説明

印刷装置

【課題】印刷ヘッドの温度上昇を抑制する。
【解決手段】印刷装置は、印刷媒体に対して相対的に移動してインク滴を吐出する印刷ヘッドと、印刷ヘッドに対向して配置され、送風口を有するプラテンと、送風口からプラテンに向けて送風する送風部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置が有する印刷ヘッドの昇温抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷装置として、インク吐出機構(ピエゾ式プリンターにおけるピエゾ素子や、サーマル式プリンターにおけるヒーター等)を駆動させてインクを吐出するインクジェット式プリンターが用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−124715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット式プリンターでは、印刷速度や印刷解像度の向上に伴って、インク吐出機構やインク吐出機構を駆動させるための制御回路の負荷が大きくなる。それゆえ、インク吐出機構や制御回路の温度が上昇して、インク吐出機構および制御回路等を収容する印刷ヘッド全体が昇温する。印刷ヘッドが昇温すると、インク吐出機構や制御回路が破壊されたり、制御回路から正確な波形の信号が出力されずに適切な量のインク滴を吐出できなくなるおそれがある。しかしながら、従来では、印刷ヘッドの昇温の抑制に対して十分な工夫がなされていないのが実情であった。なお、このような問題は、インクジェット式プリンターに限らず、印刷ヘッドを有する任意の印刷装置に共通する問題であった。
【0005】
本発明は、印刷ヘッドの温度上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]印刷装置であって、印刷媒体に対して相対的に移動してインク滴を吐出する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに対向して配置され、送風口を有するプラテンと、前記送風口から前記印刷ヘッドに向けて送風する送風部と、を備える、印刷装置。
適用例1の印刷装置では、送風口から印刷ヘッドに向けて送風するので、印刷ヘッドに対して風を当てることができる。したがって、印刷ヘッドから熱を奪う(熱交換する)ことができ、印刷ヘッドの昇温を抑制することができる。
【0008】
[適用例2]適用例1に記載の印刷装置において、前記印刷ヘッドは、前記インク滴の吐出動作に関連して昇温する昇温領域を有し、前記送風部は、前記昇温領域に風が当たるように送風する、印刷装置。
このような構成により、インク滴の吐出動作に関連して昇温する昇温領域に風を当てることができるので、印刷ヘッドにおいて昇温領域を除く他の領域に風を当てる場合に比べて、印刷ヘッド全体の温度の上昇をより抑制することができる。
【0009】
[適用例3]適用例2に記載の印刷装置において、前記印刷ヘッドは、前記インク滴を吐出するノズルが形成されたノズルプレートと、前記ノズルからインク滴を吐出させるインク吐出機構と、を有するヘッド主部を有し、前記ヘッド主部は、前記昇温領域に配置されている、印刷装置。
このような構成により、ヘッド主部に風を当てることができるので、ヘッド主部の昇温を抑制できる。インク吐出機構は、印刷装置が高速印刷また高解像度印刷を実行する際に負荷が増加するために昇温する。それゆえ、インク吐出機構を有するヘッド主部は高温となり得る。しかしながら、本適用例の構成とすることにより、ヘッド主部の昇温を抑制して印刷ヘッド全体が高温となることを抑制できる。
【0010】
[適用例4]適用例2または適用例3に記載の印刷装置において、前記印刷ヘッドは、前記インク滴を吐出するノズルが形成されたノズルプレートと、前記ノズルからインク滴を吐出させるインク吐出機構と、を有するヘッド主部と、前記インク吐出機構に対して駆動信号を供給する駆動制御部と、前記駆動制御部と熱的に接続され、前記印刷ヘッドにおける前記プラテンと対向する表面に露出して配置された放熱部と、を有し、前記放熱部は、前記昇温領域に配置されている、印刷装置。
このような構成により、放熱部に風を当てることにより放熱部の昇温を抑制することができる。駆動制御部は、放熱部と熱的に接続されているので、放熱部の昇温を抑制することにより、駆動制御部の昇温を抑制することができる。駆動制御部は、印刷装置が高速印刷また高解像度印刷を実行する際にインク吐出機構を高負荷で駆動させるため、処理負荷が増加して昇温する。しかしながら、本適用例の構成とすることにより、駆動制御部の昇温を抑制して印刷ヘッド全体が高温となることを抑制できる。
