説明

印刷装置

【課題】エコロジーを考慮し、消費電力の無駄を無くし、印刷速度も考慮した印刷装置、及び印刷方法を提供する。
【解決手段】熱定着手段27を有する印刷装置1であって、印刷速度を可変する印刷速度可変手段と、印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する手段と、上記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、上記印刷データの印刷処理に要する消費電力が最も少なくなる印刷速度を設定する印刷速度設定手段57と、この印刷速度設定手段によって設定した印刷速度に基づいて前記印刷データの印刷処理を行う印刷処理手段56とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱定着装置を使用する印刷装置、及び熱定着装置を使用する印刷装置による印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、地球環境の保持が世界的に叫ばれ、地球温暖化防止会議を中心としてCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出規制が実現化に向かっている。このような状況において、印刷装置においてもCO2削減に対応する取り組みが行われている。特に、印刷装置に使用される熱定着装置は消費電力が大きく、印刷装置の消費電力削減のためには熱定着装置による消費電力を削減することが重要である。
【0003】
例えば、特許文献1は、電子写真式画像記録装置において、コピー量や記録紙の種類により、用途や使用目的に応じて、必要最低限の消費電力で記録を行うことのできる手段を提供する発明である。例えば、オペレータが用途に応じて省エネモードを選択し、スループットを切換えることにより、定着ヒータやメインモータ等の消費電力を節減し、或いは薄紙モードを選択することにより定着ヒータの消費電力を節減する発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−72678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年印刷装置が高速化しており、大量の印刷を高速に行う制御が行われている。このため、熱定着装置の節電制御を印刷枚数に関係なく行う場合、無駄な消費電力を使用することがあり、消費電力の削減の観点からは望ましくない。ただ、一方において、印刷出力を急ぐ場合もある。
【0006】
そこで、本発明はエコロジーを考慮し、消費電力の削減を図ると共に、印刷速度も考慮した印刷装置、及び印刷装置の印刷方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は第1の発明によれば、熱定着手段を有する印刷装置において、印刷速度を可変する印刷速度可変手段と、印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する手段と、前記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、前記印刷データの印刷処理に要する消費電力が最も少なくなる印刷速度を設定する印刷速度設定手段と、該印刷速度設定手段によって設定した印刷速度に基づいて前記印刷データの印刷処理を行う印刷処理手段と、を有する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0008】
また、上記課題は第2の発明によれば、熱定着手段を有する印刷装置において、印刷速度を可変する印刷速度可変手段と、印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する手段と、前記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、前記印刷データの印刷処理に要する印刷時間が最も短くなる印刷速度を設定する印刷速度設定手段と、該印刷速度設定手段によって設定した印刷速度に基づいて前記印刷データの印刷処理を行う印刷処理手段とを有する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0009】
また、上記課題は第3の発明によれば、印刷速度設定手段は、用紙1枚に画像データを印刷するために要する熱量を設定する第1の設定手段と、熱定着処理が可能な温度まで前記熱定着手段を加熱する熱量を設定する第2の設定手段と、前記熱定着手段からの自然放熱を計算する計算手段と、前記第1の設定手段によって設定された熱量と、前記第2の設定手段によって設定された熱量と、前記計算手段によって計算された熱量を加算し、該加算結果を前記用紙の印刷枚数によって割算して得られた熱量が最も少なくなる印刷速度を設定する第3の設定手段とを有する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0010】
