説明

印刷テープ、テープカートリッジ、およびテープ印刷装置

【課題】被着体に対して変色などの不具合発生を防止する印刷テープを提供し、併せて、そのような印刷テープを備えたテープカートリッジおよびテープ印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】印刷テープ50は、裏面に粘着層51が設けられて印刷される記録テープ52と、粘着層51により貼着される剥離テープ53とから構成される印刷テープ50であって、粘着層51は、酸を含まない部材で構成される。また、テープカートリッジ30は、記録テープ52を外側にし、剥離テープ53を内側にしてロール状に巻回して印刷テープ50を収容する。テープ印刷装置1は、テープカートリッジ30を装着するカートリッジ装着部20と、テープカートリッジ30から繰り出された印刷テープ50を送りながら記録テープ52に印刷を行なう印刷機構部130と、印刷機構部130により印刷された印刷テープ50をカットするするカット機構部140とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷テープ、テープカートリッジ、およびテープ印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テープ印刷装置において使用される印刷テープ200は、図5(a)に示すように、粘着層201が裏面に設けられ、テープ印刷装置により印刷される記録テープ202と、その粘着層201を覆う剥離テープ203とで構成されている。そして、記録テープ202の上面に、インクリボンからのインク210が付着することで、記録テープ202に印刷が行なわれる。また、図5(b)に示すように、印刷が済んだ印刷テープ200から剥離テープ203を剥離して、粘着層201を設ける記録テープ202を被着体220の表面に貼着して使用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この状態で、被着体220を使用すると、図5(b)に示すように、被着体220の粘着層201との貼着部分周辺225に変色などの不具合が発生する場合があった。また、このような不具合は徐々に進行し、被着体220の劣化へと進んでしまうため、被着体220の長期保存などには適さなかった。
【0004】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、被着体に対して変色などの不具合発生を防止する印刷テープを提供し、併せて、そのような印刷テープを備えたテープカートリッジおよびテープ印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の印刷テープは、裏面に粘着層が設けられて印刷される記録テープと、粘着層により貼着される剥離テープとから構成される印刷テープであって、粘着層は、酸を含まない部材で構成されることを特徴とする。
【0006】
このような印刷テープによれば、粘着層が、酸を含まない部材で構成されることにより、印刷テープの剥離テープを剥がし、記録テープの粘着層を被着体に貼着した場合、被着体の貼着部分周辺に変色などの不具合が発生することを防止することができる。従って、被着体の長期保存に適した印刷テープが実現できる。
【0007】
また、上述した目的を達成するために、本発明のテープカートリッジは、上記の印刷テープを収容するテープカートリッジであって、記録テープを外側にし、剥離テープを内側にしてロール状に巻回して印刷テープを収容することを特徴とする。
【0008】
このようなテープカートリッジによれば、記録テープを外側にし、剥離テープを内側にしてロール状に巻回して印刷テープを収容することにより、被着体に変色などの不具合を発生させない印刷テープを収容するテープカートリッジが可能となる。
【0009】
また、上述した目的を達成するために、本発明のテープ印刷装置は、上記のテープカートリッジを装着するカートリッジ装着部と、テープカートリッジから繰り出された印刷テープを送りながら記録テープに印刷を行なう印刷機構部と、印刷機構部により印刷された印刷テープをカットするカット機構部と、を有することを特徴とする。
【0010】
このようなテープ印刷装置によれば、カートリッジ装着部と印刷機構部とカット機構部とを有することにより、被着体に変色などの不具合を発生させない印刷テープに対して印刷およびカットを行なうことが可能なテープ印刷装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態)
