説明

印刷インキワニス用樹脂溶液及び印刷インキ。

【課題】 本発明の課題は、高速印刷時であっても優れた印刷適性を示し、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生しにくい平版印刷インキが得られる印刷インキワニス用樹脂溶液を提供すること。
【解決手段】 シクロペンタジエン化合物(a1)と、乾性油および/または半乾性油(a2)とを、重量比で(a1):(a2)が100:5〜50となる比率で反応させて得られる油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)とフェノール樹脂(C)とを反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂を含有することを特徴とする印刷インキワニス用樹脂溶液

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷において高速印刷時であっても優れた印刷適性を示し、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生しにくい平版印刷インキが得られる印刷インキワニス用樹脂溶液及び該印刷インキワニス用樹脂溶液の製造に用いる植物油変性シクロペンタジエン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷インキとしては、沸点200℃以上の炭化水素溶媒中、あるいは乾性油ないし半乾性油中で、加熱攪拌下に、ロジン変性フェノール樹脂等のような油溶性フェノール樹脂を、レゾール型パラルキルフェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物で分子鎖伸長せしめて得られた変性フェノール樹脂を含有する水なし平版インキ用組成物を用いた平版インキが知られている。
【0003】
前記平版印刷インキに用いるロジン変性フェノール樹脂としては、例えば、ロジンエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂とを260℃で2〜3時間反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂や、ロジンとレゾール型フェノール樹脂と多価アルコールとを250℃で10時間反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂が知られている。
【0004】
印刷業界では、生産性を向上させるために印刷速度の高速化が検討されてきている。しかしながら、前記ロジン変性フェノール樹脂を用いて得られる平版印刷インキは、通常の印刷速度で印刷した場合は問題なく印刷できるが、高速印刷時、例えば8m/秒以上の高速印刷時、特に10m/秒以上の高速印刷時ではローラー溜まり、水棒絡み、地汚れ等が短時間で著しく発生しやすくなるという問題がある。
【0005】
また、環境的な理由により印刷インキに用いられている芳香族系化合物の含有量が多い鉱油の代わりに芳香族系化合物の含有率が少ない鉱油を使用することが求められている。このような印刷インキに用いられる印刷インキワニスとして、例えば、20〜80重量%のシクロペンタジエン化合物、1〜40重量%の天然樹脂酸及び31〜70重量%のフェノール樹脂よりなる変性シクロペンタジエン樹脂を印刷インキ用のバインダー樹脂として使用する事が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
前記特許文献1では、例えば、実施例5に、ジシクロペンタジエン、ロジン及びレゾール型フェノール樹脂の合計100重量部に対して、ジシクロペンタジエン33重量%とロジン18重量部とを反応させた後、次いで、レゾール型フェノール樹脂48重量部を反応させて印刷インキ用バインダーを得ている。
【0007】
しかしながら、この印刷インキ用バインダーを用いて得られる印刷インキはミストが発生し易く、さらに、湿し水にインキが散る現象が発生したり、ローラーにインキが堆積したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−016789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高速印刷時であっても優れた印刷適性を示し、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生しにくく、印刷物の光沢も良好な平版印刷インキが得られる印刷インキワニス用樹脂溶液、該印刷インキワニス用樹脂溶液の製造に必要な印刷インキワニス用植物油変性シクロペンタジエン樹脂の製造方法及び該印刷インキワニス用樹脂溶液を用いて得られる印刷インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、シクロペンタジエンと、乾性油および/または半乾性油とを、重量比で100:5〜50となる比率で反応させシクロペンタジエンとロジンエステル樹脂とフェノール樹脂とを反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂を印刷インキのバインダーに用いることにより高速印刷時であっても優れた印刷適性を示し、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生しにくい平版印刷インキが得られ、また、印刷物の光沢も良好である事等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、シクロペンタジエン化合物(a1)と、乾性油および/または半乾性油(a2)とを、重量比で(a1):(a2)が100:5〜50となる比率で反応させて得られる油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)とフェノール樹脂(C)とを反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂を含有することを特徴とする印刷インキワニス用樹脂溶液を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記印刷インキワニス用樹脂溶液と顔料とを含有することを特徴とする印刷インキを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷インキワニス用樹脂溶液は、高速印刷時であっても優れた印刷適性を示し、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生しにくい平版印刷インキが得られる。また、本発明の印刷インキは、高速印刷時であっても優れた印刷適性を示し、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生しにくい。さらに、本発明の高速印刷方法によれば、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生なしに高速印刷できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いる油変性シクロペンタジエン樹脂(A)は、シクロペンタジエン化合物(a1)と、乾性油および/または半乾性油(a2)とを、重量比で(a1):(a2)が100:5〜50となる比率で反応させて得られる。乾性油および/または半乾性油(a2)をシクロペンタジエン化合物(a1)100重量部に対して5重量部より少なく用いると印刷物の光沢が十分な印刷インキが得にくいことから好ましくない。また、乾性油および/または半乾性油(a2)をシクロペンタジエン化合物(a1)100重量部に対して50重量部より多く用いると得られるインキは、ミストが発生し易く、さらに、湿し水にインキが散る現象が発生したり、ローラーにインキが堆積したりすることから好ましくない。
