説明

印刷除去装置

【課題】カード裏側面を損傷することなく、連続的にカード表側面の印刷を除去することができる印刷除去装置を提供する。
【解決手段】表側面に印刷が施され裏側面または内部に電子情報を担持するカード(1)から印刷を除去する印刷除去装置(8)は、カード(1)を搬送する搬送部(10)と、搬送部(10)によって搬送されているカード(1)に印刷除去液を噴射する除去液噴射部(14)とを備え、搬送部(10)が、表側面を下方に向けたカード(1)を上下から挟持しカード(1)が搬送される搬送経路を規定する複数対の搬送ローラ(24a,24b)を備え、除去液噴射部(14)が、搬送ローラ(24a,24b)に挟持されて搬送されるカード(1)の下方に向けられた表側面に向け下方位置から印刷除去液を噴射する噴射ノズル(26)を備え、印刷除去装置(8)は、さらに、搬送経路をはさんで噴射ノズル(26)と対向した上方位置に設けられた押さえローラ(80)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷除去装置に関し、詳細には、プリペイドカードやICカードのような電子情報を担持するカードの表側面に施された印刷を除去する印刷除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気カード、ICカードのような電子情報を担持したカードが数多く使用されている。このようなカードは、一般に、表側面に絵、文字等の図柄が印刷され、裏側面、または表側面と裏側面の中間層に電子情報を担持した媒体が配置された構成を備えている。
【0003】
このようなカードは、媒体に担持された電子情報を書き換えることによって、再利用を図ることができるが、その際には、表側面に印刷された図柄を除去する必要がある。
また、新品のカードに印刷を施した際に発生した図柄のズレ等の印刷不良の除去が必要となる場合もある。
【0004】
このような印刷除去装置としては、カードを作業台に固定し、固定したカードの上方から研磨材を含む印刷除去液を噴射して印刷を除去する装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−315476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術の印刷除去装置では、カードの上方から研磨材を含む印刷除去液を噴射して印刷を除去するので、カードの裏側面に印刷除去液が回り込んで、カード裏側面を損傷させてしまうことがあるという問題があった。また、電子情報を担持している媒体がカードの裏側面に配置されている場合には、カード裏側面だけでなく、電子情報担持媒体をも損傷させてしまうことがあるという問題もあった。
【0007】
また、カードを一枚ずつ作業台に固定して除去作業が行われるので、連続的に除去作業を行うことができないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、カード裏側面を損傷することなく、連続的にカード表側面の印刷を除去することができる印刷除去装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
表側面に印刷が施され裏側面または内部に電子情報を担持するカードから前記印刷を除去する印刷除去装置であって、
前記カードを搬送する搬送部と、
該搬送部によって搬送されている前記カードに印刷除去液を噴射する除去液噴射部とを備え、
前記搬送部が、表側面を下方に向けた前記カードを上下から挟持し前記カードが搬送される搬送経路を規定する複数対の搬送ローラを備え、
前記除去液噴射部が、前記搬送ローラに挟持されて搬送される前記カードの下方に向けられた表側面に向け下方位置から印刷除去液を噴射する噴射ノズルを備え、
前記印刷除去装置は、さらに、
前記搬送経路をはさんで前記噴射ノズルと対向した上方位置に設けられた押さえローラを備えている、
ことを特徴とする印刷除去装置が提供される。
【0010】
このような構成を有する本発明によれば、下方に向けられたカードの表側面(印刷面)に向けて下方位置から印刷除去液が噴射されるので、印刷除去液がカードの裏側面に回り込みにくくなり、電子情報が担持されたカードの裏側面が印刷除去液で損傷を受けることが抑制される。
