説明

印刷版の装着方法及び装着補助装置

【課題】 プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版の印刷機の版胴に装着し易く、装着の作業性がよくかつ印刷版の印刷面の傷付けを確実に防止できる印刷版の装着方法及び印刷版の装着補助装置を提供する。
【解決手段】 この印刷版の装着方法は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版を印刷機の版胴1に装着する際に、版胴に設けられたくわえ側クランプ21の上刃と下刃の間の隙間にガイド板11を上方から装着し、シート状印刷版をガイド板上を滑らせながらくわえ側クランプ21にセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版を印刷機の版胴に設けられたくわえ側クランプに装着する装着方法及び装着補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版には、PS版やサーマル印刷版等のアルミニウム板を支持体とするアルミニウム印刷版、及び銀塩印刷版や電子写真印刷版のような紙もしくはプラスチック樹脂フィルムを支持体とする印刷版が知られている。これらの印刷版の中ではアルミニウム印刷版が主流を占めているので、平版印刷に用いられる印刷機及びその周辺機器は、アルミニウム印刷版に合わせた設計になっており、紙やプラスチック樹脂フィルムを支持体とする印刷版は、アルミニウム印刷版に比べ剛直度(腰の強さ)が劣るために、印刷機への版掛けに際しいろいろな問題が生じた。例えば、プラスチック樹脂フィルムを支持体とする印刷版をくわえ側クランプに挿入し装着するとき、クランプの下刃に設けられた位置決めピンと印刷版のピン孔との位置関係が微妙にずれて見当精度が悪くなるという問題があった(下記参照)。
【0003】
特許文献1(図1参照)は、プラスチック支持体のシート状印刷版材料をくわえ側クランプに高い位置精度で装着するために、プラスチック支持体のシート状印刷版材料を印刷機に装着する際に印刷版の後端を渡り部に設けた固定部材に突き当てて固定した後に、印刷版を湾曲させて印刷版のたわみを利用してくわえ側クランプに挿入するようにした装着方法を開示する。
【0004】
しかし、上記印刷版の装着方法は次のような問題点があった。
(1)印刷版の後端を固定部材に突き当てるが、印刷版の固定が充分でなく、湾曲させると、印刷版が部材から外れてしまうため印刷版を手で保持する必要があり、作業性が悪かった。
(2)上記の保持を行うには印刷版を床面に押しつけるため、印刷版の印刷面が床面と擦れ、印刷面を傷つける恐れが生じ、最終印刷物の画質不良に繋がるおそれがあった。
(3)印刷版の先端を作業者が手で持ってクランプ部の隙間に挿入する必要があり、印刷版に撓みや波打が生じないように注意をする必要があり、これらのために作業性が悪かった。
(4)印刷版の装着を行う作業スペースが狭いため、上記挿入を行うには二人作業が必要であった。
【特許文献1】特開2002−347212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版の印刷機の版胴に装着し易く、装着の作業性がよくかつ印刷版の印刷面の傷付けを確実に防止できる印刷版の装着方法及び印刷版の装着補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による印刷版の装着方法は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版を印刷機の版胴に装着する際に、前記版胴に設けられたくわえ側クランプの上刃と下刃の間の隙間にガイド板を上方から装着し、前記シート状印刷版を前記ガイド板上を滑らせながら前記くわえ側クランプにセットすることを特徴とする。
【0007】
この印刷版の装着方法によれば、版胴のくわえ側クランプの隙間にガイド板を装着してから、シート状印刷版をガイド板上を滑らせながらくわえ側クランプにセットするので、シート状印刷版を印刷機の版胴に装着し易く、装着の作業性が向上し、また印刷版の印刷面の傷付けを確実に防止できる。
【0008】
本発明による別の印刷版の装着方法は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版を印刷機の版胴に装着する際に、前記版胴に設けられたくわえ側クランプの上刃と下刃の間の隙間に前記印刷版をガイド板に予め重ねた状態で前記ガイド板とともに装着してから、前記ガイド板を引き抜くことで前記シート状印刷版を前記くわえ側クランプにセットすることを特徴とする。
【0009】
この印刷版の装着方法によれば、版胴のくわえ側クランプの隙間に印刷版をガイド板に予め重ねた状態でガイド板とともに装着してから、ガイド板を引き抜くことでシート状印刷版をクランプにセットするので、シート状印刷版を印刷機の版胴に装着し易く、装着の作業性が向上し、また印刷版の印刷面の傷付けを確実に防止できる。
