説明

単独運転回避装置、単独運転回避方法および単独運転回避プログラム

【課題】分散電源が配電系統に連系される場合に発生する可能性のある単独運転を回避すること。
【解決手段】配電線2において単独運転が発生する有効電力と無効電力との値により定められる単独運転発生範囲により範囲1が設定される。そして、調整装置制御部17bは、PQ計測装置15により計測された配電線2の有効電力および無効電力が範囲1内となった場合に、当該計測された無効電力が範囲1外となるように、配電線2上にある遮断器12の需要家側において無効電力の調整を行なう調整装置16による調整量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、単独運転回避装置、単独運転回避方法および単独運転回避プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電系統の配電用変電所から需要家に電力を供給する配電線において、配電線のメンテナンスまたは配電線路における故障が発生した場合、配電用変電所の遮断器(CB:Circuit Breaker)を解放することで、配電線の停止が行なわれている。
【0003】
ここで、配電線に負荷のみが接続されている場合、遮断器が解放されて配電用変電所の電力供給が断たれると、配電線の電圧は、速やかに低下し零となる。図14は、単独運転を説明するための図である。
【0004】
しかし、変電所変圧器からの電力供給を断つために配電用変電所において遮断器を解放しても、図14に示すように、配電線に太陽光発電(PV:Photo Voltaic)装置などの分散電源が連系し、さらに、「分散電源の発電電力」と「配電線の負荷の消費電力」とがバランスすると、分散電源が停止することなく配電線の電圧が維持される単独運転と呼ばれる現象が発生することが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】低圧配電線と連系する分散形太陽光発電システムの制御と保護,電気学会論文誌. B, Vol. 108 (1988) No. 1 pp.45-52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状では、分散電源が配電系統に連系される場合に発生する可能性のある単独運転を回避するための有効な方法はなく、安全上の問題があった。すなわち、例えば、配電線内に故障が発生し配電用変電所の遮断器で配電線の電力供給を停止しても、単独運転が発生すると配電線の電圧が維持されるため、安全を確保することができない。
【0007】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、分散電源が配電系統に連系される場合に発生する可能性のある単独運転を回避することが可能となる単独運転回避装置、単独運転回避方法および単独運転回避プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この装置は、配電用変電所から需要家に電力を供給する配電線にて計測された有効電力および無効電力が所定の範囲内となった場合に、当該計測された有効電力または無効電力が前記所定の範囲外となるように、前記配電線上にある遮断器の需要家側において有効電力または無効電力の調整を行なう調整装置による調整量を制御する制御手段を備えたことを要件とする。
【0009】
また、この方法は、配電用変電所から需要家に電力を供給する配電線にて計測された有効電力および無効電力が所定の範囲内となった場合に、当該計測された有効電力または無効電力が前記所定の範囲外となるように、前記配電線上にある遮断器の需要家側において有効電力または無効電力の調整を行なう調整装置による調整量を制御する制御ステップを含んだことを要件とする。
【0010】
また、このプログラムは、配電用変電所から需要家に電力を供給する配電線にて計測された有効電力および無効電力が所定の範囲内となった場合に、当該計測された有効電力または無効電力が前記所定の範囲外となるように、前記配電線上にある遮断器の需要家側において有効電力または無効電力の調整を行なう調整装置による調整量を制御する制御手順をコンピュータに実行させることを要件とする。
【発明の効果】
【0011】
開示の装置、方法、またはプログラムによれば、分散電源が配電系統に連系される場合に発生する可能性のある単独運転を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1に係る電力供給システムの構成を説明するための図である。
【図2】図2は、実施例1に係る単独運転回避装置の構成を説明するための図である。
【図3】図3は、調整装置制御部の処理に用いられる範囲1および範囲2の一例を説明するための図である。
【図4】図4は、調整装置による容量性の無効電力の調整量の一例を説明するための図である。
【図5】図5は、実施例1に係る調整装置制御部の処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、電力供給システムに単独運転回避装置を設置しない場合の有効電力および無効電力の状態を説明するための図である。
【図7】図7は、電力供給システムに単独運転回避装置を設置した場合の有効電力および無効電力の状態を説明するための図である。
【図8】図8は、範囲1の設定法を説明するための図(1)である。
【図9】図9は、範囲1の設定法を説明するための図(2)である。
【図10】図10は、範囲1の設定法を説明するための図(3)である。
【図11】図11は、範囲1の設定法を説明するための図(4)である。
【図12】図12は、制御動作切り替え部の処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、実施例2に係る調整装置制御部の処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】図14は、単独運転を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る単独運転回避装置、単独運転回避方法および単独運転回避プログラムの実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係る単独運転装置が組み込まれた電力供給システムを実施例として説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、図1を用いて実施例1に係る電力供給システムの構成について説明する。なお、図1は、実施例1に係る電力供給システムの構成を説明するための図である。