また、噴射ノズルと対向した上方位置に設けられた押さえローラにより、噴射ノズルから噴射される印刷除去液の水勢でカードが上方に変位することが抑制され、噴射ノズルから噴射される印刷除去液の水勢を利用してカードの表側面の印刷を効率的に除去することができる。
【0011】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記搬送経路が、該搬送経路に直交する方向に配置された複数枚の前記カードを搬送可能に形成され、
前記噴射ノズルが、前記複数枚のカードの各々の表側面全体に対し、印刷除去液を噴射する。
【0012】
このような構成によれば、複数枚のカードに対して同時に印刷除去処理を施すことができる。
【0013】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記搬送経路の上流端に、複数枚の前記カードを、前記搬送経路に直交する方向に並列配置された状態で順次、供給するカード供給装置を備えている。
【0014】
このような構成によれば、複数枚のカードに対して同時に印刷除去処理を連続的に行うことができる。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記噴射ノズルが複数、配置され、前記搬送経路に直交する方向に並列配置された複数枚の前記カードの各々の表側面全体に、印刷除去液を噴射する。
【0016】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記複数の噴射ノズルが、前記搬送経路に直交する方向に並列配置されている。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記複数の噴射ノズルが、前記搬送経路に直交する方向でオフセットして配置されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カード裏側面を損傷することなく、連続的にカード表側面の印刷を除去することができる印刷除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好ましい形態の印刷除去装置によって印刷が除去されるカードの平面図である。
【図2】図1のカードの概略的な断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態の印刷除去装置の概略構成を示す図面である。
【図4】図3の印刷除去装置のカード供給部の概略的な正面図である。
【図5】図4のカード供給部の概略的な側面図である。
【図6】図4のカード供給部のカードケースの構成を示す模式的な斜視図である。
【図7】図4のカード供給部のカードケース上部の詳細を示す断面図である。
【図8】図3の印刷除去装置の除去液噴射部の構成を示す模式的な側面図である。
【図9】図3の印刷除去装置に用いられる噴射器の平面図である。
【図10】図9の噴射器の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態の印刷除去装置について説明する。
図1は、印刷除去装置によって印刷が除去されるカードの一例であるカード1の平面図であり、図2は、カード1の概略的な断面図である。カード1は、54mm×86mmの矩形形状を有し、厚みは、0.2mm〜0.9mmである。図2に示されているように、カード1は、基材層2の一方の面(表側面)に絵や文字等の図柄が印刷された印刷面4を有し、他方の面(裏側面)に電子データを担持するデータ担持層6が設けられている。カード1のデータ担持層6は、基材層2の裏側面に、磁気層を配置することによって形成されている。
【0021】
本発明の印刷除去装置は、表側面に印刷が施され裏側面に電子情報が担持されたカードであればどのようなカードにも適用可能であり、カード1以外にも、例えば、基材層2の裏側面にICチップ等のデータ担持手段が埋め込まれているカードや、表側面と裏側面の両方に印刷が施され、中間の基材層2中にデータ担持手段が設けられているカードにも適用可能である。
【0022】
