説明

印刷機における胴のためのパッキングスリーブ

印刷機における胴(42)、特に反動又はブランケット胴のための、空所(16)の排気可能な構造を有するパッキングスリーブ(10)が開示されている。パッキングスリーブ(10)の内径は、排気可能な構造に負圧を提供することによって変化されることができる。胴にパッキングスリーブを被せ嵌めることによって胴の外径が増大されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機における胴のためのパッキングスリーブに関する。本発明はさらにパッキングスリーブの内径を変化させる方法に関する。
【0002】
グラフィック工業、特にウェブオフセット印刷のための印刷機において、パッキングスリーブとしても知られるスリーブ状胴パッキングがしばしば使用される。このようなパッキングスリーブは、運転中にこのパッキングスリーブが被せ嵌められる胴にしっかりと結合されるように、取り付けられた状態においてパッキングスリーブの変形又は延長が動的な回復力を生じるように、パッキングスリーブの内径を、パッキングスリーブが被せ嵌められる胴の外径よりも僅かに、しかし十分に小さくすることが一般的である。パッキングスリーブの固定状態を変更するために、すなわち取付け又は取外しのために、パッキングスリーブの内径は力の作用によって拡大される:一般的な方法は例えば米国特許第6368100号明細書に記載されている。気泡が生ぜしめられ、パッキングスリーブを延長させるために動的効果がパッキングスリーブに提供されるように、空気の流れが、存在する胴から逃げることができる。このような複雑な補助装置を回避することができることが好適である。
【0003】
本発明の目的は、印刷機における胴への簡単な取付け及び胴からの簡単な取外しを可能にするパッキングスリーブを製造することである。
【0004】
この目的は本発明によれば請求項1による特徴を有する印刷機における胴のためのパッキングスリーブによって達成される。本発明の有利な発展は従属請求項において特徴付けられている。
【0005】
本発明によれば、胴、特に印刷機における版胴又はブランケット胴に適したパッキングスリーブは空所の排気可能な構造を有する。パッキングスリーブは、特に刷版又はブランケットのための中間スリーブと呼ばれることもできる。空所という用語は、パッキングスリーブにおける全ての異なる種類の肉眼で見える開口又は肉眼で見える中空空間、特にキャビティ、キャバーン、ホロウ、パッセージウェイ、セル、ハニカム及びチャネルを意味する。パッキングスリーブの外周面は特に継目なしであることができる。
【0006】
空所の排気可能な構造及び/又は空所の形状は、排気可能な構造において負圧が生ぜしめられるとパッキングスリーブの内径が増大するように及び/又はパッキングスリーブの外径が減少するように提供されている。この場合、力が加えられていない状態におけるパッキングスリーブの内径よりも僅かに大きな直径を有する被せ嵌められる胴への取付け及びこの胴からの取外しが容易になる。
【0007】
パッキングスリーブの好適な実施形態において、排気可能な構造は複数の個々の空所を有することができる及び/又は廃棄可能な構造の複数の空所は互いに結合されていることができる。その結果、構造は空所の系又はネットワークと呼ばれることもできる。
【0008】
択一的に又は付加的に、本発明によるパッキングスリーブの有利な構造において、空所は、パッキングスリーブの図軸線、特に実質的に回転対称的なパッキングスリーブの回転軸線又は主軸線に対して実質的に平行に延びていることができる。
【0009】
ブランケット胴における中間スリーブとして使用するために、本発明によるパッキングスリーブの外周面は、好適には、実質的に直円柱形の周面を成している。
【0010】
版胴における中間スリーブとして使用するために、パッキングスリーブは好適には、外周面において、版胴パッキングを固定するための少なくとも1つの凹所を有する。
【0011】
有利な実施形態において、パッキングスリーブは内周面において少なくとも1つの凹所又は1つの突出部を有する。このような凹所又は突出部は、被せ嵌める胴において対応して逆に形成された突出部又は凹所のために設けられており、これにより、特に放射方向でのパッキングスリーブの固定が達成されることができる。
【0012】
1つの実施形態において、本発明によるパッキングスリーブは少なくとも1つの環状の側板を有し、この側板は、排気可能な構造と結合されたキャビティ又は中空空間を有する。排気装置、例えば真空ポンプが、このキャビティに結合されることができる。
【0013】
この説明に開示されているように、パッキングスリーブの内径を変化させる方法も本発明の概念に関連している。本発明による方法では、パッキングスリーブの排気可能な構造に負圧が提供される。特に、本発明による方法は、印刷機の胴におけるパッキングスリーブの固定状態が変化している間に行われることができ、パッキングスリーブの内径は負圧の提供により増大される。したがって、力が加えられていない(負圧が提供されていない)状態におけるパッキングスリーブの内径よりも僅かに大きな外径を有する胴におけるパッキングスリーブの取付け又は取外しは、有利には容易又は単純にされる。
【0014】
本発明によるパッキングスリーブは、有利には、印刷機における胴、特に版胴又はブランケット胴(転移胴)の有効直径又は有効周長を増大するために使用されることができる。すなわち、印刷機における胴にパッキングスリーブを被せ嵌めることによって、印刷機における胴の外径を増大するための、この説明によるパッキングスリーブの本発明による使用が本発明の概念に関連している。特定の胴の多数の異なる有効周長を達成するために、様々な厚さの多数のパッキングスリーブが提供されなければならないことが当業者には即座に明らかである。有効周長の変化は特に、可変印刷長さを達成するために、ウェブオフセット印刷の技術のために有利である。
