説明

印字装置のリボンカセット

【課題】印字装置や使用者の誤操作による逆回転の動力が加えられても、正回転時よりも壊れ難いメカヒュ−ズを有するエンドレスのインクリボンカセットの提供。
【解決手段】リボン巻取ギヤ3内に着脱自在に設けられて、印字装置のリボン駆動軸31に係合される係合部7、及び印字装置のリボン走行に対して正逆両方向の動力をリボン巻取ギヤ3に伝達する第1連結部8aと、動力を逆方向のみに伝達する第2連結部8bが形成された動力伝達手段5を有し、動力伝達手段5が正回転する場合に、リボン巻取ギヤ3がリボンロックにより回転を停止すると、第1連結部8aが破壊して動力伝達手段5とリボン巻取ギヤ3間での動力伝達が不能となり、動力伝達手段5が逆回転する場合に、リボン巻取ギヤ3にリボンロックに相当する負荷がかかっても、第2連結部8bの作用により、正回転時に比べて、連結部が破壊し難い印字装置のリボンカセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、インパクトプリンタ(ドットプリンタとも称せられる)に取付けられて使用されるインクリボンカセットの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のインクリボンカセットは、蓋板を除去した状態の斜視図を示した図5のような構成になっている。すなわちカセットケ−ス2の内部には、一対のリボン巻取ギヤ3と従動ギヤ4が回転自在に設けられるとともに、両ギヤ3,4の近傍箇所にインクリボン収納部6が形成されている。また、カセットケ−ス2には、印字装置に装備されたときに印字装置の印字ヘッド30が入り込む空間10が形成されている。
【0003】
インクリボンカセットの主体をなすエンドレス状のインクリボン1は、ジグザグに折曲されて詰まった状態でインクリボン収納部6に収納されているとともに、両ギヤ3,4に挟持されてカセットケ−ス2の内部周壁に沿った所定のリボン走行路に巻き掛ける状態に装備されている。このインクリボン1は、リボン巻取ギヤ3の内部に差し込まれた印字装置のリボン駆動軸31によって回転駆動される一対のギヤ3,4により、図5における反時計方向に回送するよう周回されるとともに、空間10内に入り込んだ印字ヘッド30のワイヤドット部により紙面に叩打され、自体に担持しているインクが紙面に転写され、印字される。
【0004】
図5中では、リボン巻取ギヤ3へのインクリボン1の巻き付きを防止するためのリボン巻取ギヤホルダ12と、従動ギヤ4へのインクリボン1の巻き付きを防止し従動ギヤ4を回転可能に保持するための従動ギヤホルダ13が、別部品で設けられているが、これらの機能は、カセットケ−ス2及びそれと係合する蓋体に一体として設けることもできる。
また、インクリボン1にインクを補給するインクパッドをカセットケ−ス2内に備え、リボン巻取ギヤ3又は従動ギヤ4にインクを補給する構造としたインクリボンカセットもある。
【0005】
図5に示すように、リボン巻取ギヤ3と従動ギヤ4とは外周に多数のギヤ歯3a、4aを有してインクリボン1を挟持しているので、リボン巻取ギヤ3と従動ギヤ4が回転することで、インクリボン収納部6に収納されるインクリボン1はジグザグに折曲されて詰まった状態で収納される。このため、カセットケ−ス2内でインクリボン1が詰まったり、走行経路中の部材に引っかかったりすることがあり、これに起因してリボンジャムが発生することがある。インクリボンカセットを長期間使用した場合には、インクリボン1が印字ヘッドに叩打されることによって解れることがあり、特にリボンジャム発生の可能性が大きくなる。
【0006】
リボンジャム発生により、インクリボン1はリボンロックして動かなくなるので、リボン巻取ギヤ3も回転しなくなり、印字装置のリボン駆動軸31に大きな負荷が作用し、この負荷が一定の値を超えると、印字装置のリボン駆動軸31が破壊する恐れがある。この場合、印字装置の修理が必要となり、印字作業の継続が不可能となるばかりではなく、修理に大きなコストと時間が掛かることになる。
