説明

印刷装置の印圧計測方法及び装置

【課題】 計測精度を向上させる。
【解決手段】 下部ロール9の上方に配した押付側印刷用ロール5を保持するロール保持フレーム6と、ロール押し付け機構となるジャッキ7との間に、上下方向の圧縮荷重の大きさと歪変形の歪量との相関関係が既知の計測用構造体8を介装する。計測用構造体8に歪センサ14を取り付け、歪センサ14の出力側にアンプ15を介して計測器16を接続して印刷装置の印圧計測装置を形成する。ジャッキ7により下降させる押付側印刷用ロール5を下部ロール9の上側に接触させて、その自重による荷重を下部ロール9に受けさせて支持させた後、更にジャッキ7により押付側印刷用ロール5を下部ロール9に対し押し付けて印圧を発生させるときに、計測器16にて、計測用構造体8に生じた歪変形の歪量と、計測用構造体8における圧縮荷重と歪変形との相関関係を基に、発生した印圧を計測させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置における圧胴、版胴、ブランケット胴等の印刷用ロールを、所要の押付対象物に、上方から所要の印圧で押し付けるように接触させて印刷処理を行なう際における上記押付側の印刷用ロールの上記所要の押付対象物に対する印圧を計測するために用いる印刷装置の印圧計測方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の1つの形式としては、印刷用紙等の印刷対象の表面(印刷面)に、版面を直接接触させて印刷を行う形式のものがあり、このうち、輪転印刷機では、印刷用紙の如き印刷対象の印刷面側に位置する版胴と、非印刷面側に位置する圧胴とによって印刷対象を挟持した状態で共に回転させることで、上記版胴を上記印刷対象の印刷面に密着させて、該版胴に設けてある印刷パターンの上記印刷対象への印刷を実施するようにしてある。
【0003】
上記輪転印刷機における印刷処理を実施する際、印刷精度を高めるためには、上記版胴を、上記印刷対象を介して圧胴に対し押し付けるように接触させるときの印圧を適切に制御することが重要である。すなわち、印圧分布に差が生じると、せん断力が発生し、この剪断力が印刷ずれの原因となることから、適切な印圧の制御が重要であり、その印圧制御を行なうためには、上記輪転印刷機にて印圧を計測することが必要とされる。
【0004】
又、印刷装置の別の形式のものとしては、版胴又は平板状の版の版面にブランケット胴を接触させて該版面よりブランケット胴の表面に一旦インクを転写(受理)し、次いで、上記ブランケット胴を、平板状の印刷対象、あるいは、該ブランケット胴と圧胴によって挟持した印刷用紙の如き印刷対象の印刷面に押し付けるように接触させることで、該ブランケット胴の表面のインクを上記印刷対象の印刷面に再転写(印刷)することで、印刷を実施するようにしたオフセット印刷機がある。
【0005】
かかるオフセット印刷機においても、前記した輪転印刷器の場合と同様に、印圧分布の差によるせん断力の発生が印刷ずれの原因となることを防いで印刷精度を高めることができるようにするためには、上記ブランケット胴を上記版面に対し押し付けるように接触させて該版面からブランケット胴への転写(受理)処理を行なわせるときの印圧、及び、上記ブランケット胴を上記所要の印刷対象に対し押し付けるように接触させて該ブランケット胴から印刷対象への再転写(印刷)処理を行なわせるときの印圧について、それぞれ適切に制御することが重要であり、その印圧制御を行なうために、上記オフセット印刷機においても印圧を計測することが必要とされる。
【0006】
図7は、従来の印刷装置の印圧計測手法の一例として、グラビア輪転印刷機における印圧計測手法の概要を示すもので、回転可能に横置きした版胴aの上側に、圧胴bを平行に配置し、該圧胴bの軸を回転可能に支持する図示しない軸受を、図示しない印刷ユニットのフレームに上下方向に移動可能に保持させると共に、該各軸受の上側にエアシリンダcをそれぞれ取り付けて、該各エアシリンダcにより、上記圧胴bを昇降駆動できるようにし、更に、上記版胴aの軸を回転自在に支持する図示しない軸受を、個別のロードセルdを介してフレーム又はベースプレート等の印刷機械の固定部分eに支持させてなる構成としてある。
【0007】
かかる構成によれば、上記各エアシリンダcの伸長作動により、押付側の印刷用ロールとなる上記圧胴bを、押付対象物となる上記版胴aに対し印刷用紙(図示せず)を介在させた状態で上方から密着させて印圧を加えた状態で印刷処理を行う際に、上記圧胴bより印圧によって下方へ押圧されることとなる上記版胴aの図示しない軸受を支持する上記各ロードセルdの検出信号に基づいて、上記印圧を計測できるとされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
なお、オフセット印刷機においては、簡易的に、ブランケット胴を版や印刷対象に接触させるときにおける該ブランケット胴の表面に設けてある樹脂体(ブランケット)のつぶれ代を計測し、その寸法変化を印圧と称することが多く行なわれている。
【0009】
ところで、近年、金属蒸着膜のエッチング等による微細加工に代えて、導電性ペーストを印刷インクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いて基板上に液晶ディスプレイ等の電子回路を印刷して形成する手法が提案されてきている。
【0010】
上記液晶ディスプレイ等の電子回路を基板に形成する場合は、電極となる線幅として、たとえば、10μm程度と微細なものが要求されることがある。更に、基板上に複数の電子回路を重ね合わせて形成することがあり、この場合は版を代えて電子回路の重ね刷りを行うことになるが、印刷位置がずれると電子回路の全体構成が崩れてしまうことから、精度は対象によって多少異なるが、上記線幅を10μm程度とするような精密な電子回路の場合には、重ね合わせずれを数μmに抑えることが必要とされることもある。
【0011】
