説明

印刷装置、印刷装置の制御方法、およびプログラム

【課題】ホストコンピューターから受信したコマンドやデータに対応する印刷画像データの処理を高速化し、印刷動作の遅延を回避する。
【解決手段】ホストコンピューターに接続可能な印刷装置は、受信部と、生成部と、記憶部と、制御部と、印刷部とを備える。受信部は、ホストコンピューターから少なくともコマンドを含む印刷データを受信する。生成部は、コマンドに基づいて印刷画像データを生成する。記憶部は、コマンドと印刷画像データとを関連付けて記憶する。制御部は、受信部が受信したコマンドに関連付けられた印刷画像データが記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを記憶部から読み出す。印刷部は、印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピューターと接続可能な印刷装置、当該印刷装置の制御方法、および当該印刷装置を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等に設置され、ホストコンピューターの制御の下にレシート等を発行する印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−157474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホストコンピューターから受信したコマンドや印刷データに基づいて印刷ヘッドが印刷動作を実行するためのデータ(本明細書においては、このデータを印刷画像データと称する)を生成する必要がある。上記の印刷装置においては、ホストコンピューターから受信したコマンドや印刷データが同じものであっても、その都度印刷画像データの生成が行なわれている。印刷画像データの生成は比較的時間を要する処理も含まれるため、印刷動作の遅延が生ずる。
【0005】
顧客の視覚に訴えるためにレシート等に印刷される画像にも多様性が求められ、例えば適宜の装飾処理(拡大・縮小、スムージング、イタリック化、太字化、下線付加、回転、変形、着色等)を施すことが必要とされ、これらを指示するためのコマンドが送られる。このように文字を装飾する処理は非常に処理時間を要する。また、データ量の多いロゴなどを含む画像データがレシートを印刷する度に送られると、やはり処理に時間がかかる。
【0006】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、ホストコンピューターから受信したコマンドや印刷データに対応する印刷画像データの処理を高速化し、もって印刷動作の遅延を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本発明は以下に列挙する種々の態様を採り得る。
【0008】
本発明の第1の態様は、ホストコンピューターに接続可能な印刷装置を提供する。本発明の第1の態様は、前記ホストコンピューターから少なくともコマンドを含む印刷データを受信する受信部と、前記コマンドに基づいて印刷画像データを生成する生成部と、前記コマンドと前記印刷画像データとを関連付けて記憶する記憶部と、前記受信部が受信したコマンドに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出す制御部と、前記印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう印刷部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、同一のコマンドをホストコンピューターから受信した場合に、当該コマンドに関連付けて記憶部に記憶されている印刷画像データを再利用することができる。この場合において、受信したコマンドに基づいて印刷画像データを生成する処理は省略される。したがって同一の印刷画像データを生成する処理が繰り返される冗長性を排除でき、印刷画像データの処理を高速化できる。よって印刷動作の遅延を回避可能である。なお受信したコマンドは、記憶部に記憶されているかの判定に使用した後に実行されることなく破棄される。
【0010】
本発明の第1の態様において、前記印刷データは、前記コマンドに関連付けられたデータをさらに含み、前記生成部は、前記コマンドと前記データに基づいて前記印刷画像データを生成し、前記記憶部は、前記コマンドおよび前記データと前記印刷画像データとを関連付けて記憶し、前記制御部は、前記受信部が受信したコマンドおよびデータに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出すことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、コマンドと当該コマンドに関連する引数などのデータの組合せに基づいて記憶されている印刷画像データの再利用可能性が判断される。したがって複数の異なる印刷画像データが生成されているような場合においても、同一のコマンドであっても引数などのデータが異なることによって適切に識別でき、同一の印刷画像データを生成する処理が繰り返される冗長性を排除できる。よって印刷動作の更なる高速化が可能である。なお受信した引数などのデータは、記憶部に記憶されているかの判定に使用した後に実行されることなくコマンドと共に破棄される。
