説明

危険度算出装置及び危険度算出方法

【課題】精度の高い危険度算出を行うことができる危険度算出装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る危険度算出装置1においては、自車両の運転者にとって死角になる領域を検出する死角領域検出手段21と、死角領域検出手段21により検出された死角を構成する死角構成物の情報を認識する死角構成物認識手段22と、死角構成物の情報に基づいて死角構成物が形成する死角領域から移動物体が飛び出す危険度を設定する危険度設定手段24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者にとって死角となる領域の危険度を算出する危険度算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の運転者にとって死角となる場所からの物体の飛び出しを予測することにより衝突を回避する装置及び方法が知られている。例えば、特許文献1では、飛び出しが想定される死角領域の道幅を演算し、その道幅から飛び出してくる可能性のある対象を予測する。そして、予測される飛び出し対象の移動可能範囲を推定して衝突する危険度の設定を行う車両用走行支援装置及び車両用走行支援方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−260217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような車両用走行支援装置によれば、特定の死角からの飛び出しに対する危険度算出を行うことが可能となる。ここで、上述したような車両用走行支援装置では、複数の死角が存在する場合にはすべての死角から飛び出しを想定することになる。そのため、実際の道路環境のように多くの死角が存在する環境においては、多くの死角からの飛び出しを想定することとなり運転者への注意喚起や介入制御を行う運転支援システムが不要に作動しすぎるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、死角構成物に基づいて危険度を設定する死角を選別することで死角構成物に応じた適切な危険度算出を行うことができる危険度算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る危険度算出装置は、自車両の運転者にとって死角になる領域を検出する死角領域検出手段と、死角領域検出手段により検出された死角を構成する死角構成物の情報を認識する死角構成物認識手段と、死角構成物の情報に基づいて死角構成物が形成する死角領域から移動物体が飛び出す危険度を設定する危険度設定手段と、を備える。
【0007】
本発明に係る危険度算出装置においては、死角構成物の情報に基づいて死角構成物が形成する死角領域の危険度を設定することで死角構成物に応じた適切な危険度算出を行うことができる。このように、死角領域に対して適切な危険度が設定されることにより、運転者への注意喚起や介入制御を行う運転支援システムが不要に作動することが抑制される。
【0008】
また、死角構成物の情報に基づいて死角領域を危険度設定の対象から除外するか否かを判定する死角選別手段を更に備えることが好適である。
【0009】
本発明に係る危険度算出装置は、死角構成物の情報から死角構成物が形成する死角領域の危険度が低いと判断される場合は、飛び出しを予測する死角から除外することができる。これにより、危険度算出を行う死角領域の数を減らすことができるため演算負荷を低減することができる。
【0010】
また、前記危険度算出手段は、前記死角構成物の高さに基づいて死角領域の危険度を設定することが好適である。
【0011】
死角構成物の高さにより死角構造物が形成する死角領域の大きさが異なることから、死角構成物の背後に存在する移動物体を認識できるか否かが変わる。このため、死角構成物の高さに基づいて死角領域の危険度を設定することにより適切な危険度の設定を行うことができる。
【0012】
さらに、危険度算出手段は、死角構成物の高さが高いほど死角構成物が形成する死角領域の危険度を高く設定することが好適である。
【0013】
死角構成物の高さが高いほど、物体の設置箇所において死角領域が大きくなり、認識できない移動物体が増加する。そのため、死角構成物の高さが高いほど死角構成物が形成する死角領域の危険度を高く設定することにより適切に死角領域に対する危険度を設定することができる。
【0014】
また、危険度算出手段は、死角構成物の幅に基づいて死角領域の危険度を設定することが好適である。
【0015】
死角構成物の幅により死角構造物が形成する死角領域の大きさが異なることから、死角構成物の背後に存在する移動物体を認識できるか否かが変わる。このため、死角構成物の幅に基づいて死角領域の危険度を設定することにより適切な危険度の設定を行うことができる。
【0016】
さらに、危険度算出手段は、死角構成物の幅が広いほど死角構成物が形成する死角領域の危険度を高く設定することが好適である。
【0017】
死角構成物の幅が広いほど、物体の設置箇所において死角領域が大きくなり、認識できない移動物体が増加する。そのため、死角構成物の幅が広いほど死角構成物が形成する死角領域の危険度を高く設定することにより適切に死角領域に対する危険度を設定することができる。
【0018】