【0010】
上記各印刷版の装着方法において、前記ガイド板の装着側の先端に、前記印刷機に設けられた位置決めピンに対応した切欠きを設けることが好ましい。これにより、ガイド板の先端に位置決め用の切欠きがあるので、ガイド板を装着する際の位置決めが容易であり、また位置決め精度が向上する。
【0011】
また、前記ガイド板の装着側の先端近傍の幅手に前記ガイド板を補強する補強部材を有することが好ましい。また、前記ガイド板の装着側と反対側の後端近傍の幅手に補強部材を有することが好ましい。また、前記補強部材は前記装着時の取手を兼ねることが好ましい。
【0012】
上述のように、先端及び/又は後端に取手を兼ねた補強部材を設けることで、ガイド板が比較的柔軟性のある場合でも、ガイド板のたわみが無くなり印刷機への装着が容易になる。また、印刷版のセット後にガイド板を待避させるのも容易となる。
【0013】
また、前記ガイド板の装着側と反対側の後端近傍に前記印刷版を保持する保持部材を設けることで、特に、印刷版とガイド板を予め重ねた状態で取り扱うときに、印刷版をガイド板に保持させることで作業性が向上する。
【0014】
この場合、前記保持部材は前記印刷版の折曲部の保護機能を有することで、印刷版の後端を折り曲げた折曲部がある場合、印刷版の取扱い時に折曲部が変形すると装着不良が発生するおそれがあるが、保持部材により折曲げ部の保護を行い装着不良を防止できる。
【0015】
また、前記ガイド板の前記印刷版との接触面に傷付き防止材料を設けることで、印刷版の装着時に印刷版の印刷面の傷付けを更に確実に防止できるとともに、ガイド板ヘの印刷版の貼り付きを防止できる。かかる傷付き防止材料として、布に植毛あるいはパイル織りしたものや滑り性のあるシートや不織布等がある。
【0016】
また、前記ガイド板の材質のヤング率は前記印刷版のプラスチック支持体の2倍以上であることが好ましく、例えば、10000〜200000N/mmの範囲内が好ましい。
【0017】
また、前記ガイド板の材質のヤング率は60000乃至80000N/mmの範囲内にあることが好ましい。
【0018】
また、前記ガイド板の厚さは0.2乃至1mmの範囲内にあることが好ましい。この範囲内であると、ガイド板がプラスチック支持体で支持されたシート状印刷版よりも剛性を有するので、装着が容易となる。なお、印刷機のクランプの隙間は一般的に狭くなっているので、ガイド板の厚さは剛性を確保した上でなるべく薄い方が作業性がよい。
【0019】
また、前記プラスチック支持体はヤング率が4500乃至6500N/mmの範囲内であり厚さが100乃至250μmの範囲内であり、前記印刷版は前記プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び感熱性画像形成層を有することが好ましい。
【0020】
また、前記プラスチック支持体の材質はポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0021】
また、前記プラスチック支持体の厚さは170乃至180μmの範囲内であることが好ましい。
【0022】
また、前記プラスチック支持体のヤング率は5000乃至6000N/mmの範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明による印刷版の装着補助装置は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版を印刷機の版胴に装着する際の装着補助装置であって、前記版胴に設けられたくわえ側クランプの隙間に前記シート状印刷版とともに装着可能な板状のガイド板と、前記ガイド板の幅手に前記ガイド板を補強する補強部材と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この印刷版の装着補助装置によれば、ガイド板をくわえ側クランプの隙間に予め装着し、印刷版をガイド板に沿って滑るようにしてセットしたり、また、印刷版をガイド板に予め重ねた状態でガイド板とともにくわえ側クランプの隙間に装着してから、ガイド板を引き抜くことで、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版をセットできるので、シート状印刷版を印刷機の版胴に装着し易く、装着の作業性が向上し、また印刷版の印刷面の傷付けを確実に防止できる。また、ガイド板に補強部材を設けることで、ガイド板が比較的柔軟性のある場合でも、ガイド板のたわみが無くなり印刷機への装着が容易になる。また、印刷版のセット後にガイド板を待避させるのも容易となる。この場合、前記補強部材を前記ガイド板の装着側の先端近傍及び装着側と反対側の後端近傍の少なくとも一方に設けることが好ましく、また、前記補強部材は前記装着時の取手を兼ねることができるので、取り扱いに便利である。
【0025】
上記印刷版の装着補助装置において、前記ガイド板の装着側の先端に、前記印刷機に設けられた位置決めピンに対応した切欠きを有することが好ましい。これにより、ガイド板の先端に位置決め用の切欠きがあるので、ガイド板を装着する際の位置決めが容易であり、また位置決め精度が向上する。