【0015】
図1に示すように、実施例1に係る電力供給システムは、配電線2を介して需要家に電力を供給する配電用変電所1と、配電線2に連系される負荷3および分散電源4とを有する。配電用変電所1は、需要地に設置され、送電線から送られてきた高電圧を低電圧に変圧し、変圧後の電圧を、配電線2を介して需要家に供給する。
【0016】
負荷3は、需要家に設置され、配電線2から供給された電力を消費して動作する装置である。また、分散電源4は、太陽光エネルギーを利用して電力を出力する太陽光発電(PV:Photo Voltaic)装置などの発電を行う小規模な発電設備である。なお、図1には、負荷3が1つのみ示されているが、実際には、負荷3は、配電線2に複数台連系されている。また、図1には、分散電源4が1つのみ示されているが、分散電源4が2台以上、配電線2に連系されている場合でもよい。
【0017】
そして、配電用変電所1は、図1に示すように、変電所変圧器11および遮断器(CB:Circuit Breaker)12を有する。変電所変圧器11は、配電線路の上流にある送電用変電所から送られてきた高電圧の電力を低電圧の電力に変圧し、配電線2を介して変圧後の電力を需要家に供給する。また、遮断器12は、配電線2のメンテナンスまたは配電線路における故障が発生した場合などに変電所変圧器11からの電力供給を断つために用いられる。具体的には、遮断器12は、通常、投入状態にあり、電力供給停止時に解放される。
【0018】
さらに、配電用変電所1内には、PQ計測装置15および調整装置16が設置される。PQ計測装置15は、配電線2上の電流を計測する電流センサ13および配電線2上の電圧を計測する電圧センサ14それぞれの計測結果それぞれから、配電線2における有効電力(P)と無効電力(Q)とを計測する装置である。
【0019】
調整装置16は、配電線2上にある遮断器12の需要家側において無効電力の調整を行なう装置である。例えば、実施例1に係る調整装置16は、図1に示すように、C1〜C3の3つのコンデンサが並列に接続された装置であり、C1〜C3それぞれに対応するスイッチ(S1〜S3)をON/OFFすることで、容量性の無効電力を調整する装置である。
【0020】
そして、実施例1に係る電力供給システムにおいては、分散電源4が配電系統に連系される場合に発生する可能性のある単独運転を回避するため、例えば、図1に示すように、配電用変電所1内に単独運転回避装置17が設置される。以下、図2などを用いて単独運転回避装置17の処理について詳細に説明する。図2は、実施例1に係る単独運転回避装置の構成を説明するための図である。
【0021】
図2に示すように、単独運転回避装置17は、入力部17a、調整装置制御部17b、出力部17cおよび制御動作切り替え部17dを有する。
【0022】
入力部17aは、電力供給システムの管理者の指示情報や、遮断器12、電圧センサ14およびPQ計測装置15から出力される各種情報を受け付け、受け付けた各種情報を、調整装置制御部17bおよび制御動作切り替え部17dに転送する。具体的には、入力部17aは、PQ計測装置15が計測した配電線2における有効電力および無効電力の計測値を調整装置16から受信して、受信した有効電力および無効電力の計測値を調整装置制御部17bに転送する。
【0023】
また、入力部17aは、遮断器12が投入状態であるか解放状態であるかの情報を遮断器12から受信し、受信した遮断器12の状態情報を制御動作切り替え部17dに転送する。また、入力部17aは、配電線2における遮断器12の解放時および投入時の電圧を電圧センサ14から受信し、受信した電圧を制御動作切り替え部17dに転送する。
【0024】
調整装置制御部17bは、単独運転が回避されるように、調整装置16による容量性の無効電力の調整量(キャパシタンス)を制御する。まず、調整装置制御部17bの制御処理のため、範囲1および範囲1を含む範囲2が設定される。具体的には、範囲1は、単独運転が発生する有効電力と無効電力との値により定められる単独運転発生範囲と一致する範囲である。より具体的には、範囲1(単独運転発生範囲)は、有効電力と無効電力との値が当該範囲内に滞在すると、遮断器12を解放して配電線2への電力供給を停止しても、分散電源4が負荷に電力を供給し続けるため配電線2の電圧が維持され単独運転が発生する可能性のある範囲のことである。図3は、調整装置制御部の処理に用いられる範囲1および範囲2の一例を説明するための図である。
【0025】
図3に示す一例では、範囲1は、円形として簡略化して示されている。また、図3に示す一例では、範囲2は、円形の範囲1を含む同心円として設定されている。すなわち、図3に示す一例では、配電線2における有効電力(P)と無効電力(Q)とが、円形の範囲1内にある場合、遮断器12を解放しても、単独運転が発生する可能性があると判定される。また、範囲2は、円形の範囲1を含む同心円として設定されている。なお、範囲1の設定法については、後に詳述する。
【0026】
かかる範囲1および範囲2が設定された状態において、図2に示す調整装置制御部17bは、PQ計測装置15により計測された配電線2における有効電力および無効電力が範囲1内となった場合に、当該計測された無効電力が範囲1外となるように調整装置16による調整量を制御する。また、調整装置制御部17bは、PQ計測装置15により計測された配電線2における有効電力および無効電力が、範囲2外となった場合に、当該計測された無効電力が範囲2内となるように調整装置16による調整量(キャパシタンス)を制御する。
【0027】
