説明

印刷物表面加工装置およびこの装置を用いた印刷物表面加工方法

【課題】印刷物の表面加工を簡単に低コストで行う。
【解決手段】サーマルリボン21,31の間に印刷物1を挟んで同期的に搬送する間に、加圧ローラ24,34間に圧接させ、サーマルリボンの転写層樹脂の溶融温度以上に加熱して印刷物の両面に熱転写させる。印刷物より幅広のサーマルリボンを用い、印刷物の前端が熱転写地点に到達する直前から後端が該熱転写地点を越えた直後まで継続して熱転写を行うことにより、再固化樹脂による透明保護フィルム(21c‘,31c’)が印刷物の両印刷面を全面被覆するように形成される。印刷物は剥離ローラ25,35により冷時剥離され、このとき印刷物の印刷面の周囲の転写層の樹脂はいずれかのサーマルリボンと共に巻き取られていく。一方のサーマルリボンをバックアップフィルム(43)に代えて装置を使用すれば片面加工を行うことができ、両面/片面加工に併用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の方式で印刷された印刷物の光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させる目的で表面加工を行うための装置および方法に関する。
【0002】
なお、ここに印刷とは紙などの媒体上に文字や記号、画像などを記録することを広く意味し、その方式を問わず、電子写真方式(レーザ方式・LED方式など)・インクジェット方式・熱転写方式(溶融型・昇華型)などの小型プリンタによる印刷、オフセット印刷・フレキソ印刷・グラビア印刷などによる印刷、銀塩方式などによる写真画像形成を含む。また、印刷物とはこれら各種方式によって媒体に文字などを記録したシート状の有体物を広く意味し、電子写真方式・インクジェット方式・昇華熱転写方式などのプリンタによる印刷物、オフセット印刷・フレキソ印刷・グラビア印刷などによる印刷物、さらには銀塩写真などをも含む。
【背景技術】
【0003】
オフセット印刷などによる印刷物の光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させるための表面加工法として、従来より、印刷物の表面に液体の薬剤を均一に塗布した後に乾燥させる手法(通称「ニス引き」)が採用されている。
【0004】
一方、近年では、電子写真方式・インクジェット方式・熱転写方式などの小型プリンタ技術が進歩し、オフセットなどの大型プリンタによる印刷物に近い品質の印刷物が小規模オフィスや店舗あるいは家庭などにおいても手軽に得られるようになってきている。
【0005】
このような印刷物においても光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させるための表面加工が要求される場合があるが、ニス引き加工では液体を均一に塗布し乾燥させるために大型の機械が必要となり、液体の取り扱いや、乾燥時の有機溶剤の発生など、プリンタを使用する環境では許容しがたい問題が多く、現実的ではない。
【0006】
そこで、小規模オフィスや店舗あるいは家庭などで印刷物などに表面加工するに適した方式として、フィルムラミネートが提案されるに至っている。フィルムラミネートは、印刷物の表面に透明フィルムをラミネートする方式であり、熱でラミネートする方式と、フィルムに粘着加工を施して裏面セパレータを設けておき、ラミネート時に裏面セパレータを剥離して印刷物の表面に貼り合わせる方式とがある。これらの従来技術を開示する先行技術文献として特許文献1を提示する。前者の熱ラミネート方式は特許文献1の段落0057に、後者のコールドラミネート方式は特許文献1の段落0058に記載されている。
【0007】
特許文献2には、サーマルヘッドを用いた熱転写プリンタを利用して、熱転写印刷直後の印刷物に対して透明インクを用いてオーバーコートを形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−353829号公報
【特許文献2】特開平11−263033号公報
【特許文献3】特開2004−175001号公報
【特許文献4】特開2005−280157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フィルムラミネートによる印刷物の表面加工ないし表面保護として各種の提案がなされているが、印刷物の印刷面を全面的に保護するためには印刷物よりも大きなサイズのフィルムを使用して、ラミネート後に印刷物からはみ出した余白部分を裁断しなければならず、後工程を必要とすると共に、ラミネートフィルムに無駄が生ずる。また、裁断に刃物を使うことになるため、家庭内などでの使用に適していない。特許文献1では主としてカード状の基材を四周まで含めて両面ラミネート(パウチ)することが想定されている(図1参照)が、印刷物などに表面加工を行う場合は余白部分が不要となるので裁断が必要となる。
【0010】
特許文献2に記載されるようにサーマルヘッドを用いた熱転写プリンタで印刷物にオーバーコートを形成する場合、熱転写プリンタでは印刷物の幅方向両側縁から外側にはみ出した領域でインクリボンの溶融した転写樹脂がプラテンロールに転写されることを防ぐために、サーマルヘッドの加熱幅を印刷物の幅よりも若干狭くコントロールしている。このため、印刷物の全幅に亘るオーバーコートを形成することができず、印刷物の両端に表面加工されていない部分が残ってしまう。サーマルヘッドの加熱幅を印刷物よりも幅広にすれば印刷物の全幅に亘ってオーバーコートを形成することができるが、このようにすると、印刷物両側縁の外側部分でインクリボンの溶融した転写樹脂の糸引き状態が発生する。また、プラテンローラに付着した樹脂が徐々に固化・堆積していき、やがてサーマルヘッドが印刷物に所定の圧力で圧接できなくなり、以後の転写に対して障害となる。