そのため、上記基板上に電子回路を印刷により形成する場合は、紙等に文字や画像を印刷する通常のオフセット印刷に比して高い印刷精度が要求されることから、この場合は、非常に高精度の印圧の制御調整を行うことが必要になり、よって、印圧の計測も高精度に行うことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−205600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記特許文献1に示された印圧計測手法では、印圧を計測するために設けてある各ロードセルdに、初期状態で版胴aの自重による荷重が作用しており、更に、上記版胴aに対し圧胴bを押し付けるように接触させることで生じさせる印圧の計測を行なう際には、上記各ロードセルdに、上記版胴aの自重に加えて該版胴aの上に載置される上記圧胴bの自重による荷重を受けた上で、更に加えられる印圧を計測するようになるため、上記各ロードセルdとしては、上記版胴aの自重及び圧胴bの自重による荷重と、印圧の和からなる重負荷に対応する計測範囲を備えたものを用いる必要がある。
【0014】
そのために、印刷処理の実施に必要とされる印圧が、版胴aや圧胴bの自重による荷重よりも小さい(軽い)場合は、上記各ロードセルdで検出される荷重全体のうち、計測対象となる印圧以外の上記版胴aや圧胴bの自重による荷重が大きな部分を占めるようになることから、上記印圧の計測に実際に用いられるのは上記各ロードセルdの有する計測範囲のうちのかなり狭い範囲のみとなってしまうため、印圧の計測精度が低下(悪化)しているのが実状である。
【0015】
又、オフセット印刷機にて、ブランケット胴の樹脂体(ブランケット)のつぶれ代を計測して、その寸法変化を印圧と称する手法は、印圧を圧力(荷重)として計測するものではないことから、荷重としての印圧を高精度に計測できるものではない。
【0016】
しかし、上記従来の印圧計測手法であっても、紙等に文字や画像を印刷する一般的な印刷処理を行なう際の印圧の制御調整を行なうために要求される程度の印圧の計測精度としては十分であったため、印圧の計測精度の更なる向上化を図る考えは従来特に提案されていないというのが実状である。したがって、従来の印圧計測手法では、たとえば、電子回路を印刷により形成する場合のように線幅が10μm程度の細線を印刷するような精密印刷を実施する際に必要となる非常に高精度の印圧の制御調整を行なうための印圧の計測精度を満足させるような高精度の印圧計測を行なうことは困難である。
【0017】
そこで、本発明は、印刷装置における圧胴、版胴、ブランケット胴等の押付側印刷用ロールを、別の印刷用ロールや、平板状の版あるいは印刷対象等の所要の押付対象物に上方から押し付けるように接触させて所要の印圧を作用させた状態で印刷処理を行なう際に、上記印圧を高精度で計測できるようにし、よって、印圧の制御調整をより高精度に行なうことを可能にして、精密印刷を実施するのに有利なものとすることができる印刷装置の印圧計測方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、押付対象物の上側に配置した押付側印刷用ロールにロール押し付け機構により下向きの押し付け力を付与して、該押付側印刷用ロールを上記押付対象物に所要の印圧で接触させるときに、上記ロール押し付け機構と上記押付側印刷用ロールとの間に介装して設けてある計測用構造体に生じる変形を、変形検出手段により検出し、該変形検出手段により検出された上記計測用構造体の変形量と、上記計測用構造体の荷重と変形量との相関関係を基に、上記押付側印刷用ロールの押付対象物に対する印圧を計測する印刷装置の印圧計測方法とする。
【0019】
又、上記構成において、計測用構造体として、上下方向の圧縮荷重と上下方向に圧縮される歪変形の歪量との相関関係が既知の計測用構造体を用い、変形検出手段として、上記計測用構造体に生じる歪変形の歪量を検出することができる歪センサを用いるようにする。
【0020】
同様に、上記構成において、計測用構造体として、上下方向の圧縮荷重と所要個所の上下方向の弾性変形の変形量との相関関係が既知の計測用構造体を用い、変形検出手段として、上記計測用構造体における上記所要個所の押付側印刷用ロールに近接する方向の弾性変形の変形量を、上記押付側印刷用ロールに対して相対位置が固定された所要個所に対する距離変化として検出する微小距離センサを用いるようにする。
【0021】
又、請求項4に対応して、押付対象物の上方に配置した押付側印刷用ロールと、該押付側印刷用ロールに下向きの押し付け力を付与するためのロール押し付け機構との間に計測用構造体を介装すると共に、該計測用構造体に生じる変形を検出するための変形検出手段と、計測器を備え、該計測器を、上記ロール押し付け機構により下向きの押し付け力を付与した上記押付側印刷用ロールを上記押付対象物に押し付けるようにして接触させるときに上記変形検出手段より入力される上記計測用構造体の変形量の検出信号と、上記計測用構造体の荷重と変形量との既知の相関関係を基に、上記押付側印刷用ロールの押付対象物に対する印圧を計測する機能を備えてなるものとした構成を有する印刷装置の印圧計測装置とする。
【0022】
更に、上記構成において、計測用構造体を、上下方向の圧縮荷重と上下方向に圧縮される歪変形の歪量との相関関係が既知の計測用構造体とし、且つ変形検出手段を、上記計測用構造体に生じる歪変形の歪量を検出するための歪センサとした構成とする。
【0023】
同様に、上記構成において、計測用構造体を、上下方向の圧縮荷重と所要個所の上下方向の弾性変形の変形量との相関関係が既知の計測用構造体とし、且つ変形検出手段を、上記計測用構造体における上記所要個所の押付側印刷用ロールに近接する方向の弾性変形の変形量を、上記押付側印刷用ロールに対して相対位置が固定された所要個所に対する距離変化として検出するための微小距離センサとした構成とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)押付対象物の上側に配置した押付側印刷用ロールにロール押し付け機構により下向きの押し付け力を付与して、該押付側印刷用ロールを上記押付対象物に所要の印圧で接触させるときに、上記ロール押し付け機構と上記押付側印刷用ロールとの間に介装して設けてある計測用構造体に生じる変形を、変形検出手段により検出し、該変形検出手段により検出された上記計測用構造体の変形量と、上記計測用構造体の荷重と変形量との相関関係を基に、上記押付側印刷用ロールの押付対象物に対する印圧を計測する印刷装置の印圧計測方法及び装置としてあるので、ロール押し付け機構により押付側印刷用ロールを押付対象物に押し付けて印圧を発生させるときに、押付側印刷用ロールの自重分が押付対象物に支持された後に上記ロール押し付け機構と上記押付側印刷用ロールとの間に設けてある計測用構造体に上下方向の圧縮荷重が作用することで該計測用構造体に生じる変形量を基にして上記印圧を計測することができる。
