説明

単胞リポソームの製造方法、単胞リポソームの分散液とその乾燥粉末及びそれらの製造方法

【課題】リポソーム粒径の均一性を向上させた単胞リポソームの製造方法、ならびに当該単胞リポソームの製造方法を用いる単胞リポソーム分散液またはその乾燥粉末の製造方法およびそれにより製造される単胞リポソーム分散液またはその粉末を提供する。
【解決手段】二段階乳化法を用いて製造する単胞リポソームの製造方法において、W1/O/W2エマルション形成後に、添加剤を添加することを特徴とする単胞リポソームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、食品などの分野で用いられるリポソームの製造方法、リポソーム分散液またはその乾燥粉末、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームとは、リン脂質を主成分とする脂質二重膜からなる閉鎖小胞体である。細胞膜と類似の構造および機能を有するため免疫系を刺激しにくく、素材としての安全性が高い。また、水溶性の薬剤類を脂質二重膜で囲まれる内部の水相に、脂溶性の薬剤類を二重膜の膜間に保持することができ、本来不安定で失活しやすい薬効成分を安定的に内包させることが可能である。例えば、リポソームはDDS(ドラック・デリバリー・システム)用の医薬品など、各種の用途において注目され研究開発が進められている。
【0003】
これまでにリポソームの製造方法は数多く提案されてきたが、医薬品として承認されうるリポソームを製造できる、コスト的・工業的に優れた汎用的な技術は少ない。水溶性の薬剤類はリポソームの内水相に含ませることができるが、一般的には良いとされている方法でも内包率(リポソーム懸濁液に含まれる薬剤類の総質量、換言すれば製造原料として用いた薬剤類の総質量に対する、リポソームに内包された薬物類の質量の割合)は20%程度であり、これよりも内包率の高い製造方法は再現性が悪く、工業的に適さない(たとえば逆相蒸発法)。このため、水溶性の薬剤類(たとえば核酸医薬やタンパク質)を効率的に内包させ内包率を高く保つことができ、しかもナノサイズ(好ましくは静脈注射に適する200nm以下)の平均粒径を有するリポソームを製造できる方法が望まれている。
【0004】
なお、日本国内では「ビジュダイン(VISUDYNE)」(登録商標)、「アムビゾーム(AmBisome)」(登録商標)および「ドキシル(DOXIL)」(登録商標)の3種類のリポソーム製剤が市販されている。しかしながら、ビジュダインおよびアムビゾームは、リポソームに内包させやすい疎水性の薬剤を内包するものである。また、ドキシルは、リポソーム形成後に外水相に薬剤を添加し、内外濃度差を利用して薬剤をリポソームに内包するリモートローディング法と呼ばれる方法により、80%以上の高い内包率を達成している。しかし、この方法は、初期は水溶性であるが内水相内で塩を形成することができ、かつリポソームの脂質膜を通過することのできる特殊な低分子水溶性薬剤でなければ用いることはできない。
【0005】
一方、2段階乳化法により、W/Oエマルションを分散相とし、トリス塩酸緩衝液を外水相としてマイクロチャネル乳化法によりW/O/Wエマルションを作製する際に、その外水相にカゼインナトリウムを乳化剤として配合することにより、リポソーム(脂質カプセル)へのカルセインの内包率を90%程度に高めることができ、該リポソームが単胞リポソームであったことが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/110116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、カルセインの内包率が90%程度と高い値を示しているが、各々のリポソームの粒径にバラつきがあった。単分散W/Oエマルションの均一性を表す指標として粒度分布がありCV値(%)として記載されるが、リポソームの単分散性(粒度分布)に関する記載はない。特許文献1には、該W/OエマルションのCV値が33%以上であることが記載されているが、例えば、CV値が33%であるW/Oエマルションを用いてリポソームを製造した場合でも、論理的にはCV値が33%のリポソームに変換されると考えられるが実際に得られるリポソームのCV値は50%を超えることが予測され、実用化するリポソーム粒径の均一性として十分なものではなかった。
【0008】
本発明は、リポソーム粒径の均一性を向上させた単胞リポソームの製造方法、ならびに当該単胞リポソームの製造方法を用いる単胞リポソーム分散液またはその乾燥粉末の製造方法およびそれにより製造される単胞リポソーム分散液またはその粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、二段階乳化法により単胞リポソームを製造する際にW/O/Wエマルション製造後に「添加剤」を添加することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、
(1)
二段階乳化法を用いて製造する単胞リポソームの製造方法において、W1/O/W2エマルション形成後に、添加剤を添加することを特徴とする単胞リポソームの製造方法。
【0011】
(2)
前記添加剤は、乳化する機能を有する物質であることを特徴とする(1)に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0012】
(3)
前記添加剤は、タンパク質、多糖類、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤の少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0013】
(4)
前記添加剤は、ゼラチン、アルブミン、デキストランまたはポリアルキレンオキサイド系化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0014】
(5)
前記添加剤を添加した後に、溶媒を除去することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0015】
(6)
前記W1/O/W2エマルション形成後、前記添加剤を添加する前に、溶媒を除去することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0016】
(7)
前記添加剤の添加後に、撹拌を行うことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0017】
(8)
前記添加剤は、W2の質量に対して0.2〜0.5%の質量比で添加することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0018】
(9)
前記二段階乳化法の二次乳化工程として撹拌乳化法を用いることを特徴とする(1)〜(8)にいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0019】
(10)
前記二段階乳化法の二次乳化工程としてSPG膜を用いた膜乳化を用いることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0020】
(11)
前記単胞リポソームに内包されるべき物質として、医療用の薬剤類を用いることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【0021】
(12)
(1)〜(11)のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法を用いて製造することを特徴とする単胞リポソーム分散液の製造方法。
【0022】
(13)
(12)に記載の単胞リポソーム分散液の製造方法により造られたことを特徴とする単胞リポソーム分散液。
【0023】
(14)
ゼラチン、アルブミン、デキストランまたはポリアルキレンオキサイド系化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする(13)に記載の単胞リポソーム分散液。
【0024】
(15)
(13)または(14)に記載の単胞リポソーム分散液を用いて造られたことを特徴とする単胞リポソームの乾燥粉末。
【0025】
本発明は、上記いずれかの製造方法および、当該製造方法により製造された単胞リポソーム分散液またはその乾燥粉末を提供する。
【0026】