図3は、本発明の好ましい実施形態の印刷除去装置8の概略構成を示す図面である。印刷除去装置8は、カード1を搬送経路に沿って矢印A方向に搬送する搬送部10と、搬送経路の上流端にカード1を供給するカード供給部12と、搬送部10によって搬送されているカード1の一方の面に印刷除去液を噴射する2箇所の除去液噴射部14、14と、除去液噴射部14、14の下流側に配置されカード1を洗浄する水洗部16と、水洗部16の下流側に配置されカード1を乾燥させる乾燥部18とを備えている。
【0023】
図4は、本発明の好ましい実施形態の印刷除去装置8のカード供給部12の概略的な正面図であり、図5は、カード供給部12の概略的な側面図であり、図6は、図4のカード供給部12のカードケース34の構成を示す模式的な斜視図であり、図7は、カードケース34の上部の構造を詳細に示す断面図である。
【0024】
カード供給部12は、カードケース34と、カードケース34の下方に設けられたカード押出し部36と、カードケース34の上方に設けられたカード移送部20と、カード移送部20から移送されたカード1を搬送部10まで搬送するベルトコンベヤ22とを備えている。
【0025】
カードケース34は、細長い直方体形状の、上下が開いた筒状の箱体であり、内部に複数枚のカード1を上下方向に積層状態で収容することができるように構成されている。本実施形態では、カード1は印刷が施された表側面を下方に向けた状態で積層配置される。カードケース34の最上部には、上限センサー(図示せず)が設けられており、カードケース34に収容されたカード積層体の最上部の位置、すなわち最も上に位置するカードを検出することができるようになっている。図6および図7に示されているようにカードケース34の上端の短辺側の両端部は外方に向って広がっており、カードケース34内にカード1を容易に入れることができるようになっている。
【0026】
カードケース34は、図4に示されているように、カードの搬送経路と直交する方向に5台が並列状態に配置されている。各カードケース34の下方には、カード押出し部36が配置され、カードケース34内に積層配置されたカード1を下方から押し上げるように構成されている。
【0027】
図5および図6に示されているように、カード押出し部36は、カードケース34の下部に設けられている、カードを下方から押し上げるためのカード押出し板38と、カード押出し板38を上昇駆動させるためのエレベータモータ40と、エレベータモータ40の出力軸に連結され、エレベータモータ40の上方に向って延びるシャフト42と、カード押出し板38をシャフト42に連結するための連結部44とを備えている。シャフト42の外周には、雄ネジが切られている。連結部44は、連結板46と、連結板46の一端部から上方に直立している、カード押出し板38と連結板46とを連結するための柱48と、連結板46の他端部に設けられ、シャフト42を通すことができるようになっている孔50とを備える。孔50の内周には、シャフト42の雄ネジと噛合する雌ネジが切られている。
図6に示されているように、カードケース34の前面には、カードケース34のほぼ全長にわたって上下方向に延びるスリット52が設けられており、連結板46がシャフト42に沿って上下するときに、このスリット52に沿って上下動することができるようになっている。
【0028】
図5に示されているように、カード移送部20は、カードケース34内に収容されたカード積層体の最上部からカードを1枚取り出して把持するための真空パッド54と、真空パッド54を水平方向に前後動させるためのリニア駆動装置56とを備えている。図7に示すように、真空パッド54は、カード1と平行な吸引面58を有し、この吸引面58には空気を通すための複数の小孔(図示せず)が設けられている。
【0029】
図7に示されているように、カードケース34の上部には、カード1を取り出すための矩形開口部を有する蓋部材60が設けられており、矩形開口部は、2つの長辺と2つの短辺を有している。この2つの短辺部分には、カードケース34に収納されたカード積層体の最上部のカードを上に凸に撓ませて、最上部のカードのみをカード積層体から分離するための2枚のカード分離板62a、bが取り付けられている。
【0030】