【0011】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の印刷装置において、前記送風部は、前記印刷ヘッドに向けた送風に利用される空気を冷却する冷却機構を有する、印刷装置。
このような構成により、冷却された空気を用いて印刷ヘッドに風を当てることができるので、冷却されない空気を用いる構成に比べて、印刷ヘッドの昇温をより抑制することができる。
【0012】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の印刷装置において、前記印刷媒体は、所定の搬送方向に搬送され、前記送風口は、前記プラテンにおいて、前記昇温領域に対して対向する第1の位置、または、前記第1の位置よりも前記所定の搬送方向に沿って上流側の第2の位置に配置されている、印刷装置。
このような構成により、送風口を第1の位置に配置することにより、比較的強い風を送風口から送出する場合に、昇温領域に風を直接当てることができる。また、送風口を第2の位置に配置することにより、印刷媒体の搬送に伴って生じた搬送方向の気流により、送風口から送出される風(空気)が搬送方向に沿って下流側に流される場合であっても、昇温領域に風を当てることができる。
【0013】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれかに記載の印刷装置において、さらに、2つの印刷媒体が隙間を挟んで連続して搬送される際に、前記隙間が前記送風口上に位置するか否かを特定する隙間位置特定部を備え、前記送風部は、前記隙間が前記送風口上に位置していると特定されると、前記送風口から送風する、印刷装置。
このような構成により、送風口から送出される風によって印刷媒体の浮きやずれが生じることを抑制できる。また、送風部は、送風口上に印刷媒体が存在する場合には送風を行わないので、無駄な送風を行わず、送風に伴う無駄な電力消費を抑えることができる。
【0014】
[適用例8]適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の印刷装置において、さらに、2つの印刷媒体が隙間を挟んで連続して所定の搬送方向に搬送される際に、前記隙間が前記送風口上に位置するか否かを特定する隙間位置特定部と、前記隙間が前記送風口上に位置するように、前記送風口を前記所定の搬送方向に沿って移動させる移動機構と、を備える、印刷装置。
このような構成により、送風口を固定して隙間が送風口上を通過する際に送風を行う構成に比べて、印刷ヘッドに風を長期間当てることができる。したがって、印刷ヘッドの昇温をより抑制することができる。
【0015】
[適用例9]適用例8に記載の印刷装置において、前記プラテンは、前記印刷ヘッドと対向して固定配置され、前記所定の搬送方向に沿って配置された複数の第1の開口を有する第1プレートと、前記第1プレートと前記送風部との間において前記所定の搬送方向に移動可能に配置され、少なくとも1つの第2の開口を有する第2プレートと、を有し、前記移動機構は、前記第2プレートを前記所定の搬送方向に沿って移動させて、前記複数の第1の開口のうち前記第2の開口と連通させる前記第1の開口を切り替えることにより、前記第2の開口と前記第1の開口とからなる前記送風口を、前記所定の搬送方向に沿って移動させる、印刷装置。
このような構成により、第1プレートを移動させずに第2プレートを移動させることにより、送風口を搬送方向に沿って移動させることができる。したがって、印刷媒体により近い位置に配置された第1プレートを移動させないので、第1プレートの移動に伴う印刷媒体の搬送異常(浮きやずれ)を抑制することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷ヘッド冷却装置や、印刷ヘッドの昇温を抑制する方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の印刷装置の一実施例としてのプリンターの概略構成を示す説明図である。
【図2】図1に示す印刷ヘッドとプラテンと送風部の断面を示す断面図である。
【図3】図2に示す印刷ヘッドの構成を示す平面透視図である。
【図4】ヘッド主部が備えるノズル周辺の詳細構成を示す説明図である。
【図5】第2実施例のプリンターにおける印刷ヘッドとプラテンと送風部の詳細構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の印刷装置の一実施例としてのプリンターの概略構成を示す説明図である。図2は、図1に示す印刷ヘッドとプラテンと送風部の断面を示す断面図である。図3は、図2に示す印刷ヘッドの構成を示す平面透視図である。図2では、図1に示すA−A断面を表わし、図3では、図2に示すB−B方向に見た透視図を表わしている。なお、図2上段は、後述する送風動作を停止している状態の断面を、図2下段は、後述する送風動作を実行している状態の断面を、それぞれ表わしている。
