説明

印刷物検査方法、印刷物検査装置及び印刷物検査プログラム

【課題】磁気の信号レベルに大きな変動が生じた場合でも、正確かつ安定的に磁気検査を行うことを課題とする。
【解決手段】磁気ヘッド11aにより大判印刷物を走査して得られる信号値からなる磁気情報13aを記憶部13に格納しておき、最小値検索部がこの磁気情報13aの中から最小値に基づく磁気無し信号値を検索してこれを基準値とし、閾値決定部12dがこの基準値を用いて上下限閾値からなる抽出域を決定し、近似曲線算出部12eが抽出域内の信号値を用いて近似曲線を算出し、補正処理部12fが全信号値から近似曲線の値を差し引いて補正処理を行い、磁気検査部12gが補正後の信号値を用いて磁気検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に印刷物を押圧するエアーを介在させ、計測面と印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま印刷物をライン状に走査することで印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査方法、印刷物検査装置及び印刷物検査プログラムに関し、特に、磁気の信号レベルに大きな変動が生じた場合でも、正確かつ安定的に磁気検査を行うことができる印刷物検査方法、印刷物検査装置及び印刷物検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、計測面にエアー噴出口が設けられた磁気ヘッドを用いて印刷物の検査を行う印刷物検査装置が知られている。かかる印刷物検査装置では、磁気ヘッドの計測面から加圧エアーを噴出することで、印刷物の波打ちやしわを矯正し、磁気ヘッドと印刷物との距離を微少距離に保ったまま印刷物の走査を行う。
【0003】
ここで、磁気ヘッドから噴出するエアーの温度と磁気ヘッド自体の温度との間には温度差があるため、かかる温度差がなくなる熱平衡状態になるまで磁気ヘッドを待機させておき、熱平衡状態になった後に磁気ヘッドによる走査を開始するのが一般的であったが、熱平衡状態になるまで磁気ヘッドを待機させると、走査毎に待機時間を要すると共に、走査走行途中での温度変動には対応できずに磁気特性検出値に誤差が生じていた。
【0004】
このため、熱平衡状態になる前に磁気ヘッドによる走査を開始するとともに、この磁気ヘッドで検知した信号値を磁気ヘッドの温度を用いて補正する従来技術が知られている。具体的には、磁気ヘッドの表面温度を測定するとともに、表面温度ごとにあらかじめ用意された補正値を用いて磁気ヘッドの出力値を補正する(特許文献1参照)。また、磁気ヘッド周辺の温度と同じ温度のエアーを噴出するように、磁気ヘッドの温度やエアーの温度を調節する従来技術も知られている。
【0005】
ところが、かかる従来技術によれば、磁気ヘッドの温度を検知するセンサや、磁気ヘッド自体若しくはエアーの温度を調節する回路や部材が必要となるため、印刷物検査装置の大型化やコスト増を招くと言う問題がある。
【0006】
このため、磁気ヘッドで印刷物を走査し、検出した信号値のうちで磁気情報の無い磁気無し信号値を抽出し、抽出した磁気無し信号値の近似曲線を用いて信号値を補正することで、磁気ヘッドやエアーの温度を制御することなく、適正な磁気信号を取得する技術が考えられる。具体的には、各走査ラインでの磁気無し信号値の変動範囲を実験値からあらかじめ決めておき、この範囲に所在する信号値を用いて近似曲線を算出することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−263701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術によれば、実験的に求めた上下限閾値を用いて磁気ヘッドが印刷物を走査して得た磁気情報読取り信号データの内の磁気無し信号値を抽出するための抽出域を定める必要があるため、磁気の信号レベルに大きな変動が生じたような場合に正確な近似曲線が得られず、結果的に検査精度の低下を招くという問題がある。走査ライン毎に磁気の信号レベルに大きなオフセット値の変動が生ずると、上下限閾値の範囲を超える磁気無し信号値が発生するためである。
【0009】
かかる従来技術の問題点を具体的に説明する。図16は、従来技術の問題点を説明するための説明図である。同図では、図2に示した大判印刷物100の所定の行に所在する各印刷原画101を走査することにより得られた信号値の変動グラフを簡略化して図示している。
【0010】
図16(a)に示すように、磁気ヘッドによって取得された信号値は、磁気無し信号値の部分に相当するベース信号71とピーク信号72とからなる。ここで、検査対象となる走査領域のベース信号71が閾値Lの直線73と閾値Hの直線74の範囲内にあれば、このベース信号71に対応する近似曲線75を高い精度で求めることができる。
【0011】
これに対して、図16(b)に示すように、ベース信号76が閾値Lの直線と閾値Hの直線の範囲外になると、近似曲線77を正確に求めることができなくなる。閾値Lの直線と閾値Hの直線の範囲内にあるベース信号76の一部のみを使って近似曲線77を算定するからである。その結果、磁気信号値を過剰に補正してしまう。他方、閾値Lと閾値Hの間隔を十分に拡大してベース信号76を閾値Lの直線と閾値H’78の直線の範囲外にしない方法もあるが、この場合は範囲内の全ての信号値を磁気無し信号値と見做して近似曲線77を算定するので結果的に検査精度の低下を招く結果となる。
【0012】
特に、アルミや銅等の磁気信号レベルと逆方向に検出される特殊部材が印刷物に対して貼着又は抄き込まれた場合には、かかる印刷物の磁気信号を検出した際に、特殊部材が所在する箇所の磁気信号レベルが著しく低下してしまうため、磁気無しレベルの正確な近似曲線が得られず、検査精度の低下を招くという問題がある。
【0013】
以上のことから、磁気の信号レベルに大きな変動が生じた場合でも、正確かつ安定的に磁気検査を行うことができる印刷物検査方法、印刷物検査装置及び印刷物検査プログラムをいかにして実現するかが重要な課題となっている。
【0014】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、磁気の信号レベルに大きなオフセット変動やノイズ及び又は特殊な信号変動が生じた場合でも、正確かつ安定的に磁気検査を行うことができる印刷物検査方法、印刷物検査装置及び印刷物検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査方法であって、前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して、前記磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納する格納工程と、前記記憶部に記憶した信号値の中から、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出工程と、前記基準値抽出工程により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を算定する抽出域算定工程と、前記抽出域算定工程により算定された抽出域に所在する信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定工程と、前記近似曲線算定工程で算定された近似曲線に基づいて前記記憶部に記憶された信号値を補正処理する補正処理工程とを含んだことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査方法であって、前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して、前記磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納する格納工程と、前記記憶部に記憶した信号値を複数の走査領域に分割する走査領域分割工程と、前記走査領域分割工程により分割された走査領域毎に、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出工程と、前記基準値抽出工程により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を走査領域毎に算定する抽出域算定工程と、前記抽出域算定工程により算定された全ての抽出域に所在する信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定工程と、前記近似曲線算定工程で算定された近似曲線に基づいて前記記憶部に記憶された信号値を補正処理する補正処理工程とを含んだことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査方法であって、前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して、前記磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納する格納工程と、前記記憶部に記憶した信号値を複数の走査領域に分割する走査領域分割工程と、前記走査領域分割工程により分割された走査領域毎に、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出工程と、前記基準値抽出工程により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を走査領域毎に算定する抽出域算定工程と、前記抽出域算定工程により算定された各走査領域の抽出域に含まれる磁気無し信号値の位置情報を抽出する位置情報抽出工程と、前記位置情報抽出工程により抽出された複数の走査領域に共通する位置情報を共抽出点として抽出する共抽出点