【0012】
本発明の第1の態様において、前記コマンドは、文字を装飾し前記印刷部に印刷させること、および、画像データを前記印刷部に印刷させることの少なくとも一方に関連するものであることを特徴とする。
【0013】
印刷画像データの生成に際して、処理に時間がかかる傾向がある文字の装飾処理(拡大・縮小、スムージング、イタリック化、太字化、下線付加、回転、変形、着色等)を伴う場合、処理負荷が増して印刷動作の遅延要因となる。上記の構成によれば、同一の印刷画像データの生成が繰り返される冗長性の排除効果がより顕著となる。また画像データが同一と判定できれば記憶しているものを使用できるので、ホストコンピューターから送られる画像データを処理せずに読み捨てればよい(破棄すればよい)。したがって処理の省略が可能である。
【0014】
本発明の第2の態様は、ホストコンピューターに接続可能な印刷装置を提供する。本発明の第2の態様は、前記ホストコンピューターから少なくとも文字コードを含む印刷データを受信する受信部と、前記文字コードに基づいて印刷画像データを生成する生成部と、前記文字コードと前記印刷画像データとを関連付けて記憶する記憶部と、前記受信部が受信した文字コードに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出す制御部と、前記印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう印刷部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、同一の文字コードをホストコンピューターから受信した場合に、当該文字コードに関連付けて記憶部に記憶されている文字列の印刷画像データを再利用することができる。この場合において、受信した文字コードに基づいて印刷画像データを生成する処理は省略される。したがって同一の印刷画像データを生成する処理が繰り返される冗長性を排除でき、印刷動作の高速化が可能である。
【0016】
印刷装置は、文字コードに対応する印刷画像データが記憶されている不揮発性メモリー(ROM等)を備えている。文字コードを受信すると、対応する印刷データをROMから読出し、揮発性メモリー(RAM等)に書き込む。文字コードとRAMに記憶されている印刷画像データを関連付けて記憶しておけば、RAMの印刷画像データを再利用できるので、印刷画像データをROMからRAMへ移す処理を省くことができる。
【0017】
本発明の第2の態様において、前記生成部は、前記印刷媒体における行単位で前記印刷画像データを生成し、前記制御部は、前記受信部が受信した文字コードに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを前記行単位で判定することを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、印刷媒体に繰り返し印刷される文字列の有無を行単位で管理することが可能となり、制御効率が向上する。
【0019】
印刷画像データは行単位で区切られてRAMに記憶され、行単位で印刷部で印刷動作に供される。例えば、この区切りは改行などのコマンドで判別できる。また印刷部で1行の範囲内に印刷できる文字数が決まっているので、改行コマンドを受信しなくても1行の範囲内の文字数で能動的に区切って処理できる。
【0020】
本発明の第3の態様は、ホストコンピューターに接続可能な印刷装置の制御方法を提供する。本発明の第3の態様は、前記ホストコンピューターから少なくともコマンドを含む印刷データを受信し、前記コマンドに基づいて印刷画像データを生成し、前記コマンドと前記印刷画像データとを関連付けて記憶し、前記受信部が受信したコマンドに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出し、前記印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう、ことを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様と同様の効果を得ることができる。
【0021】
本発明の第4の態様は、ホストコンピューターに接続可能な印刷装置の制御方法を提供する。本発明の第4の態様は、前記ホストコンピューターから少なくとも文字コードを含む印刷データを受信し、前記文字コードに基づいて印刷画像データを生成し、前記文字コードと前記印刷画像データとを関連付けて記憶し、前記受信部が受信した文字コードに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出し、前記印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう、ことを特徴とする。