【0015】
本発明で用いる油変性シクロペンタジエン樹脂(A)の中でも、シクロペンタジエン化合物(a1)と乾性油および/または半乾性油(a2)とを重量比で(a1):(a2)が100:10〜40となる比率で反応させて得られるものが高速印刷時であっても優れた印刷適性を示し、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生しにくく、印刷物の光沢も良好となる平版印刷インキが得られることから好ましい。
【0016】
前記シクロペンタジエン変性ロジンエステル樹脂(A)の調製に用いるシクロペンタジエン化合物(a1)としては、例えば、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、これらのアルキル置換誘導体:シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、これらのアルキル置換誘導体の2量体(共2量化物も含む);シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、これらのアルキル置換誘導体の3量体等が挙げられる。
【0017】
前記前記アルキル置換誘導体としては、例えば、メチルシクロペンタジエン等が挙げられる。また、前記共2量化物としては、例えば、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエン等が挙げられる。本発明で用いるシクロペンタジエン化合物(a1)としては、ジシクロペンタジエンが好ましい。
【0018】
前記シクロペンタジエン変性ロジンエステル樹脂(A)の調製に用いる乾性油および/または半乾性油(a2)のうち、乾性油としては、ヨウ素価130以上の動植物油、例えばアマニ油、オイチシカ油、サフラワー油、エノ油.キリ油、脱水ヒマシ油およびこれらの重合体等が挙げられる。また、半乾性油としては、ヨウ素価100〜130の動植物油、例えば綿実油、大豆油、米ヌカ油、コーン油、ゴマ油、ナタネ油やこれらの重合体等が挙げられる。乾性油および/または半乾性油(a2)としては、大豆油および/または亜麻仁油が好ましく、亜麻仁油がより好ましい。
【0019】
本発明で用いる油変性シクロペンタジエン樹脂(A)は、シクロペンタジエン化合物(a1)と、乾性油および/または半乾性油(a2)とを、重量比で(a1):(a2)が100:5〜50となる比率で反応させて得られるこの共重合はフリーラジカルまたは好ましくは熱により行われるが、これは溶剤の不存在下または溶剤の存在下に行うことができる。
【0020】
前記溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン及びテトラヒドロナフタレン等の芳香族炭化水素;イソオクタン等の脂肪族炭化水素;鉱物酒精および100ないし200℃の沸点範囲を有するアルキル化ベンゼン等が挙げられる。
【0021】
前記フリーラジカル重合の際に好適に用いることができる触媒としては、例えば、例えばジ−tert−ブチルペルオキサイド、ベンゾイルペルオキサイド、tert−ブチルヒドロペルオキサイド、クメルヒドロペルオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。一方、熱重合を行う際には、高い反応温度である故に、高圧で該方法を行うのが好ましい。系内の圧力は、10バールまでが好ましい。反応を行う際は、反応生成物の酸化に対する官能性のために、反応条件下に不活性な気体、例えば窒素または二酸化炭素の雰囲気下に行うことも有利である。
【0022】
シクロペンタジエン化合物(a1)と乾性油および/または半乾性油(a2)との反応は、種々の方法で行うことができる。例えば、比較的に小さいバッチの場合には、シクロペンタジエン化合物(a1)と、乾性油および/または半乾性油(a2)とを反応系内に投入し、次いでこれらを所望の温度に加熱することで行うことができる。比較的に大きなバッチの場合には、例えば、乾性油および/または半乾性油(a2)を反応系内に投入し、これを反応温度にまで加熱し、引き続いてシクロペンタジエン化合物(a1)添加する方法が好都合である。
【0023】
また、溶剤の存在下でシクロペンタジエン化合物(a1)と、乾性油および/または半乾性油(a2)とを反応させる際には、まず、系内に溶剤を投入し、溶剤を加熱してから乾性油および/または半乾性油(a2)と、シクロペンタジエン化合物(a1)とを系内に添加することも可能である。
【0024】
シクロペンタジエン化合物(a1)と乾性油および/または半乾性油(a2)との反応温度としては、例えば、200〜300℃、好ましくは230〜270℃である。反応の完了後、得られた油変性シクロペンタジエン樹脂(A)は、所望により溶剤および未転化モノマーを留去することによって固体として単離することができる。これらの軟化点は、一般には40〜200℃である。
【0025】
本発明で用いるロジンエステル樹脂(B)としては、例えば、ロジン類を多価アルコールでエステル化して得られるものが挙げられる。ここで用いるロジン類としては、レゾール型フェノール樹脂と反応するもの、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、および、これらロジン類を蒸留等により精製したもの等が挙げられ、なかでもレゾール型フェノール樹脂と反応性に優れ、高粘度のロジン変性フェノール樹脂が得られることかとから、ガムロジンが好ましい。
【0026】
従って、本発明で用いるロジンエステル樹脂(B)としては、ガムロジンを多価アルコールでエステル化して得られるロジンエステル樹脂が好ましい。
【0027】
前記酸変性ロジンとしては、二塩基酸またはその無水物で変性したものが好ましい。二塩基酸またはその無水物としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられ、なかでもフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0028】
前記ロジン類のエステル化に用いる多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられ、なかでもグリセリン、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0029】
