原子力プラント
【課題】原子力プラントの事故として炉心溶融を想定したときに、その原子力プラントの安全性を高める。
【解決手段】原子力プラントは、炉心10を収容する原子炉容器11と、原子炉容器11を格納する原子炉格納容器12と、原子炉容器11の下方でかつ原子炉格納容器12内に配置された輻射熱反射部材30と、を有する。輻射熱反射部材30は、炉心10が事故によって溶融した状態の溶融炉心31が原子炉容器11の下方に流出して原子炉格納容器12内下部に堆積しているときに溶融炉心31から放出されて原子炉格納容器12の側壁面に向かう輻射熱を遮る。
【解決手段】原子力プラントは、炉心10を収容する原子炉容器11と、原子炉容器11を格納する原子炉格納容器12と、原子炉容器11の下方でかつ原子炉格納容器12内に配置された輻射熱反射部材30と、を有する。輻射熱反射部材30は、炉心10が事故によって溶融した状態の溶融炉心31が原子炉容器11の下方に流出して原子炉格納容器12内下部に堆積しているときに溶融炉心31から放出されて原子炉格納容器12の側壁面に向かう輻射熱を遮る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炉心溶融事故に対する安全性を高めた原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
水冷却型原子炉では、原子炉圧力容器内への給水の停止や、原子炉圧力容器に接続された配管の破断により冷却水が喪失すると、原子炉水位が低下し炉心が露出して冷却が不十分になる可能性がある。このような場合を想定して、水位低下の信号により自動的に原子炉は非常停止され、非常用炉心冷却装置(ECCS)による冷却材の注入によって炉心を冠水させて冷却し、炉心溶融事故を未然に防ぐようになっている。
【0003】
しかしながら、極めて低い確率ではあるが、上記非常用炉心冷却装置が作動せず、かつ、その他の炉心への注水装置も利用できない事態も想定され得る。このような場合、原子炉水位の低下により炉心は露出し、十分な冷却が行われなくなり、原子炉停止後も発生し続ける崩壊熱によって燃料棒温度が上昇し、最終的には炉心溶融に至ることが考えられる。
【0004】
このような事態に至った場合、高温の炉心溶融物が原子炉圧力容器下部に溶け落ち、さらに原子炉圧力容器下鏡を溶融貫通して、格納容器内の床上に落下するに至る。炉心溶融物は格納容器床に張られたコンクリートを加熱し、接触面が高温状態になるとコンクリートと反応し、二酸化炭素、水素等の非凝縮性ガスを大量に発生させるとともにコンクリートを溶融浸食する。発生した非凝縮性ガスは格納容器内の圧力を高め、原子炉格納容器を破損させる可能性があり、また、コンクリートの溶融浸食により格納容器バウンダリを破損させたり格納容器構造強度を低下させたりする可能性がある。結果的に、炉心溶融物とコンクリートの反応が継続すると格納容器破損に至り、格納容器内の放射性物質が外部環境へ放出させる恐れがある。
【0005】
この炉心溶融物とコンクリートの反応を抑制するためには、炉心溶融物を冷却し、炉心溶融物底部のコンクリートとの接触面の温度を浸食温度以下(一般的なコンクリートで1500K以下)に冷却するか、炉心溶融物とコンクリートが直接接触しないようにする必要がある。そのため、炉心溶融物が落下した場合に備えて様々な対策が提案されている。代表的なものがコアキャッチャーと呼ばれるもので、落下した炉心溶融物を耐熱材で受けとめて、注水手段と組み合わせて炉心溶融物の冷却を図る設備である(特許文献1ないし3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3510670号公報
【特許文献2】特許第3150451号公報
【特許文献3】特開2007−225356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知技術では、炉心溶融物へ注水することにより炉心溶融物上面の水の沸騰により冷却することになるが、溶融炉心が堆積する前に注水を開始すると水蒸気爆発が生じてしまうため、一時的に高温溶融炉心を格納容器下部で堆積させた後に注水する。そのため高温の溶融炉心が露出した状態が生じる。この時の高温溶融炉心温度は約2300℃であり、その輻射熱により格納容器内の機器や構造物あるいは圧力バウンダリの壁面等を溶融してしまう恐れがある。
【0008】
また、炉心溶融に至るような事故の場合には電源等が喪失されていることが予想されるため、注水するための仕組みとして信号や動力を必要としない溶融弁の採用が見込まれている。この溶融弁は弁体温度が例えば260℃になった場合に注水を開始するが、動作失敗を予測して複数設置される。しかるに、この弁の動作が遅れたり、空間内が蒸気雰囲気になって動作温度に至らないと、高温溶融炉心の冷却が行われない時間が長期にわたってしまい、高温溶融炉心の浸食によって圧力バウンダリやコアキャッチャーが破損する恐れが出てくる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであって、原子力プラントの事故として炉心溶融を想定したときに、その原子力プラントの安全性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る原子力プラントは、炉心を収容する原子炉容器と、前記原子炉容器を格納する原子炉格納容器と、前記原子炉容器の下方でかつ前記原子炉格納容器内に配置された輻射熱反射部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子力プラントの事故として炉心溶融を想定したときに、その原子力プラントの安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る原子力プラントの第1の実施形態を示す模式的立断面図である。
【図2】本発明に係る原子力プラントの第2の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図3】本発明に係る原子力プラントの第3の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図4】本発明に係る原子力プラントの第4の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図5】本発明に係る原子力プラントの第5の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図6】本発明に係る原子力プラントの第6の実施形態における溶融弁付近を示す模式的部分立断面図である。
【図7】図6のVII−VII線矢視平断面図である。
