説明

即日覆土ユニット

【課題】即日覆土によって処分場容量が無駄に消費されることが回避され、有機物を埋立てている処分場からの温室効果ガスの大気放散を抑制でき、建設廃木材をサーマルリサイクルする前に有効利用することができる即日覆土ユニットを提供する。
【解決手段】1日分の廃棄物を埋立てた後に、重機等にて廃棄物の上に隙間なく設置できるように、ネットに木チップを入れ込んだ即日覆土ユニットであり、大粒度の木チップをネット等の透気性素材で纏め、その中に中粒度、小粒度の木チップをネット等の透気性素材で纏めたものを入れ込んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋立廃棄物の表面に施工する覆土の中で、1日の埋立作業終了後に施工する即日覆土のユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場では廃棄物を埋立した後に、排ガス(処分場ガス)や排水(浸出水)が環境に拡散しないように維持管理している。
【0003】
廃棄物を埋立てた直後には、その飛散や臭いを抑制すべく、即日覆土が行われる。即日覆土とは、埋立廃棄物の表面に施工する覆土の中で、特に埋立廃棄物の飛散防止、悪臭の発散防止、ハエ・カラスなどの衛生害虫獣の発生防止や忌避、火災の発生防止、景観の向上のために、1日の埋立作業終了後に施工するものである。中間覆土や最終覆土に比較して施工頻度が高い。
【0004】
中間覆土は、廃棄物を2m積み上げるごとに約10cmの土によって覆う覆土、最終覆土は、予定していた廃棄物の埋め立てが全て終了したら、埋立られた廃棄物が露出しないように約10cm以上の土もしくは砂によって埋立地全体を覆って整地する覆土である。
【0005】
通常、即日覆土としては処分場建設時に発生した建設発生土が利用される。これは汚染土ではないので、別途利用が可能であることから、最終処分、つまり埋立されるスラグ等の無機物を覆土材として利用する場合もある。
【0006】
ただし、これらは相当の容積を持つため、処分場の有効容量(廃棄物を埋立られる容量)が失われる。そこで、シート型の即日覆土代替工法が着目されている。下記特許文献もシート型の即日覆土代替工法の1つである。
【特許文献1】特開平9−150124号公報
【0007】
この特許文献1は、投棄された廃棄物を覆う即日覆土、中間覆土または最終覆土上に、あるいは、これら覆土自体として水蒸気は蒸散させるが雨水の水は通さない透湿シートを敷設し、雨水が前記廃棄物に浸入することを防止するとともに、廃棄物中の水分を蒸散させて、廃棄物からの浸出水を減らすことを特徴とする廃棄物処分場である。
【0008】
特許文献1における透湿シートとしては、雨水などの水は通さないが、水蒸気を含めてガスは通す性質を有しているもの、もしくは、ガスを通さないものとされる。
【0009】
前者は、例えば、ポリオレフィンからなるシートに孔径30μm以下の無数の微細孔を化学的あるいは機械的に穿設したもの、塩化ビニールなどの合成ゴムのシートにニードリング加工を施したもの、あるいは、ポリエチレンやポリプロピレンを連続的に紡糸した極細繊維をシート状にした後、繊維同士を高温高圧で結合させたものなどとされる。
【0010】
後者は、例えば、不織布にポリビニールアルコール(PVA)の完全ケン化物の水溶液を含浸させた後、これを乾燥または塩類により凝析させて透湿シートを形成し、あるいは、不織布を用いずに、PVAの完全ケン化物からなる透湿シートである。
【0011】
また、先行技術文献はないが、シート型の即日覆土代替工法の他の方法として、化学的な泡で薄い被膜を作り、飛散や臭いを防止する方法も構築されている。
【0012】
さらに、廃棄物処分場で用いる代替覆土材料やその使用法として、下記特許文献には、木粉を用いたものが提案され、その効果としては廃物を利用できるようになるとある。
【特許文献2】特開2002−186928号公報
【0013】
この特許文献2は、エチレン−酢酸ビニール樹脂などの水性エマルジョン樹脂と、木粉などの水に不溶の粒状物と、コーンスターチなどの土壌微生物により生分解される材料とを含んでなり、廃棄物上に散布し、硬化させて用いるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
