11 導電性支持体
12 エナミン系化合物
140 単層型感光層
13 ビスアゾ化合物
17 バインダ樹脂
18 中間層
【0143】
31 露光手段(半導体レーザー)
32 帯電手段(コロナ帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)34
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ハウジング
41 矢符
44 回転軸線
51 転写紙
100 画像形成装置(レーザープリンタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持上に、電荷発生機能を有する材料と電荷輸送機能を有する材料とを含有する単層型感光層が積層されてなり、前記単層型感光層が、電荷輸送機能を有する材料として一般式(A):
【化1】

(式中、
aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子であり;
mは1〜6の整数であり、mが2以上のとき、複数のaは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく;
b、cおよびdは、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ハロゲン原子または水素原子であり;
i、kおよびjは、同一または異なって、1〜5の整数であり、iが2以上のとき、複数のbは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、kが2以上のとき、複数のcは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、jが2以上のとき、複数のdは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく;
Ar4およびAr5は、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよい複素環基または水素原子であり、ただし、Ar4およびAr5は共に水素原子ではなく、Ar4およびAr5は、原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよい)
で示されるエナミン系化合物、および電子輸送機能と電荷発生機能とを有する材料として一般式(B):
CP−N=N−D−N=N−CP (B)
(式中、Dは芳香族炭化水素を含む二価基または複素環を含む二価基であり、CPはカップリング残基である)
で示されるビスアゾ化合物を含有し、波長400〜450nmの光に感光特性を有することを特徴とする単層型電子写真感光体。
【請求項2】
前記一般式(A)のエナミン系化合物が、次式:
【化2】

から選択される化合物である請求項1に記載の単層型電子写真感光体。
【請求項3】
前記一般式(B)のビスアゾ化合物が、副式(I):
【化3】

(式中、CPはカップリング残基である)、
副式(II):
【化4】

(式中、CPはカップリング残基であり、Rは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、水素原子またはハロゲン原子であり、mは1または2の整数である)、および
副式(III):
【化5】

(式中、CPはカップリング残基である)
から選択される化合物である請求項1または2に記載の単層型電子写真感光体。
【請求項4】
前記一般式(B)のカップリング残基CPが、次式:
【化6】

[式中、X1は水素原子、−CONR12または−CONR2(式中、R1は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基であり、R2は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基である)であり、Zはベンゼン環と縮合して芳香族環または芳香族複素環を形成する残基である]、
【化7】

(式中、X2は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基であり、X3は水素原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、エステル基またはアシル基であり、X4は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基である)、
【化8】

(式中、Yは芳香族炭化水素の二価基または窒素原子を環内に含む複素環の二価基の環である)、
【化9】

(式中、X5は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基であり、X6は水素原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、エステル基またはアシル基であり、X7およびX8は互いに同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアルコキシ基である]、および
【化10】

(式中、X9は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基である)
から選択される基である請求項1〜3のいずれか1つに記載の単層型電子写真感光体。
【請求項5】
前記一般式(A)のエナミン系化合物が、前記単層型感光層中に5〜70重量%含有される請求項1〜4のいずれか1つに記載の単層型電子写真感光体。
【請求項6】
前記一般式(B)のビスアゾ化合物が、前記単層型感光層中に1〜15重量%含有される請求項1〜5のいずれか1つに記載の単層型電子写真感光体。
【請求項7】
前記導電性支持体と前記単層型感光層との間に中間層を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の単層型電子写真感光体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の単層型電子写真感光体と、前記単層型電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記単層型電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録材上に定着して画像を形成する定着手段と、前記単層型電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記単層型電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備え、
前記露光手段が、波長400〜450nmに中心発振波長を有する露光光源を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記露光光源が、青色半導体レーザーである請求項8に記載の画像形成装置
【請求項10】
前記青色半導体レーザーが、窒化ガリウム系材料の半導体レーザーである請求項9に記載の画像形成装置
【請求項11】
前記帯電手段が、正帯電方式である請求項8〜10のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−139554(P2010−139554A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313308(P2008−313308)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】