ロジンエステル樹脂(B)の製造方法としては、例えば、ロジン類と多価アルコールとをエステル化触媒に存在下、200〜300℃、好ましくは250〜285℃、更に好ましくは160〜240℃でエステル化反応させる方法が挙げられる。この際のロジン類と多価アルコールの使用比率は、通常、ロジン類中のカルボン酸1モル当量に対し、多価アルコール中の水酸基が0.5〜1.5モル当量となる比率が好ましく、なかでも0.7〜1.0モル当量となる比率が特に好ましい。
【0030】
前記ロジンエステル樹脂(B)としては、酸価50mgKOH/g以下のロジンエステル樹脂を使用することが好ましく、中でも酸価5〜10mgKOH/g以下のロジンエステル樹脂が好ましい。
【0031】
本発明で用いるロジンエステル樹脂(B)は、変性させたロジンエステル樹脂(変性ロジンエステル樹脂)も使用することができる。変性ロジンエステル樹脂としては、例えばシクロペンタジエン化合物(b1)で変性させたシクロペンタジエン変性ロジンエステル樹脂(B1)を好ましく用いることができる。
【0032】
前記シクロペンタジエン変性ロジンエステル樹脂(B1)は、シクロペンタジエン化合物(b1)とロジンエステル樹脂(B)とを反応(共重合)させて得られる。この共重合はフリーラジカルまたは好ましくは熱により行われるが、これは溶剤の不存在下または溶剤の存在下に行うことができる。
【0033】
前記溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン及びテトラヒドロナフタレン等の芳香族炭化水素;イソオクタン等の脂肪族炭化水素;鉱物酒精および100ないし200℃の沸点範囲を有するアルキル化ベンゼン等が挙げられる。
【0034】
前記フリーラジカル重合の際に好適に用いることができる触媒としては、例えば、例えばジ−tert−ブチルペルオキサイド、ベンゾイルペルオキサイド、tert−ブチルヒドロペルオキサイド、クメルヒドロペルオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。一方、熱重合を行う際には、高い反応温度である故に、高圧で該方法を行うのが好ましい。系内の圧力は、10バールまでが好ましい。反応を行う際は、反応生成物の酸化に対する官能性のために、反応条件下に不活性な気体、例えば窒素または二酸化炭素の雰囲気下に行うことも有利である。
【0035】
シクロペンタジエン化合物(b1)とロジンエステル樹脂(B)との反応は、種々の方法で行うことができる。例えば、比較的に小さいバッチの場合には、シクロペンタジエン化合物(b1)及びロジンエステル樹脂(B)とを反応系内に投入し、次いでこれらを所望の温度に加熱することで行うことができる。比較的に大きなバッチの場合には、例えば、ロジンエステル樹脂(B)を反応系内に投入し、これを反応温度にまで加熱し、引き続いてシクロペンタジエン化合物(b1)添加する方法が好都合である。
【0036】
また、溶剤の存在下でシクロペンタジエン化合物(b1)とロジンエステル樹脂(B)を反応させる際には、まず、系内に溶剤を投入し、溶剤を加熱してから好ましくは液状のロジンエステル樹脂(B)とシクロペンタジエン化合物(b1)を系内に添加することも可能である。
【0037】
シクロペンタジエン化合物(b1)とロジンエステル樹脂(B)との反応温度としては、例えば、200〜300℃、好ましくは230〜270℃である。反応の完了後、得られたシクロペンタジエン変性ロジンエステル樹脂(B1)は、所望により溶剤および未転化モノマーを留去することによって固体として単離することができる。これらの軟化点は、一般には40〜200℃である。
【0038】
前記シクロペンタジエン変性ロジンエステル樹脂(B1)の中でも、シクロペンタジエン化合物(b1)とロジンエステル樹脂(B)とを重量比で(b1):(B)が2〜50:100となる比率で反応させて得られるものが高速印刷時であっても優れた印刷適性を示し、ローラー溜まり、水棒絡み、ミスティング、地汚れ等が発生しにくい平版印刷インキが得られることから好ましく、シクロペンタジエン化合物(b1)とロジンエステル樹脂(B)とを重量比で(b1):(B)が7〜40:100となる比率で反応させて得られるものがより好ましい。
【0039】
本発明で使用するフェノール樹脂(C)としては、例えば、フェノール類とホルムアルデヒド供給物質を反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂等が好ましく使用できる。該レゾール型フェノール樹脂としては、特に限定はなく、フェノール類とホルムアルデヒドを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア水溶液等のアルカリ触媒の存在下で反応させて得られる縮合物や、ノボラック型フェノール樹脂のレゾール化物等が挙げられ、なかでもフェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)をF/P(モル比)が1.5〜3.0となる範囲でアルカリ触媒の存在下で反応させて得られる縮合物が好ましい。これらレゾール型フェノール樹脂の平均核体数としては、通常平均1〜10核体のものを通常用いるが、なかでも平均3〜6核体のものを主な成分とするものが好ましい。重量平均分子量としては、200〜1600のものが挙げられるが、なかでも700〜1300のものが好ましい。
【0040】
前記レゾール型フェノール樹脂としては、高温(例えば、100〜150℃)、加圧下の条件下でフェノール類とホルムアルデヒド供給物質を反応させて得られるものを使用することにより、分子量が高く(例えば、ポリスチレン換算で重量平均分子量が55,000〜1,000,000)、高粘度のロジン変性フェノール樹脂が得られることから好ましい。
【0041】
前記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、アミルフェノール、p−ターシャリーブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、ビスフェノールAなどが挙げられ、なかでもp−ターシャリーブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等のパラ位に炭素原子数4〜12の置換基を持つアルキルフェノールが好ましい。また、ホルムアルデヒド供給物質としては、例えば、ホルムアルデヒド、バラホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0042】
本発明で用いるロジン変性フェノール樹脂は、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)とフェノール樹脂(C)とを反応させて得られる.具体的には、例えば、下記の製法により得られるロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0043】