【0011】
なお、サーマルヘッドをインクリボンを挟んでプラテンロールに圧接させることにより熱転写を行う熱転写プリンタを用いて、印刷物の全長以上にオーバーコートのための熱転写を連続して行うと、印刷物の前端が熱転写地点に到達する前と印刷物の後端が該熱転写地点を通過した後の各々わずかな時間ではあるが、インクリボンが印刷物を介さずにプラテンローラに直接圧接される状態となる。これによってプラテンローラの表面にインクリボンの溶融した転写樹脂が転写され、樹脂の印刷物への裏写りや、プラテンローラ上に樹脂が横段状に固化することによってインクリボンの印刷物への押圧が送り方向で変動して以降の熱転写において転写不良の原因となる。このことは特許文献3でも指摘されており(段落0005)、同特許文献記載の発明ではラミネートフィルム(オーバーコート用透明インクリボン)に特定の樹脂配合を持たせることでこの問題を解決しようとしているが、プラテンロールの昇温や印刷物の表面状態などが様々に変化する実際の熱転写条件において汎用的な効果を発揮することは困難である。
【0012】
特許文献4では、印刷物より大きいサイズのラミネート材を用いて印刷物の記録面上にオーバーコートを転写形成し、転写後のラミネート材を印刷物から離間させることによって、印刷部の記録面からはみ出した余白部分のオーバーコート層をアンダーフィルム側に転写させるようにしている。この方式によれば印刷物の記録面をフルカバーするようにオーバーコートを形成することができ、余白部分を裁断する後工程も不要となるが、余白部分のオーバーコート層がアンダーフィルムに転写されるため、巻き取られたアンダーフィルムをそのままでは再使用することができない。再使用のためにはクリーニングが必要となり、コスト増を招く。
【0013】
また、両面に印刷が施された印刷物に対してはその両面の記録面上に同時にオーバーコートを形成することが望まれるが、これら特許文献記載の従来技術では、印刷物の両面に同時にオーバーコートを形成することができない。
【0014】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、電子写真方式・インクジェット方式・熱転写方式などの小型プリンタによる印刷物を含む各種の印刷物についてその光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させる目的で表面加工を行うに際し、小規模オフィスや店舗あるいは家庭などでも手軽に低コストで使用することができる新規な装置を提供することである。また、両面に印刷が施された印刷物に対してその両面の記録面上に同時にオーバーコートを形成することができる新規な装置を提供し、且つ、この装置を必要に応じて片面加工にも適用可能にするための新規な手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題を解決するため、本発明による印刷物表面加工装置は、印刷物を所定の搬送面に供給する給紙手段と、溶融して透明フィルム化する樹脂を主体とする転写層を有するサーマルリボンを供給ボビンから送り出し、給紙手段により所定の搬送面に供給された印刷物の両面に重ね合わせた状態で走行させた後に巻取ボビンに巻き取るよう、印刷物と同期走行させる一対のリボン走行手段と、印刷物の両面に各々サーマルリボンを挟んで対設される一対の加圧手段と、各加圧手段をサーマルリボンの転写層の樹脂を溶融または軟化させるに十分な温度に加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された加圧手段を互いに近接する方向に移動させてサーマルリボンを印刷物の両面に圧接させる移動手段と、移動手段により移動した加圧手段によって熱転写が行われる地点から印刷物およびサーマルリボンの走行方向下流側に離れた地点において両面側に設けられて各サーマルリボンを印刷物から冷時剥離する一対の剥離手段と、印刷物の前端が熱転写地点に到達する直前に加圧手段を移動させてサーマルリボンを印刷物の両面に圧接させると共に印刷物の後端が熱転写地点を通過した直後に該圧接状態を解除させるように移動手段を制御する制御手段とを備え、前記サーマルリボンおよび前記加圧手段はいずれも印刷物より幅広に形成され、前記剥離手段による冷時剥離後の印刷物の両面を全面的に被覆するようにサーマルリボンの転写層の再固化樹脂による透明保護フィルムを形成すると共に、印刷物の周囲の転写層の再固化樹脂はサーマルリボンと共にリボン走行手段によって巻き取られることを特徴とする。
【0016】
この装置において、熱転写地点から印刷物およびサーマルリボンの走行方向下流側に近接して印刷物の両面側に各々後加熱手段を設けて、強い圧力をかけずにサーマルリボンを転写層の樹脂の溶融または軟化温度以上の温度に再加熱することができる。後加熱手段は加熱手段と同じタイミングで移動するよう制御手段により制御される。また、加圧手段はローラとすることができる。
【0017】