【図8】本発明に係る原子力プラントの第7の実施形態における溶融弁付近を示す模式的部分立断面図である。
【図9】図8のIX−IX線矢視平断面図である。
【図10】本発明に係る原子力プラントの第8の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図11】本発明に係る原子力プラントの第9の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る原子力プラントの実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して重複説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る原子力プラントの第1の実施形態を示す模式的立断面図である。炉心10は原子炉圧力容器(原子炉容器)11内に収容されており、原子炉圧力容器11は原子炉格納容器12内に格納されている。原子炉格納容器12は、原子炉圧力容器11を収容するドライウェル13と、圧力抑制プール14を含むウェットウェル15とに区分けされている。原子炉圧力容器11は円筒状のペデスタル16で支持された支持脚17で支持されている。ドライウェル13内空間のうちで、支持脚17よりも上方は上部ドライウェル18と呼ばれ、支持脚17よりも下方のペデスタル16の内側は下部ドライウェル19と呼ばれる。ウェットウェル15は下部ドライウェル19を取り囲んで環状をなしている。
【0015】
圧力抑制プール14内には常時、冷却水が貯められている。上部ドライウェル18から圧力抑制プール14内の冷却水中に向かって鉛直方向にベント管20が延びている。このベント管20から下部ドライウェル19に通じる注水管21が設けられ、注水管21に溶融弁22が取り付けられている。
【0016】
原子炉格納容器12の内面にはライナー23が取り付けられている。
【0017】
原子炉格納容器12の側壁を貫通して、さらにウェットウェル15を水平方向に通って下部ドライウェル19に通じるアクセストンネル24が設けられている。アクセストンネル24が下部ドライウェル19に開口する部分には、アクセストンネルハッチ25が取り付けられている。原子力プラントの通常運転時には、アクセストンネルハッチ25は閉じている。アクセストンネルハッチ25は、原子力プラントの定期点検のときなどには、開いて、作業員が下部ドライウェル19に出入できる構造になっている。
【0018】
この実施形態では、下部ドライウェル19内に、アクセストンネルハッチ25およびその近傍を覆うように、輻射熱反射機構(輻射熱反射部材)30が取り付けられている。輻射熱反射機構30は耐熱材でできている。この原子力プラントの事故により炉心10が溶融することを想定し、さらに、溶融炉心31が原子炉圧力容器11の底部を貫通して下部ドライウェル19の底部に堆積することを想定する。このとき、高温の溶融炉心31から放出される輻射熱がアクセストンネルハッチ25やその近傍ならびに下部ドライウェル19の側面に取り付けられたライナー23に到達するのを防止または抑制するように、輻射熱反射機構30が配置されている。
【0019】
この実施形態によれば、原子力プラントの事故時に、原子炉圧力容器11内の高圧の冷却水がドライウェル13内に流出した場合、ベント管20を通して蒸気が圧力抑制プール14内に導かれ、ここで蒸気が凝縮することにより、原子炉格納容器12内の圧力上昇が抑制される。
【0020】
さらに、この実施形態によれば、原子力プラントの事故により炉心10が溶融することを想定し、さらに、溶融炉心31が原子炉圧力容器11の底部を貫通して下部ドライウェル19の底部に堆積することを想定したときに、この堆積した溶融炉心31から原子炉格納容器12の側壁やアクセストンネルハッチ25およびその近傍に向かう輻射熱が遮断され、原子炉格納容器12の側壁などの熱浸食を防止または抑制することができる。
【0021】
これにより、原子炉格納容器12側壁の温度上昇を防ぐことができ、圧力バウンダリの原子炉格納容器12の壁面やアクセストンネル24での破損による放射性物質のリークを防ぐことができる。
【0022】
さらに、原子力プラントの事故時に、高温の溶融炉心31が下部ドライウェル19の底部に堆積したとき、溶融弁22が溶融し、圧力抑制プール14内の冷却水が注水管21を通じて下部ドライウェル19に供給され、溶融炉心31を冷却することができる。
【0023】
[第2の実施形態]
図2は、本発明に係る原子力プラントの第2の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0024】
原子炉圧力容器11の下部には、原子炉圧力容器11を貫通して制御棒駆動機構(CRD)40およびインターナルポンプ(RIP)45が取り付けられている。
【0025】
下部ドライウェル19内で制御棒駆動機構40の下方に上部プラットホーム41が設置されている。上部プラットホーム41はプラットホームレール42によって支持されている。上部プラットホーム41から下方に下部プラットホーム43が吊り下げられている。
【0026】
制御棒駆動機構40を交換するCRD交換機44が、上部プラットホーム41および下部プラットホーム43に支持されている。
【0027】
この実施形態では、上部プラットホーム41、プラットホームレール42および下部プラットホーム43の下面や側面を覆うように輻射熱反射機構47が設置されている。
【0028】
なお、図2に示すように、インターナルポンプ45の搬出入に当たって、RIP搬送台車46が、アクセストンネル24を通じて上部プラットホーム41上を移動できるようになっている。
【0029】
この実施形態によれば、原子力プラントの事故時に、下部ドライウェル19内下部に溶融炉心31(図1参照)が堆積した場合に、溶融炉心31からの輻射熱が原子炉格納容器12内の機器を支持している支持構造物(構造材)に至る前に輻射熱反射機構47によって遮断され、支持構造物の温度上昇を抑制することができる。これにより、これら支持構造物が熱により溶け落ちるのを防ぎ、支持しているCRD交換機44等の機器や支持構造物が下部に落下するのを防ぐことができる。
【0030】
[第3の実施形態]
図3は、本発明に係る原子力プラントの第3の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0031】
この実施形態では、原子炉格納容器12の下部ドライウェル19(図1参照)の底部にコアキャッチャー50が配置されている。コアキャッチャー50は、原子炉圧力容器11の真下に位置している。コアキャッチャー50は、原子炉事故時に、炉心10が溶融して原子炉圧力容器11の底部を貫通して落下した場合に、その溶融炉心31を受け止めて、放射性物質のさらなる拡散を防ぐためのものである。
