説明

印刷機

【課題】印刷機において、印刷品質の向上を図る。
【解決手段】給紙部11と印刷部12と排紙部13を直列に配置し、排紙部13として、印刷部12における圧胴20に対接して印刷用紙Sの先端を保持して搬送可能な第1排紙胴21と、第1排紙胴21に対接して印刷用紙Sの先端を保持して搬送可能な第2排紙胴22と、第2排紙胴22から受け取った印刷用紙Sを保持して搬送可能なチェーングリッパ機構23と、チェーングリッパ機構23により搬送された印刷用紙Sが積み上げられる排紙台24とを設け、第2排紙胴22の外周面に対向して紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置14を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷シートに転写されたインキを乾燥する乾燥機能を有する印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフセット枚葉印刷機の印刷装置は、給紙部と印刷部と排紙部とから構成されている。従って、給紙台上に積み重ねられた印刷シートは、給紙部により吸引されて前方へ送り出され、印刷部で所定の印刷が施された後、排紙部により排紙台上に積み重ねられて排紙される。
【0003】
このオフセット枚葉印刷機にて、印刷部では、印刷シートの印刷面に対してインキが転写されるが、このインキを乾燥させる乾燥装置として、紫外線を照射する紫外線照射装置が用いられている。
【0004】
このような枚葉印刷機の乾燥装置としては、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された乾燥装置では、印刷ユニットにより印刷用紙の一方の面に対して印刷が行われた後、貯え胴にて第1乾燥装置により紫外線が照射されて乾燥され、印刷ユニットにより印刷用紙の他方の面に対して印刷が行われた後、搬送部にて第2乾燥装置により紫外線が照射されて乾燥される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4037763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外線を照射してインキを乾燥する場合、印刷ユニットから紫外線照射装置まで距離や紫外線光源から印刷用紙までの距離が重要であり、この距離を適正距離とすることで、高い印刷品質を確保することができる。上述した従来の印刷機にあっては、印刷ユニットにより印刷用紙の他方の面に対して印刷を行い、搬送部のチェーングリッパ機構により印刷用紙を搬送するときに、第2乾燥装置により紫外線を照射してインキを乾燥し、その後に排紙している。このチェーングリッパ機構により印刷用紙を搬送するとき、印刷用紙は、特に、搬送方向の後端部側(紙尻側)がばたつきやすく、印刷用紙に対して紫外線を適正に照射することができず、高い印刷品質を確保することが困難となる。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、印刷品質の向上を図る印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の印刷機は、給紙部と印刷部と排紙部が直列に配置される印刷機において、前記排紙部は、前記印刷部における印刷胴からの印刷シートの先端を保持して搬送可能な第1排紙胴と、該第1排紙胴からの印刷シートの先端を保持して搬送可能な第2排紙胴と、該第2排紙胴から受け取った印刷シートを保持して搬送可能な搬送機構と、該搬送機構により搬送された印刷シートが積み上げられる排紙台とを有し、前記第2排紙胴の外周面に対向して紫外線を照射して印刷シートに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置が配設される、ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の印刷機では、前記印刷胴は、印刷シートにインキが転写されるときに所定の印圧を付与する圧胴であって、該圧胴と前記第2排紙胴とが予め設定された所定距離だけ離間して配置されることを特徴としている。
【0010】
本発明の印刷機では、前記乾燥装置による紫外線照射位置を搬送される印刷シートの暴れを抑制するシート保持手段が設けられることを特徴としている。
【0011】
本発明の印刷機では、前記シート保持手段は、前記第2排紙胴の内部から印刷シートを吸着して保持可能な吸着手段を有することを特徴としている。
【0012】
本発明の印刷機では、前記第1排紙胴と印刷シートの印刷面との接触を抑制するシート保護手段が設けられることを特徴としている。
【0013】
本発明の印刷機では、前記シート保護手段は、前記第1排紙胴の内部から印刷シートに対してエアを噴射可能なエア噴射手段を有することを特徴としている。
【0014】
本発明の印刷機では、前記シート保護手段は、前記第1排紙胴から所定距離だけ離間するガイド部材と、印刷シートを該ガイド部材に密着可能なエア噴射手段を有することを特徴としている。
【0015】
本発明の印刷機では、表面印刷部と裏面印刷部との間に、印刷シートの先端を保持して搬送可能な第1中間胴と、該第1中間胴からの印刷シートの先端を保持して搬送可能な第2中間胴とが配設され、前記第2中間胴の外周面に対向して紫外線を照射して印刷シートに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置が配設されることを特徴としている。
【0016】
本発明の印刷機では、前記乾燥装置は、前記第2排紙胴または前記第2中間胴の軸方向に沿って配列される複数の紫外線照射部と、該複数の紫外線照射部の一部を隠蔽可能なシャッタとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の印刷機によれば、給紙部と印刷部と排紙部を直列に配置し、排紙部として、印刷シートの先端を保持して搬送可能な第1排紙胴と、第1排紙胴からの印刷シートの先端を保持して搬送可能な第2排紙胴と、第2排紙胴から受け取った印刷シートを保持して搬送可能な搬送機構と、搬送機構により搬送された印刷シートが積み上げられる排紙台とを設け、第2排紙胴の外周面に対向して紫外線を照射して印刷シートに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置を配設している。従って、印刷部によりインキが転写された印刷シートが、第1排紙胴を介して第2排紙胴に搬送されるとき、乾燥装置は、第2排紙胴上の印刷シートに対して紫外線を照射してインキを乾燥させるため、印刷部から乾燥装置までの距離と乾燥装置から印刷シートまでの距離を最適距離とすることが可能となり、印刷品質を向上することができる。