カード分離板62a、bは、ステンレス、鋼、エンジニアプラスチックのような弾性を有する材料で作られた板状部材であり、矩形状の水平部63a、bと、水平部63a、bのそれぞれの一端から下方に延びる垂下部65a、bとを有し、水平部63a、bと垂下部65a、bとの間には曲げ部64が形成されている。垂下部65a、bは、カードケース34の内側に向って凸状となるように湾曲しながら下方に向って延びている。カード分離板62a、bは、垂下部65a、bが蓋部材60の開口内に配置されるように、蓋部材60の両方の開口端に水平部63a、bがそれぞれ載置されて、蓋部材60に取付けられている。カード分離板62aは、水平部63aに、カードケース34の長辺と平行なスリット(図示せず)を有し、スリット内を通る留め具66aによって、蓋部材60に固定されている。カード分離板62bは、水平部63bに、孔(図示せず)を有し、この孔を通る留め具66bによって、蓋部材60に固定されている。2枚のカード分離板62a、bの垂下部65a、bの下端間の距離は、カードケース34の外方に向って広がっている開口部の長辺の長さよりも長くなっており、2枚のカード分離板62a、bの、それぞれの曲げ部64間の距離は、カード1の長辺の長さよりも短くなっている。また、垂下部65a、bの下端部はカードケース34の外方に向って広がっている両端部の上端部と上下方向ほぼ同じ高さでカード長辺方向外方側に位置しており、カード1が確実にカードケース34からカード分離板62a、b間に移動するようになっている。水平部63a、bの面の垂線と、カード分離板62a、bの湾曲部の接線とのなす角度(図7中のθ)は、5〜30度の間である。
【0031】
図7に示されているように、カード分離板62aの水平部63aの上には、更に2枚取り防止板68が重ねて配置されている。2枚取り防止板68は、カードケース34の長辺方向に平行なスリット(図示せず)を有しており、このスリットが分離板62aのスリットと整合されるように、2枚取り防止板68が、分離板62aの水平部63a上に配置されている。2枚取り防止板68は、スリットを通る留め具66aによって、蓋部材60に固定されている。
【0032】
カード分離板62aは、水平部63aの両端部のうち垂下部65aが延びている端部とは反対側の端部、すなわち分離板62aの後方端部から上方に向って垂直に延びる垂直部67を更に有し、この垂直部の上端部69で、留め具66cによって分離板取付台70に固定されている。分離板取付台70は、フランジ72と調整軸74を介して、蓋部材60上に固定された固定台76に取付けられている。調整軸74は、一端が分離板取付台70の背面、すなわち分離板62aの垂直部67が取り付けられている面と反対側の面に垂直に取り付けられて、カードケース34の長辺方向と平行な方向に延びている。調整軸74の、分離板取付台70の後方部分には、軸の周囲にフランジ72が設けられている。調整軸74の、フランジ72が設けられている部分よりも後方部分は、固定台76を貫いて延びており、終端部に、前後調整ネジ78が螺合されている。
【0033】
図7に示されているように、カード分離板62aの水平部63a上に、2枚取り防止板68が、留め具66aによって、取付けられている。2枚取り防止板68は、カード分離板62の曲げ部64よりも蓋部材60の開口部の内方に水平方向に突き出ており、カード積層体から最上部のカードを取り出す際に2枚目のカードの一端を上方から押さえて、カードケース34に収容されたカード積層体から最上部のカードを確実に1枚のみ取り出せるようになっている。
【0034】
図3に示されているように、搬送部10には、回転駆動される上下の搬送ローラ24a、24bの対が多数、設けられ、カードが搬送される搬送経路が規定されている。この搬送経路は、カード供給部12の下流端から印刷除去装置8の略全長にわたって延び、搬送ローラ24a、24bの回転駆動により、カード供給部12から供給されたカード1を、2つの除去液噴射部14、14、水洗部16、そして乾燥部18を通過させて搬送するように構成されている。
各搬送ローラ24a、24bは、搬送経路と直交する方向に長く延びており、横方向5列に並列配置されたカード1を並列状態で搬送することができるように構成されている。
【0035】
各除去液噴射部14、14は、搬送経路の下方に配置され複数の噴射ノズル26を備えた噴射部材28が配置され、噴射ノズル26から搬送ローラに挟持されて搬送されるカード1の下方に向けられた表側面に向け下方から印刷除去液を噴射しカード1の表側面の印刷を除去するように構成されている。