製法(1):油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(C)とを、有機溶剤を含む系内で140〜240℃で縮合させる方法。
【0044】
製法(2):油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)とを、無溶剤下、160〜240℃で反応させる方法により得られるロジン変性フェノール樹脂(X1)を、有機溶剤中、160〜240℃でフェノール樹脂(C)と鎖伸長反応させる方法。
【0045】
製法(3):油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)とを、無溶剤下160〜280℃で反応させてなり、かつ、240℃を越える温度での反応時間が1時間未満となるように反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂(X2)を有機溶剤中、160〜240℃でフェノール樹脂(C)と鎖伸長反応させる方法。
【0046】
前記製法(1)で用いる有機溶剤としては、一般的に印刷インキ溶剤として市販されているものを使用することができ、水と相溶しない沸点160℃以上のものが適当である。
【0047】
これらの有機溶剤としては、例えば、パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族成分含有パラフィン系溶剤等の沸点200℃以上の石油系溶剤が挙げられる。具体例としては、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号〔以上、新日本石油(株)製〕、IPソルベント2028、IPソルベント2835〔以上、出光石油化学(株)製〕等が挙げられる。これらのうち、最近の環境、衛生面への配慮から芳香族成分の含有量は、1重量%以下のものが、好ましい。
【0048】
前記製法(1)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(C)とを反応させる際の温度としては、180〜230℃がより好ましい。
【0049】
前記製法(1)で本発明で用いるロジン変性フェノール樹脂を得るには、反応系内に予め0.01〜3.0重量部のゲル化剤を添加しておくことが好ましい。これによりさらに粘弾性が大きな印刷インキ用ワニス用樹脂溶液を製造することができる。
【0050】
前記ゲル化剤としては、アルミニウムアルコラートやアルミニウム石鹸等のアルミニウム化合物、マンガン、コバルト、ジルコニウム等の金属石鹸、アルカノールアミン系などのゲル化剤などを好ましく用いることができる。
【0051】
前記方法(2)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)とを160〜240℃で反応させることにより、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)とのとの反応が早く工業的に適する為に好ましく、高速印刷時でもローラー溜まり、水棒絡み、地汚れ等が発生しにくい印刷インキが得られる為に好ましい。前記反応温度としては、180〜230℃がより好ましい。また、高速印刷適性の低下を少なくするには240℃を越える高温でのシクロペンタジエン変性ロジンエステル樹脂(A)とフェノール樹脂(c1)の反応は1時間未満とすることが必要であり、0.5時間未満が好ましく、全くないことがより好ましい。最も好ましいのは、230℃以下で反応させることである。
【0052】
前記製法(2)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)との使用比率は、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)との合計100重量部に対してフェノール樹脂(c1)15〜55重量部となる比率である。
【0053】
また、製法(2)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)との反応に際しては、通常150〜240℃、好ましくは180〜230℃に加熱した油変性シクロペンタジエン樹脂(A)及びロジンエステル樹脂(B)と、通常60〜150℃、好ましくは90〜140℃に加熱したフェノール樹脂(c1)を、それぞれ反応容器内に投入し、無溶剤下、160〜240℃、好ましくは180〜230℃で反応させる。投入後の温度が200℃未満の場合には、200〜230℃に昇温して反応させることが好ましい。
【0054】
なお、前記油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)との反応に際して、前記フェノール樹脂(c1)としては、トルエン、キシレン、ブタノール等に代表される沸点が160℃以下の溶剤に溶解させたフェノール樹脂溶液を使用することもできる。このフェノール樹脂溶液を用いる際は、前記加熱したフェノール樹脂の代わりに40〜60℃に加熱したフェノール樹脂溶液を用い、前記加熱した油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、加熱したフェノール樹脂溶液をそれぞれ反応容器内に投入し、溶剤を留去しながら昇温して溶剤を除去して反応系内を無溶剤とした後、好ましくは200℃に昇温するまでに溶剤を除去して、無溶剤下180〜240℃、好ましくは200〜230℃で反応させる方法が挙げられる。しかし、前記フェノール樹脂(c1)としては、無溶剤のフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
前記方法(3)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)とを、無溶剤下160〜280℃で反応させ、かつ、240℃を越える温度での反応時間が1時間未満となるように反応させることにより、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)との反応が早く工業的に適する為に好ましく、高速印刷時でもローラー溜まり、水棒絡み、地汚れ等が発生しにくい印刷インキが得られる為に好ましい。前記反応条件としては、180〜260℃で反応させ、且つ、240℃を越える温度での反応時間が0.5時間未満であることがより好ましい。
【0056】
前記製法(3)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)の使用比率は、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とのロジンエステル樹脂(B)合計100重量部に対してフェノール樹脂(c1)が15〜55重量部となる比率である。
【0057】
また、前記製法(3)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)との反応に際しては、通常150〜280℃、好ましくは200〜260℃に加熱した油変性シクロペンタジエン樹脂(A)及びロジンエステル樹脂(B)と、通常60〜150℃、好ましくは90〜140℃に加熱したフェノール樹脂(c1)を、それぞれ反応容器内に投入し、無溶剤下、160〜280℃、好ましくは180〜260℃で反応させる。投入後の温度が200℃未満の場合には、200〜260℃に昇温して反応させることが好ましい。