【0018】
本発明の印刷機によれば、印刷胴を、印刷シートにインキが転写されるときに所定の印圧を付与する圧胴とし、圧胴と第2排紙胴とを予め設定された所定距離だけ離間して配置するので、印刷部によりインキが転写された印刷シートは、所定時間経過後に紫外線が照射されてインキが乾燥することとなり、この間に印刷シート上のインキが平滑となり、高い光沢性を確保することができる。
【0019】
本発明の印刷機によれば、乾燥装置による紫外線照射位置を搬送される印刷シートの暴れを抑制するシート保持手段を設けるので、シート保持手段により印刷シートの暴れを抑制することで、乾燥装置と印刷シートとの距離を適正位置に維持することができると共に、印刷シートと乾燥装置との接触を防止して印刷面の損傷を防止することができる。
【0020】
本発明の印刷機によれば、シート保持手段として、第2排紙胴の内部から印刷シートを吸着して保持可能な吸着手段を設けるので、簡単な構成で高い印刷品質を確保することができる。
【0021】
本発明の印刷機によれば、第1排紙胴と印刷シートの印刷面との接触を抑制するシート保護手段を設けるので、シート保護手段により第1排紙胴と印刷シートの印刷面との接触を抑制することで、印刷シートの印刷面の損傷を防止することができる。
【0022】
本発明の印刷機によれば、シート保護手段として、第1排紙胴の内部から印刷シートに対してエアを噴射可能なエア噴射手段を設けるので、簡単な構成で高い印刷品質を確保することができる。
【0023】
本発明の印刷機によれば、シート保護手段として、第1排紙胴から所定距離だけ離間するガイド部材と、印刷シートをガイド部材に密着可能なエア噴射手段を設けるので、簡単な構成で高い印刷品質を確保することができる。
【0024】
本発明の印刷機によれば、表面印刷部と裏面印刷部との間に、印刷シートの先端を保持して搬送可能な第1中間胴と、第1中間胴からの印刷シートの先端を保持して搬送可能な第2中間胴とを配設し、第2中間胴の外周面に対向して紫外線を照射して印刷シートに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置を配設するので、両面印刷の場合であっても、印刷部から乾燥装置までの距離と乾燥装置から印刷シートまでの距離を最適距離とすることができ、印刷品質を向上することができる。
【0025】
本発明の印刷機によれば、乾燥装置として、第2排紙胴または第2中間胴の軸方向に沿って配列される複数の紫外線照射部と、複数の紫外線照射部の一部を隠蔽可能なシャッタとを設けるので、印刷シートにおける印刷領域に応じてシャッタにより紫外線照射部による紫外線照射領域を調整することで、不要な領域への紫外線照射をなくし、印刷領域へ飛散したインキの固化を防止して第2排紙胴や第2中間胴の汚れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るオフセット枚葉印刷機を表す概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の排紙部を表す概略図である。
【図3】図3は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の排紙胴を表す概略図である。
【図4】図4は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の排紙胴の変形例を表す概略図である。
【図5】図5は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の乾燥装置を表す正面図である。
【図6】図6は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の乾燥装置を表す側面図である。
【図7】図7は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の乾燥装置の変形例を表す正面図である。
【図8】図8は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の乾燥装置の変形例を表す側面図である。
【図9】図9は、本発明の実施例2に係る両面オフセット枚葉印刷機を表す概略構成図である。
【図10】図10は、本発明の実施例3に係る両面オフセット枚葉印刷機を表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る印刷機の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の実施例1に係るオフセット枚葉印刷機を表す概略構成図、図2は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の排紙部を表す概略図、図3は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の排紙胴を表す概略図、図4は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の排紙胴の変形例を表す概略図、図5は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の乾燥装置を表す正面図、図6は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の乾燥装置を表す側面図、図7は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の乾燥装置の変形例を表す正面図、図8は、実施例1のオフセット枚葉印刷機の乾燥装置の変形例を表す側面図である。
【0029】
実施例1のオフセット枚葉印刷機は、図1に示すように、給紙部11と印刷部12と排紙部13が印刷用紙(印刷シート)Sの搬送方向に直列に配置されてなり、排紙部13に乾燥装置14が配置されている。この場合、印刷部12は、5つの印刷ユニット12a,12b,12c,12d,12eにより構成されている。