即日覆土は通常、その当日に投棄された一日分の廃棄物を覆うようにして廃棄物に被せられる。従って、廃棄物処分場の凹面の内部には、廃棄物と覆土が交互に積み重なった層が形成されることになる。覆土は、廃棄物の飛散や廃棄物からの臭気の発生を抑えるという所期の効果を得るため、通常規定はないが10cm程度以上の厚さとされる。
【0015】
通常、廃棄物を埋立てた場合、重機で締固めを行う。そのため、廃棄物の厚さは恐らく30cm程度となり、その上に即日覆土を行うことになる。即日覆土の問題は、わずかでも毎日行うために、処分場の実効容積が廃棄物以外の覆土が占めてしまうことが問題となる。つまり、有限の凹面の体積中の大きな部分を、投棄すべき廃棄物以外のもので占めてしまうことにより、廃棄物処分場の実効容積が小さくなってしまう。
【0016】
廃棄物を投棄し、覆土を被せていくための方法には、覆土で廃棄物をサンドイッチ状にするサンドイッチ方式、サンドイッチに加えて、廃棄物を細胞(セル)のように包み込むセル方式、投げ込み方式等があるが、かかる問題は、いずれの場合にも共通する。
【0017】
なお、(社)全国都市清掃会議「廃棄物最終処分場整備の計画・設計要領」の11.1.1の1)では標準的な埋立方式としてサンドイッチ方式とセル方式が例示され、廃棄物を埋立る度に即日覆土を行うことが示されている。しかし、即日覆土の材料、厚さ等までは言及されていない。
【0018】
前記特許文献1のような通水制御能(ある程度の防水性)を有したシートを敷設する工法、もしくは、液体噴霧によるカバリング等の工法では、既に開発されて市場に出ている製品を利用するものであり、透水性はある程度あるが、雨水の全てを廃棄物層に導くわけではなく、悪臭防止機能も付与しているためにそれなりの密閉性を有する。
【0019】
そのために酸素の廃棄物層内への供給は制限され、廃棄物層内は嫌気雰囲気となり、温室効果の高い処分場ガス(メタンガス)が発生する。
【0020】
温室効果ガスの削減には、廃棄物層内で発生するメタンガスを大気放散前に酸化分解するために、酸素と分解の場を与える必要がある。これは、通気性と覆土厚であって、処分場容量の維持と相反する。
【0021】
前記化学的な泡で薄い被膜を作り、飛散や臭いを防止する方法は、処分場容量の維持には寄与するが、高コストであったり、密閉系の場合には大気中の酸素が廃棄物層内に入らないので嫌気雰囲気による処分場ガスが発生して、どこかから大気に放散されたり、逆に通気性・通水性を有する場合には処分場ガスの放散を抑制することができなかったりする。
【0022】
前記特許文献2は、木粉などの使用廃物を利用できるという効果はあるものの、温室効果ガス、特にメタンガスの大気放散の抑制ができるものではなく、着色剤を含ませて、木々の緑色など外観を良好なものとすることや、防臭剤を含ませて臭いの発生を防止することとが必要となる。
【0023】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、廃棄物処分場の容量の維持とともに、温室効果ガス、特にメタンガスの大気放散の抑制を同時に達成でき、廃材の有効利用を図ることができる即日覆土ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、1日分の廃棄物を埋立てた後に、重機等にて廃棄物の上に隙間なく設置できるように、ネットに木チップを入れ込んだ即日覆土ユニットであり、大粒度の木チップをネット等の透気性素材で纏め、その中に中粒度、小粒度の木チップをネット等の透気性素材で纏めたものを入れ込んだことを要旨とするものである。
【0025】
請求項1記載の本発明によれば、処分場容量を覆土で消費することがなくなるので処分場容量を維持でき、メタン酸化能を有した木チップから構成されるので、通気性とメタン酸化機能を保有し、廃棄物層から排出されるメタンガスは覆土通過時に酸化分解され、温室効果が大きく低減される。
【0026】
木チップ全体の粒度を細かくするとネット等の透気性素材の目も小さくせざるを得なくなり、ユニット同士の重なり部分にネット等の透気性素材による隙間が生じてしまうが、大粒度のチップをネット等の透気性素材で纏めるが、その中に中粒度、小粒度のチップをネット等の透気性素材で纏めたものを入れ込むので、ユニット界面に大きな空隙を生じることもない。