【0032】
コアキャッチャー50は、上方から落下する溶融炉心31を収容する上部開放の溶融炉心収容部52と、溶融炉心収容部52の外側に沿って冷却水を流すための冷却流路55を備えている。溶融炉心収容部52は、中央が下方に窪んだすり鉢状の底板部53と底板部53の周囲から鉛直に立ち上がった側壁部54とを備えている。底板部53および側壁部54の内側に耐熱壁56が設けられている。
【0033】
側壁部54の内側の耐熱壁56の内側に輻射熱反射部材57が設置されている。また、コアキャッチャー50の上方で、ペデスタル16の壁に沿って溶融弁22が配置されている。
【0034】
この実施形態によれば、輻射熱反射部材57が設置されているために、溶融炉心収容部52内の溶融炉心31から発せられる輻射熱がコアキャッチャー50の側壁部54に届く量が抑制され、側壁部54の温度上昇を抑制することができる。これにより、側壁部54の温度上昇による破壊を防止または抑制するとともに、耐熱壁56を構成する耐熱材の落下を防ぐことができる。
【0035】
[第4の実施形態]
図4は、本発明に係る原子力プラントの第4の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0036】
この実施形態は第3の実施形態の変形であって、第4の実施形態では、原子炉圧力容器11の下方でコアキャッチャー50の上方に、サンプ床60が水平方向に広がっている。サンプ床60は、ペデスタル16に沿ってペデスタル16に取り付けられたサンプ床支持構造61によって支持されている。
【0037】
サンプ床60の下面に、サンプ床60周辺部、サンプ床支持構造61を溶融炉心31からの輻射熱から遮へいする輻射熱反射部材62、63が設けられている。輻射熱反射部材62は反射する輻射熱を溶融弁22に導くことができるように設置角度が調整されている。また、輻射熱反射部材63は、コアキャッチャー50に対向する面が凹面になっていて、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材63で反射して溶融弁22に集まるように配置されている。
【0038】
この実施形態によれば、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材63で反射するので、輻射熱がサンプ床60やサンプ床支持構造61へ至るのが遮断され、しかも、輻射熱が溶融弁22に集中する。
【0039】
これにより、高温の溶融炉心31からの輻射熱によるサンプ床支持構造61の温度上昇を防ぐことでサンプ床61全体が落下することを防ぐとともに、輻射熱が原子炉格納容器内壁のバウンダリであるライナー23等を破損するのを防ぐことができる。また、高温溶融炉心31の輻射熱により、溶融弁22の温度上昇を早めて弁開放遅れ時間を短縮できる。また、輻射熱を利用して溶融弁22の昇温をすることで、雰囲気温度の分布に依ることなく溶融弁22の作動を行うことができる。
【0040】
[第5の実施形態]
図5は、本発明に係る原子力プラントの第5の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0041】
この実施形態は第3の実施形態の変形であって、側壁部54の内側の耐熱壁56の内側に輻射熱反射部材65が設置されている。輻射熱反射部材65は、コアキャッチャー50に対向する面が凹面になっていて、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材65で反射して溶融弁22に集まるように配置されている。
【0042】
この実施形態によれば、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材65で反射するので、第3の実施形態と同様に、溶融炉心収容部52内の溶融炉心31から発せられる輻射熱がコアキャッチャー50の側壁部54に届く量が抑制され、側壁部54の温度上昇を抑制することができる。これにより、側壁部54の温度上昇による破壊を防止または抑制するとともに、耐熱壁56を構成する耐熱材の落下を防ぐことができる。
【0043】
さらに、第4の実施形態と同様に、輻射熱が輻射熱反射部材65に反射して溶融弁22に集中する。これにより、溶融弁22の温度上昇を早めて弁開放遅れ時間を短縮できる。また、輻射熱を利用して溶融弁22の昇温をすることで雰囲気温度の分布に依ることなく溶融弁22の作動を行うことができる。
【0044】
[第6の実施形態]
図6は、本発明に係る原子力プラントの第6の実施形態における溶融弁付近を示す模式的部分立断面図である。図7は図6のVII−VII線矢視平断面図である。
【0045】
この実施形態では、輻射熱反射機構66が、溶融弁22の周辺の溶融弁22の上方および外周部に配置されている。輻射熱反射部材66は、コアキャッチャー50に対向する面が凹面になっていて、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材66で反射して溶融弁22に集まるように配置されている。
【0046】
この実施形態によれば、溶融炉心31からの輻射熱の中でも溶融弁22の周辺に照射された輻射熱は、輻射熱反射機構66によって反射され、溶融弁22に集中する。
【0047】
これにより、高温溶融炉心31からの輻射熱により、溶融弁22の温度上昇を早めて弁開放遅れ時間を短縮できる。さらに、輻射熱を利用して溶融弁22の昇温をすることで雰囲気温度の分布に依ることなく溶融弁22の作動を行うことができる。また、溶融弁22の外側や上方にある原子炉格納容器12の内壁やサンプ床支持構造61などに至る輻射熱を遮断することができる。
【0048】
[第7の実施形態]
図8は、本発明に係る原子力プラントの第7の実施形態における溶融弁付近を示す模式的部分立断面図である。図9は図8のIX−IX線矢視平断面図である。
【0049】
この実施形態は第6の実施形態の変形であって、溶融弁22の周辺部に熱吸収剤67を塗布している点が第6の実施形態と異なる。
【0050】
溶融弁22は溶融することで弁動作を行う機構を内部に有しており、外部の熱を溶融部に伝えることで動作する。この実施形態では、溶融弁22の周辺部に熱吸収剤67を塗布しているので、溶融炉心31からの輻射熱や輻射熱反射機構66から輻射熱を溶融弁22で吸収する。熱吸収剤67が塗布されていることから、溶融弁22の熱吸収が促進され、温度上昇が促進される。これにより、溶融弁22の弁開放遅れ時間を短縮できる。また、溶融弁22に到達した輻射熱を反射することなく利用でき、溶融弁22から反射してしまう輻射熱により、溶融弁22周辺の温度上昇を抑制することができる。
【0051】