【0026】
また、前記ガイド板の装着側と反対側の後端近傍に前記印刷版を保持する保持部材を設けることが好ましい。これにより、特に、印刷版とガイド板を予め重ねた状態で取り扱うときに、印刷版をガイド板に保持させることで作業性が向上する。
【0027】
この場合、前記保持部材は前記印刷版の折曲部の保護機能を有することで、印刷版の後端を折り曲げた折曲部がある場合、印刷版の取扱い時に折曲部が変形すると装着不良が発生するおそれがあるが、保持部材により折曲げ部の保護を行い装着不良を防止できる。
【0028】
また、前記ガイド板の前記印刷版との接触面に傷付き防止材料を設けることで、印刷版の装着時に印刷版の印刷面の傷付けを更に確実に防止できるとともに、ガイド板ヘの印刷版の貼り付きを防止できる。かかる傷付き防止材料として、布に植毛あるいはパイル織りしたものや滑り性のあるシートや不織布等がある。
【0029】
また、前記ガイド板の材質のヤング率は前記印刷版のプラスチック支持体の2倍以上であることが好ましく、例えば、10000〜200000N/mmの範囲内が好ましい。
【0030】
また、前記ガイド板の材質のヤング率は60000乃至80000N/mmの範囲内にあることが好ましい。
【0031】
また、前記ガイド板の厚さは0.2乃至1mmの範囲内にあることが好ましい。この範囲内であると、ガイド板がプラスチック支持体で支持されたシート状印刷版よりも剛性を有するので、装着が容易となる。なお、印刷機のクランプの隙間は一般的に狭くなっているので、ガイド板の厚さは剛性を確保した上でなるべく薄い方が作業性がよい。
【0032】
なお、前記補強部材の前記ガイド板に対する幅手長さが前記ガイド板よりも短く構成されていることが好ましい。これにより、印刷版を版胴に装着する際に補強部材が印刷機側の他の部材と干渉することを防止でき、作業性がよくなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の印刷版の装着方法及び印刷版の装着補助装置によれば、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版の印刷機の版胴に装着し易く、装着の作業性がよくかつ印刷版の印刷面の傷付けを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態による印刷版の装着補助装置を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【0035】
図1(a)、(b)に示すように、印刷版の装着補助装置10は、印刷版5とほぼ対応する矩形状のガイド板11と、装着側先端14にガイド板11の図1(a)の横方向の幅手に配置されたL型形状の第1補強部材12と、後端15側にガイド板11の幅手に配置されたL型形状第2補強部材13と、を備える。
【0036】
ガイド板11の先端14には、印刷機側の図1(a)の破線で示す位置決めピン24(図3)に対応した切欠き部14a、14bが設けられている。このガイド板11の先端14の切欠き部14a、14bによりガイド板11を装着する際の位置決めが容易となり、また位置決め精度が向上する。
【0037】
なお、くわえ側の隙間26が狭い場合には、ガイド板11のクランプへの差し込み量は少ない方がガイド板11の取り外しが容易であるので、切欠き部14a、14bは小さい方が望ましい。また、ガイド板11の先端14の近傍には幅手に延びるように印刷版先端の取り付け状態を視認するための多数の孔16が配置されている。
【0038】
L型形状の第1及び第2補強部材12,13は、例えばアルミニウムからなり、ガイド板11に貼り付けられている。第1補強部材12は装着側先端14から若干離れた位置に配置され、第2補強部材13は後端15に沿って配置されている。
【0039】
また、特に、ガイド板11に柔軟性を持たせる場合は、補強部材12,13によりガイド板11のたわみが無くなり印刷機への装着が容易になり、また、印刷版5のセット後にガイド板11を待避させるのも容易となる。
【0040】
図1(b)のように、ガイド板11はガイド面11a側に破線で示す印刷版5と重なるようにして使用される。ガイド板11は厚さ0.24mmのアルミニウム板であり、そのヤング率は60000〜80000N/mmの範囲内である。
【0041】
また、ガイド板11の厚さは0.2〜1mmの範囲が好ましく、0.2mm以上あれば、プラスチック支持体50で支持されたシート状の印刷版5よりも剛性があるためガイド板の装着が容易であり、1mm以下であれば、剛性が大きくなりすぎず取り扱いが容易である。なお、印刷機のくわえ側クランプの隙間26が狭くなっている場合には、ガイド板11の厚さは剛性を確保した上でなるべく薄い方が作業性がよい。
【0042】