なお、本発明において、「単胞リポソーム」(ULV、単核リポソームと同義である)は、単一の内水相を有するリポソーム構造物を指し、通常は体積平均粒径の範囲が約20〜500nmである。これに対して、「多胞リポソーム」(MVL: multivesicular liposomes)は、複数の非同心円状の内水相を包囲する脂質膜を含んでなるリポソーム構造物を指す。また「多重膜リポソーム」(MLV)は、複数の「タマネギの皮」のような同心円状の膜を有し、その間に殻様の同心円状の水系コンパートメントがあるリポソーム構造物を指す。多胞リポソームおよび多重膜リポソームの特徴は、体積平均粒径がマイクロメーターの範囲であり、通常は0.5〜25μmである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の単胞リポソームの製造方法によれば、リポソーム粒径の均一性を向上させた単胞リポソームならびに単胞リポソーム分散液またはその乾燥粉末が製造できるようになり、さらにそれにより製造される単胞リポソーム分散液またはその粉末を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のリポソームの製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明の製造方法の一態様におけるリポソーム形成のイメージ図である。例えば、リン脂質1、薬剤(カルセイン色素)2、有機溶媒(ヘキサン)3および内水相(水)4を用いた一次乳化工程(step1)によりW/Oエマルション(a)を調製し、外水相5を用いた二次乳化工程(step2)により、W/O/Wエマルション(b)が得られ、液中乾燥(溶媒除去)工程(step3)を経て、単胞リポソーム(c)が形成されるが、本発明の製造方法では、前記二次乳化工程後、および/または前記液中乾燥(溶媒除去)工程後に添加剤を添加することを特徴とする。
−製造原料−
・混合脂質成分(F1)・(F2)
一次乳化工程で後述する有機溶媒(O)に添加する混合脂質成分(F1)は主としてリポソームの脂質二重膜の内膜を構成し、場合によっては外膜の構成にも寄与する。一方、必要に応じて二次乳化工程で添加する混合脂質成分(F2)は主としてリポソームの外膜を構成する。混合脂質成分(F1)および(F2)は、同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。
【0030】
これらの混合脂質成分の配合組成は特に限定されるものではなく、公知のリポソームの配合組成に準じたものとすることができる。一般的には、リン脂質(動植物由来のレシチン;ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸またはそれらの脂肪酸エステルであるグリセロリン脂質;スフィンゴリン脂質;これらの誘導体等)と、脂質膜の安定化に寄与するステロール類(コレステロール、フィトステロール、エルゴステロール、これらの誘導体等)とを中心に構成され、さらに糖脂質、グリコール、脂肪族アミン、長鎖脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等)、その他各種の機能性を賦与する化合物が配合されていてもよい。また、F2には、例えばPEG化リン脂質のような、リポソーム表面を修飾して各種の機能性を付与するための脂質を配合することも可能である。これらの化合物の混合脂質成分中の配合比も、脂質膜の安定性やリポソームの生体内での挙動などの性状を考慮しながら、用途に応じて適切に調整すればよい。
【0031】
・水性溶媒(W1)・(W2)、有機溶媒(O)
水性溶媒(W1)および(W2)ならびに有機溶媒(O)は、公知のリポソームの製造方法でも用いられるような、一般的なものを用いることができる。一次乳化工程で用いられる水性溶媒(W1)および有機溶媒(O)は、それぞれW1/Oエマルションの水相および油相をなし、(W1)は、W1/O/W2エマルションの内水相、二次乳化工程で用いられる水性溶媒(W2)は、W1/O/W2エマルションの外水相をなす。水性溶媒としては、たとえば純水に必要に応じて水と混合する他の溶媒、浸透圧調整のための塩類・糖類、pH調整のための緩衝液などを配合したものが挙げられる。有機溶媒としては、たとえばヘキサン(n−ヘキサン)やクロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2−ジメトキシエタン、1,1,2−トリクロロエテン、t−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ペンタンなどの非水溶性有機溶媒が挙げられる。また、アセトニトリル、メタノール、アセトン、エタノール、2−プロパノールなどの水溶性有機溶媒や、上記以外のエーテル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化エーテル、エステル類が挙げられる。なかでもクロロホルム、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ヘキサン、t−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ペンタン、アセトニトリル、メタノール、アセトン、エタノール、2−プロパノールなどが好ましい。溶媒除去工程を考慮すると有機溶媒は揮発性の化合物が好ましく、水よりも沸点の低い溶媒が好ましい。これらの溶媒は、いずれか1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。例えば、得られるナノサイズのW1/Oエマルションの単分散性が良好なものとなることから、ヘキサンを主成分(50体積%以上)とする有機溶媒、好ましくはヘキサンが60体積%以上である有機溶媒である。
【0032】
・内包させる物質
本発明において、リポソームに内包させる物質(薬剤類と総称する)は特に限定されるものではなく、リポソームの用途に応じて医薬品、化粧品、食品などの分野で知られている各種の物質を用いることができる。
【0033】
薬剤類のうち医療用のリポソームなどに用いられるものとしては、たとえば、造影剤(X線造影用の非イオン性ヨード化合物、MRI造影用のガドリニウムとキレート化剤とからなる錯体等)、抗がん剤(アドリアマイシン、ビラルビシン、ビンクリスチン、タキソール、シスプラチン、マイトマイシン、5−フルオロウラシル、イリノテカン、エストラサイト、エピルビシン、カルボプラチン、イントロン、ジェムザール、メソトレキセート、シタラビン、アイソボリン、テガフール、シスプラチン、エトポシド、トポテシン、ビラルビシン、ネダプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド、テスパミン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバチン、エノシタビン、フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、ダウノマイシン、アクラルビシン、イビルビシン、アムルビシン、アクチノマイシン、タキソテール、トラスツブマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブ、レンチナン、シゾフィラン、インターフェロン、インターロイキン、アスパラギナーゼ、ホスフェストロール、ブスルファン、ボルテゾミブ、アリムタ、ベバシズマブ、ネララビン、セツキシマブ等)、抗菌剤(マクロライド系抗生物質、ケトライド系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、オキサセフェム系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、ベータラクタマーゼ配合剤、アミノグリコシド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、ホスホマイシン系抗生物質、カルバペネム系抗生物質、ペネム系抗生物質)、MRSA・VRE・PRSP感染症治療剤、ポリエン系抗真菌剤、ピリミジン系抗真菌剤、アゾール系抗真菌剤、キャンディン系抗真菌剤、ニューキノロン系合成抗菌剤、抗酸化性剤、抗炎症剤、血行促進剤、美白剤、肌荒れ防止剤、老化防止剤、発毛促進性剤、保湿剤、ホルモン剤、ビタミン類、核酸(DNAもしくはRNAのセンス鎖もしくはアンチセンス鎖、プラスミド、ベクター、mRNA、siRNA等)、タンパク質(酵素、抗体、ペプチド等)、ワクチン製剤(破傷風などのトキソイドを抗原とするもの;ジフテリア、日本脳炎、ポリオ、風疹、おたふくかぜ、肝炎などのウイルスを抗原とするもの;DNAまたはRNAワクチン等)などの薬理的作用を有する物質や、色素・蛍光色素、キレート化剤、安定化剤、保存剤などの製薬助剤が挙げられる。
