説明

原子力発電プラントの燃料取替え工法

【課題】原子力発電プラントの設備利用率を向上するためには、定期検査の期間を短縮することが望まれている。本発明の目的は、原子力発電プラントの定期検査にてクリティカル工事となる燃料取替え作業を短縮する工法を提供することにある。
【解決手段】原子力発電プラントの燃料集合体や制御棒の取替え作業にて、原子炉側と使用済み燃料プール側の2台の燃料取扱い機と原子炉と使用済み燃料プール間のカナル部に設置する燃料移動装置を用い、燃料集合体や制御棒の取替え作業の一部を同時に並行作業とすることで作業時間を短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントの燃料取替え作業に係り、特に、燃料取替え作業工程を短縮する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の大気温暖化防止策として、発電時に温室効果ガスである二酸化炭素の放出量が少ない原子力発電の重要性が高まっており、その設備利用率を向上させることが望まれている。設備利用率は(1)式で定義され、設備利用率を向上するためには、発電電力量を増やす必要がある。そのためには、運転期間を長くする、プラントの停止期間を短くする、出力を向上する方法がある。プラントの停止期間を短くするには、原子力プラントで定期的に実施している燃料集合体の取替えを含む定期検査期間や想定外停止期間を短縮する方法がある。
【0003】
【数1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3810909号公報
【特許文献2】特開2009−276196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で述べたように、プラントの設備利用率を向上する手法の一つに定期検査期間を短縮する方法がある。通常の定期検査では、プラント停止後、原子炉圧力容器を開放し、燃料集合体等を取替え、その後原子炉圧力容器を復旧する作業がクリティカル工程となる。原子炉から取り出した燃料集合体は、原子炉に隣接した使用済み燃料プールに保管される。また新しい燃料集合体も、使用済み燃料プールに仮置きし、使用済み燃料プールから原子炉内に移送する。
【0006】
「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」においては、「取り扱い中の燃料集合体1体が、取扱い装置の故障,破損等により、操作上の最高位置から落下するもの」と記載されており、安全評価上、1体の燃料落下しか想定していないと解釈される。そのため、複数の燃料集合体を同時に取り扱うことはできないと解釈されている。そこで、従来は1台の燃料集合体取扱い装置で、燃料集合体の取り扱いを実施し、燃料移動距離の最短化や燃料集合体取扱い装置の動作の高速化に取り組んできた。
【0007】
本発明の目的は、定期検査のクリティカル工程となる燃料集合体の取替え工程を短縮するための工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の特徴は、原子炉と使用済み燃料プールの間に、燃料集合体を移動させる装置を設置し、原子炉側と使用済み燃料プール側それぞれに、燃料集合体取扱い装置を用いることで、原子炉と使用済み燃料プールでの燃料集合体の取扱い作業を短縮する工法にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原子炉と使用済み燃料プールでの燃料取扱い作業を一部同時に並行作業することで燃料取替え作業を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料取り出し時における原子炉と使用済み燃料プールでの燃料取扱い作業を一部同時に並行に作業することが適用される作業フローである。
【図2】本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料装荷時における原子炉と使用済み燃料プールでの燃料取扱い作業を一部同時に並行に作業することが適用される作業フローである。
【図3】原子炉と使用済み燃料プールの間の燃料集合体を仮置きするラック、原子炉側と使用済み燃料プール側それぞれに設置した燃料集合体取扱い装置を用いて燃料集合体を取り出す作業を示す。
【図4】原子炉と使用済み燃料プールの間の燃料集合体を移動させる装置、原子炉側と使用済み燃料プール側それぞれに設置した燃料集合体取扱い装置を用いて燃料集合体を取り出す作業を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記に記載のように、燃料集合体は同時に複数の取り扱いができない。そこで、燃料集合体取扱い装置を原子炉側と使用済み燃料プール側にそれぞれ設置し、また原子炉と使用済み燃料プール間に燃料集合体を仮置きするラックを配置した。これにより、燃料集合体取り出しは、図1に示すフローで、燃料集合体の装荷は、図2に示すフローで作業することが可能となる。図1と図2に示すように、燃料集合体の取り出しでは、使用済み燃料プールで燃料集合体をラックに保管している間に、次の燃料集合体のハンドリング作業まで完了させることができる。一方、燃料集合体の装荷では、新燃料集合体を原子炉に装荷している間に、使用済み燃料プール側で次の新燃料集合体のハンドリング作業まで完了することができる。このように、原子炉側と使用済み燃料プール側の作業を一部同時に平行作業することで、作業時間を短縮できる。
