説明

印刷装置

【目的】 クリーニングパッドの誤装着を防止して印刷物の品質を高める。
【構成】 ファクシミリ装置11に、電子写真方式の印刷装置を備える。この印刷装置は、記録紙にトナーを転写する印刷部22と、このトナーを定着する定着器23とから構成する。定着器23のヒートローラ71を清掃するクリーニングパッド73を着脱自在に取り付ける。このクリーニングパッド73から、係合突部77を突設する。このクリーニングパッド73を覆う回動可能なカバー体61に、係合突部77に係合する係合孔66を形成する。
【効果】 クリーニングパッド73を正常な位置に装着した状態でのみ、係合突部77と係合孔66とが係合し、カバー体61を閉じてファクシミリ装置11を作動できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トナーを用いて印刷する印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、図7に示すファクシミリ装置1が知られている。このファクシミリ装置1には、送信原稿を読み取る送信部2と、電子写真方式の印刷装置となどが備えられている。そして、送信部2は、イメージセンサを備えた下部ユニット2aと、この下部ユニット2aの上側を覆う上部ユニット2bを有しており、これらユニット2a,2b間に、送信原稿を搬送する原稿通路が形成されている。また、機器の整備などのために、上部ユニット2bは、手前側に設けた支軸2cを中心として回動可能に支持されている。一方、印刷装置には、給紙カセット3から用紙が搬送される記録紙通路4に沿って、用紙にトナー像を転写する印刷ユニット5と、用紙に転写されたトナーを加熱定着させる定着器6となどが配置されている。そして、この定着器6には、トナーが転写された用紙を加熱しながら押圧するヒートローラ6aが備えられているとともに、このヒートローラ6aに付着したトナーを除去するクリーニングパッド6bが着脱自在に取り付けられている。また、この定着器6の上側は、カバー体7により覆われている。このカバー体7は、原稿通路の下面側を構成するもので、送信部2の下部ユニット2aに設けた軸部7aを中心として回動可能に支持されている。そこで、クリーニングパッド6bが汚れたときには、送信部2の上部ユニット2bおよびカバー体7などをそれぞれ回動して開いた状態で、このクリーニングパッド6bを交換するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の構成では、クリーニングパッド6bを交換した際に、このクリーニングパッド6bを正常な位置に装着しなくとも、カバー体7および上部ユニット2bを閉じてファクシミリ装置1を作動させることが可能であり、クリーニングパッド6bを正常な位置に装着しないままファクシミリ装置を作動させると、ヒートローラ6aの清掃が不十分になり、印字が二重に写ったり、あるいは、印刷動作中にクリーニングパッド6bが外れるおそれがあるなどの問題を有している。
【0004】本発明は、このような点に鑑みなされたもので、定着部のクリーニングパッドの誤装着を防止して印刷物の品質を高めることができる印刷装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の印刷装置は、用紙に転写されたトナーを定着する定着ローラと、この定着ローラを清掃する着脱可能なクリーニングパッドと、このクリーニングパッドを覆う開閉可能なカバー体とを備えた定着部を具備した印刷装置において、前記カバー体には、前記クリーニングパッドが所定位置に装着された状態でのみ前記クリーニングパッドに設けた係合部が係合可能な係合受部が設けられたものである。
【0006】
【作用】本発明の印刷装置では、用紙に転写されたトナーは、定着ローラにより定着される。この定着ローラに付着したトナーは、クリーニングパッドにより除去され、印刷物の品質が高められる。そして、このクリーニングパッドは、このクリーニングパッドを覆うカバー体を開いた状態で、点検あるいは交換などされる。そして、このクリーニングパッドが所定位置に装着された状態では、このクリーニングパッドに設けた係合部が、このクリーニングパッドを覆うカバー体に設けた係合受部に係合して、カバー体を閉じることが可能になる。また、このクリーニングパッドが所定位置に装着されていない状態では、このクリーニングパッドに設けた係合部が、このクリーニングパッドを覆うカバー体に設けた係合受部に係合せず、カバー体を閉じることができない。
【0007】
【実施例】以下、本発明の印刷装置の一実施例の構成を図面を参照して説明する。
【0008】図1ないし図3において、11はファクシミリ装置で、このファクシミリ装置11は、外殻を構成するケース体12を有している。そして、このケース体12の一側には、図示しない受話器が載置されるようになっている。また、このケース体12の内側には、手前側に開口したカセット装着部14が設けられ、このカセット装着部14に、給紙部となる給紙カセット15を挿脱自在に装着するようになっている。そして、この給紙カセット15の上側に位置して、送信原稿を読み取る送信部21と、印刷装置を構成する電子写真方式の印刷部22および定着部としての定着器23が配置されている。
【0009】そして、給紙カセット15に積層収納された用紙(記録紙)は、Uターンするように形成された記録紙通路25に1枚ずつ分離して繰り出され、印刷部22を通過する際に図示しない感光ドラムからトナー像を転写され、定着器23を通過する際にトナー像が加熱定着されて、ケース体12の前面に開口した記録紙排出口26側に排出されるようになっている。