[第8の実施形態]
図10は、本発明に係る原子力プラントの第8の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0052】
原子炉圧力容器11の下方でコアキャッチャー50の上方に、サンプ床60が水平方向に広がっている。サンプ床60は鋼板で構成されている。サンプ床60は、ペデスタル16に沿ってペデスタル16に取り付けられたサンプ床支持構造61によって支持されている。さらに、サンプ床60の下でサンプ床60を支持する複数の梁70が、下部ドライウェル19を水平に横切るように配置されている。これらの梁70およびサンプ床支持構造61の下面に、輻射熱を反射する熱反射材71が塗布されている。
【0053】
この実施形態によれば、コアキャッチャー50内に保持された溶融炉心31からの輻射熱が、熱反射材71で反射される。その結果、サンプ床60を支える梁70およびサンプ床支持構造61に到達する輻射熱を低減することができる。これにより、梁70およびサンプ床支持構造61の温度上昇を抑制し、梁70およびサンプ床支持構造61の溶融や熱応力によるサンプ床60の落下を防ぐことができる。さらに、熱反射材71で反射された輻射熱が溶融弁22にも到達するので、溶融弁22を早期に溶融させる効果もある。
【0054】
[第9の実施形態]
図11は、本発明に係る原子力プラントの第9の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0055】
この実施形態は第8の実施形態の変形であって、サンプ床60の下面のうちで梁70によって覆われていない部分に、輻射熱を吸収する熱吸収剤80が塗布されている。この他の構成は第8の実施形態と同様である。
【0056】
この実施形態によれば、コアキャッチャー50内に保持された溶融炉心31からの輻射熱が、熱反射材71で反射されるとともに、熱吸収剤80で吸収される。その結果、薄鋼板からなるサンプ床60が輻射熱で特に加熱され、サンプ床60の床面のみを溶融させることができる。これにより、溶融炉心31への注水が行われた際に発生する蒸気が、上昇する際の障害が無くなり、下部ドライウェル19の下部に留まることなく上部に移動することが可能となる。
【0057】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0058】
たとえば、上記各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10・・・炉心、 11・・・原子炉圧力容器(原子炉容器)、 12・・・原子炉格納容器、 13・・・ドライウェル、 14・・・圧力抑制プール、 15・・・ウェットウェル、 16・・・ペデスタル、 17・・・支持脚、 18・・・上部ドライウェル、 19・・・下部ドライウェル、 20・・・ベント管、 21・・・注水管、 22・・・溶融弁、 23・・・ライナー、 24・・・アクセストンネル、 25・・・アクセストンネルハッチ、 30・・・輻射熱反射機構(輻射熱反射部材)、 31・・・溶融炉心、 40・・・制御棒駆動機構(CRD)、 41・・・上部プラットホーム、 42・・・プラットホームレール、 43・・・下部プラットホーム、 44・・・CRD交換機、 45・・・インターナルポンプ(RIP)、 46・・・RIP搬送台車、 47・・・輻射熱反射機構、 50・・・コアキャッチャー、 52・・・溶融炉心収容部、 53・・・底板部、 54・・・側壁部、 55・・・冷却流路、 56・・・耐熱壁、 57・・・輻射熱反射部材、 60・・・サンプ床、 61・・・サンプ床支持構造、 62、63、65、66・・・輻射熱反射部材、 67・・・熱吸収剤、 70・・・梁、 71・・・熱反射材、 80・・・熱吸収剤
【技術分野】
【0001】
この発明は、炉心溶融事故に対する安全性を高めた原子力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
水冷却型原子炉では、原子炉圧力容器内への給水の停止や、原子炉圧力容器に接続された配管の破断により冷却水が喪失すると、原子炉水位が低下し炉心が露出して冷却が不十分になる可能性がある。このような場合を想定して、水位低下の信号により自動的に原子炉は非常停止され、非常用炉心冷却装置(ECCS)による冷却材の注入によって炉心を冠水させて冷却し、炉心溶融事故を未然に防ぐようになっている。
【0003】
しかしながら、極めて低い確率ではあるが、上記非常用炉心冷却装置が作動せず、かつ、その他の炉心への注水装置も利用できない事態も想定され得る。このような場合、原子炉水位の低下により炉心は露出し、十分な冷却が行われなくなり、原子炉停止後も発生し続ける崩壊熱によって燃料棒温度が上昇し、最終的には炉心溶融に至ることが考えられる。
【0004】
このような事態に至った場合、高温の炉心溶融物が原子炉圧力容器下部に溶け落ち、さらに原子炉圧力容器下鏡を溶融貫通して、格納容器内の床上に落下するに至る。炉心溶融物は格納容器床に張られたコンクリートを加熱し、接触面が高温状態になるとコンクリートと反応し、二酸化炭素、水素等の非凝縮性ガスを大量に発生させるとともにコンクリートを溶融浸食する。発生した非凝縮性ガスは格納容器内の圧力を高め、原子炉格納容器を破損させる可能性があり、また、コンクリートの溶融浸食により格納容器バウンダリを破損させたり格納容器構造強度を低下させたりする可能性がある。結果的に、炉心溶融物とコンクリートの反応が継続すると格納容器破損に至り、格納容器内の放射性物質が外部環境へ放出させる恐れがある。
【0005】
この炉心溶融物とコンクリートの反応を抑制するためには、炉心溶融物を冷却し、炉心溶融物底部のコンクリートとの接触面の温度を浸食温度以下(一般的なコンクリートで1500K以下)に冷却するか、炉心溶融物とコンクリートが直接接触しないようにする必要がある。そのため、炉心溶融物が落下した場合に備えて様々な対策が提案されている。代表的なものがコアキャッチャーと呼ばれるもので、落下した炉心溶融物を耐熱材で受けとめて、注水手段と組み合わせて炉心溶融物の冷却を図る設備である(特許文献1ないし3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3510670号公報
【特許文献2】特許第3150451号公報
【特許文献3】特開2007−225356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知技術では、炉心溶融物へ注水することにより炉心溶融物上面の水の沸騰により冷却することになるが、溶融炉心が堆積する前に注水を開始すると水蒸気爆発が生じてしまうため、一時的に高温溶融炉心を格納容器下部で堆積させた後に注水する。そのため高温の溶融炉心が露出した状態が生じる。この時の高温溶融炉心温度は約2300℃であり、その輻射熱により格納容器内の機器や構造物あるいは圧力バウンダリの壁面等を溶融してしまう恐れがある。