また、本発明は、このような構成の装置を用いて印刷物を表面加工する方法をも提供する。すなわち、第一の方法は、この装置を用いて、サーマルリボンの転写層の再固化樹脂による透明保護フィルムを印刷物の両面に各々全面被覆形成するものであり、第二の方法は、この装置において、一対のリボン走行手段のうち一方のリボン走行手段には前記サーマルリボンを走行させると共に他方のリボン走行手段にはサーマルリボンに代えて転写層を持たないバックアップフィルムを走行させることにより、サーマルリボンの転写層の再固化樹脂による透明保護フィルムを印刷物の片面のみに全面被覆形成するものである。第二の方法において使用されるバックアップフィルムには、少なくともその表面が剥離特性に優れた材料で形成されたものを使用し、剥離手段によりサーマルリボンが印刷物から剥離されたときに印刷物の周囲の転写層の再固化樹脂をバックアップフィルムに転写させることなくサーマルリボン側に残すようにする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小規模オフィスや店舗あるいは家庭などであっても、電子写真方式・インクジェット方式・熱転写方式などの小型プリンタによる印刷物を含む各種の印刷物についてその光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させる目的で、手軽に且つ低コストで表面加工を行うことができる。サーマルリボンの転写層は、溶融または軟化した樹脂を印刷物の印刷面に熱転写させた後、冷時剥離により印刷物の用紙縁で自動的にきれいにカットされるので、表面加工後の印刷物についてはみ出した部分の再固化樹脂をカットする後工程を必要としない。印刷物の印刷面からはみ出した余白部分の転写層の樹脂は一旦溶融または軟化した後に再固化してサーマルリボンと共に巻き取られる。
【0019】
本発明装置は、両面に印刷が施された印刷物に対してその両面の記録面上に同時にオーバーコートを形成するための両面加工機として使用することができるだけでなく、一方のサーマルリボンに代えて転写層を持たない単なるフィルム状のバックアップフィルムを用いることによって片面加工機としても使用することができ、両面加工と片面加工とに併用することが可能である。片面加工機として使用される場合、バックアップフィルムとしては少なくともその表面が剥離特性に優れた材料で形成されたものが使用され、サーマルリボンが印刷物から剥離されたときに印刷物の周囲の転写層の再固化樹脂はバックアップフィルムに転写されることなくサーマルリボン側に残って巻き取られるので、したがって、クリーニングや交換の必要なく半永久的に使用し続けることができ、資源の無駄をなくすと共にコストダウンを実現することができる。
【0020】
加熱された加圧手段により熱転写が行われる地点より搬送方向下流側に近接して後加熱手段が設けられた装置構成によれば、サーマルリボンの転写層を印刷物に熱転写させた直後に該後加熱手段がサーマルリボンを加熱するので、加熱手段の熱量不足などの場合でも印刷物に転写した樹脂を十分に溶融させて、再固化により形成される透明保護フィルムに十分な光沢を与えることができる。また、ゴムローラなど弾力性を有する加熱手段を用いて加熱圧接すると、印刷物の用紙の細かな凹凸がサーマルリボンに移り、剥離後も細かな凹凸として透明保護フィルムに残ってしまうことがあるが、このような場合であっても、後加熱バーで強い圧力をかけずに加熱することにより、サーマルリボンの凹凸を無くし、剥離後に印刷面に形成される透明保護フィルムを平滑面として強い光沢を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による印刷物表面加工装置の機構図である。
【図2】この装置に用いられるサーマルリボンの構成例を示す断面図である。
【図3】この装置を両面加工に用いる場合の加圧ローラ、サーマルリボンおよび印刷物の位置関係および寸法関係を示す説明図である。
【図4】この装置を両面加工に用いる場合の熱転写動作を時系列的に説明する平面図である。
【図5】この装置を両面加工に用いる場合の熱転写動作を時系列的に説明する断面図である。
【図6】この装置を片面加工に用いる場合に一方のサーマルリボンに代えてバックアップフィルムを使用した状態図である。
【図7】この装置を片面加工に用いる場合の加圧ローラ、サーマルリボン、バックアップフィルムおよび印刷物の位置関係および寸法関係を示す説明図である。
【図8】この装置を片面加工に用いる場合の熱転写動作を時系列的に説明する平面図である。
【図9】この装置を片面加工に用いる場合の熱転写動作を時系列的に説明する断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の一実施形態による印刷物表面加工装置の機構を概略的に示す。この印刷物表面加工装置10は、印刷物の印刷面の光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させるために、サーマルリボンの転写層を加熱溶融して印刷面に熱転写し、該溶融樹脂の再固化により印刷面に透明保護フィルムを被覆させるものである。この装置10は、両面に印刷が施された印刷物の両印刷面に同時に透明保護フィルムを被覆形成する両面加工機として使用することができ、また、印刷物に片面の印刷面に透明保護フィルムを被覆形成する片面加工機としても使用することができる。以下の説明においては、装置10を両面加工に用いることを前提としている。
【0023】
装置10は、印刷物1を矢印方向に給紙して所定搬送面に沿って所定速度で搬送するための給紙手段40を備えている。図において給紙手段40は、印刷物1の表裏面に圧接するよう印刷物1を挟んで両側に対向配置された一対または複数対のフィードローラ41,42を有するものとして示されている。
【0024】
印刷物1の搬送面の上方には、第一のリボン走行手段20が設けられ、サーマルリボン21を供給ボビン22から送り出し、ガイドローラ23を経て、加圧手段(この実施例では加圧ローラ24)による熱転写地点から剥離ローラ25による剥離地点までの間、給紙手段40により所定搬送面に供給された印刷物1の上面に重ね合わせた状態で走行させた後に、剥離ローラ25により印刷物1から離して巻取ボビン26に巻き取るようにしている。サーマルリボン21は、この走行路に沿って印刷物1と同期した速度で走行する。サーマルリボン21は、供給ボビン22および巻取ボビン26と一体となったリボンセットとして提供され、その略全量が巻取ボビン26に巻き取られたときに交換する消耗品である。