【0019】
図1に示すように、破線で示すプリンター10は、印刷ヘッド100と、プラテン200と、送風部300とを備えている。プリンター10は、いわゆるインクジェット式のラインプリンターであり、印刷ヘッド100とプラテン200との間に搬送された印刷媒体に対して、印刷ヘッド100からインク滴を吐出して付着させることによって画像を形成する。本実施例では、印刷媒体として、図1において破線で示す印刷用紙P1,P2を採用する。なお、印刷用紙に代えて、CD−ROM等の任意の印刷媒体を採用することもできる。図1では、印刷用紙を搬送するための紙送り機構や、操作パネルなどの一般的なインクジェット式ラインプリンターが備える他の構成要素については省略している。
【0020】
図2,3に示すように、印刷ヘッド100は、ヘッド主部110と、ケース120と、4つの集積回路130と、放熱板140と、プリント回路板(PCB)150と、フレキシブル回路板(FPC)160とを備えている。なお、図2では、図1において省略したプリンターケース500を表わしている。
【0021】
ヘッド主部110は、ケース120の底面(プラテン200と対向する側の面)に実装されており、フレキシブル回路板160と電気的に接続されている。ヘッド主部110は、フレキシブル回路板160を介して受信する駆動信号に応じて図示しないノズルからインク滴を吐出して、印刷用紙P1,P2に画像等を形成する。なお、印刷用紙P1,P2は、図示しない紙送り機構により、搬送方向に沿って所定の距離の隙間Gpだけ空けて連続して搬送される。
【0022】
図4は、ヘッド主部が備えるノズル周辺の詳細構成を示す説明図である。図4に示すように、ヘッド主部110は、ノズルNzを有するノズルプレート111と、インク通路112と、側壁113と、ピエゾ素子PEとを備えている。図4では、1つのノズルNzに対応する部分のみを拡大して表わしているが、ノズルプレート111は、多数のノズルNzを備えている。インク通路112は、ノズルNzと接続されており、図示しないインクタンクから供給されたインクが充填されている。側壁113は、可撓性を有し、インク通路112の一部を構成する。ピエゾ素子PEは、側壁113に接して配置されている。
【0023】
ピエゾ素子PEの両端に設けられた図示しない電極間に、フレキシブル回路板160から所定時間幅の電圧が印加されると、ピエゾ素子PEは、たわんで側壁113を変形させる。この結果、図4下段に示すように、インク通路112の体積は収縮し、この収縮分に相当する量のインクが、インク滴IpとなってノズルNzから吐出される。ピエゾ素子PEは、たわみ動作により発熱し、特に、高速印刷や高解像度印刷の実行時には、たわみ動作を高速で行うために発熱量が増加して高温となる。
【0024】
図2,3に示すように、各集積回路130は、ケース120内部に収容されている。各集積回路130は、フレキシブル回路板160と電気的に接続されており、また、このフレキシブル回路板160を介して、ヘッド主部110およびプリント回路基板150と電気的に接続されている。集積回路130は、ドット形成のためのオン・オフ信号をプリント回路基板150から受信し、この信号に基づき駆動信号を生成してピエゾ素子PEに供給する。集積回路130は、駆動信号の生成等の処理により発熱し、特に、高速印刷や高解像度印刷の実行時には、処理量が増加して高負荷となるために高温となる。
【0025】
放熱板140は、各集積回路130と接して配置され、各集積回路130と熱的に接続されている。放熱板140は、ケース120の底面(プラテン200と対向する側の面)に実装され、集積回路130と接する面とは反対面において、ケース120の外部に露出している。放熱板140としては、熱伝導性に優れる薄板状部材(例えば、銅やアルミニウムなどの金属薄板)を用いることができる。
【0026】
プリント回路基板150は、フレキシブル回路板160と電気的に接続されている。図3に示すように、プリント回路基板150は、コネクタ155を備えており、コネクタ155に接続された図示しない配線を介して、図示しないコンピューター等からドット形成のためのオン・オフ信号を受信する。
【0027】
図1,2に示すように、プラテン200は、印刷ヘッド100と対向する位置において、プリンターケース500に固定されて配置されている。プラテン200は、送風口220と、用紙位置特定部210とを備えている。
【0028】
