説明

原反用ラック

【課題】紙材が吸湿している場合でも原反を変形させないことで、原反の巻きずれを防止して安定した操業を可能とする原反用ラックを提供する。
【解決手段】下部に設けられたキャスタ76により移動可能とされるラック本体74を原反用ラック70の本体部分として有する。ラック本体74の外周部分の四隅に、縦フレーム部78が下部から垂直に延びるように設けられる。縦フレーム部78の中程部分に、二次原反ロールRの案内とされる導入部82の一端部が接続されて、斜め上側に延びている。導入部82の他端部は、水平に延びる支持部84の一端部に連結されるように繋がっている。二次原反ロールRの両側に位置する支持部84によって、二次原反ロールRの巻心RMの両端部からそれぞれ突出する細径部72Aを支持することで、二次原反ロールRの中心部が支持部84により支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙材が吸湿している場合でも原反を変形させないことで、原反の巻きずれを防止して安定した操業を可能とする原反用ラックに関し、例えば、マルチスタンド式インターフォルダに供するティシュペーパー製品用二次原反ロールの保管及び搬送に適用可能なものである。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーの箱詰め製品は、一般的に、インターフォルダ(折り畳み設備)によって複数の連続するティシュペーパーを折り畳みながら積み重ね、所定の長さに切断するなどしてティシュペーパー束を得、このティシュペーパー束を収納箱(ティシュカートン)内に収納することによって製造される。
【0003】
そして、このようなインターフォルダの例として、ロータリー式インターフォルダの他、マルチスタンド式インターフォルダなどが知られている。このマルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法の従来例としては、次のようなものがある。
【0004】
まず、抄紙設備において衛生薄葉紙を抄造して巻き取ることで、一次原反ロール(一般にジャンボロールともいわれている)を製造し、次いで、この一次原反ロールをプライマシンにセットし、複数の一次原反ロールから繰り出した一次連続シートを重ね合わせて巻き取ると共にスリット(幅方向にティシュペーパー製品の製品幅毎)し、ティシュペーパー製品の製品幅の偶数倍幅とし、紙巻を共通とした、複数のプライからなる二次原反ロールを製造する。
【0005】
この後、プライマシンで製造された二次原反ロールは、プライマシンから取り出された後、必要な数だけマルチスタンド式インターフォルダにセットされる。次いで、二次原反ロールから二次連続シートを繰り出して、折畳機構部へ送り込み、ここで折り畳みながら積み重ね、その後、所定の長さに切断されてティシュペーパー束とし、収納箱内に収納する。尚、このようなマルチスタンド式インターフォルダを用いた製造方法は、他の折り畳み設備を用いた製造方法に比べて、多数(80〜100基程度)の折畳機構部を有しているため生産性が高いという利点を有している。ここでいう折畳機構部の1基とは、ティシュー製品の製品幅にスリットした2列のティシュペーパーを、互いに内側に入り込むように折り畳み加工する機構の単位である。
【0006】
ところで、現在、ティシュペーパー製品に保湿剤や香料などの薬液を付与されたティシュペーパー製品である保湿ティシュペーパーは、800トン/月の需要があると言われているが、近年、保湿ティシューの認知率の増加に伴い使用人口及び使用量は増加しつづけ、需要が拡大している。したがって、保湿ティシューの需要の拡大に伴い、より生産性の高いマルチスタンド式インターフォルダで保湿ティシューを製造する必要があった。
【0007】
マルチスタンド式インターフォルダで保湿ティシュペーパーを製造するには、抄紙工程、プライマシン工程(二次原反ロール製造)、折り畳み工程(マルチスタンド式インターフォルダ)の各工程の何れかで、各種の印刷方式、噴霧方式、スプレー方式、インクジェット方式などの方式を用いて、薬液を塗布、塗工することが必要である。しかし、抄紙工程でのオンマシン塗布は、通常1000m/分以上の高速で低粘度の薬液塗布を行なうため、薬液飛散、低い薬液歩留など技術的に難しい課題があり商業的に成功することは難しい。
【0008】
また、マルチスタンド式インターフォルダでのオンライン薬液塗布をするには、供給される二次原反ロール幅に対応する幅毎(ティシュー製品幅の偶数倍のシート幅)に多数の薬液塗布装置を、二次原反ロールの繰り出し部から折畳機構部までの間などに設置する必要があるが、この際に、個々の薬液塗布装置の塗布量を一定に管理することは難しく、かつ多大な設備費用がかかるため実際的ではない。
これに対しプライマシン工程での薬液塗布は、比較的高速(通常700m/分以上)での塗布が必要であるものの、基本的に広幅のプライシートに対し均一に薬液塗布することが可能で、薬液の循環再生処理と使用も容易であるため、実際に有効な薬液塗布方法の1つである。
【0009】
ただし、プライマシンで薬液塗布する場合、薬液が塗布された状態の衛生薄葉紙がこのプライマシンで一旦巻き取られて二次原反ロールになるが、この場合においても、いくつかの課題がある。
つまり、この二次原反ロールは薬液を含んだ原反となるが、この二次原反ロールは直径が1m超程度の大きさの大巻きの原反であるものの、この大巻きの二次原反ロールにおいては、塗布されたローション薬液が時間経過により衛生薄葉紙に吸湿されることで、衛生薄葉紙が伸びることになる。また、塗布した薬液によりシート表面の摩擦抵抗が下がり、ティシュー同士がすべり易くなることになる。
【0010】
そして、薬液が塗布されている大巻き原反である二次原反ロールは、所定時間経過させて吸湿させた後にマルチスタンド式インターフォルダにより加工されて、ティシュペーパーとなる。しかし、二次原反ロールが薬液を吸湿するのに伴いティシュペーパーに加工する際に、二次原反ロールが巻ずれしてしまう虞があった。つまり、工程間で大巻きの二次原反ロールを移動する必要があるが、この移動の際、従来は、薬液が塗布された二次原反ロールをクランプで掴んで移動していた。これに伴いクランプ圧により図18に示すように二次原反ロールRの挟んだ部分が凹むように変形し、挟んだ圧力がシート間に分散される結果として、二次原反ロールRの一部シートが幅方向に筍状にずれたり、および/もしくは繰り出し方向に前後にシートがずれたりする巻ずれが生じると考えられていた。そして、この巻ずれの発生に伴って、完成品となるティシュペーパーに皺が入った不良品が発生する欠点があった。
【0011】
これに対して、原反の巻ずれを防止するためには種々の構造が知られている。
例えば、特許文献1に示すような中心にコアを持って2つのロール体の受け渡しを行うロール体搬送装置、特許文献2に示すようなロール体を受け取り動作時に原反の位置ズレによる損傷を防ぐロール体搬送装置及び、特許文献3に示すようなロール体を受け取り動作時に原反の巻ズレによる衝突を防ぐロール体搬送装置等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008-214069号公報