【0025】
加圧ローラ24は加熱手段27によって、サーマルリボン21の転写層の樹脂の溶融温度(ないし軟化温度。以下同じ。)以上の所定温度に加熱され、熱転写地点においてサーマルリボン21を印刷物1に圧接させることによって該転写層の樹脂を印刷物1の印刷面(上面)に転写させて、該樹脂の再固化による透明保護フィルム21c’を被覆形成する。後に詳しく説明するように、サーマルリボン21および加圧ローラ24には印刷物1の用紙幅より幅広のものが使用され、且つ、印刷物1の前端が熱転写地点に到達する直前から印刷物1の後端が熱転写地点を越えた後まで熱転写を継続して行うので、印刷物1の印刷面をフルカバーする透明保護フィルム21c’を形成することができる。印刷物1の周囲で再固化した転写層樹脂は剥離ローラ25(および/または剥離ローラ35)によってサーマルリボン21(および/またはサーマルリボン31)と共に巻取ボビン26(および/または巻取ボビン36)に巻き取られる。
【0026】
サーマルリボン21は、従来公知の溶融型熱転写プリンタに使用されるサーマルリボンと略同様にPETなどのベース上に熱転写剥離される転写層が積層形成された構成を有するが、このサーマルリボン21における転写層21c(図2)はインクではなく、溶融して透明フィルム化する樹脂を主成分として形成されている。また、転写層21cの樹脂には、印刷物1の印刷面の光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させるための表面保護機能と、印刷物1に対する転写性(接着性)とが要求される。これらの要求性能を満たすものとして、転写層21cの樹脂としてはアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系またはこれらの混合樹脂などを用いることが好ましい。これらの樹脂のTg(ガラス転移温度)は一般に20〜110℃程度である。
【0027】
好適な一例として、サーマルリボン21は、PETなどのベース21a上に剥離層21bを介して転写層21cが積層された構成を有する(図2)。剥離層21bには、転写層21cと同様に溶融後の透明性および表面保護機能が求められるので、転写層21cと同様の樹脂(アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系またはこれらの混合樹脂など)を主成分とすることができるが、これにワックス類を添加して、熱転写後の冷時剥離の際に転写層21cをベース21aから剥離させるための剥離補助機能を付与することが好ましい。剥離層21bに添加するワックス類としては、カルナバワックスなどの天然ワックス、パラフィン・マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、エステル・ポリオレフィンワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。各層の厚みは、一例として、ベース21aが4〜6μm、剥離層21bが0.05〜2.0μm、転写層21cが1.5〜4.0μmである。
【0028】
加圧ローラ24は昇降機構28によって昇降可能であり、その昇降のタイミングは制御手段29によって制御される。すなわち、制御手段29は、給紙手段40により給紙された印刷物1の前端が装置10の熱転写直前位置(言い換えれば印刷物1が加圧ローラ24の直下に到達する直前の位置=図1,図4(a))に到達したことを前端センサ(図示せず)で検知したときに、加圧ローラ24を下降させて対向する加圧ローラ34(後述)に圧接させ、印刷物1の後端が熱転写地点を通過した(図4(b))ことを後端センサ(図示せず)で検知したときに、加圧ローラ24を上昇させて圧接状態を解除する。
【0029】
符号11は後加熱手段を構成する後加熱バーであり、加圧ローラ24の下流側でサーマルリボン21の直上位置に配置されている。後加熱バー11は制御手段29による制御の下で昇降機構28によって加圧ローラ24と同じ昇降タイミングで昇降する。すなわち、前記前端センサ検知時に下降して、サーマルリボン21の上面に近接(図1)またはわずかに接触する高さ位置となり、前記後端センサ検知時に上昇してサーマルリボン21から離れた位置に退避する。
【0030】
図1から明らかなように、この装置は、印刷物1の搬送面を挟んで両側(上下)が略対称的な構成を有している。すなわち、印刷物1の下方にも、上方に設けられた第一のリボン走行手段20と略同一構成を有する第二のリボン走行手段30が設けられ、サーマルリボン31を供給ボビン32から送り出し、ガイドローラ33を経て、加圧手段(この実施例では加圧ローラ34)による熱転写地点から剥離ローラ35による剥離地点までの間、給紙手段40により所定搬送面に供給された印刷物1の下面に重ね合わせた状態で走行させた後に、剥離ローラ35により印刷物1から離して巻取ボビン36に巻き取るようにしている。サーマルリボン31はサーマルリボン21と同一の構成および寸法を有するものであって良く、上述の走行路に沿って印刷物1およびサーマルリボン21と同期した速度で走行する。なお、図1では剥離ローラ35の位置を剥離ローラ25より若干下流側にずらして設けているが、剥離ローラ25の直下に剥離ローラ35を対置させても良い。
【0031】