本発明の第4の態様によれば、本発明の第2の態様と同様の効果を得ることができる。
【0022】
本発明は、上記第3の態様または第4の態様に係る印刷装置の制御方法を、印刷装置が備える制御部に実行させることを特徴とするプログラムとしても実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る印刷装置の制御方法の第1の例を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る印刷装置の制御方法の第2の例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る印刷装置の制御方法の第3の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る印刷装置について添付の図面を参照しつつ以下詳細に説明する。印刷装置の一実施形態としてPOSシステム等に用いられるサーマルラインプリンターを例に挙げる。
【0025】
POSシステムは、小売店等に設置されて売上げ精算を行なうPOS端末を、売上げ登録処理および精算処理を行なうホストコンピューター1に接続して構成される。図1に示される印刷装置2はPOS端末に備えられ、売上げ精算の際にレシートを印刷・発行するために用いられる。印刷装置2は、印刷制御部10、受信部12、および印刷部13を備えている。
【0026】
印刷制御部10は、CPU(中央制御装置)および各種周辺回路より構成される制御部11を備えている。制御部11は、後述する不揮発性メモリー16あるいは不図示のROM(読み出し専用メモリー)に記憶された制御プログラム等の各種プログラムを実行することにより、印刷装置2の各部を統括的に制御する。
【0027】
受信部12は、制御部11の制御の下に、ホストコンピューター1から送信される各種コマンドやデータ等を所定規格に準拠して受信するインターフェースである。ホストコンピューター1との通信は有線または無線で行なわれる。
【0028】
印刷部13は、不図示の媒体搬送機構、印刷ヘッド、およびヘッド駆動回路を備えている。媒体搬送機構は、制御部11の制御の下に、印刷装置2に収容された印刷媒体としてのロール紙の先端部を所定の搬送経路に沿って印刷ヘッドへ向けて搬送する。本実施形態の印刷ヘッドは、複数の発熱素子が印刷媒体の搬送方向に直交する向きに配列されたサーマルラインヘッドである。制御部11の制御の下に発熱素子(ドット形成素子)がロール紙の表面(記録面)に熱を与えることにより、ロール紙上に文字や画像が印刷(記録)される。印刷ヘッドを通過したロール紙の先端部は、不図示の切断機構により自動あるいは手動で切断され、レシートとして顧客に手渡される。
【0029】
本実施形態の印刷装置2は、店名、売り上げた商品の名称、数量ならびに金額、および合計金額等の文字情報に加え、店のロゴ、クーポン情報、バーコード等の画像情報をレシート上に印刷可能とされている。
【0030】
図1に示されるように、印刷制御部10は、受信バッファー14、印刷データ解析部15、不揮発性メモリー16、プリントバッファー17、およびテーブル18を更に備えている。各種データはこれらの構成要素間をデータバス19を介して送受信可能とされている。
【0031】
受信バッファー14は、受信部12を介してホストコンピューター1から受信した各種コマンドやデータが一時的に格納される。受信バッファー14は、制御部11がワークエリアの形成に利用する不図示のRAM(ランダムアクセスメモリー)における所定の記憶領域に形成される構成としてもよいし、専用のメモリーを設ける構成としてもよい。
【0032】
印刷データ解析部15は、制御部11の制御の下に、受信バッファー14に格納された各種コマンドを順次読み出して解析する。ホストコンピューター1より送信されるコマンドは、印刷する文字や画像の属性や位置を指定するコマンドや、画像データを送信するためのコマンド、印刷装置の機能や動作を指定するコマンド等を含んでいる。印刷データ解析部15は、コマンドの内容を解析することによって印刷装置2において実行される制御処理を特定する。印刷データ解析部15は、制御部11の一機能として実現される。当該機能を実現する専用のハードウェアまたはソフトウェアを設けてもよい。
【0033】
不揮発性メモリー16はROM等によって構成され、書替え可能に、かつ不揮発的に各種データを記憶保持する。本実施形態の不揮発性メモリー16は、レシートに印刷される各種文字の形状を定義するデータ(フォントデータ)、およびレシートに印刷される各種画像を定義するデータを格納している。不揮発性メモリー16に記憶保持されるデータは、予め格納されていてもよいし、ホストコンピューター1から送信されたデータを受信部12および受信バッファー14を介して格納する構成としてもよい。