【特許文献2】特開2008-195525号公報
【特許文献3】特開2008-214004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、これらの特許文献に示された構造であっても、例えばティシュペーパー等の紙材である衛生薄葉紙に関して巻きずれを防止するようなものはなく、また、時間経過により原反である二次原反ロールを構成する衛生薄葉紙が吸湿する結果として、二次原反ロールの保管や搬送の際に生じる巻きずれを防止できるものはなかった。
【0014】
そこで、本発明の主たる課題は、紙材が吸湿している場合でも原反を変形させないことで、原反の巻きずれを防止して安定した操業を可能とする原反用ラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る原反用ラックは、紙材が巻かれた原反の中心部を支持する支持部と、
支持部に繋がり且つ原反の案内とされる導入部と、
支持部及び導入部を備えると共に移動可能に形成されたラック本体と、
を含む。
【0016】
請求項1に係る原反用ラックの作用を以下に説明する。
本請求項の原反用ラックによれば、紙材が巻かれた原反の中心部を支持部が支持し、この支持部に原反の案内とされる導入部が繋がるようになっている。そして、移動可能に形成されたラック本体がこれら支持部及び導入部を備えている。
【0017】
従って、例えばスリット加工後に巻き取られて原反とされたものを高低差のある場所で転がしながら原反用ラックに搭載後、この原反用ラックごと原反を移動して後加工の為のマルチスタンド式インターフォルダにこの原反用ラックから取り出した原反を取付けるようにする。
このように原反を保管可能とすると共に、マルチスタンド式インターフォルダに取付け易いように移動可能な原反用ラックを採用したことで、原反をクランプで掴む必要がなくなると共に、マルチスタンド式インターフォルダに原反を簡単にセット可能となった。
【0018】
以上より、本請求項に係る原反用ラックによれば、原反をクランプで掴む必要がないことから、原反の変形が最小限になるだけでなく、原反の中心部が支持部により支持されるのに伴い、吸湿している原反を長期間保管した場合であっても原反を変形させない。このことで、原反の巻きずれを確実に防止できる。
【0019】
これに伴い、薬液塗布済の原反であっても問題なく後加工が可能であり且つ、例えばマルチスタンド式インターフォルダに原反を簡単にセット可能になることから、このマルチスタンド式インターフォルダにおいて安定した操業が可能になる。従って、薬液が塗布された製品を無駄なく生産可能になって、生産数量が向上するため、製造コストの低減が図れるようにもなる。
【0020】
請求項2に係る原反用ラックの作用を以下に説明する。
本請求項に係る原反用ラックは請求項1の発明と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、ラック本体の下部にキャスタが設けられてこのキャスタにより移動可能とされるという構成を有している。
つまり、本請求項によれば、ラック本体の下部のキャスタで原反用ラックを移動可能にしたことで、原反用ラックがより自由に移動可能になり、マルチスタンド式インターフォルダに原反をより一層簡単にセット可能になった。
【0021】
請求項3に係る原反用ラックの作用を以下に説明する。
本請求項に係る原反用ラックは請求項1及び請求項2の発明と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、支持部及び導入部が連続して形成されると共に、ラック本体の外周部分に外枠とされるフレーム部が形成され、このフレーム部に導入部の一端が接続され且つ、支持部の下側がラック本体に連結されるという構成を有している。
【0022】
つまり、本請求項によれば、支持部の下側がラック本体に連結されるだけでなく、ラック本体に形成されたフレーム部に、支持部と連続して形成される導入部の一端が接続されることで、原反の中心部を支持して荷重の加わることになる支持部が補強されて、安定的に原反用ラックに原反が収納されることになる。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり本発明の原反用ラックによれば、紙材が吸湿している場合でも原反を変形させないことで、原反の巻きずれを防止して安定した操業を可能とするという優れた効果を奏するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図2】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、正面から見た状態を示している。
【図3】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、側面から見た状態を示している。
【図4】マルチスタンド式インターフォルダの一例を示す概略図であり、正面から見た状態を示している。
【図5】折り畳まれたティシュペーパーの縦断面図である。
【図6】(b)収納箱に収納されたティシュペーパーの取出す様子を示す一部破断図である。
【図7】折り板に関する部位の要部拡大斜視図である。
【図8】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図9】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図10】二次連続シート(ティシュペーパー)の折り畳み方を示す要部拡大斜視図である。
【図11】二次原反ロールの製造設備、製造方法を示す概略図である。
【図12】図11で示す薬液付与手段周辺の要部拡大図である。
【図13】コンタクトエンボス手段によって積層連続シートにコンタクトエンボスを付与している様子を示す図である。
【図14】本発明に係る原反用ラックの一実施の形態を示す正面図(但し、回転軸及びレールは省略する)である。
【図15】本発明に係る原反用ラックの一実施の形態を示す側面図(但し、回転軸及びレールは省略する)である。
【図16】本発明に係る原反用ラックの一実施の形態を示す正面図であって、二次原反ロールを搭載する際の説明図である。
【図17】本発明に係る原反用ラックの一実施の形態を示す正面図であって、二次原反ロールをマルチスタンド式インターフォルダに取り付ける際の説明図である。
【図18】クランプ圧により二次原反ロールの上下端部が凹むように変形した状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態を説明する。なお、図中の矢印HDは水平方向を、矢印LDは上下方向を示している。
〔一次原反ロールの製造方法〕
一次原反ロールの製造方法の一例を、図1を参照しつつ説明する。