【0008】
また、炉心溶融に至るような事故の場合には電源等が喪失されていることが予想されるため、注水するための仕組みとして信号や動力を必要としない溶融弁の採用が見込まれている。この溶融弁は弁体温度が例えば260℃になった場合に注水を開始するが、動作失敗を予測して複数設置される。しかるに、この弁の動作が遅れたり、空間内が蒸気雰囲気になって動作温度に至らないと、高温溶融炉心の冷却が行われない時間が長期にわたってしまい、高温溶融炉心の浸食によって圧力バウンダリやコアキャッチャーが破損する恐れが出てくる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであって、原子力プラントの事故として炉心溶融を想定したときに、その原子力プラントの安全性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る原子力プラントは、炉心を収容する原子炉容器と、前記原子炉容器を格納する原子炉格納容器と、前記原子炉容器の下方でかつ前記原子炉格納容器内に配置された輻射熱反射部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子力プラントの事故として炉心溶融を想定したときに、その原子力プラントの安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る原子力プラントの第1の実施形態を示す模式的立断面図である。
【図2】本発明に係る原子力プラントの第2の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図3】本発明に係る原子力プラントの第3の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図4】本発明に係る原子力プラントの第4の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図5】本発明に係る原子力プラントの第5の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図6】本発明に係る原子力プラントの第6の実施形態における溶融弁付近を示す模式的部分立断面図である。
【図7】図6のVII−VII線矢視平断面図である。
【図8】本発明に係る原子力プラントの第7の実施形態における溶融弁付近を示す模式的部分立断面図である。
【図9】図8のIX−IX線矢視平断面図である。
【図10】本発明に係る原子力プラントの第8の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【図11】本発明に係る原子力プラントの第9の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る原子力プラントの実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して重複説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る原子力プラントの第1の実施形態を示す模式的立断面図である。炉心10は原子炉圧力容器(原子炉容器)11内に収容されており、原子炉圧力容器11は原子炉格納容器12内に格納されている。原子炉格納容器12は、原子炉圧力容器11を収容するドライウェル13と、圧力抑制プール14を含むウェットウェル15とに区分けされている。原子炉圧力容器11は円筒状のペデスタル16で支持された支持脚17で支持されている。ドライウェル13内空間のうちで、支持脚17よりも上方は上部ドライウェル18と呼ばれ、支持脚17よりも下方のペデスタル16の内側は下部ドライウェル19と呼ばれる。ウェットウェル15は下部ドライウェル19を取り囲んで環状をなしている。
【0015】
圧力抑制プール14内には常時、冷却水が貯められている。上部ドライウェル18から圧力抑制プール14内の冷却水中に向かって鉛直方向にベント管20が延びている。このベント管20から下部ドライウェル19に通じる注水管21が設けられ、注水管21に溶融弁22が取り付けられている。
【0016】
原子炉格納容器12の内面にはライナー23が取り付けられている。
【0017】
原子炉格納容器12の側壁を貫通して、さらにウェットウェル15を水平方向に通って下部ドライウェル19に通じるアクセストンネル24が設けられている。アクセストンネル24が下部ドライウェル19に開口する部分には、アクセストンネルハッチ25が取り付けられている。原子力プラントの通常運転時には、アクセストンネルハッチ25は閉じている。アクセストンネルハッチ25は、原子力プラントの定期点検のときなどには、開いて、作業員が下部ドライウェル19に出入できる構造になっている。
【0018】
この実施形態では、下部ドライウェル19内に、アクセストンネルハッチ25およびその近傍を覆うように、輻射熱反射機構(輻射熱反射部材)30が取り付けられている。輻射熱反射機構30は耐熱材でできている。この原子力プラントの事故により炉心10が溶融することを想定し、さらに、溶融炉心31が原子炉圧力容器11の底部を貫通して下部ドライウェル19の底部に堆積することを想定する。このとき、高温の溶融炉心31から放出される輻射熱がアクセストンネルハッチ25やその近傍ならびに下部ドライウェル19の側面に取り付けられたライナー23に到達するのを防止または抑制するように、輻射熱反射機構30が配置されている。
【0019】
この実施形態によれば、原子力プラントの事故時に、原子炉圧力容器11内の高圧の冷却水がドライウェル13内に流出した場合、ベント管20を通して蒸気が圧力抑制プール14内に導かれ、ここで蒸気が凝縮することにより、原子炉格納容器12内の圧力上昇が抑制される。
【0020】
さらに、この実施形態によれば、原子力プラントの事故により炉心10が溶融することを想定し、さらに、溶融炉心31が原子炉圧力容器11の底部を貫通して下部ドライウェル19の底部に堆積することを想定したときに、この堆積した溶融炉心31から原子炉格納容器12の側壁やアクセストンネルハッチ25およびその近傍に向かう輻射熱が遮断され、原子炉格納容器12の側壁などの熱浸食を防止または抑制することができる。
【0021】
これにより、原子炉格納容器12側壁の温度上昇を防ぐことができ、圧力バウンダリの原子炉格納容器12の壁面やアクセストンネル24での破損による放射性物質のリークを防ぐことができる。