具体的には、調整装置制御部17bは、計測された有効電力および無効電力が範囲1内となった場合に、容量性の無効電力が増加するように調整装置16を制御する。また、調整装置制御部17bは、計測された有効電力および無効電力が範囲1外となった場合、あるいは、計測された有効電力および無効電力が範囲2外となった場合に、容量性の無効電力が減少するように調整装置16を制御する。
【0028】
より具体的には、調整装置制御部17bは、有効電力および無効電力の値が、「範囲1外にあり、かつ、範囲2内にある」となるように、調整装置16による無効電力の調整量(増減量)を決定する。そして、図2に示す出力部17cは、調整装置制御部17bが決定した調整量に基づく制御信号を、調整装置16に送信し、制御信号を出力部17cから受信した調整装置16は、スイッチS1〜S3のON/OFFの動作制御を行なう。
【0029】
ここで、調整装置16による容量性の無効電力の調整量は、例えば、図4に示すスイッチS1〜S3の投入パターンにより定められる。図4は、調整装置による容量性の無効電力の調整量の一例を説明するための図である。
【0030】
図4に示す一例では、スイッチS1〜S3の投入パターン(CN)は、「0〜7」の8パターンに分類される。まず、「CN:0」は、スイッチS1〜S3がすべて解放(OFF)された状態であり、無効電力の調整なしの状態(以下、CMINと記載する場合あり)を示す。また、「CN:1」は、スイッチS1のみ投入(ON)された状態であり、「CN:2」は、スイッチS2のみ投入された状態であり、「CN:3」は、スイッチS3のみ投入された状態である。
【0031】
また、「CN:4」は、スイッチS1およびスイッチS2が投入された状態であり、「CN:5」は、スイッチS1およびスイッチS3が投入された状態であり、「CN:6」は、スイッチS2およびスイッチS3が投入された状態である。また、「CN:7」は、スイッチS1〜S3がすべて投入された状態であり、調整装置16による容量性の無効電力が最大限に増加される状態(以下、CMAXと記載する場合あり)を示す。
【0032】
ここで、図1および2に示す調整装置16のコンデンサC1〜C3の容量は、「C1<C2<C3」となっており、調整装置16による容量性の無効電力の増加量は、「CN:0」から「CN:7」に投入パターンが変化するにしたがい増大する。
【0033】
すなわち、調整装置16による無効電力の増減値は、コンデンサC1〜C3の容量の総和により制限された値となる。したがって、調整装置制御部17bは、無効電力の調整を所定の調整量の範囲内で実行することとなる。なお、調整装置16による無効電力の増減量は、調整装置16におけるコンデンサの数および各コンデンサの容量を調整することで、電力供給システムの管理者により任意に設定することができる。
【0034】
範囲1および範囲2の設定情報と、調整装置16による容量性の無効電力の調整量との情報を用いて、調整装置制御部17bは、上記した無効電力の調整を調整装置16において実行させる。以下、調整装置制御部17bが実行する処理内容について、図5を用いて詳細に説明する。図5は、実施例1に係る調整装置制御部の処理を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図5に示すように、実施例1に係る単独運転回避装置17は、遮断器12が投入された状態にて単独運転回避開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、単独運転回避開始要求を受け付けていない場合(ステップS101否定)、単独運転回避装置17は、待機状態となる。
【0036】
一方、単独運転回避開始要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、調整装置制御部17bは、「CN=CMIN」とする制御信号を、出力部17cを介して調整装置16に出力し(ステップS102)、PQ計測装置15から配電線2における有効電力および無効電力の状態を取得する(ステップS103)。
【0037】
そして、調整装置制御部17bは、PQ計測装置15から取得した有効電力および無効電力の値が、範囲1内にあるか否かを判定する(ステップS104)。ここで、範囲1内にある場合(ステップS104肯定)、調整装置制御部17bは、調整装置16のスイッチ投入パターン(CN)がCMAXより小さいか否かを判定する(ステップS105)。「CN<CMAX」である場合(ステップS105肯定)、調整装置制御部17bは、投入パターンを1増加させて「CN=CN+1」と設定し(ステップS106)、ステップS106にて設定したCNの制御信号を、出力部17cを介して調整装置16に出力する(ステップS110)。その後、調整装置制御部17bは、ステップS103に戻って、配電線2における有効電力および無効電力の状態取得を行なう。
【0038】
一方、「CN<CMAX」でない場合(ステップS105否定)、「CN=CMAX」であり、無効電力の増加調整不可であることから、調整装置制御部17bは、ステップS103に戻って、配電線2における有効電力および無効電力の状態取得を行なう。
【0039】
また、PQ計測装置15から取得した有効電力および無効電力の値が、範囲1内にない場合(ステップS104否定)、調整装置制御部17bは、有効電力および無効電力の値が、範囲2内にあるか否かを判定する(ステップS107)。ここで、範囲2内にある場合(ステップS107肯定)、調整装置制御部17bは、ステップS103に戻って、配電線2における有効電力および無効電力の状態取得を行なう。
【0040】
一方、PQ計測装置15から取得した有効電力および無効電力の値が、範囲2内にない場合(ステップS107否定)、調整装置制御部17bは、調整装置16のスイッチ投入パターン(CN)がCMINより大きいか否かを判定し(ステップS108)、「CN>CMIN」である場合(ステップS108肯定)、投入パターンを1減少させて「CN=CN−1」と設定し(ステップS109)、ステップS109にて設定したCNの制御信号を、出力部17cを介して調整装置16に出力する(ステップS110)。その後、調整装置制御部17bは、ステップS103に戻って、配電線2における有効電力および無効電力の状態取得を行なう。
【0041】