【0034】
プリントバッファー17は、サーマルラインヘッドを駆動するために生成される印刷画像データを格納(展開)するための領域である。印刷画像データは、印刷に供される文字や画像をラスタライズして画素データとして生成したものである。例えばドットが形成される(発熱素子を駆動する)画素は1で、ドットが形成されない(発熱素子が駆動されない)画素は0で表現される。ヘッド駆動回路は、プリントバッファー17に展開された印刷画像データに基づいて、印刷媒体の搬送タイミングを規定する信号との同期をとりつつ、発熱素子の各々に駆動信号を出力することにより、所望の文字や画像をレシート上に印刷する。
【0035】
例えばレシート上に文字列が印刷される場合、ホストコンピューター1から文字印刷を指示するコマンドと共に当該文字列を指定する文字コード群が送信される(コマンド自身が文字列を特定するものであってもよい)。受信部12を介して受信バッファー14に格納された当該コマンドおよび文字コード群は、印刷データ解析部15による解析に供され、当該文字コード群に対応するフォントデータが不揮発性メモリー16から読み出される。読み出されたフォントデータに基づいて当該文字列に対応する印刷画像データが制御部11によって生成され、プリントバッファー17に展開される。この場合において印刷制御部10は本発明の生成部として機能する。印刷部13は、制御部11の制御の下に、プリントバッファー17に展開された印刷画像データに基づいてサーマルラインヘッドおよび媒体搬送機構を駆動し、当該文字列をレシート上に印刷する。
【0036】
例えばレシート上に画像が印刷される場合、ホストコンピューター1から画像印刷を指示するコマンドと共に当該画像を指定するデータが送信される(コマンド自身が画像を特定するものであってもよい)。受信部12を介して受信バッファー14に格納された当該コマンドおよび画像指定データは、印刷データ解析部15による解析に供され、当該画像指定データにより指定された画像データが不揮発性メモリー16から読み出される。読み出された画像データに基づいて当該画像に対応する印刷画像データが制御部11によって生成され、プリントバッファー17に展開される。この場合において制御部11は本発明の生成部として機能する。印刷部13は、制御部11の制御の下に、プリントバッファー17に展開された印刷画像データに基づいてサーマルラインヘッドおよび媒体搬送機構を駆動し、当該画像をレシート上に印刷する。
【0037】
プリントバッファー17は、制御部11がワークエリアの形成に利用するRAM(不図示)内の所定の記憶領域に形成される構成としてもよいし、専用のメモリーを設ける構成としてもよい。
【0038】
本実施形態においては、プリントバッファー17に印刷画像データが格納されると、当該印刷画像データの生成に関与したコマンドの種類と、当該印刷画像データの格納場所を示すアドレスとが関連付けられてテーブル18に記憶される。したがってプリントバッファー17の少なくとも一部およびテーブル18は、本発明の記憶部として機能する。テーブル18は、制御部11がワークエリアの形成に利用するRAM(不図示)内の所定の記憶領域に形成される構成としてもよいし、専用のメモリーを設ける構成としてもよい。
【0039】
印刷データ解析部15は本発明の制御部として機能し、受信バッファー14に格納されたコマンドを解析する際に、テーブル18を参照するように構成されている。受信バッファー14に格納されたコマンドがテーブル18に記憶されているコマンドと同じものであると印刷データ解析部15によって判定されると、テーブル18において当該コマンドに関連付けられたプリントバッファー17のアドレスが参照され、制御部11は当該アドレスに格納されている印刷画像データを読み出し、当該印刷画像データに基づいて印刷部13に印刷動作を実行させる。すなわちプリントバッファー17に格納されている印刷画像データを再利用可能なコマンドが再度ホストコンピューター1から受信された場合、当該コマンドに関連付けられたフォントデータまたは画像データを不揮発性メモリー16から読み出すのではなく、プリントバッファー17に格納されている印刷画像データを読み出して印刷部13へ供給する。この場合、受信されたコマンドは上記の判定に使用された後に実行されることなく破棄される。
【0040】
この構成によれば、同じ印刷画像データを得るために同じ生成処理が繰り返される冗長性を排除でき、印刷動作の遅延を防止することが可能となる。
【0041】
上記の構成を備えた印刷装置2において実行される制御の一連の流れについて図2を参照して説明する。先ずホストコンピューター1より送信された印刷データが印刷装置2の受信部12において受信され、制御部11による制御の下に受信バッファー14に格納される(ステップS21)。ここで印刷データは、特定の印刷動作を指定するコマンドおよび当該印刷動作の対象となる文字列または画像を指定するデータを含むものとする。なおコマンド自身が印刷対象を指定し得るものである場合、印刷データにおいて画像を指定するデータは省略されてもよい。