【0012】
〔実施例〕
以下に、本発明の好適な一実施形態である原子力発電プラントの燃料集合体の取替え工法について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図3に、原子炉1と使用済み燃料プール2間のカナル部3の燃料集合体を仮置きするラック4、原子炉側の燃料集合体取扱い装置5と使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い装置6を用いて燃料集合体7を取り出す作業を示す。この図3に示すように、原子炉側の燃料集合体取扱い装置5を用いて、原子炉1内から燃料集合体7を取り出し、カナル部の燃料集合体を仮置きラック4まで移送し、当該仮置きラック4に設置する。その後、使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い装置5を用いて、仮置きされた当該燃料集合体7を使用済み燃料プール2の燃料保管ラック8に収納する。原子炉側の燃料集合体取扱い装置5は、カナル部の燃料集合体仮置きラック4に燃料集合体7を設置後、次に取り出す燃料集合体のエリアに移動し、次の燃料集合体をハンドリングする。但し、複数の燃料を同時に取り扱うことができないため、仮置きラック4,原子炉側の燃料集合体取扱い装置5と使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い装置6には、それぞれ燃料集合体7の荷重を検出する機能を有し、仮置きラック4,原子炉側の燃料集合体取扱い機5と使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い機6のいずれかに燃料集合体の荷重が負荷されている場合、それ以外の装置には加重が付加できないインターロック機能を設ける。
【0014】
本実施例の当該装置を用いることによって、制御棒の取替え作業も短縮することができる。
【実施例2】
【0015】
以下に、本発明の他の実施形態である原子力発電プラントの燃料集合体の取替え工法について、図面を用いて説明する。
【0016】
図4に、原子炉1と使用済み燃料プール2間のカナル部3の燃料集合体を移動する装置9,原子炉側の燃料集合体取扱い装置5と使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い装置6を用いて燃料集合体7を取り出す作業を示す。この図4に示すように、原子炉1側の燃料集合体取扱い装置5を用いて、原子炉1内から燃料集合体7を取り出し、カナル部の燃料集合体を移動する装置9まで移送し、当該燃料集合体7を移動する装置9に設置する。その後、燃料集合体7を移動する装置9は、燃料集合体7を原子炉1側から使用済み燃料プール2側に移動する。移動された燃料集合体7は、使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い装置5を用いて、使用済み燃料プール2の燃料保管ラック8に収納する。原子炉側の燃料集合体取扱い装置5は、カナル部の燃料集合体を移動する装置9に燃料集合体7を設置後、次に取り出す燃料集合体のエリアに移動し、次の燃料集合体7をハンドリングする。但し、複数の燃料を同時に取り扱うことができないため、燃料集合体を移動する装置9,原子炉側の燃料集合体取扱い装置5と使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い装置6には、それぞれ燃料集合体7の荷重を検出する機能を有し、燃料集合体を移動する装置9,原子炉側の燃料集合体取扱い装置5と使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い装置6のいずれかに燃料集合体の荷重が負荷されている場合、それ以外の装置には加重が付加できないインターロック機能を設ける。
【0017】
当該装置を用いて制御棒の取替え作業も短縮することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 原子炉
2 使用済み燃料プール
3 カナル部
4 燃料集合体仮置きラック
5 原子炉側の燃料集合体取扱い装置
6 使用済み燃料プール側の燃料集合体取扱い装置
7 燃料集合体
8 燃料保管ラック
9 燃料集合体を移動する装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電プラントの燃料集合体の取替え工法であって、
原子炉側と使用済み燃料プール側の2台の燃料取扱い機と前記原子炉と前記使用済み燃料プール間のカナル部に設置する燃料仮置きラックを用いて前記燃料集合体を取替えることを特徴とする原子力発電プラントの燃料集合体の取替え工法。
【請求項2】
請求項1において、
前記燃料仮置きラックに、原子炉側から使用済み燃料プール側に燃料を移動する機能を有した燃料移動装置を用いて制御棒を取替えることを特徴とする原子力プラントの燃料集合体の取替え工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−177630(P2012−177630A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41106(P2011−41106)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)