一方、「CN>CMIN」でない場合(ステップS108否定)、「CN=CMIN」であり、無効電力の減少調整不可であることから、調整装置制御部17bは、ステップS103に戻って、配電線2における有効電力および無効電力の状態取得を行なう。
【0042】
以上が、調整装置制御部17bの制御処理の制御フローとなる。ここで、図5に示す制御フローをまとめると、調整装置制御部17bは、有効電力と無効電力との値が範囲1の内側にあり、かつ、「CN<CMAX」の場合、CNを1増加させて、無効電力の増加調整を調整装置16に実行させる。また、調整装置制御部17bは、有効電力と無効電力との値が範囲1の外側にあり、かつ、範囲2の内側にある場合、調整制御処理を行なわない。また、調整装置制御部17bは、範囲1の外側にある有効電力と無効電力との値がさらに範囲2の外側にあり、かつ、「CN>CMIN」の場合、CNを1減少させて、無効電力の減少調整を調整装置16に実行させる。
【0043】
なお、調整装置制御部17bは、有効電力と無効電力との値が範囲1の内側にあり、かつ、「CN=CMAX」である場合、配電系統において無効電力を不用意に増加させないために、調整制御処理を行なわない。また、調整装置制御部17bは、有効電力と無効電力との値が範囲2の外側にあり、かつ、「CN=CMIN」である場合、配電系統において無効電力を不用意に減少させないために、調整制御処理を行なわない。
【0044】
上記したような制御フローを行なうことで、配電線2における有効電力および無効電力の値は、常に範囲1外となり、遮断器12が、如何なる時点で解放されたとしても、単独運転の発生を回避することが可能となる。また、範囲1とともに範囲2を設定することで、無効電力の増加または減少を開始させる範囲に幅を設けることができ、範囲1の境界近傍における無効電力の増加または減少の不要な動作を減少することが可能となる。これにより、例えば、本実施例1のように、無効電力の増加または減少をスイッチ動作制御で行う場合、スイッチの動作回数を減少でき、スイッチの寿命が長くなる。
【0045】
図6は、電力供給システムに単独運転回避装置を設置しない場合の有効電力および無効電力の状態を説明するための図であり、図7は、電力供給システムに単独運転回避装置を設置した場合の有効電力および無効電力の状態を説明するための図である。具体的には、図6は、単独運転回避装置17を設置しない状態で、分散電源4である太陽光発電が多数配電線2に連系された場合の有効電力(P)と無効電力(Q)との計測値をプロットしたものである。また、図7は、単独運転回避装置17を設置した状態で、分散電源4である太陽光発電が多数配電線2に連系された場合の有効電力(P)と無効電力(Q)との計測値をプロットしたものである。
【0046】
電力供給システムに単独運転回避装置を設置しない場合、図6に示すように、範囲1の内部に(P,Q)が存在しており、遮断器12が解放された時点で単独運転が発生する可能性があることがわかる。一方、図7に示すように、電力供給システムに単独運転回避装置17が設置されると、範囲1の内部に存在していた(P,Q)は、範囲1の外側に移動することとなり、範囲1の内部に(P,Q)が存在しないため、遮断器12が解放されても、単独運転は回避される。
【0047】
ここで、改めて、範囲1の設定法について、図8〜図11を用いて説明する。図8〜図11は、範囲1の設定法を説明するための図である。
【0048】
本実施例1においては、範囲1は、上述したように、単独運転発生範囲として設定される。具体的には、単独運転発生範囲は、配電線2に同一種類の分散電源4が複数連系される場合、図8に示すように、当該同一種類の分散電源単体の定格容量で規格化された範囲である「分散電源の単独運転発生範囲」に、「配電線2に連系する分散電源総容量」を乗じることで定められる範囲を用いて、配電線2の容量内に決定される。
【0049】
また、単独運転発生範囲は、配電線2に異なる種類の分散電源4が複数連系される場合、図9に示すように、各種類の分散電源単体の定格容量で規格化された各単独運転発生範囲の和集合により定まる範囲から決定される。すなわち、単独運転発生範囲は、和集合により定まる範囲に、配電線2に連系している分散電源総容量を乗じることで定められる範囲を用いて決定される。
【0050】
このように、単独運転発生範囲は、配電線2に複数の分散電源4が連系される場合でも、分散電源4の種類、各種分散電源4それぞれの単独運転発生範囲および各種分散電源4の総容量により設定される。
【0051】
かかる方法により設定される単独運転発生範囲は、図3に示すような円で簡略化されて表されることは困難である。そこで、本実施例1では、単独運転発生範囲の近似処理が行なわれる。具体的には、単独運転発生範囲は、図10に示すように、多角形として近似設定される。これにより、複雑な形状となる単独運転範囲を、直線で囲まれる範囲として設定することができ、その結果、調整装置制御部17bは、計測された(P,Q)の位置が範囲1外にあるか否かを容易に判定することが可能となる。
【0052】
さらに、単独運転発生範囲は、図11に示すように、三角形の和集合として表された多角形として近似設定される場合であってもよい。これにより、多角形に近似された単独運転発生範囲を、さらに、直線で囲まれる複数の三角形により分割することができ、その結果、調整装置制御部17bは、(P,Q)の位置が範囲1外にあるか否かの判定処理を、各三角形を用いてさらに容易に行なうことが可能となる。
【0053】
図2に戻って、制御動作切り替え部17dは、遮断器12の解放時に、配電線2の無電圧を確認後、調整装置16に対する制御動作を停止するように調整装置制御部17bを制御する。そして、制御動作切り替え部17dは、遮断器12の再投入時に、配電線2の電圧が所定の電圧となったことを確認後、調整装置16に対する制御動作を再開するように調整装置制御部17bを制御する。以下、制御動作切り替え部17dの処理について、図12を用いて説明する。図12は、制御動作切り替え部の処理を説明するためのフローチャートである。
【0054】