加圧ローラ34は印刷物1の搬送面を挟んで加圧ローラ24と対向する位置に設けられる。加圧ローラ34は加熱手段37によって、サーマルリボン31の転写層の樹脂の溶融温度以上の所定温度に加熱され、熱転写地点においてサーマルリボン31を印刷物1に圧接させることによって該転写層の樹脂を印刷物1の印刷面(下面)に転写させて、該樹脂の再固化による透明保護フィルム31c’を被覆形成する。また、加圧ローラ34は昇降機構38によって昇降可能であり、その昇降のタイミングは制御手段39によって制御され、加圧ローラ24と同時に昇降する。後加熱手段を構成する後加熱バー12が印刷物1の搬送面を挟んで後加熱バー11と対向する位置に設けられており、制御手段39による制御の下で加圧ローラ34と同じタイミングで昇降する。図では制御手段39を制御手段29とは別に設けているが、単一の制御手段で制御するようにしても良い。
【0032】
図3にも示されるように、サーマルリボン21,31および加圧ローラ24,34はいずれも印刷物1より幅広である。また、図示されていないが、後加熱バー11,12も印刷物1より幅広である。
【0033】
以上のように構成された装置10を用いて、両面印刷された印刷物1にサーマルリボン21,31の転写層の再固化樹脂による透明保護フィルム21c’,31c’を形成する両面加工を行う場合について、図4をも併せて参照して説明する。サーマルリボン21,31が所定速度で走行している状態でこれに同期した速度で印刷物1をフィードローラ41,42により矢印方向に給紙し、前述の前端センサによりその前端が装置10の熱転写地点の直前位置に到達したことを検知すると、制御手段29,39は、加熱手段27により加熱された加圧ローラ24を昇降機構28により下降させると共に、加熱手段37により加熱された加圧ローラ34を昇降機構38により上昇させて、これら加圧ローラ24,34を互いに圧接させる(図4(a))。
【0034】
これにより、圧接状態とされた加圧ローラ24,34間(=サーマルリボン21,31間)に印刷物1が入り込んでいき、加熱手段27,37により加熱された加圧ローラ24,34の熱を受けてサーマルリボン21,31の転写層21c,31cが溶融または軟化し、印刷物1の両印刷面を覆うように融着される。
【0035】
その後、前述の後端センサにより印刷物1の後端が熱転写地点(圧接位置)を通過したことを検知すると、制御手段29,39は、昇降機構28により加圧ローラ24を上昇させると共に昇降機構38により加圧ローラ34を下降させて圧接状態を解除する(図4(b))。
【0036】
上記熱転写動作についてさらに図5を参照して説明する。図5(a)は熱転写開始前の状態であり、印刷物1の前端が前端センサによる検知位置(熱転写直前位置)にまだ到達していない段階(図4(a))である。このとき、サーマルリボン21,31は未加熱状態にあり、ベース21a,31aに転写層21c,31cが全面的に積層された初期状態(図2)を維持している(剥離層21bは図示省略)。
【0037】
図5(b)は熱転写が行われているときの状態を示し、圧接状態とされている加圧ローラ24,34間(=サーマルリボン21,31間)に印刷物1が入り込んでおり、印刷物1の上面にサーマルリボン21の転写層21cが密着し、下面にサーマルリボン31の転写層31cが密着している。これにより、加圧ローラ24,34の熱を受けてサーマルリボン21,31の転写層21c,31cが溶融または軟化して、印刷物1の両面に融着される。
【0038】
サーマルリボン21,31は印刷物1より幅広であるので、印刷物1の両面の幅一杯に転写層21c,31cが融着される。また、この状態は圧接地点(熱転写地点)に印刷物1の前端が到達する前から後端が通過した後まで維持されるので、印刷物1の全長に亘って両面に転写層21c,31cが熱転写される。すなわち、印刷物1の印刷面をフルカバーするように転写層21c,31cが融着される。
【0039】
図5(c)はサーマルリボン21,31が剥離ローラ25,35によって印刷物1から剥離された後の状態を示す。サーマルリボン21,31が剥離されるときまでに、熱転写地点で溶融/軟化した転写層21c,31cの樹脂はその溶融/軟化温度を十分に下回る温度に低下している。したがって、冷時剥離によって印刷物1の用紙縁でサーマルリボン転写層21c,31cがきれいに切断され、溶融/軟化した転写層21c,31cの樹脂は印刷物1の両印刷面をフルカバーするように転写されて樹脂の再固化により透明保護フィルム21c’,31c’が形成される。一方、印刷物1の周囲の転写層21c,31cは、加圧ローラ24,34の熱を受けて溶融することによって一体化し、その後再固化した後に剥離ローラ25,35によってサーマルリボン21,31のいずれか一方と共に巻き取られていく。図5(c)では再固化した転写層樹脂21c,31cが上側のサーマルリボン21のベース21aに貼着された状態が示されているが、下側のサーマルリボン31のベース31aに貼着された状態でサーマルリボン31側に残る場合もある。あるいは、転写層21c,31cの樹脂が完全に溶融して一体化するに至らない場合は、サーマルリボン21の転写層21cの樹脂はサーマルリボン21側に、サーマルリボン31の転写層31cの樹脂はサーマルリボン31側に、元通りに2つに分かれる場合もあり得る。
【0040】
以上で、図5(c)に加工後の印刷物1’として示されるように、両面に印刷が施された一枚の印刷物1の両印刷面をフルカバーする透明保護フィルム21c’,31c’が被覆形成して表面加工する処理が終了する。前述の後端センサによる印刷物後端通過検知後の所定時間インターバルの間に前述の前端センサによる印刷物前端進入検知がなければ、装置運転を停止する。該所定時間インターバルの間に前端センサによる検知があれば、装置10を連続的に運転して複数枚の印刷物1に対して順次に両面加工処理を行う。
