説明

印刷媒体供給機構および印刷装置

【課題】ロール紙のような印刷媒体を引き出し始める際の慣性負荷を低減し、印刷開始時の印刷媒体の搬送遅れを抑制することが可能な印刷媒体供給機構を提供する。
【解決手段】ロール紙Rの巻き取り中心に挿通され、ロール紙Rを回転可能に支持する回転軸14と、回転軸14を支持する回動部材12と、を有し、回動部材12は、回転軸14の延在方向と平行、且つ回転軸14の延長軸上とは異なる位置に設定された回動軸13の周りを回動自在に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体供給機構および印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状の記録紙を印刷媒体として用い、記録紙をロール状に巻き取った構成のロ
ール紙を備えたプリンターが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。このような
プリンターは、POS端末や現金自動預け払い機(ATM)などの業務用機器の印刷手段
として多く使用されている。以下、印刷媒体としてロール紙を用いるプリンターを「ロー
ル紙プリンター」と称することがある。
【0003】
ロール紙プリンターでは、記録紙に印刷を行う印刷部の他に、ロール紙から記録紙を引
き出しながら搬送する搬送手段を有する。このようなプリンターとして、主としてモータ
ーで駆動するプラテン(搬送手段)で記録紙を引き出しながら搬送方向下流の印刷手段に
搬送し、印刷手段で順次印刷しながら印刷物として排出する構成を例示することができる

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−301403号公報
【特許文献2】特開2002−356252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなプリンターを業務用機器に採用する場合、ロール紙の補充や交換の頻度を下
げ、長時間使用を可能とするため、巻き取り半径の大きいロール紙を用いることがある。
しかし、巻き取り径の大きいロール紙を用いる場合、ロール紙の慣性力が大きいため、ロ
ール紙を回転させて引き出すためには大きな力が必要となるため、搬送手段の力が不足し
、印刷開始時に記録紙を適時に引き出すことができないおそれがある。
【0006】
ロール紙プリンターでは、一定の速度で紙送りを行い、紙送り方向に対して交差する印
刷手段で印刷を行うため、紙送り速度にばらつきが生じると、印刷不良となるおそれがあ
る。したがって、上述のように巻き取り径の大きいロール紙を用いる場合には、印刷開始
時に印刷不良となるおそれがある。
【0007】
これに対し、例えば、搬送手段を構成するモーターの能力を高めることも考えられるが
、消費電力の増大や装置の大型化に繋がるため、商品設計上、適切な解決策とはなりえな
いこともある。したがって、簡便な構成で引き出し時の負荷を下げることが可能な技術が
求められていた。
【0008】
また、ロール紙を用いたプリンターのみならず、ロール紙以外の帯状の印刷媒体を円筒
状に巻き取ったものを保持し、引き出しながら印刷する場合には、上述の課題が同様に発
生し得る。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ロール紙のように円筒状に巻
き取られた印刷媒体を引き出し始める際の慣性負荷を低減し、印刷開始時の印刷媒体の搬
送遅れを抑制することが可能な印刷媒体供給機構を提供することを目的とする。また、こ
のような印刷媒体供給機構を有し、印刷不良を抑制した印刷装置を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の印刷媒体供給機構は、円筒状に巻き取られた帯状
の印刷媒体の巻き取り中心に挿通され、前記印刷媒体を回転可能に支持する回転軸と、前
記回転軸を支持する回動部と、を有し、前記回動部は、前記回転軸の延在方向と平行、且
つ前記回転軸の延長軸上とは異なる位置に設定された回動軸の周りを回動自在に設けられ
ていることを特徴とする。
【0011】
印刷媒体を引き出そうとすると、円筒状に巻き取られた印刷媒体には、印刷媒体を引き
出すように回転させる方向への力が加わる。同時に、印刷媒体を介して印刷媒体を支持す
る回動部材にも、回動軸を中心として回動部材を回動させる方向への力が加わる。
【0012】
すると、印刷媒体は、回動部材と同時に紙送り方向に回動することとなり、結果、記録
紙がロール紙から引き出されていなくても、サーマルヘッドにおける印刷に遅れることな