図12に示すように、制御動作切り替え部17dは、入力部17aが受け付けた情報から、遮断器12が解放されたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、遮断器12が解放されない場合(ステップS201否定)、制御動作切り替え部17dは、待機状態となり、図5を用いて説明した調整装置制御部17bの制御フローが継続される。
【0055】
一方、遮断器12が解放された場合(ステップS201否定)、制御動作切り替え部17dは、調整装置制御部17bの制御フローを停止するように制御する(ステップS202)。そして、制御動作切り替え部17dは、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS203)。ここで、所定の時間が経過していない場合(ステップS203否定)、制御動作切り替え部17dは、待機状態となる。
【0056】
一方、所定の時間が経過した場合(ステップS203肯定)、制御動作切り替え部17dは、電圧センサ14が計測した配電線2における電圧値を入力部17aから受信し、受信した電圧値を参照して、配電線2が無電圧であるか否かを判定する(ステップS204)。ここで、配電線2が無電圧状態でない場合(ステップS204否定)、制御動作切り替え部17dは、再度、ステップS203の判定処理を行なう。
【0057】
一方、配電線2が無電圧状態である場合(ステップS204肯定)、制御動作切り替え部17dは、出力部17cからの制御信号の出力を停止するように制御する(ステップ205)。これにより、調整装置制御部17bによる調整装置16の無効電力調整制御が完全に停止されることとなる。すなわち、無電圧になってからS1〜S3がすべてOFFとなり、調整装置16の無効電力調整制御が停止する。
【0058】
その後、制御動作切り替え部17dは、入力部17aが受け付けた情報から、遮断器12が投入されたか否かを判定する(ステップS206)。ここで、遮断器12が投入されない場合(ステップS206否定)、制御動作切り替え部17dは、待機状態となる。
【0059】
一方、遮断器12が投入された場合(ステップS206肯定)、制御動作切り替え部17dは、電圧センサ14が計測した配電線2における電圧値を入力部17aから受信し、受信した電圧値を参照して、配電線2が所定の電圧となったか否かを判定する(ステップS207)。ここで、配電線2が所定の電圧となっていない場合(ステップS207否定)、制御動作切り替え部17dは、ステップS207の判定処理を継続する。
【0060】
一方、配電線2が所定の電圧となった場合(ステップS207肯定)、制御動作切り替え部17dは、図5に示す制御フロー、すなわち、図5に示すステップS103の処理が再開されるように制御する。
【0061】
上述したように、実施例1によれば、調整装置制御部17bは、PQ計測装置15により計測された配電線2の有効電力および無効電力が範囲1内となった場合に、当該計測された無効電力が範囲1外となるように、配電線2上にある遮断器12の需要家側において無効電力の調整を行なう調整装置16による調整量を制御する。すなわち、実施例1によれば、範囲1を配電線に連系している分散電源4と負荷3がバランスして単独運転が発生する範囲とすることで、配電線2の有効電力と無効電力が範囲1外に保たれ、分散電源4の出力電力と負荷3の消費電力がバランスすることが無くなる。その結果、実施例1によれば、分散電源が配電系統に連系される場合に発生する可能性のある単独運転を回避することが可能となる。
【0062】
また、実施例1によれば、調整装置制御部17bは、配電線2にて計測された有効電力および無効電力が、範囲1が含まれる範囲2外となった場合に、当該計測された無効電力が範囲2内となるように、調整装置16による無効電力の調整量を制御する。すなわち、実施例1によれば、範囲1とともに範囲2を設定することで、無効電力の増加または減少を開始させる範囲に幅を設けることができ、範囲1の境界近傍における無効電力の増加または減少の不要な動作を減少することが可能となる。これにより、例えば、実施例1のように、無効電力の増加または減少をスイッチ動作制御で行う場合、スイッチの動作回数を減少でき、スイッチの寿命が長くなる。
【0063】
また、実施例1によれば、調整装置16が容量性の無効電力の調整を行なう場合、調整装置制御部17bは、計測された有効電力および無効電力が範囲1内となった場合に、容量性の無効電力が増加するように調整装置16を制御する。また、実施例1によれば、調整装置制御部17bは、計測された有効電力および無効電力が範囲1外となった場合、あるいは、配電線にて計測された有効電力および無効電力が範囲2外となった場合に、容量性の無効電力が減少するように調整装置16を制御する。したがって、実施例1によれば、コンデンサを用いた簡易な構成からなる調整装置16を用いることで、単独運転の回避を低コストで実現することが可能となる。
【0064】
また、実施例1によれば、調整装置制御部17bは、調整装置16における無効電力の調整が所定の調整量の範囲内で実行されるように制御する。したがって、実施例1によれは、無効電力の増加量および減少量に制限を持たせることができ、配電系統の運用において適切な無効電力の発生量を設定することが可能となる。
【0065】
また、実施例1によれば、範囲1は、配電線2において単独運転が発生する有効電力と無効電力との値により定められる単独運転発生範囲と一致する範囲であることから、確実に単独運転を回避することが可能となる。
【0066】
また、実施例1によれば、範囲1(単独運転発生範囲)は、配電線2に同一種類の分散電源が複数連系される場合、当該同一種類の分散電源単体の定格容量で規格化された範囲に、当該配電線に連系している分散電源総容量を乗じることで定められる範囲を用いて決定されるので,分散電源単体の単独運転発生範囲から配電線2の単独運転発生範囲を正確に設定することが可能となる。
【0067】
また、実施例1によれば、範囲1(単独運転発生範囲)は、配電線2に異なる種類の分散電源が複数連系される場合、各種類の分散電源単体の定格容量で規格化された各単独運転発生範囲の和集合により定まる範囲に、当該配電線に連系している分散電源総容量を乗じることで定められる範囲を用いて決定されるので、複数種類の分散電源4が配電線2に連系する場合でも単独運転発生範囲を正確に設定することが可能となる。