また、上記課題は第4の発明によれば、熱定着手段を有する印刷装置の印刷方法において、印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する処理と、前記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、前記印刷データの印刷処理に要する消費電力が最も少なくなる印刷速度を設定する印刷速度設定処理と、該印刷速度設定処理によって設定した印刷速度に基づいて、前記装置の印刷速度を可変し、前記印刷データに基づく印刷処理とを行う印刷装置の印刷方法を提供することによって達成できる。
【0011】
また、上記課題は第5の発明によれば、熱定着手段を有する印刷装置の印刷方法において、印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する処理と、前記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、前記印刷データの印刷処理に要する印刷時間が最も短くなる印刷速度を設定する印刷速度設定処理と、該印刷速度設定処理によって設定した印刷速度に基づいて前記印刷データの印刷処理とを行う印刷装置の印刷方法を提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、印刷枚数に対応して消費電力を低減する印刷処理、又は印刷時間を短くする処理を選択でき、消費電力を低減する場合には今日の地球環境の保護に資することとなり、印刷時間を短くする処理を選択する場合には、印刷処理を急ぐ場合において有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1の印刷装置としてのプリンタ装置のシステム構成図である。
【図2】本実施形態におけるプリンタ装置(印刷装置)の内部構成を説明する断面図である。
【図3】ベルト式熱定着装置の構成を具体的に示す図である。
【図4】実施形態1の処理動作を説明するフローチャートであり、データ描画部の処理を説明するフローチャートである。
【図5】実施形態1の処理動作を説明するフローチャートであり、エコレベル印刷制御部の処理を説明するフローチャートである。
【図6】実施形態2の印刷装置としてのプリンタ装置のシステム構成図である。
【図7】印刷速度に対する熱量の計算例を示す図である。
【図8】印刷枚数と印刷速度の関係を示すテーブルである。
【図9】本実施形態の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図2は、本実施形態におけるプリンタ装置(印刷装置)の内部構成を説明する断面図である。同図に示すプリンタ装置1は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラープリンタ装置であり、4つの画像形成部2、中間転写ベルトユニット3、給紙部4、及び両面印刷用搬送ユニット5で構成されている。
【0015】
上記4つの画像形成部2は、同図の右から左へ4個の画像形成ユニット6(6M、6C、6Y、6K)を多段式に並設した構成からなる。上記4個の画像形成ユニット6のうち上流側(図の右側)の3個の画像形成ユニット6M、6C、及び6Yは、それぞれ減法混色の三原色であるマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色トナーによるモノカラー画像を形成し、画像形成ユニット6Kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。
【0016】
上記の各画像形成ユニット6は、トナー容器に収納されたトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下ブラック(K)用の画像形成ユニット6Kを例にしてその構成を説明する。
【0017】
画像形成ユニット6Kは、最下部に感光体ドラム7を備えている。この感光体ドラム7は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。この感光体ドラム7の周面近傍を取り巻いて、クリーナ8、帯電ローラ9、印字ヘッド11、及び現像器12の現像ローラ13が配置されている。
【0018】
現像器12は、上部のトナー容器に同図にはM、C、Y、Kで示すようにマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のいずれかのトナーを収容し、中間部には下部へのトナー補給機構を備え、下部には側面開口部に上述した現像ローラ13を備え、内部にトナー撹拌部材、現像ローラ13にトナーを供給するトナー供給ローラ、現像ローラ13上のトナー層を一定の層厚に規制するドクターブレード等を備えている。
【0019】
中間転写ベルトユニット3は、本体装置のほぼ中央で図の左右のほぼ端から端まで扁平なループ状になって延在する無端状の転写ベルト14と、この転写ベルト14を掛け渡されて転写ベルト14を図の反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ15と従動ローラ16を備えている。
【0020】
上記の転写ベルト14は、トナー像を直接ベルト面に転写(一次転写)されて、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への転写位置まで搬送するので、ここではユニット全体を中間転写ベルトユニットとしている。