【0007】
このような問題点を解決するために、特許文献1で、図6に示す次項目ア〜ウのような特徴を持つインクリボンカセットが提案されている。
【0008】
ア.インクリボンカセットのリボン巻取ギヤ3内の一方向から着脱自在な動力伝達手段5を設ける。
【0009】
イ.項目アの動力伝達手段5は、印字装置のリボン駆動軸31に係合される係合部7を有する。
【0010】
ウ.項目アの動力伝達手段5は、リボン巻取ギヤ3に装着されると、リボン巻取ギヤ3の内周面に形成された溝3bに連結されて、リボンジャムの発生時に相当する負荷がかかった場合には破壊する程度に強度が定められた凸部5cを有する。
【0011】
この溝3bと凸部5cで構成される連結部8は、所謂、メカヒュ−ズと呼ばれるものであり、リボンジャムが発生してインクリボン1がリボンロックして動かなくなると、凸部5cが破壊し、動力伝達手段5に印字装置のリボン駆動軸31から動力(回転)が伝達されても、動力伝達手段5はリボン巻取ギヤ3に対して空転する。したがって、リボンジャムが発生してインクリボン1がリボンロックして動かなくなっても、印字装置のリボン駆動軸31が破壊することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3017410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1のインクリボンカセットでは、連結部8が凸部5cと溝3bで構成されているので、図6に示すような逆回転防止機構11が設けられたインクリボンカセットでは、印字装置が停止したり、インクリボンカセットを保持して印字装置内で左右に移動するキャリッジ(図示せず)が移動方向を反転する際に、連結部8に衝撃力が繰り返し作用して、連結部(メカヒュ−ズ)8が破壊するという問題があった。また、逆回転防止機構11の無いインクリボンカセットでも、使用者の誤操作によって、連結部(メカヒュ−ズ)8が破壊するという問題があった。
【0014】
図6のX矢視図(逆回転防止機構詳細)に示すような逆回転防止機構11が設けられたインクリボンカセットでは、リボン巻取ギヤ3が逆回転(図中の逆回転)を開始しただけで遊星ギヤ14が図中手前に偏り、リボン巻取ギヤホルダ12に設けられた逆回転防止ツメ12aと噛み合って回転できなくなり、遊星ギヤ14と連動するリボン巻取ギヤ3も回転できなくなる。このため、リボン巻取ギヤ3はほとんど逆回転しない。一方、印字装置のリボン駆動軸31は、動力を急に停止した際やキャリッジ反転の際に逆回転をすることがあり、これに伴って、動力伝達手段5も逆回転する。よって、この逆回転のたびに連結部8の凸部5cが溝3bは繰り返し強く衝突するので、リボンジャムの発生時に相当する負荷がかかると破壊するように強度が弱く定められた凸部5cは、破壊することがあった。
【0015】
また、エンドレス状のインクリボン1を収納するインクリボンカセットでは、インクリボン1の弛みをとるために、使用者が掴んでギヤを回転させるツマミ3fを、リボン巻取ギヤ3か従動ギヤ4のどちらか一方に設ける必要がある。インクリボンカセットの小型化やインクリボン走行の安定化を考慮すると、ツマミ3fは印字装置の動力を受ける側のギヤであるリボン巻取ギヤ3に設ける方が有利である。このため、ほとんどの場合、ツマミ3fはリボン巻取ギヤ3に設けられている。さらに、リボン巻取ギヤが、中軸である動力伝達手段5とギヤ部であるリボン巻取ギヤ3に分離された場合には、インクリボンカセットの小型化やインクリボン走行の安定化を考慮すると、ツマミ3fは動力伝達手段5に設けるべきである。しかしながら、動力伝達手段5にツマミ3fを設けた場合に、使用者がリボンの弛みをとろうとしてツマミ3fを誤ってリボン走行と逆方向に回転させると、逆回転防止機構11が設けられたインクリボンカセットでは、リボン巻取ギヤ3が逆回転しないので、連結部8(メカヒュ−ズ)を破壊することがあった。