【0036】
本実施形態では、印刷除去液は、水等の液体に研磨材を含有させたものであり、研磨材としては、100〜1000番の粒度のものを用い、噴射する印刷除去液の量は、カード1の表側面を厚さ0.4〜2μm程度除去することができる量に調整される。
【0037】
印刷除去の好ましい条件としては、例えば、200番の研磨材で、吐出圧0.4MPa、カード搬送速度0.5m/分、または、80番の研磨材で、吐出圧0.4MPa、カード搬送速度0.5〜2m/分である。
【0038】
水洗部16は、複数の水洗ノズル30が搬送経路の上下に配置され、搬送経路に沿って並列状態で搬送されるカード1の各々に向け、図3に一点鎖線で示すように洗浄水を噴射することによって、カード1に付着した研磨材や汚れ等を除去するように構成されている。
【0039】
図3に示すように、水洗部16は、搬送方向に沿って配置された3組の洗浄ユニットを備えて、3段階の水洗を行うように構成されている。水洗ノズル30からの好ましい水圧は、0.1MPa〜0.6MPaである。
【0040】
乾燥部18は、搬送経路の上下に設けられた複数のブロワ32から、搬送経路に沿って並列状態で搬送されるカード1の各々に向けて温風を吹き付けることによって、カード1を乾燥させるように構成されている。
【0041】
次に、除去液噴射部14の構造について詳細に説明する。
図8は、本発明の好ましい実施形態の印刷除去装置8の除去液噴射部14の構成を示す模式的な側面図である。
上述したように、除去液噴射部14では、上下に対となって配置された搬送ローラ24a、24bによって規定されるカード1の搬送経路の下方に、複数の噴射ノズル26を備えた噴射部材28が配置されている。
【0042】
図8に示されているように、上下の搬送ローラ24a、24bの対は、噴射ノズル26の上方には配置されていない。噴射ノズル26の上方位置では、上下の搬送ローラ24a、24bの対に代えて、搬送経路の上方に配置された押さえローラ80のみが配置されている。
【0043】
このように、搬送経路をはさんで噴射ノズル26と対向した上方位置に設けられた押さえローラ80が配置されているので、噴射ノズル26から噴射される印刷除去液の勢いでカード1が上方に変位することが押さえローラ80により抑制される。
【0044】
図9は、本発明の好ましい実施形態の印刷除去装置8に用いられる噴射部材28の平面図である。噴射部材28は、搬送経路の両端に沿ってカード搬送方向に延びる左右の端パイプ82と、左右の端パイプ82間で所定間隔をあけて搬送経路に直交する方向に延びる7本のノズル用パイプ84とを備えている。各ノズル用パイプ84の上面には、7つの噴射ノズル26が等間隔に並列配置されている。したがって、カード搬送方向に直交する方向に沿って、7列のノズル列が形成されることなる。
【0045】
噴射部材28は、一方の端パイプ82に、図示しないポンプから研磨材を含む印刷除去液が圧送されるように構成されている。噴射部材28では、端パイプ82とノズル用パイプ84は流体連通しているので、両方の端パイプ82に流入した加圧された印刷除去液が、各ノズル用パイプ84に流入し、噴射ノズル26から噴射することになる。
【0046】
図9に示されているように、本実施形態の噴射部材28では、最下流のノズル用パイプ84(図9の最も右側)以外のノズル用パイプに取付けられた噴射ノズル26は、全体として正方配列をなすように、即ち、搬送経路に沿った方向に整列するように配置されている。また、最下流のノズル用パイプ84では、噴射ノズル26が、正方配列から半ピッチずれるように配置されている。
【0047】
隣接するノズル用パイプ84の間隔、ノズル用パイプ84上の噴射ノズル26の間隔等は、図9に示されているように搬送経路に沿って並列状態で搬送される5枚のカード1の各々の下方に向けられた表側面全体に、印刷除去液が均一な圧力で吹き付けられるように設定されている。
【0048】
上述したように、本実施形態の除去液噴射部14では、カード搬送方向に直交する方向に延びる複数のノズル列が設けられているので、搬送経路に沿って搬送されるカード1の下方を向けられた表側面には、複数回にわたり、印刷除去液が噴射される。