【0034】
薬剤類を内包させるという目的は、二段階乳化法においては、薬剤類を水性溶媒(W1)に溶解することによって達成される。したがって水溶性の高い薬剤類は、水性溶媒(W1)に高濃度で溶解すれば、内包される絶対量は増やすことができる。
【0035】
一方、水性溶媒(W1)の量は適宜変えることができ、所定の粒径の粒子(W1/O)を作製する場合には、それに必要な脂質の量(個数)は計算できる。たとえば、100nmのW1/Oエマルション(粒子体積0.0005μm)を作製する場合、水性溶媒(W1)1.0mlを用いれば2.0×1015個のW1/O粒子が作製できる計算である。そして、100nmのW1/Oエマルション(粒子表面積2500nm)はリン脂質分子(レシチン表面積0.7nm)0.4×10個で構成されている、と計算される。したがって、水性溶媒(W1)1.0mlの1次乳化に必要な脂質量は、2.0×1015個×0.4×10個=0.8×1020、すなわち0.132mmolである。レシチン以外の脂質分子も、その表面積はおおよそ0.7nmとして差し支えないため、脂質類の総量として0.132mmolが100nmのW1/Oエマルションを作製するのに必要最少量と計算される。リポソームを作製するには、その倍の0.264mmolが必要であり、代表的なリン脂質のDPPCで分子量換算すると193mgが必要である。
【0036】
そこで、薬剤類を水性溶媒(W1)1.0mlに溶解し、100nmのリポソームを作製する場合を考えると、薬局法記載の通りシタラビンは0.1〜1.0g溶解するので、薬剤質量比0.1g/0.193g〜1.0g/0.193g、イオヘキソール(造影剤)は1.0g以上溶解するので、薬剤質量比1.0g/0.193g以上である。これは、脂質量を低減して効率的に薬剤類を内包できることを意味し、脂質の投与量を減らすことができる点、臨床上有意義であり、二段階乳化法により薬剤質量比0.5〜5が達成できる。さらに、より多くの薬剤類を溶解すると、一般的に飽和状態に近づき粘度が上昇する。二段階乳化法により、内水相の粘度として10mPa・sまで内包可能である。
【0037】
また、100nmより大きい粒子を製造する場合には、脂質の必要量はそれより少なくて済むので、より効率的ということになる。
・リポソームおよびその懸濁液
本発明の単胞リポソームは、典型的には以下に説明するような本発明の製造方法により、水性溶媒(W2:外水相)に懸濁した状態で得られる。このようなリポソームの懸濁液が各種の用途に供されるが、使用されるまでの間、たとえば凍結乾燥法などにより粉末状態のリポソームとして保存することもできる。使用の際には、粉末状態のリポソームを水性溶媒に添加し、再度懸濁させればよい。
【0038】
本発明の単胞リポソームのサイズは特に限定されるものではないが、たとえば、体積平均粒子径が50〜1,000nmとなるよう調整することができる。好ましくは70〜300nmに調整することであり、文献:Biochim,Biophys.Acta.1190,99−107(1994)3.6項には、様々な粒径のリポソームを担癌マウスに投与した場合、150〜200nmでは血中濃度は維持されており薬の効果が期待できるが、300nmより大きいあるいは70nmより小さいでは血中濃度が維持されない結果が示されている。そして、特に体積平均粒子径が50〜200nmのリポソームは、毛細血管を閉塞するおそれがほとんどなく、またがん組織近辺の血管にできる間隙を通過することもできるため、医薬品等として人体に投与して使用する上で好都合であるので特に好ましい。
【0039】
なお、本発明における、単胞リポソームおよびエマルションの体積平均粒径は、動的光散乱法により測定されるものであり、例えば、W1/Oエマルションをクロロホルム/ヘキサン混合溶媒(体積比:4/6)で10倍に希釈し、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(UPA−EX150、日機装株式会社)を用いて粒度分布や体積平均粒径を算出することができる。
−リポソームの製造方法−
本発明のリポソームの製造方法は、下記工程(1)〜(3)を有し、必要に応じてその他の工程を適宜組み合わせることができるものである。以下、図面を参照しながら各工程について説明する。
【0040】
(1)一次乳化工程
一次乳化工程は、有機溶媒(O)、水性溶媒(W1)、および混合脂質成分(F1)を乳化することにより、W1/Oエマルションを調製する工程である(図1(a)参照)。
【0041】
W1/Oエマルションを調製するための方法は、従来のリポソームの製造方法でも用いられているような方法を採用することができる。例えば、超音波乳化機、撹拌乳化機、膜乳化機、高圧ホモジナイザーなどの装置を用いた乳化方法が挙げられるが、平均粒径を広い範囲で制御でき、かつ得られるW1/Oエマルションが単分散であることが好ましい。
【0042】
水性溶媒(W1)のpHは、通常3〜10の範囲で調整され、たとえば、混合脂質成分にオレイン酸を用いる場合、pHは6〜8.5とすることが好ましい。pHを調整するためには適切な緩衝液を用いれば良い。
【0043】
一次乳化工程におけるその他の条件、例えば、混合脂質成分(F1)の量(有機溶媒(O)に対する割合)、有機溶媒(O)と水性溶媒(W1)の体積比、W1/Oエマルションの平均粒径などは、公知のリポソームの製造方法(一次乳化工程)に準じて、続く二次乳化工程の条件や最終的に調製するリポソームの態様などを考慮しながら、適宜調節することができる。通常、混合脂質成分(F1)の量は有機溶媒(O)に対して1〜50質量%の割合であり、有機溶媒(O)と水性溶媒(W1)の体積比は100:1〜1:2である。W1/Oエマルションの体積平均粒径は、好ましくは50〜1,000nmであり、より好ましくは50〜200nmである。
【0044】
本発明では、リポソームに薬剤類を内包させるために、(i)一次乳化工程の際に薬剤類を添加し、水性溶媒(W1)に薬剤類を溶解させ、二次乳化工程終了時点でそれを内包するリポソームが得られるようにする方法、(ii)薬剤類を内包しない(空の)リポソームを得た後に、そのリポソームが分散している水性溶媒またはそのリポソームの凍結乾燥物を再分散させた水性溶媒に薬剤類を添加し、撹拌するなどして、リポソームにそれを取り込ませる方法、いずれを用いることもできる。本発明の製造方法では、上記(i)の方法を用いた場合であっても内包率が比較的高く、効率的にリポソームに薬剤類を内包させることができる。
【0045】
なお、必要であれば脂溶性の物質(脂溶性薬剤類)を、本発明の単胞リポソームの脂質膜内に内包させることも可能である。その場合は、上述した水溶性薬剤類についてと同じように、脂溶性薬剤類を、上記(i)のように一次乳化工程の際に添加して有機溶媒(O)に溶解させておくか、上記(ii)のように〜のリポソームを得た後に添加するようにすればよい。
【0046】
(2)二次乳化工程
二次乳化工程は、上記工程(1)により得られたW1/Oエマルションを用いて、W1/O/W2エマルションを形成する工程である(図1(b)参照)。
【0047】
W1/O/W2エマルションを調製するための方法は特に限定されるものではなく、膜乳化法(SPG膜を用いた乳化法など)、マイクロチャネル乳化法、撹拌乳化法、液滴法、接触法などが挙げられるが、従来のW1/O/W2エマルションの製造方法でも用いられているような方法を採用することができる。
【0048】
マイクロチャネル乳化法およびSPG膜を用いた膜乳化法に関しては他の乳化法と比べて均一性を有する粒径のW1/O/W2エマルションを調製できる点に特徴があり、さらに、乳化処理に機械的剪断力を必要としないため、乳化操作時の液滴の崩壊および液滴からの内包物質の漏出を抑えることができる観点から好適である。
【0049】
マイクロチャネル乳化法では、たとえば、シリコン製マイクロチャネル基板およびこの基板上部を覆うガラス板(b)から構成される、マイクロチャネル乳化装置モジュールを使用する。上記基板およびガラス板により形成される溝型マイクロチャネルの出口側、あるいは上記基板上に加工された貫通型マイクロチャネルの出口側には、外水相をなす水性溶媒(W2)を満たしておき、マイクロチャネルの入口側からW1/Oエマルションを圧入することで、W1/O/W2エマルションを形成できる。上記基板としては、デッドエンド型、クロスフロー型、貫通孔型など、種々の形態のものを用いることができる。