抽出工程と、前記共抽出点抽出工程により抽出された共抽出点の信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定工程と、前記近似曲線算定工程で算定された近似曲線に基づいて前記記憶部に記憶された信号値を補正処理する補正処理工程とを含んだことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記基準値抽出工程は、前記記憶部に記憶された信号値の最小値を前記基準値として抽出することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、前記基準値抽出工程は、前記記憶部に記憶された信号値のうち最小値に近い複数の信号値の平均値を前記基準値として抽出することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、所定の特殊部材が印刷物に対して貼着又は抄き込まれた場合には、かかる印刷物での前記特殊部材の所在位置を設定する設定手段をさらに備え、前記基準値抽出工程は、前記記憶部に記憶された信号値のうちの前記特殊部材の所在位置に対応する信号を削除若しくは修正するとともに、削除若しくは修正された後の信号値のうち最小値に近い複数の信号値の平均値を前記基準値として抽出することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記発明において、前記抽出域算定工程は、前記基準値抽出工程により抽出された基準値から所定の値を減算した値を下限とし、前記基準値に所定の値を加算した値を上限として前記抽出域を算定することを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査装置であって、前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して得られる前記磁気ヘッドの信号値を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した信号値の中から、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出手段と、前記基準値抽出手段により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を算定する抽出域算定手段と、前記抽出域算定手段により算定された抽出域に所在する信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定手段と、前記近似曲線算定手段で算定された近似曲線に基づいて前記記憶手段に記憶された信号値を補正処理する補正処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査プログラムであって、前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して、前記磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納する格納手順と、前記記憶部に記憶した信号値の中から、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出手順と、前記基準値抽出手順により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を算定する抽出域算定手順と、前記抽出域算定手順により算定された抽出域に所在する信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定手順と、前記近似曲線算定手順で算定された近似曲線に基づいて前記記憶部に記憶された信号値を補正処理する補正処理手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、磁気ヘッドにより印刷物を走査して、磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納し、記憶部に記憶した信号値の中から、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出し、抽出した基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を算定し、算定した抽出域に所在する信号値を用いて磁気無し信号値の近似曲線を算定し、算定した近似曲線に基づいて記憶部に記憶された信号値を補正処理するよう構成したので、磁気の信号レベルに大きなオフセット変動やノイズ変動が生じた場合でも、磁気無し信号値が所在する適正な抽出域を算定し、もって正確かつ安定的に磁気検査を行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明によれば、磁気ヘッドにより印刷物を走査して、磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納し、記憶部に記憶した信号値を複数の走査領域に分割し、分割した走査領域毎に、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出し、抽出した基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を走査領域毎に算定し、算定した全ての走査領域の抽出域に所在する信号値を用いて磁気無し信号値の近似曲線を算定し、算定した近似曲線に基づいて記憶部に記憶された信号値を補正処理するよう構成した。これにより、抽出精度の向上を目的として比較的狭い走査領域毎に狭い抽出域を設定して、各走査領域の磁気無し信号値を適正に抽出できて、精度の高い近似曲線が算定でき、もって正確かつ安定的に磁気検査を行うことが可能となる。
【0026】
また、本発明によれば、磁気ヘッドにより印刷物を走査して、磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納し、記憶部に記憶した信号値を複数の走査領域に分割し、分割した走査領域毎に、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出し、抽出した基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を走査領域毎に算定し、算定した各走査領域の抽出域に含まれる磁気無し信号値の位置情報を抽出し、抽出した複数の走査領域に共通する抽出域の位置情報を共抽出点として抽出し、抽出した共抽出点の信号値を用いて磁気無し信号値の近似曲線を算定し、算定した近似曲線に基づいて記憶部に記憶された信号値を補正処理するよう構成したので、走査領域毎に磁気無し信号値が所在する適正な抽出域をより正確に算定し、もって正確かつ安定的に磁気検査を行うことが可能となる。
【0027】
また、本発明によれば、記憶部に記憶された信号値の最小値を基準値として抽出するよう構成したので、迅速かつ効率良く基準値を抽出することができる。
【0028】
また、本発明によれば、記憶部に記憶された信号値のうち最小値に近い複数の信号値の平均値を基準値として抽出するよう構成したので、ノイズ的な信号値が存在する場合であってもこれを除外し、より適正な基準値を算定することができる。
【0029】
また、本発明によれば、所定の特殊部材が印刷物に対して貼着又は抄き込まれた場合には、かかる印刷物での特殊部材の所在位置を設定しておき、記憶部に記憶された信号値のうちの特殊部材の所在位置に対応する信号を削除若しくは修正するとともに、削除若しくは修正された後の信号値のうち最小値に近い複数の信号値の平均値を基準値として抽出するよう構成したので、アルミや銅等の磁気信号レベルと逆方向に検出される特殊部材が印刷物に対して貼着又は抄き込まれた場合であっても、磁気無しレベルの正確な近似曲線を取得し、もって磁気ヘッドで測定管理すべき通常の磁気特性と異なる特異な磁気特性を有する印刷物の場合も、その磁気特性を精度良く測定することができる。
【0030】
また、本発明によれば、基準値から所定の値を減算した値を下限とし、基準値に所定の値を加算した値を上限として抽出域を算定するよう構成したので、迅速かつ効率良く抽出域を算定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例1に係る印刷物検査装置の概要を示す図である。
【図2】図2は、大判印刷物の一例を示す図である。
【図3】図3は、実施例1に係る印刷物検査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図4は、磁気ヘッド及び磁気ヘッドに関連する回路を示す図である。
【図5】図5は、磁気無し信号値の近似曲線の算出を説明するための説明図である。
【図6】図6は、図3に示した印刷物検査装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施例2に係る印刷物検査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】図8は、図7に示した印刷物検査装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施例3に係る印刷物検査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図10は、複数の走査領域に共通して存在する共抽出点の抽出処理を説明するための説明図である。
【図11】図11は、図9に示した印刷物検査装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、ホログラム領域での磁気の信号出力を説明するための図(図12(a))並びに実施例1〜3の方法での補正した場合の近似曲線を説明するための図(図12(b))である。