【0042】
印刷データ解析部15は、受信バッファー14に格納された印刷データを解析し、上記のコマンドを抽出する。さらにテーブル18を参照し、抽出したコマンドと同一のコマンドが記憶されているかを判定する(ステップS22)。
【0043】
同一のコマンドがテーブルに記憶されていないと判定された場合(ステップS22においてNo)、抽出されたコマンドが指定する印刷対象の文字列または画像に対応するフォントデータまたは画像データが、制御部11によって不揮発性メモリー16から読み出され、印刷画像データへの変換が行なわれる。当該変換処理を通じて生成された印刷画像データは、プリントバッファー17の所定の領域に格納される(ステップS23)。
【0044】
抽出されたコマンドは、制御部11の制御の下に、当該コマンドに基づいて生成された印刷画像データが格納されているプリントバッファー17のアドレスに関連付けられてテーブル18に記憶される(ステップS24)。なおこの処理は後述する印刷動作の実行と併行して、あるいは印刷動作の実行後に行なわれることとしてもよい。
【0045】
一方、ステップS22において同一のコマンドがテーブルに記憶されていると判定された場合(ステップS22においてYes)は、プリントバッファー17に格納されている印刷画像データの再利用が可能であることを意味する。制御部11は、テーブル18に記憶されているコマンドに関連付けられたアドレスに格納されている印刷画像データをプリントバッファー17から読み出す(ステップS25)。
【0046】
印刷制御部10は読み出された印刷画像データを印刷部13へ供給する。印刷部13のヘッド駆動回路は印刷画像データに基づいてサーマルラインヘッドの発熱素子を駆動し、印刷データにより指定された文字列または画像がレシート上に印刷される(ステップS26)。抽出したコマンドに対応するデータの不揮発性メモリ16からの読み出し、および印刷画像データへの変換処理が省略されるため、処理負荷の軽減および印刷動作の高速化が可能である。
【0047】
本実施形態の印刷装置2においては、レシートに印刷される文字列や画像に適宜の装飾処理(拡大・縮小、スムージング、イタリック化、太字化、下線付加、回転、変形、着色等)を施すことが可能であり、どのような装飾処理を行なうかはホストコンピューター1より送信される装飾指定コマンドによって指定される。受信部12を介して受信バッファー14に格納された装飾指定コマンドは、印刷データ解析部15による解析に供され、不揮発性メモリー16より読み出されたフォントデータや画像データに対して指定された装飾が施された画像となるように印刷画像データが生成され、プリントバッファー17に格納される。この場合も同様にして、実行された装飾コマンドの種類と、当該装飾コマンドに基づいて生成された印刷画像データが格納されたプリントバッファー17におけるアドレスとが関連付けられ、テーブル18に記憶される。
【0048】
装飾処理が加わる場合、不揮発性メモリー16からのデータ読み出しおよび印刷画像データの生成の省略効果がより顕著となる。したがって装飾処理を必要とする印刷動作を指示するコマンドと、これに基づいて生成された印刷画像データを選択的にプリントバッファー17に記憶保持しておく構成とすることが好ましい。例えば店名を示す文字列やロゴ画像はレシート発行の度に同じ場所に印刷され、かつ拡大や強調といった装飾処理を伴う傾向にあることから、このような印刷画像データをプリントバッファー17に記憶保持すると共に、レシート上の特定箇所に印刷を行うコマンドを当該印刷画像データが格納されているプリントバッファー17のアドレスと関連付けてテーブル18に記憶しておけば、レシート発行の度に上記店名を示す文字列やロゴ画像に対応するデータを不揮発性メモリー16から読み出して装飾と共に印刷画像データを生成する処理を省略することができる。これにより処理負荷の軽減および印刷動作の更なる高速化を図ることができる。またプリントバッファー17の容量に制限がある場合に、記憶領域を有効に活用することができる。
【0049】
また例えば店舗所在地や電話番号を示す文字列やクーポン情報を示す文字列は、レシート発行の度に特定の箇所(レシートの先頭や末尾等)に印刷される傾向にあるため、このような文字列に対応する印刷画像データをプリントバッファー17に記憶保持すると共に、レシート上の特定箇所に印刷を行うコマンドを当該印刷画像データと関連付けてテーブル18に記憶しておけば、レシート発行の度に特定の文字列に対応するデータを不揮発性メモリー16から読み出して印刷画像データを生成する処理を省略することができる。これにより処理負荷の軽減および印刷動作遅延の防止を図ることができる。またプリントバッファー17の容量に制限がある場合に、記憶領域を有効に活用することができる。
【0050】