送風口220は、送風部300から供給される風(空気)を、印刷ヘッド100に向けて送出する。送風口220は、プラテン200を厚み方向(インクの吐出方向)に貫通する孔であり、プラテン200の幅方向(搬送方向に対して直交する方向)に延びて形成されている。送風口220は、放熱板140と対向する位置に配置されている。
【0029】
用紙位置特定部210は、印刷ヘッド100に対して、印刷用紙P1,P2の搬送方向(以下、単に「搬送方向」と呼ぶ。)において上流側に配置されており、印刷用紙P1,P2の後端位置を特定すると共に、2枚の印刷用紙P1,P2の間の隙間Gpが送風口220上に位置しているか否かを特定する。用紙位置特定部210は、図示しない発光ダイオードおよびフォトトランジスタを備えており、発光ダイオードから射出された光の反射光の有無をフォトトランジスタにより検出することにより、用紙位置特定部210上における印刷用紙の有無を検出する。また、用紙位置特定部210は、図示しない制御回路から用紙サイズおよび印刷用紙の搬送速度を含む情報を受信することにより、これらの情報と、用紙位置特定部210上における印刷用紙の有無の検出結果に基づき、各印刷用紙P1,P2の後端位置を特定する。用紙位置特定部210には、隙間Gpの搬送方向に沿った距離と、用紙位置特定部210と送風口220との間の搬送方向に沿った距離とが予め設定されている。したがって、用紙位置特定部210は、予め設定されている各距離と、搬送速度と、印刷用紙P1の後端位置とに基づき、送風口220上に隙間Gpが位置していることを特定することができる。
【0030】
送風部300は、プリンターケース500の内部に配置され、プラテン200の送風口220を介して印刷ヘッド100に向けて送風を行う。送風部300は、シリンダー315と、ピストン310と、ピストン駆動部312と、弁室325と、弁体340と、空気取り入れ孔350と、空気排出孔320と、を備えている。
【0031】
図2に示すように、シリンダー315は、プリンターケース500の内部において搬送方向に沿って延びて形成されている。ピストン310は、シリンダー315内に配置されている。ピストン駆動部312は、ピストン310と接続されており、図示しないモーターを利用してピストン310を搬送方向又はその反対方向に移動させる。ピストン駆動部312は、図示しない配線を介して用紙位置特定部210と電気的に接続されている。
【0032】
弁室325は、プリンターケース500の内部に形成され、空気排出孔320と連通されている。弁体340は、弁室325に配置されており、図示しないバネによりシリンダー315寄りの側壁S1に接触するように付勢されている。図2上段に示すように、弁体340が側壁S1に接触することにより、弁室325とシリンダー315とは、互いに隔絶され、弁室325とシリンダー315との間における空気の出入りが抑制される。一方、図2下段に示すように、弁体340が側壁S1と対向する側壁S2側に位置する場合には、弁室325とシリンダー315とは連通される。
【0033】
空気取り入れ孔350は、プリンターケース500内部に形成され、シリンダー315とプリンター10の外部とを連通させる。但し、図2下段に示すように、ピストン310が搬送方向下流側に位置する際には、ピストン310によって空気取り入れ孔350の一端が塞がれるため、空気取り入れ孔350とシリンダー315とは連通されていない。空気排出孔320は、送風口220と連通して配置されており、弁室325から供給される空気を送風口220に送る。
【0034】
前述のプリンター10は、請求項における印刷装置に相当する。また、放熱板140は請求項における放熱部に、ピエゾ素子PEは請求項におけるインク吐出機構に、集積回路130は請求項における駆動制御部に、送風部300は請求項における送風部および冷却機構に、用紙位置特定部210は請求項における隙間特定部に、それぞれ相当する。
【0035】
A2.送風動作:
図2上段では、プリンター10が印刷用紙P1の搬送方向先端側に印刷を行っている様子を表わしている。このとき、送風口220上には印刷用紙P1が存在している。用紙位置特定部210は、送風口220上に隙間Gpが位置していない(すなわち、送風口220上に印刷用紙が位置している)ことを特定すると、送風口220上に隙間Gpが位置していない旨をピストン駆動部312に通知する。
【0036】
ピストン駆動部312は、用紙位置特定部210から前述の通知を受けると、ピストン310を上流側に移動させる。このとき、弁体340とシリンダー315の内壁とピストン310とで囲まれた空間は、密閉されたまま体積が増加するので、かかる空間内の空気は、断熱膨張により冷却される。さらに、ピストン310が上流方向に移動して、ピストン310が空気取り入れ孔350を過ぎると、シリンダー315と大気との圧力差によりシリンダー315に空気が吸入される。