(2)上記印圧の計測の基礎となる上記計測用構造体の上下方向の圧縮荷重による変形量は、上記押付側印刷用ロールの自重による影響を受けないため、該計測用構造体の上下方向の圧縮荷重による変形量を基にして、上記押付側印刷用ロールや押付対象物の自重による荷重よりも小さい印圧を精度よく計測することができる。
(3)したがって、上記計測器により計測される印圧の計測値に基づいて上記押付側印刷用ロールのロール押し付け機構の制御を行なうようにすることで、上記押付側印刷用ロールの押付対象物に対する印圧の制御調整を精密に行なうことが可能になるため、印圧分布の差によるせん断力の発生を抑えることができて、印刷ずれを防いで印刷精度を高めることができる。これにより、電子回路を印刷により形成する場合のように、たとえば、線幅が10μm程度の細線を印刷するような精密印刷の実施に有利なものとすることができる。
(4)しかも、計測用構造体を、上下方向の圧縮荷重と変形量との相関関係が異なる計測用構造体に交換することで、印圧の計測範囲を大きく変更することも可能になる。
(5)計測用構造体として、上下方向の圧縮荷重と上下方向に圧縮される歪変形の歪量との相関関係が既知の計測用構造体を用い、変形検出手段として、上記計測用構造体に生じる歪変形の歪量を検出することができる歪センサを用いるようにする構成、又は、計測用構造体として、上下方向の圧縮荷重と所要個所の上下方向の弾性変形の変形量との相関関係が既知の計測用構造体を用い、変形検出手段として、上記計測用構造体における上記所要個所の押付側印刷用ロールに近接する方向の弾性変形の変形量を、上記押付側印刷用ロールに対して相対位置が固定された所要個所に対する距離変化として検出する微小距離センサを用いるようにする構成とすることにより、上記(1)(2)(3)(4)の効果を有する印刷装置の印圧計測方法及び装置を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の印刷装置の印圧計測方法及び装置の実施の一形態を示す概略正面図である。
【図2】図1の印圧計測装置における要部を拡大して示す側面図である。
【図3】図1の印圧計測装置の計測用構造体の一例を拡大して示す斜視図である。
【図4】図1の印圧計測装置の計測用構造体の別の例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の他の形態を示す概略正面図である。
【図6】図5の印圧計測装置における要部を拡大して示すもので、(イ)は側面図、(ロ)は(イ)の計測用構造体の部分を拡大して示す図である、
【図7】従来の印刷装置の印圧計測手法の一例として、グラビア輪転印刷機における印圧計測手法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1乃至図3は本発明の印刷装置の印圧計測方法及び装置の実施の一形態として、版胴の如き押付側印刷用ロールと、圧胴の如き押付対象物としての下部ロールを備えた形式の輪転印刷機に適用する場合の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0028】
すなわち、印刷装置の架台1上の所要個所に、上下方向に延びる左右一対のコラム3と、水平方向に延びて上記各コラム3の上端部同士を連結する梁部材4とからなる門型のフレーム2を設ける。
【0029】
水平方向に延びる版胴の如き押付側印刷用ロール5を、その両端の回転軸を介してロール保持フレーム6に回転自在に保持させると共に、該ロール保持フレーム6を、上記門型フレーム2の内側の所要高さ位置に配置して、該門型フレーム2の各コラム3に図示しない上下方向のリニアガイド機構を介して上下方向移動可能に取り付ける。
【0030】
更に、上記門型フレーム2の梁部材4において、上記押付側印刷用ロール5の軸心方向両端部と対応するロール保持フレーム6の長手方向両端部の上方となる個所に、ロール押し付け機構としてのジャッキ7を、下向きにそれぞれ設置すると共に、該各ジャッキ7の作動ロッド7aの下端部を、上記ロール保持フレーム6の長手方向両端部の上側に、それぞれ計測用構造体8を介して連結する。
【0031】
上記押付側印刷用ロール5の直下位置には、押付対象物として、たとえば、圧胴の如き下部ロール9を平行に配置して、その軸心方向両端部の回転軸を、上記架台1上に設けたブラケット10に回転自在に支持させる。これにより、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aを収縮作動させた状態では、上記各計測用構造体8を介して上記ロール保持フレーム6と一体に上記押付側印刷用ロール5を、上記下部ロール9より所要寸法上方に離反する位置まで上昇させることで、上記押付側印刷用ロール5と上記下部ロール9との間に通して配置する印刷対象としての図示しない印刷用紙を、上記押付側印刷用ロール5より離反させることができるようにして、印刷処理を停止させることができるようにしてある。
【0032】
一方、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aを伸長作動させると、上記各計測用構造体8を介して上記ロール保持フレーム6と一体に上記押付側印刷用ロール5を、上記下部ロールの上側に、上記印刷対象としての図示しない印刷用紙を介在させた状態で接する位置まで下降させることができるようにしてあり、この状態から、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aの伸長作動を更に行なわせることで、該各ジャッキ7の伸長作動力により上記各計測用構造体8と上記ロール保持フレーム6を介し上記押付側印刷用ロール5に下向きの押し付け力を作用させることで、該押し付け力により下向きに付勢される上記押付側印刷用ロール5を、上記下部ロール9へ押し付けるようにして印圧を発生させることができるようにしてある。
【0033】