【0068】
また、実施例1によれば、範囲1(単独運転発生範囲)は、多角形に近似されるので、複雑な形状の配電線2の単独運転発生範囲を、直線で囲まれる範囲として設定することができ、その結果、調整装置制御部17bは、計測された(P,Q)の位置が範囲1外にあるか否かを容易に判定することが可能となる。
【0069】
また、実施例1によれば、範囲1(単独運転発生範囲)は、三角形の和集合として表された多角形に近似されるので、多角形に近似された単独運転発生範囲を、さらに、直線で囲まれる複数の三角形により分割することができ、その結果、調整装置制御部17bは、(P,Q)の位置が範囲1外にあるか否かの判定処理を、各三角形を用いてさらに容易に行なうことが可能となる。
【0070】
また、実施例1によれば、制御動作切り替え部17dの指示にしたがって、調整装置制御部17bは、遮断器12の解放時に、配電線2の無電圧を確認後、調整装置16に対する制御動作を停止し、遮断器12の再投入時に、配電線2の電圧が所定の電圧となったことを確認後、調整装置16に対する制御動作を再開する。したがって、実施例1によれば、遮断器12の解放時に、配電線2の無電圧を確認後、制御を停止することで、単独運転の回避状態が維持される一方、遮断器12の投入時に、配電線2の電圧が回復されたことを確認後、制御を再開することで、単独運転の回避状態を継続することができ、その結果、遮断器12の解放中に調整装置16が不要な動作をすることを回避することが可能となる。
【実施例2】
【0071】
上記の実施例1では、調整装置16に対する調整量制御が遮断器12の状態に関わらず実行される場合について説明したが、実施例2では、調整装置16に対する調整量制御が遮断器12の解放時に実行される場合について説明する。
【0072】
実施例2に係る単独運転回避装置17は、図2を用いて説明した実施例1に係る単独運転回避装置と同様の構成からなるが、調整装置制御部17bの制御処理の内容が実施例1と異なる。以下、これを中心に説明する。
【0073】
実施例2に係る調整装置制御部17bは、制御動作切り替え部17dからの指示にしたがって、遮断器12が投入状態にある場合に、PQ計測装置15により順次計測された有効電力および無効電力に基づいて、調整装置16を制御するための調整量を順次算出する。そして、実施例2に係る調整装置制御部17bは、制御動作切り替え部17dからの指示にしたがって、遮断器12の解放直後に、遮断器12の解放直前に算出した調整量により調整装置16を制御する。
【0074】
かかる処理の詳細について、図13を用いて説明する。図13は、実施例2に係る調整装置制御部の処理を説明するためのフローチャートである。
【0075】
図13に示すように、実施例2に係る単独運転回避装置17は、遮断器12が投入された状態にて単独運転回避開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS301)。ここで、単独運転回避開始要求を受け付けていない場合(ステップS301否定)、単独運転回避装置17は、待機状態となる。
【0076】
一方、単独運転回避開始要求を受け付けた場合(ステップS301肯定)、調整装置制御部17bは、「CN=CMIN」とする制御信号を、出力部17cを介して調整装置16に出力し(ステップS302)、PQ計測装置15から配電線2における有効電力および無効電力の状態を取得する(ステップS303)。
【0077】
そして、調整装置制御部17bは、PQ計測装置15から取得した有効電力および無効電力の状態量に、後述するステップS311にて算出した調整量を加算する(ステップS304)。
【0078】
その後、調整装置制御部17bは、ステップS304にて算出した加算結果が範囲1内にあるか否かを判定する(ステップS305)。ここで、範囲1内にある場合(ステップS305肯定)、調整装置制御部17bは、調整装置16のスイッチ投入パターン(CN)がCMAXより小さいか否かを判定し(ステップS306)、「CN<CMAX」である場合(ステップS306肯定)、投入パターンを1増加させて「CN=CN+1」と設定し(ステップS307)、ステップS307にて設定したCNに基づく調整量を算出する(ステップS311)。
【0079】
そして、調整装置制御部17bは、遮断器12が解放されたか否かを判定し(ステップS312)、遮断器12が解放されていない場合(ステップS312否定)、ステップS302に戻って、配電線2における有効電力および無効電力の状態取得を行なう。
【0080】
一方、遮断器12が解放された場合(ステップS312肯定)、調整装置制御部17bは、ステップS312にて算出した調整量に基づく制御信号を出力部17cから調整装置16に対して出力させ(ステップS313)、処理を終了する。
【0081】
また、ステップS304にて算出した加算結果が範囲1内にない場合(ステップS305否定)、調整装置制御部17bは、加算結果が範囲2内にあるか否かを判定する(ステップS308)。ここで、範囲2内にある場合(ステップS308肯定)、調整装置制御部17bは、ステップS312の判定処理を行なう。
【0082】
一方、ステップS304にて算出した加算結果が範囲2内にない場合(ステップS308否定)、調整装置制御部17bは、調整装置16のスイッチ投入パターン(CN)がCMINより大きいか否かを判定し(ステップS309)、「CN>CMIN」である場合(ステップS309肯定)、投入パターンを1減少させて「CN=CN−1」と設定し(ステップS310)、ステップS310にて設定したCNに基づく調整量を算出する(ステップS311)。そして、調整装置制御部17bは、ステップS312の判定処理を行なう。
【0083】
一方、「CN>CMIN」でない場合(ステップS309否定)、調整装置制御部17bは、ステップS312の判定処理を行なう。
【0084】