図1に示すように、ワイヤーパートを経た湿紙Wがボトムフェルト111に載せられて移送され、その後、トップフェルト110及びボトムフェルト111に挟持されたまま、トップロール112とボトムロール113の間を通過し搾水される。その後、搾水された湿紙Wは、トップフェルト110に載せられた状態で、タッチロール116を介してヤンキードライヤー115の表面に付着させられる。そして、湿紙Wは、ヤンキードライヤー115によって乾燥され、ドクターブレード117により引き剥がされた後、巻き取られることで一次原反ロールJRとされる。
この抄紙に際しては、例えば、分散剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、柔軟剤、剥離剤、コーティング剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、消泡剤、染料などの適宜の薬品を添加することができる。
なお、本一次原反ロールの製造方法においては、ドクターブレード117により引き剥がされた後でカレンダー手段118によって平滑化処理を施すこともできる。
【0026】
〔ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備〕
図11に示すように、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1(プライマシンX1)は、上述の製造方法などで製造された一次原反ロールJRを、少なくとも2つ以上セット可能とされており、これらの一次原反ロールJRから繰り出した一次連続シートS1を、その連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とするプライ手段51を有している。
【0027】
プライ手段51の後段には、プライ手段51から流れてくる積層連続シートS2に対して薬液を付与する一対の薬液付与手段53が設けられており、これらの薬液付与手段53の後段には、並設された複数のカッターから成り、薬液付与手段53から移送されてきた積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットするスリット手段55が配置されている。そして、スリット手段55の後段には、スリット手段55によってスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを形成する巻取り手段56が設けられている。ここで、この巻取り手段56は、スリットされた各積層連続シートS2を二次原反ロールRに案内するための2つのワインディングドラム56Aを有していて、これら2つのワインディングドラム56Aが二次原反ロールRの外周面に接して積層連続シートS2を案内している。
【0028】
(カレンダー手段)
ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1には、積層連続シートS2をカレンダー処理するカレンダー手段52を一つ以上設けることもできる。
カレンダー手段52におけるカレンダーの種別は、特に限定されないが、表面の平滑性向上と紙厚の調整の理由からソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーの事である。
カレンダー手段52の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化できるという利点を有する一方、一つであるとスペースが狭くとも設置可能であるという利点を有する。
二つ以上のカレンダー手段52を設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設することができ、また、これらの設置方向を組み合わせて配置しても良い。水平方向に並設すると、抱き角度を小さくなるため加工速度が高速とすることができ、上下方向に並設すると設置スペースを小さくすることができる。なお、ここで言う抱き角度とはロールの軸中心から見てシートが接している間(軸と直行する断面の円弧の一部)の角度を意味している。
カレンダー処理条件におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数なども制御要因として抄紙を行うようにし、これらの制御要因は、求めるシートの品質すなわちシートの紙厚や表面性によって適宜変更することが好ましい。
また、カレンダー手段52の設置位置は特に限定されないが、プライ手段51の後段であって且つ薬液付与手段53の前段や、薬液付与手段53の後段であって且つコンタクトエンボス手段54の前段とすることができる。
【0029】
(薬液付与手段)
積層連続シートS2に対して薬液を付与する薬液塗布工程は、薬液付与手段53により実行されるが、具体的には、この薬液付与手段53はそれぞれドクターチャンバー形式による2つの薬液付与部53A、53Bにより構成され、これら2つの薬液付与部53A、53Bにより薬液を付与するようにされている。そして、積層連続シートS2を700m/分以上で、好ましくは900m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされるローション剤をこれら薬液付与手段53A、53Bによって両面の合計で1.5g〜5g/m2の塗布量で塗布している。
塗布量は、操業中にプライ後の薬液を塗布しない場合の各々のシート米坪と、対応する塗布した直後の各々のシート米坪との差異により算出した。
(塗布量g/m2)=(塗布直後の米坪g/m2)−(塗布しない場合の米坪g/m2
両表層の塗布量、もしくは両面の塗布量の合計とは、プライされたティシュペーパーのシートの単位面積当たりの塗布量の合計であり、各シートの塗布量を加算したものとする。
【0030】
つまり、図11及び図12に示すように一方のドクターチャンバー形式とされる薬液付与部53Aは、薬液の入っているドクターチャンバー61Aが、回転可能なアニロックスロール63Aと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Aからアニロックスロール63Aに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Aと接し且つ積層連続シートS2の一面とも接する刷版ロール64Aが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Aから刷版ロール64Aに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの刷版ロール64Aと対向している圧胴65Aとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、刷版ロール64Aから積層連続シートS2に薬液を付与するようになっている。
【0031】