また、逆回転防止機構11を有しないインクリボンカセットでも、ツマミ3fを誤ってリボン走行と逆方向に回転させると、リボン巻取ギヤ3を挟んでインクリボン収納部6と反対側のインクリボンカセット内の狭い空間にインクリボン1が詰まったり、複数枚重なったインクリボンがギヤ間に挟まったりすることによって、インクリボン1がロックして、リボン巻取ギヤ3が回転できなくなり、連結部8(メカヒュ−ズ)を破壊することがあった。すなわち、この発明の課題は、印字装置や誤操作によって逆回転の動力が加えられても、正回転時よりも壊れ難い連結部(メカヒュ−ズ)8を有する印字装置に使用されるエンドレスのインクリボンカセットを、必要以上に大きくすることなく、且つ、インクリボンの走行性を損なうことなく、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、少なくとも、カセットケース2と、このカセットケース2内のインクリボン収納部6に折りたたまれて収納され一部が印字装置の印字ヘッド30の前面に引き出されるエンドレスのインクリボン1と、前記カセットケース2の内部に回転自在に保持されるとともにそれぞれ多数のギヤ歯3a、4aを外周部に有するリボン巻取ギヤ3及び従動ギヤ4を有し、前記リボン巻取りギヤ3と前記従動ギヤ4の間に前記インクリボン1を挟み込んで前記インクリボン1を、前記インクリボン収納部6内に巻き取ることができて、前記印字装置に着脱自在に装着されるインクリボンカセットにおいて、
前記リボン巻取ギヤ3内に一方向から着脱自在に設けられて前記印字装置のリボン駆動軸31に係合される係合部7、前記リボン巻取ギヤ3に対する装着に伴いそのリボン巻取ギヤ3の内周面に形成された溝3b及び/又は凸部3cに連結されて印字装置の動力を前記リボン巻取ギヤ3に伝達する第1連結部8a、及びリボン巻取ギヤ3が逆回転する場合にのみ前記印字装置の動力を前記巻取ギヤ3に伝達する第2連結部8bが、形成された動力伝達手段5を有し 前記動力伝達手段5が正回転する場合に、前記インクリボン1がリボンロックして動かなくなることにより前記リボン巻取ギヤ3が回転を停止し、さらに前記動力伝達手段5を正回転しようとすると、前記第1連結部8aが破壊して前記動力伝達手段5と前記リボン巻取ギヤ3間での正回転の動力伝達が不能となることを特徴とする印字装置のリボンカセットである。
【0017】
請求項2の発明は、前記第2連結部8bが、前記リボン巻取ギヤ3内に設けられた少なくとも1個のラチェット歯3dと、前記動力伝達手段5に設けられ前記ラチェット歯3dと係合する係止片5eによって構成されることを特徴とする請求項1の印字装置のリボンカセットである。
【0018】
請求項3の発明は、前記第2連結部8bが、前記動力伝達手段5の外周に設けられた少なくとも1個のラチェット歯5dと、前記リボン巻取ギヤ3に設けられ前記ラチェット歯5dと係合する係止片3eによって構成されることを特徴とする請求項1の印字装置のリボンカセットである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、印字装置で印字中にインクリボンカセット内でリボンジャム等により前記インクリボン1がリボンロックして動かなくなっても、リボン巻取ギヤ3と動力伝達手段5で構成される第1連結部8aが破壊され、印字装置の動力をインクリボン1に伝えることが出来なくなるので、印字装置のリボン駆動軸31が破壊されることが無く、正常なリボン走行の逆方向の動力が、印字装置や使用者の誤操作によって係合部7やツマミ3fに加えられた場合には、第2連結部8bによってもリボン巻取ギヤ3に動力が伝達されるので、第1連結部8aが破壊されにくくなる。
【0020】
請求項2の発明によれば、リボン巻取ギヤ3と動力伝達手段5で構成される第2連結部8bが、ラチェット歯と係止片の簡単な構造で構成されるので、部品製作が容易で、かつ組み立ても容易なり、簡単な方法で請求項1の効果が達成される。
【0021】