上記各計測用構造体8は、その寸法、特に、上記各ジャッキ7より付与される力を上記ロール保持フレーム6まで上下方向に伝達する荷重伝達経路となる所要個所の水平断面積が、予め正確に分かる構成としてあるものとする。
【0034】
具体的には、上記各計測用構造体8は、たとえば、図3に示すように、ジャッキ7の作動ロッド7a(図1、図2参照)の先端部に取外し可能に取り付けることができるようにしてあるリング形状の上端側取付部11の周方向所要間隔の複数個所、たとえば、周方向180度間隔の2個所と、該各個所の下方に個別に配置して上記ロール保持フレーム6(図1、図2参照)に取外し可能に取り付けることができるようにしてある平板形状の下端側取付部12との間を、或る一定の水平断面積で上下方向に延びる2本の柱状部13で連結してなる構成とする。これにより、上記各ジャッキ7の伸縮作動による駆動力を、それぞれ対応する各計測用構造体8の上端側取付部11と、各柱状部13と、下端側取付部12を経て上記ロール保持フレーム6へ伝達できるようにしてある。更に、上記各柱状部13を或る一定の水平断面積とすることで、個々の柱状部13について、上下方向に作用する荷重の大きさと、該荷重によって生じる上下方向の歪変形の歪量との関係を正確に換算できるようにしてある。よって、上記各ジャッキ7と上記ロール保持フレーム6との間に各計測用構造体8を介して力が作用するときに、該作用する力の大きさと、上記各計測用構造体8の各柱状部13に生じる上下方向の歪変形の歪量との間に相関関係が得られるようにしてある。
【0035】
上記各計測用構造体8における2本ずつの柱状部13のうちの一方の柱状部13の側面には、対応する柱状部13に生じる歪変形の歪量(変形量)を検出して電位あるいは電荷に変換するための歪センサ14をそれぞれ取り付けると共に、該各歪センサ14を、チャージアンプ等のアンプ15を介し計測器16に接続して、上記各歪センサ14より対応する柱状部13の歪変形の歪量に応じて出力される電位あるいは電荷を、上記アンプ15により増幅し電圧にして上記計測器16に入力させるようにする。
【0036】
上記計測器16は、予め校正により得ておいた上記各柱状部13に生じる歪変形の歪量と、上記アンプ15より入力される電圧との相関を、たとえば、歪量と電圧の変換係数の形で備えた構成としてある。更に、上記計測器16は、予め実測あるいはFEM等による数値計算に基づいて、上記水平断面積が既知の計測用構造体8の柱状部13に作用する上下方向の荷重と、該柱状部13に生じる歪変形の歪量との相関についてのデータを得ておき、たとえば、歪量を変数として荷重を算出できるようにした関数等として備えるようにした構成としてある。これにより、上記各計測用構造体8の各柱状部13に取り付けた各歪センサ14から対応する柱状部13の歪量に応じて出力される電位あるいは電荷を上記アンプ15で増幅し電圧とされた信号が上記計測器16に入力されると、該計測器16では、上記アンプ15より入力される電圧を、上記歪量と電圧の変換係数を基に上記各計測用構造体8のそれぞれ対応する柱状部13の歪変形の歪量に換算し、更に、該換算により得られた歪量から、上記柱状部13に作用する上下方向の荷重と歪変形の歪量との相関を基に、上記各歪センサ14が取り付けてある各柱状部13に作用している荷重の大きさを算出して、該各柱状部13を有する上記各計測用構造体8全体に作用している上下方向の荷重を求めることができるようにしてある。
【0037】
なお、上記各歪センサ14は、上記各計測用構造体8の各柱状部13の微小な歪変形の変位をセンシングするという観点からすると、水晶振動タイプが好適である。しかし、前述したように上記計測器16で上記各計測用構造体8の各柱状部13に生じた歪変形の歪量を荷重に変換することで、該各計測用構造体8の各柱状部13に作用している上下方向の荷重を求めるときの精度が、上記押付側印刷用ロール5の下部ロール9に対する印圧を導出する際に必要とされる印圧計測精度に応じた精度となっていれば、水晶振動タイプ以外のいかなる形式の歪センサ14を用いてもよい。
【0038】
以上の構成としてある本発明の印刷装置の印圧計測装置を装備した印刷装置にて、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aを収縮作動させて、ロール保持フレーム6に保持した上記押付側印刷用ロール5を、上記下部ロール9の上方における該下部ロール9より所要寸法離反した位置まで引き上げて印刷処理を停止している状態のときには、上記各ジャッキ7とロール保持フレーム6との間に介装してある上記各計測用構造体8には、該各計測用構造体8の下側に吊り下げるように支持される上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分が、上下方向の引張荷重として作用するようになる。このため、上記各計測用構造体8の各柱状部13には伸び方向の歪変形が生じ、この各柱状部13に生じる伸び方向の歪変形の歪量が上記各歪センサ14で検出されることで、上記計測器16では、後述する印圧の荷重を正の値とすると、上記各計測用構造体8に作用している上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分の荷重が、負の値で検出されるようになる。
【0039】
この状態で、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aを伸長作動させて、ロール保持フレーム6に保持した押付側印刷用ロール5を下降させ、該下降する押付側印刷用ロール5が上記下部ロール9の上側に図示しない印刷用紙を介在した状態で接するようになると、上記各ジャッキ7により各計測用構造体8を介して吊り下げられていた上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分が、上記下部ロール9に受けられるようになるため、上記各計測用構造体8に作用していた上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分による上下方向の引張荷重が減少して、該各計測用構造体8の各柱状部13に生じていた延び方向の歪変形が徐々に減少し、上記各ジャッキ7の伸長作動に伴って上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分がすべて上記下部ロール9に受けられて支持されるようになる時点で、上記各計測用構造体8に作用していた上下方向の引張荷重がゼロとなり、よって、該各計測用構造体8の各柱状部13の伸び方向の歪変形が解消されることから、上記各歪センサ14より出力される電位あるいは電荷を上記アンプ15で増幅した電圧として入力させる上記計測器16で検出される荷重はゼロとなる。