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るテープ印刷装置の斜視図である。また、図2は、開蓋状態のテープ印刷装置の斜視図である。なお、図2は、テープ印刷装置1の開閉蓋8を開放し、テープカートリッジ30が非装着の状態を示している。図1、図2を参照して、テープ印刷装置1およびテープカートリッジ30を説明する。
【0013】
テープ印刷装置1は、印刷テープ50に対して文字印刷を行なう装置本体2と、印刷テープ50およびインクリボン60を収容して装置本体2に着脱自在に装着されるテープカートリッジ30とを備えている。
【0014】
装置本体2は、装置ケース3により筐体が形成されている。装置ケース3の前半部上面には、操作部101を構成するキーボード4が配設されている。装置ケース3の後半部上面の左部には、テープカートリッジ30を着脱自在に装着することができるカートリッジ装着部20が、カートリッジケース33の外形に略相似形状で窪んで形成されている。
【0015】
カートリッジ装着部20の上部には、テープカートリッジ30をカートリッジ装着部20に着脱する際に開閉する開閉蓋8が設けられている。また、開閉蓋8の表側にはキーボード4からの入力結果などを表示する長方形のディスプレイ9が形成されていると共に、開閉蓋8を閉塞した状態でテープカートリッジ30の装着/非装着を視認するための覗き窓10が形成されている。
【0016】
装置ケース3の左側面部には、カートリッジ装着部20と外部を連通するテープ排出口11が形成されている。そして、装置本体2の内部には、テープ排出口11に臨んで、テープカートリッジ30から送り出された印刷テープ50をカット(ハーフカットやフルカットを含む)するためのカット機構部140が設置されている。印刷テープ50の印刷が済んだ部分(印刷済み部分)がカット機構部140によりカットされ、テープ排出口11からテープ片50aとして排出される。
【0017】
一方、装置ケース3の右側面部には、電源供給のための電源供給口12と図外のパーソナルコンピュータなどの外部装置と接続するための接続口13が形成されている。また、図では省略するが、装置ケース3の内部には、テープ印刷装置1を統括制御する制御部100(図3参照)を構成する回路基板が搭載されている。
【0018】
カートリッジ装着部20には、発熱素子を有しヘッドカバー24に覆われた印刷ヘッド22と、テープカートリッジ30の印刷テープ50およびインクリボン60を送るためのプラテン駆動軸(図示省略)および巻取り駆動軸(図示省略)が突設されている。また、カートリッジ装着部20の裏側(内部)には、プラテン駆動軸および巻取り駆動軸を駆動する印刷送りモータ25(図3参照)やギヤ列(図示省略)などが内蔵されている。
【0019】
そして、上記のプラテン駆動軸、巻取り駆動軸、印刷送りモータ25およびギヤ列などを有して、テープカートリッジ30から繰り出された印刷テープ50を送りながら印刷を行なう印刷機構部130(図3参照)が構成されている。
【0020】
テープカートリッジ30を上記のカートリッジ装着部20に装着すると、テープカートリッジ30の貫通開口34にヘッドカバー24(印刷ヘッド22)が差し込まれると共に、プラテンローラ35およびリボン巻取りリール32にプラテン駆動軸および巻取り駆動軸がそれぞれ係合する。この状態で、開閉蓋8を閉塞すると、これに連動して、印刷ヘッド22が印刷テープ50およびインクリボン60を挟み込んでプラテンローラ35に当接し、印刷待機状態となる。
【0021】
そして、印刷機構部130が動作することにより、プラテンローラ35およびリボン巻取りリール32を駆動して印刷テープ50およびインクリボン60を送りながら、上記のキーボード4などから入力された文字情報などの入力データに基づいて、印刷ヘッド22により印刷が行なわれる。印刷後、印刷テープ50のみがテープカートリッジ30のテープ送出口36を介してテープ排出口11から装置本体2外部に送り出され、インクリボン60はリボン巻取りリール32に巻き取られるようになっている。
【0022】
なお、プラテンローラ35により、送り出された印刷済みの印刷テープ50は、印刷済み部分をカットするカット機構部140に臨むように送られる。
【0023】
なお、カートリッジ装着部20の隅部には、複数のマイクロスイッチで構成され、印刷テープ50の種別を識別するためのテープ識別センサ110(図3参照)が設けられている。
【0024】