く記録紙の搬送が行われる。
【0013】
また、ロール紙が回動する間に、ロール紙の回転が始まり、ロール紙から記録紙が引き
出される。
【0014】
このような、円筒状の印刷媒体全体の回動による引き出された印刷媒体の移動、および
、円筒状の印刷媒体全体が回転することによる引き出された印刷媒体の移動、が協働して
作用することにより、印刷媒体を引き出し始める際の慣性負荷が低減される。
【0015】
そのため、この構成によれば、印刷開始時の印刷媒体の搬送遅れが生じにくい印刷媒体
供給機構とすることができる。
【0016】
本発明においては、前記回動部は、前記印刷媒体を挟持するとともに前記回動軸の周り
を回動自在に設けられた一対の回動部材を有し、前記回転軸は、前記一対の回動部材にま
たがって設けられていることが望ましい。
この構成によれば、印刷媒体の荷重が一対の回動部材に分散してかかるため、回動部材
の回動軸部分にかかる負荷を分散させ、破損を抑制することができる。
【0017】
本発明においては、前記回動部は、前記一対の回動部材を互いに接続する接続部材を有
することが望ましい。
この構成によれば、接続部材を介して一対の回動部材の動きが同期するため、容易に回
動部材を回動させることが可能となる。そのため、印刷媒体を引き出し始める際の慣性負
荷を容易に低減させることができる。
【0018】
本発明においては、前記回動部は、前記回転軸と前記回動軸との離間距離が、前記印刷
媒体の残量が少ないほど短くなるように変化することが望ましい。
この構成によれば、印刷媒体を回動軸の周りに回動、または回転軸の周りに回転させる
ために必要な力(動負荷)が小さくなるにしたがって、回転軸と回動軸との離間距離が短
くなるため、印刷媒体を牽引したときに円筒状の印刷媒体に加わるトルクも小さくなる。
そのため、円筒状の印刷媒体の残量が変化しても、印刷媒体に過度に大きな力が加わるこ
とがなく、印刷媒体の弛みが生じにくくなる。
【0019】
本発明においては、前記印刷媒体は、帯状の記録紙が巻き取られたロール紙であること
が望ましい。
この構成によれば、巻き取り半径の大きいロール紙を支持したとしても、印刷開始時の
搬送遅れを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の印刷装置は、上述の印刷媒体供給機構と、前記印刷媒体供給機構に保持
された、円筒状に巻き取られた帯状の印刷媒体を引き出し搬送する搬送手段と、引き出さ
れた前記印刷媒体に印刷する印刷手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、印刷開始時の印刷不良を抑制した印刷装置とすることが可能となる

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の印刷媒体供給機構を有するプリンターの概略斜視図である。
【図2】第1実施形態の印刷媒体供給機構を有するプリンターの断面図である。
【図3】第1実施形態に係る印刷媒体供給機構の機能の説明図である。
【図4】印刷媒体供給機構の変形例を示す概略斜視図である。
【図5】第2実施形態の印刷媒体供給機構を有するプリンターの断面図である。
【図6】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、図1〜図4を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る印刷媒体供給機構およ
びプリンター(印刷装置)について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面
を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0023】
図1,2は、本実施形態の印刷媒体供給機構を有するプリンター(印刷装置)の説明図
であり、図1は概略斜視図、図2は図1の線分X−Xにおける矢視断面図である。本実施
形態においては、プリンターが、印刷媒体として感熱紙を用いる感熱発色方式を採用した
サーマルプリンターであることとして説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のプリンター1は、印刷媒体として記録紙Sを円筒状に
巻き取ったロール紙Rを用いるロール紙プリンターである。プリンター1は、ロール紙R
を支持し供給する供給部(印刷媒体供給機構)10と、ロール紙Rから引き出された記録
紙Sに印刷する印刷部20と、上方に開口部を有する箱型のフレーム30と、を有してい
る。供給部10および印刷部20は、フレーム30に固定されている。