【図13】図13は、実施例4に係る印刷物検査装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、ホログラム総和の値表示を説明する図(図14(a))並びにホログラム異常の検索表示を説明する図(図14(b))である。
【図15】は、実施例4に係る印刷物検査装置が実効する処理手順を示すフローチャートである。
【図16】図16は、従来技術の問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る印刷物検査方法、印刷物検査装置及び印刷物検査プログラムの好適な実施例を詳細に説明する。以下では、本発明に係る印刷物検査装置が、基本単位の印刷原画が余白部を挟んで規則的に並べられて印刷された印刷物(以下、「大判印刷物」と記載する)を検査対象とする場合について説明する。なお、本発明はかかる大判印刷物に限らず、隣接する印刷原画間に余白が無い大判印刷物でも検査面に磁気無し部を有すれば良く、また、インクが未乾燥状態のもの等、検査面に非接触の検査を要する磁気を含んだ印刷物全般を、検査対象とすることができる。
【実施例1】
【0033】
まず、本実施例1に係る印刷物検査装置の概要について説明する。図1は、本実施例1に係る印刷物検査装置10の概要を示す図である。なお、同図には、本発明に係る印刷物検査装置10の一部のみを図示している。
【0034】
また、図1(a)には、印刷物検査装置10の俯瞰図を、同図(b)には、ヘッドユニット11を大判印刷物100側からみた図を、同図(c)には、ヘッドユニット11をY軸の正方向からみた図を、それぞれ示している。なお、大判印刷物100は、上面が平面加工されたガラス平盤などの図示しない平盤上に載置されており、同図に示すXY平面は、かかる平盤の上面と平行な平面である。
【0035】
図1に示したように、印刷物検査装置10は、磁気ヘッド11aの下面からエアーを噴出することで、磁気ヘッド11a下面が大判印刷物100に接触することを防止する。また、この磁気ヘッド11aを内蔵するヘッドユニット11には、一組のローラ11bがY軸と平行な取付軸まわりに転動可能に設けられている。
【0036】
そして、磁気検査を行う場合には、ローラ11bが大判印刷物の余白部(インクがない部分)上を走行することで、磁気ヘッド11aの下面と大判印刷物100との微少間隔(たとえば、150μm)を保持する。
【0037】
また、ヘッドユニット11は、Z軸用駆動モータ1cによって方向5c(図1のZ軸の正方向及び負方向)に移動可能なZ軸用可動部2c経由で、X軸用可動部3aに接続されている。
【0038】
また、X軸用可動部3aは、X軸用ガイド2a上を、X軸用駆動モータ1aによって方向5a(同図のX軸の正方向及び負方向)へ移動制御される。また、X軸用ガイド2aは、Y軸用可動部3bに接続されており、Y軸用可動部3bは、Y軸用ガイド2b上を、Y軸用駆動モータ1bによって方向5b(同図のY軸の正方向及び負方向)へ移動制御される。
【0039】
すなわち、ヘッドユニット11は、同図に示したX軸、Y軸及びZ軸にそれぞれ沿って移動自在に設けられている。たとえば、同図に示した走査方向200で、大判印刷物100を走査する場合には、Y座標を固定したうえで、X座標の走査開始位置でローラ11bが大判印刷物100に接するまでヘッドユニット11を下降させる。そして、X座標のみを変化させることで走査方向200へヘッドユニット11を走行させる。
【0040】
その後、X座標の走査終了位置に達したならば、ヘッドユニット11を上昇させることで、ローラ11bを大判印刷物100から離す。そして、ヘッドユニット11のY座標を変更しつつX座標を走査開始位置まで戻し、ヘッドユニット11を下降させて次の走査を開始する。
【0041】
ここで、検査対象となる大判印刷物100について図2を用いて説明する。図2は、大判印刷物100の一例を示す図である。なお、同図には、X方向にA〜Dまでの4列、Y方向に1〜5までの5行(面)の計20個(=4×5)の印刷原画101(面とも言う)が印刷された大判印刷物100(20面付けされた印刷物)を示している。なお、大判印刷物100の外周部分及び各印刷原画101間には、インクが印刷されていない余白部がそれぞれ設けられている。また、印刷原画101には部分的に磁気インクを用いて印刷された磁気有り部分と磁気インクが印刷されていない磁気無し部分が存在している。
【0042】
そして、X方向の走査を行う場合には、例えば同図における第1行の左端でヘッドユニット11を下降させて第1行の走査を開始し、第1行の右端までの走査が終了したならば、ヘッドユニット11を上昇させる。
【0043】
なお、ヘッドユニット11内に磁気ヘッド11aのY方向の位置をずらす機構を設けることとすれば、磁気ヘッド11aをずらして走査する手順を繰り返すことで、第1行(面単位の行)での走査を複数回(各ライン走査と称す)にわたって行うことも可能である。この場合、第1行のすべての走査が完了したならば、ヘッドユニット11を上昇させた状態で第2行の左端でヘッドユニット11を下降させ、第2行の走査を開始することになる。
【0044】
次に、図1(b)及び図1(c)について説明する。図1(b)に示すように、ヘッドユニット11を大判印刷物100側からみると、1つの磁気ヘッド11aが配置されている。なお、図1(b)には、磁気ヘッド11aの大判印刷物100側の面に6個の穴が設けられた場合を示しているが、これらの穴は、大判印刷物100へ吹き付けるエアーの噴出口である。なお、大判印刷物100へ吹き付けるエアーは、図示しないコンプレッサから供給される圧縮エアーである。
【0045】
具体的には、図1(c)に示すように、かかる噴出口から方向300へ向けてエアーが吹き付けられることで、大判印刷物100の波打ちやしわが矯正される。これにより、磁気ヘッド11aと大判印刷物100との間隔を適正に保つことができる。なお、エアーは、チューブやパイプといった流路11c経由で噴出口へ導かれる。
【0046】
しかし、このように、エアー噴出によって磁気ヘッド11aと大判印刷物100との微少間隔を保持する印刷物検査装置10の場合、噴出されるエアーの温度と、磁気ヘッド11aの温度とが異なることが一般的である。このため、磁気ヘッド11aによって取得された磁気データを一旦記憶するとともに、記憶した磁気データに含まれる磁気無し信号値部分の近似曲線を用いて事後的に磁気データの温度補正を行う手法が考えられる。
【0047】
ただし、磁気無し信号値部分を正確に抽出できないと、この磁気無し信号値部分の適正な近似曲線が得られず、却って異常な状態へ補正を行う可能性がある。特に、磁気ヘッドで取得される磁気データの磁気無し信号レベルにオフセット成分(DC成分)の大きな変動が生じた場合には、実験的に求めた固定的に設定された閾値を用いて磁気無し信号値部分を正確に抽出することは難しい。そこで、本実施例1では、磁気無し信号値部分を信号値の最小値に着目しつつ磁気無し信号値部分を動的に取得することとしている。
【0048】
次に、本実施例1に係る印刷物検査装置の構成について説明する。図3は、実施例1に係る印刷物検査装置の構成を示す機能ブロック図である。なお、同図では、図1に示した可動機構等の記載を省略している。
【0049】
図3に示すように、印刷物検査装置10は、ヘッドユニット11と、制御部12と、記憶部13と、エアーコンプレッサ14とを有する。ヘッドユニット11は、磁気ヘッド11aを備え、制御部12は、移動制御部12aと、磁気情報記憶指示部12bと、最小値検索部12cと、閾値決定部12dと、近似曲線算出部12eと、補正処理部12fと、磁気検査部12gとを備える。
【0050】
記憶部13は、磁気情報13aを記憶する。なお、エアーコンプレッサ14から送り出された圧縮エアーは、図1(C)に示したチューブやパイプといった流路11c経由で、各磁気ヘッド11aへ導かれる(同図の矢印300参照)。
【0051】
ヘッドユニット11は、磁気ヘッド11aを保持するユニットであり、制御部12の移動制御部12aからの指示に基づき、検査対象である大判印刷物100に対する相対位置を図1に示したX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について移動する。また、同じく移動制御部12aからの指示に基づき、エアーコンプレッサ14で加圧されたエアーを磁気ヘッド11aから噴出させる動作の開始及び停止を行う。
【0052】
磁気ヘッド11aは、交流バイアス式の差動型磁気検知ヘッドであり、検知面、すなわち大判印刷物100側に設けられた検知ヘッドと、この検知ヘッドとコアを共有しており、大判印刷物100から隔てられた側に設けられたキャンセルヘッドとから構成される。また、この磁気ヘッド11aの検知面には、エアー噴出口が設けられている。
【0053】
ここで、磁気ヘッド11aの構成及びヘッドユニット11の構成について図4を用いて説明する。図4は、磁気ヘッド11a及び磁気ヘッド11aに関連する回路を示す図である。なお、同図(a)には、磁気ヘッド11aの下面図を示し、同図(b)には、磁気ヘッド11aの側面図を示し、同図(c)には、磁気ヘッド11aの回路図および周辺の回路ブロックを示している。
【0054】
図4(a)に示すように、磁気ヘッド11aの下面には、エアーの噴出口41が設けられている。また、かかる下面の中央部には、磁気検知が可能な検知ヘッドのコア部である検知領域42が存在する。すなわち、検知領域42以外の領域は、磁気に対する不感領域である。
【0055】
ここで、磁気ヘッド11aのY軸方向の幅43は、たとえば、16mmであり、検知領域42のY軸方向の幅42は、たとえば、10mmである。なお、本実施例では、検知面の外周部分に不感領域を有する磁気ヘッド11aを用いる場合について主に説明するが、不感領域を極小とした磁気ヘッド11aを用いることとしてもよい。
【0056】