また、印刷テープ50は、裏面に粘着層51が設けられた記録テープ52と、この粘着層51により貼着された剥離テープ53とから構成されている。印刷テープ50は、記録テープ52を外側にし、かつ剥離テープ53を内側にしてロール状に巻回されてカートリッジケース33内に収容されている。
【0025】
テープカートリッジ30に収容されている印刷テープ50のテープ幅は12mm,24mmなど複数種類あり、カートリッジケース33の裏面には、小さな複数の被検出孔(図示省略)が形成されており、上記のテープ識別センサ110によってこの複数の被検出孔が識別され、印刷テープ50の種別を識別するようになっている。なお、印刷テープ50の詳細に関しては後述する。
【0026】
図3は、テープ印刷装置の制御系のブロック図である。図3を参照して、テープ印刷装置1の制御系の構成について説明する。
【0027】
テープ印刷装置1は、操作部101により構成されている。そして、操作部101は、キーボード4およびディスプレイ9を有して構成されている。操作部101は、ユーザによる文字情報の入力や各種情報の表示などのユーザーインタフェースを司っている。
【0028】
また、テープ印刷装置1は、印刷機構部130を構成する文字印刷部102により構成されている。そして、文字印刷部102は、テープカートリッジ30、印刷ヘッド22および印刷送りモータ25を有して構成されている。文字印刷部102は、印刷テープ50およびインクリボン60を送りながら、入力された文字情報に基づく文字データを印刷テープ50(詳細には記録テープ52)面上に印刷する。
【0029】
また、テープ印刷装置1は、カット機構部140を構成するカッタユニット103により構成されている。カッタユニット103は、フルカッター72、ハーフカッター74、および、これらをそれぞれ駆動するフルカッタモータ71およびハーフカッタモータ73を有して構成されている。
【0030】
そして、カッタユニット103は、印刷済みの印刷テープ50にフルカット(印刷テープ50を完全にカット)およびハーフカット(印刷テープ50の記録テープ52および粘着層51までをカット)を行なう。また、テープ印刷装置1は、検出部104により構成されている。検出部104は、テープ識別センサ110などの各種センサ(図示省略)を有し、各種検出を行なう。
【0031】
更に、テープ印刷装置1は、各部を駆動する駆動部105と、各部と接続されてテープ印刷装置1全体を制御する制御部100とにより構成されている。なお、駆動部105は、ディスプレイドライバ112、ヘッドドライバ113、印刷送りモータドライバ114およびカッタモータドライバ115を有して構成されている。
【0032】
制御部100は、CPU120、ROM121、RAM122および入力制御装置(IOC:Input Output Controller)123を備え、互いに内部バス124により接続されている。そして、CPU120は、ROM121内の制御プログラムにしたがって、IOC123を介してテープ印刷装置1内の各部から各種信号・データを入力する。
【0033】
また、制御部100は、入力した各種信号・データに基づいて、RAM122内の各種データを処理し、IOC123を介してテープ印刷装置1内の各部に各種信号データを出力し、これにより文字印刷やカットなどの制御を行なう。
【0034】
制御部100の制御により、印刷テープ50に対して文字印刷を行い、カットしてテープ片50aを得ることができる。なお、カット処理後のテープ片50aは、文字ラベルとして、被着体80(図4参照)に貼着される。なお、被着体80として、例えば、スクラップブッキングにおける写真やその台紙などが挙げられる。
【0035】
図4は、印刷テープの断面図であり、同図(a)は、印刷テープの構成を示す断面図であり、同図(b)は、印刷テープを被着体に貼着した場合の断面図である。図4を参照して、印刷テープ50の説明を行なう。
【0036】
図4(a)に示すように、印刷テープ50は、裏面に粘着層51が設けられた記録テープ52と、この粘着層51により貼着された剥離テープ53とから構成されている。
【0037】
また、印刷テープ50は、印刷機構部130(印刷ヘッド22)により記録テープ52の面上に、インクリボン60のインク60aが熱転写されることにより、印刷が行なわれる。また、上述したように、印刷済みの印刷テープ50は、カット機構部140によりカットされ、テープ片50aが得られる。
【0038】
記録テープ52は、本実施形態では、PET(ポリエチレンテレフタレート)基材で構成されている。基材は、この他に、PE(ポリエチレン)、OPP(延伸ポリプロピレン)および紙など各種基材を使用することができる。
【0039】