請求項3の発明によっても、リボン巻取ギヤ3と動力伝達手段5で構成される第2連結部8bが、ラチェット歯と係止片の簡単な構造で構成されるので、部品製作が容易で、かつ組み立ても容易となり、簡単な方法で請求項1の効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例に係るインクリボンカセットの蓋板を除去した状態の斜視図である。
【図2】第1実施例にかかるリボン巻取ギヤ3と動力伝達手段5の詳細図である。識別を容易にするため、係止片5eの断面のみをクロスハッチングで表示する。
【図3】本発明の第2実施例に係るインクリボンカセットの蓋板を除去した状態の斜視図である。
【図4】第2実施例にかかるリボン巻取ギヤ3と動力伝達手段5の詳細図である。識別を容易にするため、係止片3eの断面のみをクロスハッチングで表示する。
【図5】従来のメカヒュ−ズが設けられていないインクリボンカセットの蓋板を除去した状態の斜視図である。
【図6】従来のインクリボンカセットで、リボン巻取ギヤ3の溝部3bと動力伝達手段5の凸部5cによるメカヒュ−ズが設けられたインクリボンカセットの蓋板を除去した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づき本発明の実施例を説明する。図1は、第1実施例に係るインクリボンカセットの蓋板を除去した状態の斜視図であり、図2は、第1実施例にかかるリボン巻取ギヤ3と動力伝達手段5の詳細図である。
【0024】
図1に示す実施例1のインクリボンカセットは、インクリボン1、インクリボン収納部6と印字装置の印字ヘッド30が入り込む空間10を有するカセットケ−ス2、カセットケ−ス2内に回転自在に設けられたに一対のリボン巻取ギヤ3と従動ギヤ4で構成される点は、従来のインクリボンカセットと同様である。また、リボン巻取ギヤ3の内部に差し込まれた印字装置のリボン駆動軸31によってギヤ3,4が回転されることにより、インクリボン1が、インクリボン収納部6から引き出され、図1における反時計方向に回送するよう周回されるとともに、空間10内に入り込んだ印字ヘッドのワイヤドット部により紙面に叩打され、自体に担持しているインクが紙面に転写印字された後に、再びインクリボン収納部6に収納される点も従来のインクリボンカセットと同様である。
【0025】
実施例1のインクリボンカセットは印字装置のリボン駆動軸31と係合する係合部7を有する動力伝達手段5が、リボン巻取ギヤ3の一方向から着脱可能となっている点も、従来のカセットと同様である。
【0026】
実施例1のリボンカセットの特徴は、印字装置のリボン駆動軸31から動力伝達手段5が受けた動力をリボン巻取ギヤ3に伝達する連結部8が、図1と図2に示すように、動力伝達手段5の外周部に設けられた凸部5cとリボン巻取ギヤ3に設けられ凸部5cと係合する溝3bで構成される第1連結部8aと、リボン巻取ギヤの内周部に設けられラチェット歯3dと、動力伝達手段5に設けられラチェット歯3dと係合する係止片5eによって構成される第2連結部8bの2種類を有することである。
【0027】
リボン巻取ギヤ3が、インクリボン1を印字装置の印字ヘッド30前面からインクリボン収納部6に収納する回転方向を正回転、これと逆の回転を逆回転とする。第2連結部8bは、図2の上2段に示すように、逆回転に回転するときのみ、動力伝達手段5に加えられた動力をリボン巻取ギヤ3に伝達するように、ラチェット歯3dと係止片5eが形成されている。したがって、動力伝達手段5に正回転の動力が加えられると、第1連結部8aのみで、動力が伝達される。
【0028】
動力伝達手段5が正回転する場合に、インクリボン1がリボンロックして動かなくなると、リボン巻取ギヤ3に動力伝達できなくなるようにするために、リボン巻取ギヤ3に一定以上の負荷がかかった場合には、第1連結部8aの凸部5cが破壊されるように強度が設定される。また、第1連結部8aが破壊されると、図2の上から2段目に示すように、第2連結部8bの係止片5eはラチェット歯3dの傾斜に沿って内側に変形するので、動力伝達手段5はリボン巻取ギヤ3に対して空転する。このため、リボンロックが発生しても、印字装置の駆動軸31が破壊されることはない。