この中間転写ベルトユニット3は、上記扁平なループ状の転写ベルト14のループ内にベルト位置制御機構17を備えている。ベルト位置制御機構17は、転写ベルト14を介して感光体ドラム7の下部周面に押圧する導電性発泡スポンジから成る一次転写ローラ18を備えている。
【0021】
ベルト位置制御機構17は、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びイエロー(Y)の3個の画像形成ユニット6M、6C、及び6Yに対応する3個の一次転写ローラ18を鉤型の支持軸を中心に同一周期で回転移動させ、ブラック(K)の画像形成ユニット6Kに対応する1個の一次転写ローラ18を上記3個の一次転写ローラ18の周期と異なる回転移動周期で回転移動させて転写ベルト14を感光体ドラム7から離接させ、フルカラーモード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14に当接)、モノクロモード(画像形成ユニット6Kに対応する一次転写ローラ18のみが転写ベルト14に当接)、及び全非転写モード(4個全部の一次転写ローラ18が転写ベルト14から離れる)に切換える。
【0022】
上記の中間転写ベルトユニット3には、上面部のベルト移動方向最上流側の画像形成ユニット6Mの更に上流側に、ベルトクリーナユニットが配置され、下面部のほぼ全面に沿い付けるように平らで薄型の廃トナー回収容器19が着脱自在に配置されている。
給紙部4は、上下2段に配置された2個の給紙カセット21を備え、2個の給紙カセット21の給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ22、給送ローラ23、捌きローラ24、待機搬送ローラ対25が配置されている。待機搬送ローラ対25の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト14を介して従動ローラ16に圧接する二次転写ローラ26が配設されて、用紙への二次転写部を形成している。
【0023】
この二次転写部の下流(図では上方)側には、熱定着手段としてのベルト式熱定着装置27が配置され、ベルト式熱定着装置27の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式熱定着装置27から搬出する搬出ローラ対28、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー29に排紙する排紙ローラ対31が配設されている。
【0024】
両面印刷用搬送ユニット5は、上記搬出ローラ対28と排紙ローラ対31との中間部の搬送路から図の右横方向に分岐した開始返送路32a、それから下方に曲がる中間返送路32b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる終端返送路32c、及びこれらの返送路の途中に配置された4組の返送ローラ対33a、33b、33c、33dを備えている。上記終端返送路32cの出口は、給紙部4の下方の給紙カセット21に対応する待機搬送ローラ対25への搬送路に連絡している。
【0025】
また、本例において中間転写ベルトユニット3の上面部には、クリーニング部35、取り込みローラ36が配置されている。クリーニング部35は、転写ベルト14の上面に当接して廃トナーを擦り取って除去し、取り込みローラ36はクリーニング部35が除去した廃トナーを引き継いで、図示を省略したベルトクリーナユニットの一時貯留部に溜め込み、その溜め込まれた廃トナーを搬送スクリューにより落下筒内を上部まで搬送し、落下筒を介して廃トナー回収容器19に送り込んでいる。
【0026】
また、上記のクリーニング部35を適度の圧力で転写ベルト14に圧接させるため、中間転写ベルトユニット3側には、下方から転写ベルト14をクリーニング部35に向けて押圧する押圧ローラ37が設けられている。
上記構成において、図3は上記ベルト式熱定着装置27の構成をより具体的に説明する図である。ベルト式熱定着装置27は加熱ローラ40と、定着ローラ41と、加熱ローラ40と定着ローラ41間に掛け渡された定着ベルト42、及び加圧ローラ43で構成されている。
【0027】
加熱ローラ40にはヒータ45が内蔵されており、本例においてはヒータ45として、ハロゲンヒータが内蔵されている。また、加熱ローラ40側の定着ベルト42の表面には、平常時において、つまり定着ベルト42がベルト寄りを発生していない状態において、例えばベルトの中央に対応する位置にサーミスタ46が配設され、加圧ローラ43にもサーミスタ47が配設されている。
【0028】
そして、定着ローラ41と加圧ローラ43間を挟持されつつ上方に搬送される用紙に付着したトナー像を、所定温度(例えば、180℃)で熔融し、用紙に熱定着させる。尚、サーミスタ46、47は上記定着ローラ41を所定温度に設定するための構成であり、サーミスタ46、47の検知信号に従って上記ヒータ45の駆動制御を行い、上記定着ローラ41を所定温度に設定する。
【0029】