【0050】
また、W1/Oエマルションを乳化膜を通過させて水性溶媒(W2)中に液滴として分散させることによりW1/O/W2エマルションを調製する、膜乳化法を用いることもできる。特に、直径0.1〜5.0μm程度の微細な細孔を有するSPG(Shirasu Porous Glass:シラス多孔質ガラス)で形成された乳化膜を用いる膜乳化法が好適であり、コストが安く処理量が多い、工業的に有利な方法とすることができる。
【0051】
なお、W1/O/W2エマルションの平均粒径の単分散性を向上させるために、上記のような方法または他の方法による膜乳化でW1/O/W2エマルションを得た後、さらに1回ないし複数回、当該膜乳化で用いた膜と同じ膜またはそれとは異なる膜にW1/O/W2エマルションによる膜処理を行ってもよい。特に、膜乳化に用いる膜よりも小さな細孔径を有する膜を用いて膜処理を行うようにした場合、膜処理を行うことなく1回の膜乳化でW1/O/W2エマルションを調製する場合に較べて、膜乳化および膜処理それぞれの膜への負荷(エマルションを膜に通過させるために必要な圧力)を小さくすることができ、それにより膜の長寿命化や二次乳化工程に要する処理時間の短縮を図ることができ、リポソームの生産性の向上および低コスト化にも有利である。
【0052】
さらに、機械的剪断力の生じる可能性のある撹拌乳化においても、W1/O/W2エマルションを得ることができる。
【0053】
撹拌乳化については二液以上の流体を混合するために用いられる方法・装置を用いることができる。たとえば攪拌装置にはいろいろな形状の物が存在する。単に棒・板・プロペラ状の攪拌子を槽内で一定速度・一方向に回転させるものが多いが、攪拌子を間欠回転させたり逆回転させる場合もある。特殊な状況では複数の攪拌子を並べ交互に逆回転させたり、槽側に攪拌子と組合された突起あるいは板を取り付けて攪拌子が発生するせん断応力を増強させるなどの様々な工夫がなされる。攪拌子への動力伝達方法も様々であり、回転軸を介して攪拌子を回転させるものが殆どであるが、磁石を封入しテフロン(登録商標)等でコーティングした攪拌子を容器の外部から回転する磁界で動力を伝達するマグネチックスターラーも存在する。
【0054】
さらに、小型観賞用水槽のエアレーション装置や工業用スプレードライ装置等、粘度の低い流体では攪拌子を使わずに、槽の流体や外気を槽外に設置したポンプで加圧して槽内にいきよい良く吹き込むことで槽内を攪拌する装置も存在する。また、ミルと呼ばれる粉砕機としてハンマーミル、ピンミル、オングミル、コボルミル、アスペックミル、ボールミル、ジェットミル、ロールミル、コロイドミル、ディスパーミルなどがあるが、これらは、圧縮力・圧搾力・膨張力・せん断力・衝撃力・キャビテーション力などの機械的な力の作用により流体を混合するものである。さらに、こうした機械的な方法以外にも、電気的な撹拌方法を使用することもできる。
【0055】
二次乳化工程におけるその他の条件、例えば、W1/Oエマルションと水性溶媒(W2)の体積比、W1/O/W2エマルションの平均粒径などは、公知のリポソームの製造方法(二次乳化工程)に準じて、最終的に調製するリポソームの用途などを考慮しながら適宜調節することができる。
【0056】
さらに、二次乳化工程では、水性溶媒(W2)およびW1/Oエマルションに必要に応じて混合脂質成分(F2)や混合脂質成分(F2)の一部としてないしこれに代えて、混合脂質成分(F1)からなるリポソーム脂質膜を破壊しない水溶性乳化機能を有する後述する添加剤を添加してもよい。界面化学の分野では多くの添加剤が知られており、代表的には、タンパク質、多糖類および非イオン性界面活性剤などが、水溶性の乳化機能を有する添加剤として乳化・分散プロセスに用いられている。タンパク質としてはカゼインナトリウム、多糖類としてはデキストラン、非イオン性界面活性剤としてはポリアルキレングリコール誘導体が例示できる。たとえば、混合脂質成分(F1)にホスファチジルコリンを配合する場合、ゼラチンのようなタンパク質添加剤はそのような添加剤として好ましい。
【0057】
上記のようにして混合脂質成分(F2)および/または後述の添加剤を用いる場合の各種の条件、例えば、それらの量や、水性溶媒(W2)およびW1/Oエマルションとの混合態様(添加順序等)は特に限定されるものではなく、公知のリポソームの製造方法に準じて、適切なものとすればよい。例えば、F2が主として水溶性脂質からなる場合、あらかじめそのようなF2および/または添加剤をW2に添加しておき、それにW1/Oエマルションを添加して乳化処理を行うことができる。一方、F2が主として脂溶性脂質からなる場合、あらかじめ(W1/Oエマルション調製後)そのようなF2をW1/Oエマルションの油相に添加しておき、それを、必要に応じて添加剤が添加されているW2に添加して乳化処理を行うことができる。
【0058】
添加剤添加工程
本発明の製造方法では、W1/O/W2エマルション形成後に添加剤を添加することを特徴としている。W1/O/W2エマルション形成後に添加剤を添加することにより、最終的に製造される単胞リポソーム粒径の均一性が向上する。具体的には、後述するリポソームの単分散性のCV値が30%以下である単胞リポソームである。
【0059】
添加剤の添加は粉末で添加するあるいはW2と同じ組成の水溶液にこれを溶解して添加することができ、その添加タイミングはW1/O/W2エマルション形成後であれば、いずれの段階でもよいが、例えば、(i)W1/O/W2エマルション形成後であり溶媒除去工程前の段階で添加する、(ii)溶媒除去工程の後の段階で添加する、(iii)上記(i)および上記(ii)の両方の段階で添加する、を挙げることができる。(ii)の場合、添加剤を添加した後に、撹拌を行うとリポソーム粒径の均一性が早く向上するので好ましい。すなわち、リポソーム体積平均粒径値がW1/Oエマルションの体積平均粒径値の近傍に早く収束する。
【0060】
本発明における添加剤としては、乳化する機能を有するものであり、代表的には、タンパク質、多糖類、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、添加剤としての所定の機能を有するその他の物質を用いてもよい。なお、添加剤がこれまでに医薬品等における添加物として認可されている(体内に投与しても人体に重大な影響を及ぼさないことが保証されている)物質であれば、濾過工程によっても一部がリポソーム分散液中に残存したとしても臨床上実質的な問題はない。
【0061】
上記タンパク質としては、ゼラチン(コラーゲンを加熱により変性させた可溶性のタンパク質)、アルブミンやトリプシンなどが挙げられる。ゼラチンは通常、数千〜数百万の分子量分布を有するが、たとえば重量平均分子量が1,000〜100,000であるものが好ましい。医療用ないし食品用として市販されているゼラチンを用いることができる。アルブミンには、卵アルブミン(分子量約45,000)、血清アルブミン(分子量約66,000…ウシ血清アルブミン)、乳アルブミン(分子量約14,000…α−ラクトアルブミン)などが含まれ、たとえば卵アルブミンである乾燥脱糖卵白が好ましい。
【0062】
上記多糖類としては、デキストラン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、マルトトリオース、アミロース、プルラン、ヘパリン、デキストリンなどが挙げられ、たとえば重量平均分子量が1,000〜100,000のデキストランが好ましい。
【0063】
上記イオン性界面活性剤としては、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0064】