【0058】
なお、この反応の際にも、前記製法(2)と同様に、前記フェノール樹脂(c1)としてフェノール樹脂の溶液を使用することもできる。このフェノール樹脂溶液を用いる際は、前記加熱したフェノール樹脂(c1)の代わりに40〜60℃に加熱したフェノール樹脂の溶液を用い、前記加熱した油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂と、加熱したフェノール樹脂の溶液をそれぞれ反応容器内に投入し、溶剤を留去しながら昇温して溶剤を除去して反応系内を無溶剤とした後、好ましくは200℃に昇温するまでに溶剤を除去して、無溶剤下180〜280℃、好ましくは200〜260℃で反応させる方法が挙げられる。
【0059】
従って、前記製法(3)において、無溶剤下での油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)との反応とは、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)の反応の最初の段階から無溶剤下の反応である場合と共に、反応の最初の段階では溶剤の存在下の反応であっても、反応の途中で溶剤が除去され、その後無溶剤下で1時間以上、例えば200℃以上で1時間以上反応させる場合も包含する。これらの中では、無溶剤下での油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)の反応の最初の段階から無溶剤下の反応である場合が好ましい。
【0060】
尚、前記製法(2)や製法(3)においてロジン変性フェノール樹脂(X1)やロジン変性フェノール樹脂(X2)の調製に用いるフェノール樹脂(c1)としては、例えば、前記フェノール樹脂(C)として例示したものを好ましく使用できる。
【0061】
本発明で用いるロジン変性フェノール樹脂としては、前記製法(2)で得られるロジン変性フェノール樹脂が、240℃を越える高温での反応が全くないため、反応生成物の分解や未反応フェノール樹脂(C1)の分解に起因すると推定する高速印刷適性を低下がより少ないことから好ましい。
【0062】
本発明で用いるロジン変性フェノール樹脂の中でも、前記製法(2)や製法(3)では、ロジン変性フェノール樹脂(X1)またはロジン変性フェノール樹脂(X2)を得た後、該ロジン変性フェノール樹脂(X1)またはロジン変性フェノール樹脂(X2)と、フェノール樹脂(C)とを、該有機溶剤中、160〜240℃で鎖伸長反応させてなるものである。160〜240℃で鎖伸長反応させることにより、ロジン変性フェノール樹脂(X1)やロジン変性フェノール樹脂(X2)と、フェノール樹脂(C)との反応が早く、工業的に適するという利点を有する。また、高速印刷時でもローラー溜まり、水棒絡み、地汚れ等が発生しにくい印刷インキが得られる為に好ましい。この理由は、明らかではないが、240℃を越える高温ではロジン変性フェノール樹脂(X1)やロジン変性フェノール樹脂(X2)と、フェノール樹脂(B)との反応と同時に反応生成物の分解や未反応フェノール樹脂(C)の分解が起こらず、生成した分解物が高速印刷適性を低下させないのではないかと、本発明者らは推定している。
【0063】
前記ロジン変性フェノール樹脂(X1)やロジン変性フェノール樹脂(X2)と、フェノール樹脂(C)との反応温度は180〜230℃が好ましく、190〜220℃が最も好ましい。
【0064】
前記製法(2)や製法(3)で用いる有機溶剤としては、例えば、前記製法(1)で用いる有機溶剤等が挙げられる。
【0065】
前記製法(1)や製法(2)において、ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)を、有機溶剤中、160〜240℃でレゾール型フェノール樹脂(C)と鎖伸長反応させればよく、ここで用いるロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)としては、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)とを反応させて得られた溶融状態にあるロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)を冷却固化させたものを用いてもよいが、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)とを反応させて得られた溶融状態にあるロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)を冷却固化させることなく、溶融状態のままで用いることが好ましい。この場合、溶融状態にあるロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)は、溶融状態を維持できる範囲で適宜温度を調整してから用いても良いし、溶融状態を維持したままで移送してから用いても良い。
【0066】
この際に用いる前記フェノール樹脂(C)としては、前記ロジン変性フェノール樹脂(X1)や(X2)を合成する際にシクロペンタジエン変性ロジンエステル樹脂(A)と共に用いるフェノール樹脂(C1)がいずれも使用できる。このようなフェノール樹脂(C)のなかでは、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)をF/P(モル比)が1.5〜3.0となる範囲でアルカリ触媒の存在下で反応させて得られる縮合物が好ましい。また、レゾール型フェノール樹脂(B)の重量平均分子量としては、200〜1600のものが挙げられるが、なかでも700〜1300のものが好ましい。
【0067】
前記製法(2)や製法(3)において、溶融状態にあるロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)を用いる場合、例えば、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(c1)とを無溶剤下で反応させてなる溶融状態にあるロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)と有機溶剤とを混合して反応系の温度を240℃以下、好ましくは160〜240℃に低下させると共に、ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)を有機溶剤中に溶解させ、フェノール樹脂(C)と混合し、160〜240℃、好ましくは180〜230℃で重量平均分子量が10万以上、好ましくは12万〜40万となるまで、または、樹脂ソリッド/AF−7/トルエンの重量比が(40)/(9〜11)/(50)になるような比率で混合したときのガードナー粘度(25℃)がG以上、好ましくは、I〜Zとなるまで、0.5〜20時間、好ましくは1〜12時間鎖伸長反応させればよい。
【0068】