【0037】
図2上段の状態から、印刷用紙P1が搬送されて図2下段の状態となると、送風口220上に隙間Gpが位置していると特定し、その旨をピストン駆動部312に通知する。
【0038】
ピストン駆動部312は、用紙位置特定部210から送風口220上に隙間Gpが位置する旨の通知を受けると、ピストン310を下流に移動させる。ピストン310とシリンダー315の内壁と弁体340とで囲まれた空間の体積が減少し、シリンダー315内の圧力が上昇する。シリンダー315の圧力が弁室325の圧力および弁体340を付勢する図示しないバネの付勢力に打ち勝つと、弁体340は側壁S2側に変位し、弁室325とシリンダー315とが連通する。このとき、シリンダー315内の冷却された空気は、ピストン310の動きと共に弁室325へと押し出され、さらに、空気排出孔320を通って送風口220から送出される。
【0039】
送風口220から送出された空気(風)は、昇温領域AR1に向けて移動する。昇温領域AR1とは、インク滴Ipの吐出動作に関連して昇温する領域を意味し、本実施例では、放熱板140を含む印刷ヘッド100の底面に露出している領域を意味する。上述したように、集積回路130は駆動信号の生成処理等により昇温し、放熱板140は集積回路130と熱的に接続されているので、昇温領域AR1は、インク滴Ipの吐出動作に関連して昇温する。
【0040】
本実施例では、風速が所定の強さよりも大きくなるように、送風口220から風を送出することにより、送風口220から昇温領域AR1に向けて送出された風を、昇温領域AR1に当てるようにしている。なお、上述した風の所定の強さは、例えば、予め実験により求めることができる。昇温領域AR1に風が当たると、放熱板140から熱が奪われ、放熱板140の温度上昇が抑制される。集積回路130は、放熱板140と熱的に接続されており、また、集積回路130は発熱源であるのに対して放熱板140は発熱源ではないので、集積回路130で発生した熱は、放熱板140に移動して放出される。それゆえ、集積回路130の温度上昇も抑制される。また、ヘッド主部110も、ケース120を介して放熱板140と熱的に接続されているため、ヘッド主部110(発熱源)の熱が放熱板140に移動してヘッド主部110の昇温も抑制される。
【0041】
以上説明したように、第1実施例のプリンター10では、放熱板140を集積回路130と熱的に接続して配置すると共に、送風口220から放熱板140を含む昇温領域AR1に風を当てるので、放熱板140から熱を奪うことができる。それゆえ、放熱板140と熱的に接続されている集積回路130およびヘッド主部110(ピエゾ素子PE)の昇温を抑制できる。したがって、印刷ヘッド100における熱源である集積回路130およびヘッド主部110(ピエゾ素子PE)の昇温を抑制するので、印刷ヘッド100全体の昇温を抑制できる。
【0042】
また、送風口220上に隙間Gpが位置するときに、送風口220から風を送出するので、印刷用紙P1,P2に風が当たることを抑制でき、風による印刷用紙P1,P2の浮きやずれ等の搬送異常を抑制できる。また、送風部300において、シリンダー315内の空気を冷却するので、冷却しない構成においても得られる効果(上述した印刷ヘッド100全体の昇温の抑制及び搬送異常の抑制)に加えて、冷却しない構成に比べて放熱板140の昇温をより抑制できるという効果を有する。
【0043】
B.第2実施例:
B1.装置構成:
図5は、第2実施例のプリンターにおける印刷ヘッドとプラテンと送風部の詳細構成を示す断面図である。図5では、図1のA−A断面と同じ位置での断面を表わしている。なお、図5上段は、印刷用紙P1に印刷を行っている状態を示し、図5下段は、図5上段の状態から印刷用紙P1,P2がさらに下流方向に搬送され、印刷ヘッド100からのインク吐出が停止している状態を示している。
【0044】
第2実施例のプリンターは、プラテンの構成と、送風部の構成と、プラテン駆動部を備えている点と、昇温領域の範囲とにおいて、第1実施例のプリンター10と異なり、他の構成は、第1実施例と同じである。
【0045】
図5に示すように、第2実施例のプラテン220aは、第1プレート221と、第2プレート222とを備えている。第1プレート221は、印刷ヘッド100と対向する位置においてプリンターケース500に固定して配置され、印刷用紙P1,P2と接触して印刷用紙P1,P2を支持する。第1プレート221は、第1プレート221を厚み方向に貫通する5つの貫通孔h1,h2,h3,h4,h5を有する。貫通孔h1は、放熱板140と対向する位置に配置されている。また、貫通孔h2は印刷ヘッド100における放熱板140とヘッド主部110との間のケース120表面と対向する位置に、3つの貫通孔h3〜h5はヘッド主部110(ノズルプレート111におけるインク吐出面)と対向する位置に、それぞれ配置されている。