【0029】
一方、逆回転の動力が、動力伝達手段5に加えられた場合には、第1連結部8aと第2連結部8bの両方がリボン巻取ギア3に動力を伝達することになるので、逆回転の動力が動力伝達手段5に作用した場合は、正回転の動力が作用する場合に比べて、第1連結部8aの凸部5cは破壊されにくくなる
【0030】
図2に示すように、凸部5cが破壊する時に凸部5cに作用する荷重をP(N)、凸部5cに荷重が作用する位置の動力伝達手段5中心からの距離(荷重半径)をr(m)、印字装置のリボン駆動軸31が破壊するトルクをTrb(N・m)、印字装置で印字に使用する場合にインクリボン1をリボン巻取ギヤ3と従動ギヤ4で巻取り、インクリボン収納部6に収納する際に、リボン巻取ギヤ3に係る負荷トルク最大値(リボンロックが発生しない場合)をTrm(N・m)とすると、これらは、次の関係式を満たしていることが好ましい。
【0031】
Trb>1.5×P×r
【0032】
P×r>1.5×Trm
【0033】
次の関係式を満たしていることが、さらに好ましい。
【0034】
Trb>2×P×r
【0035】
P×r>2×Trm
【0036】
次の関係式を満たしていることが、よりさらに好ましい。
【0037】
Trb>4×P×r
【0038】
P×r>4×Trm
【0039】
図3は、第2実施例に係るインクリボンカセットの蓋板を除去した状態の斜視図であり、図4は、第2実施例にかかるリボン巻取ギヤ3と動力伝達手段5の詳細図である。
【0040】
図3に示す実施例2のインクリボンカセットは、動力伝達手段5が受けた動力をリボン巻取ギヤ3に伝達する第2連結部8bが、図4に示すように、動力伝達手段5の外周に設けられラチェット歯5dと、リボン巻取ギヤ3に設けられラチェット歯5dと係合する係止片3eによって構成されること以外は実施例1と同様である。
【0041】
第2連結部8bは、図4の上2段に示すように、逆回転に回転するときのみ、動力伝達手段5に加えられた動力をリボン巻取ギヤ3伝達するように、ラチェット歯5dと係止片3eが形成されている。したがって、動力伝達手段5に正回転の動力が加えられると、第1連結部8aのみで、動力が伝達される。
【0042】
動力伝達手段5が正回転する場合に、インクリボン1がリボンロックして動かなくなると、リボン巻取ギヤ3に動力伝達できなくなるようにするために、リボン巻取ギヤ3に一定以上の負荷がかかった場合には、第1連結部8aの凸部5cが破壊されるように強度が設定される。また、第1連結部8aが破壊されると、図4の上から2段目に示すように、第2連結部8bの係止片3eはラチェット歯5dの傾斜に沿って外側に変形するので、動力伝達手段5はリボン巻取ギヤ3に対して空転する。このため、リボンロックが発生しても、印字装置の駆動軸31が破壊されることはない。
【0043】
一方、逆回転の動力が、動力伝達手段5に加えられた場合には、第1連結部8aと第2連結部8bの両方がリボン巻取ギア3に動力を伝達することになるので、逆回転の動力が動力伝達手段5に作用した場合は、正回転の動力が作用する場合に比べて、第1連結部8aの凸部5cは破壊されにくくなる
【0044】
図4に示すように、凸部5cが破壊する時に凸部5cに作用する荷重をP’(N)、凸部5cに荷重が作用する位置の動力伝達手段中心からの距離(荷重半径)をr’(m)、印字装置のリボン駆動軸31が破壊するトルクをTrb’(N・m)、印字装置で印字に使用する場合にインクリボン1をリボン巻取ギヤ3と従動ギヤ4で巻取り、インクリボン収納部6に収納する際に、リボン巻取ギヤ3に係る負荷トルクの最大値(リボンロックが発生しない場合)をTrm’(N・m)とすると、これらは、次の関係式を満たしていることが好ましいのも実施例1と同様である。
【0045】
Trb’>1.5×P’×r’
【0046】
P’×r’>1.5×Trm’