上記非イオン性界面活性剤は、水中で解離しない水酸基やエーテル結合などを親水基として持っている界面活性剤であり、オクチルグルコシド等のアルキルグリコシド、ポリアルキレンオキサイド系の化合物が知られている。ポリアルキレンオキサイド系の化合物は、大きくポリアルキレングリコール系と、多価アルコール系の二つに分類され、前者の代表例としては、たとえば「プルロニック F−68」(BASF、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600)の製品や、重量平均分子量が1000〜100000のポリエチレングリコール類などが挙げられる。ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体として開発されたプルロニック型非イオン性界面活性剤にはその重合度により多くの種類が存在し、プルロニックと総称されている。ポリエチレングリコール(PEG)類は、製品として「ユニルーブ」(日油株式会社)、GL4−400NP、GL4−800NP(日油株式会社)、PEG200,000(和光純薬)、マクロゴール(三洋化成工業株式会社)などが挙げられる。後者の代表例としては「Tween 80」(東京化成工業株式会社,ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート,分子量1309.68)があげられる。これは前者と同じポリアルキレングリコール系化合物にグリセリンやソリビタンと言った水酸基を有する化合物を反応して得られた界面活性剤である。こちらもその重合度により多くの種類が知られている。
【0065】
W1/O/W2エマルション形成後の添加剤の添加量(添加剤の濃度)は、種類に応じて適切な範囲で調整すればよいが、好ましくはW1/O/W2エマルション形成後に0.01〜4%の濃度で添加することである。より好ましくは0.02〜3%の濃度で添加することであり、特に好ましくは0.02〜0.1%の濃度である。添加剤の量がW2の質量に比較しこれらの範囲であるとリポソーム粒径の均一性がより向上する。すなわちCV値が低くなる。
【0066】
リポソームと添加剤を濾過工程により分離することを考慮すれば、特定分散剤の自己による分子集合体ないしそれらの集合物の体積平均粒径はリポソームの体積平均粒径の1/10以下が好ましく、1/100以下がより好ましい。
【0067】
添加剤の分子量は、小さすぎると脂質膜中に混入しやすくなってリポソームの形成を阻害するおそれがあり、逆に大きすぎると界面への配向の速度が遅れてリポソームの合一や多胞リポソームの形成につながるおそれがある。そのため、添加剤の重量平均分子量は1,000〜100,000の範囲内にあることが好ましい。また、この範囲の重量平均分子量であると、リポソームの薬剤類の内包率が良い。
【0068】
(3)溶媒除去工程
溶媒除去工程は、前記二次乳化工程により得られたW1/O/W2エマルションに含まれる有機溶媒相(O)を除去し、リポソームを形成させる工程である(図1(c)参照)。すなわち、W1/O/W2エマルションを回収し、開放容器内に移し静置あるいは撹拌することで、W1/O/W2エマルションに含まれる有機溶媒(O)を蒸発除去することができる。これにより、混合脂質膜成分(F1(および必要に応じて添加される(F2))からなる脂質膜を内水相の周囲に形成し、リポソームを得ることができる。
【0069】
上記のような方法によるW1/O/W2エマルションから溶媒を除去は、定法に従い、必要に応じて加温、減圧、撹拌を用いながら行えばよい。有機溶媒(O)の種類に応じて、それらの有機溶媒が突沸することのない条件が設定される。温度条件は0〜60℃の範囲が好ましく、0〜25℃がより好ましい。また、減圧条件は溶媒の飽和蒸気圧〜大気圧の範囲内に設定されることが好ましく、溶媒の飽和蒸気圧の+1%〜10%の範囲内に設定されることがより好ましい。異なる溶媒を混合して用いる場合、より飽和蒸気圧の高い溶媒種に合わせた条件が好ましい。これらの除去条件は、溶媒が突沸しない範囲で組み合わせてもよく、例えば、熱に弱い薬剤を使用する際は、より低温側でかつ減圧条件で溶媒を溜去することが好ましい。溶媒除去にはW1/O/W2エマルションの撹拌が無くともよいが、撹拌をしたほうがより均一に溶媒除去が進む。
【0070】
なお、本発明の製造方法により得られるリポソームには、製法の工程上、W1/O/W2エマルション由来の多胞リポソームがある程度の割合含まれることがあるが、これを減じるために、撹拌、減圧、またはそれらに組み合わせを行うことが効果的である。例えば、溶媒の大半が抜ける時間より長く減圧および撹拌を行うことにより、リポソームを構成する脂質の水和が進み、内包物の漏出を起こさないまま、多胞リポソームが解けて単胞のリポソーム状態にばらけることが可能である。また、本発明の製造方法で副生する、あるいは残存する多胞リポソームはその内部がW1/O由来の50〜200nm程度の水滴を多く含む構造であるので、W1/Oの粒子径よりもわずかに大きな孔径のフィルターを通過させることで、50〜200nm程度の単胞リポソームへ変換することも可能である。このような操作をしても残った多胞リポソームがある場合には、フィルターにより除去することが可能である。
【0071】
その他の工程
リポソームの分散液を凍結乾燥などにより乾燥粉末化し、使用するまでの間の保管に適した形態にすることも望ましい。凍結乾燥は従来のリポソームを製造する場合と同様の手段や装置を用いて行うことができる。たとえば、間接加熱凍結方法、冷媒直膨方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、重複冷凍方法などに従い、適切な条件下(温度:−120〜−20℃、圧力:1〜15Pa、時間:16〜26時間など)で凍結乾燥を行えばよい。このようにして得られた凍結乾燥物を水中に投入すれば、再びリポソームの分散液を調製することができる。
【0072】
単分散性、平均粒径の測定方法
本発明において、単分散性(粒度分布)とは、粒径の標準偏差/平均粒径をいい、下記の測定方法で測定した値(CV値)をいう。具体的には次式により求められる値である。平均粒径は体積平均粒径のことである。
【0073】
CV値(%)=(標準偏差/平均粒径)×100
【実施例】
【0074】
次に、実施例として代表的な実施態様を示し、本発明をさらに説明する。
【0075】
実施例1
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは体積平均粒径約220nmの単分散W/Oエマルションであることが確認された。
【0076】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0077】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)であるトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L(リットル))を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0078】
(添加剤の添加)
W1/O/W2エマルション製造後、添加剤として精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)(W2の質量に対する質量比0.5%となるように添加)を、W1/O/W2エマルションに添加した。
【0079】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0080】
実施例2
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)1.08g、コレステロール(Chol)0.547gおよびオレイン酸(OA)0.389gを含むヘキサン54mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)18mlを内水相用の水分散相(W1)とした。150mlの容器にこれらの混合液を入れ、直径25mmのプローブをセットしたホモミキサー(ULTRA TURRAX T25 basic、IKA社)により、25℃にて24000rpmで10分間、プレ分散処理を行った。その後、このプレ分散液を、卓上湿式微粒化装置NV−200−D(吉田機械株式会社)を用いて、150MPaで10パス処理した。
【0081】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0082】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)であるトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0083】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られた。
【0084】
(添加剤の添加)