また、図1(b)のように、ガイド板11のガイド面11aには傷付き防止膜17が設けられており、接触する印刷版5の印刷面を保護し、印刷版5の装着時にその印刷面の傷付けを更に確実に防止できるとともに、ガイド板11ヘの印刷版5の貼り付きを防止できる。かかる傷付き防止膜17は布に植毛あるいはパイル織りしたものを貼り付けているが、滑り性のあるシートや不織布等であってもよい。
【0043】
次に、印刷版を装着する印刷機の版胴について図2,図3を参照して説明する。図2は図1の装着補助装置を適用可能な印刷機の版胴及びブランケット胴を概略的に示す側面図である。図3は図2の版胴のくわえ側クランプの構成を上刃が閉じた状態で示す側面図(a)及び上刃が開いた状態で示す側面図(b)である。
【0044】
カラー印刷機は、図2に示すような版胴1、ブランケット胴2、圧胴及び渡し胴(図示省略)で構成されたユニットをY、M、C、Kの4色分の4つ備える。図2のように、版胴1は、くわえ側クランプ21と尻側クランプ31を有する。図3(a)のように、くわえ側クランプ21は、下刃23と上刃22とからなり、上刃22はカムやバネ等(図示省略)で回動軸25で回動し下刃23に対して開閉可能に取り付けられている。下刃23には、版胴1の回転軸方向(紙面垂直方向)に位置決めピン24が複数設けられており、印刷版の切り欠きが係合し位置決めされる。
【0045】
印刷版5(図1(b))を装着するとき、図3(b)のように、上刃22が回動軸25で回動して開き、下刃23との間に隙間26が形成されるようになっている。このように、くわえ側クランプ21の下刃23と上刃22が開の状態で印刷版5のくわえ側端部を隙間26から差し込み、上刃22を閉にすることで印刷版5が装着されるようになっている。
【0046】
なお、印刷機の種類によっては下刃が上刃に対して開閉可能に取り付けられているものもある。
【0047】
次に、図2の印刷機に適用して好ましい印刷版について図4を参照して説明する。図4は本実施の形態における印刷版の層構成を模式的に示す断面図である。
【0048】
図4のように、シート状の印刷版5は、プラスチック支持体50上に少なくとも親水性層51及び感熱性画像形成層52を有する。印刷版5は、例えば、印刷版の作製装置のドラムに巻き付けられ、そのドラムを回転させて光源により画像データを走査露光して画像記録される。
【0049】
また、シート状の印刷版5は、図1(a)のガイド板11とほほ同じ矩形状に形成されており、版胴1のくわえ側クランプの下刃23に設けられた位置決めピン24に対応して切り欠きが形成されている。また、印刷機の種類によっては、印刷版5は、図1(b)のように、後端側が折り曲げられて折曲部5bとなっている。
【0050】
印刷版5のプラスチック支持体50として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0051】
プラスチック支持体50は、特に、ポリエチレンテレフタレートが搬送性、取り扱い易さ等から好ましく、印刷版作製装置内では、プラスチック支持体の厚さが薄過ぎたり厚過ぎると、ロールにし難いし、搬送性に問題があり、また薄過ぎると次の工程の印刷機に持ち運ぶ時に強度がなく撓む等の問題があり、搬送性、取り扱い易さ等からプラスチック支持体50の厚さは100〜250μmが好ましく、特に好ましくは170〜180μmである。また、プラスチック支持体50は、ヤング率が4500乃至6500N/mmの範囲内であることが好ましく、5000乃至6000N/mmの範囲内であることが更に好ましい。
【0052】
印刷版5の親水性層51とは、印刷時に印刷インキを着肉しない機能を有する層であり、この親水性層51を形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリクス構造体や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネート又はアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリクス構造体、金属酸化物等が好ましく用いられる。親水性層51は、特に金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナソル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。
【0053】
また、印刷版5の感熱性画像形成層52は、加熱により画像を形成しうる層であり、熱溶融性微粒子及び/又は熱融着性微粒子を含有する。熱溶融性微粒子としては、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。また、熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。
【0054】
次に、図1の装着補助装置10を用いて図4のプラスチック支持体50で支持されたシート状の印刷版5を図2の版胴1のくわえ側クランプにセットする第1及び第2の装着方法について図5,図6を参照して説明する。
【0055】