上述したように実施例2によれば、遮断器12が解放された直後に調整装置16を動作させるため、遮断器12が解放される前の常時の運用において無効電力と有効電力を任意の量とできるので、単独運転回避装置17の導入において、遮断器12を通過する無効電力と有効電力に制約を与えることなく配電線2を運用できる。すなわち、実施例2によれば、無効電力の調整が配電線2の運用上問題となる場合でも、単独運転を回避することが可能となる。
【0085】
なお、上記した実施例1および2では、調整装置16が容量性の無効電力を調整する装置である場合について説明したが、本発明は、調整装置16がリアクトルにより誘導性の無効電力を調整する装置である場合であっても適用可能である。かかる場合、調整装置制御部17bは、単独運転が回避されるように、調整装置16による誘導性の無効電力の調整量(インダクタンス)を制御する。具体的には、調整装置制御部17bは、計測された有効電力および無効電力が範囲1内となった場合に、誘導性の無効電力が増加するように調整装置16を制御する。また、調整装置制御部17bは、計測された有効電力および無効電力が範囲1外となった場合、あるいは、計測された有効電力および無効電力が範囲2外となった場合に、誘導性の無効電力が減少するように調整装置16を制御する。
【0086】
また、上記した実施例1および2では、単独運転発生範囲が範囲1として設定される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、単独運転発生範囲を含む範囲が範囲1として設定される場合であってもよい。具体的には、本発明は、範囲1を単独運転発生範囲より広く設定する場合であってもよい。単独運転発生範囲を含む範囲が範囲1として設定されることで、例えば、急激な分散電源4の出力変化に対しても、確実に対応して単独運転の発生を回避できる。
【0087】
また、上記した実施例1および2では、調整装置16が無効電力の調整を行なう装置である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、調整装置16が有効電力の調整を行なう装置、例えば、バッテリなどの充電装置である場合であってもよい。かかる場合、調整装置制御部17bは、調整装置16の充電および放電を制御する。すなわち、調整装置制御部17bは、調整装置16の充放電を制御する制御信号を出力部17cから出力することで、有効電力の増減量を調整して有効電力および無効電力の値が範囲1外となるように制御する。
【0088】
また、上記した実施例1および2では、配電用変電所1内において、調整装置16が遮断器12の需要家側に設置される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、調整装置制御部17bの制御対象となる調整装置16は、需要家に設置された有効電力または無効電力を調整する装置、または、配電線2に設置された有効電力または無効電力を調整する装置である場合であってもよい。具体的には、調整装置16は、需要家に設置された力率改善用コンデンサであったり、負荷3の有効電力または無効電力を調整する装置であったり、分散電源4の有効電力または無効電力を調整する装置であったり、配電線2に連系される電気自動車の有効電力または無効電力を調整する装置であったりする場合であってもよい。
【0089】
さらに、調整装置16は、配電線2に設置されているコンデンサや、リアクトルや、静止形無効電力補償装置(SVC)や、自励式無効電力補償装置(STATCOM)や、ループコントローラ(LPC)などである場合であってもよい。かかる装置を調整装置制御部17bの制御対象となる調整装置16として代用することで、新たな設備を配電用変電所1に導入することなく調整量制御処理を行えるので、単独運転を回避できる電力供給システムの構築を、より低コストで実現することが可能となる。
【0090】
また、上記した実施例1および2では、PQ計測装置15が単独運転回避装置17と独立に設置される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、PQ計測装置15が単独運転回避装置17に組み込まれる場合であってもよい。
【0091】
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0092】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0093】
なお、本実施例で説明した単独運転回避方法は、あらかじめ用意された単独運転回避プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明に係る単独運転回避装置、単独運転回避方法および単独運転回避プログラムは、分散電源が配電系統に連系される場合に有用であり、特に、分散電源が配電系統に連系される場合に発生する可能性のある単独運転を回避することに適する。
【符号の説明】
【0095】
1 配電用変電所
11 変電所変圧器
12 遮断器
13 電流センサ
14 電圧センサ
15 PQ計測装置
16 調整装置
17 単独運転回避装置
17a 入力部
17b 調整装置制御部
17c 出力部
17d 制御動作切り替え部
2 配電線
3 負荷
4 分散電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電用変電所から需要家に電力を供給する配電線にて計測された有効電力および無効電力が所定の範囲内となった場合に、当該計測された有効電力または無効電力が前記所定の範囲外となるように、前記配電線上にある遮断器の需要家側において有効電力または無効電力の調整を行なう調整装置による調整量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする単独運転回避装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記配電線にて計測された有効電力および無効電力が前記所定の範囲が含まれる第2の所定の範囲外となった場合に、当該計測された有効電力または無効電力が前記第2の所定の範囲内となるように、前記調整装置による有効電力または無効電力の調整量を制御することを特徴とする請求項1に記載の単独運転回避装置。
【請求項3】