そして、本実施の形態では、この薬液付与部53Aが後述するコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと対向し且つ、前述のワインディングドラム56Aとも対向する積層連続シートS2の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Aに対して薬液を付与する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Aから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Aに設置されている。
【0032】
他方、図11及び図12に示すように他方のドクターチャンバー形式とされる薬液付与部53Bは、薬液の入っているドクターチャンバー61Bが、回転可能なアニロックスロール63Bと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Bからアニロックスロール63Bに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Bと接し且つ積層連続シートS2の他の面とも接する刷版ロール64Bが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Bから刷版ロール64Bに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの刷版ロール64Bと対向している圧胴65Bとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、刷版ロール64Bから積層連続シートS2に薬液を付与するようになっている。
【0033】
そして、本実施の形態では、この薬液付与部53Bがコロ54Aと非対向とされ且つ、前述のワインディングドラム56Aとも非対向となる積層連続シートS2の他の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Bに対して薬液を付与する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Bから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Bにも設置されている。
【0034】
従って、積層連続シートS2の両面に薬液付与部53A及び薬液付与部53Bから薬液がそれぞれ付与されるが、この際、薬液付与部53Aによるコロ54Aと対向する積層連続シートS2の面側の塗布量を薬液付与部53Bによる他の面側の塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートS2の両面からそれぞれ積層連続シートS2に対して薬液を付与している。
【0035】
但し、両面の合計塗布量は、前述のように1.5〜5g/m2であり、プライ原反ロールである二次原反ロールRの外周面の塗布量が、二次原反ロールRの内周面の塗布量より少なくされている。そして、紙の両面に対するローション剤の合計塗布量の内、二次原反ロールRの外周面への塗布量は、全体の20%以上で50%未満が良いが、具体的な値は、二次原反ロールRの滑りと品質のバランス、シートの厚みやローション剤の浸透性、転移性により最適条件が異なるので、上記の範囲で変化する。
具体的には、片面毎の塗布量を変えるだけでなく、フレキソ版の線数を15〜40線程度、頂点面積率を20〜40%程度の薬液が飛散しない程度に粗くすることが考えられ、このようにすることで、塗布直後はドット柄が残り、瞬間的に塗布部分と未塗布部分ができるようになる。
【0036】
従って、本実施の形態によれば、フレキソ形式を用いて版が樹脂であり弾力性があるため衛生薄葉紙に多少の凹凸があっても印圧で調整可となるので、グラビア印刷のような金属ロールで塗布するよりも積層連続シートS2にシワが入り難くなる。他方、フレキソ印刷を応用したフレキソ形式を用いることにより、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができるようになる。具体的には、積層連続シートS2を700m/分以上とし、好ましくは900m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされるローション剤を1.5g〜5g/m2の塗布量で塗布する際にも、塗布が均一で蛇行無く積層連続シートS2を巻き取れるようになる。
【0037】
尚、本実施の形態において使用する原紙は1プライで、米坪10〜25g/m2、クレープ率10〜30%とされ、同じく2プライで、伸び10〜25%、乾燥紙力縦が200〜700cN/25mm、乾燥紙力横が100〜300cN/25mm、原紙の湿潤紙力は横が50〜150cN/25mmの衛生薄葉紙である。
【0038】
本実施の形態の薬液付与手段53は単数或いは複数設置することができ、複数設置する場合、水平方向、上下方向、或いは斜め方向に並設しても良く、水平方向を含めたこれらの設置方向を組み合わせて配置しても良い。水平方向に並設すると抱き角度を小さくなるため、加工速度が高速とすることができ、上下方向に並設すると設置スペースを小さくすることができる。
【0039】
薬液付与手段53の前後に配置される手段(図11の例ではカレンダー手段52及びコンタクトエンボス手段54)は、相互に近接して配置することが好ましい。そうすることによって、薬液が付与されないティシュペーパー製品を製造する場合には、積層連続シートS2を薬液付与手段53の前段から後段に直接移送し、薬液付与手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけでよくなるため、薬液付与の有無を容易に切り替えることが可能となる。例えば、図11に示すティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1では、薬液が付与されないティシュペーパー製品を製造する場合、図11において二点鎖線で示すように、積層連続シートS2をカレンダー手段52からコンタクトエンボス手段54に直接移送し、薬液付与手段53を通さずに積層連続シートS2を流すだけで良い。
【0040】
また、付随する薬液付与手段53の要件としては、以下のものが考えられる。
2ロールフレキソ方式の薬液付与手段では、薬液タンク等の塗布装置内で循環する薬液に含まれる紙粉やエアーのろ過装置を設置する必要があるが、本実施の形態のようなドクターチャンバー形式の薬液付与手段53とした場合、紙粉等を除去する必要が無くなるので、ろ過装置の負荷が軽減されることも考えられる。さらに、ドクターチャンバー61A、61B等の塗布装置内で薬液の温度をコントロールし、薬液粘度を安定させる必要が考えられるが、ドクターチャンバー61A、61Bに繋がる中間タンク及び配管にヒーターを設置することにできる。他方、操業中に積層連続シートS2の幅方向の水分率で塗布量を管理する必要が考えられるが、例えば赤外線の検査機等を用いて常に幅方向の水分量とバラツキをチェックするようにできる。