【0040】
その後、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aを更に伸長作動させて、上記下部ロール9に図示しない印刷用紙を介して接触している上記押付側印刷用ロール5を、ロール保持フレーム6と一緒に下向きに付勢すると、該押付側印刷用ロール5が下向きの押し付け力により上記下部ロール9へ押し付けられることで印圧が発生する。
【0041】
この際、上記各ジャッキ7と、上記ロール保持フレーム6との間に設けてある各計測用構造体8には、上記押付側印刷用ロール5より上記下部ロール9に対して作用させる印圧の反力が、該押付側印刷用ロール5と上記ロール保持フレーム6を介して上下方向の圧縮荷重として作用するようになる。このため、上記各計測用構造体8の各柱状部13には上下両側より圧縮される方向の歪変形が生じ、この各柱状部13に生じる圧縮方向の歪変形の歪量が上記各歪センサ14で検出されることで、上記計測器16では、上記各計測用構造体8に作用している上記印圧の反力による荷重が正の値で検出されることから、該印圧の反力と等しい値として上記印圧の荷重が正の値として計測できるようになる。
【0042】
このように、本発明の印刷装置の印圧計測方法及び装置によれば、上記各ジャッキ7の作動により上記押付側印刷用ロール5を下部ロール9に印刷対象となる図示しない印刷用紙を介在させた状態で押し付けて印圧を発生させるときに、上記各ジャッキ7と上記押付側印刷用ロール5を保持したロール保持フレーム6との間に設けてある計測用構造体8の各柱状部13に生じる圧縮方向の歪変形の歪量を基にして上記印圧を計測することができる。
【0043】
更に、上記印圧の計測を行なう際、該印圧の計測の基礎となる上記各計測用構造体8の各柱状部13の圧縮方向の歪変形は、上記押付側印刷用ロール5の自重及び下部ロール9の自重による影響を受けないため、該各柱状部13の圧縮方向の歪変形の歪量を基に、上記押付側印刷用ロール5や下部ロール9の自重による荷重よりも小さい(軽い)印圧を精度よく計測することができる。
【0044】
したがって、図2に二点鎖線で示す如く、上記計測器16より入力される印圧の計測値を基に、上記押付側印刷用ロール5のロール押し付け機構となるジャッキ7に制御指令を与えるジャッキ制御装置17を設けた構成とすることにより、上記押付側印刷用ロール5の下部ロール9に対する印圧の制御調整を従来に比してより精密に行なうことが可能になるため、印刷精度を高めることができて、電子回路を印刷により形成する場合のように、たとえば、線幅が10μm程度の細線を印刷するような精密印刷の実施に有利なものとすることができる。
【0045】
しかも、上記各計測用構造体8の各柱状部13に設けた上記各歪センサ14より対応する柱状部13の歪変形の歪量に応じて出力される電位あるいは電荷を増幅する上記アンプ15の増幅率を変更することで、上記計測器16における上記印圧の計測範囲を簡易的に変更することができる。
【0046】
更には、上記各ジャッキ7とロール保持フレーム6との間に介装してある上記各計測用構造体8を、図3に示した計測用構造体8に比して柱状部13の水平断面積の異なる計測用構造体、たとえば、図4に示す如き柱状部13の水平断面積がより小さい計測用構造体8に交換することで、上記押付側印刷用ロール5と上記下部ロール9との間に生じさせる印圧がより小さい(軽い)場合にも、該印圧によって上記計測用構造体8の各柱状部13に生じる圧縮方向の歪変形の歪量を、上記歪センサ14により検出可能な歪量に適切に調整することが可能になる。
【0047】
一方、図示してないが、柱状部13の水平断面積が図3に示した計測用構造体8に比して大きい計測用構造体8に交換することで、上記押付側印刷用ロール5と上記下部ロール9との間に生じさせる印圧がより大きい(重い)場合にも、該印圧によって上記計測用構造体8の各柱状部13に生じる圧縮方向の歪変形の歪量を、上記歪センサ14により検出可能な歪量に適切に調整することが可能になる。
【0048】
したがって、上記各ジャッキ7とロール保持フレーム6との間に介装してある上記各計測用構造体8を、柱状部13の水平断面積の異なるものに適宜交換することで、印圧の計測範囲を大きく変更することが可能になる。
【0049】
次に、図5及び図6(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1乃至図3に示したと同様の構成において、各ジャッキ7と押付側印刷用ロール5を保持したロール保持フレーム6との間に、上下方向に作用する力の大きさに応じて歪変形を生じる所定の水平断面積の柱状部13を備えてなる計測用構造体8をそれぞれ介装して、該各計測用構造体8の柱状部13に生じる圧縮方向の歪変形の歪量を基に、上記押付側印刷用ロール5の下側ロール9に対する印圧を計測するようにした構成に代えて、各ジャッキ7と押付側印刷用ロール5を保持したロール保持フレーム6との間に、上下方向に作用する力の大きさに応じて上下方向に弾性変形を生じるようにしてある計測用構造体18をそれぞれ介装してなる構成として、該各計測用構造体18に生じる上下方向の弾性変形を基に、上記押付側印刷用ロール5の下部ロール9に対する印圧を計測するようにしたものである。
【0050】
詳述すると、上記計測用構造体18は、上下方向に所要寸法延びる2本の脚部19を所要間隔を隔てて平行に配置すると共に、該各脚部19の上端部同士を水平な梁部20で連結してなる門型構造とし、且つ上記梁部20の長手方向両端寄りの各脚部19近傍の2個所に上下両面からの所要深さの切欠き21をそれぞれ設けて、該各切欠き21形成個所の間に位置する梁部20の中央部を、上下方向にのみ弾性変形できるようにした弾性ヒンジ部22としてなる構成としてあり、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aの先端部に、個別の計測用構造体18の弾性ヒンジ部22を取外し可能に取り付けると共に、該各計測用構造体18の各脚部19の下端部を、上記ロール保持フレーム6に取外し可能に取り付けた構成としてある。