【0030】
上述した構造の印刷機では、給紙部11から印刷部12に印刷用紙Sが供給されると、この印刷部12にて、5色のインキ(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ゴールド)が、印刷ユニット12a,12b,12c,12d,12eごとに、版胴及びブランケット胴を介して印刷面となる印刷用紙Sの表面に対して転写される。そして、表に印刷が施された印刷用紙Sが、排紙部13にて排出される。この場合、インキは、紫外線が照射されることで乾燥して固化する紫外線硬化性インキ(UVインキ)である。
【0031】
このように構成された実施例1のオフセット枚葉印刷機における排紙部13は、図2に示すように、印刷部12で印刷された印刷用紙Sを搬送し、整列した状態で積み重ねるものである。この排紙部13は、印刷用紙Sの先端を保持して搬送可能な第1排紙胴21及び第2排紙胴22と、各排紙胴21,22の上方に配設されて第2排紙胴22から受け取った印刷用紙Sの先端を保持して搬送可能なチェーングリッパ機構(搬送機構)23と、チェーングリッパ機構23により搬送される印刷用紙Sが積み上げられる排紙台24とを有している。
【0032】
第1排紙胴21は、印刷部12における圧胴(印刷胴)20における印刷シートSの搬送方向の下流側に位置し、この圧胴20と対接して配置されている。そして、この第1排紙胴21は、図示しない駆動装置により、図2にて時計回り方向に回転可能であると共に、外周部に印刷シートSの前端部を保持可能な2つの咥え爪21a,21bが周方向に等間隔で設けられている。一方、第2排紙胴22は、第1排紙胴21における印刷シートSの搬送方向の下流側に位置し、この第1排紙胴21と対接して配置されている。そして、この第2排紙胴22は、図示しない駆動装置により、図2にて反時計回り方向に回転可能であると共に、外周部に印刷シートSの前端部を保持可能な2つの咥え爪22a,22bが周方向に等間隔で設けられている。
【0033】
なお、圧胴20は、図示しない駆動装置により、図2にて反時計回り方向に回転可能であると共に、外周部に印刷シートSの前端部を保持可能な2つの咥え爪20a,20bが周方向に等間隔で設けられている。この場合、圧胴20と第1排紙胴21と第2排紙胴22は、軸端部が図示しないフレームに回転自在に支持され、同一の駆動装置により印刷作業に合わせて上述の回転方向に回転可能となっている。但し、作業の種類に応じて、駆動装置により圧胴20と第1排紙胴21と第2排紙胴22を逆方向に回転することもできる。
【0034】
チェーングリッパ機構23は、第2排紙胴22から排紙台24にかけて、その上方に掛け渡されるように配置されている。即ち、第2排紙胴22の上方に第1スプロケット25が駆動回転可能に支持され、排紙台24の上方に第1スプロケット25より小径の第2スプロケット26が回転自在に支持されており、各スプロケット25,26には、無端のチェーン27が掛け回されている。そして、このチェーン27は、チェーンガイド28に支持されると共に、その長手方向に所定の間隔で複数のグリッパ29が装着されている。このグリッパ29は、チェーン27に連結された咥え棒29aと、咥え棒29aとで印刷用紙Sの前端部を挟持する爪部29bを有しており、挟持した印刷用紙Sが排紙台24の上方に来たときに、爪部29bを解放する。
【0035】
排紙部13には、印刷用紙Sの搬送方向に沿って走行してチェーングリッパ機構23により搬送される印刷用紙Sを案内するベルトガイド機構31と、排紙台24の上方にて下降気流を形成するファン装置32と、排紙台24より上流側にてチェーングリッパ機構23により搬送された印刷用紙Sの速力を落とす真空吸引車装置33が設けられている。
【0036】
ベルトガイド機構31は、チェーングリッパ機構23の下方であって、第2排紙胴22と排紙台24との間に配置されている。このベルトガイド機構31は、回転駆動可能な駆動ローラ41と、この駆動ローラ41に従動して回転可能に設けられた複数の従動ローラ42と、駆動ローラ41及び複数の従動ローラ42に張設される無端ベルト43とを有している。無端ベルト43は、印刷用紙Sの幅よりも大きい幅をなし、チェーングリッパ機構23に対向する部位では、印刷用紙Sの搬送方向に沿ってチェーングリッパ機構23により搬送される印刷用紙Sの速度と同速度で循環移動可能に設けられている。
【0037】
ファン装置32は、略矩形状に配置された複数のファンを有し、排紙台24の上方でチェーングリッパ機構23により搬送された印刷用紙Sを気流によって鉛直方向下方へ押し付けるものである。真空吸引車装置33は、ベルトガイド機構31と排紙台24との間に配置され、チェーングリッパ機構23が印刷用紙Sを解放した後に、印刷用紙Sの後端部に吸引力を作用させて印刷用紙Sを制動し、姿勢を制御するものである。
【0038】
この場合、第1排紙胴21と第2排紙胴22とチェーングリッパ機構23(第1スプロケット25)は、下方から上方へ向かって直列配置されている。
【0039】
従って、図1及び図2に示すように、印刷部12で印刷が施された印刷用紙Sは、前端部が印刷ユニット12eにおける圧胴20の咥え爪20a(20b)により保持された状態で、排紙部13まで搬送される。排紙部13では、まず、第1排紙胴21の咥え爪21a(21b)が、圧胴20により搬送された印刷用紙Sを受け取って搬送し、次に、第2排紙胴22の咥え爪22a(22b)が、第1排紙胴21により搬送された印刷用紙Sを受け取って搬送し、チェーングリッパ機構23に受け渡される。このチェーングリッパ機構23では、グリッパ29が第2排紙胴22により搬送された印刷用紙Sを受取り、このグリッパ29が印刷用紙Sの前端部を保持した状態でチェーン27が移動することで、この印刷用紙Sを排紙台24まで搬送し、グリッパ29による印刷用紙Sの保持を解除して排紙台24上に積み重ねていく。このとき、ベルトガイド機構31において循環する無端ベルト43が、チェーングリッパ機構23の下方で印刷用紙Sの搬送方向に沿う走行方向に走行することにより、グリッパ29で前端部が狭持された状態の印刷用紙Sを下側から支えてその搬送を案内する。
【0040】