前記製法(1)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)と、ロジンエステル樹脂(B)と、フェノール樹脂(C)の使用量としては、重量比で〔(A)+(B):(C)が100:15〜55となる比率が好ましい。
【0069】
前記製法(2)や製法(3)における有機溶剤の使用比率は、ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)100重量部に対して通常2〜100重量部、好ましくは5〜50重量部であり、フェノール樹脂(B)の使用比率は、ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)100重量部に対して通常2〜100重量部、好ましくは5〜80重量部である。
【0070】
また、前記製法(2)や製法(3)において、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)との合計重量に対するフェノール樹脂(C)とフェノール樹脂(c1)との合計の使用量としては、重量比で〔(A)+(B)〕:〔(C)+(c1)〕が100:15〜55となる比率が好ましい。
【0071】
本発明で得られる印刷インキワニス用樹脂溶液を用いて得られる印刷インキワニスは、例えば、前記製法(1)〜(3)の方法で得られるロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキワニス用樹脂溶液と乾性油および/または半乾性油を160〜240℃で混合してなる印刷インキワニス(I)、または、前記ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)を、有機溶剤中、乾性油および/または半乾性油の存在下、160〜240℃でフェノール樹脂(C)と鎖伸長反応させてなる印刷インキワニス(II)であり、これらはさらに必要によりゲル化剤(D)と反応させたものであっても良い。
【0072】
前記印刷インキワニス(I)としては、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)とフェノール樹脂(c1)とを無溶剤下160〜240℃で反応させてなるロジン変性フェノール樹脂(X1)、および/または、油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)とフェノール樹脂(c1)とを無溶剤下160〜280℃で反応させてなり、かつ、240℃を越える温度での反応時間が1時間未満であるロジン変性フェノール樹脂(X2)を、有機溶剤中、160〜240℃でレゾール型フェノール樹脂(B)と鎖伸長反応させてなる印刷インキワニス用樹脂溶液と、乾性油および/または半乾性油を160〜240℃、好ましくは180〜230℃で混合してなるものであればよく、混合に際して印刷インキワニス用樹脂溶液中の樹脂分と乾性油および/または半乾性油の一部が反応したものであっても良い。なお、ここで用いる印刷インキワニス用樹脂溶液としては、前記した印刷インキワニス用樹脂溶液がいずれも使用でき、印刷インキワニス用樹脂溶液として好ましいとしたものがいずれも好ましく使用できる。
【0073】
前記印刷インキワニス(I)を製造する際に用いる乾性油および/または半乾性油としては、例えば、前記油変性シクロペンタジエン樹脂(A)の調製に用いることができる乾性油や半乾性油等が挙げられる。
【0074】
前記乾性油および/または半乾性油(C)の使用比率は、印刷インキワニス用樹脂溶液中の樹脂分100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは3〜80重量部となる範囲である。
【0075】
前記印刷インキワニス(I)を製造する際には、前記印刷インキワニス用樹脂溶液と乾性油および/または半乾性油を混合する際に、乾性油および/または半乾性油と共にゲル化剤(D)を混合し、印刷インキワニス用樹脂溶液中の樹脂分とゲル化剤(D)とを反応させることや、前記印刷インキワニス用樹脂溶液と乾性油および/または半乾性油を混合した後、さらにゲル化剤(D)と混合して、この混合液中の樹脂分とゲル化剤(D)とを60〜240℃、好ましくは80〜200℃で反応させることが、重量平均分子量(Mw)や粘度が高く、耐乳化性、耐ミスト性に優れる印刷インキワニスとなることから好ましく、なかでも後者の場合が特に好ましい。また、この際には、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂等の石油樹脂を併用しても良い。
【0076】
前記ゲル化剤(D)としては、例えば有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、有機亜鉛化合物、有機力ルシウム化合物等が挙げられ、なかでも有機アルミニウム化合物が好ましい。有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート化合物が挙げられ、なかでもアルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプレピレート、エチルアセチルアセテートアルミニウムジ−n−ブチレート、エチルアセチルアセテートアルミニウム−n−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセチルアセテートが好ましい。
【0077】
前記ゲル化剤(D)の使用比率は、印刷インキワニス用樹脂溶液100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部となる範囲である。
【0078】
次いで、前記印刷インキワニス(II)としては、前記ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/またはロジン変性フェノール樹脂(X2)を、有機溶剤中、乾性油および/または半乾性油の存在下、160〜240℃でフェノール樹脂(C)と鎖伸長反応させてなるものであればよく、鎖伸長反応に際して反応系内の樹脂分と乾性油および/または半乾性油の一部が反応したものであっても良い。なお、ここで用いるロジン変性フェノール樹脂(X1)および/またはロジン変性フェノール樹脂(X2)としては、前記したロジン変性フェノール樹脂(X1)および/またはロジン変性フェノール樹脂(X2)がいずれも使用でき、印刷インキワニス用樹脂溶液を製造する際に好ましいとしたものがいずれも好ましく使用できる。
【0079】
また、ここで用いる乾性油および/または半乾性油としては、前記印刷インキワニス(I)を製造する際に用いる乾性油および/または半乾性油がいずれも同様に使用でき、その使用比率は前記ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)とレゾール型フェノール樹脂(C)の合計の樹脂分100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは3〜80重量部となる範囲である。
【0080】