図4(b)に示すように、磁気ヘッド11aの内部には、対極コア45が設けられている。また、磁気ヘッド11aの下面に設けられた噴出口41からは、大判印刷物100へ向けて方向300へエアーが吹き付けられる。
【0057】
図4(c)に示すように、磁気ヘッド11aは、発振器501によって生成された交流信号に基づいて励磁される。また、同図に示すように、対極コア45上には、キャンセルヘッド45a及び検知ヘッド45bが構成されている。具体的には、対極コア45の上方ブロック45aaにおける励磁駆動回路502側の極にはキャンセルヘッド用1次コイル45abが、増幅回路503側の極にはキャンセルヘッド用2次コイル45acがそれぞれ巻回されてキャンセルヘッド45aが構成されている。
【0058】
また、対極コア45の下方ブロック45baにおける励磁駆動回路502側の極には検知ヘッド用1次コイル45bbが巻回され、増幅回路504側の極には検知ヘッド用2次コイル45bcが巻回されて検知ヘッド45bが構成されている。なお、上方ブロック45aa及び下方ブロック45baにそれぞれ巻回されたキャンセルヘッド用1次コイル45abと検知ヘッド用1次コイル45bbとは直列に接続され、キャンセルヘッド用2次コイル45acと検知ヘッド用2次コイル45bcとは並列に接続されている。
【0059】
そして、発振器501によって生成された交流の基準信号は励磁駆動回路502へ入力され、励磁駆動回路502は、かかる基準信号に対して所定の励磁信号を付加したうえで、キャンセルヘッド用1次コイル45ab及び検知ヘッド用1次コイル45bbへ通電する。これにより交番磁界が生成される。そして、キャンセルヘッド用2次コイル45ac及び検知ヘッド用2次コイル45bcでは、磁性体の接近などによる交番磁界の変化を検出する。
【0060】
ここで、検知ヘッド用2次コイル45bcは、大判印刷物100に印刷された磁性インクによる交番磁界の変化を検出するが、キャンセルヘッド用2次コイル45acは、大判印刷物100から隔てられているため交番磁界の変化を検出しない。
【0061】
このため、キャンセルヘッド用2次コイル45acからの出力を増幅回路503で増幅した信号と、検知ヘッド用2次コイル45bcからの出力を増幅回路504で増幅した信号とを差動アンプ回路505へ入力することで、キャンセルヘッド45aの出力を基準とした磁気信号を差分として取得することができる。
【0062】
ここで、差動アンプ回路505は、増幅回路503及び増幅回路504から出力された各増幅出力の差動交流出力を整流平滑することで、直流電圧信号へ変換する回路である。すなわち、差動アンプ回路505は、定常状態から差動交流出力に変化が生じた場合に、かかる変化量を直流電圧信号値の変化として出力する。この直流電圧信号値はADコンバータを用いてサンプリングが行われ、後述する記憶部13に磁気情報13aとして格納アドレスを位置情報とした信号値が記憶されることとなる。
【0063】
また、キャンセルヘッド用2次コイル45acからの出力は、常時一定になる様に増幅回路503経由で励磁駆動回路502へフィードバックされる。即ち、励磁駆動回路502は、所定感度の出力値が各2次コイルから得られる様にキャンセルヘッド用1次コイル45ab及び検知ヘッド用1次コイル45bbの励磁信号の振幅を増減補正している。
【0064】
このようなキャンセルヘッド45a及び検知ヘッド45bを有する磁気ヘッド11aを用いた場合、各コイル(キャンセルヘッド45a及び検知ヘッド45bの各コイル)を同温定常状態に保つ必要があり、両者の温度バランスが崩れると抵抗値の微少変動などによって差動アンプ回路505のオフセット値が変動してしまう。
【0065】
したがって、このような磁気ヘッド11aの温度特性を安定させるには、周囲環境や加圧エアーの温度と共に磁気ヘッド11a全体の温度を一様に一定とする必要があるが、磁気ヘッド11aの温度管理を行うこととすると装置構成が複雑化する。このため、磁気無し信号値部分に対応する近似曲線を算定し、この近似曲線を用いて信号値を補正することが望まれるが、実験値から求めた固定的な閾値を用いて磁気無し信号値部分を正確に抽出することは難しい。そこで、本実施例1では、各走査ライン別に得られる信号値の最小値を用いて動的に閾値を決定することで、磁気の信号レベルに大きな変動が生じる場合であっても、磁気無し信号値部分を正確に抽出できるようにしている。
【0066】
図3の説明に戻り、制御部12について説明する。制御部12は、ヘッドユニット11の移動制御及び加圧エアーの噴出制御や、磁気ヘッド11aから取得した磁気データの補正処理、補正処理後の磁気データを用いた磁気検査処理を行う処理部である。
【0067】
移動制御部12aは、図1に示した各モータ(1a、1b及び1c)に対する指示を行うことで、ヘッドユニット11の移動制御を行う処理部である。なお、この移動制御部12aは、磁気ヘッド11aから大判印刷物100へ向けて噴射されるエアー(コンプレッサ14で加圧された加圧エアー)の噴出開始指示あるいは噴出停止指示を併せて行う。
【0068】
磁気情報記憶指示部12bは、磁気ヘッド11aが大判印刷物100を走査して取得した磁気データを磁気情報13aとして記憶部13へ記憶させる処理を行う処理部である。なお、磁気データは1ラインの走査を単位として記憶されることとする。記憶部13へ記憶された磁気情報13aは、最小値検索部12c、近似曲線算出部12e及び補正処理部12fによって用いられる。
【0069】
最小値検索部12cは、記憶部13に記憶した磁気情報13aに含まれる1ライン分の走査の信号値のうちの最小値を検索する処理部である。この最小値検索部12cにより検索された最小値が基準値となる。ここでは、磁気情報13aに含まれる信号値のうちの最小値を基準値とした場合について説明したが、最小値付近の複数の信号値の平均値を基準値とすることもできる。例えば、磁気情報13aに含まれる信号値のうちの2番目に小さな信号値と3番目に小さな信号値の平均値を基準値とすることができる。これにより、値が異常に小さいノイズ的な信号値が存在する場合であっても、かかる信号値の影響を除外することができる。
【0070】
閾値決定部12dは、最小値検索部12cにより検索された基準値(最小値)に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域の下限閾値と上限閾値を決定する処理部である。例えば、最小値を基準値とする場合には、基準値そのものを下限閾値とし、基準値に所定値を加算した値を上限閾値とすることができる。また、最小値付近の複数の信号値の平均値を基準値とする場合には、基準値から所定値(例えば、「1」)を減算した値を下限閾値とし、基準値に所定値(例えば「10」)を加えた値を上限閾値とすることができる。このように、記憶部13に記憶した磁気情報13aに含まれる信号値によって動的に閾値を変動させることで、磁気の信号レベルに大きな変動が生じた場合でも、正確かつ安定的に磁気検査を行うことができる。
【0071】
近似曲線算出部12eは、記憶部13に記憶された磁気情報13aを読み出し、時系列の信号値の変動をあらわす変動曲線の磁気無し信号部分に相当するベース曲線を算出する処理部である。具体的には、走査区間(走査開始位置から走査終了位置までの区間)において磁気ヘッド11aの温度が不変であれば、磁気無し部分に相当する信号値は一定となり、ベース曲線は時間軸と平行な直線となる。
【0072】
しかし、磁気ヘッド11aの検知面から大判印刷物100へ向けてエアーを吹き付ける場合には、磁気ヘッド11aの温度と噴出されるエアーの温度とに差が生じているため、上記ベース曲線の形状は、直線とはならない。このため、この近似曲線算出部12eは、かかるベース曲線を多次元関数による近似曲線として算出する。
【0073】
補正処理部12fは、近似曲線算出部12eによって算出された近似曲線を磁気情報13aの変動曲線から差し引くことで、温度変化の影響を排除した補正信号値を取得する。磁気検査部12gは、補正処理部12fから受け取った補正信号値を、あらかじめ用意された基準信号値と比較するなどして磁気検査を行う。
【0074】
記憶部13は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリからなる記憶デバイスであり、磁気情報13aは、磁気ヘッド11aの識別子、走査時のX座標及びY座標といった情報及び磁気ヘッド11aが取得した信号値を含んだ情報である。
【0075】
なお、ここでは機能ブロック図を用いて印刷物検査装置10の構成を説明したが、この印刷物検査装置10をコンピュータにより実現する場合には、制御部12内部の移動制御部12a、磁気情報記憶指示部12b、最小値検索部12c、閾値決定部12d、近似曲線算出部12e、補正処理部12f及び磁気検査部12gに対応するプログラムをハードディスク装置や不揮発性メモリに記憶しておき、このプログラムをCPUに読み込んで実行することで、上記印刷物検査装置10の各機能部の処理を実現することができる。
【0076】
次に、上記近似曲線算出部12eによる近似曲線の算出について説明する。図5は、近似曲線算出部12eによる近似曲線の算出処理を説明するための説明図である。同図では、図12と同様に図2に示した大判印刷物100の所定の行における各印刷原画101の走査によって得られた信号値の変動グラフを例示しており、説明の便宜上変動グラフの変動を簡略化して図示している。
【0077】
図5(a)に示したように、磁気ヘッド11aによって取得された信号値は、走査距離に応じて変動する。ここで、各印刷原画101の1箇所で磁気を検出したとすると、4つの印刷原画101のそれぞれで同類のピーク信号が得られる。そして、各ピーク信号は、磁気無し信号部分に相当するベース曲線に足し合わせられた状態で検出される。
【0078】