【0041】
なお、後加熱バー11,12は、既述したように、加圧ローラ24,34と同じタイミングで昇降して、その近接移動時にはサーマルリボン21,31に接触する(強い圧力はかけずにわずかに接触する程度)ので、加圧ローラ24,34間の圧接により溶融または軟化したサーマルリボン21,31の転写層21c,31cを印刷物1の両面に転写させた直後に、サーマルリボン21,31に接触して、印刷物1に転写した樹脂を十分に溶融させ、再固化により形成される透明保護フィルム21c’,31c’に十分な光沢を与える。加圧ローラ24,34は金属やゴムなど任意の材料で形成されるが、熱転写時に適度の圧接力を与えるために少なくとも一方は弾力性のあるゴムローラとすることが好ましいところ、ゴムローラで加熱圧接すると、印刷物の用紙の細かな凹凸がサーマルリボンに移り、剥離後も細かな凹凸として透明保護フィルムに残ってしまうことがある。後加熱を行うことはとりわけこのような場合に有益であり、強い圧力をかけずに後加熱することにより、サーマルリボン21,31の凹凸を無くし、剥離後に印刷面に形成される透明保護フィルム21c’,31c’を平滑面としつつ強い光沢を与えることができる。
【0042】
図1に示す装置10を用いて、カラーレーザプリンタで両面印刷済みの印刷物1の両印刷面を表面加工した。サーマルリボン21,31には、5μm厚のPETベース21a,31a上に、溶融して透明フィルム化するアクリル系樹脂(Tg80℃)にワックス類を添加した樹脂塗料を塗布して1.5μm厚の剥離層(21b)を形成し、さらにその上に剥離層と同一系樹脂を塗布して3.0μm厚の転写層21c,31cを形成した合計厚10μmのものを用いた。加圧ローラ24,34は加熱手段27,37で180℃に加熱し、後加熱バー11,12は150℃に加熱して用いた。熱転写によるラミネート速度を25mm/秒とし、後加熱バー11,12による加熱終了後約2秒で剥離ローラ25,35による冷時剥離が行われるようにして装置10を運転した。
【0043】
比較例として、実施例と同じ印刷物1に同じサーマルリボンを用い、装置運転条件も実質的に同一にして、冷時剥離方式ではなく熱時剥離方式を採用して表面加工を行った。すなわち、一般の熱転写プリンタに使用されると同様のサーマルヘッドを熱源とし、該サーマルヘッドの発熱幅を印刷物1の幅より若干広くコントロールし、さらに印刷物1がサーマルヘッドを通過する前後もサーマルヘッドをプラテンロールに圧接して、印刷物1の全面に熱転写を行うと共に、サーマルヘッド通過直後にサーマルリボンを剥離した。
【0044】
これら実施例および比較例について、印刷物1の印刷面に形成された透明保護フィルムの光沢、耐水性、表面強度および印刷面への密着性を評価した。また、透明保護フィルムの端面が印刷物1の用紙縁に沿ってきれいに割れているか否か(「端面切断性」)を目視評価した。これらの結果を次の表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
特に評価が分かれたのは「端面切断性」の評価項目であり、本発明実施例による表面加工ではサーマルリボン21,31の転写層21c,31cが印刷物1の両面において用紙縁に沿ってきれいに剥離して透明保護フィルム21c’,31c’が形成されたのに対し、比較例による表面加工では転写層が印刷物の用紙縁に沿ってきれいに剥離することができずに透明保護フィルムの端面から再固化した樹脂が糸状になって多数はみ出した状態になっていた。このことから、本発明においては冷時剥離が必須条件であることが確認された。また、本発明によれば印刷物の両面に透明保護フィルム21c’,31c’を同時に形成することができることが確認された。
【0047】
以上の説明においてはこの装置10を両面加工に用いることを前提としたが、この装置10は片面加工にも兼用することができる。以下、この装置10で印刷物1の片側の印刷面のみに透明保護フィルムを被覆形成する場合について、図6ないし図9を参照して説明する。
【0048】
この場合、透明保護フィルムを被覆形成する側とは反対側(下面側)に設けられた第二のリボン走行手段30は、サーマルリボン31ではなく、熱転写層を持たないフィルム(バックアップフィルム)43を使用する。具体的には、供給ボビン32および巻取ボビン36と一体化されたサーマルリボンセットを取り外し、コンパチブルに使用可能なバックアップフィルムセットを第二のリボン走行手段30にセットすれば良い。この場合に使用するバックアップフィルム43は、サーマルリボン21の転写層21cを印刷物1の上面に転写させてから冷時剥離するまでの間印刷物1をバックアップする作用を果たす。バックアップフィルム43としては、サーマルリボン21(図2)のように剥離層21bおよび転写層21cを必要としないのでベース層21aのみからなる単層フィルムを使用することができるが、少なくともその表面にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの低摩擦性ないし易剥離性材料がコーティングされ、あるいはバックアップフィルム43自体をそのような低摩擦性ないし易剥離性材料で形成されたものである。
【0049】
他の構成については大きな変更を要しないが、加圧ローラ34は図1に示す上昇位置に停止させておいて良いので昇降機構38を所定タイミングで昇降させる必要はなく、また加熱手段37による加熱も不要である。後加熱バー12はバックアップフィルム43の下面から待避させたままの状態に保持するか、あるいはバックアップフィルム43に近接させた位置に保持して(図6)印刷物1に対して搬送路を規定するようにしても良い。いずれにしても後加熱バー12を加熱する必要はない。これらは制御手段39の設定を変更するだけで簡単に実行することができる。