得られたリポソーム粒子の懸濁液に、添加剤として精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)(W2の質量に対する質量比0.5%となるように添加)を添加し、添加剤添加後のリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0085】
実施例3
実施例1において、添加剤を精製ゼラチンからプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.02%となるように添加)に変更した以外は同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0086】
実施例4
実施例2において、添加剤を精製ゼラチンからプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.02%となるように添加)に変更した以外は同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0087】
実施例5
実施例3において、二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造を、SPG膜を用いた膜乳化から撹拌乳化法に変更した以外は、実施例3と同様にして、製造を実施した。すなわち、撹拌乳化は、スターラーによりW2を強く撹拌しているところに、上記W1/Oエマルションを供給し、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0088】
実施例6
実施例4において、二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造を、SPG膜を用いた膜乳化から撹拌乳化法に変更した以外は、実施例4と同様にして、製造を実施した。すなわち、撹拌乳化は、スターラーによりW2を強く撹拌しているところに、上記W1/Oエマルションを供給し、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0089】
実施例7
実施例5において、一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造を、以下のように変更した以外は、実施例5と同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはシタラビンが含まれていることが確認された。
【0090】
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)「COATSOME MC−6060」(日油株式会社)1.5g、およびジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)「COATSOME MG−6060LA」(日油株式会社)0.25gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、シタラビン(80mM))を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。
【0091】
実施例8
実施例6において、一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造を、以下のように変更し、添加剤の添加後にスターラーにより撹拌を行った以外は、実施例6と同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはシタラビンが含まれていることが確認された。なお、添加剤の添加後に撹拌を行ったことから、実施例6に比較しリポソーム粒径の均一性がより早く向上した。
【0092】
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)「COATSOME MC−6060」(日油株式会社)5.4g、およびジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)「COATSOME MG−6060LA」(日油株式会社)0.9gを含むヘキサン54mlを有機溶媒相(O)とし、シタラビン(80mM))を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)18mlを内水相用の水分散相(W1)とした。150mlの容器にこれらの混合液を入れ、直径25mmのプローブをセットしたホモミキサー(ULTRA TURRAX T25 basic、IKA社)により、25℃にて24000rpmで10分間、プレ分散処理を行った。その後、このプレ分散液を、卓上湿式微粒化装置NV−200−D(吉田機械株式会社)を用いて、150MPaで10パス処理した。
【0093】
実施例9
実施例1において、添加剤を精製ゼラチンからカルボキシデキストラン(W2の質量に対する質量比0.5%となるように添加)に変更した以外は実施例1と同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0094】
実施例10
実施例2において、添加剤を精製ゼラチンから「Tween 80」(東京化成工業株式会社,ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート,分子量1309.68)(W2の質量に対する質量比0.2%となるように添加)に変更した以外は実施例2と同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0095】
実施例11
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。
【0096】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0097】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)であるトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0098】
(添加剤の添加)
W1/O/W2エマルション製造後、添加剤として精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)(W2の質量に対する質量比0.5%となるように添加)を、W1/O/W2エマルションに添加した。
【0099】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られた。
【0100】
(添加剤の添加)
得られたリポソーム粒子の懸濁液に、添加剤としてプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.02%となるように添加)を添加し、添加剤添加後のリポソーム粒子の懸濁液を得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0101】
実施例12
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。
【0102】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造、添加剤の添加含む)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0103】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)である精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)(W2の質量に対する質量比3%となるように添加)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0104】
(添加剤の添加)
W1/O/W2エマルション製造後、添加剤として精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)(W2の質量に対する質量比0.5%となるように添加)を、W1/O/W2エマルションに添加した。
【0105】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0106】
実施例13