特定の文字列を含む印刷画像データを再利用する場合、当該印刷画像データを得るためのコマンドではなく、当該特定の文字列に対応する文字コードを当該印刷画像データが格納されているプリントバッファー17のアドレスと関連付けてテーブル18に記憶する構成としてもよい。この場合、受信バッファー14に格納された文字コードが印刷データ解析部15による解析に供される。同一の文字コードがテーブル18に記憶されていると判定されると、当該文字コードに関連付けられたプリントバッファー17のアドレスが参照され、印刷制御部10は当該アドレスに格納されている印刷画像データを読み出し、当該印刷画像データに基づいて印刷部13に印刷動作を実行させる。
【0051】
なお上記の「特定の文字列に対応する文字コード」は、当該文字列を構成する各文字に対応する文字コードの集合であってもよく、当該文字列を特定する単一の文字コードであってもよい。
【0052】
上記の構成を備えた印刷装置2において実行される制御の一連の流れについて図3を参照して説明する。先ずホストコンピューター1より送信された印刷データが印刷装置2の受信部12において受信され、制御部11による制御の下に受信バッファー14に格納される(ステップS31)。ここで印刷データは、特定の印刷動作を指定するコマンドおよび当該印刷動作の対象となる文字列を指定する文字コードを含むものとする。なお文字コードの受信が当該文字コードの印刷指示を意味し得るものである場合、印刷データにおいてコマンドは省略されてもよい。
【0053】
印刷データ解析部15は、受信バッファー14に格納された印刷データを解析し、上記の文字コードを抽出する。さらにテーブル18を参照し、抽出した文字コードと同一の文字コードが記憶されているかを判定する(ステップS32)。
【0054】
同一の文字コードがテーブルに記憶されていないと判定された場合(ステップS32においてNo)、抽出された文字コードが指定する印刷対象の文字列に対応するフォントデータが、制御部11によって不揮発性メモリー16から読み出され、印刷画像データへの変換が行なわれる。当該変換処理を通じて生成された印刷画像データは、プリントバッファー17の所定の領域に格納される(ステップS33)。フォントデータがそのまま印刷画像データとして利用可能な場合は、制御部11によって不揮発性メモリー16から読み出されたフォントデータが、印刷画像データとしてプリントバッファー17に転送されて所定の領域に格納される。
【0055】
抽出された文字コードは、制御部11の制御の下に、当該コマンドに基づいて生成された印刷画像データが格納されているプリントバッファー17のアドレスに関連付けられてテーブル18に記憶される(ステップS34)。なおこの処理は後述する印刷動作の実行と併行して、あるいは印刷動作の実行後に行なわれることとしてもよい。
【0056】
一方、ステップS32において同一の文字コードがテーブルに記憶されていると判定された場合(ステップS32においてYes)は、プリントバッファー17に格納されている印刷画像データの再利用が可能であることを意味する。制御部11は、テーブル18に記憶されているコマンドに関連付けられたアドレスに格納されている印刷画像データをプリントバッファー17から読み出す(ステップS35)。
【0057】
印刷制御部10は読み出された印刷画像データを印刷部13へ供給する。印刷部13のヘッド駆動回路は印刷画像データに基づいてサーマルラインヘッドの発熱素子を駆動し、印刷データにより指定された文字列または画像がレシート上に印刷される(ステップS36)。抽出した文字コードに対応する印刷画像データの生成、あるいは印刷画像データの不揮発性メモリ16からプリントバッファー17への転送が省略されるため、処理負荷の軽減および印刷動作の高速化が可能である。
【0058】
制御効率上の観点からは、レシート上に印刷される行単位で文字列の同一性が判定されることが好ましい。この場合、1行を構成する最大の文字数に対応するデータ数や改行コマンドに基づいて判定対象の画定が可能となる。なお頻繁に使用される文字列については、レシート上において1行に満たない、あるいは複数行に跨るような文字列でも、当該文字列の印刷画像データを予めプリントバッファー17に格納しておき、格納箇所を示すアドレスに関連付けて当該文字列に対応する文字コードをテーブル18に記憶しておく構成によっても制御効率の向上を図ることができる。
【0059】
プリントバッファー17の記憶容量に余裕のある構成においては、複数の印刷画像データをプリントバッファー17に記憶保持し、各印刷画像データが格納されているプリントバッファー17のアドレスを当該印刷画像データの生成に関与したコマンドあるいは文字コード群に関連付けてテーブル18に記憶する構成としてもよい。
【0060】