また、剥離テープ53は、本実施形態では、紙基材を用い、この紙基材の粘着層51に貼着する面側にPEをラミネートして構成されている。剥離テープ53は、PEをラミネートすることにより、粘着層51との粘着力を調整している。なお、基材は、この他に、化学パルプを原料としたグラシン紙、PETおよびPEなどを使用することもできる。また、粘着力の調整方法として、PEのラミネートの他、シリコン樹脂で処理する方法や、両方を併用する方法など各種ある。
【0040】
また、粘着層51は、本実施形態では、酸を含まない(アシッドフリー)部材で構成されている。そして、粘着層51におけるpH(水素イオン指数)値は7から11の間としているが、本実施形態では略7となっている。
【0041】
図4(b)に示すように、印刷済みの印刷テープ50(テープ片50a)は、ユーザにより、剥離テープ53を剥がし、粘着層51を設ける記録テープ52が被着体80の表面に貼着される。符号の80aは、記録テープ52の粘着層51が被着体80に貼着された被着体80の貼着部分周辺を示している。
【0042】
上述した、実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の印刷テープ50によれば、粘着層51が、アシッドフリー部材で構成されることにより、印刷テープ50の剥離テープ53を剥がし、記録テープ52の粘着層51を被着体80に貼着した場合、被着体80の貼着部分周辺80aに対して、変色などの不具合発生を防止することができる。従って、被着体80の長期保存に適した印刷テープ50が実現できる。本実施形態の印刷テープ50は、例えば、スクラップブッキングなどを行なう場合、最適なものとして利用することができる。
【0043】
(2)本実施形態のテープカートリッジ30は、記録テープ52を外側にし、剥離テープ53を内側にしてロール状に巻回して印刷テープ50をカートリッジケース33内に収容している。これにより、被着体80に変色などの不具合を発生させない印刷テープ50を収容するテープカートリッジ30が可能となる。
【0044】
(3)本実施形態のテープ印刷装置1によれば、カートリッジ装着部20と印刷機構部130とカット機構部140とを有することにより、被着体80に変色などの不具合を発生させない印刷テープ50に対して、印刷およびカット(フルカットまたはハーフカット)を行なうことが可能なテープ印刷装置1が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るテープ印刷装置の斜視図。
【図2】開蓋状態のテープ印刷装置の斜視図。
【図3】テープ印刷装置の制御系のブロック図。
【図4】印刷テープの断面図であり、(a)は印刷テープの構成を示す断面図であり、(b)は印刷テープを被着体に貼着した場合の断面図。
【図5】従来の印刷テープの断面図であり、(a)は印刷テープの構成を示す断面図であり、(b)は印刷テープを被着体に貼着した場合の断面図。
【符号の説明】
【0046】
1…テープ印刷装置、2…装置本体、20…カートリッジ装着部、22…印刷ヘッド、30…テープカートリッジ、50…印刷テープ、50a…テープ片、51…粘着層、52…記録テープ、53…剥離テープ、60…インクリボン、60a…インク、80…被着体、102…文字印刷部、103…カッタユニット、130…印刷機構部、140…カット機構部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に粘着層が設けられて印刷される記録テープと、前記粘着層により貼着される剥離テープとから構成される印刷テープにおいて、
前記粘着層は、酸を含まない部材で構成されることを特徴とする印刷テープ。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷テープを収容するテープカートリッジにおいて、
前記記録テープを外側にし、前記剥離テープを内側にしてロール状に巻回して前記印刷テープを収容することを特徴とするテープカートリッジ。
【請求項3】
請求項2に記載のテープカートリッジを装着するカートリッジ装着部と、
前記テープカートリッジから繰り出された前記印刷テープを送りながら前記記録テープに印刷を行なう印刷機構部と、
前記印刷機構部により印刷された前記印刷テープをカットするカット機構部と、を有することを特徴とするテープ印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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