【0010】また、送信部21は、上面に操作パネルを設けた上部ユニット31と、この上部ユニット31の下側に位置する下部ユニット32とからなり、これらのユニット31,32間に、送信原稿を搬送する原稿通路33が形成されている。そして、このファクシミリ装置11には、この上部ユニット31の後側に位置して、送信原稿をセットする傾斜した原稿台を形成した上部カバー36が設けられている。また、送信部21には、上面に開口する原稿挿入部37が原稿台に連続して設けられているとともに、ケース体12の前面に開口して原稿排出口38が設けられている。
【0011】さらに、送信部21の上部ユニット31は、前側下部に設けられた軸部31a を支点として、手前側に回動可能に支持されているとともに、上部カバー36は、後側上部に設けられた軸部36a を支点として後側へ回動可能に支持されており、図3に示すように、これら上部ユニット31および上部カバー36を回動して開いた状態で、ファクシミリ装置11の内部の点検、整備(メンテナンス)などが行われるようになっている。
【0012】また、送信部21の下部ユニット32は、図4に示すように、樹脂などにて形成された下部フレーム41に、イメージセンサなどからなる読取部42と、この読取部42に対向するホワイトローラ43となどを組み合わせて構成されている。そして、この下部フレーム41は、原稿通路33の下面を構成する下板部45と、この下板部45の両側部に形成された脚片部46,47と、一方の脚片部46の外側に延設されたギア取付部48とが例えば合成樹脂にて一体に形成されており、このギア取付部48には、複数のギアおよびモータなどを有した図示しないギアフレームユニットが取り付けられるようになっている。
【0013】また、読取部42は、上面に形成された読取面42a に密着する被読取物となる送信原稿を読み取るようになっており、この読取部42は、長手方向を下板部45の幅方向とし、読取面42a を下板部45の表面部とほぼ面一にして、この下板部45に取り付けられている。
【0014】さらに、下板部45には、読取部42の前後に位置して、両側に対をなす通孔51が形成され、それぞれ図示しない搬送ローラが配置されるようになっている。また、これらの搬送ローラは、上部ユニット31に設けられた回転自在なピンチローラに対向し、ギアフレームユニットにより回転駆動されて、原稿通路の送信原稿を搬送するようになっている。加えて、下板部45には、後側の通孔51の後側に位置して、幅方向を長手方向とする引込ローラ用通孔53が形成されており、この引込ローラ用通孔53に、図示しない引込ローラが配置されるようになっている。また、この引込ローラは、上部ユニット31に設けられた分離パッドに摺接し、ギアフレームユニットにより回転駆動されて、原稿台に積層された送信原稿を1枚ずつ分離しながら原稿通路33に引き込むようになっている。
【0015】また、この下部フレーム41には、読取部42の両側に位置して、軸受部55が形成されており、これら軸受部55に軸支されて、読取部42の読取面42a に対向するホワイトローラ43が配置されている。そして、原稿通路33を搬送される送信原稿は、読取部42とホワイトローラ43との間を通過する際に、このホワイトローラ43により読取面42a に密着され、読取部42により読み取られるようになっている。なお、このホワイトローラ43は、つまみ部56を把持して、上側に取り出すことができるようになっている。
【0016】さらに、下部フレーム41には、カバー体61が下板部45の後端部に連接されている。このカバー体61は、前端部に連続的に形成された凹凸部62が、下板部45の後端部に連続的に形成された凹凸部63に組み合わされ、これら凹凸部62,63を貫く支軸65により回動可能に支持されている。また、このカバー体61には、両側方向に所定間隔を介して係合受部としての一対の係合孔66が形成されているとともに、両側の端部に位置して、上側に向かう両側一対の平板状の突片部68が一体に形成されている。そして、このカバー体61を後側に回動した状態で、このカバー体61の上面が、原稿台と下板部45とを連続させて原稿通路33の下面を構成するとともに、定着器23の上側を覆うようになっている。また、このカバー体61を手前側に回動した状態で、定着器23が外部に露出し、この定着器23の点検整備などを行うことができるようになっている。
【0017】また、定着器23は、図1および図5などに示すように、トナー像が転写された記録紙を加熱しながら加圧して、このトナーを記録紙に定着させる定着ローラとしてのヒートローラ71を有している。さらに、この定着器23には、ヒートローラ71の清掃を行うクリーニングパッド73が着脱可能に取り付けられている。このクリーニングパッド73は、図6に示すように、例えばスポンジあるいはフエルトなどからなるパッド部74と、このパッド部74を支持する合成樹脂などにて形成された支持部75とを有している。そして、パッド部74は、ヒートローラ71の周面に密着して、ヒートローラ71の周面に付着したトナーを拭き取り、印刷物の品質を向上するようになっている。また、支持部75は、枠状をなす枠状部75a と、この枠状部75a の内側に所定間隔で設けられた補強板部75b などからなり、定着器23に着脱可能に係合され、パッド部74を所定の位置に保持するようになっている。さらに、この支持部75からは、両側方向に所定間隔を介して、係合部としての一対の係合突部77が上側に向かって突設されている。そして、各係合突部77は、略矩形板状をなし、前側上部の角部が傾斜して切断された形状になっており、図3に示すように、これら係合突部77を把持しながら、汚れたクリーニングパッド73を定着器23から取り外し、点検、交換作業などができるようになっている。