【0051】
更に、上記各計測用構造体18の弾性ヒンジ部22の側面には、微小距離センサ23を下向き、すなわち、上記ロール保持フレーム6に向けて取り付ける。これにより、上記各計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22が上下方向の荷重を受けるときに該荷重の大きさに応じて上記各弾性ヒンジ部22に生じる該上下方向への弾性変形の変形量(変形代)を、それぞれ対応する微小距離センサ23により、上記ロール保持フレーム6との距離の変化として検出できるようにしてある。
【0052】
上記各計測用構造体18に設けた各微小距離センサ23は、アンプ24を介し計測器25に接続して、上記各計測用構造体18の弾性ヒンジ部22の変形量に応じてそれぞれ対応する上記各微小距離センサ23より出力される信号を、上記アンプ24により増幅し電圧にして上記計測器25に入力させるようにしてある。
【0053】
上記計測器25は、予め校正により得ておいた上記各微小距離センサ23により検出される各計測用構造体18の弾性ヒンジ部22の変形量と、上記アンプ24より入力される電圧との相関を、たとえば、変形量と電圧の変換係数の形で備えた構成としてある。更に、上記計測器25は、予め実測あるいはFEM等による数値計算に基づいて、上記各計測用構造体18の弾性ヒンジ部22に作用する上下方向の荷重の大きさと、該弾性ヒンジ部22に生じる上下方向の弾性変形の変形量(撓み量)との相関について、たとえば、上記弾性ヒンジ部22のばね定数として備えるようにした構成としてある。これにより、上記各計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22に取り付けた各微小距離センサ23から対応する弾性ヒンジ部22の上下方向の弾性変形に応じて出力される電位を上記アンプ24で増幅し電圧とされた信号が上記計測器25に入力されると、該計測器25では、上記アンプ24より入力される電圧を、上記変形量と電圧の変換係数を基に上記各計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22の弾性変形の変形量に換算し、更に、該換算により得られた変形量と、上記弾性ヒンジ部22のばね定数を基に、上記各微小距離センサ23が取り付けてある各計測用構造体18の弾性ヒンジ部22に上下方向に作用している荷重の大きさを算出して、上記各ジャッキ7と上記ロール保持フレーム6との間に介装した各計測用構造体18に作用している上下方向の荷重を求めることができるようにしてある。
【0054】
なお、上記各微小距離センサ23は、たとえば、渦電流式距離センサ(渦電流式変位センサ)やレーザ式距離センサ(レーザ式変位センサ)を用いるようにすればよい。更に、上記押付側印刷用ロール5の下部ロール9に対する印圧によって上記各計測用構造体18の弾性ヒンジ部22に生じる上下方向の弾性変形の変形量を、該弾性ヒンジ部22のロール保持フレーム6との距離変化として計測することができるものであれば、いかなる形式の微小距離センサ23を用いるようにしてもよい。
【0055】
その他の構成は図1乃至図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0056】
以上の構成としてある本実施の形態の印刷装置の印圧計測装置を装備した印刷装置にて、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aを収縮作動させて、ロール保持フレーム6に保持した上記押付側印刷用ロール5を、上記下部ロール9より所要寸法上方へ離反した位置まで引き上げて、印刷処理を停止している状態のときには、上記各ジャッキ7とロール保持フレーム6との間に介装してある上記各計測用構造体18には、該各計測用構造体18を介して吊り下げられた状態で支持される上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分が、上下方向の引張荷重として作用するようになる。このため、上記各計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22には、上向きの弾性変形が生じて、その変形量が該各弾性ヒンジ部22に取り付けてある上記各微小距離センサ23により上記ロール保持フレーム6との間の距離の拡大として検出されるようになり、よって、上記計測器25では、後述する印圧の荷重を正の値とすると、上記各微小距離センサ23により検出される上記計測用構造体18の弾性ヒンジ部22の上向きの弾性変形の変形量を基に、該各計測用構造体18に作用している上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分の荷重が、負の値で検出されるようになる。
【0057】
この状態で、上記各ジャッキ7の作動ロッド7aを伸長作動させて、ロール保持フレーム6に保持した押付側印刷用ロール5を下降させ、該下降する押付側印刷用ロール5が上記下部ロール9の上側に図示しない印刷用紙を介在した状態で接するようになると、上記各ジャッキ7により各計測用構造体18を介して吊り下げられている該ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分が、上記下部ロール9に受けられるようになるため、上記各計測用構造体18に作用していた上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分による上下方向の引張荷重が減少し、上記各ジャッキ7の伸長作動に伴って上記ロール保持フレーム6及び押付側印刷用ロール5の自重分がすべて上記下部ロール9に受けられて支持されるようになる時点で、上記各計測用構造体18に作用していた上下方向の引張荷重がゼロとなり、よって、該各計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22の上向きの弾性変形が解消されることから、上記各微小距離センサ23より出力される信号に基づいて上記計測器25で検出される荷重はゼロとなる。