図1は、上記構成のプリンタ装置1の制御システムを説明する図である。プリンタ装置1はインターフェースコントローラ(以下、I/Fコントローラで示す)55、プリンタコントローラ56、及びエンジンコントローラ57等で構成され、有線LANやUSBインターフェースを介してパーソナルコンピュータ(PC)等のホスト機器58から送信された印刷データはI/Fコントローラ55の制御によって、例えばSDRAM59に格納される。また、I/Fコントローラ55には不揮発性メモリ50やハードディスク(HDD)60も接続されている。不揮発性メモリ50には後述するテーブルが構築されている。
【0030】
プリンタコントローラ56は、I/Fコントローラ55から供給される印刷データをビデオデータに変換し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の対応する印字ヘッド11Y、11M、11C、11Kにビデオデータを送信する。
【0031】
また、プリンタコントローラ56は前述のベルト式熱定着装置27に配設されたサーミスタ46から加熱ローラ40の温度検知信号を受信し、サーミスタ47から加圧ローラ43の温度検知信号を受信する。また、ベルト式熱定着装置27に設けられたヒータ45には上記温度検知信号に従ってプリンタコントローラ56から出力される制御信号に基づく電源供給が電源供給部62から行われている。
【0032】
エンジンコントローラ57は前述の中間転写ベルトユニット3、給紙部4、及び両面印刷用搬送ユニット5の駆動制御を行い、各種駆動信号を対応する装置に出力する。尚、上記電源供給部62にはメインスイッチ63を介してAC100Vの商用電源が接続されている。
【0033】
上記不揮発性メモリ50には印刷枚数と印刷速度に対応する消費熱量を記憶したテーブル51と、印刷枚数と印刷速度に対応する印刷時間を記憶したテーブル52が構築されている。図4は印刷枚数と印刷速度に対応する消費熱量を記憶したテーブル51の構成を示す図である。
【0034】
このテーブル51の構成は、印刷枚数として10枚、20枚、・・・140枚のデータに対応して、印刷速度10ppm、20ppm、・・・60ppmが設定され、夫々の組み合わせにおいて、消費する熱量を記憶する。尚、ウォームアップ時間、前回転時間、後回転時間、1枚当たりの印刷時間のデータは上記印刷速度に対応した所定数値を使用し、ウォームアップ時熱量、用紙熱量、及び自然熱量は上記数値に基づいて計算したものである。
【0035】
例えば、同図に示す例では、印刷速度が10ppmの場合、印刷枚数が10枚であればプリンタ装置1は“3460”の熱量を消費し、印刷枚数が20枚であれば“6920”の熱量を消費し、印刷枚数が30枚であれば“10380”の熱量を消費することを示す。尚、他の組み合わせの場合も、同図に示す通りである。
【0036】
ここで、上記ウォームアップ時熱量、用紙熱量、及び自然熱量の計算方法、及び各組み合わせの場合の消費熱量の計算方法の一例を説明する。前述のように、ベルト式熱定着装置27は用紙に転写されたトナー像に熱と圧力を加えて溶解し、用紙に定着させることで印字を行っている。この為、用紙にトナー像を溶解するための熱を付与する必要があり、その熱量は印刷速度に関わらず一定の熱量を与える必要がある。図5は概念図であり、例えば一定の熱量(例えば、熱量“100”)を用紙に付与する際、低速の30ppmの印刷速度では2秒間用紙が定着ローラ41に圧接する間に付与する必要があり、高速の60ppmの印刷速度では1秒間用紙が定着ローラ41に圧接する間に同じ熱量を付与する必要がある。
【0037】
このため、用紙に一定の熱量を与えるには、ベルト式熱定着装置27は上記以上の熱量を蓄えておく必要がある。しかし、その熱量は上記のように印刷速度によって異なり、例えば図6に示すように、低速の30ppmの印刷速度では少ない熱量でよく、高速の60ppmの印刷速度では大きな熱量が必要となる。
【0038】
以下、具体的な数値を使用し、消費熱量の計算方法を説明する。図7に示す例は、印刷速度が60ppmの場合と30ppmの場合であり、印刷速度が60ppmの場合を同図(a)に示し、印刷速度が30ppmの場合を同図(b)に示す。また、印刷枚数は5枚と100枚の場合について説明する。
【0039】
ここで、用紙1枚を印刷するために必要な熱量を“100”とし、前述の加熱ローラ40の加熱量を(200/秒)とし、高速の場合のウォームアップ時間を(34秒)、低速の場合のウォームアップ時間を(21秒)とし、自然放熱は高速な場合50/秒とし、低速な場合45/秒として計算する。この場合、高速の60ppmで5枚印刷した場合、消費熱量は“7550”となる。すなわち、この場合ウォームアップ時間が34秒であり、毎秒“200”の熱量で加熱するため“6800”(200×34)の加熱熱量が必要あり、更に5枚の用紙加熱分の熱量“500”(1×5×100)と、自然放熱分の熱量“250”(5×50)の加算値なる。
【0040】
一方、低速の30ppmの場合、5枚の印刷に要する消費熱量は“5150”となる。すなわち、この場合ウォームアップに21秒係り、毎秒“200”の熱量で加熱するため“4200”(200×21)の加熱熱量が必要あり、更に5枚の用紙加熱分の熱量“500”(2×5×50)と、自然放熱分の熱量“450”(2×5×45)の加算値なる。したがって、この場合、消費熱量から考えると、5枚の印刷処理を行う場合、低速の方が有利である。
【0041】
同様に、100枚の印刷処理を行う場合も計算を行うと、高速の場合“21800”の消費熱量となり、低速の場合“23200”の消費熱量となる。この場合、高速の方が有利である。