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)1.08g、コレステロール(Chol)0.547gおよびオレイン酸(OA)0.389gを含むヘキサン54mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)18mlを内水相用の水分散相(W1)とした。150mlの容器にこれらの混合液を入れ、直径25mmのプローブをセットしたホモミキサー(ULTRA TURRAX T25 basic、IKA社)により、25℃にて24000rpmで10分間、プレ分散処理を行った。その後、このプレ分散液を、卓上湿式微粒化装置NV−200−D(吉田機械株式会社)を用いて、150MPaで10パス処理した。
【0107】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0108】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)である精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)(W2の質量に対する質量比3%となるように添加)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0109】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られた。
【0110】
(添加剤の添加)
得られたリポソーム粒子の懸濁液に、添加剤として精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)(W2の質量に対する質量比0.5%となるように添加)を添加し、添加剤添加後のリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0111】
実施例14
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。
【0112】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0113】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)であるプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.1%となるように添加)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0114】
(添加剤の添加)
W1/O/W2エマルション製造後、添加剤としてプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.02%となるように添加)を、W1/O/W2エマルションに添加した。
【0115】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られた。
【0116】
(添加剤の添加)
得られたリポソーム粒子の懸濁液に、添加剤としてプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.02%となるように添加)を添加し、添加剤添加後のリポソーム粒子の懸濁液を得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0117】
実施例15
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。
【0118】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0119】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)である「Tween 80」(東京化成工業株式会社,ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート,分子量1309.68)(W2の質量に対する質量比0.2%となるように添加)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0120】
(添加剤の添加)
W1/O/W2エマルション製造後、添加剤としてカルボキシデキストラン(W2の質量に対する質量比0.5%となるように添加)を、W1/O/W2エマルションに添加した。
【0121】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られた。
【0122】
(添加剤の添加)
得られたリポソーム粒子の懸濁液に、添加剤としてプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.02%となるように添加)を添加し、添加剤添加後のリポソーム粒子の懸濁液を得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0123】
比較例1
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。
【0124】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造、添加剤の添加含む)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0125】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)である精製ゼラチン(株式会社ニッピ,ニッピ ハイグレードゼラチンタイプAP)(W2の質量に対する質量比3%となるように添加)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0126】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0127】
比較例2
比較例1において、一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造を、以下のように変更し、W1/O/W2生成前に添加する添加剤を精製ゼラチンからプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.1%となるように添加)に変更し、ならびに二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造をSPG膜を用いた膜乳化から撹拌乳化法に変更した以外は、比較例1と同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはシタラビンが含まれていることが確認された。
【0128】
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)「COATSOME MC−6060」(日油株式会社)1.5g、およびジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)「COATSOME MG−6060LA」(日油株式会社)0.25gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、シタラビン(80mM))を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。
【0129】
比較例3
比較例1において、W1/O/W2生成前に添加する添加剤を精製ゼラチンからプルロニックF−68(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、数平均分子量9600、登録商標、非イオン界面活性剤プロノン(#188P,日油株式会社))(W2の質量に対する質量比0.1%となるように添加)に変更した以外は比較例1と同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0130】
比較例4
比較例3において、二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造を、SPG膜を用いた膜乳化から撹拌乳化法に変更した以外は、比較例3と同様にして、製造を実施した。すなわち、撹拌乳化は、スターラーによりW2を強く撹拌しているところに、上記W1/Oエマルションを供給し、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0131】
比較例5