前記印刷インキワニス(II)を製造する際には、前記ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)を、有機溶剤中、乾性油および/または半乾性油の存在下、160〜240℃でフェノール樹脂(C)と鎖伸長反応させる際に、乾性油および/または半乾性油と共にゲル化剤(D)を存在させて反応させることや、乾性油および/または半乾性油の存在下で鎖伸長反応させた後、さらにゲル化剤(D)と混合して、この混合液中の樹脂分とゲル化剤(D)とを60〜240℃、好ましくは80〜240℃で反応させることが、重量平均分子量(Mw)が高く、耐乳化性、耐ミスト性に優れる印刷インキワニスとなることから好ましく、なかでも後者の場合が特に好ましい。また、この際には、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂等の石油樹脂を併用しても良い。
【0081】
ここで用いる前記ゲル化剤(D)としては、前記印刷インキワニス(I)を製造する際に用いるゲル化剤(D)がいずれも同様に使用でき、その使用比率は前記ロジン変性フェノール樹脂(X1)および/または(X2)とレゾール型フェノール樹脂(B)の合計の樹脂分100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部となる範囲である。
【0082】
また、前記印刷インキワニス(I)や(II)を製造する際も、ロジン変性フェノール樹脂(X1)と(X2)の中では、240℃を越える高温での反応が全くないため、反応生成物の分解や未反応レゾール型フェノール樹脂の分解に起因すると推定する高速印刷適性を低下がより少ないことから、ロジン変性フェノール樹脂(X1)を用いることが好ましい。
【0083】
前記印刷インキワニス(I)、(II)としては、該ワニス中にAFソルベント7号が42〜48重量%含まれる様に調整したときの25℃での気泡粘度が2000〜40000dPa.Sとなる範囲、好ましくは4000〜15000dPa.Sとなる範囲、乳化率〔LITHOTRONIC EMULSIFICATION TESTER(NOVOCONTROL GmbH社製)を用いて、40℃、1500rpm、水の供給速度2ml/分の条件で測定した乳化率(EC%)〕が100重量%以下、好ましくは80重量%以下、更に好ましくは5〜50重量%となる範囲であることが好ましい。
【0084】
このような本発明の印刷インキワニス用樹脂溶液を用いて得られる印刷インキワニスは、顔料と、必要によりその他の成分と共に混練することにより印刷インキとすることができる。例えば、前記印刷インキワニスに、黄、紅、藍、墨などの顔料を直接分散させるか、予め分散用樹脂に分散させたカラーベースや、フラッシュ法の場合は、フラッシュ用樹脂に分散させたカラーベースと混合し、必要に応じて耐摩擦性向上剤、レオロジーコントロール剤、インキドライヤー、乾燥抑制剤、追加溶剤、他の樹脂成分などを添加し、混練して適切な粘度になるように調整することにより、枚葉インキ、オフ輪インキなどの平版印刷インキとすることができる。この平版インキは、湿し水を使用する通常の平版印刷インキとしても、また湿し水を使用しない水無し平版印刷インキとしても使用することができる。また、これらの印刷インキは、新聞印刷インキ等としても使用することができる。
【0085】
本発明の印刷インキワニス用樹脂溶液を含有する印刷インキワニスを用いて得られる印刷インキは、公知慣用の平版印刷機で使用することができるが、とりわけ印刷速度8m/秒以上、好ましくは10m/秒以上、より好ましくは10〜18m/秒なる範囲での印刷時に、従来のインキでは、達成できなかった、優れた印刷適性を示す。
【実施例】
【0086】
以下に参考例、実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、例中の部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0087】
合成例1〔油変性シクロペンタジエン樹脂(A)〕の調製
純度97%のジシクロペンタジエン(DCPD)850gと亜麻仁油250gを2リットルのオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気中で攪拌下260℃で3.5時間加熱した。加熱終了後、オートクレーブを冷却し、内容物を210℃/2mmHgで蒸留して、920gの油変性シクロペンタジエン樹脂(A−1)を得た。油変性シクロペンタジエン樹脂(A−1)の軟化点は、121℃であり、トルエン70%溶液の25℃でのガードナー粘度は、Z4−Z52であった。
【0088】
合成例2〔ロジンエステル樹脂(B)〕の調製
撹拌器および温度計を備えた加圧反応釜に酸価165mgKOH/gのガムロジン1000g及び無水マレイン酸28.8gを仕込み、昇温して温度が200℃に到達した時点でペンタエリスリトール114gを加え、さらに280℃に昇温した。その後280℃で酸価が15mgKOH/g以下になった時点で温度を下げてロジンエステル樹脂(B−1)を得た。ロジンエステル樹脂(B−1)は、酸価14.6mgKOH/g、軟化点114℃、重量平均分子量(Mw)1200であった。
【0089】
合成例3〔フェノール樹脂(C)の調製〕
撹拌器および温度計を備えた加圧反応釜に、p−オクチルフェノール2060gを仕込み、120℃で加熱溶解し、92%パラホルムアルデヒド粉末(水分含有率8%)782.4gと水酸化カルシウム7.4gを加え130℃まで加熱して2時間反応せしめてレゾール型フェノール樹脂(C−1)を得た。得られたレゾール型フェノール樹脂(C−1)は、GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は900であった。
【0090】
実施例1
油変性シクロペンタジエン樹脂(A−1)25部、ロジンエステル樹脂(B−1)75部及び脂肪族系炭化水素樹脂(マルカレッツM−845D、丸善石油化学株式会社製の石油樹脂)15部を混合し、260℃に保持した。この混合物に、100℃に加温したレゾール型フェノール樹脂(C−1)48部を加えて混合することにより一旦温度を210℃付近まで下降させた後、再び昇温し、245℃まで昇温(240〜245℃までの昇温時間20分間)した時点で反応を終了させてロジン変性フェノール樹脂を得た。得られたロジン変性フェノール樹脂は、25℃におけるトルエン50%溶液のガードナー粘度がN−Oであり、また、樹脂分の重量平均分子量(Mw)は4万であった。
【0091】
前記溶融しているロジン変性フェノール樹脂100部にAFソルベント7号25部を加えて200℃に温度を保持したまま、レゾール型フェノール樹脂(C−1)5部を加えて同温度にさらに3時間保持し、得られた反応混合物溶液に同量のトルエンを加えた場合の溶液の25℃におけるガードナー粘度がH−Iになるまで反応させて、本発明の印刷インキワニス用樹脂溶液とした。
【0092】