また、本発明に係る危険度算出方法は、自車両の運転者にとって死角になる領域を検出する死角領域検出工程と、死角領域検出手段により検出された死角を構成する死角構成物の情報を認識する死角構成物認識工程と、死角構成物の情報に基づいて死角構成物が形成する死角領域から移動物体が飛び出す危険度を設定する危険度設定工程と、を含む。
【0019】
本発明に係る危険度算出方法においては、死角構成物の情報に基づいて死角構成物が形成する死角領域の危険度を設定することで死角構成物に応じた適切な危険度算出を行うことができる。これにより、運転者への注意喚起や介入制御を行う運転支援システムが不要に作動することが抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、死角構成物に基づいて死角を選別することで精度の高い危険度算出を行うことができる危険度算出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る危険度算出装置のブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る危険度算出装置の動作についてのフローチャートである。
【図3】占有面積率を説明するための死角構成物の画像の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る死角選別処理についてのフローチャートである。
【図5】死角構成物の高さと危険度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る危険度算出装置を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の危険度算出装置1は、ECU2、カメラ11、レーダ12、車輪速センサ13、ヨーレートセンサ14、舵角センサ15、表示装置31、スピーカ32、アクチュエータ33を備えている。この危険度算出装置1は、自動車などに搭載される。
【0024】
ECU2には、カメラ11、レーダ12からなる周辺環境を計測するためのセンサが接続されている。
【0025】
カメラ11は、自車両の周辺を撮像する装置である。自車両の周辺とは、少なくとも前方であり、必要に応じて側方、後方も撮像する。カメラ11は、自車両の周辺を撮像し、その撮像画像のデータを画像信号としてECU2に送信する。
【0026】
レーダ12は、自車両の周辺の物体を検出するための装置である。自車両の周辺とは、少なくとも前方であり、必要に応じて側方、後方の物体も検出する。レーダ12としては、例えば、レーザレーダ、ミリ波レーダがある。レーダ12では、電磁波を水平面内でスキャンしながら送信し、物体に反射して戻ってくる反射波を受信し、その送受信に関する情報を検出する。そして、レーダ12は、その検出した送受信情報をレーダ信号としてECU2に送信する。
【0027】
更に、ECU2には、車輪速センサ13、ヨーレートセンサ14、舵角センサ15が接続されている。車輪速センサ13は、自車両の車輪の回転速度を検出するセンサである。車輪速センサ13では、検出した車輪の回転速度を車輪速信号としてECU2へ送信する。ヨーレートセンサ14は、自車両のヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ14では、検出したヨーレートをヨーレート信号としてECU2へ送信する。舵角センサ15は、自車両の舵角を検出するセンサである。例えば、舵角センサ4は、ステアリングシャフトの回転角(操舵角)を検出することによって自車両の舵角を検出する。舵角センサ15では、検出した舵角を舵角信号としてECU2へ送信する。
【0028】
表示装置31は、車両内に設置されるディスプレイであり、ECU2から出力される運転支援信号に応じて各種情報を表示し、運転者に報知する。スピーカ32は、ECU2からの運転支援信号に応じて所定の音声を出力する。このように、ディスプレイ31及びスピーカ32は、HMI(Human Machine Interface)として画面表示及び音声出力を行う。
【0029】
アクチュエータ33は、ECU2が運転支援信号に基づいて、ドライバーの運転操作に介入して、自車両のブレーキやアクセルを駆動させるブレーキアクチュエータやアクセルアクチュエータである。
【0030】
ECU2は、CPU[Central Processing Unit]や各種メモリなどからなり、危険度算出装置1を統括制御する。ECU2は、メモリに格納されている各アプリケーションプログラムをロードし、CPUで実行することによって死角領域検出部21、死角構成物認識部22、死角選別部23、死角危険度設定部24、衝突確率算出部25、運転支援制御部26が構成される。なお、本実施形態では、死角領域検出部21が特許請求の範囲に記載する死角領域検出手段に、死角構成物認識部22が死角構成物認識手段に、死角選別部23が死角選別手段に、死角危険度設定部24が危険度設定手段に相当する。
【0031】
死角領域検出部21は、一定時間毎にカメラ11による画像情報及びレーダ12によるレーダ情報に基づいて、死角の発生要因となる物体(以下、本明細書では死角構成物という)を検出し、死角構成物が形成する死角情報を取得する。例えば、死角情報としては死角の領域、死角の位置、死角の数があり、これらのすべてあるいは一部が取得される。死角領域検出部21が検出した死角情報は、死角構成物認識部22に送信される。死角の検出はカメラ11やレーダ12の両方を用いて検出してもよいし、検出性能の高いいずれか一方のセンサの検出結果を用いてもよい。なお、死角の検出は、従来公知の方法を適用して行うことができる。