この結果、本実施形態では、印刷面4が、例えば、約0.4〜0.6μmずつ徐々に削られることによって除去されるので、一度の研磨で印刷面4全体を除去する場合に比べて均一に除去される。この結果、印刷面除去後のカードの厚みが均一となり、また、カードの表面粗さが均一となる。
【0049】
本実施形態では、噴射部材28のノズル用パイプ84には、所定間隔で、噴射ノズル26を取付け可能なノズル取付部86が設けられているので、噴射ノズル26の配置を、カード1の大きさ等に応じて、適宜変更することが可能となっている。
【0050】
次に、本実施形態の印刷除去装置8の動作について説明する。
最初に、印刷面を除去するカード1を、印刷が施されている表側面が下方に向くようにして、各カードケース34内に積層配置する。次いで、カードの寸法、材質、厚み等に合わせて、カード分離板62a、b間の距離を調整する。先ず、カード分離板62aと2枚取り防止板68とをカードケース34の長辺方向に自在に移動させることができるように、留め具66aを緩めておく。前後調整ネジ78を回転させると、調整軸74が伸縮するようになっており、調整軸74が伸びると、分離板取付台70が前方に押し出されて、カード分離板62aおよび2枚取り防止板68とが前方、すなわちカードケース34の開口部の内方に移動するようになっている。カード分離板62aを前後に移動させて、2枚のカード分離板62a、bの、それぞれの曲げ部64間の距離を調整することができる。分離板62aを移動しないように固定して、2枚取り防止板68のみを前後に移動させることによって、2枚取り防止板68の開口部内への突出長さを調整することもできる。
【0051】
各カードケース34にカード積層体を収容し、エレベータモータ40を作動させると、カード枚数に係わらず、カードケース34の上限センサーによって、各カードケース34の最上部のカード1の高さが常に同じ高さになるように、カード積層体がカード押出し部36によって上方に押し出される。最上部のカード1の位置がカードケース34の上限センサーと同じ高さになるまでカード押出し部36によって自動的に上方に押し上げられ、上限センサーが最上部のカード1を検知すると、カード押出し部36のエレベータモータ40の回転が停止してカード押出し板38は停止する。カードが上方に押上げられるときに、カードケース34に収容されたカード積層体の上部のカードは、2枚のカード分離板62a、bの間を通る。2枚のカード分離板62a、bは、蓋部材60の開口に向って狭くなるように湾曲面を形成しているので、カード1がカード分離板62a、bを通って上方に移動するにつれて、カード1は上方に向って凸に撓む。カード分離板62a、bの上方に移動するほど、カードの撓み方が大きくなるため、最上部のカードがその下にあるカードより大きく撓むことによって隙間が空き、最上部のカード1枚のみがカード積層体から分離された状態になる。
【0052】
次いで、カード移送部20の真空パッド54がリニア駆動装置56によって移動し、カードケース34の中心部に位置決めされ、下降して、円弧状のカード1を真空吸着する。真空パッド54が作動されると、真空パッド54の吸引面58に設けられている小孔から空気が吸入されるので、カード1が吸引面58上に吸着される。カード1を吸着した真空パッド54は、リニア駆動装置56によって前方へ移動し、ベルトコンベヤ22の上方の所定の位置まで移動して停止する。真空パッド54が停止すると、真空吸引が停止されて、カード1が真空パッド54から落下して、カード1がベルトコンベヤ22上に配置される。
【0053】
並列配置されたカード移送部20の5つのリニア駆動装置56は全て同期して作動するようになっているので、ベルトコンベヤ22上には、5枚のカード1が搬送方向に直交する方向に並列して配置される。
【0054】
各カード1は、ベルトコンベヤ22によって、上下の搬送ローラ24a、24bによって規定された搬送経路の上流端に搬送され、最上流の上下の搬送ローラ24a、24bによって挟持されて、搬送経路に沿って、先ず、除去液噴射部14に搬送される。各カード1は、各カード1の中心が各噴射ノズル26の中心の上方を通るように、除去液噴射部14に搬送される。
【0055】