【0022】
さらに、原子力プラントの事故時に、高温の溶融炉心31が下部ドライウェル19の底部に堆積したとき、溶融弁22が溶融し、圧力抑制プール14内の冷却水が注水管21を通じて下部ドライウェル19に供給され、溶融炉心31を冷却することができる。
【0023】
[第2の実施形態]
図2は、本発明に係る原子力プラントの第2の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0024】
原子炉圧力容器11の下部には、原子炉圧力容器11を貫通して制御棒駆動機構(CRD)40およびインターナルポンプ(RIP)45が取り付けられている。
【0025】
下部ドライウェル19内で制御棒駆動機構40の下方に上部プラットホーム41が設置されている。上部プラットホーム41はプラットホームレール42によって支持されている。上部プラットホーム41から下方に下部プラットホーム43が吊り下げられている。
【0026】
制御棒駆動機構40を交換するCRD交換機44が、上部プラットホーム41および下部プラットホーム43に支持されている。
【0027】
この実施形態では、上部プラットホーム41、プラットホームレール42および下部プラットホーム43の下面や側面を覆うように輻射熱反射機構47が設置されている。
【0028】
なお、図2に示すように、インターナルポンプ45の搬出入に当たって、RIP搬送台車46が、アクセストンネル24を通じて上部プラットホーム41上を移動できるようになっている。
【0029】
この実施形態によれば、原子力プラントの事故時に、下部ドライウェル19内下部に溶融炉心31(図1参照)が堆積した場合に、溶融炉心31からの輻射熱が原子炉格納容器12内の機器を支持している支持構造物(構造材)に至る前に輻射熱反射機構47によって遮断され、支持構造物の温度上昇を抑制することができる。これにより、これら支持構造物が熱により溶け落ちるのを防ぎ、支持しているCRD交換機44等の機器や支持構造物が下部に落下するのを防ぐことができる。
【0030】
[第3の実施形態]
図3は、本発明に係る原子力プラントの第3の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0031】
この実施形態では、原子炉格納容器12の下部ドライウェル19(図1参照)の底部にコアキャッチャー50が配置されている。コアキャッチャー50は、原子炉圧力容器11の真下に位置している。コアキャッチャー50は、原子炉事故時に、炉心10が溶融して原子炉圧力容器11の底部を貫通して落下した場合に、その溶融炉心31を受け止めて、放射性物質のさらなる拡散を防ぐためのものである。
【0032】
コアキャッチャー50は、上方から落下する溶融炉心31を収容する上部開放の溶融炉心収容部52と、溶融炉心収容部52の外側に沿って冷却水を流すための冷却流路55を備えている。溶融炉心収容部52は、中央が下方に窪んだすり鉢状の底板部53と底板部53の周囲から鉛直に立ち上がった側壁部54とを備えている。底板部53および側壁部54の内側に耐熱壁56が設けられている。
【0033】
側壁部54の内側の耐熱壁56の内側に輻射熱反射部材57が設置されている。また、コアキャッチャー50の上方で、ペデスタル16の壁に沿って溶融弁22が配置されている。
【0034】
この実施形態によれば、輻射熱反射部材57が設置されているために、溶融炉心収容部52内の溶融炉心31から発せられる輻射熱がコアキャッチャー50の側壁部54に届く量が抑制され、側壁部54の温度上昇を抑制することができる。これにより、側壁部54の温度上昇による破壊を防止または抑制するとともに、耐熱壁56を構成する耐熱材の落下を防ぐことができる。
【0035】
[第4の実施形態]
図4は、本発明に係る原子力プラントの第4の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0036】
この実施形態は第3の実施形態の変形であって、第4の実施形態では、原子炉圧力容器11の下方でコアキャッチャー50の上方に、サンプ床60が水平方向に広がっている。サンプ床60は、ペデスタル16に沿ってペデスタル16に取り付けられたサンプ床支持構造61によって支持されている。
【0037】
サンプ床60の下面に、サンプ床60周辺部、サンプ床支持構造61を溶融炉心31からの輻射熱から遮へいする輻射熱反射部材62、63が設けられている。輻射熱反射部材62は反射する輻射熱を溶融弁22に導くことができるように設置角度が調整されている。また、輻射熱反射部材63は、コアキャッチャー50に対向する面が凹面になっていて、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材63で反射して溶融弁22に集まるように配置されている。
【0038】
この実施形態によれば、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材63で反射するので、輻射熱がサンプ床60やサンプ床支持構造61へ至るのが遮断され、しかも、輻射熱が溶融弁22に集中する。
【0039】
これにより、高温の溶融炉心31からの輻射熱によるサンプ床支持構造61の温度上昇を防ぐことでサンプ床61全体が落下することを防ぐとともに、輻射熱が原子炉格納容器内壁のバウンダリであるライナー23等を破損するのを防ぐことができる。また、高温溶融炉心31の輻射熱により、溶融弁22の温度上昇を早めて弁開放遅れ時間を短縮できる。また、輻射熱を利用して溶融弁22の昇温をすることで、雰囲気温度の分布に依ることなく溶融弁22の作動を行うことができる。
【0040】
[第5の実施形態]
図5は、本発明に係る原子力プラントの第5の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0041】
この実施形態は第3の実施形態の変形であって、側壁部54の内側の耐熱壁56の内側に輻射熱反射部材65が設置されている。輻射熱反射部材65は、コアキャッチャー50に対向する面が凹面になっていて、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材65で反射して溶融弁22に集まるように配置されている。
【0042】
この実施形態によれば、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材65で反射するので、第3の実施形態と同様に、溶融炉心収容部52内の溶融炉心31から発せられる輻射熱がコアキャッチャー50の側壁部54に届く量が抑制され、側壁部54の温度上昇を抑制することができる。これにより、側壁部54の温度上昇による破壊を防止または抑制するとともに、耐熱壁56を構成する耐熱材の落下を防ぐことができる。