このように構成された排紙部13にて、第2排紙胴22の外周面に対向して紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置14が配設されている。この場合、乾燥装置14は、圧胴20から予め設定された所定距離だけ離間して配置される第2排紙胴22に対向して配置されている。この場合、所定距離とは、印刷用紙Sの走行距離である。なお、乾燥装置14は、後述するが、紫外線(UV:Ultraviolet)を照射可能な発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)であり、第2排紙胴22の軸方向(印刷用紙Sの幅方向)に沿って複数配設されて構成される。
【0041】
従って、印刷部12で印刷が施された印刷用紙Sが、排紙部13に搬送され、第1排紙胴21から第2排紙胴22に至り、この第2排紙胴22の回転に伴って表面を移動するとき、乾燥装置14のUV−LEDにより印刷用紙Sの印刷面に転写されたインキに対して紫外線が照射される。この場合、印刷部12にて、インキ供給装置により供給されたインキが版胴からブランケット胴を介して印刷用紙Sの表面に転写されるとき、印刷用紙Sに対してブランケット胴が転動することから、このブランケット胴が印刷用紙Sの表面から離れるとき、印刷用紙Sの表面に転写されたインキは、表面が凹凸形状となってしまう。
【0042】
そこで、本実施例では、圧胴20と第2排紙胴22(乾燥装置14)とが所定距離だけ離間している。そのため、印刷用紙Sが圧胴20から第2排紙胴22まで所定距離だけ搬送される間に、この印刷用紙Sの表面にあるインキは、その流動性により表面が凹凸形状から平滑形状に変化する。即ち、印刷部12から第1排紙胴21を介して第2排紙胴22に搬送された印刷用紙Sは、転写されたインキの表面が平滑状となり、この状態でインキに紫外線が照射されることから、印刷用紙S上のインキが平滑状態で乾燥し、固化することとなり、高い光沢性が確保される。
【0043】
また、この実施例1では、乾燥装置14による紫外線照射位置を搬送される印刷用紙Sの暴れを抑制するシート保持手段として、第2排紙胴22の内部から印刷用紙Sを吸着して保持可能な吸着手段が設けられている。
【0044】
更に、この実施例1では、第1排紙胴21と印刷用紙Sの印刷面との接触を抑制するシート保護手段として、第1排紙胴21の内部から印刷用紙Sに対してエアを噴射可能なエア噴射手段が設けられている。なお、このシート保護手段としては、第1排紙胴21から所定距離だけ離間するガイド部材と、印刷用紙Sをこのガイド部材に密着可能なエア噴射手段としてもよい。
【0045】
即ち、図3に示すように、第2排紙胴22にて、その表面部には、4つの吸引部51,52,53,54が周方向に沿って並設されている。各吸引部51,52,53,54は、第2排紙胴22の表面に沿って周方向に弧状をなすと共に、第2排紙胴22の軸方向の全域にわたって設けられている。この場合、吸引部51,52は、咥え爪22aが保持した印刷用紙Sの長手方向の中間部、後端部をそれぞれ吸着し、吸引部53,54は、咥え爪22bが保持した印刷用紙Sの長手方向の中間部、後端部をそれぞれ吸着する。
【0046】
各吸引部51,52,53,54は、ほぼ同様の構成をなし、中空形状をなして第2排紙胴22の表面側に多数の吸引穴を有しており、各連結管51a,52a,53a,54aを介して吸引管55に連結されている。この吸引管55は、図示しないフレーム側に配設されたエア吸引ポンプの配管とロータリジョイントを介して連結されている。
【0047】
一方、第1排紙胴21にて、その表面部には、4つの吐出部56,57,58,59が周方向に沿って並設されている。各吐出部56,57,58,59は、第1排紙胴21の表面に沿って周方向に弧状をなすと共に、第1排紙胴21の軸方向の全域にわたって設けられている。この場合、吐出部56,57は、咥え爪21aが保持した印刷用紙Sの長手方向の中間部、後端部をエアによりそれぞれ吹き上げ、吐出部58,59は、咥え爪21bが保持した印刷用紙Sの長手方向の中間部、後端部をエアによりそれぞれ吹き上げる。
【0048】
各吐出部56,57,58,59は、ほぼ同様の構成をなし、中空形状をなして第1排紙胴21の表面側に多数の吐出穴を有しており、各連結管56a,57a,58a,59aを介して吐出管60に連結されている。この吐出管60は、図示しないフレーム側に配設されたエア吐出ポンプの配管とロータリジョイントを介して連結されている。
【0049】
また、図4に示すように、第1排紙胴21における下方側には、この第1排紙胴21から所定間隔離れた位置にガイド部材61が配設されている。このガイド部材61は、第1排紙胴21の表面に沿って周方向に弧状をなすと共に、第1排紙胴21の軸方向の全域にわたって設けられている。また、このガイド部材61は、中空形状をなすエアチャンバであって、第1排紙胴21の表面に対向するに内周面側には、第1排紙胴21における印刷用紙Sの下流側に向けてエアを噴射する多数の噴射穴(エア噴射手段)を有している。このガイド部材61は、図示しないフレーム側に支持されており、図示しないエアポンプからのエア配管62が連結されている。この場合、第1排紙胴21は、表面に空洞部を有するスケルトン構造とすることが望ましい。
【0050】
従って、図2及び図3に示すように、印刷部12で印刷が施された印刷用紙Sが、排紙部13に搬送され、圧胴20から第1排紙胴21に受け渡されると、この第1排紙胴21にて、印刷用紙Sは、各吐出部56,57,58,59にある多数の吐出穴から噴射されたエアにより第1排紙胴21の表面から若干離れる。そのため、印刷用紙Sの印刷面と第1排紙胴21の表面との接触が抑制されることで、第1排紙胴21へのインキの付着が防止され、印刷品質の低下が抑制される。
【0051】
その後、印刷用紙Sが、第1排紙胴21から第2排紙胴22に受け渡されると、この第2排紙胴22にて、印刷用紙Sは、各吸引部51,52,53,54にある多数の吸引穴により吸引されるエアにより第2排紙胴22の表面に吸着される。そのため、印刷用紙Sのばたつきが抑制されることで、この印刷用紙Sは、乾燥装置14から適正距離で紫外線を受けることとなり、印刷品質を向上できる。また、印刷用紙Sの印刷面と乾燥装置14との接触が抑制され、印刷面の損傷を防止することができると共に、乾燥装置14へのインキの付着が防止される。
【0052】