【0041】
(薬液)
塗布する薬液について、粘度は高速加工を行う観点から40℃で1〜700mPa・sが望ましい。1mPa・sより小さいとアニロックスロール、刷版ロール、グラビアロール等のロール上で薬液が飛散しやすくなり、逆に700mPa・sより大きいと各ロールや薄葉紙への塗布量をコントロールしにくくなる。成分はポリオールを70〜90%、水分を1〜15%、機能性薬剤を0.01〜22%含むものとする。
【0042】
ポリオールはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類を含む。
機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を助けたり、維持させる薬剤として親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
また機能性薬剤として香料、各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え塗布を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、薬液の粘度、塗布量を安定させる上で好ましい。
薬液塗布時の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
【0043】
(コンタクトエンボス手段)
ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1には、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボスを付与するコンタクトエンボス手段54を設けることができる。そして、このコンタクトエンボス手段54により、積層連続シートS2に対して層間剥離を防止するライン状の接合部分であるコンタクトエンボスCEを形成するための接合工程が実行される。
【0044】
ここで、コンタクトエンボス手段54は、図13に示すように、受けロールである圧胴54Bと表面に細かい凸部54Cを有した金属製で硬質のコロ54Aとが所定の圧力を有して相互に外周面同士を当接しつつ、それぞれ回転可能に設置されている。そして、積層連続シートS2におけるティシュペーパー製品の幅方向中央に該当する部分に対して、左右各2つずつ存在する凸部54Cと圧胴54Bとの間で積層連続シートS2を挟みつつ搬送することで、積層連続シートS2に対して、積層連続シートS2の連続方向に沿って層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスCEを施すようになっている。
尚、このコンタクトエンボスCEを施すコロ54Aと対向した側の面を外周側として前述の巻取り手段56が、積層連続シートS2を巻取ることになる。
【0045】
このようにコンタクトエンボスCEを付与することによって、複数の一次連続シートS1を積層して成る積層連続シートS2の層間剥離を防止する。なお、コンタクトエンボスCEは、ティシュペーパー製品の端部が層間剥離し難くなるように、ティシュペーパー製品の幅方向両側部に位置するよう形成されることが好ましい。
なお、コンタクトエンボス手段54の設置箇所は特に限定されないが、薬液付与手段53の後段であって且つスリット手段55の前段や、カレンダー手段52の後段であって且つ薬液付与手段53の前段とすることが考えられる。つまり、カレンダー手段52の後段であって且つスリット手段55の前段の何れかの箇所で有ればよいことになる。
【0046】
また、この接合工程において、本実施形態ではコロとして表面に細かい凸部54Cを有した金属製で硬質のコロ54Aを用いたが、積層連続シートS2に対して層間剥離を防止するライン状の接合部分が形成できればよく、例えばコロ54Aの替りに、表面に細かい針状の部材を有したローラをコロとすることもできる。
さらに、接合する為の手段としては上記例に限定されず、凸部の先端形状が、点状、正方形、長方形、円形、楕円形等の形状のものをコロとして用いても良く、凸部の先端形状が、細長い線状、細く斜めに伸びる線状等のものをコロとして用いても良い。
他方、凸部の配列としては等間隔が考えられるが、千鳥状としたり、等間隔としなくとも良く、また、凸部を1列に配置してコンタクトエンボスを連続して付与する他に、凸部を2列以上の複数列配置することも考えられる。そして、コンタクトエンボスを緊密に複数列付与するように凸部が配置された群を複数並べて、複数のコンタクトエンボス群を付与するようにしても良い。尚、接合工程としては、上記のように機械的に圧力を加えて接合する他に、超音波等の他の手段により接合しても良い。
【0047】
(一次連続シート)
一次連続シートS1の原料パルプは、特に限定されず、ティシュペーパー製品の用途に応じて適宜の原料パルプを選択して使用することができる。原料パルプとしては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプなどから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0048】
特に原料パルプは、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、その場合の配合割合(JIS P 8120)としては、NBKP:LBKP=2:8〜8:2がよく、特に、NBKP:LBKP=4:6〜7:3が望ましい。
【0049】
一次連続シートS1は、JIS P 8124による坪量が、10〜25g/m2とされ、好ましくは12〜20g/m2とされ、より好ましくは13〜16g/m2とされる。坪量が10g/m2未満であると、柔らかさの点においては好ましいが、適正な強度を確保することができなくなる。他方、坪量が25g/m2を超えると、硬くなりすぎて、肌触りが悪化する。
また、紙厚(尾崎製作所製ピーコックにより測定)は2プライで80〜250μm、好ましくは100〜200μm、より好ましくは130〜180μmとされる。
【0050】
また、一次連続シートS1は、クレープ率が10〜30%であるのが好ましく、12〜25%であるのがより好ましく、13〜20%であるのが特に好ましい。クレープ率が10%未満であると、加工時に断紙しやすいとともに伸びの少ないコシのないティシュペーパー製品となる。クレープ率が30%以上であると、加工時のシートの張力コントロールが難しくシワが発生したり、また肌触りの悪いティシュペーパー製品となる。
【0051】
一次連続シートS1は、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)の縦方向が、2プライで200〜700cN/25mm、好ましくは250〜600cN/25mm、特に好ましくは300〜600cN/25mmとされ、他方、横方向が、2プライで100〜300cN/25mm、好ましくは130〜270cN/25mm、特に好ましくは150〜250cN/25mmとされる。原紙の乾燥引張が低過ぎると、製造時に破れや伸び等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