図5は図2の版胴に図1の装着補助装置を装着した状態を概略的に示す要部側面図である。図6は図3(b)のくわえ側クランプの下刃と上刃との間にシート状の印刷版をガイド板とともに装着した状態を示す要部側面図である。
【0056】
〈第1の装着方法〉
【0057】
まず、図3(b)のくわえ側クランプ21の下刃23と上刃22の間の隙間26が上向きになるような図2,図5の位置に版胴1を回転し保持する。なお、通常、カラー印刷機の場合、上記図2,図5の位置に版胴1が自動的にくるように設定されている。
【0058】
次に、図1の装着補助装置10の補強部材12,13を取手にして、図5のように、装着側先端14を下側にしてガイド板11を版胴1のくわえ側クランプ21の下刃23と上刃22の間の隙間26に差し込む。このとき、ガイド板11はそのガイド面11a側が版胴1の外周面側に位置するように差し込まれ、装着側先端14の切欠部14a、14bが図1(a)の破線のようにくわえ側クランプ21の下刃23の位置決めピン24に係合する。
【0059】
次に、シート状の印刷版5をその先端5aからガイド板11のガイド面11aの傷付き防止膜17上を滑るようにしてくわえ側クランプ21の下刃23と上刃22の間の隙間26に落とし込む。このとき、印刷版5の印刷面がガイド板11の傷付き防止膜17に対向し、また、印刷版5の切り欠きがくわえ側クランプ21の下刃23の位置決めピン24に係合する(図6参照)。
【0060】
次に、装着補助装置10のガイド板11を上側に引き抜くことで、くわえ側クランプ21から待避させてから、図3(a)のように上刃22を下刃23に対し回動させて閉じることにより、印刷版5がくわえ側クランプ21に装着されてセットされる。なお、この後、印刷版5は版胴1の外周をほぼ1周分巻かれ、その後端が尻側クランプ31に装着される。
【0061】
〈第2の装着方法〉
【0062】
上述と同様に、図3(b)のくわえ側クランプ21の下刃23と上刃22の間の隙間26が上向きになるような図2,図5の位置に版胴1を回転し保持する。
【0063】
次に、装着補助装置10のガイド板11の傷付き防止膜17上に図1(b)の破線のようにシート状の印刷版5をその印刷面が傷付き防止膜17に接触するように重ねた状態で、補強部材12,13を取手にして、印刷版5をその先端5aからガイド板11とともに、図6のように、版胴1のくわえ側クランプ21の下刃23と上刃22の間の隙間26に下方に差し込む。このとき、ガイド板11の切欠部14a、14b及び印刷版5の切り欠きが図1(a)の破線のようにくわえ側クランプ21の下刃23の位置決めピン24に係合する。
【0064】
次に、装着補助装置10のガイド板11を上側に引き抜くことで、くわえ側クランプ21から待避させてから、図3(a)のように上刃22を下刃23に対し回動させて閉じることにより、印刷版5がくわえ側クランプ21に装着されてセットされる。なお、この後、印刷版5は版胴1の外周をほぼ1周分巻かれ、その後端が尻側クランプ31に装着される。
【0065】
以上のように、本実施の形態の装着補助装置10によれば、ガイド板11をくわえ側クランプ21の隙間26に予め装着し、印刷版5をガイド板11の傷付き防止膜17に沿って滑るようにしてセットしたり、また、印刷版5をガイド板11に予め重ねた状態でガイド板11とともにくわえ側クランプ21の隙間26に装着してから、ガイド板11を引き抜くことで、プラスチック支持体50で支持されたシート状印刷版5を版胴1のくわえ側クランプ21にセットできるので、シート状印刷版5を印刷機の版胴1に装着し易く、装着の作業性が向上し、また印刷版5の印刷面の傷付けを確実に防止できる。
【0066】
また、装着補助装置10のガイド板11に補強部材12,13を設けることで、ガイド板11が比較的柔軟性のある場合でも、ガイド板11のたわみが無くなり印刷機への装着が容易になる。また、印刷版5のセット後にガイド板11を待避させるのも容易となる。また、補強部材12,13は装着時の取手を兼ねることができるので、取り扱いに便利である。
【0067】
また、装着のとき、印刷版5の印刷面はガイド板11のガイド面11aに設けた傷付き防止膜17に接触するので、印刷版の装着時の傷付けを更に確実に防止できるとともに、ガイド板11ヘの印刷版5の貼り付きを防止できる。
【0068】
なお、図1(a)のように、補強部材12,13の幅手長さがガイド板11よりも短く構成されているので、印刷版5を版胴1に装着する際に補強部材12,13が印刷機側の他の部材と干渉することを防止でき、作業性がよくなる。
【0069】
次に、図1のガイド板の後端に設けた印刷版保持のための保持部材について図7,図8を参照して説明する。図7は、図1の装着補助装置のガイド板の後端に設けた第2補強部材と保持部材をガイド面側から見た要部斜視図である。図8は、図7の第2補強部材と保持部材を示す要部側面図である。
【0070】