【0032】
死角構成物認識部22は、検出した死角構成物の情報を取得する。死角構成物の情報とは、例えば、死角構成物の位置、大きさ(横方向の長さ、奥行き方向の長さ、高さ)や形状、種類(壁、柱、樹木、車両など)、占有面積率、死角構成物までの距離、死角構成物が存在する方向、相対速度があり、これらのすべてあるいは一部が取得される。死角構成物認識部22が取得した死角構成物の情報は、死角選別部23に送信される。
【0033】
死角選別部23は、死角構成物の情報に基づいて、その構成物が構成する死角領域に移動物体が存在し、不意に飛び出してくる可能性があるかどうかを判断する。死角構成物が形成する死角領域に移動物体が存在しないと判断される場合や、移動物体が飛び出してくる可能性が著しく低いと判断される場合には、その死角領域を飛び出し予測する死角から排除する決定をし、その制御信号を死角危険度設定部24に送信する。
【0034】
死角危険度設定部24は、死角構成物の情報に基づいてその死角構成物が形成する死角領域に存在し得る移動物体が飛び出す危険度を設定する。また、死角選別部23から飛び出し予測する死角から排除する制御信号が送信されている場合には、その死角領域の危険度の設定を行わない。
【0035】
衝突確率算出部25は、死角危険度設定部24において設定された危険度に基づいて、自車両と飛び出してくると予測される移動物体との衝突確率を算出する。衝突確率算出部25では、車輪速センサ13、ヨーレートセンサ14、舵角センサ15の計測結果に基づき所定時間後の自車両の将来位置を予測するとともに、死角領域から飛び出してくる移動物体の移動速度、移動方向から所定時間後の移動物体の将来位置を予測することにより、自車両と移動物体が衝突する確率を算出する。この衝突確率の算出は従来公知の方法を適用して行うことができる。
【0036】
運転支援制御部26は、衝突確率算出部25によって算出された衝突確率にも基づいて衝突を回避するための制御を行うものである。例えば、自車両と死角領域から飛び出す移動物体との衝突確率が高いと判断された場合には、表示装置31やスピーカ32により運転者に注意喚起を行い、もしくはブレーキ制御信号やエンジン制御信号をアクチュエータ33に送信することで介入制御を実施することにより、衝突を回避する。
【0037】
次に、本実施形態に係る危険度算出装置の動作について説明する。
【0038】
図2は、本実施形態に係る危険度算出装置の動作についてのフローチャートである。図2に示す一連の処理は、例えば障害物認識ECU2において予め設定された所定周期で繰り返し実行される。
【0039】
運転支援の処理が開始されると、カメラ11、レーダ12、車輪速センサ13、ヨーレートセンサ14、舵角センサ15などの自車両に搭載された各種センサの検出結果が読み込まれる(S1)。読み込まれた計測値はECU2内のRAMに記憶される。
【0040】
続いて、画像情報及びレーダ情報に基づいて車両周辺に存在する死角が検出される(S2)。また、検出された死角に対しインデックス(i=1,2,・・・,n)が設定され記憶される(S3)。その後、インデックスi=1に設定され(S4)、そのインデックスに対応する死角構成物の情報が取得される(S5)。死角構成物の情報としては、例えば、死角構成物の大きさ(幅、高さ、奥行き)、死角構成物の種類、死角構成物の占有面積率が取得される。
【0041】
死角構成物の大きさは、例えばレーダ12により取得された自車両と死角構成物の距離と画像中において死角構成物が占める面積に基づいて算出される。また、死角構成物の種類は、例えばテンプレートを用いたパターンマッチングにより認識される。
【0042】
死角構成物の占有面積率について図3を参照して説明する。図3は、カメラ11の撮像画像から死角構成物を囲う最小の長方形の範囲を切り出した画像である。図3の斜線部分は死角構成物以外の背景領域を示している。死角構成物の占有面積率は、切り出された画像の面積に対する死角構成物が占める範囲の割合である。占有面積率は、例えば、切り出された画像から死角構成物と死角構成物以外の領域を二値化処理し、それぞれの画素数を除算することにより算出される。
【0043】
続いて、死角選別処理が行われる(S6)。図4を参照して死角選別処理について説明する。死角選別処理では、まず検出された死角構成物が壁であるか否かが判定される(S21)。構造物が壁であると判定されると、壁は高さが設定値Hw(例えば1m)以上であるか否かが判定される(S22)。壁の高さが設定値Hw以上の場合には、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域として設定される(S30)。一方、S22において、壁の高さが設定値Hwより低い場合には、死角領域から移動物体が飛び出してくることは考えにくいことから、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域から除外される(S31)。
【0044】