【0025】
供給部10は、フレーム30の両側に固定された一対の支持足11により支持されてい
る。また、印刷部20は、フレーム30の両側に固定された一対の支持足29により支持
されており、フレーム30の上方において供給部10に支持されたロール紙Rと対向する
ようにして配置されている。
【0026】
記録紙Sは、発色剤がバインダ等により保持されている発色層からなる印刷面を有して
いる。ロール紙Rは、記録紙Sが印刷面を外面にして円筒状に巻き取られたものである。
【0027】
このようなプリンター1では、まず、供給部10に配置されたロール紙Rから記録紙S
が引き出され、引き出された記録紙Sはロール紙Rと対向する印刷部20の内部に挿入口
(不図示)から挿通される。印刷部20の内部で印刷がされた記録紙Sは、排出口Bから
排出され、排出口Bに設けられた切断部24において切断される。プリンター1は、概略
するとこのように動作する。
【0028】
次に、図2を用いて、記録紙Sの紙送り方向に沿って、プリンター1の各構成について
さらに詳細に説明する。
【0029】
供給部(印刷媒体供給機構)10は、一対の支持足11のそれぞれに、ロール紙Rに面
して設けられた一対の回動部材12と、回動部材12を支持足11に接続し回動自在に支
持する回動軸13と、ロール紙Rに挿通しロール紙Rを回転可能に支持する回転軸14と
、一対の回動部材12のそれぞれに設けられ、一対の回動部材12の間にまたがって掛け
渡される回転軸14を支持する軸受け部15と、を有している。回動軸13は、回転軸1
4の延在方向と平行、且つ回転軸14の延長軸上とは異なる位置に設定されている。なお
、一対の回動部材12は、本発明の回動部に該当する。
【0030】
供給部10の各構成については、それぞれの機能を損なわなければ、種々の形成材料や
種々の構成を採用することができる。例えば、支持足11や回動部材12や回転軸14は
、ロール紙Rの重量による荷重で変形しない程度の剛性を有するならば、樹脂材料や金属
材料など種々の形成材料を用いて形成することができる。また、回動軸13や回転軸14
には、回動または回転の動作を補助する目的で、必要に応じてベアリングなど摩擦を抑制
する構成を採用することもできる。
【0031】
印刷部20は、筐体21と、筐体21内であって記録紙Sの搬送経路の途中に設けられ
たサーマルヘッド(印刷手段)22と、サーマルヘッド22と対向して設けられたプラテ
ン(搬送手段)23と、印刷された記録紙Sを所定の印刷単位毎に切断する切断部24と
、を有している。供給部10から引き出された記録紙Sは、対向配置された印刷部20の
挿入口Aから印刷部20の内部に挿入され、サーマルヘッド22で印刷された後、記録紙
Sの搬送経路の下流であって排出口B付近に設けられた切断部24で印刷単位毎に切断さ
れる。
【0032】
サーマルヘッド22は、記録紙Sに印刷するための複数の発熱素子を有している。サー
マルヘッド22に配置された発熱素子は、通電により選択的に発熱し、この熱エネルギー
が記録紙Sに含まれる発色剤と選択的に反応することにより、記録紙Sの印刷面上に種々
の情報を印刷する。サーマルヘッド22は、プラテン23方向に付勢して設けられており
、サーマルヘッド22とプラテン23との間で記録紙Sを挟持する。
【0033】
プラテン23は、ゴム等の弾性部材により円筒形のローラー状に形成され、回転可能に
支持されている。また、プラテン23には、プラテン23を回転駆動させるためのモータ
ー(不図示)が設けられており、プラテン23を回転駆動させる。したがって、プラテン
23が回転することにより、記録紙Sを搬送経路の下流へ搬送する。
【0034】
切断部24は、排出口Bを挟んで対向配置された可動刃241と固定刃242とを有し
ている。切断部24では、可動刃241が固定刃242の方に移動し、可動刃241と固
定刃242とがハサミ状に交叉することにより、記録紙Sを切断する。
【0035】
このようなプリンター1では、プラテン23が回転することで、ロール紙Rから記録紙
Sを引き出しながら印刷を行う。ここで、プリンター1を業務用機器に採用する場合、ロ
ール紙Rの補充や交換の頻度を下げ、長時間使用を可能とするため、巻き取り半径の大き
いロール紙Rを用いることがある。例えば、巻き取り半径が10インチのロール紙Rでは
、新品の状態で約4kgの重量となるものもあり、プラテン23には、このようなロール
紙Rからの記録紙Sの引き出しを行うことが求められる。
【0036】
一方で、プリンター1に求められる性能としては、印刷速度の向上が挙げられる。その