【0043】
さらに、第4の実施形態と同様に、輻射熱が輻射熱反射部材65に反射して溶融弁22に集中する。これにより、溶融弁22の温度上昇を早めて弁開放遅れ時間を短縮できる。また、輻射熱を利用して溶融弁22の昇温をすることで雰囲気温度の分布に依ることなく溶融弁22の作動を行うことができる。
【0044】
[第6の実施形態]
図6は、本発明に係る原子力プラントの第6の実施形態における溶融弁付近を示す模式的部分立断面図である。図7は図6のVII−VII線矢視平断面図である。
【0045】
この実施形態では、輻射熱反射機構66が、溶融弁22の周辺の溶融弁22の上方および外周部に配置されている。輻射熱反射部材66は、コアキャッチャー50に対向する面が凹面になっていて、コアキャッチャー50内の溶融炉心31からの輻射熱が輻射熱反射部材66で反射して溶融弁22に集まるように配置されている。
【0046】
この実施形態によれば、溶融炉心31からの輻射熱の中でも溶融弁22の周辺に照射された輻射熱は、輻射熱反射機構66によって反射され、溶融弁22に集中する。
【0047】
これにより、高温溶融炉心31からの輻射熱により、溶融弁22の温度上昇を早めて弁開放遅れ時間を短縮できる。さらに、輻射熱を利用して溶融弁22の昇温をすることで雰囲気温度の分布に依ることなく溶融弁22の作動を行うことができる。また、溶融弁22の外側や上方にある原子炉格納容器12の内壁やサンプ床支持構造61などに至る輻射熱を遮断することができる。
【0048】
[第7の実施形態]
図8は、本発明に係る原子力プラントの第7の実施形態における溶融弁付近を示す模式的部分立断面図である。図9は図8のIX−IX線矢視平断面図である。
【0049】
この実施形態は第6の実施形態の変形であって、溶融弁22の周辺部に熱吸収剤67を塗布している点が第6の実施形態と異なる。
【0050】
溶融弁22は溶融することで弁動作を行う機構を内部に有しており、外部の熱を溶融部に伝えることで動作する。この実施形態では、溶融弁22の周辺部に熱吸収剤67を塗布しているので、溶融炉心31からの輻射熱や輻射熱反射機構66から輻射熱を溶融弁22で吸収する。熱吸収剤67が塗布されていることから、溶融弁22の熱吸収が促進され、温度上昇が促進される。これにより、溶融弁22の弁開放遅れ時間を短縮できる。また、溶融弁22に到達した輻射熱を反射することなく利用でき、溶融弁22から反射してしまう輻射熱により、溶融弁22周辺の温度上昇を抑制することができる。
【0051】
[第8の実施形態]
図10は、本発明に係る原子力プラントの第8の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0052】
原子炉圧力容器11の下方でコアキャッチャー50の上方に、サンプ床60が水平方向に広がっている。サンプ床60は鋼板で構成されている。サンプ床60は、ペデスタル16に沿ってペデスタル16に取り付けられたサンプ床支持構造61によって支持されている。さらに、サンプ床60の下でサンプ床60を支持する複数の梁70が、下部ドライウェル19を水平に横切るように配置されている。これらの梁70およびサンプ床支持構造61の下面に、輻射熱を反射する熱反射材71が塗布されている。
【0053】
この実施形態によれば、コアキャッチャー50内に保持された溶融炉心31からの輻射熱が、熱反射材71で反射される。その結果、サンプ床60を支える梁70およびサンプ床支持構造61に到達する輻射熱を低減することができる。これにより、梁70およびサンプ床支持構造61の温度上昇を抑制し、梁70およびサンプ床支持構造61の溶融や熱応力によるサンプ床60の落下を防ぐことができる。さらに、熱反射材71で反射された輻射熱が溶融弁22にも到達するので、溶融弁22を早期に溶融させる効果もある。
【0054】
[第9の実施形態]
図11は、本発明に係る原子力プラントの第9の実施形態における原子炉格納容器の下部を示す部分立断面図である。
【0055】
この実施形態は第8の実施形態の変形であって、サンプ床60の下面のうちで梁70によって覆われていない部分に、輻射熱を吸収する熱吸収剤80が塗布されている。この他の構成は第8の実施形態と同様である。
【0056】
この実施形態によれば、コアキャッチャー50内に保持された溶融炉心31からの輻射熱が、熱反射材71で反射されるとともに、熱吸収剤80で吸収される。その結果、薄鋼板からなるサンプ床60が輻射熱で特に加熱され、サンプ床60の床面のみを溶融させることができる。これにより、溶融炉心31への注水が行われた際に発生する蒸気が、上昇する際の障害が無くなり、下部ドライウェル19の下部に留まることなく上部に移動することが可能となる。
【0057】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0058】
たとえば、上記各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10・・・炉心、 11・・・原子炉圧力容器(原子炉容器)、 12・・・原子炉格納容器、 13・・・ドライウェル、 14・・・圧力抑制プール、 15・・・ウェットウェル、 16・・・ペデスタル、 17・・・支持脚、 18・・・上部ドライウェル、 19・・・下部ドライウェル、 20・・・ベント管、 21・・・注水管、 22・・・溶融弁、 23・・・ライナー、 24・・・アクセストンネル、 25・・・アクセストンネルハッチ、 30・・・輻射熱反射機構(輻射熱反射部材)、 31・・・溶融炉心、 40・・・制御棒駆動機構(CRD)、 41・・・上部プラットホーム、 42・・・プラットホームレール、 43・・・下部プラットホーム、 44・・・CRD交換機、 45・・・インターナルポンプ(RIP)、 46・・・RIP搬送台車、 47・・・輻射熱反射機構、 50・・・コアキャッチャー、 52・・・溶融炉心収容部、 53・・・底板部、 54・・・側壁部、 55・・・冷却流路、 56・・・耐熱壁、 57・・・輻射熱反射部材、 60・・・サンプ床、 61・・・サンプ床支持構造、 62、63、65、66・・・輻射熱反射部材、 67・・・熱吸収剤、 70・・・梁、 71・・・熱反射材、 80・・・熱吸収剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心を収容する原子炉容器と、
前記原子炉容器を格納する原子炉格納容器と、
前記原子炉容器の下方でかつ前記原子炉格納容器内に配置された輻射熱反射部材と、
を有することを特徴とする原子力プラント。
【請求項2】