【0042】
したがって、上記計算を各印刷枚数と印刷速度の組み合わせにおいて行うことによって、前述の図4に示すテーブルが作成される。また、同図に示す太枠部分は、印刷枚数に対して最も消費熱量が少ない範囲を示す。
【0043】
一方、図8に示すテーブルは、印刷枚数と印刷速度に対する印刷速度のデータであり、前述同様、ウォームアップ時間、前回転時間、後回転時間、1枚当たりの印刷時間のデータは上記印刷速度に対応する数値を使用し、印刷枚数に対応する印刷時間を計算したものである。また、同図に示す太枠部分は、対応する印刷枚数に対して最も印刷待ち時間が短い範囲を示す。
【0044】
以上の構成において、以下に本例の処理動作を説明する。
図9は本例の処理動作を説明するフローチャートである。先ず、印刷モードの設定を行い、印刷ジョブが入力しているか判断する(ステップ(以下、Sで示す)1)。ここで、印刷モードの設定は、例えばエコロジー重視モード又は印刷時間重視モードの設定であり、エコロジー重視モードの場合、消費熱量、即ち消費電力が最も少ない印刷処理を選択するものである。一方、印刷時間重視モードの場合、印刷処理の待ち時間を重視し、最も待ち時間の少ない印刷処理を選択するものである。
【0045】
次に、プリンタ装置1は印刷データが不図示のホスト機器から入力していると(S1がYES)、印刷ジョブの解析処理を行う(S2)。尚、ホスト機器から印刷データが入力していない場合(S1がNO)、印刷データの入力を待つ。
【0046】
ここで、印刷データが入力していれば、印刷ジョブの解析処理によって印刷ジョブに含まれる印刷総頁数の情報を取得する(S3)。例えば、印刷ジョブのヘッダに記述された印刷総頁数の情報を読み出し、CPUに通知する。
【0047】
次に、取得した印刷総頁数の情報に基づいて前述の不揮発性メモリ50に構築されたテーブルを参照する。例えば、前述のエコロジー重視モードが選択されている場合、図4に示す印刷枚数と印刷速度に対する消費熱量のテーブルを参照する。一方、印刷時間重視モードが選択されている場合、図5に示す印刷枚数と印刷速度に対する印刷時間のテーブルを参照する。
【0048】
次に、上記テーブルに記憶されたデータに基づいて、印刷速度を設定する(S5)。例えば、印刷モードとしてエコロジー重視モードが選択され、図4に示すテーブルが参照された場合、印刷枚数に従って対応する印刷速度が設定される。例えば、前述の解析の結果印刷総頁数が10頁(10枚)であれば、図4に示すテーブルから最も消費熱量の少ない印刷速度を設定する。具体的には、印刷枚数10枚に対応する、図4に示すテーブルの太枠内に登録された消費熱量の最も小さい印刷速度を設定する。この場合、印刷速度は消費熱量が最も小さい“3460”に対応する印刷速度10ppmの設定が行われる。
【0049】
同様に、例えば印刷総頁数が20頁(20枚)の場合、図4に示すテーブルから最も消費熱量が小さくなる印刷速度20ppmが設定される。さらに、印刷総頁数が30頁又は40頁の場合、図4に示すテーブルから最も消費熱量が小さくなる印刷速度30ppmが設定される。以下、同図に示す通りである。
【0050】
次に、上記設定に従って印刷速度の設定が行われ、用紙搬送機構は上記設定に従って用紙を搬送し、画像形成部2において用紙への印刷処理が行われる(S6)。その後、印刷ジョブの処理が完了したか判断し(S7)、印刷ジョブが全て完了していなければ(S7がNO)、印刷処理を継続し、印刷ジョブが全て完了すると(S7がYES)、印刷処理を終了する。
【0051】
以上のように処理することによって、印刷ジョブに含まれる印刷枚数に基づいて、最も消費熱量の小さい印刷処理を行うことができ、プリンタ装置1の消費電力を削減することができる。
【0052】
一方、印刷時間重視モードを選択した場合には、印刷処理の待ち時間を最も短くすることができる。例えば、緊急な印刷処理が必要な場合には当該印刷時間重視モードの選択し行う。この場合の処理も基本的に前述の図9に示すフローチャートの処理と同じである。
【0053】
すなわち、先ず印刷データが不図示のホスト機器から入力しているか判断し(S1)、印刷データが入力していれば(S1がYES)、印刷ジョブの解析処理を行う(S2)。そして、印刷ジョブに含まれる印刷総頁数の情報を取得し(S3)、この情報に基づいて不揮発性メモリ50に構築されたテーブルを参照する。
【0054】
この場合、印刷時間重視モードが選択されており、図8に示す印刷枚数と印刷速度に対する印刷時間のテーブルが参照され、印刷速度の設定を行う(S5)。例えば、前述の解析の結果印刷総頁数が5頁(5枚)であれば、図8に示すテーブルから最も印刷時間の短い太枠内の33.0sに対応する印刷速度30ppmが設定される。
【0055】
同様に、例えば印刷総頁数が10頁(10枚)の場合、図8に示すテーブルから最も印刷時間が短くなる印刷速度40ppmが設定される。さらに、印刷総頁数が15頁又は20頁の場合、図8に示すテーブルから最も印刷時間が短くなる印刷速度50ppmが設定される。以下、同図に示す通りである。
【0056】