ため、ロール紙プリンターでは、ロール紙Rから素早く記録紙Sを引き出しながら、印刷
を行うことが求められる。したがって、プラテン23は、所望の印刷速度を実現できる速
度でロール紙Rから記録紙Sを引き出すことが必要となる。特に、ロール紙Rが停止して
いる印刷開始時には、記録紙Sの引き出し速度が、短時間のうちに所望の印刷速度に達す
ることが求められる。
【0037】
このような要求に対し、本発明のプリンター1が備える供給部10では、回動部材12
を有することで、ロール紙Rからの記録紙Sの引き出しに必要な力を少なくし、プラテン
23に接続されたモーターへの負荷を小さくしている。
【0038】
図3は、プリンター1が有する供給部10の機能の説明図である。図では、印刷開始前
(始動前)のロール紙Rおよび回動部材12の様子を一点鎖線で示し、印刷開始後(始動
後)のロール紙Rおよび回動部材12の様子を二点鎖線で示している。
【0039】
印刷開始時にプラテン23が回転して記録紙Sを引っ張ると、ロール紙Rには、記録紙
Sを引き出すようにロール紙Rを回転させる方向に力が加わる。同時に、記録紙Sを介し
てロール紙Rに伝わったプラテン23による張力は、ロール紙Rから回転軸14および軸
受け部15を介してロール紙Rを支持する回動部材12に伝わり、回動軸13を中心とし
て回動部材12を回動させる方向に力が加わる。
【0040】
すると、ロール紙Rは、回動部材12と同時に紙送り方向に回動することとなり、結果
、記録紙Sがロール紙Rから引き出されていなくても、サーマルヘッド22における印刷
に遅れることなく記録紙Sの搬送が行われる。また、ロール紙Rが回動する間に、ロール
紙Rの回転が始まり、ロール紙Rから記録紙Sが引き出される。
【0041】
このような、ロール紙Rの回動による記録紙Sの移動、および、ロール紙Rが回転する
ことによる記録紙Sの移動、が協働して作用することにより、ロール紙Rを引き出し始め
る際の慣性負荷が低減され、印刷開始時の記録紙Sの搬送遅れが生じにくくなる。
【0042】
さらに、ロール紙Rは、回転軸14が挿通され、一対の回動部材12に支持されている
。そのため、ロール紙Rの荷重は一対の回動部材12に分散してかかることとなり、回動
部材12の回動軸部分にかかる負荷が分散され、回動部材12の破損を抑制することがで
きる。
本実施形態の供給部10を有するプリンター1は、以上のような構成および機能となっ
ている。
【0043】
以上のような構成の供給部10によれば、印刷開始時の記録紙Sの搬送遅れが抑制され
、印刷開始時に印刷不良が生じにくくなる。
【0044】
また、以上のような構成のプリンター1によれば、上述のような供給部10を備えてい
るため、印刷開始時の印刷不良を抑制することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態においては、印刷媒体がロール紙Rであることとして説明したが、こ
れに限らず、例えば、円筒状に巻き取った帯状の布や不織布のような、円筒状に巻き取っ
た他の印刷媒体を供給することを目的とした機構としてもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、プリンター1が感熱発色方式による所謂サーマルプリン
ターであることとしたが、これに限らず、インクジェットプリンターやレーザープリンタ
ーなど、他の印刷方式を採用するプリンターにも適用可能である。
【0047】
また、本実施形態においては、回転軸14が回動部材12と別体に設けられていること
としたが、これに限らず、回転軸14と回動部材12とが一体に設けられていることとし
てもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、一対の回動部材12が支持足11のそれぞれに設けられ
ていることとしたが、これに限らない。例えば、回動部材12は一方の支持足11にのみ
設けられ、回動部材12に一体に設けられた回転軸14が、ロール紙Rを片持ちで支持し
ていることとしても、本発明の効果を奏する。
【0049】
また、本実施形態においては、回動部として、支持足11にそれぞれ独立して設けられ
た一対の回動部材12について説明したが、例えば、図4に示すように、回動部が、一対
の回動部材12を互いに接続する接続部材19を有することとしてもよい。一対の回動部
材12が接続部材19で接続されていると、一対の回動部材12の動きが同期するため、
より容易に回動部材12を回動させることが可能となる。
【0050】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る印刷媒体供給機構およびプリンターの説明図であ