【0052】
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、紙力剤を内添(ドライヤーパートよりも前の段階、例えばパルプスラリーに添加)する、パルプのフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、NBKP配合率を増加(例えば50%以上に)する等の手法を適宜組み合わせることができる。
【0053】
乾燥紙力剤としては、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等を用いることができる。湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で5〜20kg/t程度とすることができる。また、乾燥紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で0.5〜1.0kg/t程度とすることができる。
【0054】
〔ティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法〕
次に、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法の一例を説明する。本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法は、例えば、上述したティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1を用いて行うことができる。
図11に示すように、本発明に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法においては、プライ手段51で複数の一次原反ロールから繰り出される一次連続シートS1をその連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とし(積層工程)、この積層連続シートS2に対して一対の薬液付与手段53で薬液を付与し(薬液塗布工程)、スリット手段55によって積層連続シートS2をティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅となるようにスリットし(スリット工程)、次に、スリット工程でスリットされた積層連続シートS2を同軸で巻取ってティシュペーパー製品の製品幅又はその複数倍幅の複数の二次原反ロールRを、巻き取り手段56によって形成する。
【0055】
なお、本形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造方法では、上述したティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備X1と同様に、積層工程の後段であって且つ薬液塗布工程の前段に、積層連続シートS2に対して一対のカレンダー手段52で平滑化処理する平滑化工程を設けることもできる。また、薬液塗布工程の後段であって且つスリット工程の前段に、積層連続シートS2に対してコンタクトエンボス手段54で層間剥離を防止するライン状のコンタクトエンボスを施すコンタクトエンボス工程を設けることもできる。
【0056】
本実施形態に係るティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備又は製造方法においては、加工速度は100〜1100m/分とされ、好ましくは300〜1050m/分とされ、より好ましくは450〜1000m/分とされる。1200m/分超過であると、積層連続シートS2が断紙する頻度が高くなり、薬液塗布工程では刷版ロールやアニロックスロール表面のローション剤の幅方向の不均一性により、薬液の塗布ムラが生じる可能性があり、またローション剤の飛散が多くなる。
【0057】
本実施形態に係る衛生薄葉紙製品用二次原反ロールの製造設備又は製造方法においては、薬液を積層連続シートS2の両面に塗布する場合、両面の合計の薬液塗布量は、1.5〜5.0g/m2とされ、好ましくは2.0〜4.5g/m2とされ、より好ましくは2.5〜4.0g/m2とされる。5.0g/m2超過であると、紙力低下や伸びなどにより断紙したり、ワインディングドラムで巻き取りの際に巻きズレを起こしたり、また品質的にべたつき感が過ぎる場合も出てくる。1.5g/m2未満であると滑らかさやしっとり感など未塗布面との差異を感じられなくなってしまう。
【0058】
なお、両塗布面への塗布量に大きな差異があると、表裏差を生じてしまうことから、一方の塗布量が全体の20%以上で50%未満が良い。塗布後にプライ原反で保管されてから折り加工されるまでの時間(平均的に8時間〜24時間)に、両塗布面は接していることから、しだいに両者の薬液量は均等化していき表裏差は改善される。
薬液を積層連続シートの片面のみに塗布する場合、薬液の塗布は、巻きズレを起こしにくいことからS1への塗布がよい。塗布量は、1.5〜5.0g/m2とされ、好ましくは2.0〜4.5g/m2とされ、より好ましくは2.5〜4.0g/m2とされる。
【0059】
〔マルチスタンド式インターフォルダ〕
上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法で製造された二次原反ロールRは、マルチスタンド式インターフォルダに多数セットされ、セットされた二次原反ロールRから二次連続シートを繰り出して折り畳むと共に積層することによってティシュペーパー束が製造される。以下では、そのマルチスタンド式インターフォルダの一例について説明する。
【0060】
図2及び図3に、マルチスタンド式インターフォルダの一例を示した。図中の符号2は、マルチスタンド式インターフォルダ1の図示しない二次原反ロール支持部にセットされた二次原反ロールR,R…を示している。この二次原反ロールR,R…は、必要数が図示平面と直交する方向(図2における水平方向、図3における紙面前後方向)に横並びにセットされている。各二次原反ロールRは、上述のティシュペーパー製品用二次原反ロールの製造設備、製造方法でティシュペーパー製品幅にスリットが入れられており、ティシュペーパー製品の複数倍幅、図示例では2倍幅で巻き取られ、セットされている。
【0061】
二次原反ロールRから巻き出された連続する帯状の二次連続シート3A及び3Bは、ガイドローラG1、G1等のガイド手段に案内されて折畳機構部20へ送り込まれる。また、折畳機構部20には、図4に示すように、折板P,P…が必要数並設されてなる折板群21が備えられている。各折板Pに対しては、一対の連続する二次連続シート3A又は3Bを案内するガイドローラG2,G2やガイド丸棒部材G3,G3が、それぞれ適所に備えられている。さらに、折板P,P…の下方には、折り畳みながら積み重ねられた積層帯30を受けて搬送するコンベア22が備えられている。