前記輻射熱反射部材は、前記炉心が事故によって溶融した状態の溶融炉心が前記原子炉容器の下方に流出して前記原子炉格納容器内下部に堆積しているときに当該溶融炉心から放出されて前記原子炉格納容器の側壁面に向かう輻射熱を遮るものであること、を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項3】
前記輻射熱反射部材は、前記炉心が事故によって溶融した状態の溶融炉心が前記原子炉容器の下方に流出して前記原子炉格納容器内下部に堆積しているときに、当該溶融炉心から放出されて、前記原子炉容器の下方で前記原子炉格納容器内に配置された機器を支持する支持構造物に向かう輻射熱の少なくとも一部を遮るものであること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子力プラント。
【請求項4】
前記炉心が事故によって溶融した状態の溶融炉心が前記原子炉容器の下方に流出したときに前記溶融炉心を受容してその上に堆積させるコアキャッチャーが、前記原子炉容器の下方の前記原子炉格納容器内に配置されていて、
前記コアキャッチャーの側壁に前記輻射熱反射部材が取り付けられていること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子力プラント。
【請求項5】
前記原子炉容器の水平方向外側で前記原子炉格納容器内に配置された冷却水プールと、
通常時には閉じていて、原子炉事故時には溶融して開いて前記冷却水プール内の冷却水を前記原子炉容器の下方で前記原子炉格納容器内に導く溶融弁と、
を有し、
前記輻射熱反射部材は、前記炉心が事故によって溶融した状態の溶融炉心が前記原子炉容器の下方に流出して前記原子炉格納容器内下部に堆積しているときに当該溶融炉心から放出された輻射熱を前記溶融弁に集めるように配置されていること、を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項6】
前記溶融弁の周囲に熱吸収剤が塗布されていることを特徴とする請求項5に記載の原子力プラント。
【請求項7】
前記支持構造物は、
前記原子炉容器の下方に設けられて水平方向に広がるサンプ床と、
前記サンプ床の下方で前記サンプ床の下面の一部のみを覆うように前記原子炉格納容器内に配置されて前記サンプ床を支持するサンプ床支持構造物と、
を含み、
前記輻射熱反射部材は、前記サンプ床支持構造物の下面を覆い、しかも、前記サンプ床の下面のうちの前記サンプ床支持構造物によって覆われていない部分の下面を覆わないように配置されていること、を特徴とする請求項3に記載の原子力プラント。
【請求項8】
前記輻射熱反射部材は、前記支持構造物に塗布されていること、を特徴とする請求項3または請求項7に記載の原子力プラント。
【請求項9】
前記サンプ床の下面のうちの前記サンプ床支持構造物によって覆われていない部分の下面の少なくとも一部に熱吸収剤が塗布されていること、を特徴とする請求項7または請求項8に記載の原子力プラント。
【請求項1】
炉心を収容する原子炉容器と、
前記原子炉容器を格納する原子炉格納容器と、
前記原子炉容器の下方でかつ前記原子炉格納容器内に配置された輻射熱反射部材と、
を有することを特徴とする原子力プラント。
【請求項2】
前記輻射熱反射部材は、前記炉心が事故によって溶融した状態の溶融炉心が前記原子炉容器の下方に流出して前記原子炉格納容器内下部に堆積しているときに当該溶融炉心から放出されて前記原子炉格納容器の側壁面に向かう輻射熱を遮るものであること、を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項3】
前記輻射熱反射部材は、前記炉心が事故によって溶融した状態の溶融炉心が前記原子炉容器の下方に流出して前記原子炉格納容器内下部に堆積しているときに、当該溶融炉心から放出されて、前記原子炉容器の下方で前記原子炉格納容器内に配置された機器を支持する支持構造物に向かう輻射熱の少なくとも一部を遮るものであること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子力プラント。
【請求項4】
前記炉心が事故によって溶融した状態の溶融炉心が前記原子炉容器の下方に流出したときに前記溶融炉心を受容してその上に堆積させるコアキャッチャーが、前記原子炉容器の下方の前記原子炉格納容器内に配置されていて、
前記コアキャッチャーの側壁に前記輻射熱反射部材が取り付けられていること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子力プラント。
【請求項5】
前記原子炉容器の水平方向外側で前記原子炉格納容器内に配置された冷却水プールと、
通常時には閉じていて、原子炉事故時には溶融して開いて前記冷却水プール内の冷却水を前記原子炉容器の下方で前記原子炉格納容器内に導く溶融弁と、
を有し、
前記輻射熱反射部材は、前記炉心が事故によって溶融した状態の溶融炉心が前記原子炉容器の下方に流出して前記原子炉格納容器内下部に堆積しているときに当該溶融炉心から放出された輻射熱を前記溶融弁に集めるように配置されていること、を特徴とする請求項1に記載の原子力プラント。
【請求項6】
前記溶融弁の周囲に熱吸収剤が塗布されていることを特徴とする請求項5に記載の原子力プラント。
【請求項7】
前記支持構造物は、
前記原子炉容器の下方に設けられて水平方向に広がるサンプ床と、
前記サンプ床の下方で前記サンプ床の下面の一部のみを覆うように前記原子炉格納容器内に配置されて前記サンプ床を支持するサンプ床支持構造物と、
を含み、
前記輻射熱反射部材は、前記サンプ床支持構造物の下面を覆い、しかも、前記サンプ床の下面のうちの前記サンプ床支持構造物によって覆われていない部分の下面を覆わないように配置されていること、を特徴とする請求項3に記載の原子力プラント。
【請求項8】
前記輻射熱反射部材は、前記支持構造物に塗布されていること、を特徴とする請求項3または請求項7に記載の原子力プラント。
【請求項9】
前記サンプ床の下面のうちの前記サンプ床支持構造物によって覆われていない部分の下面の少なくとも一部に熱吸収剤が塗布されていること、を特徴とする請求項7または請求項8に記載の原子力プラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−7574(P2013−7574A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138531(P2011−138531)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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