【0027】
また、空隙は当然、連続であるが、一定の厚みがあるために降水も一部は廃棄物層に供給されるが、一部は木チップ表面に留まり、蒸発して大気に戻される。そのため、排水機能を考慮する必要がない。
【0028】
さらに、臭いも木チップ層内での酸化分解等によって低減されるとともに、大気中の酸素を木チップ層内に導入できるので、廃棄物層へも若干酸素を供給でき、嫌気分解が抑制される。つまり、通気性とバッファを有している。
【0029】
請求項2記載の本発明は、一旦、移動し、埋立てた後に再度敷設できることを要旨とするものである。
【0030】
請求項2記載の本発明によれば、ユニットは廃棄物を埋立てた後にその上部に敷設するが、一定期間をおいてさらに廃棄物を埋立てる際には一旦、移動し、埋立てた後に再度敷設する。このようにすることで処分場の容量が即日覆土で失われることが回避される。
【0031】
請求項3記載の本発明は、木チップは、建設廃木材を用いることを要旨とするものである。
【0032】
請求項3記載の本発明によれば、生木から作ったチップに比べて、建設廃木材の場合はメタン除去率MRRの効用が高い。また、一定の乾燥工程を経たものが得られ、粒度は比較的大きいので、通気性はよくなる。
【0033】
請求項4記載の本発明は、1日分の廃棄物を埋立てた後に、重機等にて廃棄物の上に隙間なく設置できるように、ネットに木チップを入れ込んだ即日覆土ユニットであり、大粒度の木チップをネット等の透気性素材で纏め、その中にメタン酸化細菌を十分に含む腐食土を透気性素材で纏めたものを入れ込んだことを要旨とするものである。
【0034】
請求項4記載の本発明によれば、中粒度、小粒度のチップの代わりにメタン酸化細菌を十分に含む腐植土を入れ込んだので、前記請求項1の作用に加えて、メタン酸化細菌を十分に含む腐植土によりメタン酸化による温室効果ガスの排出削減をより確かなものとすることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上述べたように本発明の即日覆土ユニットは、即日覆土によって処分場容量が無駄に消費されることが回避され、廃棄物処分場の容量の維持とともに、有機物を埋立てている処分場からの温室効果ガス、特にメタンガスの大気放散の抑制を同時に達成でき、また、廃材の有効利用を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の即日覆土ユニット5の1実施形態を示す説明図である。
【0037】
1日分の廃棄物を埋立てた後に、重機等にて廃棄物の上に隙間なく設置できるように、ネット3等の透気性素材に木チップを入れ込んだ即日覆土ユニット5である。ネット3の材質としては、ナイロン、硬質ポリエチレン、ベクトランのような摩耗強度を有するものである。
【0038】
木チップは、メタン酸化能を有する。木チップは一定の乾燥工程を経たものが望ましい。
【0039】
大粒度の木チップ1をネット3で纏め、その中に中粒度、小粒度の木チップ2をネット4で纏めたものを入れ込んだ。木チップ1,2は建設廃木材を使用し、大粒度の木チップ1は30〜100mm、木チップ2で、中粒度のものは10〜30mm、小粒度のものは5〜15mm程度のものである。廃木材処理施設では破砕を行っており、これを篩で分級したものを利用する。
【0040】
図3に示すように建設廃木材の場合はサクラやマツの生木から作ったチップに比べて、メタン除去率MRRの効用が高い。また、一定の乾燥工程を経たものが得られ、粒度は比較的大きいので、通気性はよくなる。
【0041】
前記実施形態は、透気性素材としてネットを使用したが、それ以外でも土のう袋を形成する合成樹脂製または天然素材製の織物シートや合成樹脂製多孔性シート等可撓性で、木チップが入っていても破れない程度の強度を有する袋体であれば、採用できる。
【0042】
図2は、本発明の使用例を示すCS(屋根付き)処分場の断面図であるが、1日分の廃棄物を埋立てた後に、本発明の即日覆土ユニット5を重機等にて廃棄物6の上に隙間なく設置する。