【0062】
この種の折板P,P…を用いた折畳機構は、例えば、米国特許4052048号特許明細書等によって公知の機構である。この種の折畳機構は、図5に示すように、各連続する二次連続シート3A,3B…を、Z字状に折り畳みながら、かつ隣接する連続する二次連続シート3A,3B…の側端部相互を掛け合わせながら積み重ねる。
【0063】
図7〜図10に、折畳機構部20の特に折板Pに関する部位を、詳しく示した。本折畳機構部20においては、各折板Pに対して、一対の連続する二次連続シート3A及び3Bが案内される。この際、連続する二次連続シート3A及び3Bは、ガイド丸棒部材G3,G3によって、側端部相互が重ならないように位置をずらされながら案内される。
【0064】
折板Pに案内された時点で下側に重なっている連続する二次連続シートを第1の連続する二次連続シート3Aとし、上側に重なっている連続する二次連続シートを第2の連続する二次連続シート3Bとすると、これら連続する二次連続シート3A及び3Bは、図5及び図8に示すように、第1の連続する二次連続シート3Aの第2の連続する二次連続シート3Bと重なっていない側端部e1が、折板Pの側板P1によって、第2の連続する二次連続シート3Bの上側に折り返されるとともに、図5及び図9に示すように、第2の連続する二次連続シート3Bの第1の連続する二次連続シート3Aと重なっていない側端部e2が、折板PのスリットP2から折板P下に引き込まれるようにして下側に折り返される。この際、図5及び図10に示すように、上流の折板Pにおいて折り畳みながら積み重ねられた連続する二次連続シート3Aの側端部e3(e1)が、折板PのスリットP2から第2の連続する二次連続シート3Bの折り返し部分間に案内される。このようにして、各連続する二次連続シート3A,3B…は、Z字状に折り畳まれるとともに、隣接する連続する二次連続シート3A及び3Bの側端部相互が掛け合わされ、したがって、製品使用時において、最上位のティシュペーパーを引き出すと、次のティシュペーパーの側端部が引き出されることになる。
【0065】
以上のようにしてマルチスタンド式インターフォルダ1で得られた積層帯30は、図2に示すように、後段の切断手段41において流れ方向FLに所定の間隔をおいて裁断(切断)されてティシュペーパー束30aとされ、図6(a)に示すように、このティシュペーパー束30aは、更に後段設備において収納箱Bに収納される。なお、以上のようなマルチスタンド式インターフォルダ1では、積層帯30の紙の方向は、流れ方向FLに沿って縦方向(MD方向)となっており、流れ方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となっている。このため、積層帯30を所定の長さに切断して得られたティシュペーパー束30aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、図6(a)に示すように、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向に沿って縦方向(MD方向)となり、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となる。
【0066】
図6(b)に、収納箱Bにティシュペーパー束30aを収納して成る製品の一例を示した。収納箱Bの上面にはミシン目Mが設けられており、このミシン目Mで収納箱B上面の一部を破断することにより収納箱Bの上面が開口するようになっている。この開口は中央にスリットを有するフィルムFによって覆われており、このフィルムFに設けられたスリットを介してティシュペーパーTを取出すことができるようになっている。
ところで、前述したように、ティシュペーパー束30aを構成するティシュペーパーの紙の方向は、ティシュペーパーの折り畳み部の延在方向と直交する方向に沿って横方向(CD方向)となるため、図6(b)に示すように、ティシュペーパーTを収納箱Bから引き出す際には、その引き出し方向は、ティシュペーパーTの横方向(CD方向)と沿うようになっている。
【0067】
次に、本発明に係る原反用ラックの一実施の形態を図14から図17に示し、これら図面を参照しつつ本実施の形態を詳細に説明する。
上記のように薬液が塗布された積層連続シートS2が、巻心RMに巻かれて二次原反ロールRが形成されることになる。そして、この二次原反ロールRは前述のように所定時間保持後にマルチスタンド式インターフォルダにて折り畳まれて、多数の製品である収納箱B入りのテッシュペーパーになる。
【0068】
この際まず、図14及び図15に示すようにこの二次原反ロールRの巻心RM内に、両端側にそれぞれ細径とされる細径部72Aが形成される金属製の軸部材72を嵌り込ませることにする。このことで、巻心RMの両端部からこの細径部72Aがそれぞれ突出することになる。
これに対して、本実施の形態に係る原反用ラック70は、下部にキャスタ76が設けられてこの進行方向自在な車輪であるキャスタ76により移動可能とされるラック本体74をこの原反用ラック70の本体部分として有している。
【0069】
このラック本体74の外周部分の四隅には、外枠とされる縦フレーム部78が下部から垂直に延びるようにそれぞれ設けられている。これら縦フレーム部78の上端部には、横方向に延びる横フレーム部80が縦フレーム部78間を繋ぐように複数配置されている。つまり、これら縦フレーム部78及び縦フレーム部78によりラック本体74上の骨組みが形成されることになる。
【0070】
また、縦フレーム部78の中程部分には、二次原反ロールRの案内とされる板状の導入部82の一端部が溶接等により接続されて、斜め上側に延びている。この導入部82の他端部は、板状に形成されて水平に延びる支持部84の一端部に連結されるように繋がっている。但し、支持部84の中央部には、90°の角度で上方が開くようなV字形に形成された凹部84Aが設けられている。さらに、この支持部84の他端部は、斜め下側に延びて縦フレーム部78に接続される連結部86に繋がっている。そして、連結部86の他端部が位置する部分の周辺には、ゴム製の緩衝材であるクッション材90が配置されている。このことで、二次原反ロールRの外周がこの部分に当たった場合でも、変形し難くなる。
【0071】
他方、支持部84の下部は、上下方向に延びる支柱材88を介して、ラック本体74に連結されていて、十分な強度をこの支持部84は備えている。さらに、図15に示すように、この原反用ラック70内には、3本の二次原反ロールRが入るような空間があり、各二次原反ロールR間とされる位置には上記と同様に導入部82、支持部84、連結部86及び支柱材88等が設けられているだけでなく、導入部82の一端部及び連結部86の他端部に対応して図示しない縦フレーム部78が配置されている。
【0072】