S21において、死角構造物が壁ではないと判定された場合には、検出された死角構成物が柱であるか否かが判定される(S23)。構造物が柱であると判定されると、柱の幅が設定値Wc(例えば0.5m)以上であるか否かが判定される(S24)。柱の幅が設定値Wc以上の場合には、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域として設定される(S30)。一方、S24において、柱の幅が設定値Wcより狭い場合には、死角領域に移動物体が存在している可能性は低いと考えられるため、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域から除外される(S31)。
【0045】
S23において、死角構造物が柱ではないと判定された場合には、検出された死角構成物が樹木であるか否かが判定される(S25)。構造物が樹木であると判定されると、樹木の占有面積率が設定値At(例えば60%)以上であるか否かが判定される(S26)。樹木の占有面積率が設定値At以上の場合には、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域として設定される(S30)。一方、S26において、樹木の占有面積率が設定値Atより低い場合には、死角領域に移動物体が存在していても移動物体から自車両が見えていることが予測されるため、移動物体の飛び出し確率は低いと考え、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域から除外される(S31)。
【0046】
S25において、死角構造物が樹木ではないと判定された場合には、検出された死角構成物が車両であるか否かが判定される(S27)。構造物が車両であると判定されると、車両の高さが設定値Hc(例えば1m)以上であるか否かが判定される(S28)。車両の高さが設定値Hc以上である場合には、車両の占有面積率が設定値Ac(例えば60%)以上であるか否かが判定される(S29)。樹木の高さが設定値Hc以上で、かつ、占有面積率が設定値Ac以上の場合には、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域として設定される(S30)。一方、S28において、車両の高さが設定値Hcより低い場合や車両の占有面積率が設定値Acより小さい場合には、死角領域から移動物体が飛び出してくる可能性は低いと考え、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域から除外される(S31)。
【0047】
また、S27において死角構造物が車両ではないと判定された場合には、インデックスiの死角領域は危険度設定を行う死角領域として設定される(S30)。
【0048】
S30もしくはS31が終了すると、図2に戻り、インデックスiの死角領域に対して危険度設定が行われるか否かが判定される(S7)。S7においてインデックスiの死角領域が、危険度設定を行う死角領域から除外されている場合にはS10に処理が移行される。一方、インデックスiの死角領域が危険度設定を行う死角領域として設定されている場合には、危険度設定処理が行われる(S8)。危険度設定は、死角領域の位置、大きさ、死角構造物の種類などの情報に基づいて行われる。この危険度は、予めECU2に記憶されている危険度決定テーブルを参照することで決定される。危険度決定テーブルは、例えば過去に発生したヒヤリハット事例に基づいて、死角領域の位置、大きさ、死角構造物の種類などによって移動物体が飛び出してくる危険度を数値化して記憶している。決定された危険度は、S5において認識された死角構造物の情報に基づいて変化させる。具体的には、死角構造物の高さや幅に基づいて危険度を変化させる。
【0049】
図5は、死角構成物の一例である壁の高さと危険度の関係を示すグラフである。このグラフは、横軸を壁の高さとし、縦軸を危険度としている。死角危険度設定部24は、死角構成物の高低に応じ、高さが高いときには危険度を高い値に設定し、高さが低いほど危険度を低い値に設定する。例えば、壁の高さが0〜Hw(G1)の範囲では、死角選別部23により壁が形成する死角領域は危険度設定を実行しない死角として設定され、危険度の算出は省略される。壁の高さがHw〜Hmの範囲(G2)では、壁の高さが高いほど、危険度が高く設定される。壁の高さが設定値Hmを超えると(G3)、壁が形成する死角領域に存在する移動物体の飛び出し確率は変化せず一定値とされる。ここで、設定値Hw及びHmは予めECU2に設定される値である。この値は過去のヒヤリハット事例に基づいて設定される。なお、死角構成物の高さは、死角構成物の最大高さを用いる。
【0050】
死角構成物である柱の幅と飛び出し確率の関係も図5と同様の関係となる。すなわち、死角危険度設定部24は、柱の幅に応じ、幅が広いときには危険度を高い値に設定し、幅が狭いほど危険度を低い値に設定する。また、柱の幅が0〜Wcの範囲では、死角選別部23により柱が形成する死角領域は危険度設定を実行しない死角として設定され、危険度の算出は省略される。柱の幅がWc〜Wmの範囲では、柱の幅が広いほど、危険度が高く設定される。柱の幅が設定値Wmを超えると、柱が形成する死角領域に存在する移動物体の飛び出し確率は変化せず一定値とされる。ここで、設定値Ww及びWmは予めECU2に設定される値である。この値は過去のヒヤリハット事例に基づいて設定される。なお、死角構成物の幅は、死角構成物の最大幅を用いる。