【0050】
以上のように構成された装置10において、サーマルリボン21およびがバックアップフィルム43が所定速度で走行している状態でこれに同期した速度で印刷物1をフィードローラ41,42により矢印方向に給紙し、前述の前端センサによりその前端が装置10の熱転写地点の直前位置に到達したことを検知すると、制御手段29は、加熱手段27により加熱された加圧ローラ24を昇降機構28により下降させて、下方に対置された加圧ローラ34に圧接させる(図8(a))。
【0051】
これにより、圧接状態とされた加圧ローラ24,34間(=サーマルリボン21とバックアップフィルム43の間)に印刷物1が入り込んでいき(図7)、加熱手段27により加熱された加圧ローラ24の熱を受けてサーマルリボン21の転写層21cが溶融または軟化し、印刷物1の印刷面を覆うように融着される。
【0052】
その後、前述の後端センサにより印刷物1の後端が熱転写地点(圧接位置)を通過したことを検知すると、制御手段29は、昇降機構28により加圧ローラ24を上昇させて圧接状態を解除する(図8(b))。
【0053】
上記熱転写動作についてさらに図9を参照して説明する。図9(a)は熱転写開始前の状態であり、印刷物1の前端が前端センサによる検知位置(熱転写直前位置)にまだ到達していない段階(図8(a))である。このとき、サーマルリボン21は未加熱状態にあり、ベース21aに転写層21cが全面的に積層された初期状態(図2)を維持している(剥離層21bは図示省略)。
【0054】
図9(b)は熱転写が行われているときの状態を示し、圧接状態とされている加圧ローラ24,34間(=サーマルリボン21とバックアップフィルム43の間)に印刷物1が入り込んでおり、印刷物1の上面にサーマルリボン21の転写層21cが密着し、下面にはバックアップフィルム43が密着している。これにより、加圧ローラ24の熱を受けてサーマルリボン21の転写層21cが溶融または軟化して、印刷物1の上側印刷面に融着される。
【0055】
サーマルリボン21は印刷物1より幅広であるので、印刷物1の印刷面の幅一杯に転写層21cが融着される。また、この状態は圧接地点(熱転写地点)に印刷物1の前端が到達する前から後端が通過した後まで維持されるので、印刷物1の全長に亘って両面に転写層21cが熱転写される。すなわち、印刷物1の印刷面をフルカバーするように転写層21cが融着される。
【0056】
図9(c)はサーマルリボン21およびバックアップフィルム43が剥離ローラ25,35によって印刷物1から剥離された後の状態を示す。サーマルリボン21およびバックアップフィルム43が剥離されるときまでに、熱転写地点で溶融/軟化した転写層21cの樹脂はその溶融/軟化温度を十分に下回る温度に低下している。したがって、冷時剥離によって印刷物1の用紙縁でサーマルリボン転写層21cがきれいに切断され、溶融/軟化した転写層21cの樹脂は印刷物1の印刷面をフルカバーするように転写されて樹脂の再固化により透明保護フィルム21c’が形成される。一方、印刷物1の周囲の転写層21cは剥離ローラ25によってベース21aと共に巻取ボビン26に向けて巻き取られていく。
【0057】
既述したように、バックアップフィルム43の表面にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの低摩擦性ないし易剥離性材料がコーティングされ、あるいはバックアップフィルム43自体がそのような低摩擦性ないし易剥離性材料で形成されているので、サーマルリボン21の転写層21cはベース21aへの接着力よりもバックアップフィルム43への接着力が弱い。したがって、剥離ローラ25による冷時剥離の際に、印刷物1の印刷面の周囲の転写層2cはバックアップフィルム43側に帯同することなく剥離ローラ25で巻き取られていき、バックアップフィルム43の表面には転写層21cの樹脂が付着することがないため、バックアップフィルム43はクリーニングや交換の必要なく半永久的に使用し続けることができる。
【0058】
以上で一枚の印刷物1の片側印刷面に透明保護フィルム21c’を全面にきれいに被覆形成して表面加工する処理が終了する。前述の後端センサによる印刷物後端通過検知後の所定時間インターバルの間に前述の前端センサによる印刷物前端進入検知がなければ、装置運転を停止する。該所定時間インターバルの間に前端センサによる検知があれば、装置10を連続的に運転して複数枚の印刷物1に対して順次に片面加工処理を行う。
【0059】
サーマルリボン21側の後加熱バー11は、既述したように、加圧ローラ24と同じタイミングで昇降して、その近接移動時にはサーマルリボン21に接触する(強い圧力はかけずにわずかに接触する程度)ので、加圧ローラ24の圧接により溶融または軟化したサーマルリボン21の転写層21cを印刷物1の両面に転写させた直後に、サーマルリボン21に接触して、印刷物1に転写した樹脂を十分に溶融させ、再固化により形成される透明保護フィルム21c’に十分な光沢を与える。加圧ローラ24,34は金属やゴムなど任意の材料で形成されるが、熱転写時に適度の圧接力を与えるために少なくとも一方は弾力性のあるゴムローラとすることが好ましいところ、ゴムローラで加熱圧接すると、印刷物の用紙の細かな凹凸がサーマルリボンに移り、剥離後も細かな凹凸として透明保護フィルムに残ってしまうことがある。後加熱を行うことはとりわけこのような場合に有益であり、強い圧力をかけずに後加熱することにより、サーマルリボン21の凹凸を無くし、剥離後に印刷面に形成される透明保護フィルム21c’を平滑面としつつ強い光沢を与えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電子写真方式・インクジェット方式・熱転写方式などによる各種小型プリンタによる印刷物、オフセット印刷・フレキソ印刷・グラビア印刷などによる各種印刷物、さらには銀塩写真などの写真画像形成物などに対して光沢付与などを目的とする表面加工を行う装置として、特に小規模オフィスや店舗などでの使用に好適である。また、両面印刷と片面印刷とに兼用できる装置構成を備えているので、別々に専用機を備える必要がなく、コスト面での優位性も大きい。これらにより、本発明は産業上の利用可能性が大きいものである。