また、図2及び図4に示すように、印刷部12で印刷が施された印刷用紙Sが、排紙部13に搬送され、圧胴20から第1排紙胴21に受け渡されると、この第1排紙胴21にて、ガイド部材61にある多数の噴射穴から印刷用紙Sとの間にエアが噴射されると、このエアがガイド部材61と印刷用紙Sとの間に流れてこの領域が真空状態に近い状態となることで、この印刷用紙Sは、ベルヌーイの定理によりガイド部材61に吸着され、第1排紙胴21の表面から離れる。そのため、印刷用紙Sの印刷面と第1排紙胴21の表面との接触が抑制されることで、第1排紙胴21へのインキの付着が防止され、印刷品質の低下が抑制される。その後は上述と同様に、印刷用紙Sが、第2排紙胴22の表面に吸着されながら、乾燥装置14によりインキが乾燥されることで、印刷品質を向上できる。
【0053】
また、乾燥装置14において、図5及び図6に示すように、第2排紙胴22の軸方向に長いハウジング71には、第2排紙胴22の表面に対向する正面部に多数の紫外線を照射可能なUV−LED(紫外線照射部)72が固定されている。このUV−LED72は、第2排紙胴22の軸方向に沿って一列状に配置されており、第2排紙胴22の幅、つまり、搬送される印刷用紙Sの幅の全域に対応して設けられている。このハウジング71の両側には、その表面側に位置して第2排紙胴22の軸方向に沿って移動可能な平板形状をなすシャッタ73,74が設けられており、このシャッタ73,74は、エアシリンダ75,76によりスライド可能であり、複数のUV−LED72の一部を隠蔽可能となっている。
【0054】
なお、このシャッタ73,74は、この構成に限定されるものではない。図7及び図8に示すように、第2排紙胴22の軸方向に長いハウジング81には、第2排紙胴22の表面に対向する正面部に多数の紫外線を照射可能なUV−LED(紫外線照射部)82が固定されている。このUV−LED82は、第2排紙胴22の軸方向に沿って一列状に配置されており、第2排紙胴22の幅、つまり、搬送される印刷用紙Sの幅の全域に対応して設けられている。このハウジング81の両側には、ハウジング81に嵌合して第2排紙胴22の軸方向に沿って移動可能な箱形状をなすシャッタ83,84が設けられており、このシャッタ83,84は、エアシリンダ85,86によりスライド可能であり、複数のUV−LED82の一部を隠蔽可能となっている。
【0055】
従って、乾燥装置14において、図5乃至図8に示すように、印刷用紙Sの幅が最大であるときには、エアシリンダ75,76(85,86)によりシャッタ73,74(83,84)を外方にスライドすることで、全てのUV−LED72(82)を露出させる。一方、印刷用紙Sの幅が最大から狭くなったときには、エアシリンダ75,76(85,86)によりシャッタ73,74(83,84)を内方にスライドすることで、不要なUV−LED72(82)を隠蔽し、印刷用紙Sの幅に対応した一部のUV−LED72(82)を露出させる。
【0056】
印刷部12による印刷作業中は、周辺にインキの粒子が飛散し、第2排紙胴22にインキが付着しやすい。そのため、所定幅の印刷用紙Sを使用した印刷作業では、第2排紙胴22の表面にて、この印刷用紙Sの幅より外側の領域に対して、飛散しているインキが付着しやすい。印刷用紙Sのない第2排紙胴22の表面の領域にインキが付着した場合、このインキが紫外線を受けると固化してしまう。すると、前回より幅の広い印刷用紙Sを使用した印刷作業を行うとき、第2排紙胴22の表面の固化したインキにより印刷障害が発生してしまうおそれがある。そのため、印刷用紙Sの幅に合わせて、不要なUV−LED72(82)を隠蔽することで、第2排紙胴22の表面に付着したインキの固化を阻止し、付着したインキの除去を容易とし、印刷障害の発生が防止される。
【0057】
ここで、実施例1のオフセット枚葉印刷機による印刷作業について説明する。
【0058】
実施例1のオフセット枚葉印刷機において、図1及び図2に示すように、給紙部11は、印刷用紙Sを1枚ずつ所定間隔で供給し、印刷部12は、給紙部11から供給された印刷用紙Sに対して、各印刷ユニット12a,12b,12c,12d,12eにより5色の印刷を行う。この場合、必要に応じて1〜4色印刷としてもよい。
【0059】
印刷部12で印刷が施された印刷用紙Sは、排紙部13に搬送される。即ち、印刷用紙Sは、圧胴20から第1排紙胴21に搬送され、この第1排紙胴21から第2排紙胴22に搬送される。このとき、乾燥装置14は、第2排紙胴22の回転により搬送される印刷用紙Sの表面にある画像(インキ)に対して、紫外線を照射する。すると、印刷用紙Sの表面にある画像(インキ)が紫外線を受けて乾燥し、固化する。その後、印刷用紙Sは、チェーングリッパ機構23により搬送され、排紙台24上に積み上げられる。
【0060】
この印刷用紙Sが各排紙胴21,22により搬送されるとき、図3に示すように、第1排紙胴21では、印刷用紙Sが各吐出部56,57,58,59から噴射されたエアにより第1排紙胴21の表面から離間することで、印刷用紙Sの印刷面と第1排紙胴21の表面との接触が抑制される。また、図4に示すように、第1排紙胴21では、ガイド部材61から印刷用紙Sとの間にエアが噴射されることで、印刷用紙Sがベルヌーイの定理によりガイド部材61に沿うこととなり、印刷用紙Sの印刷面と第1排紙胴21の表面との接触が抑制される。
【0061】
一方、図3及び図4に示すように、第2排紙胴22では、印刷用紙Sが各吸引部51,52,53,54を通して吸引されるエアにより第2排紙胴22の表面に吸着されることで、印刷用紙Sのばたつきが抑制される。なお、第2排紙胴22上を搬送される印刷用紙Sは、その厚さや性質により剛性(硬度)が変わり、この剛性によりばたつき量が異なる。つまり、印刷用紙Sの剛性が所定の剛性より高いときには、印刷用紙Sの変形度合が小さいことから、後端部が乾燥装置14に接触しやすくなる。そのため、印刷用紙Sの剛性が所定の剛性より高いときに吸引部51,52,53,54を作動し、印刷用紙Sの剛性が所定の剛性以下のときに吸引部51,52,53,54を停止することが望ましい。
【0062】
また、乾燥装置14では、図5乃至図8に示すように、印刷用紙Sの幅に応じてシャッタ73,74(83,84)を移動し、露出させるUV−LED72(82)を選択する。つまり、第2排紙胴22上を搬送される印刷用紙Sに対向するUV−LED72(82)だけを露出させ、不要なUV−LED72(82)を隠蔽する。