り、第1実施形態の図2に対応する断面図である。本実施形態の印刷媒体供給機構は、第
1実施形態の印刷媒体供給機構と一部共通している。本実施形態において第1実施形態と
共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0051】
図5(a)(b)に示すプリンター2は、ロール紙Rを支持する供給部40を有してい
る。
供給部40は、フレーム30の両側に設けられた一対の支持足41と、支持足41のそれ
ぞれにロール紙Rに面して設けられた一対の回動部材42と、回動部材42を支持足41
に接続し回動自在に支持する回動軸43と、ロール紙Rに挿通しロール紙Rを回転可能に
支持する回転軸44と、回動部材42に設けられ回転軸44を支持する軸受け部45と、
を有している。なお、一対の回動部材42は、本発明の回動部に該当する。
【0052】
支持足41、回動軸43、回転軸44,軸受け部45については、それぞれ上述の第1
実施形態に記載した支持足11、回動軸13、回転軸14,軸受け部15と同様の構成で
あるため、説明を省略する。
【0053】
回動部材42は、回動軸43が接続された第1部材421と、第1部材421と離間し
、軸受け部45が設けられた第2部材422と、第1部材421および第2部材422を
接続する接続軸423および付勢部材424と、を有している。また、第2部材422は
、接続軸423の延在方向に第1部材421との離間距離を変更可能に設けられており、
付勢部材424は、第2部材422を第1部材421の方向に付勢するように設けられて
いる。
【0054】
このような回動部材42を有する供給部40は、次のように駆動する。
まず、図5(a)に示すように、新しいロール紙Rを取り付けた場合、第2部材422
は、ロール紙Rの重量により下方に沈み、付勢部材424による弾性力と均衡する位置、
または接続軸423の延在方向で第1部材421と離間しうる限界の位置、まで移動して
配置される。ロール紙Rは、第2部材422の移動に伴って、回動軸43から離れて配置
される。ここで、回動軸43とロール紙Rとの距離とは、回動軸43と回転軸44の中心
との離間距離とする。
【0055】
対して、図5(b)に示すように、記録紙Sが消費されると、ロール紙Rの巻き取り半
径が小さくなり、同時にロール紙Rが軽くなるため、付勢部材424により第2部材42
2が引き上げられる。すると、ロール紙Rは、第2部材422の移動に伴って、回動軸4
3の方に引き寄せられて配置され、回動軸43と回転軸44の中心との離間距離が短くな
る。
【0056】
ここで、ロール紙Rの残量が少なくなると、ロール紙Rを回動軸43周りに回動、また
は回転軸44周りに回転させるために必要な力(動負荷)が小さくなる。
【0057】
一方、ロール紙Rの残量が少なくなっても回動軸43とロール紙Rとの距離が図5(a
)と同じである場合、プラテン23による牽引で得られるトルクは一定である。すると、
ロール紙Rの残量が少なくなるにしたがって、ロール紙Rには、ロール紙Rの回動または
回転に必要な力(動負荷)に対して、徐々に相対的に大きなトルクが加わることとなる。
その結果、プリンター内では、記録紙Sを強く引き出すあまり、記録紙Sの弛みが生じや
すくなる。このような記録紙Sの弛みは、紙の折れや、挿入口Aでの詰まりの原因となり
、印刷不良を起こすおそれが生じる。
【0058】
対して、本実施形態の供給部40によれば、ロール紙Rの残量が少なくなると(ロール
紙Rの重量が小さくなると)、回動軸43とロール紙Rとの距離(回動軸43と回転軸4
4の中心との離間距離)が短くなり、プラテン23による牽引で得られるトルクは小さく
なる。
【0059】
すなわち、ロール紙Rを回動軸43周りに回動、または回転軸44周りに回転させるた
めに必要な力(動負荷)が小さくなるにしたがって、プラテン23による牽引で得られる
トルクも小さくなるため、ロール紙Rに過度に大きな力が加わることがなく、プリンター
内で記録紙Sの弛みが生じにくくなる。
【0060】
その結果、プラテン23が回転して記録紙Sを引っ張ると、第1実施形態で示したよう
に、ロール紙Rの回動による記録紙Sの移動、および、ロール紙Rが回転することによる
記録紙Sの移動、が協働して機能し、ロール紙Rを引き出し始める際の慣性負荷が低減さ
れ、印刷開始時の記録紙Sの搬送遅れを生じることなくロール紙Rから記録紙Sを引き出
すことが可能となる。
【0061】
以上のような構成の供給部40であっても、印刷開始時の記録紙Sの搬送遅れが抑制さ