【0043】
即日覆土ユニット5は一定の形状を有さない廃棄物6の層や、別の即日覆土ユニット5と隙間なく設置できる。
【0044】
埋立処分場の状況や搬入される廃棄物の量にもよるが、ある期間をおいて、覆土敷設部分に新たに廃棄物を埋立る必要が出た際には、即日覆土ユニットを重機等で一旦どかせて、廃棄物を埋立て、再度即日覆土ユニットを重機等で廃棄物が見えなくなるように設置する。
【0045】
即日覆土ユニット5にはメタン酸化能を有する木チップを用いて、通気性とメタン酸化機能を保有させるため、廃棄物6の層から排出されるメタンガスは覆土通過時に酸化分解される。また、シート型等にはない通気性により、廃棄物層にも若干の酸素が供給され、過度の嫌気状態が緩和される。
【0046】
一方、降水が廃棄物6の層に供給されるが、木チップの大きな表面積と覆土層の厚みにより、覆土層に水分が吸着され、廃棄物6の層への給水は制御できる。
【0047】
他の実施形態として、図示は省略するが、前記中粒度、小粒度のチップ木チップ2の代わりにメタン酸化細菌(Methylococcus capsulatus)を十分に含む腐植土をネット4に入れ込むようにしてもよい。
【0048】
この腐植土をネット4に入れたものは、大粒度の木チップ1をネット3で纏め、その中に入れてユニットを形成する。
【0049】
メタン酸化細菌は、メタン呼吸細菌の種であり、土壌、埋立ゴミ処理地、堆積物、泥炭地でよく見られ、ゲノム塩基配列には、メタンをエネルギーや炭素源として使用するための完全な、時として過剰な遺伝子ツールキット ( 複数の遺伝子が一つのセットとして働くもの ) が存在している。メタン酸化細菌はメタン摂取によって、地球規模のエネルギーサイクルで重要な役割を果たす。なお、メタンは、主に、埋立ゴミ処理地や、ウシなどの反芻家畜動物の内臓内での化学過程、あるいは、石油や天然ガス処理プラントで産出されるガスである。
【0050】
このような腐植土のうち、メタン酸化細菌(Methylococcus capsulatus)を十分に含むものを使用する。これにより、メタン酸化による温室効果ガスの排出削減をより確かなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の即日覆土ユニットの1実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の使用例を示すCS(屋根付き)処分場の断面図である。
【図3】建設廃木材と生木とのメタン除去率MRRの比較を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
1…大粒度の木チップ 2…中粒度、小粒度の木チップ
3…ネット 4…ネット
5…即日覆土ユニット 6…廃棄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1日分の廃棄物を埋立てた後に、重機等にて廃棄物の上に隙間なく設置できるように、ネットに木チップを入れ込んだ即日覆土ユニットであり、大粒度の木チップをネット等の透気性素材で纏め、その中に中粒度、小粒度の木チップをネット等の透気性素材で纏めたものを入れ込んだことを特徴とする即日覆土ユニット。
【請求項2】
一旦、移動し、埋立てた後に再度敷設できる請求項1記載の即日覆土ユニット。
【請求項3】
木チップは、建設廃木材を用いる請求項1または請求項2記載の即日覆土ユニット。
【請求項4】
1日分の廃棄物を埋立てた後に、重機等にて廃棄物の上に隙間なく設置できるように、ネットに木チップを入れ込んだ即日覆土ユニットであり、大粒度の木チップをネット等の透気性素材で纏め、その中にメタン酸化細菌を十分に含む腐食土を透気性素材で纏めたものを入れ込んだことを特徴とする即日覆土ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−16663(P2012−16663A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155711(P2010−155711)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】