また例えば店名を示す文字列あるいはロゴ画像に異なる装飾処理を施し、異なるロゴ画像に対応する印刷画像データを生成してレシート上に印刷する場合がある。このような場合においては、各印刷画像データが格納されているプリントバッファー17のアドレスに関連付けてコマンドと処理対象(文字列あるいはロゴ画像)を示すデータ(引数等)の組合せをテーブル18に記憶する構成としてもよい。この場合、受信バッファー14に格納されているコマンドと当該コマンドに関連するデータ(以下関連データ)の組合せが印刷データ解析部15の解析に供される。同一のコマンドと関連データの組合せがテーブル18に記憶されていると判定されると、当該組合せに関連付けられたプリントバッファー17のアドレスが参照され、制御部11は当該アドレスに格納されている印刷画像データを読み出し、当該印刷画像データに基づいて印刷部13に印刷動作を実行させる。
【0061】
上記の構成によれば、異なる文字列または画像データに対して同じ装飾処理を施して印刷画像データを生成する場合や、同じ文字列または画像データに対して異なる装飾処理を施して印刷画像データを生成する場合において、同一の印刷画像データを生成する処理を省略することができる。これにより制御負荷の軽減と印刷動作遅延の防止を図ることができる。
【0062】
上記の構成を備えた印刷装置2において実行される制御の一連の流れについて図4を参照して説明する。先ずホストコンピューター1より送信された印刷データが印刷装置2の受信部12において受信され、制御部11による制御の下に受信バッファー14に格納される(ステップS41)。ここで印刷データは、特定の印刷動作を指定するコマンドおよび当該印刷動作の対象となる文字列または画像を指定する関連データ(引数等)を含むものとする。
【0063】
印刷データ解析部15は、受信バッファー14に格納された印刷データを解析し、上記のコマンドおよび関連データを抽出する。さらにテーブル18を参照し、抽出したコマンドおよび関連データの組合せと同一の組合せが記憶されているかを判定する(ステップS42)。
【0064】
同一の組合せがテーブルに記憶されていないと判定された場合(ステップS42においてNo)、抽出された関連データに対応するフォントデータまたは画像データが、制御部11によって不揮発性メモリー16から読み出され、印刷画像データへの変換が行なわれる。当該変換処理を通じて生成された印刷画像データは、プリントバッファー17の所定の領域に格納される(ステップS43)。
【0065】
抽出されたコマンドと関連データの組合せは、制御部11の制御の下に、当該コマンドに基づいて生成された印刷画像データが格納されているプリントバッファー17のアドレスに関連付けられてテーブル18に記憶される(ステップS44)。なおこの処理は後述する印刷動作の実行と併行して、あるいは印刷動作の実行後に行なわれることとしてもよい。
【0066】
一方、ステップS42において同一の組合せがテーブルに記憶されていると判定された場合(ステップS42においてYes)は、プリントバッファー17に格納されている印刷画像データの再利用が可能であることを意味する。印刷制御部11は、テーブル18に記憶されている組合せに関連付けられたアドレスに格納されている印刷画像データをプリントバッファー17から読み出す(ステップS45)。この場合、受信されたコマンドおよび関連データは、上記の判定に使用された後に実行されることなく破棄される。
【0067】
印刷制御部10は読み出された印刷画像データを印刷部13へ供給する。印刷部13のヘッド駆動回路は印刷画像データに基づいてサーマルラインヘッドの発熱素子を駆動し、印刷データにより指定された文字列または画像がレシート上に印刷される(ステップS46)。抽出したコマンドに対応するデータの不揮発性メモリ16からの読み出し、および印刷画像データへの変換処理が省略されるため、処理負荷の軽減および印刷動作の高速化が可能である。
【0068】
なお上記の各構成において、印刷制御部10が実行する制御の少なくとも一部は各種ハードウェア(例えばダイレクトメモリアクセスコントローラ等)によって実現されてもよく、ホストコンピューター1にインストールされたプリンタドライバが備えるソフトウェアによって実現されてもよい。
【0069】
本発明に係る印刷装置の制御方法は、印刷媒体として単票紙を用いるページプリンターにも適用可能である。文書の各ページにおけるヘッダーやフッターに同一の文字列や画像を印刷する場合において、処理負荷の軽減と印刷動作の遅延回避が期待できる。
【0070】
本発明に係る印刷装置の制御方法は、印刷媒体の搬送方向に配列された複数の発熱素子を備えるサーマルヘッドがキャリッジに搭載され、当該キャリッジを印刷媒体の搬送方向に直交する向きに走査しながら印刷を行なうシリアルプリンターにも適用可能である。
【0071】
本発明に係る印刷装置の駆動方法は、インクジェット方式、ドットインパクト方式の印刷ヘッドを備えるプリンターにも適用可能である。印刷画像データを構成する各画素データは、インクジェット方式のプリンターにおいてはインク滴の噴射/非噴射を規定するものとなり、ドットインパクト方式のプリンターにおいてはニードルの駆動/非駆動を規定するものとなる。何れの方式においてもライン方式のヘッドとシリアル方式のヘッドの双方について適用可能である。
【0072】