【0018】また、クリーニングパッド73の各係合突部77は、このクリーニングパッド73が定着器23のヒートローラ71に対して正常な位置に装着された状態でのみ、定着器23を覆うカバー体61に形成した係合孔66に係合するようになっている。
【0019】そこで、図3に示すように、ファクシミリ装置11の上部カバー36、送信部21の上部ユニット31、および定着器23を覆うカバー体61をそれぞれ回動して開いた状態で、クリーニングパッド73の交換作業などを行った後に、これらカバー体61、上部ユニット31、および上部カバー36を閉じてゆくと、クリーニングパッド73が正常な位置に装着された状態では、図1および図4に示すように、クリーニングパッド73の各係合突部77が、定着器23を覆うカバー体61の各係合孔66に係合し、このカバー体61を所定の位置まで回動し、続いて、上部ユニット31、および上部カバー36を所定の位置まで回動して閉じることができ、この状態で、ファクシミリ装置11の印刷装置を作動させることができるようになっている。
【0020】一方、図2および図5に示すように、このクリーニングパッド73が正常な位置に装着されていない状態では、クリーニングパッド73の各係合突部77がカバー体61の各係合孔66に係合せず、カバー体61の裏面側に当接して、このカバー体61を所定の位置まで回動できないようになっている。そして、このようにカバー体61が所定の位置にない状態では、このカバー体61の各突片部68が操作パネルを設けた上部ユニット31の裏面側に当接して、この上部ユニット31を閉じることができず、この状態でファクシミリ装置11の印刷装置を作動させようとしても、例えば操作パネルに設けた液晶表示パネルにエラー表示などがなされて、操作者に誤装着を知らせるとともに、この印刷装置を作動させることができないようになっている。
【0021】このように、本実施例によれば、定着器23のクリーニングパッド73を交換などした際に、このクリーニングパッド73を所定の正常な位置に装着した状態でのみ、このクリーニングパッド73を覆うカバー体61を閉じることができ、さらにはこのカバー体61を覆う上部ユニット31を閉じることができるため、クリーニングパッド73の装着状態を容易に確認することができる。そこで、このクリーニングパッド73が正常な位置に装着されないままファクシミリ装置11の印刷装置を作動させることを防止でき、ヒートローラ71の清掃が不十分で印字が二重に写ったり、あるいは、印刷動作中にクリーニングパッド73が外れるなどといったことを防止して、印刷物の品質を高めることができる。
【0022】また、クリーニングパッド73の各係合突部77は、このクリーニングパッド73を把持するための摘みと兼用されているため、構造を簡略化して、製造コストを低減することができる。
【0023】さらに、クリーニングパッド73を覆うカバー体61に形成した係合孔66を介して、クリーニングパッド73が正常に装着されているかどうかを容易に確認することができる。
【0024】なお、本発明の印刷装置は、ファクシミリ装置11に限られず、レーザプリンタ装置や複写機などトナーを用いるOA機器に適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0025】
【発明の効果】本発明の印刷装置によれば、定着部のクリーニングパッドを交換などした際に、このクリーニングパッドを所定位置に装着した状態でのみ、このクリーニングパッドを覆うカバー体を閉じることができるため、クリーニングパッドの装着状態を容易に確認することができる。そこで、このクリーニングパッドの誤装着を防止して、印刷物の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の印刷装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】同上印刷装置の動作を示す説明図である。
【図3】同上印刷装置の動作を示す斜視図である。
【図4】同上印刷装置の一部の斜視図である。
【図5】同上印刷装置の一部の断面図である。
【図6】同上印刷装置のクリーニングパッドの斜視図である。
【図7】従来の印刷装置を示す説明図である。
【符号の説明】
23 定着部としての定着器
61 カバー体
66 係合受部としての係合孔
71 定着ローラとしてのヒートローラ
73 クリーニングパッド
77 係合部としての係合突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 用紙に転写されたトナーを定着する定着ローラと、この定着ローラを清掃する着脱可能なクリーニングパッドと、このクリーニングパッドを覆う開閉可能なカバー体とを備えた定着部を具備した印刷装置において、前記カバー体には、前記クリーニングパッドが所定位置に装着された状態でのみ前記クリーニングパッドに設けた係合部が係合可能な係合受部が設けられたことを特徴とした印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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