【0015】
本発明の別の利点及び有利な実施形態及び発展を、以下の図面及びその説明を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明によるパッキングスリーブの実施形態を概略的に示しており、図1a及び図1bには詳細が示されている。この実施形態において、本発明によるパッキングスリーブ10は、管12を有しており、この管の各端部にはリングの形式の側板14が配置されており、これにより、パッキングスリーブ10は、被せ嵌める胴の図軸線に対して実質的に平行にこの胴に被せ嵌められることができる。管12への側板14の固定は接着剤接合20によって行われることができる。図1a及び図1bの詳細は、個々の拡大された断面を示している。図1aの詳細には、管12が、排気可能な空所16の構造を有することが見られ、これらの空所は、パッキングスリーブ12の図軸線に対して実質的に平行に延びている。これらの空所16は、側板14に設けられたキャビティ18に接続されている。側板14は、小さな角度のテーパ部を有する。排気手段、例えば真空ポンプは、空所16の排気可能な構造に負圧を生ぜしめるために開口24に接続されることができる。この負圧は、通常は100分の1〜2ミリメートルだけ、収縮、すなわちパッキングスリーブの外径の減少及び内径の増大を生ぜしめる。図1bの詳細には、側板14が、排気可能な構造の空所16を接続するキャビティ18を有することが見られる。すなわち、本発明によるパッキングスリーブ10のこの実施形態において、結合した空所16の系又はネットワークが存在する。本発明によるパッキングスリーブ10の構造のために、被せ嵌める胴への取付け及び被せ嵌める胴からの取り外しが容易になるように、低い弾性係数を有する材料が使用される。印刷モードのために、パッキングスリーブは、好適には、有利には、被せ嵌める胴の鋼のものよりも僅かに低い熱膨張係数をも有する。
【0017】
負圧が生じた状態において、すなわち、内径が拡大されている場合、パッキングスリーブ10は、容易にかつ簡便に胴に被せ嵌められる又は胴から取り外されることができる。前記小さな角度22は、印刷機においてパッキングスリーブ10の末端領域を位置決めするのを助ける。外径が減じられているので、刷版又はブランケット、特に刷版スリーブ又はブランケットスリーブは容易にかつ簡便に着脱されることができる。例えば、板状の刷版は、パッキングスリーブ10の取付けの前に、印刷機から離れたところでパッキングスリーブ10に固定されることができる。次いで、刷版は、空所16の排気が終了すると、張設状態でパッキングスリーブ10上に保持される。特別な、しばしば複雑な刷版保持及び/又は刷版クランプ装置はもはや不要である。前記のように、本発明によるパッキングスリーブは様々なフォーマット(外径)で供給されることができるので、特定の一定のフォーマットの胴を有する印刷機において、様々な印刷長さが実現されることができる。
【0018】
図2は、ブランケット胴のための本発明によるパッキングスリーブ10の実施形態を示している。このパッキングスリーブ10は、空所16の規則的な構造26を有している。ここではスタジアム状の断面領域を有する空所16は、実質的にパッキングスリーブ10の回転対称軸線に対して平行に延びている。同心に配置された空所16のグループ、ここでは回転対称軸線から互いに異なる距離に設けられた3つのグループが存在している。グループ内の個々の空所16は、隣接するグループにおける隣接する空所に対して放射状にずれて配置されている。
【0019】
図3は、版胴のための本発明によるパッキングスリーブ10の実施形態に関する概略図である。図2に示された実施形態と同様に、このパッキングスリーブもハニカム構造を有する。板状の刷版の折り曲げられた縁部を収容するために働く台形の凹所28が外周面30に設けられている。パッキングスリーブ10に負圧が提供されると、折り曲げられた縁部が凹所28に導入されることができる。
【0020】
図4は、版胴のための、空所16の排気可能な構造を備えた本発明によるパッキングスリーブ10の択一的な実施形態の概略的な部分図である。図3に示されたような台形の凹所28の代わりに、この実施形態においては、刷版の折り曲げられた縁部を収容するためのV字形の凹所32が設けられている。V字形凹所のアームの間のウェブは、付加的に、凹所における折り曲げられた縁部の位置を安定させる。
【0021】
図5は、本発明によるパッキングスリーブ10が排気された場合の変形動作の説明のための概略図を示している。本発明によるパッキングスリーブ10の実施形態の切抜き図が2つの状態で示されている:破線は、変形させられていないパッキングスリーブ10、すなわち変形していない状態34を示しており、実線は、空所16の排気によって変形させられたパッキングスリーブ10、すなわち変形させられた状態10を示している。空所16の排気可能な構造は、内径の減少及び内径の増大が達成されるように選択又は構成されている。図5には、排気可能な構造の中間部分37(破線によって示されていない)、空所16の中間グループの空所16の間のウェブが、パッキングスリーブの変形が特に内周面及び外周面において生じるように、形状及び位置が実質的に変化しないままであることが明らかに見られる。負圧を提供することは、結果的に、本発明によるパッキングスリーブ10の外径の変化38及び内径の変化40を生ぜしめる。
【0022】
図6は、本発明によるスリーブのより精巧な実施形態が被せ嵌められることができる2つの胴を概略的に示している。前記のように、本発明によるパッキングスリーブの有利な実施形態において、パッキングスリーブの内周面に凹所又は突出部が配置されることができる。つまり、これらの形状は、被せ嵌める胴における逆の形状に対応している。図6の上の図は、例えば、本発明によるパッキングスリーブ10が被せ嵌められる胴42を示しており、この胴は、その外周面にストッパ44、ここでは全周に亘って均一部に分配された3つのストッパ、を有している。これらのストッパ44は、胴42の外周面から突出しており、胴に被せ嵌められる本発明によるパッキングスリーブ10の内周面に設けられた凹所(図示せず)に係合する。