上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1:ホストコンピューター、2:印刷装置、11:制御部(生成部)、12:受信部、13:印刷部、15:印刷データ解析部(制御部)、17:プリントバッファー(記憶部)、18:テーブル(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピューターに接続可能な印刷装置であって、
前記ホストコンピューターから少なくともコマンドを含む印刷データを受信する受信部と、
前記コマンドに基づいて印刷画像データを生成する生成部と、
前記コマンドと前記印刷画像データとを関連付けて記憶する記憶部と、
前記受信部が受信したコマンドに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出す制御部と、
前記印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう印刷部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷データは、前記コマンドに関連付けられたデータをさらに含み、
前記生成部は、前記コマンドと前記データに基づいて前記印刷画像データを生成し、
前記記憶部は、前記コマンドおよび前記データと前記印刷画像データとを関連付けて記憶し、
前記制御部は、前記受信部が受信したコマンドおよびデータに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出すことを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記コマンドは、文字を装飾し前記印刷部に印刷させること、および、画像データを前記印刷部に印刷させることの少なくとも一方に関連するものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
ホストコンピューターに接続可能な印刷装置であって、
前記ホストコンピューターから少なくとも文字コードを含む印刷データを受信する受信部と、
前記文字コードに基づいて印刷画像データを生成する生成部と、
前記文字コードと前記印刷画像データとを関連付けて記憶する記憶部と、
前記受信部が受信した文字コードに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出す制御部と、
前記印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう印刷部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記印刷媒体における行単位で前記印刷画像データを生成し、
前記制御部は、前記受信部が受信した文字コードに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを前記行単位で判定することを特徴とする、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
ホストコンピューターに接続可能な印刷装置の制御方法であって、
前記ホストコンピューターから少なくともコマンドを含む印刷データを受信し、
前記コマンドに基づいて印刷画像データを生成し、
前記コマンドと前記印刷画像データとを関連付けて記憶し、
前記受信部が受信したコマンドに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出し、
前記印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう、
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項7】
ホストコンピューターに接続可能な印刷装置の制御方法であって、
前記ホストコンピューターから少なくとも文字コードを含む印刷データを受信し、
前記文字コードに基づいて印刷画像データを生成し、
前記文字コードと前記印刷画像データとを関連付けて記憶し、
前記受信部が受信した文字コードに関連付けられた印刷画像データが前記記憶部に記憶されているかを判定し、記憶されていると判定した場合は当該印刷画像データを前記記憶部から読み出し、
前記印刷画像データに基づいて印刷媒体に印刷を行なう、
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の印刷装置の制御方法を、印刷装置が備える制御部に実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196886(P2012−196886A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62544(P2011−62544)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】