この樹脂溶液100部に対してダイズ油32部を加え、200℃まで昇温し30分間混合した。AFソルベント7号68部および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.2部を加え200℃で30分間攪拌混合した後に、粘度が6000−7500dPa.sの範囲に入る様に160℃でエチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレートを0.5〜1.5部の範囲で必要な量を加え、更に、1時間加熱攪拌して、本発明の印刷インキワニス用樹脂溶液を用いた印刷インキワニス〔以下、ワニス(1)と略記する〕を得た。
【0093】
得られたワニス(1)は、LITHOTRONIC EMULSIFICATION TESTER(NOVOCONTROL GmbH社製)で攪拌速度1500rpm、温度40℃、水の供給速度2ml/分の条件で測定した乳化率(EC%)は25%であった。
【0094】
得られたワニス(1)50部とカーミン6B〔大日本インキ化学工業(株)製インキ用紅顔料〕の15部を予め、分散用樹脂及びその他の添加剤に分散させたカラーベース50部にAFソルベント7号を加えて3本ロ−ルで混練し、インキ(1)を得、得られたインキ(1)をアート紙上に展色させ、光沢を確認したところ印刷面は良好な光沢を有していた。また、インキ(1)1.31mlをインコメーター〔東洋精機(株)製〕に載せ、42℃、2000rpmで2分間回転させたときのロール下面と前面に置いた白色紙上へのインキの飛散状態(ミスチング)を観察したところ、インキの飛散が殆ど無いことが確認された。
【0095】
また、インキ(1)を用い、三菱LITHOPIA MAX AY−1000にて10.4m/秒の印刷速度で印刷を行い、印刷開始から2時間後の水着けローラーと水元ローラーにおけるインキのローラー溜まりと水棒の絡みの状況を観察(高速印刷性)したところ、ローラー溜まりと水棒の絡みが殆ど発生していなかった。
【0096】
比較例1
ロジンエステル樹脂(B−1)にマルカレッツM−845D〔丸善石油化学社製脂肪族系炭化水素樹脂(石油樹脂)〕15部を加えて混合し260℃に保持した混合物に、100℃に加温したレゾール型フェノール樹脂(C−1)48部を加えて混合することにより一旦温度を210℃付近まで下降させた後、再び昇温し、245℃まで昇温(240〜245℃までの昇温時間20分間)した時点で反応を終了させてロジン変性フェノール樹脂〔以下、RP樹脂(2M)と略記する。〕を得た。得られたRP樹脂(2M)は、25℃におけるトルエン50%溶液のガードナー粘度がN−O〔樹脂分の重量平均分子量(Mw)は4万であった。〕であった。
【0097】
溶融しているPR樹脂(2M)100部にAFソルベント7号25部を加えて200℃に温度を保持したまま、レゾール樹脂(C−2)〔レゾール樹脂(C−1)/AFソルベント7号=80/20〕5部を加えて同温度にさらに3時間保持し、得られた反応混合物溶液に同量のトルエンを加えた場合の溶液の25℃におけるガードナー粘度がL−M〔樹脂分の重量平均分子量(Mw)は26万であった。〕になるまで反応させて、比較対照用印刷インキワニス用樹脂溶液(R´P1)を得た。
【0098】
次に、(R´P1)100部に対してダイズ油32部を200℃で30分間加熱混合し、次いでAFソルベント7号68部およびBHT0.2部を加え同温度で30分間攪拌混合した後に、粘度が6000−7500dPa.sの範囲に入る様に160℃でエチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレートを0.5〜1.5部の範囲で必要な量を加えて1時間加熱攪拌して、比較対照用印刷インキワニス〔以下、ワニス(1´)と略記する〕を得た。
【0099】
得られたワニス(1´)50部とカーミン6B〔大日本インキ化学工業(株)製インキ用紅顔料〕の15部を予め、分散用樹脂及びその他の添加剤に分散させたカラーベース50部にAFソルベント7号を加えて3本ロ−ルで混練し、インキ(1)を得、得られたインキ(1´)をアート紙上に展色させ、光沢を確認したところ印刷面は十分な光沢を有していなかった。また、インキ(1)1.31mlをインコメーター〔東洋精機(株)製〕に載せ、42℃、2000rpmで2分間回転させたときのロール下面と前面に置いた白色紙上へのインキの飛散状態(ミスチング)を観察したところ、インキの飛散が著しかった。
【0100】
また、インキ(1)を用い、三菱LITHOPIA MAX AY−1000にて10.4m/秒の印刷速度で印刷を行い、印刷開始から2時間後の水着けローラーと水元ローラーにおけるインキのローラー溜まりと水棒の絡みの状況を観察(高速印刷性)したところ、ローラー溜まりと水棒の絡みが著しかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロペンタジエン化合物(a1)と、乾性油および/または半乾性油(a2)とを、重量比で(a1):(a2)が100:5〜50となる比率で反応させて得られる油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)とフェノール樹脂(C)とを反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂を含有することを特徴とする印刷インキワニス用樹脂溶液。
【請求項2】
前記油変性シクロペンタジエン樹脂(A)がシクロペンタジエン化合物(a1)と、乾性油および/または半乾性油(a2)とを、重量比で(a1):(a2)が100:10〜40となる比率で反応させて得られる樹脂である請求項1記載の印刷インキワニス用樹脂溶液。
【請求項3】
前記ロジン変性フェノール樹脂の酸価が5〜10mgKOH/gである請求項1記載の印刷インキワニス用樹脂溶液。
【請求項4】
前記ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量が60,000〜1,000,000である請求項1記載の印刷インキワニス用樹脂溶液。
【請求項5】
前記ロジン変性フェノール樹脂が油変性シクロペンタジエン樹脂(A)としてジシクロペンタジエンと亜麻仁油とを反応させて得られる油変性シクロペンタジエン樹脂と、ロジンエステル樹脂(B)としてガムロジンを多価アルコールでエステル化して得られるロジンエステル樹脂と、フェノール樹脂(C)としてレゾール型フェノール樹脂とを用いて得られる樹脂である請求項1記載の印刷インキワニス用樹脂溶液。
【請求項6】
前記ロジン変性フェノール樹脂が油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)とフェノール樹脂(C)とを溶剤存在下で140〜240℃で反応させて得られる樹脂である請求項1記載の印刷インキワニス用樹脂溶液。
【請求項7】
ロジン変性フェノール樹脂が油変性シクロペンタジエン樹脂(A)とロジンエステル樹脂(B)とフェノール樹脂(C)とを、重量比で〔(A)+(B)〕:(C)が100:15〜55となる比率で反応させて得られる樹脂である請求項1〜4のいずれか1項記載の印刷インキワニス用樹脂溶液。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の印刷インキワニス用樹脂溶液と顔料とを含有することを特徴とする印刷インキ。