【0058】
その後、上記各ジャッキ7を更に伸長作動させて、上記下部ロール9に図示しない印刷用紙を介して接触している上記押付側印刷用ロール5を、ロール保持フレーム6と一緒に下向きに付勢すると、該押付側印刷用ロール5が下向きの押し付け力により上記下部ロール9へ押し付けられることで印圧が発生する。
【0059】
この際、上記各ジャッキ7と、上記ロール保持フレーム6との間に設けてある各計測用構造体18には、上記押付側印刷用ロール5より上記下部ロール9に対して作用させる印圧の反力が、該押付側印刷用ロール5と上記ロール保持フレーム6を介して上下方向の圧縮荷重として作用するようになる。このため、上記各計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22には下向き(ロール保持フレーム6に近接する方向)の弾性変形が生じ、この各弾性ヒンジ部22に生じる下向きの弾性変形の変形量が、上記各微小距離センサ23により上記ロール保持フレーム6と間の距離の減少として検出されることで、上記計測器25では、上記各弾性ヒンジ部22に生じる下向きの弾性変形の変形量と、該弾性ヒンジ部22のばね定数から、上記各計測用構造体18に作用している上記印圧の反力による荷重が検出される。よって、上記計測器25にて、上記印圧の反力と等しい値として上記印圧の荷重が計測されるようになる。
【0060】
このように、本実施の形態の印刷装置の印圧計測方法及び装置によれば、上記各ジャッキ7の作動により上記押付側印刷用ロール5を下部ロール9に図示しない印刷用紙を介在させた状態で押し付けて印圧を発生させるときに、上記各ジャッキ7と上記押付側印刷用ロール5を保持したロール保持フレーム6との間に設けてある計測用構造体18の弾性ヒンジ部22に生じるロール保持フレーム6に近接する方向の弾性変形の変形量を基にして上記印圧を計測することができる。
【0061】
更に、上記印圧の計測を行なう際、該印圧の計測の基礎となる上記各計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22のロール保持フレーム6に近接する方向の弾性変形は、上記押付側印刷用ロール5の自重及び下部ロール9の自重による影響を受けないため、該各弾性ヒンジ部22のロール保持フレーム6近接方向の弾性変形の変形量を基に、上記押付側印刷用ロール5や下部ロール9の自重による荷重よりも小さい(軽い)印圧を精度よく計測することができる。
【0062】
したがって、本実施の形態によっても、図6(イ)に二点鎖線で示す如く、上記計測器25より入力される印圧の計測値を基に、上記押付側印刷用ロール5のロール押し付け機構となるジャッキ7に制御指令を与えるジャッキ制御装置17を設けた構成とすることにより、上記押付側印刷用ロール5の下部ロール9に対する印圧の制御調整を従来に比してより精密に行なうことが可能になるため、印刷精度を高めることができて、電子回路を印刷により形成する場合のように、たとえば、線幅が10μm程度の細線を印刷するような精密印刷の実施に有利なものとすることができる。
【0063】
しかも、上記各計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22に取り付けた各微小距離センサ23より入力される信号を増幅する上記アンプ24の増幅率を変更することで、上記計測器25における上記印圧の計測範囲を簡易的に変更することができる。
【0064】
更には、上記各ジャッキ7とロール保持フレーム6との間に介装してある上記各計測用構造体18を、図6(ロ)に示した計測用構造体18に比して梁部20の所定個所の上下両面に設けてある各切欠き21の深さを変更してその間の弾性ヒンジ部22のばね定数を変更してなる計測用構造体18に交換することで、上記押付側印刷用ロール5と上記下部ロール9との間に生じさせる印圧がより小さい(軽い)場合や、該印圧がより大きい(重い)場合にも、該印圧によって上記計測用構造体18の各弾性ヒンジ部22に生じるロール保持フレーム6に近接する方向の弾性変形の変形量を、上記微小距離センサ23により検出可能な変形量に適切に調整することが可能になるため、印圧の計測範囲を大きく変更することが可能になる。
【0065】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、版胴の如き押付側印刷用ロール5を、下向きに付勢した状態で、その下方に配置した押付対象物としての圧胴の如き下部ロール9に図示しない印刷用紙を介して上方から接触させる場合の適用例を示したが、押付側印刷用ロール5を版胴として、その下方に配置した押付対象物となるブランケット胴に直接接触させる場合や、押付対象物として平板状の印刷対象に直接接触させる場合に適用してもよい。
【0066】
又、押付側印刷用ロール5を圧胴として、その下方に配置した押付対象物となる版胴やブランケット胴に印刷用紙等の印刷対象を介して上方より接触させる場合に適用してもよい。
【0067】
更に、押付側印刷用ロール5をブランケット胴として、その下方に配置した押付対象物となる版胴に上方より直接接触させる場合、押付対象物となる圧胴に印刷用紙等の印刷対象を介して上方より接触させる場合、更には、押付対象物となる平板状の版や印刷対象に上方より直接接触させる場合に適用してもよい。
【0068】
更に又、印刷装置にて、押付側印刷用ロール5を、その下方に配置してある所要の押付対象物に印圧を作用させながら押し付けるように接触させて印刷処理を実施する場合であれば、押付側印刷用ロール5と押付対象物の組み合わせはいかなるものであってもよい。
【0069】
印刷対象は印刷用紙以外のものであってもよい。
【0070】
図1乃至図3の実施の形態において、計測用構造体8は、上下方向の荷重の伝達経路となる所要個所に水平断面積が正確に分かる部分を備えて、少なくとも上下方向からの圧縮荷重が作用するときに該圧縮荷重の大きさと、上記水平断面積が正確に分かる部分に生じる圧縮方向の歪変形の歪量に相関関係が得られるようにしてあり、且つ検出すべき印圧の荷重によって使用する歪センサ14の検出能に応じた歪量の歪変形を生じさせることができるようにしてあれば、柱状部13の本数を変更したり、太さを変更する等、図示した以外のいかなる構成の計測用構造体8を採用してもよい。