【0047】
次の関係式を満たしていることが、さらに好ましいのも実施例1と同様である。
【0048】
Trb’>2×P’×r’
【0049】
P’×r’>2×Trm’
【0050】
次の関係式を満たしていることが、よりさらに好ましいのも実施例1と同様である。
【0051】
Trb’>4×P’×r’
【0052】
P’×r’>4×Trm’
【0053】
なお、本発明を実施する形態は、上記実施例1及び2の形態に限定されるものではなく、本発明の請求項1の要件を満たすものであれば、動力伝達手段5とリボン巻取ギヤ3で構成される連結部8aと8bの形態は任意の形態のインクリボンカセットとすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 インクリボン
2 カセットケース
3 リボン巻取ギヤ
3a ギヤ歯(リボン巻取ギヤ)
3b 溝(リボン巻取ギヤ)
3c 凸部(リボン巻取ギヤ)
3d ラチェット歯(リボン巻取ギヤ)
3e 係止片(リボン巻取ギヤ)
3f ツマミ
4 従動ギヤ
4a ギヤ歯(従動ギヤ)
5 動力伝達手段
5c 凸部(動力伝達手段)
5d ラチェット歯(動力伝達手段)
5e 係止片(動力伝達手段)
6 インクリボン収納部
7 係合部
8 連結部
8a 第1連結部
8b 第2連結部
10 (印字装置の印字ヘッドが入り込む)空間
11 逆回転防止機構
12 リボン巻取ギヤホルダ
12a 逆転防止ツメ
13 従動ギヤホルダ
14 遊星ギヤ
30 印字装置の印字ヘッド
31 印字装置のリボン駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、カセットケースと、このカセットケース内のインクリボン収納部に折りたたまれて収納され一部が印字装置の印字ヘッドの前面に引き出されるエンドレスのインクリボンと、前記カセットケースの内部に回転自在に保持されるとともにそれぞれ多数のギヤ歯を外周部に有するリボン巻取ギヤ及び従動ギヤを有し、前記リボン巻取りギヤと前記従動ギヤの間に前記インクリボンを挟み込んで前記インクリボンを、前記インクリボン収納部内に巻き取ることができて、前記印字装置に着脱自在に装着されるインクリボンカセットにおいて、
前記リボン巻取ギヤ内に一方向から着脱自在に設けられて前記印字装置のリボン駆動軸に係合される係合部、前記リボン巻取ギヤに対する装着に伴いそのリボン巻取ギヤの内周面に形成された溝及び/又は凸部に連結されて印字装置の動力を前記リボン巻取ギヤに伝達する第1連結部、及びリボン巻取ギヤが逆回転する場合にのみ前記印字装置の動力を前記巻取ギヤに伝達する第2連結部が、形成された動力伝達手段を有し、前記動力伝達手段が正回転する場合に、前記インクリボンがリボンロックして動かなくなることにより前記リボン巻取ギヤが回転を停止し、さらに前記動力伝達手段を正回転しようとすると、前記第1連結部が破壊して前記動力伝達手段と前記リボン巻取ギヤ間での正回転の動力伝達が不能となることを特徴とする印字装置のリボンカセット。
【請求項2】
前記第2連結部は、前記リボン巻取ギヤ内に設けられた少なくとも1個のラチェット歯と、前記動力伝達手段に設けられ前記ラチェット歯と係合する係止片によって構成されることを特徴とする請求項1の印字装置のリボンカセット。
【請求項3】
前記第2連結部は、前記動力伝達手段の外周に設けられた少なくとも1個のラチェット歯と、前記リボン巻取ギヤに設けられ前記ラチェット歯と係合する係止片によって構成されることを特徴とする請求項1の印字装置のリボンカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236308(P2012−236308A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106127(P2011−106127)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】