【0063】
このように実施例1のオフセット枚葉印刷機にあっては、給紙部11と印刷部12と排紙部13を直列に配置し、排紙部13として、印刷部12における圧胴20に対接して印刷用紙Sの先端を保持して搬送可能な第1排紙胴21と、第1排紙胴21に対接して印刷用紙Sの先端を保持して搬送可能な第2排紙胴22と、第2排紙胴22から受け取った印刷用紙Sを保持して搬送可能なチェーングリッパ機構23と、チェーングリッパ機構23により搬送された印刷用紙Sが積み上げられる排紙台24とを設け、第2排紙胴22の外周面に対向して紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置14を配設している。
【0064】
従って、印刷部12によりインキが転写された印刷用紙Sが、第1排紙胴21を介して第2排紙胴22に搬送されるとき、乾燥装置14は、第2排紙胴22上の印刷用紙Sに対して紫外線を照射してインキを乾燥させる。そのため、印刷部12から乾燥装置14までの距離が最適距離になると共に、乾燥装置14から印刷用紙Sまでの距離が最適距離となり、印刷品質を向上することができる。
【0065】
また、実施例1のオフセット枚葉印刷機では、圧胴20と第2排紙胴22とを予め設定された所定距離だけ離間して配置している。従って、印刷部12によりインキが転写された印刷用紙Sは、所定時間経過後に紫外線が照射されてインキが乾燥することとなる。そのため、印刷用紙Sのインキは、その流動性により時間の経過に伴って表面が平滑となり、この平滑状態で乾燥して固化することとなり、高い光沢性を確保することができる。
【0066】
また、実施例1のオフセット枚葉印刷機では、乾燥装置14による紫外線照射位置を搬送される印刷用紙Sの暴れを抑制するシート保持手段として、第2排紙胴22の内部から印刷用紙Sを吸着して保持可能な吸引部51,52,53,54を設けている。従って、印刷用紙Sが第2排紙胴22における乾燥装置14との対向に搬送されるとき、吸引部51,52,53,54により第2排紙胴22の表面に吸着保持されることとなり、印刷用紙Sの暴れを抑制することで、乾燥装置14と印刷用紙Sとの距離を適正位置に維持することができると共に、印刷用紙Sと乾燥装置14との接触を防止して印刷面の損傷を防止することができる。この場合、シート保持手段を吸引部51,52,53,54により構成することで、簡単な構成で高い印刷品質を確保することができる。
【0067】
また、実施例1のオフセット枚葉印刷機では、第1排紙胴21と印刷用紙Sの印刷面との接触を抑制するシート保護手段として、第1排紙胴21の内部から印刷用紙Sに対してエアを噴射可能な吐出部56,57,58,59を設けるか、または、第1排紙胴21から所定距離だけ離間して内周面に多数の噴射穴を有するガイド部材61を設けている。従って、印刷用紙Sが第1排紙胴21に搬送されるとき、吐出部56,57,58,59により第1排紙胴21の表面から離間することとなり、第1排紙胴21と印刷用紙Sの印刷面との接触を抑制することで、印刷用紙Sの印刷面の損傷を防止することができる。また、シート保護手段を吐出部56,57,58,59またはガイド部材61とすることで、簡単な構成で高い印刷品質を確保することができる。
【0068】
また、実施例1のオフセット枚葉印刷機では、乾燥装置14として、第2排紙胴22の軸方向に沿って配列される複数のUV−LED(紫外線照射部)72,82と、複数のUV−LED72,82の一部を隠蔽可能なシャッタ73,74,83,84を設けている。従って、印刷用紙Sにおける印刷領域に応じてシャッタ73,74,83,84により紫外線照射領域を調整することで、不要な領域への紫外線照射をなくし、第2排紙胴22の表面に付着したインキの固化を防止し、第2排紙胴22の汚れを抑制することができる。
【実施例2】
【0069】
図9は、本発明の実施例2に係る両面オフセット枚葉印刷機を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0070】
実施例2の両面オフセット枚葉印刷機は、図9に示すように、給紙部111と、裏面印刷部112と、表面印刷部113と、排紙部114とを有し、給紙部111と排紙部114との間に、裏面印刷部112と表面印刷部113とが連接部115により直列に連結されている。この場合、裏面印刷部112は、5つの印刷ユニット112a,112b,112c,112d,112eにより構成され、表面印刷部113は、印刷ユニット113a,113b,113c,113d,113eにより構成されている。
【0071】
上述した構造の印刷機では、給紙部111から裏面印刷部112に印刷用紙Sが供給されると、まず、この裏面印刷部112にて、5色のインキ(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ゴールド)が、印刷ユニット112a,112b,112c,112d,112eごとに、版胴及びブランケット胴を介して印刷面となる印刷用紙Sの裏面に対して転写される。その後、裏面に印刷が施された印刷用紙Sが連接部115により表面印刷部113に搬送される。そして、この表面印刷部113にて、前述した裏面印刷部112での印刷工程と同じように、5色のインキが、印刷ユニット113a,113b,113c,113d,113eごとに、版胴及びブランケット胴を介して印刷面となる印刷用紙Sの表面に対して転写される。そして、表裏に印刷が施された印刷用紙Sが、排紙部114にて排出される。即ち、この両面オフセット枚葉印刷機では、印刷用紙Sの裏面に印刷を施した後、この印刷用紙Sを反転させることなく、その印刷用紙Sの表面に印刷を施すことができる。
【0072】
このように構成された実施例2の両面オフセット枚葉印刷機にて、連接部115には、第1中間胴115aと第2中間胴115bと第3中間胴115cが設けられている。この場合、第1中間胴115aは、裏面印刷部112の圧胴から受け渡された印刷用紙Sの先端を保持して搬送可能であり、第2中間胴115bは、第1中間胴115aに対接して印刷用紙Sの先端を保持して搬送可能であり、第3中間胴115cは、第2中間胴115bに対接して印刷用紙Sの先端を保持して表面印刷部113に搬送可能である。
【0073】
