説明

厚板のロット編成方法およびロット編成装置

【課題】複数の厚板注文全体の圧延能率や歩留が低下することを抑制すること。
【解決手段】ロット編成部4aが、複数の製鉄所で製造可能な複数の厚板注文を全て製造すると仮定した場合のロット編成を製鉄所毎に作成する。ロット編成分配部4bが、各厚板注文の注文枚数に関する情報と各製鉄所の生産能力上限および製造コストに関する情報とに基づいて、ロット編成部4aによって作成された各製鉄所のロット編成を複数の製鉄所間に分配する。これにより、同一のロットに編成すれば効率的に処理できた厚板注文が他の製鉄所に振り分けられることが抑制され、複数の厚板注文全体の圧延能率や歩留が低下することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚板のロット編成方法およびロット編成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の厚板注文は、圧延能率を高めるために、1本のスラブに複数の厚板注文を引き当てるロット生産によって処理される。このため、多くの鉄鋼メーカーでは、図5に示すように、営業所に配置された注文振り分けシステムが、複数の厚板注文を一括受注し、各スラブに引き当てる厚板注文を決定するロット編成を行う前に、所定条件に基づいて厚板の注文群を複数の製鉄所に振り分けていた。そして、各製鉄所に配置されたロット編成システムが、自身に振り分けられた厚板の注文群に対しロット編成を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−276034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロット編成を行う前に複数の製鉄所に厚板の注文群を振り分けた場合、同一のロットに編成すれば効率的に処理できた厚板注文が他の製鉄所に振り分けられることによって同一のロットに編成することができず、複数の厚板注文全体の圧延能率や歩留が低下することがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の厚板注文全体の圧延能率や歩留まりが低下することを抑制可能な厚板のロット編成方法およびロット編成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る厚板のロット編成方法は、複数の製鉄所で製造可能な複数の厚板注文を全て製造すると仮定した場合のロット編成を製鉄所毎に作成するロット編成作成ステップと、各厚板注文の注文枚数に関する情報と各製鉄所の生産能力上限および製造コストに関する情報とに基づいて、ロット編成作成ステップにおいて作成された各製鉄所のロット編成を複数の製鉄所間に分配するロット編成分配ステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る厚板のロット編成装置は、複数の製鉄所で製造可能な複数の厚板注文を全て製造すると仮定した場合のロット編成を製鉄所毎に作成するロット編成作成手段と、各厚板注文の注文枚数に関する情報と各製鉄所の生産能力上限および製造コストに関する情報とに基づいて、ロット編成作成手段によって作成された各製鉄所のロット編成を複数の製鉄所間に分配するロット編成分配手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る厚板のロット編成方法およびロット編成装置によれば、複数の厚板注文全体の圧延能率や歩留が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるロット編成システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す注文情報データベース内に格納されている注文情報の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態であるロット編成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図4は、ロット編成の分配処理を説明するための図である。
【図5】図5は、従来のロット編成処理を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるロット編成システムの構成およびそのロット編成方法について説明する。
【0011】
〔ロット編成システムの構成〕
始めに、図1,2を参照して、本発明の一実施形態であるロット編成システムの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態であるロット編成システムの構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す注文情報データベース2内に格納されている注文情報の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態であるロット編成システム1は、注文情報データベース2と、製鉄所データベース3と、ロット編成装置4と、出力装置5と、を主な構成要素として備えている。ロット編成装置4は、本発明に係るロット編成作成手段およびロット編成分配手段として機能する。
【0013】
注文情報データベース2は、ロット編成装置4に電気的に接続され、厚板の注文情報を格納している。厚板の注文情報は、図2に示すように、注文毎に付与された固有の識別情報(オーダID)と、オーダIDに対応する厚板の寸法、注文枚数、および製造可能な製鉄所に関するデータとを含んでいる。
【0014】
製鉄所データベース3は、ロット編成装置4に電気的に接続されている。製鉄所データベース3は、厚板を製造する製造所毎の設備制約、厚板の製造コスト、および生産能力に関するデータを格納している。
【0015】
ロット編成装置4は、ワークステーションやパーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。ロット編成装置4は、情報処理装置内部のCPUなどの演算処理装置がコンピュータプログラムを実行することによって、ロット編成部4aおよびロット編成分配部4bとして機能する。これら各部の機能については後述する。
【0016】