【0071】
又、歪センサ14は、上記計測用構造体8における上記水平断面が正確に分かる部分に生じる少なくとも圧縮方向の歪変形の歪量を検出できるようにしてあれば、計測用構造体8の構成に応じて形状やサイズ、更には、計測用構造体8に対する取付位置を適宜変更してもよい。
【0072】
図5及び図6(イ)(ロ)の実施の形態において、計測用構造体18は、少なくとも上下方向からの圧縮荷重を受けるときに、ロール保持フレーム6に近接する方向へ弾性変形可能な部分を備え、且つ上記圧縮荷重の大きさと、該荷重により上記ロール保持フレーム6に近接する方向へ弾性変形する部分の変形量に相関関係が得られるようにしてあり、且つ検出すべき印圧の荷重によって使用する微小距離センサ23の検出能に応じた変形量の弾性変形を生じさせることができるようにしてあれば、図示した以外のいかなる構成の計測用構造体18を採用してもよい。
【0073】
又、微小距離センサ23は、上記計測用構造体18における上記上下方向の圧縮荷重によりロール保持フレーム6に近接する方向へ弾性変形する部分の変形量を検出できるようにしてあれば、いかなる形式の微小距離センサ23を用いてもよく、又、微小距離センサ23の形式に応じて設置個所を適宜変更してもよい。
【0074】
上記各実施の形態において、ロール保持フレーム6は、各ジャッキ7の伸縮作動力を、押付側印刷用ロール5へ伝えて、該押付側印刷用ロール5を、その下方に配置してある所要の押付対象物に所要の印圧で押し付けるように接触させる位置から、該押付対象物より所要寸法上方へ離反する位置までの所定の昇降範囲で上下動させることができるようにしてあれば、図示した以外の形状のロール保持フレーム6を用いてもよい。又、上記押付側印刷用ロール5の形式に応じて、上記ロール保持フレーム6に、上記押付側印刷用ロール5を回転駆動するための駆動機構を備えるようにしてもよい。
【0075】
押付側印刷用ロール5を所要の押付対象物に押し付けるためのロール押し付け機構としては、ロール保持フレーム6の長手方向における上記押付側印刷用ロール5の軸心方向両端部と対応する2個所に取り付けたジャッキ7を例示したが、上記押付側印刷用ロール5を上記所定の昇降範囲で昇降させることができると共に、該押付側印刷用ロール5を所要の押付対象物に対し所要の印圧で密着させることができるようにしてあれば、ジャッキ7の設置個所や設置数は適宜変更してもよく、更には、ジャッキ以外のいかなる形式のロール押し付け機構を採用してもよい。
【0076】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
5 押付側印刷用ロール
7 ジャッキ(ロール押し付け機構)
8 計測用構造体
9 下部ロール(押付対象物)
14 歪センサ(変形検出手段)
16 計測器
18 計測用構造体
23 微小距離センサ(変形検出手段)
25 計測器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押付対象物の上側に配置した押付側印刷用ロールにロール押し付け機構により下向きの押し付け力を付与して、該押付側印刷用ロールを上記押付対象物に所要の印圧で接触させるときに、上記ロール押し付け機構と上記押付側印刷用ロールとの間に介装して設けてある計測用構造体に生じる変形を、変形検出手段により検出し、該変形検出手段により検出された上記計測用構造体の変形量と、上記計測用構造体の荷重と変形量との相関関係を基に、上記押付側印刷用ロールの押付対象物に対する印圧を計測することを特徴とする印刷装置の印圧計測方法。
【請求項2】
計測用構造体として、上下方向の圧縮荷重と上下方向に圧縮される歪変形の歪量との相関関係が既知の計測用構造体を用い、変形検出手段として、上記計測用構造体に生じる歪変形の歪量を検出することができる歪センサを用いるようにする請求項1記載の印刷装置の印圧計測方法。
【請求項3】
計測用構造体として、上下方向の圧縮荷重と所要個所の上下方向の弾性変形の変形量との相関関係が既知の計測用構造体を用い、変形検出手段として、上記計測用構造体における上記所要個所の押付側印刷用ロールに近接する方向の弾性変形の変形量を、上記押付側印刷用ロールに対して相対位置が固定された所要個所に対する距離変化として検出する微小距離センサを用いるようにする請求項1記載の印刷装置の印圧計測方法。
【請求項4】
押付対象物の上方に配置した押付側印刷用ロールと、該押付側印刷用ロールに下向きの押し付け力を付与するためのロール押し付け機構との間に計測用構造体を介装すると共に、該計測用構造体に生じる変形を検出するための変形検出手段と、計測器を備え、該計測器を、上記ロール押し付け機構により下向きの押し付け力を付与した上記押付側印刷用ロールを上記押付対象物に押し付けるようにして接触させるときに上記変形検出手段より入力される上記計測用構造体の変形量の検出信号と、上記計測用構造体の荷重と変形量との既知の相関関係を基に、上記押付側印刷用ロールの押付対象物に対する印圧を計測する機能を備えてなるものとした構成を有することを特徴とする印刷装置の印圧計測装置。
【請求項5】
計測用構造体を、上下方向の圧縮荷重と上下方向に圧縮される歪変形の歪量との相関関係が既知の計測用構造体とし、且つ変形検出手段を、上記計測用構造体に生じる歪変形の歪量を検出するための歪センサとした請求項4記載の印刷装置の印圧計測装置。
【請求項6】
計測用構造体を、上下方向の圧縮荷重と所要個所の上下方向の弾性変形の変形量との相関関係が既知の計測用構造体とし、且つ変形検出手段を、上記計測用構造体における上記所要個所の押付側印刷用ロールに近接する方向の弾性変形の変形量を、上記押付側印刷用ロールに対して相対位置が固定された所要個所に対する距離変化として検出するための微小距離センサとした請求項4記載の印刷装置の印圧計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11499(P2011−11499A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159037(P2009−159037)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】