かかる信号値の変動グラフ21を、下限の閾値Lをなす直線22と、上限の閾値Hをなす直線23とで区切った抽出域を算定し、この抽出域に含まれる信号値のみを抽出する。その後、抽出した信号値を用いて図5(b)に示すような近似曲線24を算出することになる。
【0079】
ここで、これらの閾値L及び閾値Hは、従来実験値等を用いて固定的に設定されていたが、本実施例1では、基準値を利用してかかる閾値L及び閾値Hを動的に設定することとしている。例えば、信号値の最低値付近の複数の信号値の平均値を基準値とする場合には、この基準値から所定の値「a」を減算した「基準値−a」の値が下限の閾値Lとなる。同様に、この基準値に所定の値「b」を加算した「基準値+b」の値が上限の閾値Hとなる。
【0080】
このように、閾値L及び閾値Hを固定的に定めるのではなく、信号値に基づいて動的に決定することで、磁気の信号レベルに大きな変動が生じた場合でも、磁気無し信号値が所在する適正な抽出域を算定することができる。
【0081】
なお、近似曲線24は、例えば回帰分析によって算出することができ、2次曲線〜7次曲線として算出されるが、精度の面からみて2次曲線とすれば足りる。なお、算出された近似曲線24は、図5(a)に示した変動グラフ21からピーク信号を除外したベース曲線に相当する。なお、近似曲線24の詳細な算出手順については、特願2009−228116号に記載された技術を用いることができる。
【0082】
次に、図3に示した印刷物検査装置10が実行する処理手順について説明する。図6は、図3に示した印刷物検査装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。ここでは説明の便宜上、磁気ヘッド11aによる所定の走査が完了し、すでに記憶部13に磁気情報13aが格納されているものとする。
【0083】
図6に示すように、最小値検索部12cが記憶部13から磁気情報13aに含まれる磁気データを読み込み(ステップS101)、最小値を検索するとともに(ステップS102)、この最小値を基準値とする。最小値付近の複数の信号値の平均を基準値とする場合には、最小値付近の複数の信号値の平均値を算定することになる。
【0084】
その後、閾値決定部12dが、基準値をもとに下限の閾値L及び上限の閾値Hからなる抽出域を算出する(ステップS103)。具体的には、基準値および又は基準値から所定の値を減算した値を下限の閾値Lとし、基準値に所定の値を加算した値を上限の閾値Hとすることになる。
【0085】
その後、近似曲線算出部12eが、抽出域内の信号値と位置情報を抽出し(ステップS104)、抽出した信号値と位置情報を用いて回帰分析等で近似曲線を算出する(ステップS105)。
【0086】
その後、補正処理部12fが、記憶部13に磁気情報13aとして記憶される全ての信号値から近似曲線の値を差し引いて補正処理を行い(ステップS106)、磁気検査部12gが補正された信号値を用いて磁気検査を行う(ステップS107)。
【0087】
上述してきたように、本実施例1では、磁気ヘッド11aにより大判印刷物を走査して得られる信号値からなる磁気情報13aを記憶部13に格納しておき、最小値検索部12cが信号値の中から最小値を検索してこれを基準値とし、閾値決定部12dがこの基準値を用いて上下限閾値からなる抽出域を決定し、近似曲線算出部12eが抽出域内の信号値を用いて近似曲線を算出し、補正処理部12fが全信号値から近似曲線の値を差し引いて補正処理を行い、磁気検査部12gが補正後の信号値を用いて磁気検査を行うよう構成したので、磁気の信号レベルに大きな変動が生じた場合でも、正確かつ安定的に磁気検査を行うことができる。
【実施例2】
【0088】
ところで、上記実施例1では、記憶部13に磁気情報13aとして記憶した全ての信号値を用いて1つの基準値を求め、この基準値を用いて近似曲線を算出する場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施例2では、印刷原画101分の走査領域毎に基準値を求めて近似曲線を算出する場合を示すこととする。
【0089】
まず、本実施例2に係る印刷物検査装置30の構成について説明する。図7は、実施例2に係る印刷物検査装置の構成を示す機能ブロック図である。なお、同図では、図1に示した可動機構等の記載を省略している。また、実施例1と同様の部分には同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。
【0090】
同図に示すように、印刷物検査装置30の制御部12は、移動制御部12aと、磁気情報記憶指示部12bと、走査領域分割処理部31と、最小値検索部32と、閾値決定部33と、近似曲線算出部34と、補正処理部12fと、磁気検査部12gとを備える。
【0091】
走査領域分割処理部31は、検査対象となる1走査ラインの信号値を複数の走査領域に分割処理する処理部である。具体的には、図2に示した大判印刷物100は、X方向にA〜Dまでの4列の印刷原画101が印刷されている。このような場合には、1走査ライン分の領域を距離に基づいて領域A、領域B、領域C、領域Dの4走査領域に分割することになる。
【0092】
最小値検索部32、閾値決定部33及び近似曲線算出部34は、それぞれ図3に示した最小値検索部12c、閾値決定部12d及び近似曲線算出部12eと同様の処理を行う処理部である。これらの最小値検索部32、閾値決定部33は図3に示した最小値検索部12c、閾値決定部12dと比べると、1走査ライン全ての信号値を処理対象とするのではなく、各領域内の信号値を処理対象とする点のみが異なり、また、近似曲線算出部34は図3に示した近似曲線算出部12eと比べると、当該走査ライン全ての走査領域の信号値を処理対象とする点が相違する。
【0093】
補正処理部12fは、図3に示した補正処理部12fと同様に、算出した近似曲線を磁気情報13aの変動曲線から差し引くことで、温度変化の影響を排除した補正信号値を取得する処理部である。
【0094】
次に、図7に示した印刷物検査装置30が実行する処理手順について説明する。図8は、図7に示した印刷物検査装置30が実行する処理手順を示すフローチャートである。ここでは説明の便宜上、磁気ヘッド11aによる所定の走査が完了し、すでに記憶部13に磁気情報13aが格納されているものとする。
【0095】
図8に示すように、走査領域分割処理部31が、記憶部13からすでに取得されている磁気情報13aに含まれる磁気データを読み込み(ステップS201)、信号値を複数の走査領域に分割する走査領域分割を行う(ステップS202)。
【0096】
その後、最小値検索部32が、最初の走査領域についての最小値を検索するとともに(ステップS203)、この走査領域の最小値を基準値とする。最小値付近の複数の信号値の平均を基準値とする場合には、この走査領域の最小値付近の複数の信号値の平均値を算定する。
【0097】
その後、閾値決定部33が、上記走査領域の基準値をもとに下限の閾値L及び上限の閾値Hからなる抽出域を算出する(ステップS204)。具体的には、基準値および又は基準値から所定の値を減算したものを下限の閾値Lとし、基準値に所定の値を加算したものを上限の閾値Hとすることになる。そして、抽出域内の信号値と記憶部13のアドレス情報を基に位置情報を抽出する(ステップS205)。
【0098】
その後、未処理の走査領域がある場合には(ステップS206:Yes)、上記ステップS203に移行して他の走査領域について同様の処理を繰り返し、未処理の走査領域がなくなったならば(ステップS206:No)、近似曲線算出部34が、当該走査ライン全ての走査領域内でかつ抽出域内で抽出した全ての信号値と位置情報を用いて回帰分析等で該領域の近似曲線を算出する(ステップS207)。
【0099】
補正処理部12fが、記憶部13に磁気情報13aとして記憶される走査領域毎の信号値から該領域に対応する近似曲線の値を差し引いて補正処理を行い(ステップS208)、磁気検査部12gが補正された信号値を用いて磁気検査を行う(ステップS209)。
【0100】
上述してきたように、本実施例2では、磁気ヘッド11aにより大判印刷物を走査して得られる信号値からなる磁気情報13aを記憶部13に格納しておき、走査領域分割処理部31が1走査ラインを複数の走査領域に分割するとともに、最小値検索部32が分割された走査領域毎の信号値の中から最小値をそれぞれ検索して走査領域毎の基準値とし、閾値決定部33がこれらの基準値を用いて上下限閾値からなる抽出域を走査領域毎に決定し、各走査領域毎の抽出域内の信号値全てを用いて近似曲線算出部34が近似曲線を算出し、補正処理部12fが信号値からの近似曲線の値を差し引いて補正処理を行い、磁気検査部12gが補正後の信号値を用いて磁気検査を行うよう構成したので、走査ライン全ての信号値を対象として処理を行う場合よりも抽出域の上下限閾値の範囲を狭くし、近似曲線の精度を上げることにより正確な磁気検査を行うことができる。
【実施例3】
【0101】
ところで、上記実施例2では、上下限閾値内に存在する、即ち抽出域全ての信号値を用いて近似曲線を算出することとしたが、ノイズ成分となる信号値を除外するとともに、磁気無し信号部分である可能性が高い信号値のみを用いて近似曲線を算出すれば、より正確な補正処理が可能となる。そこで、本実施例3では、磁気無し信号部分である可能性が高い信号値を用いて近似曲線を算出する場合を示すこととする。
【0102】
まず、本実施例3に係る印刷物検査装置50の構成について説明する。図9は、実施例3に係る印刷物検査装置の構成を示す機能ブロック図である。なお、同図では、図1に示した可動機構等の記載を省略している。また、実施例1及び2と同様の部分には同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。
【0103】
図9に示すように、印刷物検査装置50の制御部12は、移動制御部12aと、磁気情報記憶指示部12bと、走査領域分割処理部31と、最小値検索部32と、閾値決定部33と、共抽出点抽出部51と、近似曲線算出部52と、補正処理部12fと、磁気検査部12gとを備える。