これに伴い、二次原反ロールRの両側に位置する支持部84によって巻心RMの両端部からそれぞれ突出する細径部72Aを支持することで、積層連続シートS2が巻かれた二次原反ロールRの中心部が支持部84により支持されることになる。この支持部84によって巻心RMの両端部の細径部72Aを支持する際に細径部72Aが凹部84Aに嵌り込むことにより、原反用ラック70の移動に伴って振動等が発生した場合であっても、二次原反ロールRの位置がずれたりすることがない。同様にしてこの原反用ラック70に計3つの二次原反ロールRが搭載可能とされている。
【0073】
また、図16及び図17に示すように、導入部82の一端部には、回転軸92を挟んで伸縮性を有するレール94が接続されている。このレール94は回転軸92により回転されることで、傾き角度Aが0°から180°までの範囲で変化可能とされているだけでなく、レール94の長さも回転軸92を基点として最大1mまで延びるようになる。またレール94は原反用ラック70内に収めることができ、かつ搬送時に支障のないよう固定可能である。
【0074】
従って、図16に示すように、原反用ラック70に二次原反ロールRを搭載する際には、高低差の存在に合わせて設けられた斜面Sを転がる二次原反ロールRの惰性により、二点鎖線で示す二次原反ロールRをレール94上で転がして、凹部84Aの位置に細径部72Aが嵌り込む形で原反用ラック70の支持部84に載せるようにする。
【0075】
他方、この原反用ラック70から二次原反ロールRを取り出す際には、レール94を伸ばした状態として、マルチスタンド式インターフォルダのモータ式の装着装置96に接続する。この状態で、装着装置96までレール94上において二次原反ロールRを転がし、更に二点差線で示すように、この装着装置96によってマルチスタンド式インターフォルダの図示しないアンリールスタンドに装着する。
【0076】
次に、本実施の形態に係る原反用ラック70の作用を説明する。
本実施の形態の原反用ラック70によれば、紙材である積層連続シートS2が巻かれた二次原反ロールRの中心部を支持部84が支持し、この支持部84に二次原反ロールRの案内とされる導入部82が繋がるようになっている。そして、ラック本体74の下部に設けられたキャスタ76により移動可能にラック本体74が形成されているだけでなく、このラック本体74がこれら支持部84及び導入部82を備えている。
【0077】
従って、スリット加工後に巻き取られて二次原反ロールRとされたものを図16に示すように高低差のある場所で転がしながら原反用ラック70に搭載後、この原反用ラック70ごと二次原反ロールRをキャスタ76により移動する。そして、後加工の為のマルチスタンド式インターフォルダにこの原反用ラック70から取り出した二次原反ロールRを図17に示すように取付けるようにする。
【0078】
このように二次原反ロールRを保管可能とすると共に、マルチスタンド式インターフォルダに取付け易いように移動可能な原反用ラック70を採用したことで、二次原反ロールRをクランプで掴む必要がなくなると共に、マルチスタンド式インターフォルダに二次原反ロールRを簡単にセット可能となった。
【0079】
以上より、本実施の形態に係る原反用ラック70によれば、二次原反ロールRをクランプで掴む必要がないことから、二次原反ロールRの変形が最小限になるだけでなく、二次原反ロールRの中心部が支持部84により支持されるのに伴い、吸湿している二次原反ロールRを長期間保管した場合であってもこの二次原反ロールRを変形させないようになる。このことで、二次原反ロールRの巻きずれを確実に防止できる。
【0080】
これに伴い、薬液塗布済の二次原反ロールRであっても問題なく後加工が可能であり且つ、マルチスタンド式インターフォルダにこの二次原反ロールRを簡単にセット可能になることから、このマルチスタンド式インターフォルダにおいて安定した操業が可能になる。従って、薬液が塗布された製品であるティシュペーパーを無駄なく生産可能になって、生産数量が向上する結果として、製造コストの低減が図れるようにもなる。
【0081】
他方、本実施の形態では、支持部84及び導入部82が連続して形成されると共に、ラック本体74の外周部分に外枠とされる縦フレーム部78が形成されている他、この縦フレーム部78に導入部82の一端が接続され且つ、支持部84の下側がラック本体74に連結された構造になっている。
【0082】
つまり、本実施の形態によれば、支持部84の下側がラック本体74に連結されるだけでなく、ラック本体74に形成された縦フレーム部78に、支持部84と連続して形成される導入部82の一端が接続されることで、二次原反ロールRの中心部を支持して荷重の加わることになる支持部84が補強されて、安定的に原反用ラック70に二次原反ロールRが収納されることになる。
【0083】
尚、上記実施の形態では、進行方向自在なキャスタにより移動可能にラック本体が形成されていて、このキャスタは4個、6個等の個数配置することが考えられるが、他の個数配置しても良い。また、他の手段によりラック本体を移動可能としても良い。つまり、例えばモータ等を搭載して自走可能としたり、単なるコロを下部に配置して移動可能としても良い。
【0084】
他方、上記実施の形態では原反用ラックの主要構成部材を鋼鉄等の金属材により形成しているが、十分な強度を有すれば、エンジニアリングプラスチック等の合成樹脂材料や、その他の材料により形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、ティシュペーパー製品用二次原反ロールのマルチスタンド式インターフォルダへの搬送に適用できるものである。
【符号の説明】
【0086】
70 原反用ラック
74 ラック本体
76 キャスタ
78 縦フレーム部
84 支持部
82 導入部
R 二次原反ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙材が巻かれた原反の中心部を支持する支持部と、
支持部に繋がり且つ原反の案内とされる導入部と、
支持部及び導入部を備えると共に移動可能に形成されたラック本体と、
を含む原反用ラック。
【請求項2】
ラック本体の下部にキャスタが設けられてこのキャスタにより移動可能とされる請求項1記載の原反用ラック。
【請求項3】
支持部及び導入部が連続して形成されると共に、ラック本体の外周部分に外枠とされるフレーム部が形成され、
このフレーム部に導入部の一端が接続され且つ、支持部の下側がラック本体に連結される請求項1または請求項2に記載の原反用ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−207594(P2011−207594A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77764(P2010−77764)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】