れ、印刷開始時に印刷不良が生じにくくなる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、
本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成
部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において
設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0063】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。
【0064】
本実施例では、ロール紙を支持する機能のみを備えた支持部を有するプリンターを比較
例とし、本発明の印刷媒体供給機構を有するプリンター3種を実施例1〜3として用い、
ロール紙から記録紙を引き出す時の負荷を測定した。実施例2、3は、実施例1における
回動軸とロール紙中心との距離をLとしたときに、それぞれ距離2L,3L離れた位置に
回動軸を設定したものについて測定した。また、各実施例および比較例では、巻き取り半
径が異なる4種のロール紙について測定を行った。
【0065】
本実施例の結果を、図6のグラフに示す。図6に示すグラフでは、横軸にロール紙の巻
き取り半径、縦軸にロール紙から記録紙を引き出すために要する負荷(動負荷)を示す。
【0066】
図に示すように、いずれの巻き取り半径のロール紙においても、実施例は比較例よりも
引き出し時の動負荷が小さくなった。例えば、実施例において、10インチの巻き取り半
径のロール紙を引き出すために要する負荷は、比較例においては、8インチの巻き取り半
径のロール紙を引き出すために要する負荷に相当している。
【0067】
また、実施例1〜3の比較により、回動軸とロール紙中心との距離が小さくなると、よ
り動負荷が大きくなることが分かった。例えば、回動軸とロール紙中心との距離が、実施
例3の条件(3L)のままである状態で、ロール紙の巻き取り半径が小さくなる場合と比
べ、回動軸とロール紙中心との距離が実施例3の条件(3L)から徐々に短くなる(実施
例3:3L,実施例2:2L,実施例1:L)場合では、動負荷の変動が小さくなる。
これにより、本発明の有用性が確かめられた。
【符号の説明】
【0068】
1…プリンター(印刷装置)、10…供給部(印刷媒体供給機構)、12…回動部材(回
動部)、13…回転軸、19…接続部材、22…サーマルヘッド(印刷手段)、23…プ
ラテン(搬送手段)、R…記録紙(印刷媒体)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に巻き取られた帯状の印刷媒体の巻き取り中心に挿通され、前記印刷媒体を回転
可能に支持する回転軸と、
前記回転軸を支持する回動部と、を有し、
前記回動部は、前記回転軸の延在方向と平行、且つ前記回転軸の延長軸上とは異なる位
置に設定された回動軸の周りを回動自在に設けられていることを特徴とする印刷媒体供給
機構。
【請求項2】
前記回動部は、前記印刷媒体を挟持する一対の回動部材を有し、
前記回転軸は、前記一対の回動部材にまたがって設けられていることを特徴とする請求
項1に記載の印刷媒体供給機構。
【請求項3】
前記回動部は、前記一対の回動部材を互いに接続する接続部材を有することを特徴とす
る請求項2に記載の印刷媒体供給機構。
【請求項4】
前記回動部は、前記回転軸と前記回動軸との離間距離が、前記印刷媒体の残量が少ない
ほど短くなるように変化することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の印
刷媒体供給機構。
【請求項5】
前記印刷媒体は、帯状の記録紙が巻き取られたロール紙であることを特徴とする請求項
1から4のいずれか1項に記載の印刷媒体供給機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷媒体供給機構と、
前記印刷媒体供給機構に保持された、円筒状に巻き取られた帯状の印刷媒体を引き出し搬
送する搬送手段と、
引き出された前記印刷媒体に印刷する印刷手段と、を有することを特徴とする印刷装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218343(P2012−218343A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87988(P2011−87988)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】