【0104】
ここで、走査領域Aの抽出域が他の走査領域B,C,Dと異なり、先の実施例2では走査領域A部で近似曲線が異常となる事例を示す図10を参照して本実施例3の説明を続ける。共抽出点抽出部51は、複数の走査領域に共通して存在する抽出域信号値の位置を共抽出点として抽出する処理部である。この点を具体的に説明すると、図2に示した大判印刷物100には、X方向にA〜Dまでの4列の印刷原画101が印刷されている。つまり、図10に示す様に、領域A、領域B、領域C及び領域Dの同じ場所には、同じ対象物が描かれているので、各領域の対応する位置には同じ信号値が存在するはずであり、印刷原画1枚分の領域を拡大した図に示す走査領域B,C,Dに共通するa,b,c,d部の信号値の位置を共抽出点として抽出することになる。
【0105】
近似曲線算出部52は、全走査領域の共抽出点の信号値を用いて近似曲線を算出する処理部である。すなわち、この近似曲線算出部52は、一部の走査領域にしか存在しないノイズ的な信号値については近似曲線を算出する際に利用しない。加えて、共抽出点は、上下閾値からなる抽出域の範囲内のものであるため、一部の走査領域の一部抽出点が閾値直線H、L間から外れるという欠落(図10の領域Aのa,c,dが相当)があっても磁気無し信号部分である可能性が高い。これらのことから、近似曲線算出部52は、磁気無し信号部分である可能性が高い信号値(a,b,c,d部)を用いて近似曲線を算出することになる。
【0106】
次に、図9に示した印刷物検査装置50が実行する処理手順について説明する。図11は、図9に示した印刷物検査装置50が実行する処理手順を示すフローチャートである。ここでは説明の便宜上、磁気ヘッド11aによる所定の走査が完了し、すでに記憶部13に取得された磁気情報13aが格納されているものとする。
【0107】
図11に示すように、走査領域分割処理部31が、記憶部13からすでに取得されている磁気情報13aに含まれる磁気データを読み込み(ステップS301)、信号値を複数の走査領域に分割する走査領域分割を行う(ステップS302)。
【0108】
その後、最小値検索部32が、最初の走査領域についての最小値を検索するとともに(ステップS303)、この走査領域の最小値を基準値とする。最小値付近の複数の信号値の平均を基準値とする場合には、この走査領域の最小値付近の複数の信号値の平均値を算定する。
【0109】
その後、閾値決定部33が、当該走査領域の基準値をもとに下限の閾値L及び上限の閾値Hからなる抽出域を算出する(ステップS304)。具体的には、基準値および又は基準値から所定の値を減算したものを下限の閾値Lとし、基準値に所定の値を加算したものを上限の閾値Hとすることになる。
【0110】
その後、抽出域内の信号値と位置情報を抽出し(ステップS305)、次に未処理の走査領域があるか否かを調べ(ステップS306)、未処理の走査領域が存在する場合には(ステップS306:Yes)、ステップS303に移行して同様の処理を繰り返す。
【0111】
そして、未処理の走査領域がなくなったならば(ステップS306:No)、複数の走査領域に共通して信号値が存在する位置情報を共抽出点として抽出し(ステップS307)、この共抽出点の信号値と位置情報を抽出する(ステップS308)。そして、全ての走査領域の共抽出点の信号値と位置情報を用いて近似曲線を算定し(ステップS309)、記憶部13に磁気情報13aとして記憶される信号値から近似曲線の値を差し引いて補正処理を行い(ステップS310)、磁気検査部12gが補正された信号値を用いて磁気検査を行う(ステップS311)。
【0112】
上述してきたように、本実施例3では、磁気ヘッド11aにより大判印刷物を走査して得られる信号値からなる磁気情報13aを記憶部13に格納しておき、走査領域分割処理部31が複数の走査領域に分割するとともに、最小値検索部32が走査領域毎の信号値の中から最小値をそれぞれ検索して走査領域毎の基準値とし、閾値決定部33がこれらの基準値を用いて上下限閾値からなる抽出域を走査領域毎に決定し、共抽出点抽出部51が各走査領域に共通して信号値が存在する位置を共抽出点として抽出し、近似曲線算出部52が全ての走査領域の共抽出点の信号値を用いて近似曲線を算出し、補正処理部12fが信号値から近似曲線の値を差し引いて補正処理を行い、磁気検査部12gが補正後の信号値を用いて磁気検査を行うよう構成したので、磁気無し信号部分である可能性が高い信号値を用いて近似曲線を算出することになり、より正確な磁気検査を行うことができる。
【実施例4】
【0113】
ところで、上記実施例2と3では、最小値検索部32が走査領域毎の信号値の中から最小値をそれぞれ検索して走査領域毎の基準値とし、閾値決定部33がこれらの基準値を用いて上下限閾値からなる抽出域を走査領域毎に決定することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、各走査領域にアルミや銅等の磁気信号レベルと逆方向に検出される特殊部材が印刷物に対して貼着又は抄き込まれた場合に適用することもできる。
【0114】
このように、逆磁気特性を示す特殊部材(以後、「ホログラム」と言う)が印刷物に貼付又は抄きこまれている場合には、図12(a)に示すように、ホログラム域において負の方向に信号が現れる。すでに説明した実施例2の方法で磁気を補正した場合には、磁気無し信号値が負側に大きくなるため、図2に示した大判印刷物の領域AからDへと補正演算を進めると、図12(b)に破線で示すように領域Dにおける近似曲線が負側に大きく振れてしまうと言った不具合が発生する。
【0115】
実施例4では、ホログラムに影響されずに磁気補正を行うために、ホログラム部を指定して指定域の負側に大きく振れた信号を除外した磁気無し信号値の抽出を行うようにした。その詳細について図13を参照して説明をする。
【0116】
まず、本実施例4に係る印刷物検査装置80の構成について説明する。図13は、実施例4に係る印刷物検査装置の構成を示す機能ブロック図である。なお、同図では、図1に示した可動機構等の記載を省略している。また、実施例1、2及び3と同様の部分には同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。
【0117】
図13に示すように、印刷物検査装置80の制御部12は、移動制御部12aと、磁気情報記憶指示部12bとを有する。そして、ホログラムを貼着した印刷物を検査するために、ホログラム貼着位置の指定域情報や必要に応じてホログラム磁気特性の検索制御定数を設定するINIファイル13bを記憶部13に記憶する。
【0118】
また、印刷物検査装置80の制御部12は、指定域判定部81と、置換データ作成部82と、抽出域設定部83と、該当信号抽出部84と、近似曲線算出部85とを有する。指定域判定部81は、上記INIファイル13bにホログラム貼着域の指定域情報があるか否かを判定する。
【0119】
この指定域判定部81が指定域ありと判定した場合は、記憶部13の磁気情報に関して各印刷原画の面のライン毎及び/又は各ラインにおいて複数に分割された各領域(以下、「エリア」と言う)における各ホログラム指定域以外の最小信号値に基づく別途算出の信号値をそれぞれの指定外域磁気無し信号値として検索するとともに、これら信号値を対応するホログラム指定域の全ての信号値と置換して置換データ作成部82の置換データとする。
【0120】
置換データ作成部82は、指定域判定部81が指定域なしと判定した場合には、記憶部13の磁気情報をそのまま置換データとして、これら置換データを次に検査すべき磁気情報に基づく置換データを得るまで一時記憶する。
【0121】
抽出域設定部83は、置換データ作成部82の置換データに関し、各エリアにおいて信号値00(ゼロ)以外の最小値を検索して、これら最小値に基づき算出した所定の演算値を磁気無し基準値とするとともに、これら各磁気無し基準値に基づいて別途所定幅の上下閾値を持つ抽出域を算出して設定する。
【0122】
該当信号抽出部84は、抽出域設定部83の抽出域情報に基づき、上記置換データの各エリアで該当する磁気信号値を抽出する。近似曲線算出部85は、該当信号抽出部84が抽出した全ての磁気信号値を用いて、各印刷原画の面のライン毎に最小二乗法を用いて近似曲線を算出する。なお、この近似曲線の算出については、従来の演算手法で行うことができるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0123】
なお、本実施例4では、抽出域設定部83により設定された磁気無し基準値と抽出域に関して、置換データの各エリアで上記信号値00(ゼロ)以外の最小値とその次に小さい信号値の平均値を磁気無し基準値Xとし、この基準値Xから所定の近傍域(即ちX+7とX−1を上下の閾値とした近傍域)にある信号の領域を抽出域とする。これら各抽出域に該当する上記置換データの信号値を各エリアの磁気無し信号値として抽出する。そして、各印刷原画の面の各ラインに対応するこれら抽出した磁気信号値に最も適合する近似曲線を最小二乗法で算出する。
【0124】
また、上記実施例1〜3で示した通常の磁気特性のみの印刷物の検査との違いは、ホログラム等の逆極性磁気信号値による上記近似曲線の算出に用いる信号値の異常な抽出を防止するために、ホログラムの有無を内容とするINIファイル13bを備え、ホログラム等がある場合は逆極性磁気信号値に影響されない信号値に基づいた近似曲線算出用の磁気無し信号値を得る構成としたことである。
【0125】
さらに、上記特殊部材が貼着及び/又は抄き込まれた印刷物を検査対象とする実施例4では、抽出域設定部で算出して設定する上記置換データの各エリアでの磁気信号値抽出域の値を上記INIファイル13bの検索制御情報で任意に調整変更とするとともに、必要に応じて特殊部材の逆極性磁気特性も所定の制御仕様で検査する下記機能を備える。以下に詳細を説明する。