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC−50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mlを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mlを内水相用の水分散相(W1)とした。50mlのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。
【0132】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、SPG膜乳化装置(SPGテクノ社製、商品名「外圧式マイクロキット」)を使用して、SPG膜を用いた膜乳化によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0133】
上記モジュールに直径10mm、長さ20mm、細孔径2.0μmの円筒形SPG膜を用い、装置出口側に外水相溶液(W2)であるトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、装置入口側から上記W1/Oエマルションを供給して、W1:W2が1:40となるようにW1/O/W2エマルションを製造した。膜乳化に必要とした圧力は約25kPaであった。
【0134】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0135】
比較例6
比較例5において、二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造を、SPG膜を用いた膜乳化から撹拌乳化法に変更した以外は、比較例5と同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0136】
比較例7
比較例6において、内包する薬剤をカルセイン(0.4mM)からシタラビン(80mM)に変更した以外は、比較例6と同様にして、製造を実施した。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはシタラビンが含まれていることが確認された。
【0137】
上記実施例および比較例で得られたリポソームの、カルセインまたはシタラビンの内包率を、下記の方法に従って測定した。また、上記実施例により得られたリポソームの単分散性及び平均粒径を下記の方法によって測定した。結果は表1に示す通りであった。
【0138】
(カルセインの内包率の測定方法)
リポソーム水溶液(3ml)全体の蛍光強度(Ftotal)を分光光度計(U−3310、日本分光株式会社)により測定した。次に0.01M,CoClトリス塩酸緩衝液30μLを加えて外水相に漏出したカルセインの蛍光をCo2+により消光することで、ベシクル内の蛍光強度(Fin)を測定した。さらに、カルセインを加えないでサンプルと同じ条件でベシクルを作製し、脂質自身が発する蛍光(F)を測定した。内包率は下記式より算出した;
内包率E(%) = (Fin−F)/(Ftotal−F)×100
(シタラビンの内包率の測定方法)
超遠心装置で固形分(リポソーム)を分離(デカント)し、上澄と固形分をそれぞれHPLCで定量した。HPLCカラムとしてVarian Polaris C18−A(3μm 2x40mm)を用いてアッセイされた。内包されていない当該化合物と内包されている当該化合物の絶対値から、シタラビンの内包率を算出した。
【0139】
(単分散性、平均粒径の測定)
作製したリポソーム粒子の懸濁液をリン酸緩衝食塩水(PBS)で25倍に希釈し、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(UPA−EX150、日機装株式会社)を用いて単分散性(粒度分布)を測定しこれに基づき体積平均粒径を算出した。
【0140】
(リポソームの観察方法)
くぼみのあるスライドガラスを用いて実施例1〜15及び比較例1〜7のリポソーム分散液25μlのプレパラートを作製し、正立顕微鏡(Axio Imager.A1、カールツァイス社製)の明視野条件で観察した。
【0141】
実施例1〜15のリポソームはいずれも、多胞リポソームは確認されず単胞リポソームであった。
【0142】
比較例1〜7のリポソームはいずれも、多胞リポソームが確認された。
【0143】
【表1】

【0144】
表1より、本発明の製造方法で製造した単胞リポソーム粒子懸濁液中に単胞リポソームは、単分散性の値からリポソーム粒径に均一性があることがわかる。本発明の製造方法で製造していない、比較例1〜7のリポソームは、単分散性が高く粒径にバラつきが目立っていた。
【0145】
本発明のサイズのリポソームは、毛細血管を閉塞するおそれがほとんどなく、またがん組織近辺の血管にできる間隙を通過することもできるため、医薬品等として人体に投与されて使用する上で好都合であることがわかる。
【符号の説明】
【0146】
1 リン脂質
2 薬剤
3 有機溶媒
4 内水相
5 外水相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二段階乳化法を用いて製造する単胞リポソームの製造方法において、W1/O/W2エマルション形成後に、添加剤を添加することを特徴とする単胞リポソームの製造方法。
【請求項2】
前記添加剤は、乳化する機能を有する物質であることを特徴とする請求項1に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項3】
前記添加剤は、タンパク質、多糖類、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項4】
前記添加剤は、ゼラチン、アルブミン、デキストランまたはポリアルキレンオキサイド系化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項5】
前記添加剤を添加した後に、溶媒を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項6】
前記W1/O/W2エマルション形成後、前記添加剤を添加する前に、溶媒を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項7】
前記添加剤の添加後に、撹拌を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項8】
前記添加剤は、W2の質量に対して0.2〜0.5%の質量比で添加することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項9】
前記二段階乳化法の二次乳化工程として撹拌乳化法を用いることを特徴とする請求項1〜8にいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項10】
前記二段階乳化法の二次乳化工程としてSPG膜を用いた膜乳化を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項11】
前記単胞リポソームに内包されるべき物質として、医療用の薬剤類を用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の単胞リポソームの製造方法を用いて製造することを特徴とする単胞リポソーム分散液の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の単胞リポソーム分散液の製造方法により造られたことを特徴とする単胞リポソーム分散液。
【請求項14】
ゼラチン、アルブミン、デキストランまたはポリアルキレンオキサイド系化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項13に記載の単胞リポソーム分散液。
【請求項15】
請求項13または14に記載の単胞リポソーム分散液を用いて造られたことを特徴とする単胞リポソームの乾燥粉末。

【図1】
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【公開番号】特開2012−102043(P2012−102043A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251636(P2010−251636)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】