【0046】
第2プレート222は、搬送方向およびその反対方向に移動可能に配置されている。第2プレート222は、第2プレート222を厚み方向に貫通する貫通孔223を備えている。吐出方向から見た貫通孔223の大きさ(面積)は、インク吐出方向から見た5つの貫通孔h1〜h5の大きさ(面積)と同じである。第2プレート222が移動することにより、貫通孔223の位置は、搬送方向およびその反対方向に移動する。
【0047】
プラテン駆動部225は、プリンターケース500の内部に配置されており、図示しないモーターを利用して、第2プレート222を駆動する。また、プラテン駆動部225は、図示しない配線を介して用紙位置特定部210と電気的に接続されている。
【0048】
第2実施例の送風部300aは、空気室370と、空気供給路375と、空気吸入部360と、冷却部365とを備えている。空気室370は、プリンターケース500の内部において、第2プレート222の底面(第2プレート222における第1プレート221と接する面の反対面)に接して配置されている。
【0049】
空気供給路375は、プリンターケース500の内部に配置され、空気室370とプリンター10外部とを連通させる。空気吸入部360は、空気供給路375に配置されており、大気から空気を取り込み空気室370に供給する。空気吸入部360は、図示しないファンと、かかるファンの動作を制御する図示しない制御部を有する。空気吸入部360(ファンの制御部)は、図示しない配線を介して用紙位置特定部210と電気的に接続されている。冷却部365は、空気供給路375に接して配置されており、空気供給路375を通る空気を冷却する。冷却部365としては、例えば、ペルチェ素子を用いた冷却機構を採用することができる。
【0050】
上述した貫通孔h1〜h5は、請求項における第1の開口に相当する。また、貫通孔223は請求項における第2の開口に、プラテン駆動部225は請求項における移動機構に、それぞれ相当する。
【0051】
B2.送風動作:
プラテン駆動部225は、図5上段に示すように、印刷用紙P1の後端が貫通孔h1を通過したことを用紙位置特定部210から通知されると、貫通孔223と貫通孔h1とを連通させるように第2プレート222を移動させる。また、空気吸入部360は、用紙位置特定部210から同様の通知を受けると、図示しないファンを駆動させて空気を空気室370に取り込む。その結果、貫通孔h1と貫通孔223とが連通し、空気室370に供給された冷却された空気は、貫通孔h1および貫通孔223を介して放熱板140に向けて送出される。この状態においては、貫通孔h1および貫通孔223は、請求項における送風口に相当する。
【0052】
図示は省略するが、印刷用紙P1がさらに搬送されて、印刷用紙P1の後端が貫通孔h2を通過すると、上述した動作と同様な動作により、貫通孔223と貫通孔h2とを連通させるように第2プレート222が移動され、貫通孔h2から冷却された空気(風)が、放熱板140とヘッド主部110との間のケース120表面に向けて送出される。この状態においては、貫通孔h2および貫通孔223は、請求項における送風口に相当する。
【0053】
図5下段に示すように、印刷用紙P1がさらに搬送され、印刷用紙P1の後端が貫通孔h5を通過してから後続の印刷用紙P2の先端が貫通孔h5に至るまでの間、貫通孔223と貫通孔h5とは連通し、貫通孔h5からヘッド主部110に向けて風が送出される。印刷用紙P2の先端が貫通孔h5に至ると、印刷用紙P2は、各貫通孔h1〜h5を塞ぐこととなる。プラテン駆動部225は、用紙位置特定部210から、各貫通孔h1〜h5上に隙間Gpが位置していない旨の通知を受けると、貫通孔223が貫通孔h1よりも上流側に位置するように第2プレート222を上流側に移動させる。この際、空気吸入部360は、用紙位置特定部210から同様の通知を受け、図示しないファンを停止させ、貫通孔223が貫通孔h1〜h5を通過するときに風が印刷用紙を押し上げないようにする。
【0054】