除去液噴射部14では、搬送経路に沿って搬送されるカードの下方に向けられた表側面に、噴射ノズル26から研磨材を含む印刷除去液が噴射され印刷面4が除去される。本実施形態では、除去液噴射部14が搬送経路に沿って2箇所設けられているので、上記印刷除去液による印刷の除去が、それぞれの除去液噴射部14で行われる。
【0056】
印刷面が除去されたカード1は、洗浄部16に搬送され、水洗ノズル30から噴射される水によって、付着した研磨材や汚れ等が除去される。次いで、カード1は、乾燥部18に搬送され、ブロワ32によって両面が乾燥される。
【0057】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含される。
【0058】
例えば、上記実施形態の噴射部材28では、噴射ノズル26が、全体として正方配列をなすように、即ち、搬送経路に沿った方向に整列するように配置されているが、図10の噴射部材28のように、噴射ノズル26は、搬送方向下流側に向かって徐々にオフセットしていくように配置された構成でも良い。
【符号の説明】
【0059】
1 カード
2 基材層
4 印刷面
6 データ担持層
8 印刷除去装置
10 搬送部
12 カード供給部
14 除去液噴射部
16 水洗部
18 乾燥部
20 カード移送部
22 ベルトコンベヤ
24a、b 搬送ローラ
26 噴射ノズル
28 噴射部材
30 水洗ノズル
32 ブロワ
34 カードケース
36 カード押出し部
38 カード押出し板
40 エレベータモータ
42 シャフト
44 連結部
46 連結板
48 柱
50 孔
52 スリット
54 真空パッド
56 リニア駆動装置
58 吸引面
60 蓋部材
62a、b カード分離板
63a、b 水平部
64 曲げ部
65a、b 垂下部
66a、b、c 留め具
67 垂直部
68 2枚取り防止板
69 上端部
70 分離板取付台
72 フランジ
74 調整軸
76 固定台
78 前後調整ネジ
80 押さえローラ
82 端パイプ
84 ノズル用パイプ
86 ノズル取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側面に印刷が施され裏側面または内部に電子情報を担持するカードから前記印刷を除去する印刷除去装置であって、
前記カードを搬送する搬送部と、
該搬送部によって搬送されている前記カードに印刷除去液を噴射する除去液噴射部とを備え、
前記搬送部が、表側面を下方に向けた前記カードを上下から挟持し前記カードが搬送される搬送経路を規定する複数対の搬送ローラを備え、
前記除去液噴射部が、前記搬送ローラに挟持されて搬送される前記カードの下方に向けられた表側面に向け下方位置から印刷除去液を噴射する噴射ノズルを備え、
前記印刷除去装置は、さらに、
前記搬送経路をはさんで前記噴射ノズルと対向した上方位置に設けられた押さえローラを備えている、
ことを特徴とする印刷除去装置。
【請求項2】
前記搬送経路が、該搬送経路に直交する方向に配置された複数枚の前記カードを搬送可能に形成され、
前記噴射ノズルが、前記複数枚のカードの各々の表側面全体に対し、印刷除去液を噴射する、
請求項1に記載の印刷除去装置。
【請求項3】
前記搬送経路の上流端に、複数枚の前記カードを、前記搬送経路に直交する方向に並列配置された状態で順次、供給するカード供給装置を備えている、
請求項2に記載の印刷除去装置。
【請求項4】
前記噴射ノズルが複数、配置され、前記搬送経路に直交する方向に並列配置された複数枚の前記カードの各々の表側面全体に、印刷除去液を噴射する、
請求項3に記載の印刷除去装置。
【請求項5】
前記複数の噴射ノズルが、前記搬送経路に直交する方向に並列配置されている、
請求項4に記載の印刷除去装置。
【請求項6】
前記複数の噴射ノズルが、前記搬送経路に直交する方向でオフセットして配置されている、
請求項4に記載の印刷除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−228345(P2010−228345A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79795(P2009−79795)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(500214196)株式会社テレカルト (1)
【Fターム(参考)】