【0126】
INIファイル13bは、検査対象とする各印刷物に対応するホログラム位置を指定可能とするために、各印刷物の磁気センサ走査方向と垂直な1〜5各行の原画(図2参照)における測定すべき各ラインの位置と、これら各ラインにおける走査方向のA〜D各列でのホログラム位置とを指定する位置指定情報と併せて、N1,N2,N3,N4及びN5で示される設定定数(パラメータ)とで構成されている。
【0127】
定数N1は、数値0〜20を通常の設定値として置換データ作成部82の演算処理に使用する演算定数値であり、各ホログラム指定域以外の最小値Mからこの演算定数値N1を減算して当指定域の磁気無し信号値HH(図12(a)参照)を算出するためのものである。他方、数値99を定数N1設定値とする場合は、検査すべき上記当該磁気情報の当該ホログラム指定域の磁気無し信号値の算出値を強制的に00(ゼロ)として後段で行う置換データのホログラム指定域信号値を00(ゼロ)に設定し、更に後段の近似曲線の算出では当該ホログラム域の信号値を無視して演算制御する動作モードを選択指定するものである。
【0128】
N2,N3,N4,N5の設定定数値は、ホログラム域での逆極性信号値に影響されること無く通常の磁気信号値を補正して検査する機能に追加して、ホログラム域の逆極性信号値を検査監視する処理を実行させるための制御演算値である。以下に各設定定数を詳細に説明する。
【0129】
定数N2は、図12(a)に示すホログラム域の信号値に関し、信号値HH(=ホログラム以外の磁気無し値M0−N1)からマイナス方向への許容値であり、別途算出した当該ホログラム域の磁気無し信号値HHから許容値N2を減算した値HKを当該ホログラム信号値の許容下限値とする。
【0130】
定数N3は、ホログラム域の信号値の上記HK値から更に低い信号成分値の各々の総和値を大小判定するための判定値とする。定数N4は、上記HHより低いホログラム域の各信号成分値を99.999〜0.001倍にする乗算定数である。即ち、通常の磁気信号特性値の測定に適した磁気ヘッドや周辺の関連制御回路を用いて、ホログラム信号値を所定の感度で精度良く且つ正確に測定することを目的する。
【0131】
定数N5は、ホログラム域に関する信号値の測定監視機能と判定処理仕様を示す処理コード設定定数で「00」と「10」及び「11」の3コードが用意してあり、これら「10」と「11」以外のコード設定値は「00」設定値と判読する構成とする。
【0132】
N5が「00」の場合は、ログラムに関する以下の判定演算を行わない処理を示す。N5が「10」の場合は、印刷物の所定部位(すなわち、所定原画の所定ライン位置)の磁気情報のみに関し、上記HH以下の信号成分総和値をA〜D各列別のホログラム総和値として算出表示して、代表部位等とする所定部位のホログラム信号値を別途ホログラム域以外の磁気無し信号値に基づくHHからの変動値として簡便に確認することを可能とする。
【0133】
図14(a)に示した表示例では、3行(面)目のA〜Dの印刷原画のホログラム総和値を表示させたもので、原画の上から下方向にラインL1の「−」表示はホログラム指定域が無く演算対象外であるとことを示している。ラインL2の「0」はホログラム指定域のHH値以下信号成分総和値が0であることを示している。L7については、上記信号成分の総和値が数字で示されている。なお、L1〜L7枠に示したm1〜m3は、走査ラインの位置を示しており、各印刷原画上端からの寸法を示している。
【0134】
さらに、N5が「11」の場合は、検査すべき印刷物から得た磁気情報にある全てのホログラムに関して、上記HK値以下の信号成分総和値が上記の判定値N3以上か否か検索するとともに、当該総和値のいずれかが判定値N3以上になった場合のみに、ホログラム異常として全ホログラムに関する検索内容を図14(b)の表示例のように集計出力する構成とする。即ち、順次に検査する印刷物で異常な信号値を得た場合のみにこれを検知警告することで特殊部材の材料や純度の異常及び/又は厚寸法等の形状異常の検査機能を得るものである。
【0135】
図14(b)に示した表示例は、印刷物全面(全140=5印刷原画面×4列×7ライン)の各ホログラム指定域値に関してHK値以下の信号成分の総和値をA〜D各列別に検査したときの、この総和値がN3値以上の異常値となる個数と各列別での最大の総和値を出力表示している。そして、本実施例ではN3値を20とした場合に総和の最大値が20を超える表示部(実施例では図14(b)に示した検索表示のA列とB列部)の色を変えて異常を警告するようにしている。なお、図14(b)に示したホログラム異常の警告表示は、図示しない別途確認釦の押下で解除されて次の印刷物の検査が開始可能となる。
【0136】
次に、本実施例4の処理手順について図15のフローチャートを用いて説明する。ここでは、処理手順を簡潔にするために、記憶部13に既に磁気ヘッド11aで読み込まれて記憶されているものとする。
【0137】
先ず、CPU等から構成される制御部12が記憶部13からすでに取得されている磁気情報13aに含まれる磁気データを読み込み(ステップS401)、次に記憶部13からホログラムの処理に関する情報として設定記憶されたINIファイル13bの情報を読み込む(ステップ402)。このINIファイル13bには、検査すべき印刷物毎にホログラムの位置情報と、この検索制御仕様を示す制御情報及び図示しないその他の制御情報とが記憶されている。
【0138】
次に、読み込んだINIファイルのホログラム位置情報の有無でホログラム対応か否かを判定する(ステップS403)。
【0139】
上記の確認判定結果でホログラム対応であると判定された場合には(ステップS403;Yes)、INIファイル13bのホログラム位置情報に基づいて、ホログラム別に該当ホログラム指定域外で対応する磁気最小値を検出する(ステップS404)。
【0140】
次に、ステップS404で検出した最小値に基づく磁気無し信号値を算出し、当該磁気無し信号値を上記記憶部13から読み込んだ磁気情報の対応するホログラム指定域の信号値に置換して(ステップS405)、置換データとする(ステップS406)。他方、上記の確認判定結果でホログラム対応処理が必要でない場合には(ステップS403;No)、上記記憶部13から読み込んだ磁気情報をそのまま置換データとして作成する(ステップS406)。ここで、この置換データは、上記記憶部13から読み込んだ磁気情報に関してホログラム域の逆極性磁気信号値を無くした近似曲線算出用に作成した磁気情報の中間演算値である。なお、ステップS405でのホログラム域磁気無し信号値は、最小値Moから別途N1値を減算して求めるが、N1値が99の場合は00(ゼロ)とし、ステップS406の値とする。
【0141】
次に、上記の置換データに関して、各領域別に00(ゼロ)以外の最小値またはこの最小値に基づき算出した所定の演算値を磁気無し基準値とするとともに、これら各磁気無し基準値に基づいて別途所定幅の許容値を与えた上下閾値を持つ抽出域を設定する(ステップS407)。次に、各領域のこれら各抽出域に該当する磁気信号値を抽出する(ステップS408)。
【0142】
次に、上記置換データのライン毎に、上記抽出した対応する全ての磁気信号値を用いて、最小二乗法により二次曲線で示した近似曲線を算出する(ステップS409)。なお、最小二乗法の演算については従来技術であるのでその詳細な説明を省略する。
【0143】
次に、各ライン毎に記憶部13が記憶する磁気情報13aから対応する上記近似曲線で求めた算出値を減算して、近似曲線が示す磁気無し信号値で補正した磁気情報を得る(ステップS410)。次に、補正処理部12fが出力する近似曲線で補正した上記ステップS410の磁気情報を、図示しないが別途に設定した良否検査基準で磁気検査する(ステップS411)。
【0144】
なお、本願実施例4では、上記N1の設定値が99か否かでホログラム域の置換データを00(ゼロ)として磁気無し信号値を抽出する抽出域から削除するか否かを選択する機能を備えたが、ホログラムが印刷物走査ラインの開始点や終点位置および又は近傍位置でない場合にはホログラム以外域で抽出した磁気無し信号値で適正な近似曲線を得るが、他の場合にはホログラム域に磁気無し信号値を設定したほうが適正な近似曲線を得る場合があり、このために検査すべき印刷物に適合した制御仕様を選択するものである。
【0145】
また、本願実施例1〜4の装置の記憶部13に記憶される磁気情報13aでは、常に磁気ヘッドの磁気無し信号値がゼロ(00)でなくプラス側の所定値(20)になるようにオフセット値が加算される。これは、ノイズや異常な逆極性の磁気信号も単一のアナログ/デジタルコンバータでプラス極性値として検索可能とする為である。また、上記記憶情報13aの記憶内容を近似曲線が示す磁気無し信号値で減算補正する磁気情報にも、減算出力値に加算値20をオフセット加算する構成としている。このために、上記所定値(20)から上位域(Max255)での通常の磁気情報の検査と併せて、所定値(20)から下位域(Minゼロ)の信号値も検索が可能となる。実施例4ではホログラムの磁気特性を監視可能な装置とした。即ち、ホログラム部の磁気信号値が大きく下位域に振れた場合には、警告を出すことにより、検査員が適正なホログラムが貼られているかを確認可能としている。
【0146】
ここで、図14を参照して説明を続ける。実施例4の検査装置ではホログラム領域の座標や制御演算値をINIファイルへ設定する手段を図13機能ブロック図に備えるが、図14(a)の表示機能は例えば印刷物中央部(3面)のA〜D各列のホログラム信号値を表示するものであり、INIファイルの定数N4の増減設定を容易にする。即ち、定数N4は図12(a)における値HH以下の信号成分値の倍率を増減調整しつつ図14(a)が表示するホログラムの信号値を所定レベルに設定するものであり、別途基準とするホログラムを用いて複数台の印刷物検査装置の検査感度の同一設定や、装置メンテナンスでは検査感度を更新調整するものである。