図7,図8のように、ガイド板11のガイド面11a側にL形状の保持部材18を取り付け、保持部材18は、反対側の第2補強部材13から延びた連結板13aに支持されたヒンジ19で回動可能になっている。L形状の保持部材18は印刷版5(図8の破線で示す)に当接する面にゴム材料等からなる押さえ部18aが設けられており、印刷版5を押さえ部18aを介して保持する。保持部材18による保持を解除する場合は、保持部材18をヒンジ19で図8の回転方向rに回動させることで印刷版5から離す。かかる保持部材18を図1の装着補助装置10に設けることで、特に、印刷版5とガイド板11を予め重ねた状態で取り扱うときに、印刷版5をガイド板11に保持させることで装着の作業性が向上する。
【0071】
また、図1(b)のように印刷版5の後端側に折曲部5bがある場合、図8のように、印刷版5を保持部材18で保持したとき、図8の破線のように印刷版5の折曲部5bは保持部材18と連結板13aとの間に位置し、保持部材18に係合することで、折曲部5bが保護される。印刷機の種類に応じて印刷版5の後端に折曲部5bを形成した場合、印刷版5の取扱い時に折曲部5bが変形するとクランプへの装着不良が発生するおそれがあるが、保持部材18の保護機能により折曲げ部の保護を行い装着不良を未然に防止できる。
【0072】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、ガイド板11の材質は、アルミニウムやアルミニウム合金以外の材料であってもよく、その場合のヤング率は印刷版5のプラスチック支持体50の2倍以上であることが好ましく、例えば、ガイド板11が鉄板等の金属材料からなる場合、そのヤング率は10000〜200000N/mmの範囲内が好ましい。
【0073】
また、図1(a)の装着補助装置10のガイド板11の周囲にゴム材料等からなる保護部材を配置することが好ましく、作業の安全性・取り扱い易さ・損傷防止の向上を図ることができる。
【0074】
また、装着補助装置10のガイド板11のサイズは、版胴1に装着される印刷版のサイズ毎に用意することが好ましい。また、装着補助装置10の補強部材12,13は、L形状のアルミニウムから構成したが、本発明ではこれに限定されずに、他の材料や形状であってもよく、例えば樹脂材料や段ボールから構成してもよく、形状も四角柱状の棒部材等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施の形態による印刷版の装着補助装置を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【図2】図1の装着補助装置を適用可能な印刷機の版胴及びブランケット胴を概略的に示す側面図である。
【図3】図2の版胴のくわえ側クランプの構成を上刃が閉じた状態で示す側面図(a)及び上刃が開いた状態で示す側面図(b)である。
【図4】本実施の形態における印刷版の層構成を模式的に示す断面図である。
【図5】図2の版胴に図1の装着補助装置を装着した状態を概略的に示す要部側面図である。
【図6】図3(b)のくわえ側クランプの下刃と上刃との間にシート状の印刷版をガイド板とともに装着した状態を示す要部側面図である。
【図7】図1の装着補助装置のガイド板の後端に設けた第2補強部材と保持部材をガイド面側から見た要部斜視図である。
【図8】図7の第2補強部材と保持部材を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 版胴
5 シート状の印刷版
5a 先端
5b 折曲部
10 装着補助装置
11 ガイド板
11a ガイド面
12,13 補強部材
13a 連結板
14 装着側先端14
14a,14b 切欠部
15 後端
17 傷付き防止膜
18 保持部材
19 ヒンジ
21 くわえ側クランプ
22 上刃
23 下刃
24 位置決めピン
26 隙間
50 プラスチック支持体
51 親水性層
52 感熱性画像形成層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版を印刷機の版胴に装着する際に、前記版胴に設けられたくわえ側クランプの隙間にガイド板を上方から装着し、前記シート状印刷版を前記ガイド板上を滑らせながら前記くわえ側クランプにセットすることを特徴とする印刷版の装着方法。
【請求項2】
プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版を印刷機の版胴に装着する際に、前記版胴に設けられたくわえ側クランプの隙間に前記印刷版をガイド板に予め重ねた状態で前記ガイド板とともに装着してから、前記ガイド板を引き抜くことで前記シート状印刷版を前記くわえ側クランプにセットすることを特徴とする印刷版の装着方法。
【請求項3】
前記ガイド板の装着側の先端に、前記印刷機に設けられた位置決めピンに対応した切欠きを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版の装着方法。
【請求項4】
前記ガイド板の装着側の先端近傍の幅手に前記ガイド板を補強する補強部材を有することを特徴とする請求項1,2または3に記載の印刷版の装着方法。