【0023】
図6下の図は、既に説明された突出部の代わりとして又はこの突出部に加えて、本発明によるパッキングスリーブ10が被せ嵌められる胴42が、外周面に配置された凹所46、ここでは、全周に亘って均一に分配された3つの凹所を有することができることを示している。これらの凹所46は、胴に被せ嵌められる本発明によるパッキングスリーブ10の内周面に設けられた突出部(図示せず)を収容する。このように、胴に対するパッキングスリーブ10の相対回動が回避されることができるので有利である。
【0024】
当業者にとって、本発明によるパッキングスリーブが、パッキングスリーブの過圧を提供することができるように構成されることもできることが即座に明らかであり、これにより、必要であるならば、特定の形状又は特定の剛性が達成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるパッキングスリーブの実施形態を概略的に示す図であり、図1a及び図1bには詳細が示されている。
【図2】ブランケット胴のための本発明によるパッキングスリーブの実施形態を示している。
【図3】版胴のための本発明によるパッキングスリーブの実施形態を示している。
【図4】版胴のための本発明によるパッキングスリーブの択一的な実施形態を示す部分図である。
【図5】本発明によるパッキングスリーブが排気された場合の変形動作を説明するための概略的な図である。
【図6】本発明によるパッキングスリーブのより洗練された実施形態が受容されることができる2つの胴を示す概略的な図である。
【符号の説明】
【0026】
10 パッキングスリーブ、 12 管、 14 側板、 16 空所、 18 キャビティ、 20 接着箇所、 22 小さな角度、 24 開口、 26 排気可能な構造、 28 凹所、 30 外周面、 32 V字形の凹所、 34 変形されていない状態、 36 変形された状態、 38 外径の変化、 40 内径の変化、 42 胴、 44 ストッパ、 46 凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機における胴(42)のためのパッキングスリーブ(10)において、該パッキングスリーブ(10)が空所(16)の排気可能な構造を有することを特徴とする、パッキングスリーブ(10)。
【請求項2】
排気可能な構造が複数の個々の空所(16)を含む、及び/又は排気可能な構造の複数の空所(16)が互いに結合されている、請求項1記載のパッキングスリーブ(10)。
【請求項3】
空所(16)がパッキングスリーブ(10)の図軸線に対して実質的に平行に延びている、請求項1又は2記載のパッキングスリーブ(10)。
【請求項4】
パッキングスリーブ(10)の外周面(30)が実質的に、直円形の胴の周面を成している、請求項1から3までのいずれか1項記載のパッキングスリーブ(10)。
【請求項5】
パッキングスリーブ(10)が、外周面に、版胴パッキングを固定するための少なくとも1つの凹所(28)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のパッキングスリーブ。
【請求項6】
パッキングスリーブ(10)が、内周面に、少なくとも1つの凹所又は突出部を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のパッキングスリーブ(10)。
【請求項7】
パッキングスリーブ(10)が、排気可能な構造に接続されたキャビティ(18)を有する少なくとも1つの環状の側板(14)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のパッキングスリーブ(10)。
【請求項8】
パッキングスリーブ(10)の排気可能な構造に、負圧が提供されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のパッキングスリーブ(10)の内径を変化させるための方法。
【請求項9】
印刷機の胴(42)におけるパッキングスリーブ(10)の固定状態の変化の間に、負圧の提供によって内径が増大させられる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
印刷機においてパッキングスリーブ(10)を胴に被せ嵌めることによって印刷機における胴の外径を増大させるための請求項1から9までのいずれか1項記載のパッキングスリーブ(10)の使用。

【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−529343(P2007−529343A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503442(P2007−503442)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000722
【国際公開番号】WO2005/090078
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(594141705)ゴス インターナショナル モンタテール ソシエテ アノニム (41)
【氏名又は名称原語表記】Goss International Montataire、S.A 
【住所又は居所原語表記】Square H.Marinoni、F−60761、Montataire、France
【Fターム(参考)】