そして、第2中間胴115bの外周面に対向し、その下方には、紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置131が配設されている。この乾燥装置131は、裏面印刷部112でインキが転写された印刷用紙Sの裏面に対して紫外線を照射し、印刷用紙S上のインキを乾燥し、固化することができる。
【0074】
また、排紙部114には、第1排紙胴21と第2排紙胴22とチェーングリッパ機構23が設けられている。そして、第2排紙胴22の外周面に対向し、その上方には、紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置14が配設されている。この乾燥装置14は、表面印刷部113でインキが転写された印刷用紙Sの表面に対して紫外線を照射し、印刷用紙S上のインキを乾燥し、固化することができる。
【0075】
乾燥装置131及び乾燥装置14は、上述した実施例1の乾燥装置14とほぼ同様の構成であり、詳細な説明は省略する。また、連接部115を構成する第1中間胴115aと第2中間胴115bに対して、実施例1の第1排紙胴21及び第2排紙胴22と同様に、シート保持手段、シート保護手段を設けてもよい。
【0076】
このように実施例2の両面オフセット枚葉印刷機にあっては、給紙部111と裏面印刷部112と表面印刷部113と排紙部114を直列に配置し、裏面印刷部112と表面印刷部113との間に連接部115を設け、連接部115の第2中間胴115bの外周面に対向して紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置131を配設すると共に、排紙部114の第2排紙胴22の外周面に対向して紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置14を配設している。
【0077】
従って、両面印刷の場合であっても、裏面印刷部112から乾燥装置131までの距離が最適距離になると共に、表面印刷部113から乾燥装置14までの距離が最適距離になり、印刷品質を向上することができる。
【実施例3】
【0078】
図10は、本発明の実施例3に係る両面オフセット枚葉印刷機を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0079】
実施例3の両面オフセット枚葉印刷機は、図10に示すように、給紙部211と、表面印刷部212と、裏面印刷部213と、排紙部214とを有し、給紙部211と排紙部214との間に、表面印刷部212と裏面印刷部213とが反転部215により直列に連結されている。この場合、裏面印刷部213は、4つの印刷ユニット212a,212b,212c,212dにより構成され、表面印刷部212は、印刷ユニット213a,213b,213c,213dにより構成されている。この場合、反転部215は、両面印刷を実施するとき、印刷の途中で印刷用紙Sの表裏と搬送方向を反転させるものであり、2つの第1、第2中間胴215a,215bと反転胴215cとから構成されている。
【0080】
上述した構造の印刷機では、給紙部211から裏面印刷部213に印刷用紙Sが供給されると、まず、この裏面印刷部213にて、4色のインキ(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)が、印刷ユニット212a,212b,212c,212dごとに、版胴及びブランケット胴を介して印刷面となる印刷用紙Sの裏面に対して転写される。その後、裏面に印刷が施された印刷用紙Sが、反転部215にて、第2中間胴215bから反転胴215cに渡されるとき、印刷用紙Sの表裏と搬送方向が反転させられる。そして、表面印刷部212にて、前述した裏面印刷部213での印刷工程と同じように、4色のインキが、印刷ユニット213a,213b,213c,213dごとに、版胴及びブランケット胴を介して印刷面となる印刷用紙Sの表面に対して転写される。そして、表裏に印刷が施された印刷用紙Sが、排紙部214にて排出される。即ち、この両面オフセット枚葉印刷機では、印刷用紙Sの裏面に印刷を施した後、この印刷用紙Sを反転させ、その印刷用紙Sの表面に印刷を施すことができる。
【0081】
このように構成された実施例3の両面オフセット枚葉印刷機にて、第2中間胴215bの外周面に対向し、その上方には、紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置231が配設されている。この乾燥装置231は、裏面印刷部213でインキが転写された印刷用紙Sの裏面に対して紫外線を照射し、印刷用紙S上のインキを乾燥し、固化することができる。
【0082】
また、排紙部214には、第1排紙胴21と第2排紙胴22とチェーングリッパ機構23が設けられている。そして、第2排紙胴22の外周面に対向し、その上方には、紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置14が配設されている。この乾燥装置14は、表面印刷部212でインキが転写された印刷用紙Sの表面に対して紫外線を照射し、印刷用紙S上のインキを乾燥し、固化することができる。
【0083】
乾燥装置231及び乾燥装置14は、上述した実施例1の乾燥装置14とほぼ同様の構成であり、詳細な説明は省略する。また、反転部215を構成する第1中間胴215aと第2中間胴215bと反転胴215cに対して、実施例1の第1排紙胴21及び第2排紙胴22と同様に、シート保持手段、シート保護手段を設けてもよい。
【0084】
このように実施例3の両面オフセット枚葉印刷機にあっては、給紙部211と裏面印刷部213と表面印刷部212と排紙部214を直列に配置し、裏面印刷部213と表面印刷部212との間に反転部215を設け、反転部215の第2中間胴215bの外周面に対向して紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置231を配設すると共に、排紙部214の第2排紙胴22の外周面に対向して紫外線を照射して印刷用紙Sに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置14を配設している。
【0085】