【符号の説明】
【0061】
1 印刷物
1’ 表面加工後の印刷物
10 印刷物表面加工装置
11,12 後加熱バー(後加熱手段)
20 第一のリボン走行手段
21 サーマルリボン
21a ベース
21b 剥離層
21c 転写層
21c’ 透明保護フィルム
22 供給ボビン
23 ガイドローラ
24 加圧ローラ(加圧手段)
25 剥離ローラ(剥離手段)
26 巻取ボビン
27 加熱手段
28 昇降機構(移動手段)
29 制御手段
30 第二のリボン走行手段
31 サーマルリボン
31a ベース
31b 剥離層
31c 転写層
31c’ 透明保護フィルム
32 供給ボビン
33 ガイドローラ
34 加圧ローラ(加圧手段)
35 剥離ローラ(剥離手段)
36 巻取ボビン
37 加熱手段
38 昇降機構(移動手段)
39 制御手段
40 給紙手段
41,42 フィードローラ
43 バックアップフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物を所定の搬送面に供給する給紙手段と、溶融して透明フィルム化する樹脂を主体とする転写層を有するサーマルリボンを供給ボビンから送り出し、給紙手段により所定の搬送面に供給された印刷物の両面に重ね合わせた状態で走行させた後に巻取ボビンに巻き取るよう、印刷物と同期走行させる一対のリボン走行手段と、印刷物の両面に各々サーマルリボンを挟んで対設される一対の加圧手段と、各加圧手段をサーマルリボンの転写層の樹脂を溶融または軟化させるに十分な温度に加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された加圧手段を互いに近接する方向に移動させてサーマルリボンを印刷物の両面に圧接させる移動手段と、移動手段により移動した加圧手段によって熱転写が行われる地点から印刷物およびサーマルリボンの走行方向下流側に離れた地点において両面側に設けられて各サーマルリボンを印刷物から冷時剥離する一対の剥離手段と、印刷物の前端が熱転写地点に到達する直前に加圧手段を移動させてサーマルリボンを印刷物の両面に圧接させると共に印刷物の後端が熱転写地点を通過した直後に該圧接状態を解除させるように移動手段を制御する制御手段とを備え、前記サーマルリボンおよび前記加圧手段はいずれも印刷物より幅広に形成され、前記剥離手段による冷時剥離後の印刷物の両面を全面的に被覆するようにサーマルリボンの転写層の再固化樹脂による透明保護フィルムを形成すると共に、印刷物の周囲の転写層の再固化樹脂はサーマルリボンと共にリボン走行手段によって巻き取られることを特徴とする印刷物表面加工装置。
【請求項2】
熱転写地点から印刷物およびサーマルリボンの走行方向下流側に近接して印刷物の両面側に各々後加熱手段が設けられ、強い圧力をかけずにサーマルリボンを転写層の樹脂の溶融または軟化温度以上の温度に再加熱することを特徴とする請求項1記載の印刷物表面加工装置。
【請求項3】
後加熱手段は、前記加熱手段と同じタイミングで移動するよう前記制御手段により制御されることを特徴とする請求項2記載の印刷物表面加工装置。
【請求項4】
加圧手段がローラであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の印刷物表面加工装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか記載の装置を用いて、サーマルリボンの転写層の再固化樹脂による透明保護フィルムを印刷物の両面に各々全面被覆形成することを特徴とする印刷物表面加工方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか記載の装置において、一対のリボン走行手段のうち一方のリボン走行手段には前記サーマルリボンを走行させると共に他方のリボン走行手段にはサーマルリボンに代えて転写層を持たないバックアップフィルムを走行させることにより、サーマルリボンの転写層の再固化樹脂による透明保護フィルムを印刷物の片面のみに全面被覆形成することを特徴とする印刷物表面加工方法。
【請求項7】
バックアップフィルムは少なくともその表面が剥離特性に優れた材料で形成されたものを使用し、剥離手段によりサーマルリボンが印刷物から剥離されたときに印刷物の周囲の転写層の再固化樹脂をバックアップフィルムに転写させることなくサーマルリボン側に残すようにしたことを特徴とする請求項6記載の印刷物表面加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−228435(P2010−228435A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249218(P2009−249218)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】