以上の動作により、第2実施例のプリンターは、貫通孔h1〜h5のいずれかの貫通孔と貫通孔223とからなる送風口を隙間Gpの移動に併せて移動させて、印刷ヘッド100の底面において放熱板140からヘッド主部110に至るまでの領域に風を当てる。かかる領域は、第2実施例において昇温領域AR2に該当する。ヘッド主部110は、ピエゾ素子PEの駆動に伴って昇温し、また、放熱板140は上述したように集積回路130の昇温に伴って昇温する。印刷ヘッド100の底面において放熱板140とヘッド主部110とで挟まれた領域は、放熱板140およびヘッド主部110と接触して配置され、かつ、発熱源ではないので、放熱板140およびヘッド主部110の昇温に伴い昇温する。したがって、昇温領域AR2は、インク滴Ipの吐出動作に関連して昇温する。
【0055】
以上の構成を有する第2実施例のプリンターは、第1実施例のプリンター10と同様な効果を有する。加えて、隙間Gpの位置の移動に併せて、送風口を下流側に移動させるので、印刷ヘッド100に対して長期間、広い範囲にわたり風を当てることができる。したがって、印刷ヘッド100全体の昇温をより抑制できる。なお、風がノズルNz内のインクを乾燥させる等の不具合があるときは、貫通孔を小さくして、ノズル列間にのみ風を当て、ノズルNzに直接風が当たらないようにすることもできる。
【0056】
C.変形例:
この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
C1.変形例1:
各実施例におけるプリンターの構成は、あくまでも一例であり、種々変形可能である。例えば、各実施例のプリンターは、いわゆるラインプリンターであったが、これに代えて、ヘッドが印刷用紙の幅方向(紙送り方向と直交する方向)に走査する、いわゆるシリアルプリンターを採用することもできる。シリアルプリンターを採用する構成においては、例えば、プリンターの走査方向における端部において、非印刷領域(搬送される印刷用紙によって覆われず、インク滴が吐出されない領域)に、送風部300,300aを備える構成を採用することができる。また、各実施例では、印刷用紙が搬送され、印刷ヘッド100が固定配置されていたが、これとは逆に、印刷用紙が固定配置され、印刷ヘッド100が搬送される構成を採用することができる。すなわち、一般には、印刷ヘッドが印刷用紙に対して相対的に移動する任意の構成を、本発明の印刷装置に採用することができる。また、各実施例におけるプリンターは、インク吐出機構としてピエゾ素子を用いるいわゆるピエゾ式のプリンターであったが、ピエゾ式のプリンターに代えて、インク吐出機構としてヒーターを用いるいわゆるサーマル式プリンターを採用することもできる。
【0058】
また、第2実施例において、第1プレート221が備える貫通孔の数は、5つに限らず任意の数とすることもできる。また、第2実施例において、第2プレート222が備える貫通孔の数は、1つに限らず任意の数とすることもできる。また、第1実施例の送風部300を第2実施例に適用し、第2実施例の送風部300aを第1実施例に適用することもできる。また、各実施例では、印刷ヘッド100に向けて送出する空気を冷却していたが、冷却を省略することもできる。
【0059】
C2.変形例2:
各実施例では、放熱板140に風を当てることにより、集積回路130の熱を放出させていたが、放熱板140を省略することもできる。この構成では、集積回路130は、ケース120に直接接して配置されるため、ケース120は、集積回路130と熱的に接続される。したがって、ケース120において集積回路130と接する箇所は、集積回路130の昇温に伴って昇温することとなる。そこで、この構成では、放熱板140に代えて、ケース120において集積回路130と接する箇所に風を当てることが好ましい。このようにすることで、集積回路130の熱をケース120における集積回路130と接する部分から奪うことができるので、印刷ヘッド100の昇温を抑制することができる。
【0060】
C3.変形例3:
各実施例では、送風口を、昇温領域AR1,AR2に対して対向する位置に配置していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、第1実施例の変形例として、放熱板140と対向する位置(第1の位置)に比べてより上流側の位置(第2の位置)に、送風口220を配置することもできる。この構成では、送風口220から送出される空気が印刷用紙P1,P2の搬送に伴って生じる搬送方向の気流の影響を受けて下流側に流されると、放熱板140に風が当たることとなる。