従って、印刷用紙Sを途中で反転させる両面印刷の場合であっても、裏面印刷部213から乾燥装置231までの距離が最適距離になると共に、表面印刷部212から乾燥装置14まで距離が最適距離になり、印刷品質を向上することができる。
【0086】
なお、上述した各実施例では、本発明のシート保持手段を吸着手段とし、この吸着手段を吸引部51,52,53,54としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、シート保持手段を、第2排紙胴22の外周側からエアを吹き付けて印刷シートを保持するようにしてもよい。また、エアに限らず、ローラ、ベルトなどにより印刷シートを保持するようにしてもよい。また、上述した各実施例では、本発明のシート保護手段をエア噴射手段やガイド部材としたが、この構成に限定されるものではなく、シート保持手段と同様に、エア、ローラ、ベルトなどを利用してもよい。
【0087】
また、上述した各実施例では、本発明のシャッタを板状または筒状に構成したが、この形状に限らず、蛇腹式、ロール式などとしてもよい。
【0088】
また、上述した各実施例では、圧胴(印刷胴)20とチェーングリッパ機構(搬送機構)との間に第1排紙胴21と第2排紙胴22を設け、第2排紙胴22の外周面に対向して乾燥装置14を設けたが、この構成に限定されるものではない。即ち、印刷胴と搬送機構との間には、2つの排紙胴だけでなく、レイアウトなどに応じて3つ以上の排紙胴を設けてもよい。例えば、第1〜第5排紙胴を設け、第3排紙胴以降に乾燥装置を設けるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係る印刷機は、第2排紙胴の外周面に対向して紫外線を照射して印刷シートに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置を配設することで、印刷品質の向上を図るものであり、いずれの印刷機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
11 給紙部
12 印刷部
13 排紙部
14 乾燥装置
20 圧胴
21 第1排紙胴
22 第2排紙胴
23 チェーングリッパ機構(搬送機構)
24 排紙台
51,52,53,54 吸引部(シート保持手段、吸着手段)
56,57,58,59 吐出部(シート保護手段、エア噴射手段)
61 ガイド部材(シート保護手段、エア噴射手段)
72,82 UV−LED(紫外線照射部)
73,74,83,84 シャッタ
111,211 給紙部
112,213 裏面印刷部
113,212 表面印刷部
114,214 排紙部
115 連接部
115b,215b 第2中間胴
215 反転部
S 印刷用紙(印刷シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙部と印刷部と排紙部が直列に配置される印刷機において、
前記排紙部は、前記印刷部における印刷胴からの印刷シートの先端を保持して搬送可能な第1排紙胴と、該第1排紙胴からの印刷シートの先端を保持して搬送可能な第2排紙胴と、該第2排紙胴から受け取った印刷シートを保持して搬送可能な搬送機構と、該搬送機構により搬送された印刷シートが積み上げられる排紙台とを有し、
前記第2排紙胴の外周面に対向して紫外線を照射して印刷シートに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置が配設される、
ことを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記印刷胴は、印刷シートにインキが転写されるときに所定の印圧を付与する圧胴であって、該圧胴と前記第2排紙胴とが予め設定された所定距離だけ離間して配置されることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記乾燥装置による紫外線照射位置を搬送される印刷シートの暴れを抑制するシート保持手段が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記シート保持手段は、前記第2排紙胴の内部から印刷シートを吸着して保持可能な吸着手段を有することを特徴とする請求項3に記載の印刷機。
【請求項5】
前記第1排紙胴と印刷シートの印刷面との接触を抑制するシート保護手段が設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の印刷機。
【請求項6】
前記シート保護手段は、前記第1排紙胴の内部から印刷シートに対してエアを噴射可能なエア噴射手段を有することを特徴とする請求項5に記載の印刷機。
【請求項7】
前記シート保護手段は、前記第1排紙胴から所定距離だけ離間するガイド部材と、印刷シートを該ガイド部材に密着可能なエア噴射手段を有することを特徴とする請求項5に記載の印刷機。
【請求項8】
表面印刷部と裏面印刷部との間に、印刷シートの先端を保持して搬送可能な第1中間胴と、該第1中間胴からの印刷シートの先端を保持して搬送可能な第2中間胴とが配設され、前記第2中間胴の外周面に対向して紫外線を照射して印刷シートに転写されたインキを乾燥させる乾燥装置が配設されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の印刷機。
【請求項9】
前記乾燥装置は、前記第2排紙胴または前記第2中間胴の軸方向に沿って配列される複数の紫外線照射部と、該複数の紫外線照射部の一部を隠蔽可能なシャッタとを有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−31485(P2011−31485A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179862(P2009−179862)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り http://www.nikkan.co.jp http://www.nikkan.co.jp/newrls/index9.html http://www.nikkan.co.jp/newrls/rls0630k−05.html 掲載日 平成21年6月30日
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】