前記調整装置が容量性の無効電力の調整を行なう場合であって、
前記制御手段は、前記配電線にて計測された有効電力および無効電力が前記所定の範囲内となった場合に、容量性の無効電力が増加するように前記調整装置を制御し、前記配電線にて計測された有効電力および無効電力が前記所定の範囲外となった場合に、容量性の無効電力が減少するように前記調整装置を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の単独運転回避装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記配電線にて計測された有効電力および無効電力が前記第2の所定の範囲外となった場合に、容量性の無効電力が減少するように前記調整装置を制御することを特徴とする請求項3に記載の単独運転回避装置。
【請求項5】
前記調整装置が誘導性の無効電力の調整を行なう場合であって、
前記制御手段は、前記配電線にて計測された有効電力および無効電力が前記所定の範囲内となった場合に、誘導性の無効電力が増加するように前記調整装置を制御し、前記配電線にて計測された有効電力および無効電力が前記所定の範囲外となった場合に、誘導性の無効電力が減少するように前記調整装置を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の単独運転回避装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記配電線にて計測された有効電力および無効電力が前記第2の所定の範囲外となった場合に、誘導性の無効電力が減少するように前記調整装置を制御することを特徴とする請求項5に記載の単独運転回避装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記調整装置における無効電力の調整が所定の調整量の範囲内で実行されるように制御することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載の単独運転回避装置。
【請求項8】
前記所定の範囲は、単独運転が発生する有効電力と無効電力との値により定められる単独運転発生範囲と一致する範囲、または、当該単独運転発生範囲を含む範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の単独運転回避装置。
【請求項9】
前記単独運転発生範囲は、前記配電線に同一種類の分散電源が複数連系される場合、当該同一種類の分散電源単体の定格容量で規格化された範囲に、当該配電線に連系している分散電源総容量を乗じることで定められる範囲を用いて決定されることを特徴とする請求項8に記載の単独運転回避装置。
【請求項10】
前記単独運転発生範囲は、前記配電線に異なる種類の分散電源が複数連系される場合、各種類の分散電源単体の定格容量で規格化された各単独運転発生範囲の和集合により定まる範囲に、当該配電線に連系している分散電源総容量を乗じることで定められる範囲を用いて決定されることを特徴とする請求項8または9に記載の単独運転回避装置。
【請求項11】
前記所定の範囲は、多角形であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一つに記載の単独運転回避装置。
【請求項12】
前記所定の範囲は、三角形の和集合として表された多角形であることを特徴とする請求項11に記載の単独運転回避装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記配電用変電所に設置された有効電力または無効電力を調整する調整装置、または、前記需要家に設置された有効電力または無効電力を調整する調整装置、または、前記配電線に設置された有効電力または無効電力を調整する調整装置を制御することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の単独運転回避装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記遮断器の解放時に、前記配電線の無電圧を確認後、前記調整装置に対する制御動作を停止し、前記遮断器の再投入時に、前記配電線の電圧が所定の電圧となったことを確認後、前記調整装置に対する制御動作を再開することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の単独運転回避装置。
【請求項15】
前記制御手段は、前記遮断器が投入状態にある場合に、前記配電線にて順次計測された有効電力および無効電力に基づいて、前記調整装置を制御するための調整量を順次算出し、前記遮断器の解放直後に、前記遮断器の解放直前に算出した調整量により前記調整装置を制御することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の単独運転回避装置。
【請求項16】
配電用変電所から需要家に電力を供給する配電線にて計測された有効電力および無効電力が所定の範囲内となった場合に、当該計測された有効電力または無効電力が前記所定の範囲外となるように、前記配電線上にある遮断器の需要家側において有効電力または無効電力の調整を行なう調整装置による調整量を制御する制御ステップを含んだことを特徴とする単独運転回避方法。
【請求項17】
配電用変電所から需要家に電力を供給する配電線にて計測された有効電力および無効電力が所定の範囲内となった場合に、当該計測された有効電力または無効電力が前記所定の範囲外となるように、前記配電線上にある遮断器の需要家側において有効電力または無効電力の調整を行なう調整装置による調整量を制御する制御手順をコンピュータに実行させることを特徴とする単独運転回避プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−205742(P2011−205742A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68500(P2010−68500)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】