【請求項5】
前記ガイド板の装着側と反対側の後端近傍の幅手に補強部材を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項6】
前記補強部材は前記装着時の取手を兼ねることを特徴とする請求項4または5に記載の印刷版の装着方法。
【請求項7】
前記ガイド板の装着側と反対側の後端近傍に前記印刷版を保持する保持部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項8】
前記保持部材は前記印刷版の折曲部の保護機能を有することを特徴とする請求項7に記載の印刷版の装着方法。
【請求項9】
前記ガイド板の前記印刷版との接触面に傷付き防止材料を設けたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項10】
前記ガイド板の材質のヤング率は前記印刷版のプラスチック支持体の2倍以上であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項11】
前記ガイド板の材質のヤング率は60000乃至80000N/mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項12】
前記ガイド板の厚さは0.2乃至1mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項13】
前記プラスチック支持体はヤング率が4500乃至6500N/mmの範囲内であり厚さが100乃至250μmの範囲内であり、
前記印刷版は前記プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び感熱性画像形成層を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項14】
前記プラスチック支持体の材質はポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項15】
前記プラスチック支持体の厚さは170乃至180μmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項16】
前記プラスチック支持体のヤング率は5000乃至6000N/mmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の印刷版の装着方法。
【請求項17】
プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版を印刷機の版胴に装着する際の装着補助装置であって、
前記版胴に設けられたくわえ側クランプの隙間に前記シート状印刷版とともに装着可能な板状のガイド板と、
前記ガイド板の幅手に前記ガイド板を補強する補強部材と、を備えることを特徴とする印刷版の装着補助装置。
【請求項18】
前記ガイド板の装着側の先端に、前記印刷機に設けられた位置決めピンに対応した切欠きを有することを特徴とする請求項17に記載の印刷版の装着補助装置。
【請求項19】
前記ガイド板の装着側の先端近傍及び装着側と反対側の後端近傍の少なくとも一方に前記補強部材を設けたことを特徴とする請求項17または18に記載の印刷版の装着補助装置。
【請求項20】
前記補強部材は前記装着時の取手を兼ねることを特徴とする請求項17,18または19に記載の印刷版の装着補助装置。
【請求項21】
前記ガイド板の装着側と反対側の後端近傍に前記印刷版を保持する保持部材を設けたことを特徴とする請求項17乃至20のいずれか1項に記載の印刷版の装着補助装置。
【請求項22】
前記保持部材は前記印刷版の折曲部の保護機能を有することを特徴とする請求項21に記載の印刷版の装着補助装置。
【請求項23】
前記ガイド板の前記印刷版との接触面に傷付き防止材料を設けたことを特徴とする請求項17乃至22のいずれか1項に記載の印刷版の装着補助装置。
【請求項24】
前記ガイド板の材質のヤング率は前記印刷版のプラスチック支持体の2倍以上であることを特徴とする請求項17乃至23のいずれか1項に記載の印刷版の装着補助装置。
【請求項25】
前記ガイド板の材質のヤング率は60000乃至80000N/mmの範囲内にあることを特徴とする請求項17乃至24のいずれか1項に記載の印刷版の装着補助装置。
【請求項26】
前記ガイド板の厚さは0.2乃至1mmの範囲内にあることを特徴とする請求項17乃至25のいずれか1項に記載の印刷版の装着補助装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−26961(P2006−26961A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205781(P2004−205781)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】