【0147】
また、上述した実施例1〜4では、磁気無し信号値に対して磁気信号値が正(プラス)になる場合について説明を行ったが、磁気信号値が負(マイナス)になる場合にも本発明を適用することができる。この場合、磁気無し信号値に対して磁気信号値が負(マイナス)となるように両信号値の正負関係を逆にして本発明を適用することとすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上のように、本願の開示する印刷物検査方法、印刷物検査装置及び印刷物検査プログラムは、検査すべき印刷物の磁気情報から適正な磁気無し信号レベルを検索しつつこの磁気無し磁気レベルからの変動成分としての磁気信号の大きさを検査するものであり、磁気ヘッド及びまたは磁気ヘッド周辺の測定条件の変動等によって検査すべき印刷物からの磁気信号レベルが大きく変動しても、高精度で正確かつ安定的に磁気特性の良否を検査する場合に適している。
【符号の説明】
【0149】
10 印刷物検査装置
11 ヘッドユニット
11a 磁気ヘッド
11b ローラ
11c 流路
12 制御部
12a 移動制御部
12b 磁気情報記憶指示部
12c 最小値検索部
12d 閾値決定部
12e 近似曲線算出部
12f 補正処理部
12g 磁気検査部
13 記憶部
13a 磁気情報
13b INIファイル
14 エアーコンプレッサ
30 印刷物検査装置
31 走査領域分割処理部
32 最小値検索部
33 閾値決定部
34 近似曲線算出部
50 印刷物検査装置
51 共抽出点抽出部
52 近似曲線算出部
80 印刷物検査装置
81 指定域判定部
82 置換データ作成部
83 抽出域設定部
84 該当信号抽出部
85 近似曲線算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査方法であって、
前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して、前記磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納する格納工程と、
前記記憶部に記憶した信号値の中から、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出工程と、
前記基準値抽出工程により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を算定する抽出域算定工程と、
前記抽出域算定工程により算定された抽出域に所在する信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定工程と、
前記近似曲線算定工程で算定された近似曲線に基づいて前記記憶部に記憶された信号値を補正処理する補正処理工程と
を含んだことを特徴とする印刷物検査方法。
【請求項2】
同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査方法であって、
前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して、前記磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納する格納工程と、
前記記憶部に記憶した信号値を複数の走査領域に分割する走査領域分割工程と、
前記走査領域分割工程により分割された走査領域毎に、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出工程と、
前記基準値抽出工程により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を走査領域毎に算定する抽出域算定工程と、
前記抽出域算定工程により算定された全ての走査領域の抽出域に所在する信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定工程と、
前記近似曲線算定工程で算定された近似曲線に基づいて前記記憶部に記憶された信号値を補正処理する補正処理工程と
を含んだことを特徴とする印刷物検査方法。
【請求項3】
同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査方法であって、
前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して、前記磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納する格納工程と、
前記記憶部に記憶した信号値を複数の走査領域に分割する走査領域分割工程と、
前記走査領域分割工程により分割された走査領域毎に、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出工程と、
前記基準値抽出工程により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を走査領域毎に算定する抽出域算定工程と、
前記抽出域算定工程により抽出された各走査領域の抽出域に含まれる信号値の位置情報を抽出する位置情報抽出工程と、
前記位置情報抽出工程により算定された複数の走査領域に共通する抽出域の位置情報を共抽出点として抽出する共抽出点抽出工程と、
前記共抽出点抽出工程により抽出された共抽出点の信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定工程と、
前記近似曲線算定工程で算定された複数の近似曲線に基づいて前記記憶部に記憶された信号値を補正処理する補正処理工程と
を含んだことを特徴とする印刷物検査方法。
【請求項4】
前記基準値抽出工程は、前記記憶部に記憶された信号値の最小値を前記基準値として抽出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の印刷物検査方法。
【請求項5】
前記基準値抽出工程は、前記記憶部に記憶された信号値のうち最小値に近い複数の信号値の平均値を前記基準値として抽出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の印刷物検査方法。
【請求項6】
所定の特殊部材が印刷物に対して貼着又は抄き込まれた場合には、かかる印刷物での前記特殊部材の所在位置を設定する設定手段をさらに備え、
前記基準値抽出工程は、前記記憶部に記憶された信号値のうちの前記特殊部材の所在位置に対応する信号を削除若しくは修正するとともに、削除若しくは修正された後の信号値のうち最小値に近い複数の信号値の平均値を前記基準値として抽出することを特徴とする請求項4に記載の印刷物検査方法。
【請求項7】
前記抽出域算定工程は、前記基準値抽出工程により抽出された基準値から所定の値を減算した値を下限とし、前記基準値に所定の値を加算した値を上限として前記抽出域を算定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の印刷物検査方法。
【請求項8】
同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査装置であって、
前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して得られる前記磁気ヘッドの信号値を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した信号値の中から、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出手段と、
前記基準値抽出手段により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を算定する抽出域算定手段と、
前記抽出域算定手段により算定された抽出域に所在する信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定手段と、
前記近似曲線算定手段で算定された近似曲線に基づいて前記記憶手段に記憶された信号値を補正処理する補正処理手段と
を備えたことを特徴とする印刷物検査装置。
【請求項9】
同一の対象物が一定間隔で繰り返し印刷された印刷物と磁気ヘッドの計測面との間に前記印刷物を押圧するエアーを介在させ、前記計測面と前記印刷物との間隔を所定の微少間隔に保ったまま前記印刷物を走査することで前記印刷物の磁気特性を検査する印刷物検査プログラムであって、
前記磁気ヘッドにより前記印刷物を走査して、前記磁気ヘッドの信号値を所定の記憶部に格納する格納手順と、
前記記憶部に記憶した信号値の中から、磁気検出されない磁気無し信号値の基準となる基準値を抽出する基準値抽出手順と、
前記基準値抽出手順により抽出された基準値に基づいて、磁気無し信号値が存在するとみなされる抽出域を算定する抽出域算定手順と、
前記抽出域算定手順により算定された抽出域に所在する信号値を用いて前記磁気無し信号値の近似曲線を算定する近似曲線算定手順と、
前記近似曲線算定手順で算定された近似曲線に基づいて前記記憶部に記憶された信号値を補正処理する補正処理手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする印刷物検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−195022(P2012−195022A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56523(P2011−56523)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】