以後、上記処理に従って印刷速度が設定され、以後前述と同様、用紙への印刷処理が行われる(S6、S7)。このように処理することにより、印刷ジョブに含まれる印刷枚数に基づいて、最も印刷時間の短い印刷処理を行うことができ、例えば緊急に印刷出力を得たい場合等において便利な印刷方法となる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・プリンタ装置
2・・・画像形成部
3・・・中間転写ベルトユニット
4・・・給紙部
5・・・両面印刷用搬送ユニット
6、6M、6C、6Y、6K・・画像形成ユニット
7・・・感光体ドラム
8・・・クリーナ
9・・・帯電ローラ
11、11Y、11M、11C、11K・・印字ヘッド
12・・現像器
13・・現像ローラ
14・・転写ベルト
15・・駆動ローラ
16・・従動ローラ
17・・ベルト位置制御機構
18・・一次転写ローラ
19・・廃トナー回収容器
21・・給紙カセット
22・・用紙取出ローラ
23・・給送ローラ
24・・捌きローラ
25・・待機搬送ローラ対
27・・ベルト式熱定着装置
28・・搬出ローラ対
29・・排紙トレー
31・・排紙ローラ対
32a・・開始返送路
32b・・中間返送路
32c・・終端返送路
33a、33b、33c、33d・・返送ローラ対
35・・クリーニング部
36・・取り込みローラ
37・・押圧ローラ
40・・加熱ローラ
41・・定着ローラ
42・・定着ベルト
43・・加圧ローラ
46、47・・サーミスタ
50・・不揮発性メモリ
51、52・・テーブル
55・・I/Fコントローラ
56・・プリンタコントローラ
57・・エンジンコントローラ
58・・ホスト機器
59・・SDRAM
60・・ハードディスク
62・・電源供給部
63・・メインスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱定着手段を有する印刷装置において、
印刷速度を可変する印刷速度可変手段と、
印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する手段と、
前記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、前記印刷データの印刷処理に要する消費電力が最も少なくなる印刷速度を設定する印刷速度設定手段と、
該印刷速度設定手段によって設定した印刷速度に基づいて前記印刷データの印刷処理を行う印刷処理手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
熱定着手段を有する印刷装置において、
印刷速度を可変する印刷速度可変手段と、
印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する手段と、
前記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、前記印刷データの印刷処理に要する印刷時間が最も短くなる印刷速度を設定する印刷速度設定手段と、
該印刷速度設定手段によって設定した印刷速度に基づいて前記印刷データの印刷処理を行う印刷処理手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
印刷速度設定手段は、
用紙1枚に画像データを印刷するために要する熱量を設定する第1の設定手段と、
熱定着処理が可能な温度まで前記熱定着手段を加熱する熱量を設定する第2の設定手段と、
前記熱定着手段からの自然放熱を計算する計算手段と、
前記第1の設定手段によって設定された熱量と、前記第2の設定手段によって設定された熱量と、前記計算手段によって計算された熱量を加算し、該加算結果を前記用紙の印刷枚数によって割算して得られた熱量が最も少なくなる印刷速度を設定する第3の設定手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
熱定着手段を有する印刷装置の印刷方法において、
印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する処理と、
前記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、前記印刷データの印刷処理に要する消費電力が最も小さくなる印刷速度を設定する印刷速度設定処理と、
該印刷速度設定処理によって設定した印刷速度に基づいて、前記装置の印刷速度を可変し、前記印刷データに基づく印刷処理を行う、
ことを特徴とする印刷装置の印刷方法。
【請求項5】
熱定着手段を有する印刷装置の印刷方法において、
印刷データに含まれる印刷枚数の情報を取得する処理と、
前記印刷データに含まれる印刷枚数の情報に基づいて、前記印刷データの印刷処理に要する印刷時間が最も短くなる印刷速度を設定する印刷速度設定処理と、
該印刷速度設定処理によって設定した印刷速度に基づいて前記印刷データの印刷処理を行う、
ことを特徴とする印刷装置の印刷方法。

【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−58629(P2012−58629A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203921(P2010−203921)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】