出力装置5は、表示装置や印刷装置などの公知の出力装置によって構成され、ロット編成装置4に電気的に接続されている。出力装置5は、ロット編成装置4によって作成されたロット編成情報を出力する。ロット編成情報は、1本のスラブに引き当てられた厚板注文に関する情報をスラブ毎に示している。
【0017】
このような構成を有するロット編成システム1は、以下に示すロット編成処理を実行することによって、複数の厚板注文の圧延能率や歩留が低下することを抑制する。以下、図3に示すフローチャートを参照して、ロット編成処理を実行する際のロット編成システム1の動作について説明する。
【0018】
〔ロット編成処理〕
図3は、本発明の一実施形態であるロット編成処理の流れを示すフローチャートである。図3に示すフローチャートはロット編成装置4にロット編成処理の実行命令が入力されたタイミングで開始となり、ロット編成処理はステップS1の処理に進む。
【0019】
ステップS1の処理では、ロット編成部4aが、注文情報データベース2内に格納されている注文情報を参照して、複数の製鉄所で製造可能な厚板注文を抽出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、ロット編成処理はステップS2の処理に進む。
【0020】
ステップS2の処理では、ロット編成部4aが、製鉄所データベース3内に格納されている各製鉄所の設備制約に関する情報を参照して、ステップS1の処理によって抽出された厚板注文を各製鉄所で全て製造すると仮定した場合のロット編成を製鉄所毎に作成する。例えば、2万トンの厚板注文を受注し、製鉄所Aおよび製鉄所Bに厚板注文を1万トンずつ振り分ける場合、ロット編成部4aは、製鉄所Aで2万トンを製造すると仮定してロット編成を行い、20トンずつ1000ロットを作成する。
【0021】
このとき、ロット編成部4aは、製鉄所Aの設備制約を考慮して最も効率的なロット編成を行うが、製鉄所の生産能力上限は考えない。同様に、ロット編成部4aは、製鉄所Bで2万トンを製造すると仮定してロット編成を行い、20トンずつ1000ロットを作成する。このように、ステップS2の処理では、ロット編成部4aは、生産能力上限は無限であると仮定し、製鉄所毎の生産性や製造コストのみを評価関数として最適なロット編成を行う。これにより、ステップS2の処理は完了し、ロット編成処理はステップS3の処理に進む。
【0022】
ステップS3の処理では、ロット編成分配部4bが、注文情報データベース2内に格納されている各注文の注文枚数に関する情報と製鉄所データベース3内に格納されている各製鉄所の生産能力上限および製造コストに関する情報とを参照して、ステップS2の処理によって作成された各製鉄所のロット編成を複数の製鉄所間に分配する。例えば、ステップS2の処理によって、製鉄所Aでは図4(a)に示すロット編成が作成され、製鉄所Bについては図4(b)に示すロット編成が作成された場合を考える。
【0023】
この場合、注文A1と注文B1とからなるロット編成の製造コストは製鉄所Aおよび製鉄所B共に2万円である。しかしながら、注文A2と注文B2とからなるロット編成の製造コストは、製鉄所Aでは1.8万円であるのに対し、製鉄所Bでは1.7万円である。このため、ロット編成分配部4bは、注文A2と注文B2とからなるロット編成は製鉄所Bに振り分け、注文A1と注文B1とからなるロット編成は製鉄所Aに振り分ける。そして、ロット編成分配部4bは、各製鉄所に振り分けられたロット編成に関する情報を出力装置5に出力する。以後、各製鉄所では、出力装置5に出力されたロット編成に関する情報に基づいて厚板注文を処理する。これにより、ステップS3の処理は完了し、一連のロット編成処理は終了する。
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態であるロット編成処理では、ロット編成装置4が、複数の製鉄所で製造可能な複数の厚板注文を全て製造すると仮定した場合のロット編成を製鉄所毎に作成し、各厚板注文の注文枚数に関する情報と各製鉄所の生産能力上限および製造コストに関する情報とに基づいて、各製鉄所のロット編成を複数の製鉄所間に分配する。これにより、同一のロットに編成すれば効率的に処理できた厚板注文が他の製鉄所に振り分けられることが抑制され、複数の厚板注文全体の圧延能率や歩留が低下することを抑制できる。
【0025】
なお、本実施形態では、複数の製鉄所において製造可能な厚板注文のみを処理対象とし、ある製鉄所でのみ製造可能な厚板注文を処理対象としなかった。ある製鉄所でのみ製造可能な厚板注文がある場合には、その製鉄所におけるロット編成を行う際、他の製鉄所に振り分けが不可能な厚板注文も考慮してロット編成を行う。これにより、振り分け不可能な厚板注文の処理負荷を考慮してロット編成を決定することができる。
【0026】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 ロット編成システム
2 注文情報データベース
3 製鉄所データベース
4 ロット編成装置
4a ロット編成部
4b ロット編成分配部
5 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製鉄所で製造可能な複数の厚板注文を全て製造すると仮定した場合のロット編成を製鉄所毎に作成するロット編成作成ステップと、
各厚板注文の注文枚数に関する情報と各製鉄所の生産能力上限および製造コストに関する情報とに基づいて、ロット編成作成ステップにおいて作成された各製鉄所のロット編成を複数の製鉄所間に分配するロット編成分配ステップと、
を含むことを特徴とする厚板のロット編成方法。
【請求項2】
複数の製鉄所で製造可能な複数の厚板注文を全て製造すると仮定した場合のロット編成を製鉄所毎に作成するロット編成作成手段と、
各厚板注文の注文枚数に関する情報と各製鉄所の生産能力上限および製造コストに関する情報とに基づいて、ロット編成作成手段によって作成された各製鉄所のロット編成を複数の製鉄所間に分配するロット編成分配手段と、
を備えることを特徴とする厚板のロット編成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111580(P2013−111580A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256720(P2011−256720)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】