すなわち、一般には、送風口から印圧ヘッドに向けて送風する任意の送風部を、本発明のプリンターに採用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10…プリンター、100…印刷ヘッド、110…ヘッド主部、111…ノズルプレート、112…インク通路、113…側壁、120…ケース、130…集積回路、140…放熱板、150…プリント回路基板、155…コネクタ、160…フレキシブル回路板、200,200a…プラテン、210…用紙位置特定部、220…送風口、221…第1プレート、222…第2プレート、223…貫通孔、225…プラテン駆動部、300,300a…送風部、310…ピストン、312…ピストン駆動部、315…シリンダー、320…空気排出孔、325…弁室、340…弁体、350…空気取り入れ孔、360…空気吸入部、365…冷却部、370…空気室、375…空気供給路、500…プリンターケース、P1,P2…印刷用紙、S1…側壁、h1〜h5…貫通孔、PE…ピエゾ素子、Gp…隙間、Ip…インク滴、Nz…ノズル、AR1,AR2…昇温領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
印刷媒体に対して相対的に移動してインク滴を吐出する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに対向して配置され、送風口を有するプラテンと、
前記送風口から前記印刷ヘッドに向けて送風する送風部と、
を備える、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記印刷ヘッドは、前記インク滴の吐出動作に関連して昇温する昇温領域を有し、
前記送風部は、前記昇温領域に風が当たるように送風する、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
前記印刷ヘッドは、前記インク滴を吐出するノズルが形成されたノズルプレートと、前記ノズルからインク滴を吐出させるインク吐出機構と、を有するヘッド主部を有し、
前記ヘッド主部は、前記昇温領域に配置されている、印刷装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の印刷装置において、
前記印刷ヘッドは、
前記インク滴を吐出するノズルが形成されたノズルプレートと、前記ノズルからインク滴を吐出させるインク吐出機構と、を有するヘッド主部と、
前記インク吐出機構に対して駆動信号を供給する駆動制御部と、
前記駆動制御部と熱的に接続され、前記印刷ヘッドにおける前記プラテンと対向する表面に露出して配置された放熱部と、を有し、
前記放熱部は、前記昇温領域に配置されている、印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の印刷装置において、
前記送風部は、前記印刷ヘッドに向けた送風に利用される空気を冷却する冷却機構を有する、印刷装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置において、
前記印刷媒体は、所定の搬送方向に搬送され、
前記送風口は、前記プラテンにおいて、前記昇温領域に対して対向する第1の位置、または、前記第1の位置よりも前記所定の搬送方向に沿って上流側の第2の位置に配置されている、印刷装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の印刷装置において、さらに、
2つの印刷媒体が隙間を挟んで連続して搬送される際に、前記隙間が前記送風口上に位置するか否かを特定する隙間位置特定部を備え、
前記送風部は、前記隙間が前記送風口上に位置していると特定されると、前記送風口から送風する、印刷装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置において、さらに、
2つの印刷媒体が隙間を挟んで連続して所定の搬送方向に搬送される際に、前記隙間が前記送風口上に位置するか否かを特定する隙間位置特定部と、
前記隙間が前記送風口上に位置するように、前記送風口を前記所定の搬送方向に沿って移動させる移動機構と、
を備える、印刷装置。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷装置において、
前記プラテンは、
前記印刷ヘッドと対向して固定配置され、前記所定の搬送方向に沿って配置された複数の第1の開口を有する第1プレートと、
前記第1プレートと前記送風部との間において前記所定の搬送方向に移動可能に配置され、少なくとも1つの第2の開口を有する第2プレートと、
を有し、
前記移動機構は、前記第2プレートを前記所定の搬送方向に沿って移動させて、前記複数の第1の開口のうち前記第2の開口と連通させる前記第1の開口を切り替えることにより、前記第2の開口と前記第1の開口とからなる前記送風口を、前記所定の搬送方向に沿って移動させる、印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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