【0051】
死角領域からの危険度の予測が終わると、死角領域から飛び出す移動物体と自車両との衝突確率算出が行われる(S9)。S1で取得された車輪速センサ13、ヨーレートセンサ14、舵角センサ15の計測結果に基づき所定時間後の自車両の将来位置を予測するとともに、死角領域から飛び出してくる移動物体の所定時間後の将来位置を予測することにより、自車両が移動物体と衝突する確率が算出される。
【0052】
次に、インデックスiがインクリメント(+1)され(S10)、検出された死角の数nとインデックスiが比較される(S11)。インデックスiが検出された死角の数n以下の場合はS5の処理に移行し、検出されたすべての死角に対して同様の処理が実行される。一方、インデックスiが検出された死角の数nよりも大きい場合には、危険度算出の処理を終了する。算出された危険度は、運転支援制御部26に送信され、例えば危険度が所定値よりも高い場合には運転者への注意喚起や介入制御などの制御信号を生成し運転支援を行うことで、死角から飛び出す移動物体との衝突を防止する。
【0053】
以上で説明したように、本実施形態に係る危険度算出装置においては、死角構成物の情報に基づいて死角構成物が形成する死角領域の危険度を設定する。死角を構成する物体の情報から死角領域から物体が飛び出す可能性が低いと判断されたときは危険度を下げることにより、運転者への注意喚起や介入制御を行う運転支援システムが不要に作動することが抑制され、精度の高い危険度算出を行うことができる。
【0054】
従来の危険度算出装置では、死角領域が複数ある場合には、すべての死角領域に対して危険度を算出していたため実時間処理が難しいという問題があった。これに対して、本発明に係る危険度算出装置は、死角構成物の情報に基づいて危険度が低いと判断される死角領域を、飛び出しを予測する死角から除外することができる。これにより、危険度算出を行う死角領域の数を減らすことができるため演算負荷を低減することができる。
【0055】
なお、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、死角選別処理において、壁、柱、樹木、車両についてその高さ、幅、占有面積率を設定値と比較することで危険度算出を行うか否かの判断を行っている。しかしながら、比較を行う死角構造物は壁、柱、樹木、車両に限られず、その判断条件も死角構成物の高さ、幅、占有面積率に限られない。例えば、軽車両の台数が一定数以下である場合には、危険度算出の対象から除外するようにしてもよい。このように、壁、柱、樹木、車両以外の死角構成物とその条件を予め設定、記憶しておき、死角選別処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…危険度算出装置、2…ECU、11…カメラ、12…レーダ、13…車輪速センサ、14…ヨーレートセンサ、15…舵角センサ、21…死角領域検出部、22…死角構成物認識部、23…死角選別部、24…死角危険度設定部、25…衝突確率算出部、26…運転支援制御部、31…表示装置、32…スピーカ、33…アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の運転者にとって死角になる領域を検出する死角領域検出手段と、
前記死角領域検出手段により検出された死角を構成する死角構成物の情報を認識する死角構成物認識手段と、
前記死角構成物の情報に基づいて前記死角構成物が形成する死角領域から移動物体が飛び出す危険度を設定する危険度設定手段と、
を備える危険度算出装置。
【請求項2】
前記死角構成物の情報に基づいて前記危険度設定手段による危険度設定の対象から除外するか否かを判定する死角選別手段を更に備える危険度算出装置。
【請求項3】
前記危険度算出手段は、前記死角構成物の高さに基づいて前記死角構成物が形成する死角領域の危険度を設定する、請求項1又は2に記載の危険度算出装置。
【請求項4】
危険度算出手段は、前記死角構成物の高さが高いほど前記死角構成物が形成する死角領域の危険度を高く設定する、請求項3に記載の危険度算出装置。
【請求項5】
前記危険度算出手段は、前記死角構成物の幅に基づいて前記死角構成物が形成する死角領域の危険度を設定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の危険度算出装置。
【請求項6】
危険度算出手段は、死角構成物の幅が大きいほど死角構成物が形成する死角領域の危険度を高く設定する、請求項5に記載の危険度算出装置。
【請求項7】
自車両の運転者にとって死角になる領域を検出する死角領域検出工程と、
前記死角領域検出手段により検出された死角を構成する死角構成物の情報を認識する死角構成物認識工程と、
前記死角構成物の情報に基づいて前記死角構成物が形成する死角領域から移動物体が飛び出す危険度を設定する危険度設定工程と、
を含む危険度算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−89084(P2012−89084A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237679(P2010−237679)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】